特許第6033446号(P6033446)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6033446ブロックイソシアネート、塗料組成物、接着剤組成物および物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6033446
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】ブロックイソシアネート、塗料組成物、接着剤組成物および物品
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/80 20060101AFI20161121BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20161121BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   C08G18/80
   C09D175/04
   C09J175/04
【請求項の数】12
【全頁数】49
(21)【出願番号】特願2015-532829(P2015-532829)
(86)(22)【出願日】2014年8月12日
(86)【国際出願番号】JP2014071289
(87)【国際公開番号】WO2015025776
(87)【国際公開日】20150226
【審査請求日】2016年1月28日
(31)【優先権主張番号】特願2013-173514(P2013-173514)
(32)【優先日】2013年8月23日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-89722(P2014-89722)
(32)【優先日】2014年4月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】福田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 潤
(72)【発明者】
【氏名】内田 隆
(72)【発明者】
【氏名】増井 昌和
(72)【発明者】
【氏名】立花 真二
(72)【発明者】
【氏名】水間 浩一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 謙一
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−521541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/80
C09D 175/04
C09J 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基がブロック剤によってブロックされた潜在イソシアネート基を含有するブロックイソシアネートであって、
第1ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基と、第2ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基とを含有し、
前記第1ブロック剤は、下記一般式(1)で示され、前記第2ブロック剤よりもイソシアネート基を活性化させる触媒作用が大きく、
前記第1潜在イソシアネート基の含有割合が、前記第1潜在イソシアネート基および前記第2潜在イソシアネート基の総モル量に対して、1モル%以上30モル%以下である
ことを特徴とする、ブロックイソシアネート。
【化1】
(式中、R〜Rは、炭素数1〜12の炭化水素基または水素原子を示し、かつ、R〜Rの少なくともいずれか1つが水素原子を示し、また、RおよびRが互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。Rは、炭素数1〜12の炭化水素基、水素原子、または、−NR(RおよびRは、炭素数1〜12の炭化水素基を示し、また、RおよびRが互いに結合してヘテロ環を形成するとともに、RおよびRが互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。)で示される原子団を示す。)
【請求項2】
一般式(1)で示される第1ブロック剤において、Rが−NR(RおよびRは、炭素数1〜12の炭化水素基を示し、また、RおよびRが互いに結合してヘテロ環を形成するとともに、RおよびRが互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。)で示される原子団であることを特徴とする、請求項1に記載のブロックイソシアネート。
【請求項3】
一般式(1)で示される第1ブロック剤において、R〜Rは、炭素数1〜12のアルキル基または水素原子を示し、かつ、R〜Rの少なくともいずれか1つが水素原子を示し、Rは、−NR(RおよびRは、炭素数1〜12のアルキル基を示す。)を示すことを特徴とする、請求項1または2に記載のブロックイソシアネート。
【請求項4】
前記第2ブロック剤は、アミン系化合物、ピラゾール系化合物、および、イミダゾール系化合物からなる群から選択される少なくとも一種のブロック剤であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のブロックイソシアネート。
【請求項5】
前記第2ブロック剤の解離温度が、130℃以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のブロックイソシアネート。
【請求項6】
前記第1潜在イソシアネート基と前記第2潜在イソシアネート基とが1分子中に併有されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のブロックイソシアネート。
【請求項7】
活性水素基を含有する親水性化合物により変性されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のブロックイソシアネート。
【請求項8】
前記ブロックイソシアネートは、イソシアネート基の一部が前記親水性化合物の前記活性水素基と反応され、イソシアネート基の残部が遊離状態とされる親水性基含有ポリイソシアネートと、前記第1ブロック剤および前記第2ブロック剤との反応生成物であり、
前記親水性化合物は、少なくとも3つ連続したエチレンオキシド基を有するポリオキシエチレン化合物であり、
前記親水性基含有ポリイソシアネートのエチレンオキシド基の含有量は、7質量%以上30質量%以下であることを特徴とする、請求項7に記載のブロックイソシアネート。
【請求項9】
ブロックイソシアネートを含有し、
前記ブロックイソシアネートは、イソシアネート基がブロック剤によってブロックされた潜在イソシアネート基を含有するブロックイソシアネートであって、
第1ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基と、第2ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基とを含有し、
前記第1ブロック剤は、下記一般式(1)で示され、前記第2ブロック剤よりもイソシアネート基を活性化させる触媒作用が大きく、
前記第1潜在イソシアネート基の含有割合が、前記第1潜在イソシアネート基および前記第2潜在イソシアネート基の総モル量に対して、1モル%以上30モル%以下である
ことを特徴とする、塗料組成物。
【化2】
(式中、R〜Rは、炭素数1〜12の炭化水素基または水素原子を示し、かつ、R〜Rの少なくともいずれか1つが水素原子を示し、また、RおよびRが互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。Rは、炭素数1〜12の炭化水素基、水素原子、または、−NR(RおよびRは、炭素数1〜12の炭化水素基を示し、また、RおよびRが互いに結合してヘテロ環を形成するとともに、RおよびRが互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。)で示される原子団を示す。)
【請求項10】
ブロックイソシアネートを含有し、
前記ブロックイソシアネートは、イソシアネート基がブロック剤によってブロックされた潜在イソシアネート基を含有するブロックイソシアネートであって、
第1ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基と、第2ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基とを含有し、
前記第1ブロック剤は、下記一般式(1)で示され、前記第2ブロック剤よりもイソシアネート基を活性化させる触媒作用が大きく、
前記第1潜在イソシアネート基の含有割合が、前記第1潜在イソシアネート基および前記第2潜在イソシアネート基の総モル量に対して、1モル%以上30モル%以下である
ことを特徴とする、接着剤組成物。
【化3】
(式中、R〜Rは、炭素数1〜12の炭化水素基または水素原子を示し、かつ、R〜Rの少なくともいずれか1つが水素原子を示し、また、RおよびRが互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。Rは、炭素数1〜12の炭化水素基、水素原子、または、−NR(RおよびRは、炭素数1〜12の炭化水素基を示し、また、RおよびRが互いに結合してヘテロ環を形成するとともに、RおよびRが互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。)で示される原子団を示す。)
【請求項11】
塗料組成物により塗装されており、
前記塗料組成物は、ブロックイソシアネートを含有し、
前記ブロックイソシアネートは、イソシアネート基がブロック剤によってブロックされた潜在イソシアネート基を含有するブロックイソシアネートであって、
第1ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基と、第2ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基とを含有し、
前記第1ブロック剤は、下記一般式(1)で示され、前記第2ブロック剤よりもイソシアネート基を活性化させる触媒作用が大きく、
前記第1潜在イソシアネート基の含有割合が、前記第1潜在イソシアネート基および前記第2潜在イソシアネート基の総モル量に対して、1モル%以上30モル%以下である
ことを特徴とする、物品。
【化4】
(式中、R〜Rは、炭素数1〜12の炭化水素基または水素原子を示し、かつ、R〜Rの少なくともいずれか1つが水素原子を示し、また、RおよびRが互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。Rは、炭素数1〜12の炭化水素基、水素原子、または、−NR(RおよびRは、炭素数1〜12の炭化水素基を示し、また、RおよびRが互いに結合してヘテロ環を形成するとともに、RおよびRが互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。)で示される原子団を示す。)
【請求項12】
接着剤組成物により接着されており、
前記接着剤組成物は、ブロックイソシアネートを含有し、
前記ブロックイソシアネートは、イソシアネート基がブロック剤によってブロックされた潜在イソシアネート基を含有するブロックイソシアネートであって、
第1ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基と、第2ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基とを含有し、
前記第1ブロック剤は、下記一般式(1)で示され、前記第2ブロック剤よりもイソシアネート基を活性化させる触媒作用が大きく、
前記第1潜在イソシアネート基の含有割合が、前記第1潜在イソシアネート基および前記第2潜在イソシアネート基の総モル量に対して、1モル%以上30モル%以下である
ことを特徴とする、物品。
【化5】
(式中、R〜Rは、炭素数1〜12の炭化水素基または水素原子を示し、かつ、R〜Rの少なくともいずれか1つが水素原子を示し、また、RおよびRが互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。Rは、炭素数1〜12の炭化水素基、水素原子、または、−NR(RおよびRは、炭素数1〜12の炭化水素基を示し、また、RおよびRが互いに結合してヘテロ環を形成するとともに、RおよびRが互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。)で示される原子団を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックイソシアネート、塗料組成物、接着剤組成物および物品に関し、詳しくは、硬化剤として用いられるブロックイソシアネート、そのブロックイソシアネートを含有する塗料組成物および接着剤組成物、さらに、それら塗料組成物および接着剤組成物が用いられる物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロックイソシアネートは、加熱によりブロック剤が解離し、イソシアネート基が再生するイソシアネートであり、ポットライフが長く、加工性に優れるため、塗料、接着剤など、ポリオール成分(主剤)とイソシアネート成分(硬化剤)とを硬化させて得られるポリウレタン樹脂の硬化剤として、よく使用されている。
【0003】
このようなブロックイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート3量体のイソシアネート基に、ブロック剤として、30〜70モル%のメチルエチルケトンオキシム(MEKO)、および、30〜70モル%の3,5−ジメチルピラゾール(DMP)を反応させて得られるブロックイソシアネートが提案されている(例えば、特許文献1(実施例1〜5)参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−236388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、ブロックイソシアネートを硬化剤として用いる場合には、通常、加熱によりブロック剤を解離(脱保護)させ、硬化させる必要があるところ、近年では、低エネルギー化および低コスト化の観点から、比較的低温下においてブロック剤を解離させること、すなわち、低温硬化性が要求されている。
【0006】
しかしながら、上記ブロック剤を用いて得られるブロックイソシアネートは、低温硬化性が十分ではないという不具合がある。
【0007】
本発明の目的は、低温硬化性に優れるブロックイソシアネート、および、そのブロックイソシアネートを含有する塗料組成物および接着剤組成物、さらに、それら塗料組成物および接着剤組成物が用いられる物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のブロックイソシアネートは、イソシアネート基がブロック剤によってブロックされた潜在イソシアネート基を含有するブロックイソシアネートであって、第1ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基と、第2ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基とを含有し、前記第1ブロック剤は、下記一般式(1)で示され、前記第2ブロック剤よりもイソシアネート基を活性化させる触媒作用が大きいことを特徴としている。
【0009】
【化1】
【0010】
