特許第6033451号(P6033451)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6033451吸収フィルムを備えた吸収性積層体、及びそれを含む電子デバイス、並びにその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6033451
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】吸収フィルムを備えた吸収性積層体、及びそれを含む電子デバイス、並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/20 20060101AFI20161121BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20161121BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20161121BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20161121BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20161121BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   B32B27/20 Z
   B32B27/00 K
   H05B33/14 A
   H05B33/14 Z
   H05B33/02
   H05B33/04
【請求項の数】8
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-536599(P2015-536599)
(86)(22)【出願日】2014年9月10日
(86)【国際出願番号】JP2014073916
(87)【国際公開番号】WO2015037612
(87)【国際公開日】20150319
【審査請求日】2016年1月22日
(31)【優先権主張番号】特願2013-187748(P2013-187748)
(32)【優先日】2013年9月10日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-147209(P2014-147209)
(32)【優先日】2014年7月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】寺田 暁
(72)【発明者】
【氏名】小川 達也
(72)【発明者】
【氏名】小川 直希
(72)【発明者】
【氏名】成田 有輝
(72)【発明者】
【氏名】加藤 周
【審査官】 相田 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−206046(JP,A)
【文献】 特開2006−116501(JP,A)
【文献】 特開2001−321631(JP,A)
【文献】 特開昭55−044344(JP,A)
【文献】 特開2002−043055(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/123039(WO,A1)
【文献】 特開2005−243556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B01D 53/26−53/28
H01L 51/50
H01L 31/02−31/078
H01L 31/18−31/20
H05B 33/00−33/28
H02S 10/00−10/40
H02S 30/00−99/00
C08J 5/00− 5/02
C08J 5/12− 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、無機材料又は低熱収縮性の有機材料を表面に有する基材及び前記基材の表面上の吸収フィルムを含む吸収性積層体の製造方法:
前記基材を与える工程;
87体積%未満25体積%以上のポリオレフィン系樹脂及び13体積%超75体積%以下の無機吸収剤を含む吸収性組成物を与える工程;及び
前記吸収性組成物を成形して前記吸収フィルムを得て、これを前記基材の表面に接着層を介さずに熱圧着処理する工程、
ここで、前記有機材料は、前記熱圧着処理と同じ温度、ロール圧力0.1MPa、搬送速度は0.4m/minの条件で加熱ロールにより熱プレスを行った場合、その搬送方向の熱収縮率が0.6%未満であり(ただし、ポリエチレンを含む合成パルプ紙を除く)、かつ前記接着層は、ポリウレタン系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、及びシリコーン樹脂系接着剤からなる群より選択される
【請求項2】
前記基材の表面が、ポリエチレンテレフタレート、ガラス、鉄及びその合金、アルミニウム及びその合金、並びに銅及びその合金からなる群より選択される材料を含む、請求項に記載の吸収性積層体の製造方法。
【請求項3】
前記無機吸収剤が、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸コバルト、硫酸ガリウム、硫酸チタン、硫酸ニッケル、アルミナ、酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、シリカゲル、アルミノケイ酸塩鉱物、クレー、多孔質ガラス、微細孔性活性炭、ゼオライト、活性炭及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項に記載の吸収性積層体の製造方法
【請求項4】
前記無機吸収剤が、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム、硫酸カルシウム、硫酸チタン、アルミナ、酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、シリカゲル、アルミノケイ酸塩鉱物、クレー、多孔質ガラス、微細孔性活性炭、ゼオライト、活性炭及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項に記載の吸収性積層体の製造方法
