特許第6033438号(P6033438)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6033438
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】電力制御システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20161121BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20161121BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   H02J3/32
   H02J3/38 110
   H02J3/38 130
   H02J7/35 K
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-526200(P2015-526200)
(86)(22)【出願日】2014年5月21日
(86)【国際出願番号】JP2014063471
(87)【国際公開番号】WO2015004999
(87)【国際公開日】20150115
【審査請求日】2015年8月25日
(31)【優先権主張番号】特願2013-144344(P2013-144344)
(32)【優先日】2013年7月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094916
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 啓吾
(74)【代理人】
【識別番号】100073759
【弁理士】
【氏名又は名称】大岩 増雄
(74)【代理人】
【識別番号】100127672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 憲治
(74)【代理人】
【識別番号】100088199
【弁理士】
【氏名又は名称】竹中 岑生
(72)【発明者】
【氏名】泉 喜久夫
(72)【発明者】
【氏名】奥田 達也
(72)【発明者】
【氏名】島崎 勉
(72)【発明者】
【氏名】土本 直秀
【審査官】 田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−116225(JP,A)
【文献】 特開2002−199588(JP,A)
【文献】 特開2013−66378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/32
H02J 3/38
H02J 7/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1入出力側が電力貯蔵装置に接続され、双方向のDC/DC電力変換動作により上記電力貯蔵装置を充放電させるDC/DCコンバータと、
直流側が上記DC/DCコンバータの第2入出力側に接続され、交流側が電力系統に接続されて、直流、交流間の電力変換動作を双方向で行うDC/ACコンバータと、
上記DC/DCコンバータの上記第2入出力側と上記DC/ACコンバータの直流側との間に接続された電力平滑用素子と、
上記電力系統の潮流電力を検出する潮流電力検出部と、
上記DC/ACコンバータと上記電力系統との間に接続される負荷よりも上記電力系統側で、上記電力系統に流出する逆潮流電力を検出する逆潮流電力検出部と、
与えられた電力指令値である上記電力系統からの上記潮流電力の指令値と、上記潮流電力検出部および上記逆潮流電力検出部の検出結果とに基づいて、上記DC/DCコンバータおよび上記DC/ACコンバータを出力制御する制御装置とを備え、
上記制御装置は、
上記電力系統からの上記潮流電力を上記電力指令値に追従制御する第1電力制御部と、上記逆潮流電力を抑制制御する第2電力制御部とを備えて、上記DC/ACコンバータへの第1出力電力指令を生成する電力制御部と、
上記電力平滑用素子の電圧が目標電圧となるように上記DC/DCコンバータへの第2出力電力指令を生成する第1電圧制御部と、
上記電力平滑用素子の電圧変動を抑制するように上記第1出力電力指令を補正する第2電圧制御部とを備えた
電力制御システム。
【請求項2】
上記第2電圧制御部は、上記電力平滑用素子の上記目標電圧より高い上限電圧と上記目標電圧より低い下限電圧とを用い、上記電力平滑用素子の電圧が上記上限電圧を超えると上記電力平滑用素子の電圧が上記上限電圧以下となるように上記第1出力電力指令を補正すると共に、上記電力平滑用素子の電圧が上記下限電圧未満になると上記電力平滑用素子の電圧が上記下限電圧以上となるように上記第1出力電力指令を補正する
請求項1に記載の電力制御システム。
【請求項3】
上記第1電圧制御部は、上記電力貯蔵装置の充放電に対して設定された制限値で上記第2出力電力指令を制限するリミッタを有し、
上記第2電圧制御部は、上記電力平滑用素子の電圧が、上記下限電圧以上かつ上記上限電圧以下の電圧範囲を外れた場合のみ動作し、
上記第2出力電力指令が上記リミッタにて制限されている状態で、上記第2電圧制御部が動作する
請求項2に記載の電力制御システム。
【請求項4】
上記逆潮流電力検出部よりも上記電力系統側で発電装置が上記電力系統に連系され、
上記制御装置は、上記DC/DCコンバータおよび上記DC/ACコンバータを出力制御することで、上記電力系統からの上記潮流電力を制御すると共に、上記電力貯蔵装置の充放電を制御し、
上記負荷に電力供給すると共に上記発電装置の発電電力を利用する
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電力制御システム。
【請求項5】