(式中、R1〜R3は、炭素数1〜12の炭化水素基または水素原子を示し、かつ、R1〜R3の少なくともいずれか1つが水素原子を示し、また、R1およびR3が互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。R4は、炭素数1〜12の炭化水素基、水素原子、または、−NR(R5およびR6は、炭素数1〜12の炭化水素基を示し、また、R5およびR1が互いに結合してヘテロ環を形成するとともに、R6およびR3が互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。)で示される原子団を示す。)
また、本発明のブロックイソシアネートでは、第1潜在イソシアネート基の含有割合が、第1潜在イソシアネート基および第2潜在イソシアネート基の総モル量に対して、1モル%以上80モル%以下であることが好適である。
【0011】
また、本発明のブロックイソシアネートでは、一般式(1)で示される第1ブロック剤において、R4が−NR(R5およびR6は、炭素数1〜12の炭化水素基を示し、また、R5およびR1が互いに結合してヘテロ環を形成するとともに、R6およびR3が互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。)で示される原子団であることが好適である。
【0012】
また、本発明のブロックイソシアネートでは、一般式(1)で示される第1ブロック剤において、R1〜R3は、炭素数1〜12のアルキル基または水素原子を示し、かつ、R1〜R3の少なくともいずれか1つが水素原子を示し、R4は、−NR(R5およびR6は、炭素数1〜12のアルキル基を示す。)を示すことが好適である。
【0013】
また、本発明のブロックイソシアネートでは、第2ブロック剤の解離温度が、130℃以下であることが好適である。
【0014】
また、本発明のブロックイソシアネートでは、第1潜在イソシアネート基と第2潜在イソシアネート基とが1分子中に併有されることが好適である。
【0015】
また、本発明のブロックイソシアネートでは、活性水素基を含有する親水性化合物により変性されていることが好適である。
【0016】
また、本発明の塗料組成物は、上記のブロックイソシアネートを含有することを特徴としている。
【0017】
また、本発明の接着剤組成物は、上記のブロックイソシアネートを含有することを特徴としている。
【0018】
また、本発明の物品は、上記の塗料組成物により塗装されていることを特徴としている。
【0019】
また、本発明の物品は、上記の接着剤組成物により接着されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明のブロックイソシアネートは、低温硬化性に優れる。本発明の塗料組成物および接着剤組成物、さらに、それら組成物が用いられる物品は、低エネルギー化および低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のブロックイソシアネートは、イソシアネート基がブロック剤(第1ブロック剤および第2ブロック剤)によってブロックされた潜在イソシアネート基を含有するブロックイソシアネートであって、例えば、ポリイソシアネート化合物と、第1ブロック剤および第2ブロック剤とを反応させることにより、得ることができる。
【0022】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ポリイソシアネート単量体、ポリイソシアネート誘導体などが挙げられる。
【0023】
ポリイソシアネート単量体としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートなどのポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0024】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TDI)、フェニレンジイソシアネート(m−、p−フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物)、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジフェニルメタンジイソシネート(4,4’−、2,4’−または2,2’−ジフェニルメタンジイソシネートもしくはその混合物)(MDI)、4,4’−トルイジンジイソシアネート(TODI)、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0025】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート(1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(1,3−または1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TMXDI)、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼンなどの芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0026】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート)、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプエートなどの脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0027】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロジイソシアネート)(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(4,4’−、2,4’−または2,2’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート、これらのTrans,Trans−体、Trans,Cis−体、Cis,Cis−体、もしくはその混合物))(H12MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート(各種異性体もしくはその混合物)(NBDI)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物)(HXDI)などの脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
【0028】
これらポリイソシアネート単量体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0029】
ポリイソシアネート誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート単量体の多量体(例えば、2量体、3量体(例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体)、5量体、7量体など)、アロファネート変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と、後述する低分子量ポリオールとの反応より生成するアロファネート変性体など)、ポリオール変性体(例えば、ポリイソシアネート単量体と後述する低分子量ポリオールとの反応より生成するポリオール変性体(アルコール付加体)など)、ビウレット変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と、水やアミン類との反応により生成するビウレット変性体など)、ウレア変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体とジアミンとの反応により生成するウレア変性体など)、オキサジアジントリオン変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド変性体(上記したポリイソシアネート単量体の脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体など)、ウレトジオン変性体、ウレトンイミン変性体などが挙げられる。
【0030】
さらに、ポリイソシアネート誘導体として、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)なども挙げられる。
【0031】
これらポリイソシアネート誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0032】
これらポリイソシアネート化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0033】
なお、ポリイソシアネート化合物を2種類以上併用する場合には、例えば、ブロックイソシアネートの製造時において、2種類以上のポリイソシアネート化合物を同時に反応させてもよく、また、各ポリイソシアネート化合物を個別に用いて得られたブロックイソシアネートを混合してもよい。
【0034】
ポリイソシアネート化合物として、好ましくは、脂肪族ポリイソシアネートおよびその誘導体、脂環族ポリイソシアネートおよびその誘導体が挙げられる。
【0035】
上記のポリイソシアネート化合物を用いれば、低温硬化性に優れ、また、後述するように、水に分散させる場合にも比較的長いポットライフを有し、さらには、一液型ポリウレタン樹脂の硬化剤成分として使用可能なブロックイソシアネートを得ることができる。
【0036】
第1ブロック剤は、イソシアネート基をブロックして不活性化する一方、脱ブロック後にはイソシアネート基を活性化し、また、イソシアネート基をブロックした状態および脱ブロックされた状態において、イソシアネート基を活性化させる触媒作用(後述)を有する。
【0037】
具体的には、第1ブロック剤は、後述する第2ブロック剤よりもイソシアネート基を活性化させる触媒作用(後述)が大きく、下記一般式(1)で示される。
【0038】
【化1】
【0039】
(式中、R1〜R3は、炭素数1〜12の炭化水素基または水素原子を示し、かつ、R1〜R3の少なくともいずれか1つが水素原子を示し、また、R1およびR3が互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。R4は、炭素数1〜12の炭化水素基、水素原子、または、−NR(R5およびR6は、炭素数1〜12の炭化水素基を示し、また、R5およびR1が互いに結合してヘテロ環を形成するとともに、R6およびR3が互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。)で示される原子団を示す。)
上記一般式(1)において、R1〜R3は、互いに同一または相異なって、炭素数1〜12の炭化水素基または水素原子を示し、かつ、R1〜R3の少なくともいずれか1つが水素原子を示す。
【0040】
R1〜R3で示される炭素数1〜12の炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基などが挙げられる。
【0041】
炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、炭素数1〜12の鎖状アルキル基、
炭素数3〜12の環状アルキル基などが挙げられる。
【0042】
炭素数1〜12の鎖状アルキル基としては、直鎖または分岐の炭素数1〜12の鎖状アルキル基が挙げられ、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、tert−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、イソノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなどが挙げられる。
【0043】
炭素数3〜12の環状アルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロドデシルなどが挙げられる。
【0044】
炭素数6〜12のアリール基としては、例えば、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、アズレニル、ビフェニルなどが挙げられる。
【0045】
これら炭素数1〜12の炭化水素基は、R1〜R3において、互いに同一または相異なっていてもよい。
【0046】
炭素数1〜12の炭化水素基として、低温硬化性の向上を図る観点から、好ましくは、炭素数1〜12のアルキル基が挙げられ、より好ましくは、炭素数1〜12の鎖状アルキル基が挙げられる。
【0047】
また、R1およびR3は、互いに結合してヘテロ環を形成することができる。
【0048】
R1およびR3が互いに結合して形成されるヘテロ環は、−N=C−N−構造を有する含窒素ヘテロ環であって、特に制限されず、例えば、3〜20員環のヘテロ環、好ましくは、3〜10員環、より好ましくは、3〜8員環、さらに好ましくは、5〜7員環のヘテロ環が挙げられる。また、ヘテロ環は、例えば、単環状であってもよく、例えば、複数の単環が一辺を共有する多環状であってもよい。また、ヘテロ環は、共役系ヘテロ環であってもよい。なお、R1およびR3が互いに結合してヘテロ環を形成する場合、R2は、水素原子を示す。
【0049】
このようなヘテロ環構造として、具体的には、例えば、イミダゾール構造、イミダゾリン構造、ピリミジン構造などが挙げられる。
【0050】
上記一般式(1)において、R4は、炭素数1〜12の炭化水素基、水素原子、または、−NR(R5およびR6は、炭素数1〜12の炭化水素基を示し、また、R5およびR1が互いに結合してヘテロ環を形成するとともに、R6およびR3が互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。)で示される原子団を示し、好ましくは、炭素数1〜12の炭化水素基、または、−NR(R5およびR6は、炭素数1〜12の炭化水素基を示し、また、R5およびR1が互いに結合してヘテロ環を形成するとともに、R6およびR3が互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。)で示される原子団を示す。
【0051】
R4で示される炭素数1〜12の炭化水素基としては、上記した炭素数1〜12の炭化水素基が挙げられ、低温硬化性の向上を図る観点から、好ましくは、炭素数1〜12のアルキル基が挙げられ、より好ましくは、炭素数1〜12の鎖状アルキル基が挙げられる。
【0052】
−NRで示される原子団において、R5およびR6は、互いに同一または相異なって、炭素数1〜12の炭化水素基を示す。
【0053】
R5およびR6で示される炭素数1〜12の炭化水素基としては、上記した炭素数1〜12の炭化水素基が挙げられ、低温硬化性の向上を図る観点から、好ましくは、炭素数1〜12のアルキル基が挙げられ、より好ましくは、炭素数1〜12の鎖状アルキル基が挙げられる。
【0054】
また、R4が−NRで示される原子団である場合には、R5およびR1が互いに結合してヘテロ環を形成するとともに、R6およびR3が互いに結合してヘテロ環を形成することができる。また、それらR1、R3、R5およびR6から形成されるヘテロ環は、複数の単環が一辺を共有する多環状であってもよい。その場合に形成されるヘテロ環は、−N=C−N−構造を有する含窒素ヘテロ環であって、特に制限されず、例えば、6〜20員環のヘテロ環、好ましくは、6〜15員環、より好ましくは、6〜12員環、さらに好ましくは、10〜12員環のヘテロ環が挙げられる。また、ヘテロ環は、共役系ヘテロ環であってもよい。なお、R1、R3、R5およびR6がヘテロ環を形成する場合、R2は、水素原子を示す。