【請求項5】
前記無機吸収剤が、酸化カルシウム、ゼオライト、及びこれらの混合物から選択される、請求項4に記載の吸収性積層体の製造方法。
【請求項6】
前記吸収フィルムが、前記吸収層の前記基材側に60μm以下の厚みを有するポリオレフィン系樹脂からなるスキン層を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の吸収性積層体の製造方法
【請求項7】
電子デバイスにおける、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法によって得られる吸収性積層体の使用方法
【請求項8】
前記電子デバイスが、有機ELモジュール、無機ELモジュール、又は太陽電池である、請求項に記載の使用方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収フィルムを備えた吸収性積層体、及びそれを含む電子デバイス、並びにその製造方法に関する。より詳しくは、基材及び吸収フィルムを含み、これらが接着層を介さずに高い接着強度で接着している吸収性積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスの代表例である有機EL装置では、有機EL素子内部への水分の侵入により、いわゆるダークスポット(非発光部)が発生するという問題が知られている。また、太陽電池素子の発電セル部及び導線部は水分によって劣化するため、発電効率が経時で低下してしまうという問題が知られている。そこで、これらの装置においては、水分を吸収する吸収材等が用いられている。
【0003】
従来から、吸収材又は吸着材を装置内に組み込む方法として、特許文献1〜4のように吸収材を接着剤、接着テープ等によって基材にラミネートする方法、封止板にざぐり等の加工をして吸収材を装置内に挿入する方法等が知られている。このような接着剤、接着テープ等に用いられる接着層としては、例えばポリウレタン系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、シリコーン樹脂系接着剤等から構成される層が挙げられる。
【0004】
しかし、上記の吸収材をラミネートする方法では、接着剤や接着テープに含まれる溶剤等の揮発性成分によって、EL素子等のモジュールに悪影響を与える可能性がある。具体的には、各層を構成している材料、特にEL素子における発光層の材料が、揮発成分と反応し、材料が劣化する場合がある。そして、EL素子においては、これによりダークスポットが発生し発光効率が下がるなどの悪影響を生じる場合がある。
【0005】
また、封止板にざぐり等の加工をし、吸収材を挿入する方法では、加工コストが上がるとともに、装置設計にも制限がかかることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−277395号公報
【特許文献2】特開2002−280166号公報
【特許文献3】国際公開第2006/088179号
【特許文献4】特開2010−201630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明においては、水分等を吸収するための吸収フィルムを、上記のような接着剤や接着テープ等からなる接着層を用いずに基材に接着させた吸収性積層体を与えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、以下の構成の吸収性積層体は、基材と吸収フィルムとの間に接着層を有していなくても、基材と吸収フィルムとが予想外に強く接着することを見出した。すなわち、本発明は、以下の通りである。
〈1〉 無機材料又は低熱収縮性の有機材料を表面に有する基材、及び前記基材の表面上の吸収フィルムを含む吸収性積層体であって、
前記基材の有機材料は、140℃、ロール圧力0.1MPa、搬送速度0.4m/minの条件で、加熱ロールにより熱プレスを行った場合に、その搬送方向の熱収縮率が、0.6%未満であり、
前記吸収フィルムは、接着層を介さずに前記基材の表面に接着しており、かつ87体積%未満25体積%以上の熱可塑性樹脂バインダー、及び13体積%超75体積%以下の無機吸収剤を含有する吸収層を有する、
吸収性積層体。
〈2〉 無機材料又は低熱収縮性の有機材料を表面に有する基材の前記表面と、吸収フィルムとが、接着層を介さずに、熱圧着処理にて接着された吸収性積層体であって、
前記有機材料は、前記熱圧着処理と同じ温度、ロール圧力0.1MPa、搬送速度は0.4m/minの条件で加熱ロールにより熱プレスを行った場合、その搬送方向の熱収縮率が0.6%未満であり、
前記吸収フィルムは、87体積%未満25体積%以上の熱可塑性樹脂バインダー、及び13体積%超75体積%以下の無機吸収剤を含有する吸収層を有する、
吸収性積層体。
〈3〉 前記基材の表面が、ポリエチレンテレフタレート、ガラス、鉄及びその合金、アルミニウム及びその合金、並びに銅及びその合金からなる群より選択される材料を含む、〈1〉又は〈2〉に記載の吸収性積層体。
〈4〉 前記基材の表面が、ガラス又は金属を有し、かつ
前記吸収層が、87体積%未満50体積%以上の熱可塑性樹脂バインダー、及び13体積%超50体積%以下の水分吸収性の化学吸着剤を含有する、
〈1〉〜〈3〉のいずれか一項に記載の吸収性積層体。
〈5〉 前記無機吸収剤が、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム、硫酸カルシウム、硫酸チタン、アルミナ、酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、生石灰、シリカゲル、アルミノケイ酸塩鉱物、クレー、多孔質ガラス、微細孔性活性炭、ゼオライト、活性炭及びこれらの混合物からなる群より選択される、〈1〉〜〈3〉のいずれか一項に記載の吸収性積層体。
〈6〉 前記熱可塑性樹脂バインダーが、ポリオレフィン系樹脂である、〈1〉〜〈5〉のいずれか一項に記載の吸収性積層体。
〈7〉 前記吸収フィルムが、前記吸収層の前記基材側に60μm以下の厚みを有する樹脂からなるスキン層を有する、〈1〉〜〈6〉のいずれか一項に記載の吸収性積層体。