上記制御装置が、上記電力指令値が変化しても同様の制御動作により上記DC/DCコンバータおよび上記DC/ACコンバータを出力制御することで、
上記電力制御システムは、上記電力指令値に応じて、上記電力系統からの上記潮流電力を最大にして上記電力貯蔵装置を充電する第1動作モード、上記潮流電力を抑制し上記電力貯蔵装置を充放電させる第2動作モード、上記潮流電力を負にして上記発電装置の上記発電電力を上記電力系統に供給し、上記電力貯蔵装置を放電させる第3動作モードの複数の動作モードを自動的に切り換えて動作する
請求項4に記載の電力制御システム。
【請求項6】
上記電力系統からの上記潮流電力における夜間と昼間との平準化を図るように上記電力指令値が決定される
請求項4に記載の電力制御システム。
【請求項7】
上記電力指令値を決定する指令値生成部を備え、該指令値生成部は、設定されたタイムスケジュールあるいは電力需要情報に基づいて上記電力指令値を決定する第1モードと、電力料金に応じて上記電力指令値を決定する第2モードとのいずれかを選択して用いる
請求項4に記載の電力制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力系統に接続し、電力系統の潮流電力を制御する電力制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電力制御システムは、発電システム、バッテリ及び電力系統を接続して、負荷に電力を供給する電力貯蔵システムを制御する。この電力貯蔵システムの制御では、電力系統が負荷と接続しているか否かを判断するステップと、発電システムで電力が発電されるか否かを判断するステップと、を含み、発電システムの発電電力量、バッテリの充電状態、バッテリの充電電力量、負荷の消費電力量及び時間のうち、少なくともいずれか1つの判断結果によって、電力貯蔵システムの複数の動作モードのうちいずれか1つにより動作する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−254696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような電力制御システムでは、電力系統に接続される各部の電力状況を監視してその情報に応じて動作モードを変更するため、動作モードの切り替え時に、システム動作の停止を要したり、タイムラグが発生する。このため動作モードの切り替え時に電力状況の瞬間的な変動を引き起こすことがあり、その場合、電力状況の瞬間的な変動にシステム動作が追従できず、負荷の運転状況や電力系統の安定性に影響を及ぼす可能性があった。
【0005】
この発明は、上記のような問題点を解消するために成されたものであって、負荷の運転状況や電力系統の安定性に影響を及ぼすことなく、電力系統に接続される電力貯蔵装置を充放電させ、電力系統の潮流電力を制御することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る電力制御システムは、第1入出力側が電力貯蔵装置に接続され、双方向のDC/DC電力変換動作により上記電力貯蔵装置を充放電させるDC/DCコンバータと、直流側が上記DC/DCコンバータの第2入出力側に接続され、交流側が電力系統に接続されて、直流、交流間の電力変換動作を双方向で行うDC/ACコンバータと、上記DC/DCコンバータの上記第2入出力側と上記DC/ACコンバータの直流側との間に接続された電力平滑用素子と、上記電力系統の潮流電力を検出する潮流電力検出部と、上記DC/ACコンバータと上記電力系統との間に接続される負荷よりも上記電力系統側で、上記電力系統に流出する逆潮流電力を検出する逆潮流電力検出部と、与えられた電力指令値である上記電力系統からの上記潮流電力の指令値と、上記潮流電力検出部および上記逆潮流電力検出部の検出結果とに基づいて、上記DC/DCコンバータおよび上記DC/ACコンバータを出力制御する制御装置とを備える。そして、上記制御装置は、上記電力系統からの上記潮流電力を上記電力指令値に追従制御する第1電力制御部と、上記逆潮流電力を抑制制御する第2電力制御部とを備えて、上記DC/ACコンバータへの第1出力電力指令を生成する電力制御部と、上記電力平滑用素子の電圧が目標電圧となるように上記DC/DCコンバータへの第2出力電力指令を生成する第1電圧制御部と、上記電力平滑用素子の電圧変動を抑制するように上記第1出力電力指令を補正する第2電圧制御部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明の電力制御システムによれば、負荷の運転状況や電力系統の安定性に影響を及ぼすことなく、電力貯蔵装置を充放電させ、電力系統の潮流電力を信頼性良く制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】この発明の実施の形態1による電力制御システムの概略構成を示す図である。
図2】この発明の実施の形態1による電力制御システムの制御装置の構成を示す図である。
図3】この発明の実施の形態1による充電優先モードにおける電力潮流状態を示す図である。
図4】この発明の実施の形態1による充電優先モードにおける各部の波形図を示した説明図である。
図5】この発明の実施の形態1による買電抑制モードにおける電力潮流状態を示す図である。
図6】この発明の実施の形態1による買電最小モードにおける電力潮流状態を示す図である。
図7】この発明の実施の形態1による売電最大モード時の電力潮流状態を示す図である。