【0055】
このようなヘテロ環構造として、具体的には、例えば、トリアザビシクロ環構造などが挙げられる。
【0056】
R4として、低温硬化性の向上を図る観点から、好ましくは、−NR(R5およびR6は、炭素数1〜12の炭化水素基を示し、また、R5およびR1が互いに結合してヘテロ環を形成するとともに、R6およびR3が互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。)で示される原子団が挙げられる。
【0057】
第1ブロック剤として、具体的には、イミダゾール系化合物、イミダゾリン系化合物、ピリミジン系化合物、グアニジン系化合物などが挙げられる。
【0058】
イミダゾール系化合物としては、例えば、イミダゾール(解離温度100℃)、ベンズイミダゾール(解離温度120℃)、2−メチルイミダゾール(解離温度70℃)、4−メチルイミダゾール(解離温度100℃)、2−エチルイミダゾール(解離温度70℃)、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどが挙げられる。
【0059】
イミダゾリン系化合物としては、例えば、2−メチルイミダゾリン(解離温度110℃)、2−フェニルイミダゾリンなどが挙げられる。
【0060】
ピリミジン系化合物としては、例えば、2−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジンなどが挙げられる。
【0061】
グアニジン系化合物としては、例えば、3,3−ジメチルグアニジンなどの3,3−ジアルキルグアニジン、例えば、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(解離温度120℃)などの1,1,3,3−テトラアルキルグアニジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エンなどが挙げられる。
【0062】
このような第1ブロック剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0063】
第1ブロック剤として、好ましくは、R1〜R3が、炭素数1〜12のアルキル基または水素原子を示し、かつ、R1〜R3の少なくともいずれか1つが水素原子を示し、R4が、−NR(R5およびR6は、炭素数1〜12のアルキル基を示す。)で示される第1ブロック剤が挙げられ、より好ましくは、グアニジン系化合物が挙げられ、さらに好ましくは、1,1,3,3−テトラアルキルグアニジンが挙げられ、とりわけ好ましくは、1,1,3,3−テトラメチルグアニジンが挙げられる。
【0064】
このような第1ブロック剤を用いれば、低温硬化性およびポットライフの向上を図ることができる。
【0065】
また、第1ブロック剤の解離温度は、例えば、60℃以上、好ましくは、80℃以上であり、例えば、150℃以下、好ましくは、130℃以下である。
【0066】
なお、ブロック剤の解離温度は、以下の方法により測定することができる。
【0067】
すなわち、ブロックイソシアネートをシリコンウェハーに塗布し、加熱しながらIR測定によってイソシアネート基が再生する温度を観察することにより、ブロック剤の解離温度を測定できる。なお、ブロック剤の触媒能(後述)が高く、再生したイソシアネート基を観察できない場合には、後述する塗料組成物および接着剤組成物を調製する際に用いるポリオール化合物(後述)と混合し、その混合物をシリコンウェハーに塗布し、加熱しながらIR測定によってポリオール化合物の水酸基が反応する温度を観察することにより、ブロック剤の解離温度を測定できる。
【0068】
第2ブロック剤は、イソシアネート基をブロックして不活性化する一方、脱ブロック後にはイソシアネート基を再生するブロック剤であって、また、再生されたイソシアネート基を活性化させる程度の触媒作用(後述)を有しないか、または、再生されたイソシアネート基を活性化させる程度の触媒作用(後述)を有したとしてもその触媒作用(後述)が上記の第1ブロック剤よりも小さいブロック剤である。
【0069】
このような第2ブロック剤として、具体的には、例えば、アルコール系化合物、フェノール系化合物、活性メチレン系化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、オキシム系化合物、カルバミン酸系化合物、尿素系化合物、酸アミド系(ラクタム系)化合物、酸イミド系化合物、トリアゾール系化合物、ピラゾール系化合物、メルカプタン系化合物、重亜硫酸塩などが挙げられる。
【0070】
アルコール系化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、1−または2−オクタノール、シクロへキシルアルコール、エチレングリコール、ベンジルアルコール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,2−トリクロロエタノール、2−(ヒドロキシメチル)フラン、2−メトキシエタノール、メトキシプロパノール、2−エトキシエタノール、n−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−エトキシエトキシエタノール、2−エトキシブトキシエタノール、ブトキシエトキシエタノール、2−ブトキシエチルエタノール、2−ブトキシエトキシエタノール、N,N−ジブチル−2−ヒドロキシアセトアミド、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−モルホリンエタノール、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール、3−オキサゾリジンエタノール、2−ヒドロキシメチルピリジン(解離温度140℃)、フルフリルアルコール、12−ヒドロキシステアリン酸、トリフェニルシラノール、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどが挙げられる。
【0071】
フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n−ブチルフェノール、s−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、n−ヘキシルフェノール、2−エチルヘキシルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ノニルフェノール、ジ−n−プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ−n−ブチルフェノール、ジ−s−ブチルフェノール、ジ−t−ブチルフェノール、ジ−n−オクチルフェノール、ジ−2−エチルヘキシルフェノール、ジ−n−ノニルフェノール、ニトロフェノール、ブロモフェノール、クロロフェノール、フルオロフェノール、ジメチルフェノール、スチレン化フェノール、メチルサリチラート、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、ヒドロキシ安息香酸2−エチルヘキシル、4−[(ジメチルアミノ)メチル]フェノール、4−[(ジメチルアミノ)メチル]ノニルフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、2−ヒドロキシピリジン(解離温度80℃)、2−または8−ヒドロキシキノリン、2−クロロ−3−ピリジノール、ピリジン−2−チオール(解離温度70℃)などが挙げられる。
【0072】
活性メチレン系化合物としては、例えば、メルドラム酸、マロン酸ジアルキル(例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジ−t−ブチル、マロン酸ジ2−エチルヘキシル、マロン酸メチルn−ブチル、マロン酸エチルn−ブチル、マロン酸メチルs−ブチル、マロン酸エチルs−ブチル、マロン酸メチルt−ブチル、マロン酸エチルt−ブチル、メチルマロン酸ジエチル、マロン酸ジベンジル、マロン酸ジフェニル、マロン酸ベンジルメチル、マロン酸エチルフェニル、マロン酸t−ブチルフェニル、イソプロピリデンマロネートなど)、アセト酢酸アルキル(例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−ブチル、アセト酢酸t−ブチル、アセト酢酸ベンジル、アセト酢酸フェニルなど)、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセチルアセトン、シアノ酢酸エチルなどが挙げられる。
【0073】
アミン系化合物としては、例えば、ジブチルアミン、ジフェニルアミン、アニリン、N−メチルアニリン、カルバゾール、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル)アミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン(解離温度130℃)、イソプロピルエチルアミン、2,2,4−、または、2,2,5−トリメチルヘキサメチレンアミン、N−イソプロピルシクロヘキシルアミン(解離温度140℃)、ジシクロヘキシルアミン(解離温度130℃)、ビス(3,5,5−トリメチルシクロヘキシル)アミン、ピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン(解離温度130℃)、t−ブチルメチルアミン、t−ブチルエチルアミン(解離温度120℃)、t−ブチルプロピルアミン、t−ブチルブチルアミン、t−ブチルベンジルアミン(解離温度120℃)、t−ブチルフェニルアミン、2,2,6−トリメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(解離温度80℃)、(ジメチルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン、6−メチル−2−ピペリジン、6−アミノカプロン酸などが挙げられる。
【0074】
イミン系化合物としては、例えば、エチレンイミン、ポリエチレンイミン、1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、グアニジンなどが挙げられる。
【0075】
オキシム系化合物としては、例えば、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム(解離温度130℃)、シクロヘキサノンオキシム、ジアセチルモノオキシム、ペンゾフェノオキシム、2,2,6,6−テトラメチルシクロヘキサノンオキシム、ジイソプロピルケトンオキシム、メチルt−ブチルケトンオキシム、ジイソブチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、メチルイソプロピルケトンオキシム、メチル2,4−ジメチルペンチルケトンオキシム、メチル3−エチルへプチルケトンオキシム、メチルイソアミルケトンオキシム、n−アミルケトンオキシム、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオンモノオキシム、4,4’−ジメトキシベンゾフェノンオキシム、2−ヘプタノンオキシムなどが挙げられる。
【0076】
カルバミン酸系化合物としては、例えば、N−フェニルカルバミン酸フェニルなどが挙げられる。
【0077】
尿素系化合物としては、例えば、尿素、チオ尿素、エチレン尿素などが挙げられる。
【0078】
酸アミド系(ラクタム系)化合物としては、例えば、アセトアニリド、N−メチルアセトアミド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、ピロリドン、2,5−ピペラジンジオン、ラウロラクタムなどが挙げられる。
【0079】
酸イミド系化合物としては、例えば、コハク酸イミド、マレイン酸イミド、フタルイミドなどが挙げられる。
【0080】
トリアゾール系化合物としては、例えば、1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0081】
ピラゾール系化合物としては、例えば、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール(解離温度120℃)、3,5−ジイソプロピルピラゾール、3,5−ジフェニルピラゾール、3,5−ジ-t-ブチルピラゾール、3−メチルピラゾール、4−ベンジル−3,5−ジメチルピラゾール、4−ニトロ−3,5−ジメチルピラゾール、4−ブロモ−3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−フェニルピラゾールなどが挙げられる。
【0082】
メルカプタン系化合物としては、例えば、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、ヘキシルメルカプタンなどが挙げられる。
【0083】
重亜硫酸塩としては、例えば、重亜硫酸ソーダなどが挙げられる。
【0084】
また、第2ブロック剤としては、上記に限定されず、例えば、ベンゾオキサゾロン、無水イサト酸、テトラブチルホスホニウム・アセタートなどのその他のブロック剤も挙げられる。
【0085】
イソシアネート基を活性化させる触媒作用(後述)を有する第2ブロック剤としては、例えば、上記一般式(1)で示されるブロック剤が挙げられ、具体的には、例えば、上記したイミダゾール系化合物、上記したイミダゾリン系化合物、上記したピリミジン系化合物、上記したグアニジン系化合物などが挙げられる。
【0086】
なお、第2ブロック剤として上記一般式(1)で示されるブロック剤が用いられる場合には、イソシアネート基を活性化させる触媒作用(後述)が第1ブロック剤よりも小さいブロック剤が選択される。
【0087】
これら第2ブロック剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0088】
第2ブロック剤として、好ましくは、アミン系化合物(さらに好ましくは、ジイソプロピルアミン、2,6−ジメチルピペリジン、t−ブチルエチルアミン、t−ブチルベンジルアミン)、オキシム系化合物(さらに好ましくは、メチルエチルケトオキシム)、酸アミド系化合物(さらに好ましくは、ε−カプロラクタム)、ピラゾール系化合物(さらに好ましくは、3,5−ジメチルピラゾール)、イミダゾール系化合物(さらに好ましくは、イミダゾール)が挙げられ、とりわけ好ましくは、t−ブチルエチルアミン、t−ブチルベンジルアミン、メチルエチルケトオキシム、3,5−ジメチルピラゾール、イミダゾールが挙げられる。
【0089】
また、第2ブロック剤として、好ましくは、イソシアネート基を活性化させる程度の触媒作用(後述)を有しない第2ブロック剤が挙げられ、具体的には、アミン系化合物(さらに好ましくは、ジイソプロピルアミン、2,6−ジメチルピペリジン、t−ブチルエチルアミン、t−ブチルベンジルアミン)、オキシム系化合物(さらに好ましくは、メチルエチルケトオキシム)、酸アミド系化合物(さらに好ましくは、ε−カプロラクタム)、ピラゾール系化合物(さらに好ましくは、3,5−ジメチルピラゾール)が挙げられ、とりわけ好ましくは、t−ブチルエチルアミン、t−ブチルベンジルアミン、メチルエチルケトオキシム、3,5−ジメチルピラゾールが挙げられる。
【0090】
第2ブロック剤の解離温度は、例えば、150℃以下、好ましくは、140℃以下、より好ましくは、130℃以下であり、通常、60℃以上である。
【0091】
解離温度が上記範囲であれば、低温硬化性およびポットライフの向上を図ることができる。
【0092】
