(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6033448
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】トンネル電流解析を用いた核酸シークエンシングのための装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20161121BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20161121BHJP
C12Q 1/68 20060101ALN20161121BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M1/34 Z
!C12Q1/68 Z
【請求項の数】14
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-533535(P2015-533535)
(86)(22)【出願日】2013年9月18日
(65)【公表番号】特表2015-532089(P2015-532089A)
(43)【公表日】2015年11月9日
(86)【国際出願番号】EP2013069384
(87)【国際公開番号】WO2014048816
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2015年3月27日
(31)【優先権主張番号】102012217603.9
(32)【優先日】2012年9月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルター グンブレヒト
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー ハイデン
【審査官】
宮岡 真衣
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−119071(JP,A)
【文献】
特開2006−119140(JP,A)
【文献】
特表2010−513853(JP,A)
【文献】
特表2004−519248(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/096936(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0193236(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0193231(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0019259(US,A1)
【文献】
ALBRECHT T. et al,ACS NANO,5(8)(2011),p.6714-6725
【文献】
IVANOV A.P. et al,NANO Lett. ,11(2011),p.279-285
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00−1/42
C12Q 1/00−1/70
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル電流解析を用いた核酸シークエンシングのための装置であって、
該装置は、
・ 1nmから100nmの直径(11)を有する少なくとも2つの導電性粒子(8)と、
・ 1nmから100nmの直径を有する少なくとも2つの電気絶縁性粒子(9)と、
・ 前記導電性粒子(8)に接触接続するための少なくとも2つの第1電極(4)と、
・ 前記第1電極(4)および前記粒子(8,9)が配置されている基板(2)とを有しており、
4つの前記粒子(8,9)が実質的に平面四辺形に配置されており、かつ、前記導電性粒子(8)と、前記絶縁性粒子(9)とはそれぞれ対角線上に向かい合っており、
2つの前記導電性粒子(8)が、4つの前記粒子間に配置されている間隙によって互いに電気的に絶縁されている、装置において、
前記少なくとも2つの第1電極(4)に直角に配置された少なくとも2つの第2電極(5)を有する、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
トンネル電流解析を用いた核酸シークエンシングのための装置であって、
該装置は、
・ 1nmから100nmの直径(11)を有する少なくとも2つの導電性粒子(8)と、
・ 1nmから100nmの直径を有する少なくとも2つの電気絶縁性粒子(9)と、
・ 前記導電性粒子(8)に接触接続するための少なくとも2つの第1電極(4)と、
・ 前記第1電極(4)および前記粒子(8,9)が配置されている基板(2)とを有しており、
4つの前記粒子(8,9)が実質的に平面四辺形に配置されており、かつ、前記導電性粒子(8)と、前記絶縁性粒子(9)とはそれぞれ対角線上に向かい合っており、
2つの前記導電性粒子(8)が、4つの前記粒子間に配置されている間隙によって互いに電気的に絶縁されている、装置において、
前記基板(2)には、網目状に配置された複数の凹部(3)が含まれている、
ことを特徴とする装置。
【請求項3】
トンネル電流解析を用いた核酸シークエンシングのための装置であって、
該装置は、
・ 1nmから100nmの直径(11)を有する少なくとも2つの導電性粒子(8)と、
・ 1nmから100nmの直径を有する少なくとも2つの電気絶縁性粒子(9)と、
・ 前記導電性粒子(8)に接触接続するための少なくとも2つの第1電極(4)と、
・ 前記第1電極(4)および前記粒子(8,9)が配置されている基板(2)とを有しており、
4つの前記粒子(8,9)が実質的に平面四辺形に配置されており、かつ、前記導電性粒子(8)と、前記絶縁性粒子(9)とはそれぞれ対角線上に向かい合っており、
