(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6033464
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】2モータ払拭装置での衝突識別方法
(51)【国際特許分類】
B60S 1/08 20060101AFI20161121BHJP
【FI】
B60S1/08 D
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-551172(P2015-551172)
(86)(22)【出願日】2013年12月30日
(65)【公表番号】特表2016-502957(P2016-502957A)
(43)【公表日】2016年2月1日
(86)【国際出願番号】EP2013078148
(87)【国際公開番号】WO2014106615
(87)【国際公開日】20140710
【審査請求日】2015年7月2日
(31)【優先権主張番号】102013200001.4
(32)【優先日】2013年1月2日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ プルスカヴェッツ
(72)【発明者】
【氏名】ノアベアト ホーク
(72)【発明者】
【氏名】クラウス エッカート
【審査官】
粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−264775(JP,A)
【文献】
特開2003−220929(JP,A)
【文献】
米国特許第05252897(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/00−60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウィンドウガラス(10)の払拭装置の作動方法であって、
前記払拭装置は、少なくとも2つのワイパ(11,12)と信号処理装置(20)とを備え、
前記少なくとも2つのワイパ(11,12)はそれぞれモータ(14,15)によって駆動され、前記少なくとも2つのワイパ(11,12)のそれぞれに対応して1つずつ、該ワイパ(11,12)の位置に依存する位置センサ信号を形成する位置センサ(16,17)が配設されており、
前記信号処理装置(20)は、目標位置を記憶したメモリ手段(22)を含み、かつ、前記位置センサ信号と設定された目標位置とに依存して前記モータ(14,15)を駆動する、方法において、
払拭サイクル中に障害を起こしたワイパ(12)が取った障害位置を、前記信号処理装置(20)の別のメモリ手段(23)に記憶し、
前記障害位置を、次の払拭サイクルにおいて、障害を起こしていないワイパ(11)の制御のために用い、
前記次の払拭サイクルから、前記障害を起こしていないワイパ(11)に対する停止過程または払拭速度の低減を、前記障害を起こしたワイパ(12)が前記障害位置(44)に到達する前に開始する、
ことを特徴とする払拭装置の作動方法。
【請求項2】
前記障害を起こしたワイパ(12)の払拭方向を、当該ワイパ(12)が前記障害位置(44)に到達したときに変更する、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記障害を起こしたワイパ(12)が前記障害位置(44)に到達したとき、前記障害を起こしていないワイパ(11)も同様に、変更された払拭方向での払拭過程を続行する、
請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記障害を起こしたワイパ(12)と前記障害を起こしていないワイパ(11)との同期を、静止位置(27,26)又は反転位置(27’,26’)で行う、
請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記障害を起こしていないワイパ(11)が、前記障害を起こしたワイパ(12)の前方で、変更された払拭方向での払拭過程を続行し、
これにより、2つのワイパ(11,12)を、前記障害位置(44)であらためて同期させる、
請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記別のメモリ手段(23)に記憶された前記障害位置を、次の払拭サイクルにおいて、前記障害を起こしたワイパ(12)の制御のために用いる、
請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
各払拭サイクルにおいて、前記別のメモリ手段(23)に記憶されている、前記障害を起こしたワイパ(12)の前記障害位置が変更されている場合、該障害位置を更新する、
請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
ウィンドウガラス(10)の払拭装置であって、