図8】この発明の実施の形態2による電力制御システムに適用される電力料金を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による電力制御システムの概略構成を示す図である。電力制御システム100は、後述するDC/DCコンバータ12を電力貯蔵装置10に接続するための入力回路11と、第1入出力側が入力回路11を介して電力貯蔵装置10に接続されたDC/DCコンバータ12と、直流側がDC/DCコンバータ12の第2入出力側に接続されたDC/ACコンバータ13と、DC/DCコンバータ12の第2入出力側とDC/ACコンバータ13の直流側との間に接続された電力平滑用素子としての平滑コンデンサ14と、DC/ACコンバータ13の交流側を電力系統1に接続するための出力回路15とを備える。出力回路15は、電力系統に接続するための分電盤16に接続される。電力系統1には負荷3が接続されると共に、例えば太陽電池等の発電装置2が電力系統1に接続され、出力回路15を介したDC/ACコンバータ13の交流出力、電力系統1、負荷3および発電装置2は、分電盤16にて接続される。
また電力制御システム100は、DC/DCコンバータ12およびDC/ACコンバータ13を制御する制御装置30を備える。さらに電力制御システム100は、電力潮流情報20を検出するための潮流電力検出部21および逆潮流電力検出部22と、平滑コンデンサ14の電圧Vcを検出する電圧センサ23とを備える。
【0010】
DC/DCコンバータ12は、双方向のDC/DC電力変換動作により電力貯蔵装置10を充放電させる。DC/ACコンバータ13は、直流側がDC/DCコンバータ12に接続され、交流側が電力系統1に接続されて、直流、交流間の電力変換動作を双方向で行う。
分電盤16には、潮流電力検出部21および逆潮流電力検出部22が設けられると共に、切り替えスイッチ18a、18bを備えて、DC/ACコンバータ13の交流出力、電力系統1、負荷3および発電装置2の接続状況を切り替える。
【0011】
潮流電力検出部21は、電力系統1の潮流電力Pfを検出する。逆潮流電力検出部22は、出力回路15と電力系統1との間に接続される負荷3よりも電力系統1側に設けられ、電力系統1に流出する逆潮流電力Pfaを検出する。この逆潮流電力検出部22よりも電力系統1側で発電装置2の発電電力が電力系統1に連系される。
このため、逆潮流電力検出部22が検出する逆潮流電力Pfaは、電力系統1に流出する電力貯蔵装置10の放電電力である。また発電装置2からの発電電力が電力系統1側に供給され、即ち売電されているときは、潮流電力検出部21は売電電力を検出する。
【0012】
制御装置30は、指令値生成部としての上位制御装置4から電力指令値33を受信し、潮流電力検出部21からの潮流電力Pfと逆潮流電力検出部22からの逆潮流電力Pfaとによる電力潮流情報20、電圧センサ23からの平滑コンデンサ14の電圧Vc、および電力貯蔵装置10からの情報34に基づいて、DC/ACコンバータ13への第1出力電力指令としての出力電力指令(補正後)31、およびDC/DCコンバータ12への第2出力電力指令としての出力電力指令32を生成して出力する。
平滑コンデンサ14の電圧変動は、各部を構成する素子の耐圧設計などに影響をおよぼすため、なるべく一定に制御されることが好ましい。このため、制御装置30は、電力系統1の潮流電力Pfを制御すると共に、平滑コンデンサ14の電圧Vcを制御する。
なお、電力指令値33は、上位制御装置4から受信するものとしたが、制御装置30が内部で保持しているものを用いても良い。
【0013】
制御装置30の構成および動作について、図2に基づいて以下に説明する。
図2に示すように、制御装置30は、電力系統1の潮流電力Pfを電力指令値33に追従制御する第1電力制御部35と、逆潮流電力Pfaを抑制制御する第2電力制御部36と、平滑コンデンサ14の電圧Vcが設定された目標電圧VAとなるように制御する第1電圧制御部37と、平滑コンデンサ14の電圧変動を抑制するための第2電圧制御部38とを備える。
なお、この場合、電力貯蔵装置10を放電する電力方向、また電力系統1へ出力する(売電する)電力方向を正とする。
【0014】
第1電力制御部35は、電力制御器35aを備え、潮流電力検出部21にて検出された潮流電力Pfが電力指令値33に追従するように、PI制御などにより演算して制御指令を出力する。第2電力制御部36は、電力制御器36aを備え、逆潮流電力検出部22にて検出された逆潮流電力Pfaを抑制するように、PI制御などにより演算して制御指令を出力する。そして、第1電力制御部35からの制御指令と、第2電力制御部36からの制御指令とから、DC/ACコンバータ13への第1出力電力指令としての出力電力指令(補正前)31aを生成する。
なお、逆潮流電力Pfaがゼロ以下のときは、第1電力制御部35からの制御指令が出力電力指令31aとなる。
【0015】
電圧センサ23にて検出された平滑コンデンサ14の電圧Vc(コンデンサ電圧Vc)は、第1電圧制御部37および第2電圧制御部38に入力される。第1電圧制御部37では、電圧制御器37aおよびリミッタ37bを備え、電圧制御器37aは、コンデンサ電圧Vcが目標電圧VAに追従するように、PI制御などにより演算して制御指令を出力する。電圧制御器37aからの制御指令は、リミッタ37bにて制限され、DC/DCコンバータ12への出力電力指令32として出力される。リミッタ37bでは、電力貯蔵装置10からの情報34である制限値Limなどにより電圧制御器37aからの制御指令を制限する。
【0016】
第2電圧制御部38では、電圧制御器38aを備え、コンデンサ電圧Vcに対して目標電圧VAより所定電圧αだけ高い上限電圧(VA+α)と目標電圧VAより所定電圧αだけ低い下限電圧(VA−α)との2種の基準電圧を用いて、DC/ACコンバータ13への出力電力指令31aを補正する補正値39を出力する。
即ち、電圧制御器38aは、コンデンサ電圧Vcが上限電圧(VA+α)を超えると、コンデンサ電圧Vcが上限電圧(VA+α)以下になるようにPI制御などにより補正値39を演算する。また、コンデンサ電圧Vcが下限電圧(VA−α)未満になると、コンデンサ電圧Vcが下限電圧(VA−α)以上になるようにPI制御などにより補正値39を演算する。
