(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6033435
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】天然物由来のフィロバシディウム抑制物質を含む抗菌用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/75 20060101AFI20161121BHJP
A61K 36/744 20060101ALI20161121BHJP
A61K 36/78 20060101ALI20161121BHJP
A61K 36/42 20060101ALI20161121BHJP
A61K 36/31 20060101ALI20161121BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20161121BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20161121BHJP
A61P 17/08 20060101ALI20161121BHJP
A61K 33/30 20060101ALI20161121BHJP
A61K 31/4412 20060101ALI20161121BHJP
A61K 31/4164 20060101ALI20161121BHJP
A61K 35/04 20060101ALI20161121BHJP
A61K 33/04 20060101ALI20161121BHJP
A61K 31/60 20060101ALI20161121BHJP
A61K 8/97 20060101ALI20161121BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20161121BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20161121BHJP
A61K 8/96 20060101ALI20161121BHJP
A61K 8/58 20060101ALI20161121BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20161121BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
A61K36/75
A61K36/744
A61K36/78
A61K36/42
A61K36/31
A61P31/04
A61P17/00
A61P17/08
A61K33/30
A61K31/4412
A61K31/4164
A61K35/04
A61K33/04
A61K31/60
A61K8/97
A61K8/49
A61K8/46
A61K8/96
A61K8/58
A61Q5/00
A61Q5/02
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-525316(P2015-525316)
(86)(22)【出願日】2013年5月6日
(65)【公表番号】特表2015-523411(P2015-523411A)
(43)【公表日】2015年8月13日
(86)【国際出願番号】KR2013003926
(87)【国際公開番号】WO2014021540
(87)【国際公開日】20140206
【審査請求日】2015年2月2日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0085259
(32)【優先日】2012年8月3日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512291064
【氏名又は名称】チュンアン ユニバーシティー インダストリー アカデミック コアポレイション ファウンデイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ウォン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク、サン ク
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヒ クク
【審査官】
平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−048514(JP,A)
【文献】
特開平03−176413(JP,A)
【文献】
特開平10−182346(JP,A)
【文献】
特開平04−005222(JP,A)
【文献】
特開昭61−238717(JP,A)
【文献】
特開昭64−038011(JP,A)
【文献】
特開2001−288047(JP,A)
【文献】
特開2000−007574(JP,A)
【文献】
特開2008−037764(JP,A)
【文献】
特開2006−124355(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/033422(WO,A1)
【文献】
