特許第6033411号(P6033411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6033411ゴム組成物、その形成方法および該組成物を含む自動車用タイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6033411
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】ゴム組成物、その形成方法および該組成物を含む自動車用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/24 20060101AFI20161121BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20161121BHJP
   C08L 71/12 20060101ALI20161121BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20161121BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   C08J3/24 ZCEQ
   C08L21/00
   C08L71/12
   C08L91/00
   B60C1/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2015-511434(P2015-511434)
(86)(22)【出願日】2012年12月13日
(65)【公表番号】特表2015-517591(P2015-517591A)
(43)【公表日】2015年6月22日
(86)【国際出願番号】US2012069336
(87)【国際公開番号】WO2013169293
(87)【国際公開日】20131114
【審査請求日】2015年1月9日
(31)【優先権主張番号】61/644,605
(32)【優先日】2012年5月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/488,701
(32)【優先日】2012年6月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508171804
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー、スコット マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ルー、キウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ペカック、ウィリアム ユージーン
(72)【発明者】
【氏名】オブライエン、マイケル、ジェイ.
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−239322(JP,A)
【文献】 特表2004−506801(JP,A)
【文献】 特開2010−059337(JP,A)
【文献】 特開平09−111088(JP,A)
【文献】 米国特許第04910241(US,A)
【文献】 特開2004−238547(JP,A)
【文献】 特開昭49−053233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L7/00−21/02
C08L71/12
C08J3/20−3/26
B60C1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和を含むゴム100質量部と、ガラス転移温度が40〜140℃であって、ポリ(フェニレンエーテル)とゴムプロセスオイル、ポリオレフィン用伸展油、ゴム加工ワックスおよびこれらの組み合わせから構成される群から選択されるオイルとを含むポリ(フェニレンエーテル)組成物5〜40質量部と、を溶融混合して、エチレン性不飽和を含む前記ゴムと前記オイルとを含む連続相と、前記ポリ(フェニレンエーテル)を含む分散相と、を含む未硬化ゴム組成物を形成するステップと、
前記未硬化ゴム組成物を硬化させて、動的機械分析による第二ヒステリシスピーク温度が160〜220℃の硬化ゴム組成物を形成するステップと、
を備えることを特徴とするゴム組成物の形成方法。
【請求項2】
前記ポリ(フェニレンエーテル)のガラス転移温度は170〜220℃である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
エチレン性不飽和を含む前記ゴムは、天然ポリイソプレン、合成ポリイソプレン、スチレン‐ブタジエンランダムコポリマー、ポリブタジエン、エチレン−プロピレンランダムコポリマー、エチレン−プロピレン−ジエンモノマーランダムコポリマー、イソブチレン−イソプレンランダムコポリマー、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンランダムコポリマーおよびこれらの組み合わせから構成される群から選択される請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記オイルは、軽度抽出溶媒和物(MES)オイル、処理留出物芳香族抽出物(TDAE)オイルおよびこれらの組み合わせから構成される群から選択される請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリ(フェニレンエーテル)組成物は、その質量に対して、ポリ(アルケニル芳香族)、ゴム変性ポリ(アルケニル芳香族)、アルケニル芳香族モノマーと共役ジエンとの未水素化ブロックコポリマー、アルケニル芳香族モノマーと共役ジエンとの水素化ブロックコポリマーおよびこれらの組み合わせから構成される群から選択されたスチレン系ポリマー5〜50質量%をさらに含む請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ポリ(フェニレンエーテル)50〜95質量%と、
軽度抽出溶媒和物(MES)オイル、留出物芳香族抽出物(DAE)オイル、処理留出物芳香族抽出物(TDAE)オイル、残留芳香族抽出物(RAE)オイル、処理残留芳香族抽出物(TRAE)オイル、特別な残留芳香族抽出物(SRAE)オイル、ナフテン系オイル、重ナフテン系オイルおよびこれらの組み合わせから構成される群から選択されたゴムプロセスオイル5〜50質量%と、
を含み、
スチレン系ポリマーを含まないポリ(フェニレンエーテル)組成物であり、
但し、液晶ポリエステルを含まないことを特徴とするポリ(フェニレンエーテル)組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ポリ(フェニレンエーテル)樹脂は、その優れた耐水性、寸法安定性および固有の難燃性で知られるプラスチックの一種である。強度、剛性、耐薬品性および耐熱性などの特性は、他の種々のプラスチックとブレンドすることによって調整することで、例えば、衛生器具、配電盤、自動車部品および被覆ワイヤーなどの広範な消費財の要件を満たすことができる。
【0002】
ポリ(フェニレンエーテル)粒子によるゴム組成物の補強は既知である。例えば、MacCallumらの米国特許第3,383,340号には、カーボンブラックまたは無機充填剤の代わりにポリ(フェニレンエーテル)を組み込んで、任意の所望の色を帯び得る白色ゴム組成物を提供することが記載されている。しかしながら実際には、ゴム組成物は典型的には、ポリ(フェニレンエーテル)が固形物である温度でブレンドされるので、ポリ(フェニレンエーテル)をゴム組成物中に均一に分散させるのは難しい。さらに、直径が約35μm未満の分散相ポリ(フェニレンエーテル)粒子を有するゴム組成物を所望の程度まで調製するためには、ゴム組成物の調製プロセスでは、出発材料として同様のサイズのポリ(フェニレンエーテル)粒子が必要であり、空気中でのその取り扱いは、粉塵爆発の危険を生じ得る。
【0003】
Nahmiasらの米国特許第6,469,101号には、特に、ゴム基剤には実質的に不溶であり、一次または二次転移温度が80〜160℃のアモルファスまたは半結晶性ポリマーであってもよい有機化合物が組み込まれたゴム組成物が記載されている(Nahmias:要約)。Nahmiasには、「Huls社から商品名VESTORAN(登録商標)1100で販売されているガラス転移温度が120℃のポリフェニレンエーテルで最適結果が得られた」ことが記載されている(Nahmias:第2欄42〜45行目)。VESTORAN1100は、約80質量%のホモポリスチレンと約20質量%のポリ(フェニレンエーテル)との混和性ブレンドとして既知である。VESTORAN1100の120℃という低ガラス転移温度によってゴムとのブレンドは容易になるが、得られたゴム中のホモポリスチレン/ポリ(フェニレンエーテル)粒子によって、ゴムの80〜140℃におけるタンデルタが上昇し、該ゴムを含む自動車用タイヤでの発熱と摩耗が不要に増加することが予測される。
【0004】
Hahnらの米国特許第6,646,066号には、「ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィドおよびシンジオタクチックポリスチレンの少なくとも1つから選択された」熱可塑性ポリマーの粒子を有するゴム組成物が記載されている(Hahn:第3欄61〜62行目)。実施例における実施例1のサンプルBは、「ポリスチレンとの混ぜ物としてポリフェニレンエーテル」を含む(Hahn:第5欄66〜67行目)。ポリスチレンとのポリ(フェニレンエーテル)混ぜ物は、ビカット軟化点が190℃として既知のVESTORAN1900として入手した。ポリ(フェニレンエーテル)混ぜ物がゴムと165℃でゴムとブレンドされたことを考えると、ポリ(フェニレンエーテル)混ぜ物は、そのプロセスの間、固形物のままであり、従ってゴム中への分散は困難であった。
【0005】
このように、ポリ(フェニレンエーテル)のゴム組成物中への既知の組み込み方法では、ゴムブレンド条件下で固形であり、従ってゴム組成物中に適切に分散しないポリ(フェニレンエーテル)組成物が利用されているか、あるいは、ゴムブレンド条件下で軟化するため良好に分散するが、分散を容易にする低下したガラス転移温度のために、得られたゴム組成物中の補強材としては十分に機能しないポリ(フェニレンエーテル)組成物が利用されている。従って、ポリ(フェニレンエーテル)がゴム中に良好に分散し、補強材としての向上した性能に伴う高耐熱性を維持するポリ(フェニレンエーテル)のゴム組成物への組み込み方法が求められている。