〈8〉 以下の工程を含む、無機材料及び低熱収縮性の有機材料を表面に有する基材及び前記基材の表面上の吸収フィルムを含む吸収性積層体の製造方法:
前記基材を与える工程;
87体積%未満25体積%以上の熱可塑性樹脂バインダー及び13体積%超75体積%以下の無機吸収剤を含む吸収性組成物を与える工程;及び
前記吸収性組成物を成形して前記吸収フィルムを得て、これを前記基材の表面に接着層を介さずに熱圧着処理する工程、
ここで、前記有機材料は、前記熱圧着処理と同じ温度、ロール圧力0.1MPa、搬送速度は0.4m/minの条件で加熱ロールにより熱プレスを行った場合、その搬送方向の熱収縮率が0.6%未満である。
〈9〉 前記基材が、ポリエチレンテレフタレート、ガラス、鉄及びその合金、アルミニウム及びその合金、並びに銅及びその合金からなる群より選択される材料を含み、
前記熱可塑性樹脂バインダーが、ポリオレフィン系樹脂であり、かつ
前記無機吸収剤が、酸化カルシウム、ゼオライト、及びこれらの混合物から選択される、
〈8〉に記載の吸収性積層体の製造方法。
〈10〉 以下の工程を含む、表面にガラス又は金属を有する基材及び吸収フィルムを含む積層体の製造方法:
前記表面にガラス又は金属を有する基材を与える工程;
87体積%未満50体積%以上の熱可塑性樹脂バインダー及び13体積%超50体積%以下の水分吸収性の化学系吸収剤を含む吸収性組成物を与える工程;及び
前記吸収性組成物を成形して前記吸収フィルムを得て、これを前記基材に熱圧着させる工程。
〈11〉 〈1〉〜〈7〉のいずれか一項に記載の吸収性積層体を含む、電子デバイス。
〈12〉 有機ELモジュール、無機ELモジュール、又は太陽電池である、〈10〉に記載の電子デバイス。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、揮発性成分を発生させうる接着層を有さず、かつ製造が非常に簡易である基材及び吸収フィルムを含む吸収性積層体を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1(A)は、基材及び吸収フィルムの吸収層が、接着層を介さずに直接接着している本発明の吸収性積層体を示している。図1(B)は、基材及び吸収フィルムが接着層を介さずに直接接着している本発明の吸収性積層体であって、上記吸収フィルムは吸収層の両面にポリオレフィン系のスキン層を有する多層構造である吸収性積層体を示している。
図2図2は、本発明の吸収性積層体を用いることができる、EL素子の概略図である。
図3図3は、基材及び吸収フィルムを、熱圧着によって接着させて吸収性積層体を製造する、本発明の製造方法の一工程を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<吸収性積層体>
本発明の吸収性積層体は、無機材料又は低熱収縮性の有機材料を表面に有する基材及び接着層を介さずにその基材の表面と接着している吸収フィルムを含む。この吸収フィルムは、87体積%未満25体積%以上の熱可塑性樹脂バインダー及び13体積%超75体積%以下の無機吸収剤を含有する吸収層を有する。
【0012】
図1(A)は、吸収層1のみからなる吸収フィルムが、基材2の表面と接着層を介さずに直接接着している本発明の吸収性積層体10を示している。図1(B)は、吸収フィルムが基材2の表面と接着層を介さずに直接接着している本発明の吸収性積層体10であって、上記吸収フィルムは吸収層1の両面にポリオレフィン系樹脂からなるスキン層3を有する多層構造からなる吸収性積層体10を示している。
【0013】
本発明の吸収性積層体では、基材と吸収フィルムとを熱圧着(熱融着)によって接着させることができる。このような吸収性積層体は、非常に容易に製造することができ、また汚染物を発生させるおそれがある接着層を有していないため有用である。さらに、本発明で用いられる吸収フィルムに熱圧着の処理を行っても、吸収性が有意には低下しないため、本発明の吸収性積層体は、高い吸収性を保持する。
【0014】
この基材と吸収フィルムとは、接着層を介していなくても、接着する。好ましくは、基材と吸収フィルムとの間のJIS K6854−2による180度剥離法に準拠して測定した場合の接着強度(はく離接着強さ)は、0.01N/15mm以上、0.1N/15mm以上、0.5N/15mm以上、1.0N/15mm以上、2.0N/15mm以上、3.0N/15mm以上、又は4.0N/15mm以上である。このような強度で接着していると、例えば本発明の吸収性積層体を電子デバイスに用いる場合に、デバイス組立工程での搬送等で、吸収フィルムの剥離が発生しないため好適である。
【0015】
本発明の吸収性積層体では、基材と吸収フィルムとは、通常のヒートシールによっては接着していない。ここで、通常のヒートシールによる接着とは、基材と吸収フィルムとの表面が分子レベルで絡まり合って接着している状態をいう。
【0016】
驚くことに、低熱収縮性の基材表面と、吸収剤を含まない熱可塑性樹脂バインダーのみのフィルムとでは、熱圧着しても全く接着しない。本発明者らは、特定の量の吸収剤と熱可塑性樹脂バインダーとを含むフィルムのみが、低熱収縮性の基材表面と接着することを見出した。理論に拘束されないが、本発明の吸収性積層体の基材と吸収フィルムとが、接着層を介していなくても強く接着する理由は、次のように考えられる。まず、低熱収縮性の基材表面上に吸収フィルムを載置し熱圧着の処理を行うと、吸収フィルムが基材表面に比べて熱によって膨張及び収縮しやすいため、吸収フィルムは熱圧着処理時に一旦伸び、その後冷却される過程で収縮する。その際、熱可塑性樹脂バインダーのみのフィルムでは、フィルム全体が同時に大きく収縮するため、吸盤のようには作用せず基材に張り付かず、仮に張り付いたとしてもすぐに剥がれてしまう。一方、特定の量の無機吸収剤を含む吸収フィルムでは、その吸収剤が骨格のような役割を果たし、その骨格の間が部分的に収縮することで適度な熱収縮となり、吸盤のように基材に貼り付くものと思われる。
【0017】