中国特許出願公開第101716291(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第101342359(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第102038922(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第102210842(CN,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2012−0067804(KR,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2006−0034155(KR,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2004−0001441(KR,A)
【文献】
小西可南他, 漢方医学, 1986, vol.10, no.7, p.14-20
【文献】
Yang, Yongjie et al., SHIPIN GONGYE KEJI(Science and Technology of Food Industry), 2010, vol.31, no.4, p.146-148,151
【文献】
Selenu, M. B. et al., Bollettino chimico farmaceutico, 2005, vol.144, no.1, p.66-78
【文献】
Mohamed S. El-Abyad et al., Microbios, 1990, vol.62, p.47-57
【文献】
Park, Hee Kuk et al., PLOS ONE, Feb. 2012, vol.7, no.2, e32847
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00−36/9068
A61K 8/00− 8/99
A61K 31/00−33/44
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラタチの実の抽出物を含む、Filobasidium属細菌用抗菌剤。
【請求項2】
クチナシの実の抽出物、ドクダミの抽出物、トウガの抽出物、及びナズナの抽出物からなる群より選択される一つ以上をさらに含む、請求項1に記載の抗菌剤。
【請求項3】
前記抽出物が、アセトン抽出物又はエタノール抽出物である、請求項1又は2に記載の抗菌剤。
【請求項4】
前記Filobasidium属細菌が、Filobasidium floriformeである、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の抗菌剤。
【請求項5】
脂漏性皮膚炎またはふけの予防または治療用であることを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の抗菌剤。
【請求項6】
上記の抗菌剤は石鹸、シャンプー、ヘア・コンディショナー、ヘア・トニック、ヘア・クリーム、ヘア・スプレーまたはヘア・ムースの形態であることを特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の抗菌剤。
【請求項7】
上記の抗菌剤はジンクピリチオン、ピロクトンオラミン、クリムバゾール、タール、硫黄およびサリチル酸からなる群より選択される一つ以上を追加で含有することを特徴とする、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の抗菌剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は天然物由来の抗菌用組成物に関するものであり、より具体的に上記の組成物はふけ原因菌で新たに糾明されたフィロバシディウムカビを抑制する効果を有することを特徴とする天然物由来ふけ予防または治療用組成物などに関するものである。
【背景技術】
【0002】
脂漏性皮膚炎(seborrhoseic dermatitis)は皮脂線が集まっている頭皮と顔、その中でも眉毛、鼻、唇の周り、耳、脇の下、胸、鼠径部などに発生する慢性炎症性皮膚疾患であり、この症状が頭皮に弱く現れる場合を「ふけ」という。
【0003】
ふけとは、人体の活発な物質代謝によって生じた頭皮の死んだりはげた細胞が頭皮、皮脂線の分泌物と一緒に干上がって生じた硬い角質形態の塊で剥がれて落ち出てくることをいう。ふけを組織学的に見れば、頭皮の表皮の基底層で新しい細胞が作られて、その細胞は上に押されて上がるようになって、角質層の最上階まで押されて上がった後、それがむいて落ちることになるが、このように長く過ぎてむいて落ちた細胞がふけである。細胞が生じてむいて落ちるまでは普通約1ヶ月かかるが、これをターンオバー(Turn-over)という。この周期が短くなれば、ふけの量が増加することになって、ふけ症は個人差、性別、年齢などにより、皮脂線で脂質分泌機能の異常、生活習慣やストレス、または周囲の温度や湿度などの環境やホルモン異常などにより皮脂の分泌が多くて皮脂が溜まることになって、これによる皮膚常在真菌の菌体や皮膚常在真菌が脂質の中のトリグリセリドなどを分解して生じる遊離脂肪酸など刺激物質により表皮細胞のターンオバー(Turn-over)の周期が短くて健常な人より角質層の細胞分裂が活発して角質層が厚くなり過角化される様子を表して、肉眼で観察される鱗屑が表して、炎症細胞の浸潤が生じて、部分的に炎症性所見が観察されることである。