【発明の概要】
【0006】
一実施形態は、エチレン性不飽和を含むゴムと、ガラス転移温度が約40〜約140℃でポリ(フェニレンエーテル)とオイルを含むポリ(フェニレンエーテル)組成物と、を溶融混合して、エチレン性不飽和を含む前記ゴムと前記オイルとを含む連続相と、前記ポリ(フェニレンエーテル)を含む分散相と、を含む未硬化ゴム組成物を形成するステップと、前記未硬化ゴム組成物を硬化させて、動的機械分析による第二ヒステリシスピーク温度が約160〜約220℃の硬化ゴム組成物を形成するステップと、を備えるゴム組成物の形成方法である。
【0007】
別の実施形態は、エチレン性不飽和を含むゴム100質量部と、ガラス転移温度が約40〜約140℃であって、ガラス転移温度が約170〜約220℃のポリ(フェニレンエーテル)と、軽度抽出溶媒和物(MES)オイル、処理留出物芳香族抽出物(TDAE)オイル、残留芳香族抽出物(RAE)オイルおよびこれらの組み合わせから構成される群から選択されたオイルと、を含むポリ(フェニレンエーテル)組成物約5〜約40質量部と、を溶融混合して、エチレン性不飽和を含む前記ゴムと前記オイルとを含む連続相と、前記ポリ(フェニレンエーテル)を含む分散相と、を含む未硬化ゴム組成物を形成するステップと、前記未硬化ゴム組成物を硬化させて、動的機械分析による第二ヒステリシスピーク温度が約160〜約220℃の硬化ゴム組成物を形成するステップと、を備えるゴム組成物の形成方法である。
【0008】
別の実施形態は、ゴムを含む連続相と、ポリ(フェニレンエーテル)を含む分散相と、を含む硬化ゴム組成物であって、前記組成物は、エチレン性不飽和を含むゴムと、ガラス転移温度が約40〜約140℃であって、ポリ(フェニレンエーテル)とオイルを含むポリ(フェニレンエーテル)組成物と、を溶融混合して、エチレン性不飽和を含む前記ゴムと前記オイルとを含む連続相と、前記ポリ(フェニレンエーテル)を含む分散相と、を含む未硬化ゴム組成物を形成するステップと、前記未硬化ゴム組成物を硬化させて前記硬化ゴム組成物を形成するステップと、を備える方法で調製され、前記ゴム組成物の動的機械分析による第二ヒステリシスピーク温度は約160〜約220℃であり、ASTM D624−00(2012)に準拠し温度23℃で求めた前記ゴム組成物のグレーブス(Graves)引裂強度は、前記ゴムと前記ポリ(フェニレンエーテル)組成物を溶融混合せずに、前記ポリ(フェニレンエーテル)と前記オイルとを前記ゴムに別々に添加するステップを備える方法で調製された対応する組成物のグレーブス引裂強度より少なくとも10%大きい。
【0009】
別の実施形態は、ここに記載のゴム組成物を含むタイヤである。
【0010】
別の実施形態は、ポリ(フェニレンエーテル)約50〜約95質量%と、軽度抽出溶媒和物(MES)オイル、留出物芳香族抽出物(DAE)オイル、処理留出物芳香族抽出物(TDAE)オイル、残留芳香族抽出物(RAE)オイル、処理残留芳香族抽出物(TRAE)オイル、特別な残留芳香族抽出物(SRAE)オイル、ナフテン系オイル、重ナフテン系オイルおよびこれらの組み合わせから構成される群から選択されたゴムプロセスオイル約5〜約50質量%と、を含むポリ(フェニレンエーテル)組成物である。
【0011】
これらおよびその他の実施形態について以下詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ポリ(フェニレンエーテル)組成物が組み込まれていない比較のゴム組成物およびゴム100質量部に対してポリ(フェニレンエーテル)組成物20質量部を有する発明的組成物の2つのゴム組成物の、貯蔵弾性率、損失弾性率およびタンデルタと温度との関係を示すグラフである。比較のゴム組成物に対して、発明的ゴム組成物の温度範囲−25〜0℃における貯蔵弾性率は低減しており、それによって雪と氷上でのタイヤつかみが向上することが予測され、また、温度範囲55〜105℃におけるタンデルタも低減しており、それによってタイヤ転がり抵抗が低減することが予測される。発明的ゴム組成物のタンデルタ曲線では、約160℃において第二ヒステリシスピーク温度も見られる。
【0013】
図2】比較実施例52(ポリ(フェニレンエーテル)組成物が何ら添加されていないゴム)に対応するトルエンエッチング表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【0014】
図3】比較実施例53(ポリ(フェニレンエーテル)とオイルが別々に添加されたゴム)に対応するトルエンエッチング表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【0015】
図4】実施例46(70質量%のポリ(フェニレンエーテル)と30質量%のオイルを含むポリ(フェニレンエーテル)組成物が添加されたゴム)に対応するトルエンエッチング表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【0016】
図5】実施例47(63質量%のポリ(フェニレンエーテル)、7質量%のポリスチレンおよび30質量%のオイルを含むポリ(フェニレンエーテル)組成物が添加されたゴム)に対応するトルエンエッチング表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【0017】
図6】実施例48(56質量%のポリ(フェニレンエーテル)、14質量%のポリスチレンおよび30質量%のオイルを含むポリ(フェニレンエーテル)組成物が添加されたゴム)に対応するトルエンエッチング表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【0018】
図7】実施例49(49質量%のポリ(フェニレンエーテル)、21質量%のポリスチレンおよび30質量%のオイルを含むポリ(フェニレンエーテル)組成物が添加されたゴム)に対応するトルエンエッチング表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【0019】
図8】実施例50(56質量%のポリ(フェニレンエーテル)、24質量%のポリスチレンおよび20質量%のオイルを含むポリ(フェニレンエーテル)組成物が添加されたゴム)に対応するトルエンエッチング表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明者らは、ガラス転移温度が約40〜約140℃の、ポリ(フェニレンエーテル)とオイルとの事前ブレンド混合物を用いてゴム組成物を調製すると、ポリ(フェニレンエーテル)は、ゴム組成物中に良好に分散し、オイルのポリ(フェニレンエーテル)分散相から連続ゴム相への移動に伴って、その高いガラス転移温度を取り戻すことを見出した。ポリ(フェニレンエーテル)固形物をゴムとブレンドする先行技術方法と比較して、本方法では、ポリ(フェニレンエーテル)のゴム内での分散が容易であり、粉塵爆発の危険をもたらす微粒子ポリ(フェニレンエーテル)パウダーの取り扱いが回避され、得られたゴムの引裂強度が向上する。ポリ(フェニレンエーテル)をポリスチレンなどのポリマーと事前ブレンドしてガラス転移温度を低減させる先行技術方法と比較して、本方法では、分散相のガラス転移温度がより高く、従って、ゴムを含む自動車用タイヤでの発熱と摩耗を低減する硬化ゴムが得られる。
【0021】
本明細書で開示された範囲はすべて終点を含むものであり、該終点は互いに独立に組み合わせできる。本明細書で開示した範囲はそれぞれ、この開示範囲内の任意の点またはサブ範囲の開示を構成する。
【0022】
本発明の記述文脈(特に以下の請求項の文脈)における単数表現は、本明細書で別途明示がある場合または文脈上明らかに矛盾する場合を除き、単数および複数を含むものと解釈される。また、本明細書で用いられる、「第1の」「第2の」などの用語は、いかなる順序や量あるいは重要度を表すものではなく、ある成分と他の成分とを区別するために用いられるものである。量に関連して用いられる「約」は、記載された数値を含むものであり、文脈上決定される意味(例えば、特定の量の測定に関連した誤差の程度を含む)を有するものである。
【0023】
一実施形態は、エチレン性不飽和を含むゴムと、ガラス転移温度が約40〜約140℃であって、ポリ(フェニレンエーテル)とオイルを含むポリ(フェニレンエーテル)組成物と、を溶融混合して、エチレン性不飽和を含む前記ゴムと前記オイルとを含む連続相と、前記ポリ(フェニレンエーテル)を含む分散相と、を含む未硬化ゴム組成物を形成するステップと、前記未硬化ゴム組成物を硬化させて、動的機械分析による第二ヒステリシスピーク温度が約160〜約220℃の硬化ゴム組成物を形成するステップと、を備えるゴム組成物の形成方法である。
【0024】
動的機械分析試験では、温度の関数としての貯蔵弾性率と損失弾性率のデータが得られる。損失弾性率と貯蔵弾性率の比は、タンデルタとして既知である。硬化ゴムサンプルでのタンデルタと温度とのグラフでは、典型的に、約−50〜0℃の範囲の温度において第一の極大タンデルタが見られる。ゴムがガラス転移温度(Tg)の材料の分散相粒子を含む場合、該ガラス転移温度は、分散相材料のガラス転移温度とほぼ等しい温度において、第二の極大タンデルタとして明示され得る。ここでは、第二の極大タンデルタが生じる温度を第二ヒステリシスピーク温度と呼ぶ。図1では、発明的サンプルのタンデルタ曲線では、約160℃に第二ヒステリシスピークが見られる。対照的に、比較サンプルのタンデルタ曲線では、第二ヒステリシスピークは見られない。本方法では、硬化ゴム組成物の第二ヒステリシスピーク温度が約160〜約220℃であることが必要である。この範囲内で、第二ヒステリシスピーク温度は、約170〜約215℃であってもよく、具体的には約180〜約215℃であってもよく、より具体的には約190〜約215℃であってもよく、さらにより具体的には約200〜約215℃であってもよい。未硬化ゴムに組み込まれる前のオイル含有ポリ(フェニレンエーテル)組成物のガラス転移温度は約40〜約140℃であるため、硬化ゴムにおける少なくとも約160℃の第二ヒステリシスピーク温度の存在は、ポリ(フェニレンエーテル)組成物に最初に組み込まれたオイルがゴム組成物中に効率的に分散し、それによって、ポリ(フェニレンエーテル)組成物のオイルなしガラス転移温度を回復したことを示している。約40〜約140℃の範囲内で、オイル含有ポリ(フェニレンエーテル)のガラス転移温度は、約60〜約130℃であってもよく、具体的には約80〜約120℃であってもよい。
【0025】
該ポリ(フェニレンエーテル)組成物はポリ(フェニレンエーテル)を含む。好適なポリ(フェニレンエーテル)としては、下式の繰り返し構造単位を含むものが挙げられる:
