(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の太陽熱集熱システムを用いて蒸気を生成する場合の、(a)日射量、(b)低温集熱装置メタル温度、(c)汽水分離装置入口蒸気温度、(d)高温集熱装置入口(出口)蒸気流量、(e)高温集熱装置メタル温度、(f)高温集熱装置出口蒸気温度のそれぞれの変化を
図15に示す。
【0005】
図15(a)に示すように時刻t1から日射量が増加し始めると、
図15(b)および
図15(e)に示すように、低温集熱装置および高温集熱装置が起動し、それぞれの集熱装置のメタル温度が増加し始める。そして、低温集熱装置に給水された水は、時刻t3の時点で飽和蒸気温度まで加熱され、飽和温度に達した水−蒸気二相流体は汽水分離装置で蒸気と水に分離される(
図15(c))。一方で、時刻t1〜t4(t3より若干遅い時刻)までの間、
図15(d)に示すように、高温集熱装置にはまだ蒸気が流れておらず、メタル温度が上昇し続けている。この状態で汽水分離装置から徐々に増加しはじめた蒸気を高温集熱装置に流入させると、
図15(f)に示すように、時刻t4において、高温集熱装置出口の蒸気温度がオーバーシュートする。その結果、高温集熱装置の伝熱管が損傷する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記した実状を鑑みてなされたものであり、その目的は、太陽熱集熱システムにおいて、高温集熱装置の伝熱管の損傷リスクを低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の手段は、供給された水を太陽光の熱で加熱して蒸気を生成する低温集熱装置と、前記低温集熱装置で生成された水−蒸気二相流体を水と蒸気とに分離する汽水分離装置と、前記汽水分離装置で分離された蒸気を複数のヘリオスタットで反射させた太陽光の熱で加熱して、過熱蒸気を生成する高温集熱装置と、前記高温集熱装置のメタル温度が、前記高温集熱装置の出口における蒸気温度のオーバーシュートを防止するために設定された閾値温度以下となるように、前記複数のヘリオスタットの角度を制御するヘリオスタット制御装置と、
を備え、前記低温集熱装置は、樋状に延びた集光ミラーの内周曲面の上方に伝熱管を配置し、太陽光を集光ミラーで伝熱管に集光することにより、伝熱管内を流通する水を加熱して蒸気を生成するトラフ式の集光・集熱装置、または略平面状の集光ミラーを多数並べて、その集光ミラー群の上方に伝熱管を配置し、太陽光を前記集光ミラー群で伝熱管に集光することにより、伝熱管内を流通する水を加熱して蒸気を生成するフレネル式の集光・集熱装置からなり、前記高温集熱装置は、所定の高さを有するタワーの上に伝熱管パネルを設置し、太陽光を前記複数のヘリオスタットで伝熱管パネルに集光することにより、伝熱管パネル内を流通する水を加熱して蒸気を生成するタワー式の集光・集熱装置からなり、前記ヘリオスタット制御装置は、前記タワーとの距離が遠い方の前記ヘリオスタットを、前記タワーとの距離が近い方の前記ヘリオスタットより先に前記伝熱管パネルに太陽光を集光させるよう角度の調整を行うことを特徴とする。
【0008】
第1の手段によれば、高温集熱装置のメタル温度が閾値温度以下に制御されるため、高温集熱装置出口の蒸気温度のオーバーシュートを防止できる。よって、高温集熱装置の伝熱管の損傷リスクを低減することができる。
また、第1の手段によれば、高温集熱装置のメタル温度が急激に上昇することを防止できるため、より一層伝熱管パネルの損傷リスクを抑えることができる。
【0009】
本発明の第2の手段は、前記第1の手段において、前記高温集熱装置のメタル温度を検出するメタル温度検出器と、前記高温集熱装置で生成された過熱蒸気の流量を検出する流量検出器と、を備え、前記ヘリオスタット制御装置は、前記メタル温度検出器で取得した温度データおよび前記流量検出器で取得した流量データに基づいて、前記複数のヘリオスタットの角度を制御することを特徴とする。
【0010】