2つの前記導電性粒子(8)が、4つの前記粒子間に配置されている間隙によって互いに電気的に絶縁されている、装置において、
前記基板(2)は、CMOSチップである、
ことを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の装置において、
前記少なくとも2つの第1電極(4)はそれぞれ、少なくとも1つの導電性粒子(8)に直接、電気的に接触接続している、
ことを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の装置において、
前記粒子(8,9)は、球形の粒子である、
ことを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の装置において、
前記導電性粒子(8)には金が含まれている、
ことを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の装置において、
前記導電性粒子(8)は、実質的に大きさが同じである、
ことを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の装置において、
前記電気絶縁性粒子(9)にはポリスチロールが含まれている、
ことを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の装置において、
互いに1nmよりも小さい間隔を有する前記少なくとも2つの導電性粒子(8)は、互いに固定的に接続されている、
ことを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の装置を製造するための方法において、
該方法は、
・ 1つの基板に複数の凹部(3)を形成するステップと、
・ 少なくとも2つの導電性粒子(8)および少なくとも2つの電気絶縁性粒子(9)を含有する懸濁液を前記凹部(3)に加えるステップとを有しており、
前記凹部(3)において前記粒子(8,9)をランダムに分散させる、
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、
前記凹部(3)を少なくとも100個の粒子(8,9)によって充填する、
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、
ランダムに分散された粒子(8,9)を有し、かつ請求項1から3までのいずれか1項に記載した装置を有する、複数の前記凹部を選択する、
ことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項10から12までのいずれか1項に記載の方法において、
互いに1nmよりも小さい間隔を有する複数の導電性粒子(8)を導電性層によってコーティングして、前記導電性粒子(8)が互いに接触接続するようにする、
ことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、
前記導電性粒子(8)を、金属の無電解メッキによってコーティングする、
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル電流解析を用いた核酸シークエンシングのための装置に関する。
【0002】
文献では多くの核酸シークエンシング方法が公知である。この一つは、いわゆる合成によるシークエンシング(英語:SBS Sequencing-by-Synthesis)である。ここでは、適合するヌクレオチドを取り込む際に1つの成分が遊離し、この成分が酵素カスケードによって検出される。さらにナノポアにおける核酸シークエンシングが公知である。この方法の利点は、DNA鎖のマーキングも複雑なカスケード反応も必要でないことである。
【0003】
ナノポアを用いた核酸シークエンシングでは、DNA鎖が、生物学的なナノポアまたは人工的な(英語:Solid-State)ナノポアを通過する。核酸鎖の個々の塩基は、DNAが通過する際のポア抵抗の変化によって解析することできる。ここではDNAは、導電性の液体に入れられる。この液体には電圧が印加されて電流が流れる。種々異なるタイプの塩基(殊にグアニン、シトシン、チミン、アデニン)がナノポアを通過する際にこの電流が変化する。この変化は、上記のポアを通過する塩基に依存するため、この塩基を解析することができるのである。
【0004】
択一的には上記のポアをわたるトンネル電流を測定すること可能であり(英語:SBT Sequencing-by-Tunneling)、このトンネル電流はポア内にある塩基に依存する。トンネル電流法は有利にも、ポア抵抗の測定に比べて、より高い塩基分解能を有している。これは、ナノポア内部における電場強度が大きいためである。
【0005】
上記の測定は、ナノポアの大きさおよび形状に大きく依存する。さらにトンネル電流を十分な精度で検出するためには、ナノポアに電圧を印加するために電極を正確に配置しなければならない。トンネル電流を用いた核酸シークエンシングの解析の確実さを高めるためには、特定の応用に対する電極を備えたテーラーメイド・ナノポアを作製することが望ましい。ソリッドステートナノポアを形成するための多くの作製方法は、孔を開けるのと類似して、薄膜から材料を除去することをベースにしている。この作製は、例えば、電子ビームベースのフォトリソグラフィによって行われる。
【0006】
電極を備えたソリッドステートナノポアの従来の装置は、不利なことにも極めて複雑であり、また作製には時間がかかっていた。複数の電極またコンデンサに対してナノポアを十分な精度で配置して、トンネル電流が高い精度で測定できるようにすることは、技術的に実現不可能であり、またその作製には、不利なことにも大きな作業コストおよび時間コストが伴う。