そして、出力電力指令31aは補正値39にて補正され、補正後の出力電力指令31がDC/ACコンバータ13を制御する。
【0017】
次に、電力制御システム100における動作の制約条件について、以下に説明する。
第1制約条件は、電力貯蔵装置10の放電電力が電力系統1へ流出してはならない、というものである。
第2制約条件は、電力貯蔵装置10への充電時には、電力系統1からの買電電力が所定の値を超過してはならない、というものである。
第3制約条件は、各装置(電力貯蔵装置10、DC/DCコンバータ12、DC/ACコンバータ13)の都合により、各出力電力をそれぞれのタイミングで抑制する制約条件である。
【0018】
上記第1制約条件は、電力貯蔵装置が接続され、かつ電力系統1に接続される全ての電力制御システムが守るべき条件である。上記第2制約条件は、分電盤16、または分電盤16より電力系統1側に配置された、例えば、一般家庭の契約ブレーカの通電容量に依るものである。電力制御システム100は、この契約ブレーカの通電容量を超過した買電電力となるような動作はしてはならないという制約条件がある。上記第3制約条件は、電力貯蔵装置10、DC/DCコンバータ12、DC/ACコンバータ13の各装置の都合、例えば蓄積電力の残容量や動作温度によって決まる制約条件である。
【0019】
制御装置30は、上記第1〜第3制約条件を守りながら、潮流電力Pfを電力指令値33に追従させ、逆潮流電力Pfaを抑制し、コンデンサ電圧Vcを目標電圧VAに制御するように、DC/DCコンバータ12およびDC/ACコンバータ13を出力制御する。そして、コンデンサ電圧Vcが上限電圧(VA+α)を超える、あるいは下限電圧(VA−α)未満になると、DC/ACコンバータ13の出力電力指令31を補正してコンデンサ電圧Vcの電圧変動を抑制する。
【0020】
そして、制御装置30は、電力指令値33が変化しても上述した同様の制御動作を行う。これにより、電力指令値33に応じて、DC/ACコンバータ13への出力電力指令31およびDC/DCコンバータ12への出力電力指令32が変化し、電力制御システム100は、以下に示す複数の動作モードを自動的に切り替えて動作する。
なお、電力制御システム100の各部が安定状態にあるとき、電力系統1の潮流電力Pfは電力指令値33に制御され、DC/DCコンバータ12の出力電力およびDC/ACコンバータ13の出力電力は等しく、コンデンサ電圧Vcも一定となる。
【0021】
まず、第1動作モードとなる充電優先モードを以下に示す。
図3は充電優先モード時の電力潮流状態の例を示す図である。なお、図3において発電装置2は発電していないものとしている。また、図4は充電優先モードにおける電力状況の一例を示した各部の波形図である。
充電優先モードでは、電力指令値33として買電電力最大値Pmaxが設定される。この買電電力最大値Pmaxは、上述した第2制約条件により決定されるもので、契約ブレーカの通電容量などにより決定されるものであるが、契約ブレーカの通電容量以下ならば、使用者が設定しても良い。
なお、売電する電力方向を正としたため、この場合、買電電力最大値Pmaxは負の値である。
【0022】
図3に示すように、電力系統1の潮流電力Pfは、負荷3に負荷電力として供給され、残った電力が電力貯蔵装置10に充電される。
まず、第1電力制御部35では、電力指令値33である買電電力最大値Pmaxから、潮流電力検出部21にて検出された潮流電力Pfである実際の買電電力を減算した(買電電力最大値−実際の買電電力)、即ち(Pmax−Pf)がゼロとなるようにDC/ACコンバータ13の出力電力指令31の基本情報である制御指令を出力する。例えば、(│Pmax│>│Pf│)の場合、電力貯蔵装置10の充電電力を増加させるように制御指令の大きさを増加させる。逆に、(│Pmax│<│Pf│)の場合、電力貯蔵装置10の充電電力を減少させるように制御指令の大きさを減少させる。
そして結果として、第1電力制御部35は、−(│Pmax│−負荷電力)となる制御指令を出力する。
【0023】
逆潮流電力Pfaがゼロ以下で、平滑コンデンサ14の電圧Vcが下限電圧から上限電圧までの範囲内の場合、第1電力制御部35からの制御指令はそのままDC/ACコンバータ13の出力電力指令31となる。そして、DC/ACコンバータ13は、(│Pmax│−負荷電力)を直流側に出力する。なお、電力貯蔵装置10を放電する電力方向を正としたため、出力電力指令31はDC/ACコンバータ13の交流側への出力に対応し、出力電力指令32はDC/DCコンバータ12の平滑コンデンサ14側への出力に対応する。
【0024】
また、第1電圧制御部37は、平滑コンデンサ14の電圧Vcが目標電圧VAとなるように、DC/DCコンバータ12の出力電力指令32を生成する。そして結果として、DC/DCコンバータ12の出力電力指令32は、DC/ACコンバータ13の出力電力指令31と等しくなり、−(│Pmax│−負荷電力)となる。この時、DC/DCコンバータ12の出力電力およびDC/ACコンバータ13の出力電力は等しく、コンデンサ電圧Vcも目標電圧VAに一定制御される。
【0025】
またDC/ACコンバータ13が直流側に(│Pmax│−負荷電力)を出力するとき、買電電力の大きさは、
│買電電力│=負荷電力+(DC/ACコンバータ13の直流側への出力電力)
=負荷電力+(│Pmax│−負荷電力)
=│Pmax│
となる。
このように、負荷電力が変動しても、実際の買電電力(検出された潮流電力Pf)を、電力指令値33である買電電力最大値Pmaxと等しくなるよう制御することができ、上記第2の制約条件も満足することができる。
【0026】