第2の手段によれば、高温集熱装置のメタル温度のデータと過熱蒸気の流量のデータとに基づいてヘリオスタットの制御を行っているため、高温集熱装置出口における蒸気温度を高精度で調整できる。よって、高温集熱装置の伝熱管の破損リスクはより一層低減される。
【0011】
本発明の第3の手段は、前記第1または第2の手段において、前記汽水分離装置の入口の蒸気温度を検出する第1温度検出器を備え、前記ヘリオスタット制御装置は、前記低温集熱装置が起動されたタイミングより後、かつ、前記第1温度検出器で検出された温度が飽和蒸気温度に到達するより前の任意のタイミングで、太陽光が前記高温集熱装置に反射するように前記複数のヘリオスタットの角度を制御することを特徴とする。
【0012】
第3の手段によれば、高温集熱装置のメタル温度が上昇を開始するのは、低温集熱装置の起動後となるから、高温集熱装置のメタル温度を閾値温度以下に制御するのが簡単である。即ち、第3の手段は、高温集熱装置の起動を低温集熱装置の起動より遅らせるという簡単な制御により、高温集熱装置のメタル温度の上昇を効果的に抑制して、伝熱管の破損リスクを低減しているのである。
【0013】
さらに、第3の手段では、高温集熱装置の起動は、第1温度検出器にて検出される温度が飽和蒸気温度に到達するより前であるから、高温集熱装置のメタル温度が飽和蒸気温度より低い状態で高温集熱装置に蒸気が流入するのを防止できる。
【0014】
本発明の第4の手段は、前記第1または第2の手段において、前記低温集熱装置の出口の蒸気温度を検出する第2温度検出器を備え、前記ヘリオスタット制御装置は、前記低温集熱装置が起動されたタイミングより後、かつ、前記第2温度検出器で検出された温度が飽和蒸気温度に到達するより前の任意のタイミングで、太陽光が前記高温集熱装置に反射するように前記複数のヘリオスタットの角度を制御することを特徴とする。
【0015】
第4の手段によれば、高温集熱装置のメタル温度が上昇を開始するのは、低温集熱装置の起動後となるから、高温集熱装置のメタル温度を閾値温度以下に制御するのが簡単である。即ち、第4の手段は、高温集熱装置の起動を低温集熱装置の起動より遅らせるという簡単な制御により、高温集熱装置のメタル温度の上昇を効果的に抑制して、伝熱管の破損リスクを低減しているのである。
【0016】
さらに、第4の手段では、高温集熱装置の起動は、第2温度検出器にて検出される温度が飽和蒸気温度に到達するより前であるから、高温集熱装置のメタル温度が飽和蒸気温度より低い状態で高温集熱装置に蒸気が流入するのを防止できる。
【0019】
本発明の第
5の手段は、前記第
1の手段において、前記高温集熱装置にて生成された過熱蒸気に対して水を吹き付けて、当該過熱蒸気の温度を安定させるためのスプレ弁を設けたことを特徴とする。
【0020】
第
5の手段によれば、過熱蒸気を安定した温度で供給することができるため、例えば、第
5の手段に係る太陽熱集熱システムを太陽熱発電プラントなどに組み込んで用いることにより、プラント全体の性能が高まる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高温集熱装置の伝熱管の損傷リスクを低減させることができる。なお、上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る太陽熱集熱システムの概略構成図である。
【
図2】
図1に示す高温集熱装置を設置したタワー式の集光・集熱装置の概略構成図である。
【
図3】
図2に示す高温集熱装置の伝熱パネルの概略構成図である。
【
図4】第1実施形態に係る太陽熱集熱システムを用いて蒸気を生成する場合の各種データを示す図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る太陽熱集熱システムの概略構成図である。
【
図6】トラフ式の集光・集熱装置の構成などを説明するための原理図である。
【
図7】フレネル式の集光・集熱装置の構成などを説明するための原理図である。
【
図8】本発明の第3実施形態に係る太陽熱集熱システムの概略構成図である。