【0007】
本発明の課題は、核酸配列を解析するための装置と、この装置を作製する方法とを提供して、上記の欠点を克服することである。
【0008】
この課題は、請求項1に記載した装置および請求項11に記載した方法によって解決される。従属請求項には、本発明の有利な発展形態および実施形態が記載されている。
【0009】
本発明によれば、トンネル電流解析を用いた核酸シークエンシングのための装置には、1nmから100nmの直径を有する、例えば1nmから10nmの直径を有する少なくとも2つの導電性粒子が含まれている。さらに上記の装置には、1nmから100nmの直径を有する、例えば1nmから10nmの直径を有する少なくとも2つの電気絶縁性粒子が含まれている。上記の装置にはさらに、上記の導電性粒子に接触接続するための少なくとも2つの第1電極が含まれている。これらの第1電極および上記の粒子は、1つの基板上に配置されている。本発明では、上記の少なくとも4つの粒子が実質的に平面四辺形に配置されており、上記の複数の導電性粒子と、上記の絶縁性粒子とはそれぞれ対角線上で向かい合っている。これらの平面四辺形に配置された4つの粒子の中心には有利には間隙が形成されている。この間隙の大きさは、上記の粒子の大きさおよび形状に依存してnmの範囲にある。この間隙は、核酸配列の解析時にソリッドステートナノポアになる。この装置により、特定のテーラーメイド・ナノポアを形成することが可能である。
【0010】
トンネル電流を用いた核酸シークエンシングのための装置を作製する方法では、複数の凹部を1つの基板に形成する。ここでは、少なくとも2つの導電性粒子と、少なくとも2つの電気的絶縁性粒子とを上記の凹部に入れ、殊に充填し、この際にこれらの粒子は、上記の凹部においてランダムに分散される。
【0011】
本発明の有利な実施形態および発展形態では、上記の複数の第1電極はそれぞれ、少なくとも1つの導電性粒子に直接、電気的に接触接続している。これにより、有利にも電流が上記の導電性粒子を通って流れることができる。第1電極の配置は有利にはつぎのように行われる。すなわち、DNA鎖またはRNA鎖が上記のナノポアにある場合に、上記の導電性粒子がコンデンサを形成し、このコンデンサにおいて解析のためのトンネル電流を測定することのできるように上記の第1電極が配置されるのである。この場合にこのコンデンサへのナノポアの配置は有利には、トンネル電流が高い精度で測定できるように行われる。なぜならば、ナノポアおよびコンデンサは位置的に互いに極めて接近して配置されているからである。理想的なケースでは、形成されるコンデンサギャップと、上記のナノポアとは同じである。
【0012】
本発明の別の有利な実施形態および発展形態において、上記の装置には、第1電極に対して垂直に配置された少なくとも2つの第2電極が含まれている。これらの電極は有利には、上記の粒子を通してDNA鎖を所期のように動かすのに使用される。このためには、例えば、ゲルを通してDNA/RNAを動かすためにゲル電気泳動において使用される電極が好適である。
【0013】
本発明の別の有利な実施形態および発展形態では、上記の基板は網目状に配置された複数の凹部を有する。この凹部の径は、例えば10nmと1μmとの間にある。これらの凹部は有利には上記の粒子に対する固定ユニットである。
【0014】
本発明の別の有利な実施形態および発展形態において、上記の基板は、CMOSチップである。このCMOSチップは複数の層で形成され、絶縁性の層と導電性の層とが上下に配置されている。このCMOSチップには一般的に、上記の電極に電圧を供給するためおよび第1電極間の電流を測定するためのデバイスがすでに含まれている。
【0015】
上記の装置の有利な実施形態および発展形態では、上記の粒子は、球形の粒子である。球形の粒子は、有利には球充填で配置される。このようにして得られる間隙の径は有利にも計算することができる。これにより、核酸シークエンシングのためのテーラーメイド・ナノポアを形成することができる。
【0016】
本発明の別の有利な実施形態および発展形態では、上記の導電性粒子には金が含まれている。
【0017】
上記の導電性粒子は一般的に、実質的に大きさが同じである。これにより、上記の球充填は有利にも規則的になる。
【0018】
本発明の別の有利な実施形態および発展形態では、上記の電気絶縁性粒子にはポリスチロールが含まれている。
【0019】
本発明の別の有利な実施形態および発展形態では、上記の導電性粒子は、互いに固定的に接続されている。この固定の接続は有利には、電気メッキプロセスを用いて形成することができる。択一的にはこの固定的な接続は、例えば金属の無電解メッキによって形成される導電性のコーティングを用いて行うことができる。これによって有利にも、それぞれ1nmより小さい間隔で離れている上記の導電性粒子間の電気的な接触接続が保証される。
【0020】
本発明の別の有利な実施形態および発展形態では、上記の凹部を少なくとも100個の導電性粒子および電気絶縁性粒子によって充填する。
【0021】
本発明の別の有利な実施形態および発展形態では、すでに導電性粒子および電気絶縁性粒子によって充填されており、かつ、請求項1に記載した配置構成をちょうど1つ有する、すなわち1つのナノポアを有する凹部が選択される。これにより、有利にもナノポアをDNA/RNAが通過する際に流れる上記のトンネル電流を、別の複数のトンネル電流が重ね合わされることなしに、測定することができる。
【0022】
本発明の別の有利な実施形態および発展形態では、互いに1nmよりも小さい間隔を有する上記の導電性粒子は、導電性層によってコーティングされて、これらの導電性粒子が互いに電気的に接触接続されるようにする。それぞれ1nmより小さい間隔で離れているこれらの導電性粒子間の上記の電気的な接触接続が有利にも保証される。