また、第1ブロック剤および第2ブロック剤の組み合わせとして、低温硬化性の観点から、好ましくは、第1ブロック剤が、1,1,3,3−テトラアルキルグアニジンであり、第2ブロック剤が、ジイソプロピルアミン、2,6−ジメチルピペリジン、t−ブチルエチルアミン、t−ブチルベンジルアミン、メチルエチルケトオキシム、ε−カプロラクタム、3,5−ジメチルピラゾール、イミダゾールからなる群から選択される少なくとも1種類であることが挙げられ、とりわけ好ましくは、第2ブロック剤が、ジイソプロピルアミン、2,6−ジメチルピペリジン、t−ブチルエチルアミン、t−ブチルベンジルアミン、メチルエチルケトオキシム、ε−カプロラクタム、3,5−ジメチルピラゾールからなる群から選択される少なくとも1種類であることが挙げられる。
【0093】
そして、ブロックイソシアネートは、上記のポリイソシアネート化合物と第1ブロック剤および第2ブロック剤とを反応させることによって、得ることができる。
【0094】
なお、この方法における反応順序は、特に制限されず、例えば、まず、ポリイソシアネート化合物と第1ブロック剤とを、遊離状態のイソシアネート基が残存する割合で反応させた後、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックイソシアネートと第2ブロック剤とを反応させることができる。
【0095】
また、例えば、まず、ポリイソシアネート化合物と第2ブロック剤とを、遊離状態のイソシアネート基が残存する割合で反応させた後、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックイソシアネートと第1ブロック剤とを反応させることもできる。
【0096】
さらには、ポリイソシアネート化合物と第1ブロック剤および第2ブロック剤とを同時に反応させてもよい。
【0097】
好ましくは、まず、ポリイソシアネート化合物と第2ブロック剤とを、遊離状態のイソシアネート基が残存する割合で反応させる。
【0098】
このような場合、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対する、第2ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.2以上、好ましくは、0.5以上、例えば、1.5以下、好ましくは、1.2以下、より好ましくは、1.1以下である。
【0099】
また、反応条件としては、例えば、大気圧下、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気下、反応温度が、例えば、0℃以上、好ましくは、20℃以上であり、例えば、80℃以下、好ましくは、60℃以下である。また、反応時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.0時間以上であり、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
【0100】
これにより、遊離状態のイソシアネート基が残存するブロックイソシアネートが得られる。
【0101】
次いで、この方法では、上記により得られた遊離状態のイソシアネート基を有するブロックイソシアネートと第1ブロック剤とを反応させる。
【0102】
このような場合、ブロックイソシアネートの遊離状態のイソシアネート基に対する、第1ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.01以上、好ましくは、0.05以上、例えば、1.3以下、好ましくは、1.2以下、より好ましくは、1.1以下である。
【0103】
また、反応条件としては、例えば、大気圧下、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気下、反応温度が、例えば、0℃以上、好ましくは、20℃以上であり、例えば、80℃以下、好ましくは、60℃以下である。また、反応時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.0時間以上であり、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
【0104】
なお、反応の終了は、例えば、赤外分光分析法などを採用し、イソシアネート基の消失または減少を確認することによって、判断することができる。
【0105】
この反応において、第1ブロック剤および第2ブロック剤の割合は、ブロックイソシアネート中における第1潜在イソシアネート基(後述)と第2潜在イソシアネート基(後述)との含有割合が、後述する所定範囲となるように、適宜設定される。
【0106】
また、上記の各反応は、いずれも、無溶剤下であってもよく、例えば、溶剤の存在下であってもよい。
【0107】
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、例えば、アセトニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのアルキルエステル類、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなどのグリコールエーテルエステル類、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類、例えば、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、臭化メチル、ヨウ化メチレン、ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素類、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミドなどの極性非プロトン類、さらには、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセタートなどが挙げられる。
【0108】
また、溶剤としては、さらに、可塑剤も挙げられる。
【0109】
可塑剤としては、例えば、フタル酸系可塑剤、脂肪酸系可塑剤、芳香族ポリカルボン酸系可塑剤、リン酸系可塑剤、ポリオール系可塑剤、エポキシ系可塑剤、ポリエステル系可塑剤などが挙げられる。
【0110】
フタル酸系可塑剤としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジへキシルフタレート、ジへプチルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジノニルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジデシルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ジステアリルフタレート、ジフェニルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、オクチルデシルフタレート、ジメチルイソフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)イソフタレート、ジイソオクチルイソフタレートなどのフタル酸エステル系可塑剤、例えば、ジ−(2−エチルヘキシル)テトラヒドロフタレート、ジ−n−オクチルテトラヒドロフタレート、ジイソデシルテトラヒドロフタレートなどのテトラヒドロフタル酸エステル系可塑剤が挙げられる。
【0111】
脂肪酸系可塑剤としては、例えば、ジ−n−ブチルアジペート、ジ−(2−エチルへキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジ(C6−C10アルキル)アジペート、ジブチルジグリコールアジペートなどのアジピン酸系可塑剤、例えば、ジ−n−へキシルアゼレート、ジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレートなどのアゼライン酸系可塑剤、例えば、ジ−n−ブチルセバケート、ジ−(2−エチルへキシル)セバケート、ジイソノニルセバケートなどのセバシン酸系可塑剤、例えば、ジメチルマレート、ジエチルマレート、ジ−n−ブチルマレート、ジ−(2−エチルヘキシル)マレートなどのマレイン酸系可塑剤、例えば、ジ−n−ブチルフマレート、ジ−(2−エチルへキシル)フマレートなどのフマル酸系可塑剤、例えば、モノメチルイタコネート、モノブチルイタコネート、ジメチルイタコネート、ジエチルイタコネート、ジブチルイタコネート、ジ−(2−エチルヘキシル)イタコネートなどのイタコン酸系可塑剤、例えば、n−ブチルステアレート、グリセリンモノステアレート、ジエチレングリコールジステアレートなどのステアリン酸系可塑剤、例えば、ブチルオレート、グリセリルモノオレート、ジエチレングリコールモノオレートなどのオレイン酸系可塑剤、例えば、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、アセチルトリ−(2−エチルへキシル)シトレートなどのクエン酸系可塑剤、例えば、メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、グリセリルモノリシノレート、ジエチレングリコールモノリシノレートなどのリシノール酸系可塑剤、および、ジエチレングリコールモノラウレート、ジエチレングリコールジペラルゴネート、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルなどのその他の脂肪酸系可塑剤などが挙げられる。
【0112】
芳香族ポリカルボン酸系可塑剤としては、例えば、トリ−n−ヘキシルトリメリテート、トリ−(2−エチルヘキシル)トリメリテート、トリ−n−オクチルトリメリテート、トリイソオクチルトリメリテート、トリイソノニルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテートなどのトリメリット酸系可塑剤、例えば、テトラ−(2−エチルヘキシル)ピロメリテート、テトラ−n−オクチルピロメリテートなどのピロメリット酸系可塑剤などが挙げられる。
【0113】
リン酸系可塑剤としては、例えば、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェートなどが挙げられる。
【0114】
ポリオール系可塑剤としては、例えば、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−(2−エチルブチレート)、トリエチレングリコールジ−(2−エチルヘキソエート)、ジブチルメチレンビスチオグリコレートなどのグリコール系可塑剤、例えば、グリセロールモノアセテート、グリセロールトリアセテート、グリセロールトリブチレートなどのグリセリン系可塑剤などが挙げられる。
【0115】
エポキシ系可塑剤としては、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシブチルステアレート、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ2−エチルヘキシル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジイソデシル、エポキシトリグリセライド、エポキシ化オレイン酸オクチル、エポキシ化オレイン酸デシルなどが挙げられる。
【0116】
ポリエステル系可塑剤としては、例えば、アジピン酸系ポリエステル、セバシン酸系ポリエステル、フタル酸系ポリエステルなどが挙げられる。
【0117】
また、可塑剤としては、その他に、部分水添ターフェニル、接着性可塑剤、さらには、ジアリルフタレート、アクリル系モノマーやオリゴマーなどの重合性可塑剤などが挙げられる。これら可塑剤は、単独または2種以上併用することができる。
【0118】
これら溶剤は、単独使用または2種類以上併用することもできる。
【0119】
これにより、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基が第1ブロック剤および第2ブロック剤にブロックされた、ブロックイソシアネートを得ることができる。
【0120】
そして、このようなブロックイソシアネートは、第1ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基と、第2ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基とを、1分子中に併有している。
【0121】
第1潜在イソシアネート基および第2潜在イソシアネート基の含有割合は、それらの総モル量に対して、第1潜在イソシアネート基が、例えば、1モル%以上、好ましくは、5モル%以上、より好ましくは、10モル%以上であり、例えば、80モル%以下、好ましくは、50モル%以下、より好ましくは、30モル%以下である。また、第2潜在イソシアネート基が、例えば、20モル%以上、好ましくは、50モル%以上、より好ましくは、70モル%以上であり、例えば、98モル%以下、好ましくは、95モル%以下、より好ましくは、90モル%以下である。
【0122】
第1潜在イソシアネート基および第2潜在イソシアネート基の含有割合が上記範囲であれば、低温硬化性およびポットライフの向上を図ることができる。
【0123】
また、このようなブロックイソシアネートは、例えば、非水分散性ブロックイソシアネートとして得られ、例えば、上記した溶剤に溶解させて用いることができる。
【0124】
ブロックイソシアネートを溶剤に溶解させる場合において、その固形分濃度は、例えば、1質量%以上、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは、30質量%以上であり、例えば、95質量%以下、好ましくは、90質量%以下である。
【0125】
また、このようなブロックイソシアネートは、例えば、水に分散させて用いることもできる。そのような場合、水分散性の観点から、好ましくは、ブロックイソシアネートが、活性水素基を含有する親水性化合物により変性される。これにより、水分散性のブロックイソシアネートを得ることができる。
【0126】
より具体的には、水分散性のブロックイソシアネートを得るには、例えば、まず、上記したポリイソシアネート化合物と、活性水素基を含有する親水性化合物とを反応させ、親水性基含有ポリイソシアネートを調製する。
【0127】
活性水素基を含有する親水性化合物(以下、活性水素基含有親水性化合物と称する場合がある。)としては、例えば、活性水素基含有ノニオン性親水性化合物、活性水素基含有アニオン性親水性化合物、活性水素基含有カチオン性親水性化合物(例えば、4級アミノ基含有活性水素化合物など)などが挙げられ、好ましくは、活性水素基含有ノニオン性親水性化合物、活性水素基含有アニオン性親水性化合物が挙げられる。
【0128】
活性水素基含有ノニオン性親水性化合物としては、例えば、少なくとも3つ連続したエチレンオキシド基を有するポリオキシエチレン化合物が挙げられる。
【0129】
このようなポリオキシエチレン化合物としては、例えば、ポリオキシエチレン基含有ポリオール、ポリオキシエチレン基含有ポリアミン、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール、片末端封鎖ポリオキシエチレンジアミンなどが挙げられる。
【0130】