【化1】
式中、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、ヒドロカルビル基が第三級ヒドロカルビルではない未置換または置換C−C12ヒドロカルビル、C−C12ヒドロカルビルチオ、C−C12ヒドロカルビルオキシ、あるいは少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを分離しているC−C12ハロヒドロカルビルオキシであり;Zはそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル基が第三級ヒドロカルビルではない未置換または置換C−C12ヒドロカルビル、C−C12ヒドロカルビルチオ、C−C12ヒドロカルビルオキシ、あるいは少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを分離しているC−C12ハロヒドロカルビルオキシである。本明細書において、「ヒドロカルビル」は、単独であるいは別の用語の接頭辞、接尾辞またはフラグメントとして使用されたとしても、炭素と水素だけを含む残基を指す。該残基は、脂肪族または芳香族、直鎖、環式、二環式、分枝鎖、飽和または不飽和であり得る。それはまた、脂肪族、芳香族、直鎖、環式、二環式、分枝鎖、飽和および不飽和炭化水素部分の組み合わせも含み得る。しかしながら、該ヒドロカルビル残基が置換であると記載された場合、それは任意に、該置換残基の炭素と水素員上にヘテロ原子を含んでいてもよい。従って、置換であると特定的に記載された場合、該ヒドロカルビル残基は、1個または複数個のカルボニル基、アミノ基、水酸基なども含み得、あるいは、該ヒドロカルビル残基の骨格内にヘテロ原子を含み得る。一例として、Zは、末端の3,5−ジメチル−1,4−フェニル基と酸化重合触媒のジ−n−ブチルアミン成分との反応で形成されたジ−n−ブチルアミノメチル基であり得る。
【0026】
一部の実施形態では、該ポリ(フェニレンエーテル)の固有粘度は、25℃のクロロホルム中で測定して約0.2〜約1.5dL/gである。この範囲内で、ポリ(フェニエンエーテル)の固有粘度は、約0.25〜約0.8dL/gであってもよく、より具体的には約0.3〜約0.6dL/gであってもよい。
【0027】
一部の実施形態では、該ポリ(フェニレンエーテル)は、組み込まれたジフェノキノン残基を本質的に含まない。この文脈において、「本質的に含まない」とは、ジフェノキノンの残基を含むポリ(フェニレンエーテル)分子が1質量%未満であることを意味する。Hayの米国特許第3,306,874号に記載されているように、一価フェノールの酸化重合によるポリ(フェニレンエーテル)の合成では、所望のポリ(フェニレンエーテル)だけでなく、ジフェノキノンも副生成物として生成される。例えば、一価フェノールが2,6−ジメチルフェノールの場合、3,3’,5,5’−テトラメチルジフェノキノンが生成される。該ジフェノキノンは典型的には、前記重合反応混合物を加熱して末端または内部ジフェノキノン残基を含むポリ(フェニレンエーテル)を生成することによって、ポリ(フェニレンエーテル)内に「再平衡される」(すなわち、ジフェノキノンがポリ(フェニレンエーテル)構造内に取り込まれる)。例えば、ポリ(フェニレンエーテル)を2,6−ジメチルフェノールの酸化重合で調製してポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)と3,3’,5,5’−テトラメチルジフェノキノンを生成する場合、反応混合物の再平衡によって、取り込まれたジフェノキノンの末端および内部残基を有するポリ(フェニレンエーテル)が生成され得る。しかしながら、こうした再平衡によって、ポリ(フェニレンエーテル)の分子量が低減する。従って、より高分子量のポリ(フェニレンエーテル)が望ましい場合、該ジフェノキノンをポリ(フェニレンエーテル)鎖へ再平衡させずに、ポリ(フェニレンエーテル)から分離することが望ましいものであり得る。こうした分離は、例えば、ポリ(フェニレンエーテル)は不溶だがジフェノキノンが可溶の溶媒または溶媒混合物に、ポリ(フェニレンエーテル)を沈殿させることによって実現される。例えば、トルエン中の2,6−ジメチルフェノールの酸化重合によってポリ(フェニレンエーテル)を調製して、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)と3,3’,5,5’−テトラメチルジフェノキノンとを含むトルエン溶液を生成する場合、ジフェノキノンを本質的に含まないポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)は、該トルエン溶液1容積とメタノールまたはメタノール/水混合物約1〜約4容積とを混合することによって得られる。あるいは、酸化重合中に生成されるジフェノキノン副生成物の量は、(例えば、10質量%未満の一価フェノールの存在下で酸化重合を開始し、少なくとも50分の間に少なくとも95質量%の一価フェノールを添加することによって)最小化でき、およびまたは、ポリ(フェニレンエーテル)鎖へのジフェノキノンの再平衡は、(例えば、酸化重合終了後200分以内にポリ(フェニレンエーテル)を単離することによって)最小化できる。これらの方法は、Delsmanらの米国特許出願公報第2009/0211967A1号に記載されている。トルエン中のジフェノキノンの温度依存性の溶解度を利用する代替方法では、ジフェノキノンとポリ(フェニレンエーテル)とを含むトルエン溶液の温度を、ジフェノキノンはほとんど不溶だがポリ(フェニレンエーテル)は可溶である約25℃に調整して、不溶のジフェノキノンを固液分離(例えばろ過)によって除去できる。
【0028】
一部の実施形態では、該ポリ(フェニレンエーテル)は、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位、2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位あるいはこれらの組み合わせを含む。一部の実施形態では、該ポリ(フェニレンエーテル)は、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である。一部の実施形態では、該ポリ(フェニエンエーテル)は、25℃のクロロホルム中で測定した固有粘度が約0.3〜約0.5dL/gの、具体的には約0.35〜約0.46dL/gのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を含む。
【0029】
該ポリ(フェニレンエーテル)は、典型的にはヒドロキシ基に対してオルト位置に存在するアミノアルキル含有末端基(類)を有する分子を含み得る。また、テトラメチルジフェノキノン(TMDQ)副生成物が存在する2,6−ジメチルフェノール含有反応混合物から典型的に得られるTMDQ末端基類も存在することが多い。該ポリ(フェニエンエーテル)は、ホモポリマー、コポリマー、グラフトコポリマー、イオノマー、ブロックコポリマー、あるいはこれらの組合せの形態であり得る。
【0030】
ポリ(フェニレンエーテル)組成物を形成するためにオイルおよび他の任意の成分とブレンドされる前のポリ(フェニレンエーテル)のガラス転移温度は、約170〜約220℃であってもよい。この範囲内で、ポリ(フェニレンエーテル)のガラス転移温度は、約180〜約215℃であってもよく、具体的には約190〜約215℃であってもよく、より具体的には約200〜約215℃であってもよい。
【0031】
ポリ(フェニエンエーテル)組成物は、その質量に対して、約40〜約95質量%のポリ(フェニレンエーテル)を含んでいてもよい。この範囲内で、ポリ(フェニエンエーテル)の量は、約50〜約90質量%であってもよく、具体的には約60〜約80質量%であってもよい。
【0032】
未硬化または硬化ゴム組成物は、その質量に対して、約1〜約30質量%のポリ(フェニエンエーテル)を含んでいてもよい。この範囲内で、ポリ(フェニエンエーテル)の量は、約2〜約20質量%であってもよく、具体的には約3〜約10質量%であってもよく、より具体的には約4〜約8質量%であってもよい。
【0033】
該ポリ(フェニレンエーテル)組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)に加えてオイルを含む。オイルの種類と量は、ポリ(フェニレンエーテル)組成物中でのその存在によって、ポリ(フェニレンエーテル)組成物のガラス転移温度が約40〜約140℃となり、それによって、未硬化ゴム組成物中でのポリ(フェニレンエーテル)の分散が容易になるものである。
【0034】
ポリ(フェニレンエーテル)組成物中での使用に好適なオイルとしては、例えば、ゴムプロセスオイル(パラフィン鉱油、軽度抽出溶媒和物(MES)オイル、留出物芳香族抽出物(DAE)オイル、処理留出物芳香族抽出物(TDAE)オイル、残留芳香族抽出物(RAE)オイル、処理残留芳香族抽出物(TRAE)オイル、特別な残留芳香族抽出物(SRAE)オイル、ナフテン系オイル、重ナフテン系オイルおよびこれらの組み合わせを含む);ポリオレフィン用伸展油;ゴム加工ワックス(ポリエチレンワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス、ビーズワックス、ライスワックス、カルナバワックス、ラノリンワックスおよびこれらの組み合わせを含む);一気圧および25〜120℃の温度範囲の少なくとも一温度で液体である有機リン酸エステル難燃剤(レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジ−2,6−ジメチルフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジ−2,6−ジメチルフェニルホスフェート)、アルキル化トリフェニルホスフェートおよびこれらの組み合わせを含む);およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0035】
一部の実施形態では、該オイルはゴムプロセスオイルである。ゴムプロセスオイルを使用する利点は、こうしたオイルはゴム組成物に意図的に添加されることが多く、ゴム組成物に対するその影響が望ましいものでありよく理解されていることである。ゴムプロセスオイルとしては、例えば、パラフィン鉱油、軽度抽出溶媒和物(MES)オイル、留出物芳香族抽出物(DAE)オイル、処理留出物芳香族抽出物(TDAE)オイル、残留芳香族抽出物(RAE)オイル、処理残留芳香族抽出物(TRAE)オイル、特別な残留芳香族抽出物(SRAE)オイル、ナフテン系オイル、重ナフテン系オイルおよびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0036】