【0004】
ふけ症と言うのは、このようなふけの量が増加して、目立つことをいい、多くの場合に再発しやすく、通常、かゆみを伴うことになる。ふけ症が発生するようになった場合、発生したふけまたはかゆみなどにより頭皮を過度にこすったりして頭皮に傷をつけてしまって、場合によっては頭皮に炎症を起こしたり、脱毛の原因になる場合も発生することになる。したがって、ふけは一種の頭皮に生じた脂漏性皮膚炎(seborrhoseic dermatitis)で、皮脂線の分泌物、汗腺の分泌物、表皮層の角質化物質などが発生、累積されて、ここに微生物などが感染されて現れる症状で知られている。主に皮脂線が活発に活動している顔、頭、脇、陰部などによく発生して、出生後の直後や思春期を経た後に発生する特徴を見せる。
【0005】
最近の研究によれば、皮膚常在真菌 (ふけ原因菌)がふけの発生に深く関与していると知られており、ふけの原因菌が酵母菌であることが最近知られていて、その中、ピチロスポルム・オバーレ(Pityrosporum ovale)またはマラセジアフルフール(Malassezia furfur)という真菌(酵母菌)が関与することが明らかになって、これに対する興味が最近増加した。
【0006】
したがって、このふけ原因菌を効果的に除去することによって、ふけ症を改善するために多くの研究があって、特にジンクピリチオン及びピロクトンオラミンがふけやかゆみ症の抑制効果があることと判明されて、抗ふけ剤として毛髪化粧品に多く使われてきた。ジンクピリチオンは1%以上の濃度では皮膚刺激性によって問題になり、0.01%以下ではその効果が微々として、好ましくは0.5%を混合して使用する。上記のジンクピリチオンは頭皮過角化の抑制及び抗真菌に良い効果を現してふけ症の治療及び改善に効果的なメリットがあるが、これは水不溶性であって、比重が大きいため組成物の中に均一に分散させる難しくて、特に皮膚に接触性皮膚炎(Nielsen, N.H., Allergic contact dermatitis caused by zinc pyrithione associated with pustular psoriasis. Am J Contact Dermat. 8, 170, 1997)及び環境毒性などの問題点が報告されていて、毛髪化粧品に高濃度に適用するのに、制限的な問題点があった。
【0007】
一方、ジンクピリチオンの欠点を補完した水溶性ふけ治療物質であるピロクトンオラミンの場合、十分な効果を示すためには0.5ないし2.0%を用いなければならないが、この成分も人体に対する安定性の問題により使用量に対する規制がある実情である(Cosmetics and Toiletries, 102, 6, Dec., 1987)。それ以外にもクリムバゾール、硫酸、サリチル酸、タールなども頭皮に存在する微生物であるピチロスポルム・オバーレに対する抗菌効果を示すので、抗ふけ剤として用いられている。
【0008】
上記から、抗ふけ剤の濃度を低下させながら、その効果を補充できる複合的な処方が求められていた。特にこのような合成物質はその抗菌力は優れているが、皮膚副作用などに安全ではないという点と合成化合物であるという点で消費者に否定的な考えを有するようにすることができるので、天然由来のふけ防止組成物が求められていた。
【0009】
一方、ピチロスポルム・オバーレがふけ症患者の頭皮から多く発見されるが、この菌を抑制することだけで、必ずふけ症が改善されるといえないので、ふけ症に他の原因があるという問題が提起されてきた。
【0010】
フィロバシディウム(Filobasidium)はfungal class Tremellomyceteに属するカビであり、その中の一つのfamilyであるFilobasidiaceaeは四つのspeciesに分けられる。このカビは他のtremelloid種は異なって肉眼で見える担子器果(macroscopic basidiocarp)が無いことという特徴がある。
【0011】
このカビは皮膚常在菌であり、これを用いてアルコール生産に用いる方法などについては、先行技術が存在するが、ふけ原因菌として明らかになったことはない。
【0012】
本発明者はふけの原因を研究した結果、ふけ症患者の頭皮でフィロバシディウム・カビの数が有意に増加することを発見して、このカビがふけの主要原因であることを糾明した。したがってこのふけ原因菌を効果的に除去できる場合、ふけ症を予防または治療できると考えた。
【0013】
それで本発明者は環境と生態系に親和的であり、人体に対する安定性の問題を起さなくてふけの予防または治療の効果を有する物質を検討していたところ、クチナシの実、カラタチの実、ドクダミ、トウガまたはナズナの実の由来抽出物などが抗フィロバシディウムの効果を有することを確認して本発明を完成することになった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記のような従来の技術上の問題点を解決するために案出されたものであり、天然物由来の物質を含む抗菌用組成物を提供する。具体的に、天然物由来のフィロバシディウム抑制物質を有効成分として含む抗菌用組成物を提供する。特に、上記の組成物はふけ原因菌で新たに糾明されたフィロバシディウムカビを抑制することを特徴とする。