【
図9】本発明の第4実施形態に係る太陽熱集熱システムの概略構成図である。
【
図10】第4実施形態に係る太陽熱集熱システムを用いて蒸気を生成する場合の各種データを示す図である。
【
図11】(a)はタワーとヘリオスタットとの距離Xに対するヘリオスタット1枚あたりの集光効率を示す図であり、(b)は高温集熱装置の上面図である。
【
図12】本発明の第5実施形態に係る太陽熱集熱システムの概略構成図である。
【
図13】本発明の第6実施形態に係る太陽熱集熱システムの概略構成図である。
【
図14】本発明の第7実施形態に係る太陽熱集熱システムの概略構成図である。
【
図15】従来の太陽熱集熱システムを用いて蒸気を生成する場合の各種データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の内容を下記に記載の実施形態にて詳細に説明するが、本発明が本実施形態にて制限されるものではない。
【0024】
「第1実施形態」
図1は、本発明の第1実施形態に係る太陽熱集熱システムSYS1の概略構成図である。この太陽熱集熱システムSYS1は、太陽熱発電プラントの蒸気タービンに過熱蒸気を供給するために使用される。なお、太陽熱発電プラントは、図示しないが、太陽熱集熱システムSYS1の高温集熱装置5で生成された過熱蒸気で駆動する蒸気タービンと、蒸気タービンの動力で発電する発電機と、蒸気タービンに供給された過熱蒸気を復水する復水器と、復水器で復水された水を太陽熱集熱システムSYS1の低温集熱装置1に供給するラインとを備えて構成される。
【0025】
図1において、符号1は水を太陽光の熱で加熱する低温集熱装置、符号2は給水ポンプ、符号3は給水弁、符号4は低温集熱装置1で生成した水−蒸気二相流体を水と蒸気とに分離する汽水分離装置、符号5は蒸気を太陽光の熱で加熱する高温集熱装置、符号6は太陽、符号7は太陽からの太陽光、符号8はヘリオスタット、符号9はタワー、符号10は蒸気弁、符号11は高温集熱装置5からの蒸気流量を計測する流量計(流量検出器)、符号12は高温集熱装置5のメタル温度を測定する温度計(メタル温度検出器)、符号13は流量計11で取得した流量データおよび温度計12で取得した温度データに基づいて、任意のヘリオスタット8の角度を調整する演算装置(ヘリオスタット制御装置)、符号14は循環ポンプ、符号40はスプレ弁である。なお、スプレ弁40を給水ポンプ2と給水弁3とを繋ぐ配管から分岐した分岐管に設けているのは、給水の温度が最も安定しており、流量の調整を行い易いからである。
【0026】
また、以降の説明では、各構成要素を結ぶ配管をライン○−○と表記する。前記の○には符号が入り、例えば、ライン2−3は給水ポンプ2と給水弁3を結ぶ配管を表している。
【0027】
この太陽熱集熱システムSYS1は、
図1に示すように、まず、給水ポンプ2から供給された水はライン2−3を通り、給水弁3により流量が調整され、ライン3−1を通り低温集熱装置1に送られる。この低温集熱装置1では太陽光の熱によって給水を加熱し、水−蒸気二相流体が生成される。生成された水−蒸気二相流体は、ライン1−4を通り汽水分離装置4に送られる。
【0028】
汽水分離装置4に導入された水−蒸気二相流体は、汽水分離装置4にて水と蒸気に分離される。分離された飽和蒸気は、ライン4−5を通り高温集熱装置5へ送られる。その高温集熱装置5に導入された飽和蒸気は、高温集熱装置5にて太陽熱でさらに加熱され、過熱蒸気が生成される。なお、汽水分離装置4で分離された水はライン4−14を通り、循環ポンプ14へ送られる。循環ポンプ14で加圧された水はライン14−1を通り、低温集熱装置1の入口へ送られる。
【0029】
高温集熱装置5で生成された過熱蒸気はライン5−11を通り、流量計11で流量が測定され、ライン11−10を通り蒸気弁10で過熱蒸気の流量が調整される。なお、流量計11の流量データを演算装置13に入力する。また、温度計12で高温集熱装置5のメタル温度が測定される。温度計12の温度データを演算装置13に入力する。さらに、演算装置13は、入力された流量データおよび温度データに基づいて、任意のヘリオスタット8の角度を調整する仕組みとなっている(詳しくは後述する)。なお、本発明のメタル温度検出器は温度計に限定されず、サーモグラフィーやカメラによる撮影データ解析によるものも含まれる。
