【実施例】
【0046】
実験A:酸化カルシウムを無機吸収剤として用いた吸収層を有する吸収性積層体
A1.吸収性積層体の作製
A1−1.吸収層単層の吸収フィルムの作製
熱可塑性樹脂バインダーとしてLDPE(ペトロセン202R、東ソー株式会社、メルトマスフローレート:24g/10min、融点:106℃、密度:0.918g/cm
3)と、水分吸収性の化学吸着剤として酸化カルシウム(密度:3.35g/cm
3)とを、酸化カルシウム含有率が0〜70重量%(すなわち、バインダーに対して0〜64体積%、組成物全体に対して0〜39体積%)になるように混練して吸収性組成物を得た。混練は、ラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所)を用いて行った。これをTダイにて厚みが60μmになるように製膜し、吸収層単層の吸収フィルムを得た。
【0047】
A1−2.吸収層の両面にスキン層を設けた3層構造の吸収フィルムの作製
吸収層として1−1と同じ方法で得た吸収性組成物、スキン層としてLLDPE(エボリューSP2520、プライムポリマー株式会社、融点:122℃、メルトマスフローレート:1.9g/10min、密度:0.925g/cm
3)を使用し、吸収層の両面にスキン層が設けられるよう、3層共押出のTダイにて製膜した。吸収層の厚みを60μm、両面のスキン層の厚みを共に10μmとした。
【0048】
A1−3.基材への熱圧着
1−1又は1−2で作製した吸収フィルムを10cm×10cmの大きさに切り取り、10cm×10cm×厚さ1mmのガラス基材(並ガラス、関谷理化株式会社、ソーダライム系ガラス)の上に置いた。これらを、熱ラミネート機(テストラミネータMRK‐350Y、株式会社エム・シー・ケー)を用いて熱圧着させることで、吸収性積層体を作製した。加熱ロールは全て140℃、ロール圧力0.1MPa、搬送速度は0.4m/minに設定した。
【0049】
A2.はく離接着強さの評価方法
JIS K 6854−2に記載の180°剥離法に基づき、引っ張り試験機により、基材と吸収フィルムとのはく離接着強さ(接着強度)を測定した。ここでは、引っ張り試験機がつかむためのつかみ幅分の熱圧着しない部分を設け、基材に熱圧着した吸収フィルムを15mm幅で切り込みをいれた。この15mmの幅の熱圧着部分を引っ張り、JIS K 6854−2に記載の180°剥離法に基づき、基材と吸収フィルムとのはく離接着強さを測定した(N=5)。なお、つかみ移動速度は、100mm/minであった。
【0050】
A3.はく離接着強さの評価結果
A3−1.吸収層単層からなる吸収フィルムの基材へのはく離接着強さ強度
実施例1〜3及び比較例1〜2の吸収性積層体を、上記1−1の作製方法によって得た、化学吸着剤(酸化カルシウム、CaO)の量を変えた吸収層単層からなる吸収フィルムを用いて、上記1−3の方法で熱圧着して作製した。表1に、各例の化学吸着剤の量とはく離接着強さの結果を示す。
【0051】
【表1】
【0052】
比較例1及び2は、熱圧着後、フィルムが自然に基材から剥がれ、接着を示さなかった。酸化カルシウムの量を増やすと、その基材と本質的に接着しない樹脂バインダーを使用しても、熱圧着によってフィルムの基材への接着性が向上し、接着剤の塗布等の粘着加工をしなくても、基材に吸収フィルムを貼合した吸収性積層体が得られることがわかる。
【0053】
A3−2.吸収層単層からなる吸収フィルムの厚みの違いによる基材へのはく離接着強さ
実施例4〜7の吸収性積層体を、上記1−1の作製方法から、化学吸着剤の量と吸収フィルムの厚みを変更して作製した。表2に、各例の化学吸着剤の量、吸収フィルムの厚み、そしてはく離接着強さの結果を示す。
【0054】
【表2】
【0055】