【0023】
本発明の別の有利な実施形態および発展形態では、上記の導電性粒子は、金属の無電解メッキによってコーティングされる。
【0024】
以下、実施例に基づいて本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】粒子配置構成体13を上から見た概略平面図である。
【
図2】粒子配置構成体13が含む網目状配置構成体1の構造を側方から略示する図である。
【
図3】2つの第1電極4を備えた凹部3と、電流10とを示す上から見た概略平面図である。
【0026】
図1に略示した粒子配置構成体13には、2つの導電性粒子8と、2つの絶縁性粒子9と、DNA6とが含まれている。これらの粒子は、上からの平面図において断面で示されている。すなわち、図示した複数の丸い領域は、粒子の断面をその最大の直径で示しているのである。螺旋状のDNA6も上から見たものである。
【0027】
導電性粒子8は金から構成されている。絶縁性粒子9はポリスチロールから構成されている。択一的にこれらの絶縁性粒子9はラテックスから構成される。粒子8および9の直径11は、5nmである。これらの粒子間に形成される間隙は、DNAシークエンシング用のアクティブナノポア7である。このナノポアは、2nmのポア径12を有する。
【0028】
図2には、例えば3つの凹部3を有する網目状配置構成体1の側面図が示されている。基板2には、例えばケイ素が含まれている。凹部の径14は一般的に30〜150nmである。この実施例において凹部径14は35nmである。凹部3の2つの側壁には第1電極4が1つずつ配置されている。有利には第1電極4には電極が供給される。第1電極4は、この実施例のように、上記の側壁の一部分にわたって延在することが可能である。択一的には第1電極4が、側壁の全面にわたって延在することも可能である。凹部3の底部と、基板2の上側とには第2電極5が1つずつ配置されている。電極4および5の電圧供給部は、例えば、
図2の中央の凹部3によって示されている。
【0029】
上記の基板は一般的にはCMOSチップである。このCMOSチップ上には複数の凹部が網目状に配置されている。1つの第2電極5および2つの第1電極4は、この基板上に、すなわちCMOSチップ上に被着されている。このCMOSチップは、極めて良好なアナログ電子特性を有しており、この電子特性により、トンネル電流の正確な測定が保証される。例えば、アナログ・デジタル変換器および高速のマルチプレクス法により、トンネル電流測定するため、多数の電極を読み取ることができる。これらの電極の接触接続は、例えば、CMOSチップの最上部のメタライゼーション面によって行われる。
【0030】
凹部3は、エッチング技術を用いて酸化ケイ素または窒化ケイ素に入れられる。
【0031】
凹部3は、導電性粒子8および絶縁性粒子9からなる混合物によって充填され、この混合物の配合は実質的に均一になっており、上記の複数の粒子は凹部においてランダムに分散されている。
【0032】
第2電極5には電圧が供給されて、DNA6が凹部3内に輸送される。これは、電気ポア装置におけるDNAの輸送と同様である。
【0033】
図3には、複数の凹部3のうちの1つの凹部を通る断面が示されている。アクティブナノポア7内にはDNA6が配置されている。第1電極4に電圧が印加されると、粒子配置構成体13において電流10が発生する。導電性粒子8間にはトンネル電流が流れ、また導電性粒子8それ自体はコンデンサになる。このトンネル電流は、アクティブナノポア7を通過するDNA6の塩基に依存する。これにより、2つの第1電極4間のトンネル電流を測定すれば、アクティブナノポア7における塩基を解析することができる。
【0034】
アクティブナノポア7に直接隣接する導電性粒子8は有利にもコンデンサを構成し、これにより、短いポア長が可能になる。これにより、DNAシークエンシングの塩基解析が格段に改善される。
【0035】
複数の第2電極5間の電流は、アクティブナノポア7を通してDNA6を動かすため、塩基はつぎつぎとアクティブナノポア7を通過して、核酸配列が解析される。トンネル電流の測定中には第2電極5に電圧は供給されない。択一的には一定の第2電極5に一定の電圧を供給することができるが、これは、この電圧供給によってトンネル電流の測定が妨害されない場合である。
【0036】
アクティブナノポア7を有する適切なシステム、例えば粒子配置構成体13をアドレッシングするため、凹部3をまず電解質溶液で満たす。引き続き、粒子および電解質溶液で満たされた凹部3に交流電圧を印加して抵抗を測定する。この抵抗は、非導電性粒子および導電性粒子8および9のこの配置構成についての特徴的な性質である。
【0037】
凹部3に複数の粒子配置構成体13が含まれており、これらの粒子配置構成体13に同時にDNA6が配置される場合には、これにより、この凹部3において複数のトンネル電流が生じることになる。この場合にこれらのトンネル電流を弁別できないため、この凹部3を評価することができない。しかしながらそうであっても、この実施例において1つの網目には1000個の凹部3が含まれているため、ちょうど1つの粒子配置構成体13を有する十分な個数の凹部3をDNA解析に利用することができる。
【0038】
上記の粒子を固定するため、電気めっきを行うことができる。金から構成される複数の導電性粒子8は、いわゆる無電解めっきによって互いに接続される。択一的にはこの接触接続を真の電気メッキによって行うことができる。これにより、上記の導電性粒子が固定され、互いに直接接触する複数の導電性粒子8間の電気的な接触接続が保証される。
【0039】
DNAシークエンシングとは択一的にRNA配列も解析することができる。短いRNA断片の配列解析も、例えばmiRNA(micro-RNA)またはmRNA(メッセンジャRNA)の配列解析も可能である。