【0030】
図2は、
図1に示す高温集熱装置5を設置したタワー式の集光・集熱装置の概略構成図であり、
図3は、高温集熱装置5の伝熱パネルの概略構成図である。
【0031】
図2に示すように、タワー式集光・集熱装置は、所定の高さ(30〜100m程度)を有するタワー9の上に高温集熱装置5(伝熱管パネル27)を設置する。一方、地上面には多数のヘリオスタット8を色々な向きに配置して、太陽6の動きを追尾しながらヘリオスタット8群で高温集熱装置5(伝熱管パネル27)に集光して、過熱蒸気を生成する仕組みになっている。このタワー式の集光・集熱装置は、トラフ式の集光・集熱装置よりも高温の蒸気を生成することができるため、太陽熱発電プラントに用いた場合には、タービン効率を上げて、より多くの電力が得られるという長所を有している。
【0032】
また、
図3に示すように、高温集熱装置5に用いる伝熱管パネル27は、汽水分離装置4からの蒸気を均等に分配する過熱器下部ヘッダ22と、その過熱器下部ヘッダ22で分配された蒸気を流動させる多数本並列に配置された過熱器伝熱管21と、その過熱器伝熱管21から流出した過熱蒸気を集合させる過熱器上部ヘッダ23で構成される。過熱器上部ヘッダ23から出た過熱蒸気は、図示しない蒸気タービンへ供給される。
【0033】
次に、第1実施形態に係る太陽熱集熱システムSYS1を用いて蒸気を生成する場合の、(a)日射量、(b)低温集熱装置メタル温度、(c)汽水分離装置入口蒸気温度、(d)高温集熱装置入口(出口)蒸気流量、(e)高温集熱装置メタル温度、(f)高温集熱装置出口蒸気温度のそれぞれの変化について、
図4を用いて説明する。
【0034】
図4(a)に示すように、時刻t1において日射量が増加し始めると、
図4(b)に示すように、低温集熱装置1が起動し、低温集熱装置1のメタル温度が増加し始める。そして、
図4(c)に示すように、時刻t3では、汽水分離装置4の入口において、蒸気温度が飽和蒸気温度T3に到達する。このとき、
図4(e)に示すように、高温集熱装置5のメタル温度が閾値温度Tc(Tc=600℃〜660℃)を超えないように、演算装置13が、温度流量計11で取得した流量データおよび温度計12で取得した温度データに基づいて任意のヘリオスタット8の角度調整を行っている。
【0035】
これにより、飽和蒸気温度T3まで温度が上昇した飽和蒸気が高温集熱装置5に流入した瞬間(
図4(d)の時刻t4)であっても、高温集熱装置5の出口蒸気温度のオーバーシュートする温度量を低減することが可能となり、高温集熱装置5の伝熱管の熱的損傷リスクを低減することができる(
図4(f)参照)。
【0036】
「第2実施形態」
図5は、本発明の第2実施形態に係る太陽熱集熱システムSYS2の概略構成図である。本実施形態では、トラフ式の集光・集熱装置からなる低温集熱装置15を用いている。他の構成などは第1実施形態と同様であるので、重複する説明は省略する。
【0037】
図6は、トラフ式の集光・集熱装置の構成などを説明するための原理図である。このトラフ式の集光・集熱装置は、
図6に示すように、樋状に延びた集光ミラー30の内周曲面上方の焦点位置に個別に伝熱管31を水平に配置し、太陽光7を集光ミラー30で伝熱管31に集光する。各伝熱管31内には水33が流通しており、伝熱管31に集められた熱によってその水33が加熱され、伝熱管31から水−蒸気二相流体34が得られる仕組みになっている。このトラフ式の集光・集熱装置は、高度な集光技術は不要であり、構造が比較的単純であるという長所を有している。
【0038】
なお、第2実施形態において、トラフ式の集光・集熱装置からなる低温集熱装置15の代わりに、フレネル式の集光・集熱装置からなる低温集熱装置を用いても良い。
図7は、フレネル式の集光・集熱装置の構成などを説明するための原理図である。