本発明の吸収性積層体は、電子デバイスにおいて用いることができ、例えば有機EL、無機EL、及び太陽電池において用いることができる。図2は、本発明の吸収性積層体10を用いたEL素子20の概略図を示しており、ここでは、吸収フィルム1及び基材2を含む吸収性積層体10に、金属電極21、EL層(発光層)22、透明電極23が順に形成され、TFT24が透明電極23と透明基板25との間に位置している。
【0018】
太陽電池は、入射光側にある透明基材、発電セル、発電セル及び外部との連結用の導線、発電セル及び導線を封止するための封止樹脂、及び透明基材と反対側にある防湿性のバックシートを含み、本発明の吸収性積層体はバックシートの少なくとも一部となることができる。
【0019】
このような電子デバイスにおいては、デバイス内部に水分又は汚染物があると特性の低下につながるため、汚染物を発生させうる接着層を有さず、かつ水分等を吸収する本発明の吸収性積層体は、特に有用である。また、本発明の吸収性積層体で用いる吸収フィルムは、比較的薄く、かつ柔軟性があるので、従来から用いられているEL用の水分ゲッター材と比較して有利である。
【0020】
この吸収性積層体の厚みは、例えば20mm以下、10mm以下、又は1mm以下とすることができる。また、この吸収性積層体の水平方向の1辺の寸法は、例えば100cm以下、50cm以下、30cm以下、又は20cm以下とすることができる。
【0021】
(基材)
本発明の積層体で用いる基材は、無機材料又は低熱収縮性の有機材料をその表面に有する基材であれば、特に限定されない。ただし、その基材の表面には、はく離性を高めるための表面処理、例えばシリコーン樹脂又はフッ素樹脂によるコーティング処理がなされていないことが好ましい。ここで、低熱収縮性の有機材料とは、当該有機材料単体からなる厚さ12〜100μmのフィルムについて、ロール温度140℃、ロール圧力0.1MPa、搬送速度0.4m/minの条件で、加熱ロールにより熱プレスを行い、実施例の実験Cと同様に熱収縮量を測定した場合に、その搬送方向の熱収縮率が、0.6%未満の場合となる有機材料をいう。基材表面に用いる材料の熱収縮率は、好ましくは0.4%以下、0.2%以下、又は0.1%以下である。
【0022】
本発明において、無機材料又は低熱収縮性の有機材料を表面に有する基材は、吸収フィルムと、熱圧着によって接着できる基材である。例えば、低熱収縮性の有機材料からなる単層の基材を用いた本発明の1つの態様では、実施例の実験B1−2と同様に、ロール温度140℃、ロール圧力0.1MPa、搬送速度0.4m/minの条件で、加熱ロールにより吸収フィルムと基材とを熱圧着させた場合に、基材の搬送方向の熱収縮率が、0.6%未満となる。
【0023】
上記のような基材の表面の材料としては、無機物、例えば純金属、無機化合物、合金、無機酸化物、金属酸化物等が挙げられ、例えば、ガラス、鉄及びその合金(例えば、ステンレス鋼)、アルミニウム及びその合金、並びに銅及びその合金からなる群より選択される材料を挙げることができる。ガラスとしては、通常のガラス組成を有するものであれば使用可能であり、具体的にはソーダライム系ガラスやアルミノシリケート系ガラスや無アルカリガラス等が使用できる。
【0024】
さらに本発明の吸収性積層体で用いる基材の表面は、低熱収縮性の有機材料であってもよく、例えば熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂も用いることができ、具体的にはポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリアミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂等を挙げることができる。
【0025】
本発明の吸収性積層体で用いる基材として、アルミ箔、銅箔等をPET等の樹脂表面に貼り合わせた複合フィルムも用いることができる。また、上記の基材表面の材料を、単層の基材として用いることもできる。フィルム等の樹脂成形体の表面に、上記の基材表面用の無機材料を含む複合体を基材として用いてもよい。さらに、金属箔等の金属体表面に、上記の基材表面用の有機材料を含む基材を用いてもよく、有機材料を複数積層させた複合体であってもよい。
【0026】
例えば、基材として、金属、半金属若しくはそれらの酸化物の蒸着層又はハロゲン化ポリマー層を少なくとも有する熱可塑性樹脂フィルムを用いることができる。ここで、半金属とは、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン、及びテルルをいう。また、金属、半金属又はそれらの酸化物の蒸着層としては、アルミニウム蒸着膜、シリカ蒸着膜、アルミナ蒸着膜、シリカ・アルミナ二元蒸着膜等を挙げることができ、ハロゲン化ポリマー層としては、ポリ塩化ビニリデンコーティング膜、ポリフッ化ビニリデンコーティング膜等を挙げることができる。これらを堆積させる樹脂フィルムとして、ポリオレフィン系樹脂(特に、延伸又は無延伸ポリプロピレン)、ポリ塩化ビニル、飽和ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート)、ポリアミド(例えば、ナイロン(登録商標)、ナイロン6、ナイロンMXD6)を挙げることができる。
【0027】
電子デバイスでは、基材は、デバイス内部と外部とを隔離する封止材としての役割を有し、例えばガスバリア性の高いガラス、アルミ等の金属層を含む複合フィルムが好ましく用いられる。
【0028】
(吸収フィルム)
本発明の吸収性積層体で用いる吸収フィルムは、87体積%未満25体積%以上の熱可塑性樹脂バインダー及び13体積%超75体積%以下の無機吸収剤を含有する吸収層を有する。この吸収フィルムは、吸収層のみから構成することができ、又は吸収層を含む多層フィルムとして構成することもできる。吸収フィルムは、無機吸収剤を熱可塑性樹脂バインダーに分散させて溶融押出しまたは共押出しによるTダイ法又はインフレーション法によって、成形することができる。
【0029】
吸収フィルムの厚みは、好ましくは10μm以上、20μm以上、又は30μm以上であり、また300μm以下、200μm以下、又は150μm以下である。また、この吸収フィルムには、表面を変性し又は表面を清浄化することによって接着性を向上させる目的で、コロナ処理をすることができる。
【0030】