ここで、例えば、図4に示すように負荷電力の変動があった場合について以下に説明する。この場合、検出される潮流電力Pf、買電電力最大値Pmaxおよび出力電力指令31、32は負の値であるが、図4では絶対値を用いて電力の大きさを表示している。
負荷電力が0で、実際の買電電力(潮流電力Pf)が電力指令値33である買電電力最大値Pmaxに制御されている安定状態のとき、DC/ACコンバータ13およびDC/DCコンバータ12の出力電力指令31、32は共に買電電力最大値Pmaxと等しい。この時、平滑コンデンサ14の電圧Vcも目標電圧VAで一定制御されている。そして、│Pmax│である電力が電力貯蔵装置10に充電される。
【0027】
時刻t1において、所定の負荷電力が発生すると、電力系統1の潮流電力Pfである実際の買電電力の大きさ、即ち│Pf│が増加する。第1電力制御部35は、│Pf│が│Pmax│を超過しないように、DC/ACコンバータ13の出力電力指令31(絶対値)を低下させる。これによりDC/ACコンバータ13の出力に接続される平滑コンデンサ14の電圧Vcは、DC/ACコンバータ13とDC/DCコンバータ12との出力電力差により低下する。第1電圧制御部37は、低下したコンデンサ電圧Vcが目標電圧VAになるように、DC/DCコンバータ12の出力電力指令32(絶対値)を低下させる。
【0028】
これにより、DC/ACコンバータ13およびDC/DCコンバータ12の出力電力指令31、32(絶対値)は共に低下して(│Pmax│−負荷電力)と同等となり、実際の買電電力(潮流電力Pf)が電力指令値33である買電電力最大値Pmaxに戻り、コンデンサ電圧Vcも目標電圧VAに戻る(時刻t2)。
なお、便宜上図4では、実際の買電電力(潮流電力Pf)、コンデンサ電圧Vc、DC/ACコンバータ13の出力電力指令31およびDC/DCコンバータ12の出力電力指令32は、負荷電力が変化する時刻t1に同期して変化するように図示したが、上述したように、それぞれタイミングをずらして変化する。
【0029】
このような制御により、コンデンサ電圧Vcが正常範囲を逸脱することを防止でき、電力制御システム100の主回路の各部を構成する素子の耐圧に影響を及ぼすことなく、DC/ACコンバータ13およびDC/DCコンバータ12の出力電力指令31、32をスムーズに変化させて電力制御できる。
【0030】
ところで、充電優先モードにおいては、電力貯蔵装置10を急速に充電するために、電力貯蔵装置10への充電電力は大きくとるのが一般的である。しかしながら、過大な電力により充電すると電力貯蔵装置10の劣化を招く恐れがあることや、満充電近くにおいては、比較的低電流で充電制御を行う方が良いという電力貯蔵装置10の要求がある。このため上記第3の制約条件として、電力貯蔵装置10の充放電電力には制限値Limが設定されている。
充電優先モードにおいて、電力貯蔵装置10の充電電力が制限値Limで制限される場合について、以下に説明する。
【0031】
電力貯蔵装置10に設定される制限値Limは、電力貯蔵装置10からの情報34として制御装置30に入力される。第1電圧制御部37の電圧制御器37aが出力する制御指令は、大きさが制限値Lim以下の時はそのままDC/DCコンバータ12の出力電力指令32となる。DC/ACコンバータ13の直流側への出力電力が増加して平滑コンデンサ14の電圧Vcも上昇し、電圧制御器37aが出力する制御指令の大きさが制限値Limを超えると、出力電力指令32の大きさは、リミッタ37bにて制限値Limに制限される。これにより、DC/ACコンバータ13の直流側への出力電力がDC/DCコンバータ12の直流側への出力電力より大きくなり、平滑コンデンサ14の電圧Vcは上昇するが、第1電圧制御部37の制御では抑制できない。
【0032】
第2電圧制御部38は、コンデンサ電圧Vcが上限電圧(VA+α)を超えると、コンデンサ電圧Vcが上限電圧(VA+α)以下になるように補正値39を演算して、DC/ACコンバータ13の出力電力指令31の大きさを低減補正する。これにより、DC/ACコンバータ13の出力電力とDC/DCコンバータ12の出力電力とを等しくすることができ、コンデンサ電圧Vcは上限電圧(VA+α)以下に制御される。
この第2電圧制御部38は、コンデンサ電圧Vcが下限電圧(VA−α)から上限電圧(VA+α)までの範囲内では動作しないため、第1電圧制御部37での制御に影響を及ぼすことがない。
このような制御により、上記第3の制約条件も満足させ、信頼性良く運転を継続させることができる。
【0033】
次に、第2動作モードとなる買電抑制モードを以下に示す。
図5は買電抑制モード時の電力潮流状態の例を示す図である。この場合、発電装置2は発電しているものとし、図5に示すように、電力系統1の潮流電力Pfである買電電力と発電装置2からの発電電力は、負荷3に負荷電力として供給され、足りない負荷電力分が電力貯蔵装置10から放電される。なお、発電装置2が発電しない場合でも良い。
買電抑制モードでは、上位制御装置4からの電力指令値33として買電電力指令値P*が設定される。この買電電力指令値P*は、電力制御システム100の使用者が設定しても良い。
【0034】
制御装置30の基本制御は、充電優先モードの場合と同様であり、潮流電力Pfを電力指令値33に追従させ、逆潮流電力Pfaを抑制し、コンデンサ電圧Vcを目標電圧VAに制御するように、DC/DCコンバータ12およびDC/ACコンバータ13を出力制御する。
第1電力制御部35では、(買電電力指令値−実際の買電電力)、即ち(P*−Pf)がゼロになるように、DC/ACコンバータ13の出力電力指令31の基本情報である制御指令を出力する。