一部の実施形態では、該オイルは、軽度抽出溶媒和物(MES)オイル、処理留出物芳香族抽出物(TDAE)オイルおよびこれらの組み合わせから構成される群から選択される。一部の実施形態では、該オイルは、処理留出物芳香族抽出物(TDAE)オイルを含む。典型的には、軽度抽出溶媒和物(MES)オイルの40℃粘度は約100〜約300センチストークであり、芳香族含有量は約10〜約15質量%、ナフテン系含有量は約25〜約35質量%、パラフィン含有量は約55〜約65質量%である。代表的な軽度抽出溶媒和物(MES)オイルとしては、40℃粘度が約210センチストークであり、芳香族含有量が約15質量%、ナフテン系含有量が約27質量%、パラフィン含有量が約58質量%のH&R Group社のVIVATEC200と;40℃粘度が約220センチストークであり、芳香族含有量が約13質量%、ナフテン系含有量が約31質量%、パラフィン含有量が約56質量%のH&R Group社のTUDALEN4226が挙げられる。典型的には、処理留出物芳香族抽出物(TDAE)オイルの40℃粘度は約200〜約1,200センチストークであり、芳香族含有量は約20〜約25質量%、ナフテン系含有量は約25〜約35質量%、パラフィン含有量は約40〜約50質量%である。代表的な処理留出物芳香族抽出物(TDAE)オイルとしては、40℃粘度が約375センチストークであり、芳香族含有量が約25質量%、ナフテン系含有量が約30質量%、パラフィン含有量が約45質量%のH&R Group社のVIVATEC400と;40℃粘度が約410センチストークであり、芳香族含有量が約25質量%、ナフテン系含有量が約30質量%、パラフィン含有量が約45質量%のVIVATEC500と;40℃粘度が約500センチストークであり、芳香族含有量が約24質量%、ナフテン系含有量が約25質量%、パラフィン含有量が約51質量%のH&R Group社のTUDALEN SX500が挙げられる。
【0037】
該ポリ(フェニエンエーテル)組成物は、その質量に対して、約5〜約60質量%のオイルを含んでいてもよい。この範囲内で、オイルの量は約10〜約50質量%であってもよく、具体的には約15〜約40質量%であってもよく、より具体的には約20〜約35質量%であってもよい。
【0038】
ポリ(フェニレンエーテル)組成物のオイル成分は、未硬化または硬化ゴム組成物の質量に対してオイル量が約0.5〜約10質量%となるものであってもよい。この範囲内で、ポリ(フェニエンエーテル)組成物によって得られるオイル量は約1〜約8質量%であってもよく、具体的には約1.5〜約7質量%であってもよく、より具体的には約4〜約6質量%であってもよい。
【0039】
未硬化および硬化ゴム組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)組成物によって得られるオイルに加えて、かなりの量のオイル、特にゴムプロセスオイルを含んでいてもよい。こうして、未硬化および硬化ゴム組成物中のオイル合計質量は、約50質量%以下であってもよく、具体的には約45質量%以下であってもよい。
【0040】
一部の実施形態では、該ポリ(フェニエンエーテル)組成物は、スチレン系ポリマーをさらに含む。好適なスチレン系ポリマーとしては、例えば、ポリ(アルケニル芳香族)(ポリスチレンなど)、ゴム変性ポリ(アルケニル芳香族)(耐衝撃性ポリスチレンとしても既知のゴム変性ポリスチレンなど)、アルケニル芳香族モノマーと共役ジエンとの未水素化ブロックコポリマー(ポリスチレン−ポリブタジエンジブロックコポリマー、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロックコポリマー、ポリスチレン−ポリイソプレンジブロックコポリマーおよびポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロックコポリマーなど)、アルケニル芳香族モノマーと共役ジエンとの水素化ブロックコポリマー(ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)ジブロックコポリマー、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)ジブロックコポリマーおよびポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーなど)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。スチレン系ポリマーが存在する場合、その量は、ポリ(フェニレンエーテル)組成物の質量に対して約5〜約50質量%であってもよい。
【0041】
スチレン系ポリマーの調製に用いるアルケニル芳香族モノマーは下式の構造を有し得る:
【化2】
式中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を表し;RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、C−Cアルキル基、塩素原子または臭素原子を表し;R、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、C−Cアルキル基またはC−Cアルケニル基を表し、あるいはRおよびRは中央の芳香環と共にナフチル基を形成し、あるいはRおよびRは中央の芳香環と共にナフチル基を形成する。具体的なアルケニル芳香族モノマーとしては、例えば、スチレン、p−クロロスチレンなどのクロロスチレン、α−メチルスチレンおよびp−メチルスチレンなどのメチルスチレン、および3−t−ブチルスチレンおよび4−t−ブチルスチレンなどのt−ブチルスチレンが挙げられる。一部の実施形態では、該アルケニル芳香族モノマーはスチレンである。
【0042】
未水素化または水素化ブロックコポリマーの調製に用いる共役ジエンは、C−C20共役ジエンであってもよい。好適な共役ジエンとしては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなど、およびこれらの組み合わせが挙げられる。一部の実施形態では、該共役ジエンは、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンあるいはこれらの組み合わせである。一部の実施形態では、該共役ジエンは1,3−ブタジエンから構成される。
【0043】
該ポリ(フェニレンエーテル)組成物は、必要なポリ(フェニレンエーテル)とオイル、および任意のスチレン系ポリマーに加えてさらに、安定剤、加工助剤、UVカット剤、染料、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、金属不活性化剤、ブロッキング防止剤など、およびこれらの組み合わせなどの添加剤の1つまたは複数を任意に含んでいてもよい。こうした添加剤が存在する場合、その合計量は、ポリ(フェニレンエーテル)組成物の合計質量に対して、典型的には10質量%以下であり、具体的には5質量%以下であり、より具体的には3質量%以下である。
【0044】
ポリ(フェニレンエーテル)組成物の形成に適切な装置としては、リボンブレンダ、Henschelミキサー、Banburyミキサー、ドラムタンブラー、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機、共混練機などが挙げられる。一部の実施形態では、ポリ(フェニレンエーテル)組成物の形成は、オイルとポリ(フェニレンエーテル)とを溶融混合するステップを含む。ポリ(フェニレンエーテル)組成物は、例えば、二軸押出機内で、ポリ(フェニレンエーテル)、オイルおよび任意成分を約240〜約300℃の、具体的には約250〜約280℃の温度で溶融混合することによって調製できる。ここに記載のポリ(フェニレンエーテル)組成物の一部は砕けやすいものであり得るため、ポリ(フェニレンエーテル)混合プロセスの最終工程で使用されることが多いストランドペレタイザや水中ペレタイザは使用しない方が好適であり得る。代替方法として、サイズ修正ミルと連動したチルドロールフレーカーが使用できる。別の方法として、ステンレスベルトクーラーおよびチョッパ、またはチルドローラを用いて小球を製造できる。
【0045】
該方法は、ポリ(フェニレンエーテル)組成物をエチレン性不飽和を含むゴムと溶融混合するステップを備える。ここでの「溶融混合」では、溶媒がない状態およびゴムが融解する条件下での混合が必要である。従って、溶融混合は、Wrightの米国特許第4,283,503号、Irvinの同第4,388,444号およびHinselmannらの同第4,436,870号に記載されているものを含む溶液混合方法とは区別される。
【0046】
エチレン性不飽和を含むゴムは、天然ゴム、合成ゴムおよびこれらの組み合わせから選択できる。一部の実施形態では、エチレン性不飽和を含むゴムは、天然ポリイソプレン(天然ゴム)、合成ポリイソプレン、スチレン‐ブタジエンランダムコポリマー(SBR)、ポリブタジエン、エチレン−プロピレンランダムコポリマー(EPMまたはEPR)、エチレン−プロピレン−ジエンモノマーランダムコポリマー(EPDM)、イソブチレン−イソプレンランダムコポリマー(ブチルゴム、IIR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル−ブタジエンランダムコポリマー(ニトリルゴム、NBR)およびこれらの組み合わせから構成される群から選択される。
【0047】
一部の実施形態では、ポリ(フェニレンエーテル)組成物約5〜約40質量部をエチレン性不飽和を含むゴム100質量部と溶融混合する。この範囲内で、ポリ(フェニレンエーテル)組成物量は、エチレン性不飽和を含むゴム100質量部に対して約10〜約30質量部であってもよい。
【0048】
上記のように、溶融混合は、溶媒がない状態およびゴムが融解する条件下で行われる。一部の実施形態では、溶融混合は、約100〜約170℃の温度で、具体的には約140〜約165℃の温度で、より具体的には約150〜約165℃の温度で行われる。一部の実施形態では、溶融混合は、合計時間15分以下で行われる。一部の実施形態では、溶融混合では、ゴムおよびポリ(フェニレンエーテル)組成物を押出機に1回または2回通す。ゴムとポリ(フェニレンエーテル)組成物との溶融混合に適切な他の装置としては、内部ミキサー(BanburyミキサーおよびBrabender内部ミキサーを含む)、ピン押出機などが挙げられる。