図7に示すように、フレネル式の集光・集熱装置は、平面状あるいは若干曲面状の集光ミラー35を、角度を少しずつ変えて多数枚並べて、その集光ミラー35群の上方数メートルの所にパネル状になった伝熱管31群を水平に配置する。
【0039】
太陽光7を集光ミラー35群で伝熱管31群に集光し、各伝熱管31内を流通する水33を加熱して、伝熱管31から水−蒸気二相流体34が得られる仕組みになっている。このフレネル式の集光・集熱装置は、トラフ式の曲面集光ミラー30よりも製造が簡便であり、安価に製造でき、しかも集光ミラー35が風圧に影響され難いという長所を有している。
【0040】
「第3実施形態」
図8は、本発明の第3実施形態に係る太陽熱集熱システムSYS3の概略構成図である。
図8において、符号17は低温集熱装置1の蒸気出口に設けられた温度計、符号18は低温集熱装置1から汽水分離装置4に導入される水−蒸気二相流体の流量を測定する流量計、符号43は、汽水分離装置4の蒸気入口に設けられた温度計、符号19は演算装置である。他の構成などは第1実施形態と同様であるので、重複する説明は省略する。
【0041】
第3実施形態では、低温集熱装置1の出口に設けられた温度計17で蒸気の温度を、流量計18で蒸気の流量をそれぞれ計測し、各計測データが所定の値になるように、演算装置19が給水弁3の弁開度を制御して低温集熱装置1への給水流量を調整している。具体的には、低温集熱装置1の出口の蒸気温度が300℃以下になるように、低温集熱装置1の給水流量を調整している。これにより、集熱量に応じて低温加熱装置1で生成する蒸気量を最適化することが可能となる。なお、低温集熱装置1の蒸気出口に設けられた温度計17の代わりに、汽水分離装置4の蒸気入口に設けられた温度計43を用い、この温度計43と流量計18とを用いて給水弁3の制御を行うようにしても良い。
【0042】
「第4実施形態」
図9は、本発明の第4実施形態に係る太陽熱集熱システムSYS4の概略構成図である。
図9において、符号20は低温集熱装置1の蒸気出口に設けられた温度計、符号21は低温集熱装置1から汽水分離装置4に導入される水−蒸気二相流体の流量を測定する流量計、符号44は、汽水分離装置4の蒸気入口に設けられた温度計、符号22は演算装置である。他の構成などは第1実施形態と同様であるので、重複する説明は省略する。
【0043】
第4実施形態では、低温集熱装置1の出口に設けられた温度計20で蒸気の温度を、流量計21で蒸気の流量をそれぞれ計測し、各計測データが所定の値になるように、演算装置22が低温集熱装置1の集熱量を調整している。具体的には、低温集熱装置1の出口の蒸気温度が300℃以下になるように、低温集熱装置1の集熱量を調整している。これにより、給水流量に応じて低温加熱装置1で生成する蒸気量を最適化することが可能となる。なお、低温集熱装置1の蒸気出口に設けられた温度計20の代わりに、汽水分離装置4の蒸気入口に設けられた温度計44を用い、この温度計44と流量計21とを用いて低温集熱装置1の集熱量を制御するようにしても良い。
【0044】
さらに、第4実施形態では、第1実施形態とは異なる制御によって高温集熱装置5のメタル温度が閾値温度Tc以下を保つようにしている。以下、その制御について、
図10を用いて詳しく説明する。なお、第4実施形態において、高温集熱装置5のメタル温度の閾値温度Tcは、600℃〜660℃に設定してある。また、
図10(d),(f),(g)において、実線は本発明の第4実施形態に係る太陽熱集熱システムSYS4を用いた場合の変化を、二点鎖線は従来の太陽熱集熱システムを用いた場合の変化を、それぞれ示している。
【0045】
太陽熱集熱システムSYS4では、
図10(a)に示すように、日射量の上昇開始(時刻t1)と共に低温集熱装置1が起動して集光が開始される。すると、
図10(b)に示すように、低温集熱装置1のメタル温度が増加し始める。また、低温集熱装置1が起動すると、徐々に低温集熱装置1を循環する水は加熱され、汽水分離装置4の入口流体温度は上昇していく。このとき、高温集熱装置5は起動していないため、高温集熱装置5のメタル温度は殆ど増加しない(