実施例4〜7の結果が示すように、本発明の吸収性積層体においては、吸収フィルムの厚みによらず、吸収フィルムが基材に高いはく離接着強さで接着することが分かる。
【0056】
A3−3.吸収層の両面にスキン層を設けた3層構造の吸収フィルムの基材へのはく離接着強さ
実施例8〜10及び比較例3〜5の吸収性積層体を、上記1−2の作製方法によって得た、吸収層の両面にスキン層を有する3層構造の吸収フィルムを用いて、上記1−3の方法で熱圧着して作製した。比較例3については、吸収層のバインダー樹脂を、スキン層と同じ樹脂とした。また、実施例11及び12については、基材側に位置するスキン層の厚みを実施例10から変更した。表3に、各例の吸収性積層体の構成とはく離接着強さの結果を示す。
【0057】
【表3】
【0058】
スキン層を有する場合であっても、酸化カルシウム含有率を上げるとともにはく離接着強さは高くなり、実施例9及び10ではフィルム強度よりはく離接着強さが高くなった。また、スキン層の厚みは、30μmの場合(実施例11)ではく離接着強さが最も高い結果となった。これは、実施例10に比べて実施例11の方がスキン層が厚く、吸収フィルムの引張強度が高いため、はく離接着強さの評価試験で吸収フィルムが破断しなかったためである。一方、実施例12のようにスキン層の厚みが50μm以上となると、はく離接着強さが低下することが分かる。
【0059】
A3−4.吸収フィルムのガラス基材以外へのはく離接着強さ
実施例10の吸収性積層体とは、用いる基材を変更して、実施例13〜15の吸収性積層体を作製した。なお、ここでは表4に、各例の吸収性積層体の構成とはく離接着強さの結果を示す。
【0060】
【表4】
【0061】
以上の結果から、これらの金属板を基材として使用しても、ガラスと同様の条件で、同等のはく離接着強さを有する吸収性積層体を作製できることが分かる。
【0062】
A4.水分吸収性の試験
ここでは、上記の実施例1〜3の吸収性積層体(熱圧着あり)の水分吸収性と、それらの吸収性積層体の作製に用いた吸収フィルム(熱圧着なし)の水分吸収性とを比較し、熱圧着したことによる水分吸収性への影響を確認した。熱圧着なしの場合、吸収フィルムは金網の上に載置され、両面が雰囲気中に暴露される状態とした。これらを、40℃、90%RHの環境下に14日間置いて、その重量変化に基づいて吸湿量を決定した。なお、14日以上経過させても、吸湿量には変化がなく、吸湿量は飽和していた。結果を以下の表5に示す。
【0063】
【表5】
【0064】
この結果から、吸収フィルムに熱圧着を行っても、その水分吸収性に低下はなく、本発明の吸収性積層体は、高い水分吸収性を保持することが確認できる。
【0065】
A5.吸収による膨張率の試験
厚みを100μmとしたこと以外は上記A1−1と同様にして作製した吸収フィルム(熱圧着なし)の水分吸収前後の寸法と、その吸収フィルムを上記A1−3の方法で熱圧着して得た吸収性積層体(熱圧着あり)の水分吸収前後の寸法とを比較し、熱圧着したことによる吸収フィルムの水分吸収時の膨張性への影響を確認した。
【0066】
ここでは、まず吸収フィルムを10cm×10cmの大きさに切り取り、水分吸収前の寸法を測定した。熱圧着した積層体の場合、吸収フィルムを厚さ40μmのアルミ基材の上に置き、これらを熱ラミネート機(テストラミネータMRK‐350Y、株式会社エム・シー・ケー)を用いて熱プレスした。ここで、加熱ロールは全て140℃、ロール圧力0.1MPa、搬送速度は0.4m/minに設定した。熱圧着なしの場合、吸収フィルムは、金網の上に載置され、両面が雰囲気中に暴露される状態とした。
【0067】
これらを、60℃、95%RHの環境下に12時間置いて飽和吸湿させた後に再度寸法を測定した。測定した寸法に基づいて、下記の式によって面積膨張率を求めた。
面積膨張率=吸収後面積/吸収前面積×100−100
【0068】