【0049】
本方法の1つの利点は、粉塵爆発の危険をもたらす微粒子ポリ(フェニレンエーテル)パウダーの取り扱いを回避しながら、ポリ(フェニレンエーテル)のゴム中での分散が容易になることである。このように、微粒子ポリ(フェニレンエーテル)パウダーの取り扱いを回避するために、平均粒径が約37μm(400メッシュ篩に相当)〜約2mm(10メッシュ篩に相当)のポリ(フェニレンエーテル)組成物を用いてゴムと溶融混合できる。
【0050】
一部の実施形態では、未硬化ゴム組成物または硬化ゴム組成物の分散相の平均粒径は35μm未満であり、具体的には10μm以下であり、より具体的には5μm以下であり、さらにより具体的には1μm以下である。このように、本方法を利用して、ポリ(フェニレンエーテル)組成物を粒径が少なくとも約37μmの粒子状でゴムに添加でき、これによって、粉塵爆発の危険を回避しながら、ポリ(フェニレンエーテル)−含有分散相の粒径が1μm以下のオーダーのゴム組成物を形成できる。
【0051】
ポリ(フェニレンエーテル)組成物はゴム混合条件下で融解しているので、ゴム混合条件下で固形である対応するポリ(フェニレンエーテル)組成物よりはるかに容易に分散する。例えば、一部の実施形態では、ゴムとの混合前のポリ(フェニレンエーテル)組成物は第1の平均粒径を有し、混合後の分散相は第2の平均粒径を有し、第1の平均粒径と第2の平均粒径との比は、少なくとも10であり、具体的には少なくとも30であり、より具体的には少なくとも100である。
【0052】
一部の実施形態では、未硬化ゴム組成物または硬化ゴム組成物の分散相は、組成的には実質的に均一(すなわち、実質的に均質)である。一部の実施形態では、未硬化ゴム組成物または硬化ゴム組成物の分散相は架橋されない。
【0053】
未硬化および硬化ゴム組成物はさらに、例えば、活性剤、抑制剤、樹脂(粘着付与樹脂を含む)、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、ワックス、オゾン劣化防止剤、脱ブロック剤、顔料、素練り促進剤(ペンタクロロチオフェノールおよびジベンズアミドジフェニルジスルフィドなど)など、およびこれらの混合物などの添加剤の1つまたは複数を任意に含んでいてもよい。
【0054】
同様に、未硬化および硬化ゴム組成物はさらに、カーボンブラック、沈降シリカ、ヒュームドシリカ、カオリン、セッコウ、二酸化チタン、ベントナイト、ケイ酸塩など、およびこれらの組み合わせなどの補強およびまたは非補強充填剤を任意に含んでいてもよい。
【0055】
非常に特定の実施形態では、ゴム組成物の形成方法は、エチレン性不飽和を含むゴム100質量部と、ガラス転移温度が約40〜約140℃であって、ガラス転移温度が約170〜約220℃のポリ(フェニレンエーテル)と、軽度抽出溶媒和物(MES)オイル、処理留出物芳香族抽出物(TDAE)オイル、残留芳香族抽出物(RAE)オイルおよびこれらの組み合わせから構成される群から選択されたオイルと、を含むポリ(フェニレンエーテル)組成物約5〜約40質量部と、を溶融混合して、エチレン性不飽和を含む前記ゴムと前記オイルとを含む連続相と、前記ポリ(フェニレンエーテル)を含む分散相と、を含む未硬化ゴム組成物を形成するステップと、前記未硬化ゴム組成物を硬化させて、動的機械分析による第二ヒステリシスピーク温度が約160〜約220℃の硬化ゴム組成物を形成するステップと、を備える。約40〜約140℃の範囲内で、該ガラス転移温度は、約60〜約130℃であってもよく、具体的には約80〜約120℃であってもよい。約160〜約220℃の範囲内で、第二ヒステリシスピーク温度は、約170〜約215℃であってもよく、具体的には約180〜約215℃であってもよく、より具体的には約190〜約215℃であってもよく、さらにより具体的には約200〜約215℃であってもよい。
【0056】
一実施形態は、ゴムを含む連続相と、ポリ(フェニレンエーテル)を含む分散相と、を含む硬化ゴム組成物であって、前記組成物は、エチレン性不飽和を含むゴムと、ガラス転移温度が約40〜約140℃であって、ポリ(フェニレンエーテル)とオイルを含むポリ(フェニレンエーテル)組成物と、を溶融混合して、エチレン性不飽和を含む前記ゴムと前記オイルとを含む連続相と、前記ポリ(フェニレンエーテル)を含む分散相と、を含む未硬化ゴム組成物を形成するステップと、前記未硬化ゴム組成物を硬化させて前記硬化ゴム組成物を形成するステップと、を備える方法で調製され、前記ゴム組成物の動的機械分析による第二ヒステリシスピーク温度は約160〜約220℃であり、ASTM D624−00(2012)に準拠し温度23℃で求めた前記ゴム組成物のグレーブス引裂強度は、前記ゴムと前記ポリ(フェニレンエーテル)組成物を溶融混合せずに、前記ポリ(フェニレンエーテル)と前記オイルとを前記ゴムに別々に添加するステップを備える方法で調製された対応する組成物のグレーブス引裂強度より少なくとも10%大きい。約40〜約140℃の範囲内で、該ガラス転移温度は約60〜約130℃であってもよく、具体的には約80〜約120℃であってもよい。約160〜約220℃の範囲内で、第二ヒステリシスピーク温度は、約170〜約215℃であってもよく、具体的には約180〜約215℃であってもよく、より具体的には約190〜約215℃であってもよく、さらにより具体的には約200〜約215℃であってもよい。一部の実施形態では、グレーブス引裂強度は、ポリ(フェニレンエーテル)とオイルをゴムに別々に添加するステップを備える方法で調製された対応する組成物のグレーブス引裂強度より約10〜約20%大きい。硬化ゴムサンプルが機械回転方向とそれに直角な方向を有する範囲で、向上したグレーブス引裂強度は、機械回転方向、それに直角な方向あるいはこれらの両方向に現れ得る。
【0057】
一実施形態は、ここに記載の硬化ゴム組成物のいずれかを含む自動車用タイヤである。一部の実施形態では、該硬化ゴム組成物は、自動車用タイヤのトレッドに含まれる。
【0058】
一実施形態は、ポリ(フェニレンエーテル)約50〜約95質量%と、軽度抽出溶媒和物(MES)オイル、留出物芳香族抽出物(DAE)オイル、処理留出物芳香族抽出物(TDAE)オイル、残留芳香族抽出物(RAE)オイル、処理残留芳香族抽出物(TRAE)オイル、特別な残留芳香族抽出物(SRAE)オイル、ナフテン系オイル、重ナフテン系オイルおよびこれらの組み合わせから構成される群から選択されたゴムプロセスオイル約5〜約50質量%と、を含むポリ(フェニレンエーテル)組成物である。
【0059】
本発明は少なくとも以下の実施形態を含む。
【0060】
実施形態1:エチレン性不飽和を含むゴムと、ガラス転移温度が約40〜約140℃であって、ポリ(フェニレンエーテル)とオイルを含むポリ(フェニレンエーテル)組成物と、を溶融混合して、エチレン性不飽和を含む前記ゴムと前記オイルとを含む連続相と、前記ポリ(フェニレンエーテル)を含む分散相と、を含む未硬化ゴム組成物を形成するステップと、前記未硬化ゴム組成物を硬化させて、動的機械分析による第二ヒステリシスピーク温度が約160〜約220℃の硬化ゴム組成物を形成するステップと、を備えるゴム組成物の形成方法。
【0061】
実施形態2:前記ポリ(フェニレンエーテル)のガラス転移温度は約170〜約220℃である実施形態1に記載の方法。
【0062】
実施形態3:前記溶融混合は、ポリ(フェニレンエーテル)組成物約5〜約40質量部と、エチレン性不飽和を含むゴム100質量部と、を溶融混合するステップを備える実施形態1または実施形態2に記載の方法。
【0063】
実施形態4:前記溶融混合は、約100〜約170℃の温度で混合するステップを備える実施形態1乃至実施形態3のいずれかに記載の方法。
【0064】
実施形態5:エチレン性不飽和を含む前記ゴムは、天然ゴム、合成ゴムおよびこれらの組み合わせから構成される群から選択される実施形態1乃至実施形態4のいずれかに記載の方法。
【0065】
実施形態6:エチレン性不飽和を含む前記ゴムは、天然ポリイソプレン、合成ポリイソプレン、スチレン‐ブタジエンランダムコポリマー、ポリブタジエン、エチレン−プロピレンランダムコポリマー、エチレン−プロピレン−ジエンモノマーランダムコポリマー、イソブチレン−イソプレンランダムコポリマー、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンランダムコポリマーおよびこれらの組み合わせから構成される群から選択される実施形態1乃至実施形態5のいずれかに記載の方法。
【0066】
実施形態7:前記オイルは、ゴムプロセスオイル、ポリオレフィン用伸展油、ゴム加工ワックス、一気圧および25〜120℃の範囲の少なくとも一温度で液体である有機リン酸エステル難燃剤、およびこれらの組み合わせから構成される群から選択される実施形態1乃至実施形態6のいずれかに記載の方法。
【0067】
実施形態8:前記オイルはゴムプロセスオイルである実施形態1乃至実施形態7のいずれかに記載の方法。
【0068】
実施形態9:前記オイルは、軽度抽出溶媒和物(MES)オイル、処理留出物芳香族抽出物(TDAE)オイルおよびこれらの組み合わせから構成される群から選択される実施形態1乃至実施形態8のいずれかに記載の方法。
【0069】
実施形態10:前記オイルは、処理留出物芳香族抽出物(TDAE)オイルを含む実施形態1乃至実施形態9のいずれかに記載の方法。
【0070】
実施形態11:前記ポリ(フェニレンエーテル)組成物の平均粒径は、エチレン性不飽和を含む前記ゴムとの前記溶融混合前で、約37μm〜約2mmである実施形態1乃至実施形態10のいずれかに記載の方法。
【0071】
実施形態12:前記ポリ(フェニレンエーテル)組成物は第1の平均粒径を有し、前記分散相は第2の平均粒径を有し、前記第1の平均粒径と前記第2の平均粒径との比は少なくとも10である実施形態1乃至実施形態11のいずれかに記載の方法。
【0072】
実施形態13:前記ポリ(フェニレンエーテル)組成物は、その質量に対して、ポリ(アルケニル芳香族)、ゴム変性ポリ(アルケニル芳香族)、アルケニル芳香族モノマーと共役ジエンとの未水素化ブロックコポリマー、アルケニル芳香族モノマーと共役ジエンとの水素化ブロックコポリマーおよびこれらの組み合わせから構成される群から選択されたスチレン系ポリマー約5〜約50質量%をさらに含む実施形態1乃至実施形態12のいずれかに記載の方法。
【0073】