逆潮流電力Pfaがゼロ以下で、平滑コンデンサ14の電圧Vcが下限電圧から上限電圧までの範囲内の場合、第1電力制御部35からの制御指令はそのままDC/ACコンバータ13の出力電力指令31となる。そして結果として、第1電力制御部35は、−(│P*│+発電電力−負荷電力)となる制御指令(出力電力指令31)を出力する。
【0035】
また、第1電圧制御部37は、平滑コンデンサ14の電圧Vcが目標電圧VAとなるように、DC/DCコンバータ12の出力電力指令32を生成する。そして結果として、DC/DCコンバータ12の出力電力指令32は、DC/ACコンバータ13の出力電力指令31と等しくなり、−(│P*│+発電電力−負荷電力)となる。この時、DC/DCコンバータ12の出力電力およびDC/ACコンバータ13の出力電力は等しく、コンデンサ電圧Vcも目標電圧VAに一定制御される。
【0036】
DC/ACコンバータ13およびDC/DCコンバータ12の出力電力指令31、32の値が負であるとき電力貯蔵装置10は充電され、正であるとき電力貯蔵装置10は放電される。即ち、−(│P*│+発電電力−負荷電力)の正負の極性により、充放電が自動的に切り替わる。図5では、−(│P*│+発電電力−負荷電力)が正で、電力貯蔵装置10は放電し、買電電力と発電電力と電力貯蔵装置10からの放電電力とが負荷3に供給される場合の電力潮流を、矢印で示している。
【0037】
また、このような制御により、コンデンサ電圧Vcが正常範囲を逸脱することを防止でき、電力制御システム100の主回路の各部を構成する素子の耐圧に影響を及ぼすことなく、DC/ACコンバータ13およびDC/DCコンバータ12の出力電力指令31、32をスムーズに変化させて電力制御できる。
【0038】
ここで、例えば、負荷電力が急激に減少した場合について以下に説明する。
負荷電力が急激に減少すると、DC/ACコンバータ13の出力電力により、負荷3よりも電力系統1側に逆潮流電力が流出する。第2電力制御部36では、逆潮流電力検出部22にて検出された逆潮流電力Pfaを抑制するように、制御指令を出力する。この制御指令により、DC/ACコンバータ13への出力電力指令31が減少し、電力貯蔵装置10からの放電電力は抑制される。
このように第2電力制御部36により逆潮流電力Pfaを抑制でき、上記第1の制約条件を満足できる。
なお、第2電力制御部36の制御応答性を第1電力制御部35の制御応答性より高速に設定する事により、逆潮流電力Pfaを瞬時に抑制することが可能になり、上記第1の制約条件を遵守できる。
【0039】
また、買電抑制モードにおいて、電力貯蔵装置10の放電電力が制限値Limで制限される場合について、以下に説明する。
この場合、DC/ACコンバータ13およびDC/DCコンバータ12の出力電力指令31、32は正である。DC/ACコンバータ13の出力電力が増加して、平滑コンデンサ14の電圧Vcも低下し、第1電圧制御部37の電圧制御器37aが出力する制御指令が大きくなり制限値Limを超えると、出力電力指令32は、リミッタ37bにて制限値Limに制限される。これにより、DC/ACコンバータ13の出力電力がDC/DCコンバータ12の出力電力より大きくなり、平滑コンデンサ14の電圧Vcは低下するが、第1電圧制御部37の制御では抑制できない。
【0040】
第2電圧制御部38は、コンデンサ電圧Vcが下限電圧(VA−α)未満になると、コンデンサ電圧Vcが下限電圧(VA−α)以上になるように補正値39を演算して、DC/ACコンバータ13の出力電力指令31を低減補正する。これにより、DC/ACコンバータ13の出力電力とDC/DCコンバータ12の出力電力とを等しくすることができ、コンデンサ電圧Vcは下限電圧(VA−α)以上に制御される。
このような制御により、上記第3の制約条件の1つである電力貯蔵装置10の放電電力制限の条件も満足させ、信頼性良く運転を継続させることができる。
【0041】
また、上述した買電抑制モードのうち、特に、電力指令値33としての買電電力指令値P*が0の場合の買電最小モードについて、以下に説明する。図6は買電最小モード時の電力潮流状態の例を示す図である。図6に示すように、発電装置2からの発電電力は、負荷3に負荷電力として供給され、足りない負荷電力分が電力貯蔵装置10から放電される。この場合の制御は、買電電力指令値P*を0とした買電抑制モードでの制御である。
【0042】
さらに、買電最小モードにおいて、発電装置2からの発電電力が負荷電力よりも大きい場合、余剰電力を電力系統1側へ売電する事もできる。この場合、第1電圧制御部37で電力貯蔵装置10への充電を禁止する。発電装置2からの発電電力は、負荷3に負荷電力として供給され、余剰電力は電力系統1側へ売電される。また負荷電力が足りない時は、電力貯蔵装置10から放電される。
【0043】
次に、第3動作モードとなる売電最大モードを以下に示す。
図7は売電最大モード時の電力潮流状態の例を示す図である。この場合、発電装置2から出力される発電電力をできるだけ多く電力系統1へ逆潮流して売電する動作を行う。図7に示すように、発電装置2からの発電電力は電力系統1に供給され、電力貯蔵装置10からの放電電力が負荷3に供給される。
売電最大モードでは、電力指令値33として売電電力最大値PAmaxが設定される。この売電電力最大値PAmaxは、充電優先モードの場合と同様に、上述した第2制約条件により決定されるもので、契約ブレーカの通電容量などにより決定されるものであるが、使用者が設定しても良い。なお、売電する電力方向を正としたため、この場合、売電電力最大値PAmaxは正の値である。
【0044】
制御装置30の基本制御は、充電優先モードおよび買電抑制モードの場合と同様であり、潮流電力Pfを電力指令値33に追従させ、逆潮流電力Pfaを抑制し、コンデンサ電圧Vcを目標電圧VAに制御するように、DC/DCコンバータ12およびDC/ACコンバータ13を出力制御する。