その結果を、以下の表6に示す。
【表6】
【0069】
なお、水分吸収後であっても、吸収性積層体から吸収フィルムははく離しなかった。上記の結果から、吸収フィルムを基材に熱圧着させた場合には、面方向の熱膨張を抑制できることが確認できる。いずれのフィルムも水分吸収によって同程度膨張したが、面積膨張率が抑制された吸収性積層体では、吸収フィルムは厚さ方向に多く膨張していた。
【0070】
実験B:ゼオライトを無機吸収剤として用いた吸収層を有する吸収性積層体
B1.ゼオライト3Aを無機吸収剤として用いた吸収性積層体
B1−1.ガラス基材を用いた吸収性積層体
無機吸収剤としてゼオライト3A(ユニオン昭和株式会社、密度:1.37g/cm
3)を用いたこと、及び厚みを100μmとしたこと以外は上記A1と同様にして、吸収層単層の吸収フィルム及びガラス基材を有する、表7に記載の吸収性積層体を得た。(比較例6,8、実施例16,18,20,22,24)
【0071】
B1−2.PET基材を用いた吸収性積層体
ガラス基材を、厚さ25μmのPET基材(E5100、東洋紡株式会社)に変えたこと以外はB1−1と同様にして、表7に記載の吸収性積層体を得た。なお、上記PET基材は、一方の面にコロナ処理がされているが、吸収フィルムは、PET基材の未処理面に熱圧着した。(比較例7,9、実施例17,19,21,23,25)
【0072】
これらの吸収性積層体についてはく離接着強さの評価を上記A2と同様にして行った。その評価結果を表7に示す。
【表7】
【0073】
B1−3.ゼオライト含有吸収層の厚みを変えた吸収性積層体
吸収フィルムの厚みを変えたこと以外はガラス基材を用いたB1−1の積層体と同様にして、表8に記載の吸収性積層体を得た。ただし、比較例12及び13においては、熱可塑性樹脂バインダーとして、LLDPE(エボリュー(商標)SP2520、株式会社プライムポリマー、メルトマスフローレート:19g/10min、融点:122℃、密度:0.925g/cm
3)を用いた。
【0074】
これらの吸収性積層体についてはく離接着強さの評価を上記A2と同様にして行った。その評価結果を表8に示す。
【表8】
【0075】
B1−4.PET基材の厚みを変えた吸収性積層体
PET基材の厚みを変えたこと以外は、B1−2の積層体と同様にして、表9に記載の吸収性積層体を得た。
【0076】
これらの吸収性積層体についてはく離接着強さの評価を上記A2と同様にして行った。その評価結果を表9に示す。
【表9】
【0077】
B2−1.ゼオライト4A及びゼオライト13Xを無機吸収剤として用いた吸収性積層体
ゼオライト3Aを、ゼオライト4A(ユニオン昭和株式会社、密度:1.37g/cm
3)及びゼオライト13X(ユニオン昭和株式会社、密度:1.38g/cm
3)に変更した以外はB1と同様にして、表10に記載の吸収性積層体を得た。
【0078】
これらの吸収性積層体についてはく離接着強さの評価を上記A2と同様にして行った。その評価結果を表10に示す。
【表10】
【0079】
B2−2.熱圧着条件を変更した吸収性積層体
加熱ロールの温度を変更したこと以外は実施例20と同様にして、表11に記載の吸収性積層体を得た。
【0080】
これらの吸収性積層体についてはく離接着強さの評価を上記A2と同様にして行った。その評価結果を表11に示す。
【表11】
【0081】
B3.他の基材を用いた吸収性積層体
基材の種類を変更したこと以外は実施例20と同様にして、実施例59〜61の吸収性積層体を得た。また、吸収フィルムを熱圧着しない面に蒸着膜を有するPET基材を用いたこと以外は、B1と同様にして、実施例62〜69及び比較例22〜23の吸収性積層体を得た。なお、Al蒸着PETとして東レフィルム加工株式会社1510を、シリカ蒸着PETとして凸版印刷株式会社のGXフィルムを用いた。
【0082】