この吸収層に含まれる熱可塑性樹脂バインダーは、この吸収層の25体積%以上、30体積%以上、40体積%以上、又は50体積%以上を構成し、また87体積%未満、85体積%以下、又は80体積%以下を構成することができる。また、この熱可塑性樹脂バインダーは、好ましくは吸収層の25重量%以上、30重量%以上、又は40重量%以上、また好ましくは70重量%以下、65重量%以下、又は60重量%以下を構成する。
【0031】
また、この吸収層に含まれる無機吸収剤は、この吸収層の13体積%超、15体積%以上、又は20体積%以上を構成し、また75体積%以下、70体積%以下、60体積%以下、又は50体積%以下を構成する。この無機吸収剤は、好ましくは吸収層の30重量%以上、35重量%以上、又は40重量%以上を構成し、また好ましくは75重量%以下、70重量%以下、又は60重量%以下を構成する。上記範囲であれば、基材と吸収フィルムが十分に強く接着する。さらに、成形性が良好であり、適切な吸湿性能を有するフィルムを提供することができる。
【0032】
熱可塑性樹脂バインダーのメルトマスフローレート(MFR)は、温度190℃かつ荷重2.16kgの条件の下で、JIS K7210に準拠して測定した場合に、好ましくは5g/10分以上、10g/10分以上、又は20g/10分以上である。熱可塑性樹脂バインダーが融点を有する場合には、その融点は、好ましくは80℃以上又は100℃以上であり、かつ180℃以下又は150℃以下である。この場合、融点は、JIS K6922−2(ISO1872−2)に準拠して、示差走査熱量計(DSC)によって、10℃/minで測定する。
【0033】
熱可塑性樹脂バインダーとしては、ポリオレフィン系の樹脂を用いることができ、好ましくはポリエチレン系又はポリプロピレン系の樹脂を用いることができる。ここで、ポリエチレン系の樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレンビニルアセテート共重合体(EVA)、カルボン酸変性ポリエチレン、カルボン酸変性エチレンビニルアセテート共重合体、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0034】
ポリプロピレン系の樹脂としては、ポリプロピレン(PP)ホモポリマー、ランダムポリプロピレン(ランダムPP)、ブロックポリプロピレン(ブロックPP)、塩素化ポリプロピレン、カルボン酸変性ポリプロピレン、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0035】
層中に含まれる無機吸収剤の体積%を計算する場合に、無機吸収剤の比重が不明確な場合には、その層の比重を測定によって求め、その測定値と、無機吸収剤及び熱可塑性樹脂の添加重量と、熱可塑性樹脂の比重から求めてもよい。例えば、無機吸収剤50gと、比重0.90g/cmの熱可塑性樹脂50gとを用いて成形した層の比重が1.10g/cmであった場合には、その層に含まれている無機吸収剤は、比重が1.41g/cmと計算することができ、その層中で無機吸収剤が38.9体積%存在しているといえる。
【0036】
このような無機吸収剤としては、物理吸着剤、及び化学吸着剤、並びにこれらの組合せを挙げることができる。物理吸着剤としては、アルミナ、酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、生石灰、シリカゲル、無機の分子篩等を挙げることができる。無機の分子篩の例としては、限定されないが、アルミノケイ酸塩鉱物、クレー、多孔質ガラス、微細孔性活性炭、ゼオライト、活性炭、又は水等の小分子を拡散させることが可能な開口構造をもつ化合物を挙げることができる。
【0037】
ゼオライトとしては、天然ゼオライト、人工ゼオライト、合成ゼオライトを使用することができる。ゼオライトは、分子の大きさの違いによって物質を分離するのに用いられる多孔質の粒状物質であり、均一な細孔をもつ構造であって、細孔の空洞に入る小さな分子を吸収して一種の篩の作用を有するため、水(蒸気、水蒸気)、有機ガス等を吸収することができる。合成ゼオライトの一例としてはモレキュラーシーブがあり、この中でも特に細孔(吸収口)径が0.3nm〜1nmのモレキュラーシーブを使用することができる。通常、細孔径が0.3nm、0.4nm、0.5nm、1nmのモレキュラーシーブを、それぞれモレキュラーシーブ3A、モレキュラーシーブ4A、モレキュラーシーブ5A、モレキュラーシーブ13Xと称する。
【0038】
化学吸着剤としては、水分吸収性の化学系吸収剤(化学吸着剤)を挙げることができ、他の一般的な化学吸着剤を用いることもできる。具体的には酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸コバルト、硫酸ガリウム、硫酸チタン、硫酸ニッケル等があり、特に酸化カルシウムが好ましい。
【0039】
吸収フィルムは、吸収層の少なくとも片面に、吸収速度を調整する目的で、かつ/又は吸収性積層体の製造時若しくは使用時の取り扱い性を向上させる目的で、スキン層を与えることができる。このスキン層を、ポリオレフィン系樹脂(特に、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂)、飽和又は不飽和ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物から選択される樹脂によって形成することができる。
【0040】
スキン層で用いられる樹脂のメルトマスフローレート(MFR)は、温度190℃かつ荷重2.16kgの条件の下で、JIS K7210に準拠して測定した場合に、好ましくは0.1g/10分以上、0.5g/10分以上、1.0g/10分以上、又は3.0g/10分以上であり、50g/10分以下、20g/10分以下、又は10g/10分以下である。スキン層で用いられる樹脂が融点を有する場合には、その融点は、100℃以上又は120℃以上であり、かつ200℃以下又は150℃以下である。この場合、融点は、JIS K6922−2(ISO1872−2)に準拠して、示差走査熱量計(DSC)によって、10℃/minで測定する。
【0041】