第1電力制御部35では、電力指令値33である売電電力最大値PAmaxから、潮流電力検出部21にて検出された潮流電力Pfである実際の売電電力を減算した(売電電力最大値−実際の売電電力)、即ち(PAmax−Pf)がゼロとなるようにDC/ACコンバータ13の出力電力指令31の基本情報である制御指令を出力する。例えば、(PAmax>Pf)の場合、電力貯蔵装置10の放電電力を増加させるように制御指令を増加させる。逆に(PAmax<Pf)の場合、電力貯蔵装置10の放電電力を減少させるように制御指令を減少させる。
【0045】
この場合、電力貯蔵装置10の放電電力を最大とするように、第1電力制御部35の制御指令が生成される。この制御指令は、負荷3の状態に依存せず決まる。そして、DC/ACコンバータ13の出力電力指令31による放電電力が負荷電力を超えると、負荷3よりも電力系統1側に逆潮流電力が流出する。第2電力制御部36では、逆潮流電力検出部22にて検出された逆潮流電力Pfaを抑制するように、制御指令を出力する。この制御指令により、電力貯蔵装置10の放電電力を減少させるようにDC/ACコンバータ13への出力電力指令31が低減される。そして、出力電力指令31は負荷電力の値となり、DC/ACコンバータ13は負荷電力のみを交流側に供給する。
【0046】
また、第1電圧制御部37は、平滑コンデンサ14の電圧Vcが目標電圧VAとなるように、DC/DCコンバータ12の出力電力指令32を生成する。そして結果として、DC/DCコンバータ12の出力電力指令32は、DC/ACコンバータ13の出力電力指令31と等しくなる。この時、DC/DCコンバータ12の出力電力およびDC/ACコンバータ13の出力電力は等しく、コンデンサ電圧Vcも目標電圧VAに一定制御される。
【0047】
このような制御により逆潮流電力を抑制でき、上記第1の制約条件を逸脱することなく、信頼性良く運転を継続することができる。
また、コンデンサ電圧Vcが正常範囲を逸脱することを防止でき、電力制御システム100の主回路の各部を構成する素子の耐圧に影響を及ぼすことなく、DC/ACコンバータ13およびDC/DCコンバータ12の出力電力指令31、32をスムーズに変化させて電力制御できる。
【0048】
以上、複数の動作モードについて説明したが、各動作モード間の遷移は、同じ制御装置30による同様の制御で、電力指令値33を変化させるのみで行う。制御装置30は、電力指令値33に応じてDC/ACコンバータ13およびDC/DCコンバータ12の出力電力指令31、32を変化させることで、各装置の停止や出力停止をすることなく、各動作モード間の遷移を行うことができる。
【0049】
また、電力制御システム100は、平滑コンデンサ14の電圧Vcを目標電圧VAに制御する第1電圧制御部37と別に第2電圧制御部38を備える。この第2電圧制御部38は、平滑コンデンサ14の電圧Vcに対して目標電圧VAより所定電圧αだけ高い上限電圧(VA+α)と目標電圧VAより所定電圧αだけ低い下限電圧(VA−α)との2種の基準電圧を用いる。そして、コンデンサ電圧Vcが上昇した場合、コンデンサ電圧Vcが上限電圧(VA+α)を超えた時点で動作を開始し、コンデンサ電圧Vcが上限電圧(VA+α)以下になるように制御する。また、コンデンサ電圧Vcが下降した場合、コンデンサ電圧Vcが下限電圧(VA−α)未満になった時点で動作を開始し、コンデンサ電圧Vcが下限電圧(VA−α)以上になるように制御する。
このため、第1電圧制御部37の動作と第2電圧制御部38の動作との干渉による制御の発振などが防止でき、平滑コンデンサ14の電圧変動を信頼性良く抑制でき、電力制御システム100を信頼性良く運転させることができる。
【0050】
また、第1電圧制御部37にリミッタ37bを設けてDC/DCコンバータ12の出力電力指令31を制限して、電力貯蔵装置10の要求を満たすように電力制御システム100を運転させる。そして、出力電力指令31が制限されている間に、第2電圧制御部38が動作することにより平滑コンデンサ14の電圧変動が抑制され、電力制御システム100は信頼性良く運転継続することができる。
【0051】
負荷3の負荷電力、発電装置2の発電電力、および電力貯蔵装置10の充放電電力の制限値Limは、非同期で刻一刻と変動し、電力状況は頻繁に変わる。上記実施の形態1による電力制御システム100では、電力状況の頻繁な変動時にも、制御装置30が、DC/ACコンバータ13およびDC/DCコンバータ12の出力電力指令31、32を適正に生成して制御するため、不要な運転停止やタイムラグを伴うことがなく、装置都合による電力変動の影響を負荷3や電力系統1に対して与えることなく、運転を継続することが可能である。
【0052】
また、電力制御システム100の運用時に、上位制御装置4の制御結果として、頻繁な動作モードの変更を行う必要がある場合にも、制御装置30が、DC/ACコンバータ13およびDC/DCコンバータ12の出力電力指令31、32を適正に生成して制御するため、不要な運転停止やタイムラグを伴うことがなく、装置都合による電力変動の影響を負荷3や電力系統1に対して与えることなく、運転を継続することが可能である。
【0053】
なお、上記実施の形態1では、電力制御システム100に太陽電池などの発電装置2を接続するものとしたが、発電装置2は接続しなくても良い。その場合、売電することはなく、動作モードが売電最大モードとなることはない。
【0054】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2では、上記実施の形態1で示した電力制御システム100の複数の動作モードの運用について説明する。
各動作モードは、電力制御システム100の使用者の要求による選択の他、上位制御装置4の制御によって切り替えられる。この上位制御装置4の制御では、環境に貢献するように動作モードを切り替え制御する。