ポリオキシエチレン基含有ポリオールは、分子内にポリオキシエチレン基を有するとともに、水酸基を2つ以上有する化合物であって、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレントリオール、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドとのランダムおよび/またはブロック共重合体(例えば、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンコポリマージオールあるいはトリオール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンブロックポリマージオールあるいはトリオール、ポリプロピレングリコールの末端にエチレンオキサイドを付加重合させたプルロニックタイプのポリプロピレングリコールあるいはトリオールなど)などが挙げられる。
【0131】
また、ポリオキシエチレン基含有ポリオールとしては、さらに、例えば、水酸基を分子末端に2つ以上有し、ポリオキシエチレン基を側鎖に有するポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールなども挙げられる。
【0132】
ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールは、例えば、まず、ジイソシアネート(上記したジイソシアネート)と片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール(後述)とを、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール(後述)の水酸基に対してジイソシアネートのイソシアネート基が過剰となる割合でウレタン化反応させた後、必要により、未反応のジイソシアネートを除去することにより、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートを合成し、次いで、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートと、ジアルカノールアミン(C1〜20のジアルカノールアミン)とをウレア化反応させることにより、得ることができる。
【0133】
なお、ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールの調製において、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール(後述)として、好ましくは、メトキシエチレングリコールが挙げられ、ジイソシアネートとして、好ましくは、脂肪族ジイソシアネート(例えば、HDI)が挙げられ、ジアルカノールアミンとして、ジエタノールアミンが挙げられる。
【0134】
また、ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールとしては、例えば、トリメチロールプロパンなどの3価アルコールの1つの水酸基に、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール(後述)を付加して得られるポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールも挙げられる。
【0135】
ポリオキシエチレン基含有ポリアミンとしては、例えば、ポリオキシエチレンエーテルジアミンなどのポリオキシアルキレンエーテルジアミンが挙げられる。
【0136】
片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールとしては、例えば、アルキル基で片末端封止したアルコキシエチレングリコール(モノアルコキシポリエチレングリコール)などが挙げられる。
【0137】
モノアルコキシポリエチレングリコールにおいて、片末端を封止するためのアルキル基の炭素数は、例えば、1〜20、好ましくは、1〜8、より好ましくは、1〜6、さらに好ましくは、1〜4、とりわけ好ましくは、1〜2である。すなわち、片末端を封止するためのアルキル基として、好ましくは、メチル基、エチル基が挙げられる。
【0138】
そのようなアルキル基によって片末端封止されたモノアルコキシポリエチレングリコールとして、具体的には、メトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレングリコールが挙げられ、好ましくは、メトキシポリエチレングリコールが挙げられる。
【0139】
片末端封鎖ポリオキシエチレンジアミンとしては、例えば、炭素数1〜20のアルコキシ基で片末端封止したポリオキシエチレンジアミン(モノアミノモノアルコキシポリオキシエチレン)などが挙げられる。
【0140】
これらポリオキシエチレン化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0141】
ポリオキシエチレン化合物として、好ましくは、水酸基を分子末端に2つ以上有し、ポリオキシエチレン基を側鎖に有するポリオキシエチレン側鎖含有ポリオール、ポリオキシエチレングリコール、モノアルコキシポリエチレングリコール、モノアミノモノアルコキシポリオキシエチレンジアミンが挙げられ、より好ましくは、水酸基を分子末端に2つ以上有し、ポリオキシエチレン基を側鎖に有するポリオキシエチレン側鎖含有ポリオール、モノアルコキシポリエチレングリコールが挙げられる。
【0142】
水酸基を分子末端に2つ以上有し、ポリオキシエチレン基を側鎖に有するポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールを用いれば、1分子当たりの官能基数が増大するため、ブロックイソシアネートを用いて得られる塗料組成物および接着剤組成物の硬化膜の耐水性を向上させることができる。
【0143】
また、モノアルコキシポリエチレングリコールを用いれば、粘度を制御することができ、水分散性の向上を図ることができる。
【0144】
なお、ポリオキシエチレン化合物は、エチレンオキシド基の他のオキシアルキレン基、具体的には、オキシプロピレン基、オキシスチレン基などを含有していてもよい。そのような場合において、ポリオキシエチレン化合物の全量に対するエチレンオキシド基のモル比率は、水分散性の観点から、例えば、60モル%以上、好ましくは、70モル%以上、より好ましくは、80モル%以上である。
【0145】
また、ポリオキシエチレン化合物は、市販品としても入手可能であり、具体的には、例えば、ポリオキシエチレングリコールとして、PEG200、PEG300、PEG400、PEG600、PEG1000、PEG2000(以上、日本油脂製)などが挙げられ、また、モノメトキシポリオキシエチレングリコールとして、例えば、メトキシPEG#400、メトキシPEG#550、メトキシPEG#1000、(以上、東邦化学製)、ユニオックスM400、ユニオックスM550、ユニオックスM1000、ユニオックスM2000(以上、日本油脂製)、MPG−081(日本乳化剤)などが挙げられ、さらに、ポリオキシエチレンエーテルジアミンとしては、ジェファーミンシリーズ(ハンツマン製)などが挙げられる。
【0146】
これら活性水素基含有ノニオン性親水性化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0147】
活性水素基含有ノニオン性親水性化合物(ポリオキシエチレン化合物を含む。)の数平均分子量は、例えば、200以上、好ましくは、300以上、より好ましくは、400以上であり、例えば、2000以下、好ましくは、1500以下、より好ましくは、1200以下、さらに好ましくは、1000以下である。
【0148】
活性水素基含有ノニオン性親水性化合物の数平均分子量が上記下限以上であれば、ブロックイソシアネートの水分散性の向上を図ることができる。また、活性水素基含有ノニオン性親水性化合物の数平均分子量が上記上限以下であれば、ブロックイソシアネートの溶解性を向上させることができ、また、ブロックイソシアネートを用いて得られる塗料組成物および接着剤組成物の硬化膜の耐水性を向上させることができる。
【0149】
活性水素基含有アニオン性親水性化合物としては、例えば、カルボン酸基含有活性水素化合物、スルホン酸基含有活性水素化合物などが挙げられる。
【0150】
カルボン酸基含有活性水素化合物としては、モノヒドロキシカルボン酸およびその誘導体、ジヒドロキシカルボン酸およびその誘導体などが挙げられる。
【0151】
モノヒドロキシカルボン酸として、具体的には、例えば、ヒドロキシピバリン酸などが挙げられる。
【0152】
ジヒドロキシカルボン酸として、具体的には、例えば、2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸(以下、DMPAとする。)、2,2−ジメチロールブタン酸(以下、DMBAとする。)、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸などのジヒドロキシルカルボン酸などが挙げられる。
【0153】
また、モノヒドロキシカルボン酸またはジヒドロキシカルボン酸の誘導体としては、例えば、上記モノヒドロキシカルボン酸またはジヒドロキシカルボン酸の金属塩類やアンモニウム塩類、さらには、上記モノヒドロキシカルボン酸またはジヒドロキシカルボン酸を開始剤としたポリカプロラクトンジオールやポリエーテルポリオールなどが挙げられる。
【0154】
カルボン酸基含有活性水素化合物として、好ましくは、モノヒドロキシカルボン酸、ジヒドロキシカルボン酸が挙げられ、より好ましくは、ジヒドロキシカルボン酸が挙げられる。
【0155】
スルホン酸基含有活性水素化合物としては、例えば、エポキシ基含有化合物と酸性亜硫酸塩との合成反応から得られる、ジヒドロキシブタンスルホン酸、ジヒドロキシプロパンスルホン酸が挙げられる。また、例えば、アミノエチルスルホン酸、エチレンジアミノ−プロピル−β−エチルスルホン酸、1,3−プロピレンジアミン−β−エチルスルホン酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノブタンスルホン酸、1,3−フェニレンジアミン−4,6−ジスルホン酸、ジアミノブタンスルホン酸、ジアミノプロパンスルホン酸、3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸、2,4−ジアミノ−5−トルエンスルホン酸、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、2−アミノエタンスルホン酸、N−(2−アミノエチル)−2−アミノブタンスルホン酸、または、それらスルホン酸の金属塩類やアンモニウム塩類などが挙げられる。
【0156】
これら活性水素基含有アニオン性親水性化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。活性水素基含有アニオン性親水性化合物として、好ましくは、製造容易性、水系塗料における配合性の観点から、カルボン酸基含有活性水素化合物が挙げられる。
【0157】
なお、活性水素基含有アニオン性親水性化合物を用いる場合には、ブロックイソシアネートの製造後、好ましくは、中和剤によって中和する。中和剤としては、例えば、アルカリ金属類、アルカリ土類金属類、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどの3級アミンなどが挙げられる。
【0158】
これら活性水素基含有親水性化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。活性水素基含有親水性化合物として、好ましくは、製造容易性の観点から、活性水素基含有ノニオン性親水性化合物が挙げられ、より好ましくは、ポリオキシエチレン化合物が挙げられる。
【0159】
活性水素基含有親水性化合物として、活性水素基含有ノニオン性親水性化合物を用いれば、他の樹脂(硬化剤としてのブロックイソシアネートに対する主剤など)と混合して用いる場合に、相溶性の向上を図ることができ、種々の樹脂と混合して用いることができる。
【0160】
また、活性水素基含有親水性化合物として、ブロックイソシアネートを用いて得られる塗料組成物および接着剤組成物の硬化膜の耐水性の観点から、好ましくは、上記したモノヒドロキシカルボン酸またはその誘導体、ジヒドロキシカルボン酸またはその誘導体も挙げられる。
【0161】
そして、これらポリイソシアネート化合物と活性水素基含有親水性化合物とを、反応させることにより、親水性基含有ポリイソシアネートを得ることができる。
【0162】
親水性基含有ポリイソシアネートの調製において、ポリイソシアネート化合物に対する活性水素基含有親水性化合物の配合割合は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基100モルに対して、活性水素基含有親水性化合物の活性水素基が、2モル以上、好ましくは、3モル以上、より好ましくは、5モル以上であり、25モル以下、好ましくは、22モル以下、より好ましくは、20モル以下の割合となるように調整される。
【0163】
ポリイソシアネート化合物に対する活性水素基含有親水性化合物の配合割合が上記下限以上であれば、水に対する分散性の向上を図ることができ、また上記上限以下であれば、水に分散させた場合の粒径を適度に保つことができ、長いポットライフを得ることができ、さらには、一液型ポリウレタン樹脂の硬化剤成分として使用可能とすることができる。
【0164】
このようなポリイソシアネート化合物と活性水素基含有親水性化合物との配合割合として、より具体的には、ポリイソシアネート化合物100質量部に対して、活性水素基含有親水性化合物が、例えば、3質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、例えば、100質量部以下、好ましくは、80質量部以下である。
【0165】
また、反応条件としては、例えば、大気圧下、反応温度が、例えば、0℃以上、好ましくは、30℃以上であり、例えば、150℃以下、好ましくは、120℃以下である。また、反応時間は、上記の反応温度において、滴定法により測定されるイソシアネート量に変化がなくなるまでであって、具体的には、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上であり、例えば、120時間以下、好ましくは、72時間以下である。
【0166】
また、ポリイソシアネート化合物と活性水素基含有親水性化合物とは、無溶剤下において反応させることもできるが、例えば、上記した公知の溶剤の存在下において反応させることもできる。
【0167】
そして、これにより、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の一部が活性水素基含有親水性化合物の活性水素基と反応され、また、イソシアネート基の残部が遊離状態とされた親水性基含有ポリイソシアネートを得ることができる。
【0168】
親水性基含有ポリイソシアネートのイソシアネート基含有量(溶剤を含む場合には溶剤を除いた樹脂換算)は、例えば、5質量%以上、好ましくは、7質量%以上であり、例えば、25質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。
【0169】
また、活性水素基含有親水性化合物としてポリオキシエチレン化合物を用いる場合には、親水性基含有ポリイソシアネートのエチレンオキシド基の含有量(すなわち、ポリイソシアネート化合物および親水性化合物の総量に対するエチレンオキシド基の含有量)は、例えば、7質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、例えば、30質量%以下、好ましくは、25質量%以下である。
【0170】
エチレンオキシド基の含有量が上記下限以上であれば、優れた水分散性を得ることができ、また、上記上限以下であれば、長いポットライフを得ることができ、さらには、一液型ポリウレタン樹脂の硬化剤成分として使用可能とすることができ、また、得られる塗料組成物および接着剤組成物を硬化させた塗膜の物性の向上を図ることができる。