実施形態14:前記溶融混合は、エチレン性不飽和を含む前記ゴム100質量部と、ガラス転移温度が約170〜約220℃のポリ(フェニレンエーテル)を含む前記ポリ(フェニレンエーテル)組成物約5〜約40質量部と、を溶融混合するステップを備え、前記オイルは、軽度抽出溶媒和物(MES)オイル、処理留出物芳香族抽出物(TDAE)オイル、残留芳香族抽出物(RAE)オイルおよびこれらの組み合わせから構成される群から選択される実施形態1に記載の方法。
【0074】
実施形態14a:エチレン性不飽和を含むゴム100質量部と、ガラス転移温度が約40〜約140℃であって、ガラス転移温度が約170〜約220℃のポリ(フェニレンエーテル)と、軽度抽出溶媒和物(MES)オイル、処理留出物芳香族抽出物(TDAE)オイル、残留芳香族抽出物(RAE)オイルおよびこれらの組み合わせから構成される群から選択されたオイルと、を含むポリ(フェニレンエーテル)組成物約5〜約40質量部と、を溶融混合して、エチレン性不飽和を含む前記ゴムと前記オイルとを含む連続相と、前記ポリ(フェニレンエーテル)を含む分散相と、を含む未硬化ゴム組成物を形成するステップと、前記未硬化ゴム組成物を硬化させて、動的機械分析による第二ヒステリシスピーク温度が約160〜約220℃の硬化ゴム組成物を形成するステップと、を備えるゴム組成物の形成方法。
【0075】
実施形態15:実施形態1乃至実施形態14のいずれかに記載の方法で形成された硬化ゴム組成物。
【0076】
実施形態16:ゴムを含む連続相と、ポリ(フェニレンエーテル)を含む分散相と、を含む硬化ゴム組成物であって、エチレン性不飽和を含むゴムと、ガラス転移温度が約40〜約140℃であって、ポリ(フェニレンエーテル)とオイルを含むポリ(フェニレンエーテル)組成物と、を溶融混合して、エチレン性不飽和を含む前記ゴムと前記オイルとを含む連続相と、前記ポリ(フェニレンエーテル)を含む分散相と、を含む未硬化ゴム組成物を形成するステップと、前記未硬化ゴム組成物を硬化させて前記硬化ゴム組成物を形成するステップと、を備える方法で調製され;動的機械分析による第二ヒステリシスピーク温度が約160〜約220℃であり;ASTM D624−00(2012)に準拠し温度23℃で求めたグレーブス引裂強度が、前記ゴムと前記ポリ(フェニレンエーテル)組成物を溶融混合せずに、前記ポリ(フェニレンエーテル)と前記オイルとを前記ゴムに別々に添加するステップを備える方法で調製された対応する組成物のグレーブス引裂強度より少なくとも10%大きい硬化ゴム組成物。
【0077】
実施形態17:実施形態16に記載の硬化ゴム組成物を含むタイヤ。
【0078】
実施形態18:トレッドに前記硬化ゴム組成物を含む実施形態17に記載のタイヤ。
【0079】
実施形態19:ポリ(フェニレンエーテル)約50〜約95質量%と、軽度抽出溶媒和物(MES)オイル、留出物芳香族抽出物(DAE)オイル、処理留出物芳香族抽出物(TDAE)オイル、残留芳香族抽出物(RAE)オイル、処理残留芳香族抽出物(TRAE)オイル、特別な残留芳香族抽出物(SRAE)オイル、ナフテン系オイル、重ナフテン系オイルおよびこれらの組み合わせから構成される群から選択されたゴムプロセスオイル約5〜約50質量%と、を含むポリ(フェニレンエーテル)組成物。
【0080】
以下の非限定的実施例によって、本発明をさらに例証する。
【0081】
実施例1〜27、比較実施例1〜35
これらの実施例によって、ポリ(フェニレンエーテル)単独のガラス転移温度に対して、得られたブレンドのガラス転移温度を低下させられるオイルを有するポリ(フェニレンエーテル)組成物の調製について例証する。
【0082】
ポリ(フェニレンエーテル)組成物の調製に使用した成分を表1に示す。
【表1】
【0083】
組成を表2に示す。プロセスオイルを含む全てのポリ(フェニレンエーテル)組成物を二軸押出機で混合した。バレル温度を250〜280℃の範囲で変えた。ポリ(フェニレンエーテル)とポリスチレン(使用した場合)は供給口で供給し、液体成分は、下流側バレルの液供給口で供給した。組成物の合計質量の20質量%以下のオイルは該液供給口から供給した。オイル含有量が20質量%を超える場合、残りのオイルは、Henschelミキサー内でポリ(フェニレンエーテル)と事前混合し、得られた事前ブレンドを押出機の供給口から添加した。スループット率を約9〜18kg/h(20〜40ポンド/h)とした。その後、Pallman Pulverizers社製のPallman PPL18ターボミルを用いて各押出品を製粉した。その後、得られたパウダーをふるいにかけた。特に明記されない限り、ASTM30メッシュ篩(公称600μm開口)を用いた。
【0084】
特に指定のない限り、ガラス転移温度は、ASTM D3418−08に準拠し、TA Instruments社のQ2000示差走査熱量計を温度勾配5℃/minで操作する示差走査熱量測定法で求めた。ポリ(フェニレンエーテル)とホモポリスチレンの混和性ブレンドである比較実施例7〜13のガラス転移温度は、フォックス式を用いて算出した:
【数1】
式中、Tはブレンドの算出されたガラス転移温度であり、wPPEはポリ(フェニレンエーテル)の質量分率であり、wPSはポリスチレンの質量分率であり、Tg,PPEはポリ(フェニレンエーテル)のガラス転移温度(213℃)であり、Tg,PSはポリスチレンのガラス転移温度(105℃)である。比較実施例13(ポリスチレンだけ)のガラス転移温度105℃は、供給者の技術データシートから得たものであり、示差走査熱量測定法で検証した。
【0085】
表2のガラス転移温度は、ゴムプロセスオイル(例えば、TDAE、MES、RAE)または難燃オイル(例えば、RDP、BPADP)をポリ(フェニレンエーテル)組成物に添加することによって、ガラス転移温度が約140℃以下のオイル含有ポリ(フェニレンエーテル)組成物が生成できることを実証している。こうしたオイル含有ポリ(フェニレンエーテル)組成物は、従来のゴム混合条件下で融解しているため、ガラス転移温度が実質的に140℃超のポリ(フェニレンエーテル)組成物より、より容易にまたより微細にゴム組成物中に分散するであろう。ガラス転移温度が高いとゴム中の脂肪族不飽和基が架橋し、未硬化ゴムブレンドの形成には適切でないことから、ガラス転移温度が約140℃以下であることは重要である。また、これらの結果は、ポリ(フェニレンエーテル)と、ポリ(フェニレンエーテル)とアタクチックポリスチレンのブレンドとの質量比が少なくとも60:40であると、ガラス転移温度が少なくとも約160℃になることを示している。そのように、ガラス転移温度が約140℃以下のオイル含有ポリ(フェニレンエーテル)組成物は、ゴム組成物中に良好に分散して取り込まれ、その中のオイルは、分散したポリ(フェニレンエーテル)相から連続ゴム相に自然に移動し、該ポリ(フェニレンエーテル)組成物が質量比で60:40〜100:0のポリ(フェニレンエーテル)とアタクチックポリスチレンを含んでいれば、得られたポリ(フェニレンエーテル)分散相のガラス転移温度は、少なくとも約160℃になるであろう。
【表2】
【0086】
実施例28〜30、比較実施例36〜38
これらの実施例では、ゴム組成物(その一部は該ポリ(フェニレンエーテル)組成物を含む)の調製および試験を例証する。
【0087】
ゴム組成物の調製に使用した成分を表3に示す。表3に示すポリ(フェニレンエーテル)組成物は、上記の実施例1〜27および比較実施例1〜35で記載したように、二軸押出機で混合して調製した。
【表3】
【0088】
加熱ジャケットと冷却ラインが装備された380mLBrabender混合ボウルを用いて、非生成混合物(硬化剤のない未硬化ゴム組成物)を調製した。初期Brabender温度を100℃に設定し、混合ロータを80rpmに設定した。スチレン‐ブタジエンランダムコポリマー(SBR)を混合チャンバに投入し、その投入が完了した時刻を時間0とした。ミキサー上のラムを閉じ、ゴムを軟化するために混合して1分後、熱可塑性サンプルおよびまたはカーボンブラックを約1〜2分かけて混合ボウルに添加した。ミキサー上のラムを閉じ、温度が160℃に達するまで80rpmで混合物を混合した。この時点で、ミキサーの回転数を落とし、混合サイクル12分の残りの時間、温度を170℃未満に維持した。12分時点で、添加剤(酸化亜鉛、ステアリン酸および6PPD)を添加した。ミキサーラムを再び閉じ、15分までゴムブレンドを混合した。この時点でミキサーを停止し、ゴムブレンドをミキサーから取り出して、温度30℃に設定した2ロールミル内に入れた。ゴムブレンドを結合させて切断し、6回折り重ねた後、シート状に伸ばして冷却した。
【0089】
前述の非生成混合物の調製シートを取り出し温度30℃に設定した2ロールミル内に戻して、生成混合物(硬化剤を含む)を調製した。非生成混合物の小片内に硬化剤を包み、ミルへの添加に便利なパッケージ内に硬化剤(硫黄とCBS)を折り畳んで密閉した。硬化パッケージを添加後ゴムを結合させ、その後ロールを切断し初期サイズの1/3に折り畳んで、2ロールミル内に戻した。これを12回行い硬化剤を完全に混合して、このサイクルを終了した。すべての製粉ステップにおいて、ゴムの温度を100℃未満に維持した。混合終了後、後段の硬化用に1/16シートを調製した。
【0090】
電気的に加熱した60.96cm(24インチ)Carverプレス機で硬化させた。金型はすべて、ASTM仕様による適切な寸法と許容差に準拠したクロムめっきステンレス鋼であった。SBR、BRおよびNRのブレンドから成るサンプルについては、硬化温度を160℃とし、硬化時間は部品厚みに応じて変えた。ASTM D412、D1054およびD623試験用のものなどの厚いサンプルの硬化時間は25分とし、ASTM D3182試験用のものなどの薄いサンプルの硬化時間は22分とした。主にNRのブレンドから成るサンプルについては、硬化温度を160℃とし、硬化時間は部品厚みに応じて変えた。ASTM D412、D1054およびD623試験用のものなどの厚いサンプルの硬化時間は20分とし、ASTM D3182試験用のものなどの薄いサンプルの硬化時間は17分とした。
【0091】
硬化特性は、ASTM D2084−07に準拠し、Ektron EKT−100H振動ディスクレオメータ(ODR)を用いて求めた。硬化させる最終のシート試験片から、大きさが約25mm×25mm×8mmの8〜10gのサンプルを切断した。このサンプルを事前加熱したODR試験装置に入れて30分間試験した。SBR、BRおよびNRを含むブレンドについては温度160℃で試験して、ASTM D2084−07に従って解釈される硬化プロファイルを得た。主にNRから成るサンプルについては、試験条件を150℃×30分とした。報告値はすべて、少なくとも3ODR試験片の平均値である。ODR硬化時間の単位は分であり、ODRトルクの単位はdNmである。