図10(f)の時刻t1〜t2間を参照)。
【0046】
そして、汽水分離装置4の入口流体温度が所定の温度T2に達すると(時刻t2)、
図10(d)に示すようにヘリオスタット8の一部の枚数(N1枚)が高温集熱装置5の伝熱パネル27(レシーバ部)に向かうように傾けられる。その結果、太陽光7の一部が反射光として高温集熱装置5の伝熱パネル27に当てられる。これにより、高温集熱装置5のメタル温度が時刻t2から徐々に上昇する(
図10(f))。
【0047】
さらに、タワー9の伝熱パネル27に向かうように傾けられるヘリオスタット8の枚数は時刻の経過と共に徐々に増えていき、汽水分離装置4の入口の流体温度(温度計44で測定される温度)が飽和蒸気温度T3に到達する時刻t3より少し後である時刻t4になると、全部(N2枚)のヘリオスタット8が伝熱パネル27を向くように傾けられる。
【0048】
このように、高温集熱装置5が低温集熱装置1の起動から遅れて起動し、ヘリオスタット8の枚数も徐々に増加するので、高温集熱装置5の集光量は徐々に増加する。その結果、高温集熱装置5のメタル温度を時刻t2から徐々に増加させることができ、かつ、汽水分離装置4で分離された飽和蒸気が高温集熱装置5に導入される時刻t4において、高温集熱装置5のメタル温度を閾値温度Tcに保持することができる。
【0049】
ここで、複数のヘリオスタット8の制御の詳細について、
図11を用いて説明する。
図11(a)は、タワーとヘリオスタットとの距離Xに対するヘリオスタット1枚あたりの集光効率を示す図であり、
図11(b)は高温集熱装置5の上面図である。
図11(b)に示すように、ヘリオスタット8はタワー9の周囲に数多く設置されており、タワー9に近い方から順にエリア(a)、エリア(b)、エリア(c)の3つのエリアに分けられている。そして、図示の通り、各エリアに複数のヘリオスタット8が設置されている。
【0050】
図11(a)に示すように、原点であるタワー9からの距離が遠くなる(距離Xの値が大きくなる)ほど、集光効率は低下する。この理由としては、タワー9との距離が遠くなるにつれ、反射光を当てるためにヘリオスタット8の傾斜角が大きくなり、鏡の受光面積が減少するためである(コサイン効果)。なお、上記の集光効率とは、レシーバ部である伝熱パネル27に入射するエネルギー量と鏡の面積当たりの太陽のエネルギー量の比をとったものである。タワー9とヘリオスタット8との距離が近く、反射光を伝熱パネル27へ当てるためのヘリオスタット8の傾斜角が小さいと、受光面積が大きくなるため集光効率は大きくなる。
【0051】
本実施形態では、エリア(a)に設置されたヘリオスタット8は、受光面積が大きく、集光効率が1.0であるのに対し、距離Xの値が大きくなるにつれて集光効率が小さくなっていく。即ち、ヘリオスタット8の集光効率および受光面積の関係は、エリア(a)>エリア(b)>エリア(c)となる。
【0052】
そして、本実施形態において、ヘリオスタット8の作動は、タワー9から遠い方から近い方の順で行われる。具体的には、演算装置13は、温度計44にて測定された温度データがT2に到達した時刻t2のタイミングで、まずエリア(c)に設置されたヘリオスタット8の角度を制御して太陽光7を高温集熱装置5に反射させるようにする。エリア(c)のヘリオスタット8の制御が完了すると、次に、エリア(b)に設置されたヘリオスタット8の角度を制御し、それが終わると、エリア(a)に設置されたヘリオスタット8の角度を制御する。こうして、
図10(d)に示すように、時刻t2から時刻t4にかけてヘリオスタット8の枚数が段階的に増加する。
【0053】
なお、
図10(d)は、エリア(c)、エリア(b)、エリア(a)の順に段階的にヘリオスタット8の角度を制御し、さらに、各エリア内でもタワー9から遠い方から段階的にヘリオスタット8の角度を制御している例を示している。そのため、時刻t2から時刻t4にかけて曲線を描いてヘリオスタット8の枚数が増加している。なお、エリア毎に一斉にヘリオスタット8の角度を制御しても良く、この場合には、時刻t2〜t4間において階段状にヘリオスタット8の枚数が増加することになる。