【0171】
そして、上記により得られた親水性基含有ポリイソシアネートのイソシアネート基をブロックするように、親水性基含有ポリイソシアネートとブロック剤とを反応させることにより、ブロックイソシアネートを得ることができる。
【0172】
そして、ブロックイソシアネートは、例えば、上記の親水性基含有ポリイソシアネートと第1ブロック剤および第2ブロック剤とを反応させることによって、得ることができる。
【0173】
この反応において、第1ブロック剤および第2ブロック剤の割合は、ブロックイソシアネート中における第1潜在イソシアネート基と第2潜在イソシアネート基との含有割合が、後述する所定範囲となるように、適宜設定される。
【0174】
また、反応順序は、特に制限されず、例えば、まず、親水性基含有ポリイソシアネートと第1ブロック剤とを、遊離状態のイソシアネート基が残存する割合で反応させた後、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックイソシアネートと第2ブロック剤とを反応させることができる。
【0175】
また、例えば、まず、親水性基含有ポリイソシアネートと第2ブロック剤とを、遊離状態のイソシアネート基が残存する割合で反応させた後、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックイソシアネートと第1ブロック剤とを反応させることもできる。
【0176】
さらには、親水性基含有ポリイソシアネートと第1ブロック剤および第2ブロック剤とを同時に反応させてもよい。
【0177】
好ましくは、まず、親水性基含有ポリイソシアネートと第2ブロック剤とを、遊離状態のイソシアネート基が残存する割合で反応させる。
【0178】
このような場合、親水性基含有ポリイソシアネートのイソシアネート基に対する、第2ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.2以上、好ましくは、0.5以上、例えば、1.5以下、好ましくは、1.2以下、より好ましくは、1.1以下である。
【0179】
また、反応条件としては、例えば、大気圧下、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気下、反応温度が、例えば、0℃以上、好ましくは、20℃以上であり、例えば、80℃以下、好ましくは、60℃以下である。また、反応時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.0時間以上であり、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
【0180】
これにより、遊離状態のイソシアネート基が残存するブロックイソシアネートが得られる。
【0181】
次いで、この方法では、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックイソシアネートと第1ブロック剤とを反応させる。
【0182】
このような場合、ブロックイソシアネートの遊離状態のイソシアネート基に対する、第1ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.01以上、好ましくは、0.05以上、例えば、1.3以下、好ましくは、1.2以下、より好ましくは、1.1以下である。
【0183】
また、反応条件としては、例えば、大気圧下、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気下、反応温度が、例えば、0℃以上、好ましくは、20℃以上であり、例えば、80℃以下、好ましくは、60℃以下である。また、反応時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.0時間以上であり、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
【0184】
なお、反応の終了は、例えば、赤外分光分析法などを採用し、イソシアネート基の消失または減少を確認することによって、判断することができる。
【0185】
また、上記の反応は、無溶剤下であってもよく、例えば、溶剤の存在下であってもよい。
【0186】
これにより、親水性基含有ポリイソシアネートのイソシアネート基が第1ブロック剤および第2ブロック剤によってブロックされた、ブロックイソシアネートを得ることができる。
【0187】
そして、このようなブロックイソシアネートは、第1ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基と、第2ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基とを、1分子中に併有している。
【0188】
第1潜在イソシアネート基および第2潜在イソシアネート基の含有割合は、それらの総モル量に対して、第1潜在イソシアネート基が、例えば、1モル%以上、好ましくは、5モル%以上、より好ましくは、10モル%以上であり、例えば、80モル%以下、好ましくは、50モル%以下、より好ましくは、30モル%以下である。また、第2潜在イソシアネート基が、例えば、20モル%以上、好ましくは、50モル%以上、より好ましくは、70モル%以上であり、例えば、98モル%以下、好ましくは、95モル%以下、より好ましくは、90モル%以下である。
【0189】
第1潜在イソシアネート基および第2潜在イソシアネート基の含有割合が上記範囲であれば、低温硬化性およびポットライフの向上を図ることができる。
【0190】
なお、上記した説明では、まず、ポリイソシアネート化合物と活性水素基を含有する親水性化合物とを反応させ、得られた親水性基含有ポリイソシアネートのイソシアネート基を、第1ブロック剤および第2ブロック剤によりブロック化することによって、ブロックイソシアネートを調製したが、ポリイソシアネート化合物、親水性化合物、第1ブロック剤および第2ブロック剤の反応順序は特に制限されず、例えば、まず、ポリイソシアネート化合物と第1ブロック剤および第2ブロック剤とを反応させ、得られたブロックイソシアネート(未反応のイソシアネート基を含む)と親水性化合物とを反応させることにより、ブロックイソシアネートを調製してもよい。
【0191】
ブロック剤の分解や、副反応、ブロックイソシアネートの水分散性の観点から、好ましくは、ポリイソシアネート化合物と、活性水素基を含有する親水性化合物とを先に反応させ、親水性基含有ポリイソシアネートを調製し、得られた親水性基含有ポリイソシアネートのイソシアネート基を第1ブロック剤および第2ブロック剤によりブロック化する。
【0192】
そして、このようにして得られたブロックイソシアネートは、水分散性ブロックイソシアネートとして得られ、水に分散させる場合にも、比較的長いポットライフを有し、さらには、一液型ポリウレタン樹脂の硬化剤成分として使用可能であり、また、低温硬化性に優れる。
【0193】
ブロックイソシアネートを水に分散させる方法としては、特に制限されず、例えば、ブロックイソシアネートと水とを、ホモミキサー、ホモディスパー、マグネチックスターラーなどの攪拌機を用いて攪拌および混合すればよい。
【0194】
なお、ブロックイソシアネート分散液には、必要により、分散剤、消泡剤などの添加剤を添加することができる。添加剤の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜決定される。
【0195】
その後、必要により、ブロックイソシアネート分散液に有機溶剤が含有されている場合(例えば、親水性基含有ポリイソシアネートと第1ブロック剤および第2ブロック剤とを有機溶剤中で反応させた反応液を、ブロックイソシアネートとしてそのまま用いた場合)には、ブロックイソシアネート分散液を、例えば、減圧する、または、減圧下で加熱することにより、有機溶剤を揮発除去することができる。
【0196】
このようにして得られたブロックイソシアネート分散液では、ブロックイソシアネートの体積平均粒子径が、例えば、1000nm以下、好ましくは、700nm、より好ましくは、500nm以下、さらに好ましくは、300nm以下、通常、10nm以上である。
【0197】
ブロックイソシアネートの体積平均粒子径が、上記上限以下であれば、優れた水分散性を確保することができ、また、上記下限以上であれば、比較的長いポットライフを確保でき、さらには、一液型ポリウレタン樹脂の硬化剤成分として使用可能とすることができる。
【0198】
また、上記した説明では、得られるブロックイソシアネート1分子中に、第1潜在イソシアネート基と第2潜在イソシアネート基とが併有されるが、例えば、潜在イソシアネート基として第1潜在イソシアネート基のみを含有するブロックイソシアネートと、潜在イソシアネート基として第2潜在イソシアネート基のみを含有するブロックイソシアネートとをそれぞれ調製し、混合することもできる。
【0199】
より具体的には、この方法では、まず、上記したポリイソシアネート化合物と、上記した第1ブロック剤とを反応させることにより、潜在イソシアネート基として第1潜在イソシアネート基のみを含有するブロックイソシアネート(以下、第1ブロックイソシアネート成分と称する。)を得る。
【0200】
このような場合、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対する、第1ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.5以上、好ましくは、0.8以上、例えば、2.0以下、好ましくは、1.5以下、より好ましくは、1.25以下である。
【0201】
また、反応条件としては、例えば、大気圧下、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気下、反応温度が、例えば、0℃以上、好ましくは、20℃以上であり、例えば、80℃以下、好ましくは、60℃以下である。また、反応時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.0時間以上であり、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
【0202】
なお、反応の終了は、例えば、赤外分光分析法などを採用し、イソシアネート基の消失または減少を確認することによって、判断することができる。
【0203】
また、ポリイソシアネート化合物と第1ブロック剤とを、無溶剤下において反応させることもできるが、例えば、溶剤の存在下において反応させることもできる。
【0204】
これにより、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基が第1ブロック剤のみによってブロックされたブロックイソシアネート、すなわち、第1ブロックイソシアネート成分を得ることができる。
【0205】
また、この方法では、第1ブロックイソシアネート成分とは別途、上記したポリイソシアネート化合物と、上記した第2ブロック剤とを反応させることにより、潜在イソシアネート基として第2潜在イソシアネート基のみを含有するブロックイソシアネート(以下、第2ブロックイソシアネート成分と称する。)を得る。
【0206】
このような場合、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対する、第2ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.5以上、好ましくは、0.8以上、例えば、2.0以下、好ましくは、1.5以下、より好ましくは、1.25以下である。
【0207】
また、反応条件としては、例えば、大気圧下、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気下、反応温度が、例えば、0℃以上、好ましくは、20℃以上であり、例えば、80℃以下、好ましくは、60℃以下である。また、反応時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.0時間以上であり、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
【0208】
なお、反応の終了は、例えば、赤外分光分析法などを採用し、イソシアネート基の消失または減少を確認することによって、判断することができる。
【0209】
また、ポリイソシアネート化合物と第2ブロック剤とを、無溶剤下において反応させることもできるが、例えば、溶剤の存在下において反応させることもできる。
【0210】
これにより、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基が第2ブロック剤のみによってブロックされたブロックイソシアネート、すなわち、第2ブロックイソシアネート成分を得ることができる。
【0211】
その後、この方法では、第1ブロックイソシアネート成分と第2ブロックイソシアネート成分とを混合する。
【0212】
第1ブロックイソシアネート成分と第2ブロックイソシアネート成分との混合割合は、ブロックイソシアネート中の第1潜在イソシアネート基および第2潜在イソシアネート基の含有割合が上記の範囲となるように、適宜設定される。
【0213】
具体的には、第1ブロックイソシアネート成分と第2ブロックイソシアネート成分との総モル量に対して、第1ブロックイソシアネート成分が、例えば、1モル%以上、好ましくは、5モル%以上、より好ましくは、10モル%以上であり、例えば、80モル%以下、好ましくは、50モル%以下、より好ましくは、30モル%以下である。また、第2ブロックイソシアネート成分が、例えば、20モル%以上、好ましくは、50モル%以上、より好ましくは、70モル%以上であり、例えば、98モル%以下、好ましくは、95モル%以下、より好ましくは、90モル%以下である。
【0214】
これにより、第1ブロックイソシアネート成分と第2ブロックイソシアネート成分との混合物として、ブロックイソシアネートを得ることができる。
【0215】
なお、このようなブロックイソシアネート(混合物)は、第1ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基と、第2ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基とを、上記した割合で含有する。
【0216】
また、このようなブロックイソシアネートは、例えば、上記した溶剤に上記した割合で溶解させて用いることができ、また、例えば、水に上記した割合で分散させて用いることができる。
【0217】
また、ブロックイソシアネートを水に分散させて用いる場合には、必要により、第1ブロックイソシアネート成分および/または第2ブロックイソシアネート成分を、上記した親水性化合物によって、上記した方法で変性することができる。
【0218】
上記したように、本発明ブロックイソシアネートは、第1潜在イソシアネート基と第2潜在イソシアネート基とを1分子中に併有していてもよく、また、併有していなくてもよい。低温硬化性の観点から、好ましくは、第1潜在イソシアネート基と第2潜在イソシアネート基とが1分子中に併有されることが挙げられる。
【0219】
そして、上記したブロックイソシアネートは、例えば、二液硬化型ポリウレタン樹脂または一液型ポリウレタン樹脂の硬化剤成分として使用することができ、より具体的には、例えば、二液硬化型ポリウレタン樹脂または一液型ポリウレタン樹脂として調製される、塗料組成物、インキ組成物、接着剤組成物などにおいて、硬化剤として好適に用いられる。
【0220】
本発明の塗料組成物および接着剤組成物は、上記したブロックイソシアネートとポリオール化合物とを含有している。