【0092】
ショアA硬度は、ASTM D2240−05(2010)に準拠し、6.3mm厚×44.6mm径の硬化試験片で測定した。
【0093】
引張特性は、ASTM D3182−07に準拠し、15.24cm×15.24cm×1.91cm(6インチ×6インチ×0.75インチ)の硬化シートから切断したダンベルサンプルで求めた。あるいは、引張特性は、ASTM D412−06ae2(R1試験片と手順を用いたDIN35 504の切断リング用の試験方法B)に準拠し、リングサンプルで測定した。引張強度と引張弾性率の単位はMPaである。引張伸び率の単位はパーセント(%)である。
【0094】
グレーブス引裂強度特性は、ASTM D624−00(2012)に準拠し温度23℃で求めた。サンプルは1mm厚のシートから打ち抜き、機械回転方向とそれに直角な方向の両方向で試験した(特別に明記された場合を除き、報告値は、これらの両方向の平均値である)。引裂強度の単位はN/mmである。
【0095】
ASTM D1054−02(2007)に準拠し、Digi反発弾性試験機(モデルfe01060)を用いて反発試験を行った。25℃および60℃でもサンプルを試験した。60℃試験用のサンプルは試験前に、60℃エアーオーブン内で24時間状態調節した。密度は、ASTM D792−08に準拠し、6.3mm厚×44.6mm径の硬化試験片で測定した。少なくとも5つのサンプルの平均値を報告値とした。反発値の単位はパーセント(%)である。
【0096】
ASTM D623−07に準拠し、Ektron EKT−2002GF Goodrichフレクソメータと17.8mm径×25mm厚の硬化サンプルを用いて発熱試験(HBU)を行った。チャンバ温度を100℃とし、サンプルを100℃×6時間事前加熱した。荷重:11kg、周波数:30サイクル/秒、合計試験時間:25分とした。定常状態に達した後の温度デルタを報告する。HBUデルタ温度の単位は℃である。HBU降下の単位はパーセント(%)である。
【0097】
貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E’’)およびタンデルタ(E’’/E’)の動的機械分析(DMA)特性は、引張試験に用いた硬化シートから切断した、2mm×8mm×14mm硬化ゴム片を用いて求めた。これらすべての試験では、QA Instruments社の動的機械試験機型式DMA Q800を用いた。引張モードでサンプルを試験した。温度範囲−80℃〜200℃または−80℃〜250℃および温度上昇率0.5℃/分で温度をスイープさせた。周波数10Hzおよび定ひずみモードで試験した。第二ヒステリシスピーク温度(℃)は、タンデルタ対温度曲線の目視検査により求めた。
【0098】
添加した熱可塑性プラスチックのガラス転移温度は、ゴム組成物に添加前、上記の実施例1〜27および比較実施例1〜35の文脈に記載の示差走査熱量測定法を用いて求めた。
【0099】
表4の結果は、カーボンブラックの一部を熱可塑性補強材で置換することによって、比較実施例37および実施例28〜30の60℃におけるタンデルタは、比較実施例36より低くなることを示している。60℃におけるタンデルタが低いことによって、該ゴムを含むタイヤの転がり抵抗が低減することが予測される。実施例28〜30はすべて、DMA曲線において、160℃超に第二ヒステリシスピークを有する。これらのサンプルのポリ(フェニレンエーテル)組成物出発材料のガラス転移温度は、得られたゴムのヒステリシスピーク温度とは異なる。これは、ポリ(フェニレンエーテル)組成物をゴムと混合している間に、ポリ(フェニレンエーテル)組成物から不飽和ゴム相に移動するプロセスオイルによるものである。全ての処方において、最終硬化ゴム中のオイル合計含有量は同量であることに留意のこと。理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、オイルがポリ(フェニレンエーテル)組成物に対し一時的な可塑剤として作用してより低温での混合が可能となるが、分散したポリ(フェニレンエーテル)含有相では、プロエスの間にオイルがなくなり、非生成混合物に添加されたポリ(フェニレンエーテル)組成物よりガラス転移温度が高い分散したポリ(フェニレンエーテル)含有相が硬化ゴム内に生成されるものと考える。良好に分散したポリ(フェニレンエーテル)含有相のガラス転移温度が上昇することによって、該オイル含有ポリ(フェニレンエーテル)組成物が組み込まれたゴム組成物の動的機械的特性が向上する。オイル含有ポリ(フェニレンエーテル)組成物が組み込まれた実施例28〜30の60℃におけるタンデルタは低減したが、これによって、転がり抵抗が低減することが予測される。実施例28〜30の−15℃におけるE’も低減したが、これによって、雪と氷に対するタイヤ性能が良好になることが予測され、また、120℃におけるタンデルタの低減は、タイヤの発熱の低減と、それに応じてタイヤ摩擦が低減することが予測される。このことは、実施例28〜30の発熱が比較実施例36〜38より低減したGoodrichフレクソメータの実際の結果でも見られる。
【表4】
【0100】
実施例31〜33、比較実施例39〜41
これらの実施例によって、オイル含有ポリ(フェニレンエーテル)組成物のゴム組成物への添加の利点をさらに例証する。実施例31〜33はすべて、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)とTDAE(PPE/TDAEブレンド)とのブレンドを用いている。実施例31では、PPE/TDAEブレンドを押出機に一度通して混合後粉砕し、30メッシュ(595μm開口)篩でふるいにかけた。実施例33では、PPE/TDAEブレンドを80メッシュ(177μm開口)篩でふるいにかけた点以外は、同じ手順に従った。実施例32では、PPE/TDAEブレンドを押出機に二度通して混合後粉砕し、30メッシュ(595μm開口)篩でふるいにかけた。実施例31〜33のすべてにおいて、引裂強度と反発力が向上しており、物性は、PPE/TDAEブレンドのない比較実施例39および41に対して、転がり抵抗の低減と発熱の低減とを予測させるものであった。オイルのないポリ(フェニレンエーテル)/ポリスチレンブレンドが組み込まれた比較実施例40の第二ヒステリシスピークは約130℃であり、これは、ゴムに添加されたポリ(フェニレンエーテル)/ポリスチレンブレンドの当初のガラス転移温度に相当することに留意のこと。対照的に、実施例31〜33の第二ヒステリシスピークは185℃以上であり、ゴムに組み込まれる前のPPE/TDAEブレンドのガラス転移温度85℃よりはるかに高い。
【表5】
【0101】
実施例34〜35、比較実施例42〜45
これらの実施例によって、オイル含有ポリ(フェニレンエーテル)組成物のゴム組成物への添加の利点をさらに例証する。ここで、該利点は、オイル含有ポリ(フェニレンエーテル)組成物の2つの異なる投入量において実証される。このグループにおける比較実施例および発明的実施例では共に、シリカ補強材の代わりに、容積基準で1:1の熱可塑性補強材を用いている。比較実施例42は、熱可塑性プラスチックを含まない対照サンプルである。比較実施例43では、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロックコポリマーだけの限定された有害な影響が見られる。比較実施例44および45では、5質量%および10質量%のシリカのポリ(フェニレンエーテル)/ポリスチレンブレンドによる置換を例証する。実施例34および35では、5質量%および10質量%のシリカのオイル含有ポリ(フェニレンエーテル)組成物による置換を例証する。実験グループ全体で、オイルの処方合計量が一定になるように追加の添加オイルが調整されていることに留意のこと。
【0102】
ブロックコポリマーだけを含む比較実施例43では、ブロックコポリマーを含まない比較実施例42に対して、引裂強度が低下し、60℃、120℃および130℃におけるタンデルタが上昇し、発熱量が増加する。対照的に、2つの濃度のオイル含有ポリ(フェニレンエーテル)組成物を有する実施例34および35では、比較実施例42に対して、60℃、120℃および130℃におけるタンデルタが好適に低減し、発熱量も低減する。発明的実施例34および35に対し、ポリ(フェニレンエーテル)/ポリスチレンブレンドが組み込まれた比較実施例44および45では、120℃および130℃におけるタンデルタが上昇しており、該ゴムを含む自動車用タイヤの発熱量と摩耗が不要に上昇することが予測される。
【表6】
【0103】
実施例36〜39、比較実施例46〜48
これらの実施例によって、オイル含有ポリ(フェニレンエーテル)組成物のゴム組成物への添加の利点をさらに例証する。
【0104】
オイル加熱式のBanbury BR実験室内部ミキサー(バッチ量:1600mL)で混合した。
【0105】
ホットオイル部が装備された、15.24cm(6インチ)径×33.02cm(13インチ)長のクロムローラを有するReliable Rubber and Plastic Machinery社の2ロールミルで製粉した。製粉ロール温度は90℃とした。ロール速度は約3〜8cm/秒とした。
【0106】
非生成混合物(硬化剤なし)の調製のために、ミキサー温度:70℃、ロータ回転数:80rpm、ラム圧力:6バールに設定した。ロータを回転させてラムを開き、すべてのゴム成分をミキサーに添加してラムを閉じた。混合物を1分間混合後ラムを開いて、充填剤の半分とすべてのバッチ化学物質(ステアリン酸、酸化亜鉛、プロセスオイル、カーボンブラック)を添加し、ラムを閉じた。混合を1分間継続後ラムを開き、充填剤の残りを添加してラムを閉じた。さらに1分間混合後ラムを開いて、ラムとシュートの埃を払い落とし、ラムを閉じた。所望の温度(主にNR処方では135〜140℃、SBRまたはSBR/BR/NR「トリブレンド」処方では150〜160℃)に達するまで混合物を混合した。必要に応じてロータ回転数を上下に調節して、所望の合計混合時間(NR処方では7分、SBRまたはトリブレンド処方では11分)に達するまで所望の混合温度を維持した。得られた非生成混合物を2ロールミルに直接移した。
【0107】
2ロールミルでは、ギャップを3.175mm(0.125インチ)に設定した。非生成混合物を結合させた。回転バンクを形成後、該バンクを左側から切断した。回転バンクを再度形成後、該バンクを右側から切断した。8〜10秒後、ロールからバッチを切り離して秤量した。質量損失が1%超のバッチは廃棄した。廃棄しない場合は、シートをミルに戻し、三つ折りにして合計5回ミルを通して、粒子を同一方向に保持した。シートを3.8cm(1.5インチ)片に切断し、硬化パッケージの調製(0.76mm(0.03インチ)ギャップを用いて)用に1片を取っておいた。