【0015】
しかし、本発明が解決しようとする技術的な課題は以上で言及した課題に制限されなく、言及されていない他の課題は以下の記載から当業者に明確に理解されるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は天然物由来のフィロバシディウム抑制物質を含む抗菌用組成物を提供する。
【0017】
本発明の一具現例で、上記の天然物はクチナシの実、カラタチの実、ドクダミ、トウガ、及びナズナを含む。
【0018】
本発明の別の具現例で、上記の天然物は有機溶媒で抽出されることを特徴とする。上記の有機溶媒はクロロホルム、ジクロロメタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ヘキサン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、エーテル、ケトン、アルコールなどができる。ここで、アルコールはC1−C6アルコールができるし、望ましくはエタノールを用いることができる。ケトンは望ましくはアセトンを用いることができる。しかし、使用できる溶媒の種類はこれに制限されない。
【0019】
本発明の他の具現例で、上記の組成物は脂漏性皮膚炎またはふけの予防または治療用の組成物であることを特徴とする。
【0020】
本発明の他の具現例で、上記の組成物は毛髪化粧料の組成物であることを特徴として、上記の毛髪化粧料の組成物は石鹸、シャンプー、ヘア・コンディショナー、ヘア・トニック、ヘア・クリーム、ヘア・スプレー、及びヘア・ムースの形態の組成物を含む。しかし、剤形はこれに制限されない。
【0021】
本発明の別の具現例で、上記の組成物は他の抗ふけ剤を追加に含有することができるし、上記の他の抗ふけ剤はジンクピリチオン、ピロクトンオラミン、クリムバゾール、タール、硫黄およびサリチル酸を含む。しかし、追加できる物質の種類はこれに制限されない。
【発明の効果】
【0022】
本発明の組成物は天然物由来の物質を有効成分で含めて、消費者に拒否感が少ない抗菌用組成物を提供することができる。特に、従来の抗ふけ剤に上記の天然物由来の物質を含めることで、従来の抗ふけ剤で用いられてきた安定性の疑われる物質の含有量を減らすことができるというメリットがある。また、新たにふけ原因菌で糾明されたフィロバシディウムカビを効果的に抑制することができるので、窮極的に脂漏性皮膚炎及びふけ症をより効果的に予防・治療するのに重要に活用できることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】メタゲノミクス分析法を利用したgrade5のふけ患者でFilobasidium floriformeが優勢に現れることを示すグラフである。
【
図2】クチナシの実のアセトン抽出物、カラタチの実のアセトン抽出物、ドクダミのアセトン抽出物、トウガのエタノール抽出物、またはナズナのエタノール抽出物をそれぞれ添加した場合、生成された細菌の生育阻止帯、つまり、クリアーゾーン(Clear zone)を確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明者はふけ原因菌として新たに糾明されたフィロバシディウム・カビを効果的に抑制する天然物由来の物質を研究した結果、本発明を完成することになった。
【0025】
本発明の組成物には、また、界面活性剤、基剤、オイル、アルコール、色素、香料、防腐剤などのような頭髪化粧品の製造に通常的に用いられる成分が含まれることができる。
【0026】
本発明のふけ治療及び脱毛防止シャンプーの組成物は各種の剤形を取ることができるし、これは当業者に容易に理解できる。例えば、シャンプー、ヘア・コンディショナー、ヘア・トニック、ポマード、ヘア・トリートメント、ヘア・ローションなどの剤形で製品化することができる。
【0027】
下記に当業者により製造できる製造方法と添加物を含有するシャンプー、ヘア・コンディショナー、ヘア・トニック及びヘア・クリームを説明すれば、次のようである。
【0028】
<シャンプーの製造>
シャンプーはアニオン界面活性剤、保湿剤、毛髪保護成分、水などが混合されているもので、シャンプーの剤形を有する場合には30%ラウリル硫酸ナトリウム、30%ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、及びプロピレングリコールを水に添加した後、この混合物に公知のふけ防止成分であるピロクトンオラミンなどを添加した後、加温して溶解させた後、冷却する。この混合物にジンクピリチオン、ブチルヒドロキシトルエン(Butylhydroxy Toluene(BHT))、色素、パラオキシ安息香酸エステル、香料、及びクエン酸を添加して、本願発明の抽出物を混合した後冷却して、シャンプーを製造する。
【0029】
<ヘア・コンディショナーの製造>