【0055】
環境に貢献するよう動作モードを切り替え制御するには、時間帯や季節に応じて買電電力の量を制御する。例えば、電力需要が縮小する夜間などに、充電優先モードにより電力貯蔵装置10に充電を行い、電力需要が拡大する昼間などに買電抑制モードにより電力貯蔵装置10から放電させて負荷電力を賄う。このように、夜間など電力需要が縮小する時間帯の電力を利用し、昼間など電力需要が拡大する時間帯の負荷電力とすることで、時間帯毎の電力需要を平準化することが可能である。これにより、電力系統1は電力需要変動に対応するための火力発電所の発電量を削減することができ、結果として二酸化炭素の排出量を削減できることで環境に貢献できる。
【0056】
このような電力需要平準化の制御方法として、上位制御装置4が、時間帯、および季節などのタイムスケジュールを管理する方法と、上位制御装置4が電力需要情報を取得する方法の二通りの方法を有する。
タイムスケジュールを管理する方法では、上位制御装置4がタイムスケジュールを管理し、設定されたタイムスケジュールに基づいて電力指令値33を決定する。これにより、電力制御システム100の動作モードが切り替え制御される。
電力指令値33を決定する機能を有する上位制御装置4を、電力制御システム100が備える場合は、電力制御システム100が外部に依存することなく単独で動作することが可能である。
【0057】
電力需要情報を取得する方法では、上位制御装置4が更に上位の制御システムから電力需要情報を取得する。例えば、電力制御システム100が家庭に配置された場合には、その家庭が所属する町、村などのコミュニティの需要電力を管理する上位の制御システムから、コミュニティの需要電力を上記電力需要情報として取得する。そして、上位制御装置4にて、取得した需要電力に応じて電力指令値33を決定する。これにより、電力制御システム100の動作モードが切り替え制御される。
【0058】
上記実施の形態1で述べたように、電力制御システム100は、電力状況の頻繁な変動時にも、上位制御装置4の制御結果として、頻繁な動作モードの変更を行う必要がある場合にも、不要な運転停止やタイムラグを伴うことがなく、装置都合による電力変動の影響を負荷3や電力系統1に対して与えることなく、運転を継続することが可能である。このため、上記二通りの方法のいずれの場合にも、不要な運転停止やタイムラグを伴うことがなく、運転継続できる。特に、電力需要情報を取得する方法において、頻繁に電力需要が変化するような場合にも、電力制御システム100の動作が実際の電力需要変化に容易に追従し、負荷3や電力系統1への影響を軽減することが可能である。
【0059】
実施の形態3.
上記実施の形態2では、環境に貢献するように電力制御システム100の動作モードを切り替え制御したが、この実施の形態3では、上位制御装置4の制御により、使用者の利益が増加するように動作モードを切り替え制御する。
図8は、実施の形態3による電力制御システム100に適用される電力料金を示す図である。
電力料金体系は時事刻々と変化し、図8に示すように、電力料金の種別毎の大小関係を、以下の3ケースで考える。
CASE1は、売電電力料金>買電電力料金(昼間)>買電電力料金(夜間)
CASE2は、買電電力料金(昼間)>売電電力料金>買電電力料金(夜間)
CASE3は、買電電力料金(昼間)>買電電力料金(夜間)>売電電力料金
である。
【0060】
この実施の形態3では、上位制御装置4が電力料金情報を取得し、その料金情報によって、以下のように動作モードを切り替えるように、電力指令値33を決定する。
CASE1およびCASE2では、料金の安い夜間に充電優先モードにより電力制御システム100を動作させ、電力貯蔵装置10に充電を行う。そして昼間は、売電最大モードにより電力制御システム100を動作させて発電装置2の発電電力を全て売電し、電力貯蔵装置10からの放電電力により昼間の負荷電力を全て賄い、買電は行わない。これにより、使用者は最大限の利益を得ることが可能となる。また、発電装置2の売電料金と買電料金との差が小さい場合などには、昼間の負荷電力を、電力貯蔵装置10からの放電電力と発電装置2の発電電力とにより全て賄い、買電を行わず、かつ、余剰な発電電力のみ売電するようにしても利益を得ることができる。
【0061】
CASE3では、夜間に充電優先モードにより電力制御システム100を動作させ、電力貯蔵装置10に充電を行う。そして昼間は、買電最小モードにより電力制御システム100を動作させ、電力貯蔵装置10からの放電電力と発電装置2の発電電力とにより昼間の負荷電力を全て賄い、買電は行わない。これにより、使用者は最大限の利益を得ることが可能となる。
CASE3の場合では、発電装置2の発電電力の変動もしくは負荷電力の変動により、(発電電力>負荷電力)となる場合に、その余剰電力を電力貯蔵装置10に充電する。電力制御システム100では、電力状況の変動に対し、システム動作の停止やタイムラグなく、電力貯蔵装置10の充電と放電とを連続的に切り替えることができる。このため、電力系統1の安定性や負荷3の運転状況に影響を及ぼすことなく電力潮流制御を行い、しかも使用者は最大限の利益を得ることが可能となる。
【0062】
なお、上位制御装置4が、上記実施の形態2による環境に貢献するように動作モードを切り替え制御する第1モードと、この実施の形態3で説明した、使用者の利益が増加するように動作モードを切り替え制御する第2モードとのいずれかを選択して用いるようにしても良い。この場合、第1モードと第2モードとを外部入力により切り替える機能を上位制御装置4が備えて、電力制御システム100の使用者により切り替え可能にしても良い。
【0063】
なお、この発明は、発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8