【0221】
このような塗料組成物および接着剤組成物は、例えば、上記のブロックイソシアネートからなる硬化剤と、ポリオール化合物からなる主剤とを、それぞれ個別に調製し、それらを使用時に配合する二液型ポリウレタン樹脂として調製されるか、または、上記のブロックイソシアネートからなる硬化剤と、ポリオール化合物からなる主剤とが予め配合された一液型ポリウレタン樹脂として調製される。
【0222】
ポリオール化合物としては、例えば、低分子量ポリオール、高分子量ポリオールなどが挙げられる。
【0223】
低分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量300未満、好ましくは、400未満の化合物であって、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,2−トリメチルペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、アルカン(C7〜20)ジオール、1,3−または1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、1,3−または1,4−シクロヘキサンジオールおよびそれらの混合物、水素化ビスフェノールA、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオール、ビスフェノールA、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの2価アルコール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミンなどの3価アルコール、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコール、例えば、キシリトールなどの5価アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール、例えば、ペルセイトールなどの7価アルコール、例えば、ショ糖などの8価アルコールなどが挙げられる。
【0224】
これら低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0225】
高分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量300以上、好ましくは、400以上、さらに好ましくは、500以上の化合物であって、例えば、ポリエーテルポリオール(例えば、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオールなど)、ポリエステルポリオール(例えば、アジピン酸系ポリエステルポリオール、フタル酸系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオールなど)、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール(例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどをポリイソシアネートによりウレタン変性したポリオール)、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ビニルモノマー変性ポリオールなどが挙げられる。
【0226】
これら高分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0227】
これらポリオール化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0228】
ポリオール化合物として、好ましくは、高分子量ポリオール、より好ましくは、アクリルポリオールが挙げられる。
【0229】
また、例えば、第1ブロック剤および/または第2ブロック剤として、イミダゾール系化合物などを用いる場合など、ブロックポリイソシアネートの凝集力が高い場合には、分散性の向上を図る観点から、好ましくは、ポリオール化合物とモノオール化合物とを併用する。
【0230】
モノオール化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、その他のアルカノール(C5〜38)および脂肪族不飽和アルコール(C9〜24)、アルケニルアルコール、2−プロペン−1−オール、アルカジエノール(C6〜8)、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン−3−オールなどが挙げられる。
【0231】
これらモノオール化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0232】
モノオール化合物が配合される場合、その配合割合は、塗料組成物および接着剤組成物の総量に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、2質量%以上であり、例えば、10質量%以下、好ましくは、8質量%以下である。
【0233】
また、ポリオール化合物(必要により、モノオール化合物を含む。以下同様)は、塊状(バルク状、固形分濃度100質量%)で用いることもできるが、例えば、水や有機溶媒に溶解または分散させて用いることもできる。その他、例えば、乳化重合や、懸濁重合のように上述のポリオール化合物が水に分散した状態で得られる重合方法を用いて調製したものを用いることもできる。さらに、ポリオール化合物を非水分散させたものや、プラスチゾルも用いることができる。なお、プラスチゾルは、例えば、樹脂と、可塑剤と、充填剤とを含有しており、樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル共重合塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。
【0234】
ポリオール化合物を水や有機溶媒に溶解または分散させる場合において、その固形分濃度は、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上、さらに好ましくは、10質量%以上である。
【0235】
そして、このような塗料組成物および接着剤組成物では、予め、または、その使用時において、ブロックイソシアネート(硬化剤)とポリオール化合物(主剤)とを配合し、ブロックイソシアネートからブロック剤(第1ブロック剤および第2ブロック剤)を解離させる。
【0236】
ブロックイソシアネート(硬化剤)とポリオール化合物(主剤)との配合では、例えば、ブロックイソシアネートを、水や溶媒に分散または溶解させ、分散液または溶液を調製した後に、塊状(バルク状、固形分濃度100質量%)のポリオール化合物や、ポリオール化合物の分散液または溶液とを、配合する。また、例えば、ブロックイソシアネートをポリオール化合物の分散液または溶液に、上述の方法で直接分散させることもできる。
【0237】
ブロックイソシアネート(硬化剤)とポリオール化合物(主剤)との配合割合は、例えば、ポリオール化合物の水酸基に対するブロックイソシアネートの潜在イソシアネート基(ブロック剤によりブロックされているイソシアネート基)の当量比(イソシアネート基/活性水素基)が、例えば、0.05以上、好ましくは、0.1以上、さらに好ましくは、0.2以上、例えば、5以下、好ましくは、3以下、さらに好ましくは、2以下となる割合である。
【0238】
なお、塗料組成物および接着剤組成物の調製において、ブロックイソシアネート(硬化剤)が、第1ブロックイソシアネート成分と第2ブロックイソシアネート成分との混合物である場合には、例えば、まず、第1ブロックイソシアネート成分と第2ブロックイソシアネート成分とを混合し、硬化剤を調製した後、その硬化剤とポリオール化合物(主剤)とを使用時に配合してもよく、また、例えば、第1ブロックイソシアネート成分または第2ブロックイソシアネート成分のいずれか一方と、ポリオール化合物(主剤)とを配合した後、他方を配合することもできる。
【0239】
また、解離条件は、ブロックイソシアネートにおけるブロック剤(第1ブロック剤および第2ブロック剤)が解離する条件であれば、特に制限されないが、具体的には、解離温度(すなわち、塗料組成物および接着剤組成物の硬化温度)が、例えば、60℃以上、好ましくは、80℃以上であり、例えば、150℃未満、好ましくは、130℃未満である。
【0240】
そして、これにより、ブロックイソシアネートにおけるブロック剤を解離させるとともに、ブロックイソシアネートの再生したイソシアネート基と、ポリオール化合物の水酸基とを反応させ、塗料組成物および接着剤組成物を硬化させることができ、ポリウレタン樹脂からなる塗膜を得ることができる。
【0241】
また、このとき、イソシアネート基を活性化させる触媒作用が大きい第1ブロック剤(イソシアネート基をブロックした状態の第1ブロック剤、および、解離された第1ブロック剤を含む。)は、イソシアネート基を活性化する触媒として作用する。そのため、第1ブロック剤を用いれば、第2ブロック剤のみを用いる場合に比べ、より効率よく塗料組成物および接着剤組成物を硬化させることができる。
【0242】
なお、第1ブロック剤の触媒作用と第2ブロック剤の触媒作用との比較は、以下の方法による。
【0243】
すなわち、まず、ポリイソシアネート化合物と第2ブロック剤とを反応させてブロックイソシアネートを合成し、得られたブロックイソシアネートを用いて塗料組成物および接着剤組成物を調製する。この塗料組成物および接着剤組成物の硬化温度をA(℃)とする。
【0244】
また、ポリイソシアネート化合物と、第1ブロック剤および第2ブロック剤を反応させてブロックイソシアネートを合成し、得られたブロックイソシアネートを用いて塗料組成物および接着剤組成物を調製する。この塗料組成物および接着剤組成物の硬化温度をB(℃)とする。
【0245】
そのような場合におけるA(℃)とB(℃)との差(℃)を、第1ブロック剤1モルに換算した値(℃/モル)を、第1ブロック剤の触媒能として定義する。
【0246】
そして、この触媒能を比較することで、ブロック剤の触媒作用が比較できる。
【0247】
より具体的には、第2ブロック剤としてメチルエチルケトンオキシム(MEKO)を80mol%、比較したいブロック剤を20mol%の割合でポリイソシアネート化合物と反応させ、ブロックイソシアネートを調製する。そして、調製したそれぞれのブロックイソシアネートの触媒能を比較し、数字が大きい方が触媒作用に優れる。
【0248】
ブロックイソシアネートの再生したイソシアネート基と、ポリオール化合物の水酸基との加熱条件下における反応時間は、例えば、1分以上、好ましくは、10分以上であり、例えば、60分以下、好ましくは、30分以下である。反応時間が上記下限以上であれば、硬化反応が十分に進行し、また、上記上限以下であれば、プロセスエネルギーを低減できる。
【0249】
また、このような方法では、必要により、ブロックイソシアネート(硬化剤)およびポリオール化合物(主剤)のいずれか一方またはその両方には、必要に応じて、例えば、反応溶媒、触媒、エポキシ樹脂、塗工性改良剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの安定剤、増粘剤、沈降防止剤、可塑剤、界面活性剤、顔料、充填剤、有機または無機微粒子、防黴剤などの添加剤を適宜配合することができる。添加剤の配合量は、その目的および用途により適宜決定される。
【0250】
そして、上記の塗料組成物および接着剤組成物は、低温硬化性に優れる上記のブロックイソシアネートが用いられるため、低エネルギー化および低コスト化を図ることができる。また、上記のブロックイソシアネートは、水に分散させる場合にも比較的長いポットライフを有するため、また、一液型ポリウレタン樹脂の硬化剤成分として使用可能なため、使用時の作業性にも優れる。
【0251】
なお、本発明のブロックイソシアネートは、上記のポリウレタン樹脂に限定されず、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂など、種々の公知の樹脂の硬化剤として、用いることができる。
【0252】
また、本発明のブロックイソシアネートを硬化剤として用いる場合、メラミン、エポキシなどの公知の硬化剤と併用することができる。そのような場合において、各硬化剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0253】
そして、本発明の塗料組成物および接着剤組成物は、例えば、スプレー塗装、ディップコート、スピンコート、回転霧化塗装、カーテンコート塗装などの公知の塗装方法で塗装され、乾燥されることにより、塗膜を形成することができる。
【0254】
また、必要により、静電印加することができ、さらには、塗装後に、焼付けることもできる。焼付け方法は、特に限定されないが、例えば、赤外線加熱、熱風加熱、高周波加熱などの公知の方法が採用される。
【0255】
また、塗料組成物および接着剤組成物の被塗物としては、特に制限されず、例えば、コンクリート、自然石、硝子などの無機物(非金属)、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、真鍮、チタン、などの金属、冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛合金メッキ鋼板、ステンレス鋼板、錫メッキ鋼板などの鋼板(金属)、例えば、プラスチック、ゴム、接着剤、木材などの有機物、さらには、例えば、繊維強化プラスチック(FRP)、樹脂強化コンクリート、繊維強化コンクリートなどの有機無機複合体などが挙げられ、好ましくは、有機無機複合体が挙げられる。
【0256】
また、上記被塗物には表面処理が施されていてもよい。具体的には、例えば、鋼板(金属)などに、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理などの表面処理が施されていてもよく、また、例えば、電着塗料などの下塗り塗膜や、中塗り塗膜が形成されていてもよい。さらに、プラスチックが前処理(例えば、脱脂処理、水洗処理、プライマー処理など)されていてもよい。
【0257】
そして、上記の塗料組成物および接着剤組成物は、工業製品全般に用いることができる。具体的には、本発明の塗料組成物が上記の被塗物に塗装されて得られる物品、および、本発明の接着剤組成物により上記の被塗物が接着されて得られる物品としては、例えば、自動車、二輪車、電車、航空機などの各種輸送用機器の車体や部品など、例えば、家電製品の筐体や部品など、例えば、食品包装用フィルムや紙、プラスチックボトル、プラスチックカップ、缶、瓶などの包装資材、例えば、繊維処理材、橋梁部材、鉄塔などの土木部材、例えば、防水材シート、タンク、パイプなどの産業機材、例えば、建築外装などの建築部材、例えば、道路部材、さらには、電気電子部材、家具などが挙げられる。
【実施例】
【0258】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されることはない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下に示す実施例の数値は、実施形態において記載される数値(すなわち、上限値または下限値)に代替することができる。
(ブロックイソシアネートの調製)
実施例1
攪拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管を備えた容量100mLの反応器に室温で、ポリイソシアネート化合物として、タケネート127N、307.31g(NCO基:1.00mol)に、溶剤としてメチルイソブチルケトン(以下、MIBKと略する場合がある。)224.71gを加え、よく混合した。