ヘア・コンディショナー剤形を有する場合には、セタノール、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、パラオキシ安息香酸エステル、75% 塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、公知のふけ防止成分であるピロクトンオラミンなどを水に添加した後、加温して溶解させた後、冷却する。この混合物にジンクピリチオン、ブチルヒドロキシトルエン(Butylhydroxy Toluene(BHT))、色素、香料、及びクエン酸を添加して、本願発明の抽出物を混合した後、ヘア・コンディショナーを製造する。
【0030】
<ヘア・トニックの製造>
ヘア・トニック剤形を有する場合には、無油性のヘア・トニックは、30〜70%のアルコール水溶液に殺菌剤、刺激剤などを溶解させた後、香料を添加して、油性のヘア・トニックは、純アルコールに殺菌剤、刺激剤及び香料を溶解した油脂類などを添加する。上記の混合物に公知のふけ防止成分であるピロクトンオラミンなどと本願発明の抽出物を添加して、ヘア・トニックを製造する。
【0031】
<ヘア・クリームの製造>
ヘア・クリーム剤形を有する場合には、蜜蝋、流動パラフィン、ステアリン酸、ラノリン、香料、防腐剤及びその他のいくつかの材料を配合した後、上記の混合物に公知のふけ防止成分であるピロクトンオラミンなどと本願発明の抽出物を添加して、ヘア・トニックを製造する。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の理解を助けるために望ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものであって、下記の実施例により本発明の内容が限定されることではない。
【0033】
[実施例1]ふけ関連のカビ体を糾明するためのメタゲノミクス(metagenomics)法を利用した分析
1−1.(サンプル)Sampleの収集とDNAの抽出
ふけ原因体の分析のために、 正常ふけ正常の試料と患者の試料は、中央大学校の医学部の臨床試験審査委員会(IRB)の承認を受けて、中央大学校病院の皮膚科に来院する患者から収集された。
【0034】
カビ体(mycobiome)を分析するための各試料の採取は、DNA-free clean roomの中でST solution(0.15M NaCl with 0.1% Tween 20)が染み込んだ殺菌された綿棒を使用して、頭皮をこすることによって得られた。収集された7人のふけ試料は、Parkなど(Korean J Dermatol 2009;47:875-883)の方法で、患者の状態をgrade 1〜5に分類した。 1gl、2glと3glと命名された試料は、 正常の頭皮またはふけがない状態と区分し、6g3、4g4、5g5と7g5と命名された試料は、患者の試料として分類した。収集された試料は、microcentrifuge tubeに移された後、10分間centrifugeを進めて、上澄液を除去した後、cetyltrimethylammonium bromide方法を用いてDNAを抽出し、Infinite 200 NanoQuantを使用して定量した。
【0035】
一般的に、カビ体を分析するためのプライマーであるNL1(5‘−GCATATCAATAAGCGGAGGAAAAG−3’)とNL4(5‘−GGTCCGTGTTTCAAGACGC−3’)を使用して26S rRNA geneのD1/ D2 regionを増幅させた。大容量454 pyrosequencing分析のために、すべてのプライマーの5 '末端に10 base-multiplex identifier(MID)sequencesが追加された。 PCR反応は、5-25ngの正常または患者のふけで得られたgenomic DNAと0.4mMの各primer、0.2mM dNTPs、1.5mM MgCl
2、2.0 U Hot Start Taq polymeraseと1.0x reaction buffer(Takara)が含まれている反応混合液を最終volume25μlで行われた。 PCR増幅反応は、GeneAmp PCR system 9700(Applied Biosystem)でdenaturationは94℃、5分間で、94℃ 30秒、55℃ 30秒と72℃ 1分の反応を30回繰り返し、最終延長72℃で10分間反応した。PCR産物は1.2% agarose gelで展開しethidium bromide(EtBr)染色後にUV transilluminatorを使用して確認した。
【0036】
1−2.大容量の塩基序列の分析:454pyrosequencing
PCR産物は、7つのsampleから得られて、454 sequencing分析のために、各試料から得られたPCR産物の混合液を製造した。 PCR産物の混合液は、GS-FLX Titanium sequencing分析法に基づいて行われて、Pico Titer Plateを用いて定量を行った後、pyrosequencingを行った。分析された塩基配列は、米国国立生物情報センター(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)のBLASTで分析した。