これらの吸収性積層体についてはく離接着強さの評価を上記A2と同様にして行った。その評価結果を表12に示す。
【表12】
【0083】
B4:ゼオライト含有吸収フィルムの水分吸収性の試験
ここでは、上記の実施例16〜23の吸収性積層体(熱圧着あり)の水分吸収性と、それらの吸収性積層体の作製に用いた吸収フィルム(熱圧着なし)の水分吸収性とを比較し、熱圧着したことによる水分吸収性への影響を確認した。熱圧着前では、吸収フィルムは金網の上に載置され、両面が雰囲気中に暴露される状態とした。これらを、40℃、90%RHの環境下に重量変化がなくなるまで静置して、その重量変化に基づいて吸湿量を決定した。
【0084】
結果を以下の表13に示す。
【表13】
【0085】
実験C.基材及び吸収フィルムの熱収縮率の測定
(1)吸収フィルムの熱収縮量の測定
無機吸収剤としてゼオライト3A(ユニオン昭和株式会社、密度:1.37g/cm
3)を用いたこと、及び厚みを100μmとしたこと以外は上記A1と同様にして、表14に記載の比較例24及び実施例70〜71の吸収層単層の吸収フィルムを作製した。さらに、ゼオライト3Aに変えて酸化カルシウムを用いたこと、及び厚みを60μmとしたこと以外は、それらと同様にして、表14に記載の比較例25及び実施例72〜73の吸収層単層の吸収フィルムを得た。
【0086】
これらの吸収フィルムの熱圧着前後での熱収縮量を次のようにして測定した。まず、吸収フィルムを10cm×10cmの大きさに切り取り、その中心に5cmの標線を描いた。この吸収フィルムを、10cm×10cm×厚さ1mmのガラス基材(並ガラス、関谷理化株式会社、ソーダライム系ガラス)の上に、シリコーンコート離型PETフィルム(厚み:25μm、SP−PET−01−25BU、三井化学東セロ株式会社)を間に挟んで置き、これらを熱ラミネート機(テストラミネータMRK‐350Y、株式会社エム・シー・ケー)を用いて熱プレスした。ここで、加熱ロールは全て140℃、ロール圧力0.1MPa、搬送速度は0.4m/minに設定した。なお、この場合、吸収フィルムは、シリコーンコート離型PETフィルムとは接着しなかった。そして、熱圧着を行ってから10秒後に標線の長さを測定することによって、熱圧着による伸びを測定し、また23℃環境で10分間冷却することで、冷却後の標線の収縮を測定した。熱圧着による伸びと冷却後の収縮との差を、熱収縮量とした。また、熱収縮量を基準とした標線の長さ(5cm)で除した数値を、熱収縮率とした。
【0087】
さらに、これらの吸収フィルムとガラス基材とを、シリコーンコート離型PETフィルムを用いずに、上記の熱プレス条件と同じ条件で熱圧着して吸収性積層体を得た。そして、上記A2と同様にして、これらの吸収性積層体のはく離接着強さも測定した。
【0088】
これらの結果を以下の表14に示す。
【表14】
【0089】
(2)基材の熱収縮量の測定
様々な厚さのPET基材、シリカ蒸着PET基材(凸版印刷株式会社、GXフィルム)、及びアルミナ蒸着PET基材(凸版印刷株式会社、GLフィルム)の単体での熱収縮量及び熱収縮率を次のようにして測定した。参考例1〜6のフィルム基材を10cm×10cmの大きさに切り取り、その中心に5cmの標線を描いた。そして、そのフィルム基材をガラス基材の上に載置し、熱ラミネート機で熱プレスした。なお、この場合、フィルム基材はガラス基材とは接着しなかった。ここで、熱プレス条件は、全て140℃、ロール圧力0.1MPa、搬送速度は0.4m/minに設定した。
【0090】
さらに参考として、熱可塑性樹脂バインダーのLLDPE(エボリュー(商標)SP2520、株式会社プライムポリマー)又はLDPE(ペトロセン202R、東ソー株式会社)のフィルム単体の熱収縮量及び熱収縮率を、同様にして測定した(参考例7及び参考例8)。
【0091】
【表15】