【0259】
その後、第2ブロック剤として、イミダゾール(以下、IMZと略する場合がある。)64.68g(0.95mol)を反応溶液の温度が50℃を超えないよう数回に分けて加えた。
【0260】
次いで、第1ブロック剤として、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(以下、TMGと略する場合がある。)5.76g(0.05mol)をIMZと同様に数回に分けて加えた後に、室温で3時間攪拌した。
【0261】
その後、FT−IRスペクトルを測定することで、イソシアネート基がブロック化されていることを確認し、固形分濃度50質量%のブロックイソシアネートを得た。
【0262】
実施例2、3、5〜13、参考例4、14、比較例1〜9
表1に示す配合処方とした以外は、実施例1と同様にしてブロックイソシアネートを得た。
【0263】
【表1】
【0264】
なお、表中の略号の詳細を下記する。略号は、以下の各表についても同様である。
【0265】
タケネート127N:ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの3量体、イソシアネート基含有量13.5%、三井化学製
タケネート170N:ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、イソシアネート基含有量20.7%、三井化学製
タケネート160N:ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(ポリオール変性体)、イソシアネート基含有量12.6%、三井化学製
TMG:1,1,3,3−テトラメチルグアニジン
DMP:3,5−ジメチルピラゾール
DMPDI:2,6−ジメチルピペリジン、東京化成工業製
DiPA:ジイソプロピルアミン、東京化成工業製
MEKO:メチルエチルケトキシム、東京化成工業製
tBEA:t-ブチルエチルアミン、東京化成工業製
tBBzA:t-ブチルベンジルアミン、東京化成工業製
IMZ:イミダゾール、日本合成化学製
CP:ε−カプロラクタム、東京化成工業製
2HP:2−ヒドロキシピリジン、東京化成工業製
(塗料組成物の調製)
実施例15
最終的な塗料組成物の固形分濃度が40質量%、t−ブタノール(以下、t−BAと略する場合がある。)5質量%になるように、溶媒としてMIBK、t−BAを加えてアクリルポリオール(Q182、三井化学製)溶液の濃度を調整した。
【0266】
これに、実施例1で得られたブロックイソシアネートを、アクリルポリオールの水酸基と、ブロックイソシアネートの潜在イソシアネート基とのモル比が1になるように加え、30分間攪拌することによって、塗料組成物を調製した。
【0267】
そして、得られた塗料組成物の硬化温度、触媒効果および触媒能を下記の方法で評価した。その結果を、表2に示す。
【0268】
実施例16、17、26、27、参考例18、28、比較例10
表2に示す配合処方とした以外は、実施例15と同様にして、塗料組成物を調製した。
【0269】
そして、得られた塗料組成物の硬化温度、触媒効果および触媒能を下記の方法で評価した。その結果を、表2に示す。
【0270】
実施例19〜25、比較例11〜18
表2に示す配合処方とし、また、t−BAの配合量を0質量%とした以外は、実施例15と同様にして、塗料組成物を調製した。
【0271】
そして、得られた塗料組成物の硬化温度、触媒効果および触媒能を下記の方法で評価した。その結果を、表2に示す。
【0272】
評価
(硬化温度)
塗料組成物を、アプリケーターにより厚み250μmでポリプロピレン(PP)板上に塗布し、所定の温度で30分間硬化後、室温で24時間熟成させた。なお、硬化温度が150℃以上になる場合にはPP板の代わりにガラス基板を用いた。
【0273】
得られた塗膜を、アセトン/メタノール=1/1(vol/vol)混合溶剤に23℃で24時間浸漬させた。
【0274】
その後、混合溶剤に浸漬する前の質量に対する、混合溶剤に溶解しなかった部分の質量を、ゲル分率として計算し、ゲル分率が60%以上になった温度を硬化温度とした。
(触媒効果、触媒能)
第2ブロック剤のみを用いて調製したブロックイソシアネートを含む塗料組成物と、第1ブロック剤および第2ブロック剤を併用して調製したブロックイソシアネートを含む塗料組成物との硬化温度を比較し、硬化温度の差を、触媒効果(℃)として求めた。また、第1ブロック剤1molに対する触媒効果を、触媒能(℃/mol)として求めた。
【0275】
【表2】
【0276】
(ブロックイソシアネートを混合した場合の塗料組成物)
実施例29
表3に示す配合処方とした以外は、実施例1と同様にして、2種類のブロックイソシアネートをそれぞれ合成した。その後、潜在イソシアネート基の比が表3に示した組成になるように、ブロックイソシアネートを混合した。
【0277】
その後、得られた混合ブロックイソシアネートを、最終的な塗料組成物の固形分濃度が40質量%、t−ブタノール(t−BA)5質量%になるように、溶媒としてMIBK、t−BAを加えて濃度を調整したアクリルポリオール(Q182、三井化学製)溶液に、アクリルポリオールの水酸基と、混合ブロックイソシアネートの潜在イソシアネート基とのモル比が1になるように加え、30分間攪拌することによって、塗料組成物を調製した。
【0278】
そして、得られた塗料組成物の硬化温度、触媒効果および触媒能を上記の方法で評価した。その結果を、表3に示す。
【0279】
実施例30
表3に示す配合処方とした以外は、実施例29と同様にして塗料組成物を調製した。そして、得られた塗料組成物の硬化温度、触媒効果および触媒能を、上記の方法で評価した。その結果を、表3に示す。
【0280】
【表3】
【0281】
(ポリオキシエチレン側鎖含有ジオールの合成)
合成例1
攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メトキシPEG#1000(数平均分子量1000:東邦化学工業製)1000gと、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(三井化学製)1682gとを仕込み、窒素雰囲気下90℃で9時間反応させた。得られた反応液を薄膜蒸留して、未反応の1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを取り除き、ポリオキシエチレン基含有モノイソシアネート(I)を得た。
【0282】
次いで、攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、ジエタノールアミン82.5gを仕込み、窒素雰囲気下、空冷しながら上記ポリオキシエチレン基含有モノイソシアネート(I)917.5gを、反応温度が70℃を超えないように徐々に滴下した。滴下終了後、約1時間、窒素雰囲気下において70℃で攪拌し、イソシアネート基が消失したことを確認し、ポリオキシエチレン側鎖含有ジオール(II)を得た。
(親水性基含有ポリイソシアネートの合成)
合成例2
攪拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管を備えた容量1Lの反応器に、タケネート170N(ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、イソシアネート基含有量20.7%、三井化学製)を500.00g(NCO:2.504mol)、活性水素基を含有する親水性化合物としてメトキシPEG#550(数平均分子量550:東邦化学工業製, OH:0.280mol)を157.89g仕込み(当量比(OH/NCO)=0.112)、90℃において、残存するイソシアネート量に変化がなくなるまでウレタン化反応させ、親水性基含有ポリイソシアネートを合成した。得られた親水性基含有ポリイソシアネートのイソシアネート基含有量(NCO(%))、および、エチレンオキシド基含有量(EO(%))を、表4に示す。
【0283】
なお、反応中の残存するイソシアネート量は、ジブチルアミンを用いた逆滴定により求めた。また、得られた親水性基含有ポリイソシアネートのイソシアネート基含有量は、ジブチルアミンを用いた逆滴定により求め、表4には溶剤を除いた樹脂換算での値を記した。また、エチレンオキシド基含有量は、仕込み比から計算により求めた。
【0284】
合成例3〜9
原料化合物を表4に示す条件に変更した以外は、合成例2と同様に合成して親水性基含有ポリイソシアネートを得た。得られた親水性基含有ポリイソシアネートのイソシアネート基含有量、および、エチレンオキシド基含有量(EO(%))を、表4に示す。
【0285】
【表4】
【0286】
なお、表中の略号の詳細を下記する。略号は、以下の各表についても同様である。
【0287】
タケネート170N:ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、イソシアネート基含有量20.7%、三井化学製
タケネート127N:ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの3量体、イソシアネート基含有量13.5%、三井化学製
POE側鎖ジオール:合成例1で得られたポリオキシエチレン側鎖含有ジオール(II)
メトキシPEG♯550:ポリ(オキシエチレン)メチルエーテル、数平均分子量550、東邦化学工業製
メトキシPEG♯400:ポリ(オキシエチレン)メチルエーテル、数平均分子量400、東邦化学工業製
メトキシPEG♯1000:ポリ(オキシエチレン)メチルエーテル、数平均分子量1000、東邦化学工業製
(水分散性ブロックイソシアネートの調製)
実施例31
攪拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管の付いた容量200mLの反応器に室温で合成例3の親水性基含有ポリイソシアネート50.616g(NCO基:0.100mol)に、溶剤としてMIBK26.787gを加え、よく混合した。
【0288】
その後、第2ブロック剤としてイミダゾール(IMZ)6.468g(0.095mol)を反応溶液の温度が50℃を超えないよう数回に分けて加えた。
【0289】
次いで、第1ブロック剤として1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(TMG)0.576g(0.005mol)をIMZと同様に数回に分けて加えた後に、室温で3時間攪拌した。
【0290】
その後、FT−IRスペクトルを測定することで、イソシアネートがブロック化されていることを確認し、固形分濃度60質量%のブロックイソシアネートを得た。
【0291】
得られたブロックイソシアネートの水分散性、水中でのイソシアネートのポットライフを下記の方法で評価した。その結果を表5に示す。
【0292】
実施例32、33、35〜50、52、53、参考例34、51、比較例19〜29
表5および表6に示す配合処方とした以外は、実施例31と同様にしてブロックイソシアネートを得た。
【0293】
【表5】
【0294】
【表6】
【0295】
(塗料組成物の調製)
実施例54
最終的な塗料組成物の固形分濃度が30質量%になるように、水を加えて濃度を調節したアクリルポリオール(商品名RE4788、三井化学製)の水分散液に、実施例31で得られたブロックイソシアネートを、アクリルポリオールの水酸基とブロックイソシアネートの潜在イソシアネート基とのモル比が1になるように加え、30分間攪拌することによって、塗料組成物を調製した。
【0296】
そして、得られた塗料組成物の硬化温度およびポットライフを下記の方法で評価した。その結果を、表7に示す。
【0297】
実施例55、56、58〜73、75、76、参考例57、74、比較例30〜40
表7および表8に示す配合処方とした以外は、実施例54と同様にして、塗料組成物を調製した。
【0298】
そして、得られた塗料組成物の硬化温度およびポットライフを下記の方法で評価した。その結果を、表7および表8に示す。
【0299】
比較例41
比較例32の塗料組成物の潜在イソシアネート基100molに対して、20molの1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(TMG)を添加し、塗料組成物を調製した。この塗料組成物は、24時間後に分離・凝集した。
【0300】
評価
(硬化温度)
調製直後の塗料組成物を、アプリケーターにより厚み250μmのポリプロピレン(PP)板上に塗布し、所定の温度で30分間硬化させた塗膜を、アセトン/メタノール=1/1(vol/vol)混合溶剤に23℃で24時間浸漬させた。
【0301】
その後、混合溶剤に浸漬する前の質量に対する、混合溶剤に溶解しなかった部分の質量を、ゲル分率として計算し、ゲル分率が80%以上になった温度を硬化温度とした。
【0302】
なお、硬化温度が150℃以上になる場合にはPP板の代わりにガラス基板を用いた。
【0303】
(触媒効果、触媒能)
第2ブロック剤のみを用いて調製したブロックイソシアネートを含む塗料組成物と、第1ブロック剤および第2ブロック剤を併用して調製したブロックイソシアネートを含む塗料組成物との硬化温度を比較し、硬化温度の差を、触媒効果(℃)として求めた。また、第1ブロック剤1molに対する触媒効果を、触媒能(℃/mol)として求めた。
【0304】
(ポットライフ)
塗料組成物を調製した後に、塗料組成物の硬化温度が90℃以下の場合には23℃で、100℃以上の場合には40℃で保存した。保存7日後にシリコンウエハーに塗料組成物を塗布し、1時間乾燥後IRスペクトル測定を行った。また、IRスペクトルは150℃で30分、硬化処理をした後にも行い、主剤のOHのピーク(3520cm−1)のピーク強度変化から、主剤のOHと反応したNCO量を算出し、算出したNCO量が60%以上の場合を◎、50%以上60%未満の場合を○、30%以上50%未満または少量の沈降物が見られた場合を△、30%未満の場合を×とした。
【0305】
(塗膜の機械物性)
調製した塗料組成物を、アプリケーターにより厚み250μmでPP板上に塗布し、表9に記載の所定の温度で20分間硬化させた後、室温で24時間熟成させた。その後、PP板から塗膜を剥離し、引張試験を実施した。得られた試験結果を、表9に示す。
【0306】
(塗膜の耐水性評価)
調製した塗料組成物を、♯5のバーコーターでアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)基板上に塗布し、120℃で30分間硬化させた。そして、硬化させた各塗膜を、水に40℃で7日間浸漬させた後、グロスメーターVG2000(日本電色工業製)により光沢度を測定した。測定した光沢度が90以上のものを◎、85以上のものを○、85未満のものを×として評価した。
【0307】
(塗膜の耐溶剤性)
調製した塗料組成物を、100μmのアプリケーターで、ブリキ基板上に塗布し、120℃で30分間硬化させた。そして、硬化させた各塗膜を、酢酸エチルに浸漬したガーゼで、50回ラビングし、塗膜を観察した。塗膜がダメージを受けていないものを◎、受けたものを×として評価した。
【0308】
【表7】
【0309】
【表8】
【0310】
【表9】
【0311】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記特許請求の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0312】
本発明のブロックイソシアネート、本発明の塗料組成物および接着剤組成物、さらに、それら組成物が用いられる物品は、各種産業分野の工業製品全般において、好適に用いることができる。