吸収フィルム中で吸収層の基材側にスキン層が存在する場合、その厚みは、吸収フィルムと基材との接着強度を確保する目的で、60μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以下である。吸収フィルム中で吸収層を挟んで、基材側とは反対側にスキン層が存在する場合には、その厚みは特に限定されないが、吸収速度を確保するために100μm以下であることが好ましい。
【0042】
吸収フィルムは、吸収剤として化学吸着剤を用いた場合に、被吸収物質を吸収後に通常は膨張するが、基材に熱圧着させた場合には、吸収後であっても、面積膨張率を抑えることができ、吸収フィルムが基材から剥がれることはない。この場合、吸収フィルムは実質的に厚さ方向のみで膨張する。
【0043】
<吸収性積層体の製造方法>
本発明の吸収性積層体の製造方法は、無機材料又は低熱収縮性の有機材料を表面に有する基材を与える工程;87体積%未満25体積%以上の熱可塑性樹脂バインダー及び13体積%超75体積%以下の無機吸収剤を含む吸収性組成物を与える工程;及び又はその吸収性組成物を成形して吸収フィルムを得て、これを上記基材の表面に熱圧着させる工程を含む。この製造方法においては、基材と吸収フィルムとを接着させる接着層を形成する工程を含まない。
【0044】
ここで、基材の表面に吸収フィルムを熱圧着させる工程においては、図3に示すように、吸収フィルム1と基材2とを重ねあわせて、搬送ローラー32で搬送させながら、加熱ローラー31で熱圧着させることができる。この熱圧着工程においては、基材と吸収フィルムとが最低限接着すればよいが、その接着強度(はく離接着強さ)が、JIS K6854−2による180度剥離法に準拠して測定した場合に、0.01N/15mm以上、0.1N/15mm以上、0.5N/15mm以上、1.0N/15mm以上、2.0N/15mm以上、3.0N/15mm以上、又は4.0N/15mm以上となるように、熱圧着させることが好ましい。
【0045】
例えば、加熱ローラーの温度を、用いる吸収フィルムの熱可塑性樹脂バインダーの熱特性に合わせて、100℃以上、120℃以上又は140℃以上とし、かつ200℃以下、180℃以下、又は160℃以下とすることができる。また、ロール圧力を、0.05MPa以上、0.1MPa以上、又は0.3MPa以上とし、かつ1.0MPa以下、0.8MPa以下、又は0.5MPa以下とすることができる。そして、搬送速度を、0.01m/min以上、0.05m/min以上、又は0.1m/min以上とし、かつ20m/min以下、10m/min以下、又は5m/min以下とすることができる。吸収フィルムが吸収層のみからなる場合、加熱ローラーの温度は、吸収層に含まれるバインダー樹脂の融点以上とすることが好ましい。吸収フィルムに、吸収層の基材側の面にスキン層が存在する場合には、加熱ローラーの温度を、吸収層に含まれるバインダー樹脂の融点以上、かつ、スキン層樹脂の融点以上に高くすることが好ましく、ロール圧力も比較的高くすることが好ましい。これは、高温高圧で処理することで、軟化したスキン層の表面部分にまで無機吸収剤が存在するようになるためと考えられる。
【実施例】
【0046】
実験A:酸化カルシウムを無機吸収剤として用いた吸収層を有する吸収性積層体
A1.吸収性積層体の作製
A1−1.吸収層単層の吸収フィルムの作製
熱可塑性樹脂バインダーとしてLDPE(ペトロセン202R、東ソー株式会社、メルトマスフローレート:24g/10min、融点:106℃、密度:0.918g/cm)と、水分吸収性の化学吸着剤として酸化カルシウム(密度:3.35g/cm)とを、酸化カルシウム含有率が0〜70重量%(すなわち、バインダーに対して0〜64体積%、組成物全体に対して0〜39体積%)になるように混練して吸収性組成物を得た。混練は、ラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所)を用いて行った。これをTダイにて厚みが60μmになるように製膜し、吸収層単層の吸収フィルムを得た。
【0047】
A1−2.吸収層の両面にスキン層を設けた3層構造の吸収フィルムの作製
吸収層として1−1と同じ方法で得た吸収性組成物、スキン層としてLLDPE(エボリューSP2520、プライムポリマー株式会社、融点:122℃、メルトマスフローレート:1.9g/10min、密度:0.925g/cm)を使用し、吸収層の両面にスキン層が設けられるよう、3層共押出のTダイにて製膜した。吸収層の厚みを60μm、両面のスキン層の厚みを共に10μmとした。
【0048】
A1−3.基材への熱圧着
1−1又は1−2で作製した吸収フィルムを10cm×10cmの大きさに切り取り、10cm×10cm×厚さ1mmのガラス基材(並ガラス、関谷理化株式会社、ソーダライム系ガラス)の上に置いた。これらを、熱ラミネート機(テストラミネータMRK‐350Y、株式会社エム・シー・ケー)を用いて熱圧着させることで、吸収性積層体を作製した。加熱ロールは全て140℃、ロール圧力0.1MPa、搬送速度は0.4m/minに設定した。
【0049】
A2.はく離接着強さの評価方法
JIS K 6854−2に記載の180°剥離法に基づき、引っ張り試験機により、基材と吸収フィルムとのはく離接着強さ(接着強度)を測定した。ここでは、引っ張り試験機がつかむためのつかみ幅分の熱圧着しない部分を設け、基材に熱圧着した吸収フィルムを15mm幅で切り込みをいれた。この15mmの幅の熱圧着部分を引っ張り、JIS K 6854−2に記載の180°剥離法に基づき、基材と吸収フィルムとのはく離接着強さを測定した(N=5)。なお、つかみ移動速度は、100mm/minであった。
【0050】
A3.はく離接着強さの評価結果
A3−1.吸収層単層からなる吸収フィルムの基材へのはく離接着強さ強度
実施例1〜3及び比較例1〜2の吸収性積層体を、上記1−1の作製方法によって得た、化学吸着剤(酸化カルシウム、CaO)の量を変えた吸収層単層からなる吸収フィルムを用いて、上記1−3の方法で熱圧着して作製した。表1に、各例の化学吸着剤の量とはく離接着強さの結果を示す。
【0051】
【表1】
【0052】