【0037】
1−3.統計分析
観察された全ての変数のセットから有効な変数を分析するために因子分析を適用した。 最初に、累積分散の70%以上である通常の標準的な変数と一緒に主要な構成要素を確認した。0.6の下にloadingされている要素の消去された変数と選ばれた主要な変数の構成行列を推定した。選ばれた変数の最終的なセットを使用してGeneralized Linear Model(GLM)を考慮して、ふけ患者の頭皮と健康な頭皮からの試料の群集を分類して、g(μ)=α+βx(a)からの総頻度の数でtがあるg(μ)= log(μ/ t)と、式(a)を従うことはGLMと示した。この時、媒介変数βは、(a)式により5%有意水準で実験されていた。
【0038】
分析結果の7つの資料でそれぞれ10735、10029、12119、9614、9092、7589と7034個の塩基配列を得ることができた。特にGLM分析でgrade 5のふけ患者でFilobasidium floriformeが優勢に発見されてふけ関連カビに推定した(表1及び
図1参考)。
【0039】
【表1】
【0040】
[実施例2]天然物の抽出物の製造
99.5% アセトン 1000mlと95%とエタノール1000mlに乾燥した後、薬材の形で細切りにされた、クチナシの実、カラタチ果実、トックリイチゴの根、緑茶、魚腥草、楡根皮 白ブクリョウ、ドクダミ、ハクセン、トウガ、及びナズナ(京東市場薬材商店街で購入)それぞれ100gを混合した後、24℃で24時間、放置して抽出した。その後、上記の抽出物を濾過紙(Whatman filter paper)を使用して、スラッジと溶液に分離した。分離された溶液からアセトンを除去するために濃縮器(Evaporator、Heidolph vv 2000)を使用して42℃で4倍濃縮した。
【0041】
[実施例3]天然物の抽出物の抗フィロバシディウムカビの活性測定
上記の実施例2で製造したアセトンとエタノール抽出物の抗Filobasidium sp.活性を測定した。公示菌としては、Filobasidium floriforme KCTC 7988
Tを韓国生命工学研究院の生命資源センター(KCTC)から購入して実験に使用した。
【0042】
上記のそれぞれの試験菌株の単一コロニーを10mlの栄養培地(Modified Dixon's agar)が含まれている200mlフラスコに接種して、37℃で攪拌しながら12時間培養した。上記の培養液を10mlの栄養培地が入っている200mlフラスコに、初期O.D. 0.1で接種して7時間の間、継代培養した。上記のような方法で活性化されたそれぞれの試験菌株培養液をプレートごとに菌数が2.0×10
8になるように調節した後、60℃の固まっていない栄養寒天培地13mlと1000mmペトリディッシュに注いだ後、よく固めた。次に56℃培養器で24時間乾燥させて、完全に湿気を除去した10mmペーパーディスク(Toyo Roshi Kaisha、Ltd、Japan)を上記のプレートの上に乗せた後、各ディスクに、上記の実施例1のクチナシの実のアセトン抽出物を100μlずつ注入した。上記のプレートを37℃培養基で12時間培養した後、生成された細菌の生育阻止帯、つまり、クリアーゾーン(Clear zone)を確認して、バーニヤカリパス(Vernier calipers)を使用して直径を測定した。
【0043】
実験の結果、クチナシの実、カラタチの実のアセトン抽出物と、ドクダミ、トウガ、そしてナズナのエタノール抽出物の場合、フィロバシディウム・カビにおいて抗真菌の効果があることを確認することができた(表2ないし6、
図2)。
【0044】
表でN.D.はNot detectedを意味し、数字はペーパーディスク(10mm)の直径を含む細菌生育阻止帯を示す。
【0045】
表2は、クチナシのアセトン抽出物、表3は、カラタチのアセトン抽出物、表4は、ドクダミのエタノール抽出物、表5は、トウガのエタノール抽出物、表6は、ナズナのエタノール抽出物に対する実験結果である。
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
【表5】
【0050】
【表6】
【0051】
前述した本発明の説明は例示のためのものであり、本発明が属する技術分野の通常の知識を持つ者は本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更しなくて、他の具体的な形態に簡単に変更が可能であることを理解できるだろう。したがって、以上で記述した実施例は全ての面で例示的なものであり、限定的なものではないものと理解するべきである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の組成物は天然物由来の物質を有効成分として含んで、消費者に拒否感が少ない抗菌用組成物を提供できる。特に従来の抗ふけ剤に上記の天然物由来の物質を含むことによって、従来の抗ふけ剤として用いられていた安定性が疑われる物質の含有量を減らすことができるメリットがあるだけではなく、新たにふけの原因菌で糾明されたフィロバシディウムカビを効果的に抑制できるので、窮極的に脂漏性皮膚炎及びふけ症をより効果的に予防・治療するのに重要に活用できる。