【0054】
このように、タワー9から遠いエリアから近いエリアへと段階的にヘリオスタット8の角度を制御すると、タワー9から遠くなるほどヘリオスタット8の集光効率が低いため、高温集熱装置5に蒸気が流れていない状態において、高温集熱装置5のメタル温度が急激に増加することがない。よって、高温集熱装置5のメタル温度を高精度で調整することができる。その結果、高温集熱装置5の出口の蒸気温度のオーバーシュートの発生が抑えられ、伝熱パネル27の損失リスクが回避される。
【0055】
なお、日射量の変動による蒸気温度の変化は、給水弁3を操作して給水量を増減することでカバーすれば良い。また、演算装置13は、温度計(第1温度検出器)44で計測された温度データに基づいてヘリオスタット8を制御しているが、低温集熱装置1の蒸気出口に設けられた温度計(第2温度検出器)20で計測された温度データに基づいて、上記したようにヘリオスタット8を制御しても良い。
【0056】
「第5実施形態」
図12は、本発明の第5実施形態に係る太陽熱集熱システムSYS5の概略構成図である。
図12において、符号23は汽水分離装置4の水位を計測する水位計、符号25は低温集熱装置1と汽水分離装置4の間の水の循環量を調整する循環流量制御弁、符号24は演算装置である。他の構成などは第1実施形態と同様であるので、重複する説明は省略する。
【0057】
第5実施形態では、汽水分離装置4の水位が所定の値になるように、給水弁3あるいは循環流量制御弁25によって給水流量あるいは循環量を調整することができるため、低温集熱装置1内の水の保有量を一定に保つことが可能となる。さらに、第5実施形態によれば、汽水分離装置4のタンクの容量オーバーにより、水が高温集熱装置5に流入するのを防止することができる。
【0058】
「第6実施形態」
図13は、本発明の第6実施形態に係る太陽熱集熱システムSYS6の概略構成図である。この図において、符号26は熱媒体が循環する熱媒体流路、符号27はその熱媒体流路26の途中に設けられた熱媒体循環ポンプ、符号28は熱媒体流路26の途中に設けられ、太陽光7を集光して生じた熱を、熱媒体流路26を循環する熱媒体に伝達する集光・集熱装置、符号29は熱媒体流路26の一部が熱交換器として内側に設置された熱交換器付き低温集熱装置である。他の構成などは第1実施形態と同様であるので、重複する説明は省略する。
【0059】
第6実施形態では、集光・集熱装置28で集熱した熱を、熱媒体を介して熱交換器付き低温集熱装置29内の水に伝達する構成になっているため、熱媒体に例えば油や溶融塩といった熱容量が大きい媒体を用いることで、日射量減衰時の低温集熱装置の温度低下を抑制し、日射量回復時に蒸気生成を早めることができる。
【0060】
「第7実施形態」
図14は、本発明の第7実施形態に係る太陽熱集熱システムSYS7の概略構成図である。
図14において、符号41は蒸気弁10の下流側に設けられ、図示しない蒸気タービンへ供給される蒸気の温度を計測するための温度計、符号42は演算装置である。他の構成などは第1実施形態と同様であるので、重複する説明は省略する。
【0061】
第7実施形態において、温度計41で計測された温度データは演算装置42に送られる。演算装置42は、温度計41の温度データに基づいて、スプレ弁40を開閉し、スプレ量を制御する。これにより、蒸気タービンに供給される蒸気の温度を安定させることができる。特に、スプレ弁40は
図14に示す位置に設けられており、給水を使用するためスプレの温度が安定する。その結果、第7実施形態では、蒸気温度をより一層安定に保つことができる。
【0062】
以上説明したように、本発明の各実施形態によれば、高温集熱装置5のメタル温度を閾値温度以下になるように制御できるから、高温集熱装置出口の蒸気温度がオーバーシュートすることがなく、高温集熱装置の伝熱パネル27が損傷するリスクを低減することができる。