比較例1及び2は、熱圧着後、フィルムが自然に基材から剥がれ、接着を示さなかった。酸化カルシウムの量を増やすと、その基材と本質的に接着しない樹脂バインダーを使用しても、熱圧着によってフィルムの基材への接着性が向上し、接着剤の塗布等の粘着加工をしなくても、基材に吸収フィルムを貼合した吸収性積層体が得られることがわかる。
【0053】
A3−2.吸収層単層からなる吸収フィルムの厚みの違いによる基材へのはく離接着強さ
実施例4〜7の吸収性積層体を、上記1−1の作製方法から、化学吸着剤の量と吸収フィルムの厚みを変更して作製した。表2に、各例の化学吸着剤の量、吸収フィルムの厚み、そしてはく離接着強さの結果を示す。
【0054】
【表2】
【0055】
実施例4〜7の結果が示すように、本発明の吸収性積層体においては、吸収フィルムの厚みによらず、吸収フィルムが基材に高いはく離接着強さで接着することが分かる。
【0056】
A3−3.吸収層の両面にスキン層を設けた3層構造の吸収フィルムの基材へのはく離接着強さ
実施例8〜10及び比較例3〜5の吸収性積層体を、上記1−2の作製方法によって得た、吸収層の両面にスキン層を有する3層構造の吸収フィルムを用いて、上記1−3の方法で熱圧着して作製した。比較例3については、吸収層のバインダー樹脂を、スキン層と同じ樹脂とした。また、実施例11及び12については、基材側に位置するスキン層の厚みを実施例10から変更した。表3に、各例の吸収性積層体の構成とはく離接着強さの結果を示す。
【0057】
【表3】
【0058】
スキン層を有する場合であっても、酸化カルシウム含有率を上げるとともにはく離接着強さは高くなり、実施例9及び10ではフィルム強度よりはく離接着強さが高くなった。また、スキン層の厚みは、30μmの場合(実施例11)ではく離接着強さが最も高い結果となった。これは、実施例10に比べて実施例11の方がスキン層が厚く、吸収フィルムの引張強度が高いため、はく離接着強さの評価試験で吸収フィルムが破断しなかったためである。一方、実施例12のようにスキン層の厚みが50μm以上となると、はく離接着強さが低下することが分かる。
【0059】
A3−4.吸収フィルムのガラス基材以外へのはく離接着強さ
実施例10の吸収性積層体とは、用いる基材を変更して、実施例13〜15の吸収性積層体を作製した。なお、ここでは表4に、各例の吸収性積層体の構成とはく離接着強さの結果を示す。
【0060】
【表4】
【0061】
以上の結果から、これらの金属板を基材として使用しても、ガラスと同様の条件で、同等のはく離接着強さを有する吸収性積層体を作製できることが分かる。
【0062】
A4.水分吸収性の試験
ここでは、上記の実施例1〜3の吸収性積層体(熱圧着あり)の水分吸収性と、それらの吸収性積層体の作製に用いた吸収フィルム(熱圧着なし)の水分吸収性とを比較し、熱圧着したことによる水分吸収性への影響を確認した。熱圧着なしの場合、吸収フィルムは金網の上に載置され、両面が雰囲気中に暴露される状態とした。これらを、40℃、90%RHの環境下に14日間置いて、その重量変化に基づいて吸湿量を決定した。なお、14日以上経過させても、吸湿量には変化がなく、吸湿量は飽和していた。結果を以下の表5に示す。
【0063】
【表5】
【0064】
この結果から、吸収フィルムに熱圧着を行っても、その水分吸収性に低下はなく、本発明の吸収性積層体は、高い水分吸収性を保持することが確認できる。
【0065】
A5.吸収による膨張率の試験
厚みを100μmとしたこと以外は上記A1−1と同様にして作製した吸収フィルム(熱圧着なし)の水分吸収前後の寸法と、その吸収フィルムを上記A1−3の方法で熱圧着して得た吸収性積層体(熱圧着あり)の水分吸収前後の寸法とを比較し、熱圧着したことによる吸収フィルムの水分吸収時の膨張性への影響を確認した。
【0066】
ここでは、まず吸収フィルムを10cm×10cmの大きさに切り取り、水分吸収前の寸法を測定した。熱圧着した積層体の場合、吸収フィルムを厚さ40μmのアルミ基材の上に置き、これらを熱ラミネート機(テストラミネータMRK‐350Y、株式会社エム・シー・ケー)を用いて熱プレスした。ここで、加熱ロールは全て140℃、ロール圧力0.1MPa、搬送速度は0.4m/minに設定した。熱圧着なしの場合、吸収フィルムは、金網の上に載置され、両面が雰囲気中に暴露される状態とした。
【0067】
これらを、60℃、95%RHの環境下に12時間置いて飽和吸湿させた後に再度寸法を測定した。測定した寸法に基づいて、下記の式によって面積膨張率を求めた。
面積膨張率=吸収後面積/吸収前面積×100−100
【0068】
その結果を、以下の表6に示す。
【表6】
【0069】
なお、水分吸収後であっても、吸収性積層体から吸収フィルムははく離しなかった。上記の結果から、吸収フィルムを基材に熱圧着させた場合には、面方向の熱膨張を抑制できることが確認できる。いずれのフィルムも水分吸収によって同程度膨張したが、面積膨張率が抑制された吸収性積層体では、吸収フィルムは厚さ方向に多く膨張していた。
【0070】
実験B:ゼオライトを無機吸収剤として用いた吸収層を有する吸収性積層体
B1.ゼオライト3Aを無機吸収剤として用いた吸収性積層体
B1−1.ガラス基材を用いた吸収性積層体
無機吸収剤としてゼオライト3A(ユニオン昭和株式会社、密度:1.37g/cm)を用いたこと、及び厚みを100μmとしたこと以外は上記A1と同様にして、吸収層単層の吸収フィルム及びガラス基材を有する、表7に記載の吸収性積層体を得た。(比較例6,8、実施例16,18,20,22,24)
【0071】
B1−2.PET基材を用いた吸収性積層体
ガラス基材を、厚さ25μmのPET基材(E5100、東洋紡株式会社)に変えたこと以外はB1−1と同様にして、表7に記載の吸収性積層体を得た。なお、上記PET基材は、一方の面にコロナ処理がされているが、吸収フィルムは、PET基材の未処理面に熱圧着した。(比較例7,9、実施例17,19,21,23,25)
【0072】
これらの吸収性積層体についてはく離接着強さの評価を上記A2と同様にして行った。その評価結果を表7に示す。
【表7】
【0073】
B1−3.ゼオライト含有吸収層の厚みを変えた吸収性積層体