【0108】
生成混合物(硬化剤を含む)の調製のために、混合温度:50℃、ロータ速度:45〜50rpm、ラム圧力:6バールに設定した。ロータを回転させてラムを開き、非生成混合物片を添加し、硬化パッケージ片を添加した。混合物を約3.25分間混合してミキサーから取り出した。
【0109】
ミキサーから取り出した生成混合物を、ギャップを3.175mm(0.125インチ)に設定した2ロールミルに添加した。回転バンクを形成後、該バンクを左側から切断した。回転バンクを再度形成後、該バンクを右側から切断した。8〜10秒後、ロールからバッチを切り離して秤量した。質量損失が1%超のバッチは廃棄した。廃棄しない場合は、シートをミルに戻して三つ折りにし、ギャップが4.1mm(0.16インチ)のミルを3度通した。4.1mm(0.16インチ)ギャップは、ODRとリングディスク用サンプルの調製に使用した。3.81mm(0.15インチ)ギャップは、発熱試験用サンプルの調製に使用した。1.27mm(0.05インチ)ギャップは、引張特性試験用サンプルの調製に使用した。
【0110】
上記の実施例28〜30で記載したようにサンプルを硬化させた。
【0111】
表7の「オイルなし添加熱可塑性プラスチックのTg(℃)」は、それにはオイルが含まれていない点を除いて、オイル含有ポリ(フェニレンエーテル)組成物と同じである比較組成物のガラス転移温度である。
【0112】
組成物と特性を表7に示す。比較実施例47および48は、たとえオイル含有ポリ(フェニレンエーテル)組成物が組み込まれていても、第二ヒステリシスピーク温度が160℃未満であるため、比較例としてマークされていることに留意のこと。熱可塑性添加剤を含まない比較実施例46に対して、オイル含有ポリ(フェニレンエーテル)組成物が組み込まれた実施例36および37では、60℃、120℃および130℃におけるタンデルタが低減しているが、0℃では低減していない。熱可塑性添加剤を含まない比較実施例46に対して、オイル含有ポリ(フェニレンエーテル)組成物とブロックコポリマーとが組み込まれた実施例38および39では、23℃および70℃における反発力が向上している(大きい)。
【表7】
【0113】
実施例40〜45、比較実施例49〜51
これらの実施例では、ゴムがスチレン‐ブタジエンランダムコポリマー、ポリブタジエンおよび天然ゴムのブレンドではなく、天然ゴムであり、主要な充填剤がシリカではなく、カーボンブラックである組成物に、オイル含有ポリ(フェニレンエーテル)組成物を添加する利点を例証する。また、これらの実施例では、製粉ステップを変えた場合の影響も調査する。
【0114】
生成混合物を調製後およびその硬化前に、製粉ステップ数を変化させた(0、5または10回)点を除いて、上記の実施例36〜39に記載のようにサンプルを調製した。
【0115】
表8における実施例40〜45の「添加した熱可塑性プラスチックのTg(℃)」および「第二ヒステリシスピーク温度(℃)」の結果は、添加した熱可塑性プラスチックのガラス転移温度を低減させるために使用したオイルが、プロセスの間に熱可塑性プラスチックからゴム組成物に移動し、ゴム組成物中の熱可塑性プラスチックのガラス転移温度が、プロセス後に160℃を超えることを示している。
【0116】
製粉ステップにおける製粉繰り返し(0回、5回または10回)は、材料物性に大きく影響しないように思われた。これらの結果は、生成混合物の調製の間に、ポリ(フェニレンエーテル)がゴム組成物中に良好に分散することを示している。それはまた、この方法が製粉手順の変化には影響されないことも示している。
【表8】
【0117】
実施例46〜51、比較実施例52〜54
これらの実施例では、オイル含有ポリ(フェニレンエーテル)組成物のカーボンブラック充填天然ゴム組成物への添加の利点をさらに例証する。
【0118】
実施例36〜39で記載したようにサンプルを調製した。
【0119】
表9における実施例46〜51の「添加した熱可塑性プラスチックのTg(℃)」および「第二ヒステリシスピーク温度(℃)」の結果は、添加した熱可塑性プラスチックのガラス転移温度を低減させるために使用したオイルが、プロセスの間に熱可塑性プラスチックからゴム組成物に移動し、ゴム組成物中の熱可塑性プラスチックのガラス転移温度が、該プロセス後に160℃を超えることを示している。
【0120】
実施例46および比較実施例53、54はすべて、全体的に同じ組成を有するが、組成物の組み合わせ方法が異なる。実施例46のポリ(フェニレンエーテル)とTDAEオイルは、ゴム組成物に添加前に互いに溶融混合されているが、比較実施例53のポリ(フェニレンエーテル)とTDAEオイルは、ゴム組成物に別々に添加されており、比較実施例54のポリ(フェニレンエーテル)とTDAEオイルは、Henschelミキサーで「事前混合」されて密閉容器内に24時間保存後、ゴム組成物に添加されている。これらの3つのサンプルの結果は、発明的実施例46の引裂強度と引張強度は、比較実施例53、54のそれらより向上している(高い)ことを示している。これらの結果は、ポリ(フェニレンエーテル)とオイルとを事前混合してガラス転移温度が約40〜約140℃のポリ(フェニレンエーテル)組成物を形成することの重要性を実証している。オイルとポリ(フェニレンエーテル)をゴム組成物に別々に添加する(比較実施例54におけるように)と、あるいは、「乾燥混合」してゴム組成物に添加する(比較実施例53におけるように)と、ポリ(フェニレンエーテル)のガラス転移温度は十分に低減しないため、ゴムとの混合時、ポリ(フェニレンエーテル)は固体のままである。言いかえれば、ポリ(フェニレンエーテル)とゴムとの真の溶融混合を実現し、次に、ゴム内でのポリ(フェニレンエーテル)の分散を実質的に向上させるためには、ゴムへの添加前にオイルとポリ(フェニレンエーテル)を均密に混合することが重要である。
【0121】
ポリ(フェニレンエーテル)の分散の向上は、さらに図2図8によっても実証されている(図中、各スケールバーは10μmである)。これらの図は、トルエン中で5分間エッチングしてポリ(フェニレンエーテル)粒子を溶解させたサンプル表面の走査型電子顕微鏡写真である。得られたエッチング表面におけるクレータは、それまでにポリ(フェニレンエーテル)粒子に占有されていた空間に対応する。図2の顕微鏡写真は、ポリ(フェニレンエーテル)組成物が何ら添加されていないゴム組成物である比較実施例52に対応する。予想通り、表面にクレータは見当たらない。図3の顕微鏡写真は、ポリ(フェニレンエーテル)とオイルが別々に添加されたゴム組成物である比較実施例53に対応する。その顕微鏡写真は、直径が実質的に10μm超のポリ(フェニレンエーテル)粒子が比較実施例53組成物中に存在することを示している。図4図8の顕微鏡写真は、それぞれがオイル含有ポリ(フェニレンエーテル)組成物で調製された実施例46〜50に対応する。これらの顕微鏡写真は、実施例46〜50組成物中には、1μm以下の−一部の場合には実質的に小さい−ポリ(フェニレンエーテル)粒子が存在することを示している。まとめると、これらの顕微鏡写真は、オイル含有ポリ(フェニレンエーテル)組成物を利用する本方法では、ポリ(フェニレンエーテル)だけを利用する先行技術プロセスに比べて、ポリ(フェニレンエーテル)粒子がゴム中にはるかに微細に分散することを実証している。
【表9】
【0122】
実施例52〜54、比較実施例55〜57
これらの実施例では、オイル含有ポリ(フェニレンエーテル)組成物のカーボンブラック充填天然ゴム組成物への添加の利点をさらに例証する。
【0123】
実施例36〜39で記載したようにサンプルを調製した。
【0124】
表10における実施例52〜54の「添加した熱可塑性プラスチックのTg(℃)」および「第二ヒステリシスピーク温度(℃)」の結果は、添加した熱可塑性プラスチックのガラス転移温度を低減させるために使用したオイルが、プロセスの間に熱可塑性プラスチックからゴム組成物に移動し、ゴム組成物中の熱可塑性プラスチックのガラス転移温度が、該プロセス後に160℃を超えることを示している。
【0125】
それぞれガラス転移温度が約135℃のポリ(フェニレンエーテル)オリゴマーを含む比較実施例56および57によって、ガラス転移温度が低い熱可塑性プラスチックの使用は、本発明のオイル含有ポリ(フェニレンエーテル)組成物の利点を得るには不十分であることが例証されている。具体的には、ポリ(フェニレンエーテル)オリゴマーを含む比較実施例56および57の60℃および120℃におけるタンデルタは、熱可塑性添加剤を含まない比較実施例55コントロールのそれらより高い。対照的に、オイル含有ポリ(フェニレンエーテル)組成物が組み込まれた実施例52〜54それぞれの60℃におけるタンデルタは、比較実施例55コントロールのそれより低い。実施例52〜54の120℃におけるタンデルタは、これらのサンプル中の比較的高いSIS含有量によって不必要に上昇したものと考えられる。
【表10】
【0126】
実施例55〜57、比較実施例58〜61
これらの実施例によって、ゴム種類が天然ゴムから天然ゴムとポリブタジエンとのブレンドに、あるいは天然ゴム、ポリブタジエンおよびスチレン‐ブタジエンコポリマーのブレンドに変更されるカーボンブラック充填ゴム組成物への、オイル含有ポリ(フェニレンエーテル)組成物の添加の利点をさらに例証する。
【0127】
硬化時間を15分とし硬化温度を150℃とした点を除き、実施例36〜39で記載したようにサンプルを調製した。
【0128】
表11における実施例55〜57の「添加した熱可塑性プラスチックのTg(℃)」および「第二ヒステリシスピーク温度(℃)」の結果は、添加した熱可塑性プラスチックのガラス転移温度を低減させるために使用したオイルが、プロセスの間に熱可塑性プラスチックからゴム組成物に移動し、ゴム組成物中の熱可塑性プラスチックのガラス転移温度が、該プロセス後に160℃を超えることを示している。これは、試験したゴム3種類のすべてで発生した。
【0129】
オイル含有ポリ(フェニレンエーテル)組成物で調製した実施例55〜57の0℃、60℃、120℃および130℃におけるタンデルタは、対応する比較実施例58〜60(0℃における実施例57を除いて)のそれらより低減していることにも留意のこと。
【表11】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8