吸収フィルムの厚みを変えたこと以外はガラス基材を用いたB1−1の積層体と同様にして、表8に記載の吸収性積層体を得た。ただし、比較例12及び13においては、熱可塑性樹脂バインダーとして、LLDPE(エボリュー(商標)SP2520、株式会社プライムポリマー、メルトマスフローレート:19g/10min、融点:122℃、密度:0.925g/cm)を用いた。
【0074】
これらの吸収性積層体についてはく離接着強さの評価を上記A2と同様にして行った。その評価結果を表8に示す。
【表8】
【0075】
B1−4.PET基材の厚みを変えた吸収性積層体
PET基材の厚みを変えたこと以外は、B1−2の積層体と同様にして、表9に記載の吸収性積層体を得た。
【0076】
これらの吸収性積層体についてはく離接着強さの評価を上記A2と同様にして行った。その評価結果を表9に示す。
【表9】
【0077】
B2−1.ゼオライト4A及びゼオライト13Xを無機吸収剤として用いた吸収性積層体
ゼオライト3Aを、ゼオライト4A(ユニオン昭和株式会社、密度:1.37g/cm)及びゼオライト13X(ユニオン昭和株式会社、密度:1.38g/cm)に変更した以外はB1と同様にして、表10に記載の吸収性積層体を得た。
【0078】
これらの吸収性積層体についてはく離接着強さの評価を上記A2と同様にして行った。その評価結果を表10に示す。
【表10】
【0079】
B2−2.熱圧着条件を変更した吸収性積層体
加熱ロールの温度を変更したこと以外は実施例20と同様にして、表11に記載の吸収性積層体を得た。
【0080】
これらの吸収性積層体についてはく離接着強さの評価を上記A2と同様にして行った。その評価結果を表11に示す。
【表11】
【0081】
B3.他の基材を用いた吸収性積層体
基材の種類を変更したこと以外は実施例20と同様にして、実施例59〜61の吸収性積層体を得た。また、吸収フィルムを熱圧着しない面に蒸着膜を有するPET基材を用いたこと以外は、B1と同様にして、実施例62〜69及び比較例22〜23の吸収性積層体を得た。なお、Al蒸着PETとして東レフィルム加工株式会社1510を、シリカ蒸着PETとして凸版印刷株式会社のGXフィルムを用いた。
【0082】
これらの吸収性積層体についてはく離接着強さの評価を上記A2と同様にして行った。その評価結果を表12に示す。
【表12】
【0083】
B4:ゼオライト含有吸収フィルムの水分吸収性の試験
ここでは、上記の実施例16〜23の吸収性積層体(熱圧着あり)の水分吸収性と、それらの吸収性積層体の作製に用いた吸収フィルム(熱圧着なし)の水分吸収性とを比較し、熱圧着したことによる水分吸収性への影響を確認した。熱圧着前では、吸収フィルムは金網の上に載置され、両面が雰囲気中に暴露される状態とした。これらを、40℃、90%RHの環境下に重量変化がなくなるまで静置して、その重量変化に基づいて吸湿量を決定した。
【0084】
結果を以下の表13に示す。
【表13】
【0085】
実験C.基材及び吸収フィルムの熱収縮率の測定
(1)吸収フィルムの熱収縮量の測定
無機吸収剤としてゼオライト3A(ユニオン昭和株式会社、密度:1.37g/cm)を用いたこと、及び厚みを100μmとしたこと以外は上記A1と同様にして、表14に記載の比較例24及び実施例70〜71の吸収層単層の吸収フィルムを作製した。さらに、ゼオライト3Aに変えて酸化カルシウムを用いたこと、及び厚みを60μmとしたこと以外は、それらと同様にして、表14に記載の比較例25及び実施例72〜73の吸収層単層の吸収フィルムを得た。
【0086】
これらの吸収フィルムの熱圧着前後での熱収縮量を次のようにして測定した。まず、吸収フィルムを10cm×10cmの大きさに切り取り、その中心に5cmの標線を描いた。この吸収フィルムを、10cm×10cm×厚さ1mmのガラス基材(並ガラス、関谷理化株式会社、ソーダライム系ガラス)の上に、シリコーンコート離型PETフィルム(厚み:25μm、SP−PET−01−25BU、三井化学東セロ株式会社)を間に挟んで置き、これらを熱ラミネート機(テストラミネータMRK‐350Y、株式会社エム・シー・ケー)を用いて熱プレスした。ここで、加熱ロールは全て140℃、ロール圧力0.1MPa、搬送速度は0.4m/minに設定した。なお、この場合、吸収フィルムは、シリコーンコート離型PETフィルムとは接着しなかった。そして、熱圧着を行ってから10秒後に標線の長さを測定することによって、熱圧着による伸びを測定し、また23℃環境で10分間冷却することで、冷却後の標線の収縮を測定した。熱圧着による伸びと冷却後の収縮との差を、熱収縮量とした。また、熱収縮量を基準とした標線の長さ(5cm)で除した数値を、熱収縮率とした。
【0087】
さらに、これらの吸収フィルムとガラス基材とを、シリコーンコート離型PETフィルムを用いずに、上記の熱プレス条件と同じ条件で熱圧着して吸収性積層体を得た。そして、上記A2と同様にして、これらの吸収性積層体のはく離接着強さも測定した。
【0088】
これらの結果を以下の表14に示す。
【表14】
【0089】
(2)基材の熱収縮量の測定
様々な厚さのPET基材、シリカ蒸着PET基材(凸版印刷株式会社、GXフィルム)、及びアルミナ蒸着PET基材(凸版印刷株式会社、GLフィルム)の単体での熱収縮量及び熱収縮率を次のようにして測定した。参考例1〜6のフィルム基材を10cm×10cmの大きさに切り取り、その中心に5cmの標線を描いた。そして、そのフィルム基材をガラス基材の上に載置し、熱ラミネート機で熱プレスした。なお、この場合、フィルム基材はガラス基材とは接着しなかった。ここで、熱プレス条件は、全て140℃、ロール圧力0.1MPa、搬送速度は0.4m/minに設定した。
【0090】
さらに参考として、熱可塑性樹脂バインダーのLLDPE(エボリュー(商標)SP2520、株式会社プライムポリマー)又はLDPE(ペトロセン202R、東ソー株式会社)のフィルム単体の熱収縮量及び熱収縮率を、同様にして測定した(参考例7及び参考例8)。
【0091】
【表15】
【符号の説明】
【0092】
1 吸収層
2 基材
3 スキン層
10 吸収性積層体
20 EL素子
21 金属電極
22 EL層
23 透明電極
24 TFT
25 透明基板
31 加熱ローラー
32 搬送ローラー
図1
図2
図3