少なくとも2つのワイパ(11,12)と信号処理装置(20)とを備え、
前記少なくとも2つのワイパ(11,12)はそれぞれモータ(14,15)によって駆動され、前記少なくとも2つのワイパ(11,12)のそれぞれに対応して1つずつ、該ワイパ(11,12)の位置に依存する位置センサ信号を形成する位置センサ(16,17)が配設されており、
前記信号処理装置(20)は、目標位置を記憶したメモリ手段(22)を含み、かつ、前記位置センサ信号と設定された目標位置とに依存して前記モータ(14,15)を駆動する、
装置において、
払拭サイクル中に障害を起こしたワイパ(12)が取った障害位置が、前記信号処理装置(20)の別のメモリ手段(23)に記憶され、
前記障害位置が、次の払拭サイクルにおいて、障害を起こしていないワイパ(11)の制御のために用いられ、
前記次の払拭サイクルから、前記障害を起こしていないワイパ(11)に対する停止過程または払拭速度の低減を、前記障害を起こしたワイパ(12)が前記障害位置(44)に到達する前に開始する、
ことを特徴とする払拭装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウィンドウガラスの払拭装置であって、少なくとも2つのワイパと信号処理装置とを備え、少なくとも2つのワイパがそれぞれモータによって駆動され、少なくとも2つのワイパのそれぞれに対応して1つずつ、ワイパ位置に依存する位置センサ信号を形成する位置センサが配設されており、信号処理装置は、目標位置を記憶したメモリ手段を含み、かつ、位置センサ信号と設定された目標位置とに依存してモータを駆動する装置に関連する。本発明はさらに、こうした装置の作動方法にも関する。
【0002】
従来技術
EP0184312から、相互に独立に駆動可能な2つのウィンドウガラスワイパを備えた車両ワイパシステムの制御装置が公知である。ここでの2つのワイパはそれぞれモータによって駆動され、運動方向を変更可能である。ウィンドウガラスワイパの位置は、それぞれ1つずつの位置センサによって検出され、各位置センサは出力信号を制御装置へ出力する。制御装置のメモリには、払拭領域の内側境界及び外側境界、並びに、ワイパが払拭領域の内部で有するべき加速度及び速度及び減速度の値が格納されている。公知の装置により、2つの独立したワイパの同期駆動が可能となる。しかし、例えばワイパの障害によって過負荷がかかると、ワイパの同期外れが生じうる。この場合、2つのワイパが接近するので衝突の危険が生じ、ワイパを停止させたり又は払拭方向を変更したりする非常動作が導入される。
【0003】
DE4032922には、ウィンドウガラス払拭装置用の改善された制御回路が示されている。ここでは、ワイパが個々に設定された位置を取り、どのワイパに対しても任意の速度が可能である。ワイパの払拭領域が重なる多重払拭装置では、或るワイパが障害を起こした場合、衝突防止及びワイパの再同期が、各ワイパの払拭方向の反転、及び、払拭領域の制限などを含む種々の手法で行われる。ワイパブレードの障害が識別されると、障害を起こしていないワイパブレードはできるだけ早く停止される。
【0004】
衝突回避のための従来の手法の欠点として、障害の識別の一部が時間的にワイパの衝突の直前となり、どのようにしても衝突を防止できなくなるということが挙げられる。これは、ワイパアーム/ワイパブレードの機械的可撓性が大きい場合に特に問題となる。また、ワイパの障害が持続すると、次の払拭サイクルにおいてもワイパの衝突が起こりうるという欠点が生じる。
【0005】
発明の開示
したがって、本発明の課題は、改善された装置及び方法を提供して、障害を起こしたワイパの障害が持続する場合、障害を起こしていないワイパを次の払拭サイクルで制御して2つのワイパの衝突がどんなケースでも回避されるよう保証することである。
【0006】
この課題は、請求項1記載のウィンドウガラス払拭装置の作動方法、及び、請求項9記載のウィンドウガラス払拭装置によって解決される。本発明の別の有利な実施形態は、従属請求項に示されている。
【0007】
本発明の第1の特徴は、ウィンドウガラスの払拭装置の作動方法であって、当該払拭装置は、少なくとも2つのワイパと信号処理装置とを備え、少なくとも2つのワイパはそれぞれモータによって駆動され、少なくとも2つのワイパのそれぞれに対応して1つずつ位置センサが配設されており、信号処理装置は、目標位置を記憶したメモリ手段を含み、かつ、位置センサ信号と設定された目標位置とに依存してモータを駆動する方法において、払拭サイクル中に障害を起こしたワイパが取った障害位置を、信号処理装置の別のメモリ手段に記憶し、次の払拭サイクルにおいて、障害を起こしていないワイパの制御のために用いることにある。これにより、障害を起こしていないワイパが、障害を起こしたワイパの障害位置を「認識」でき、障害を起こしたワイパとの衝突を回避するように制御できるという利点が得られる。
【0008】
また有利には、障害を起こしていないワイパの停止過程が、障害を起こしたワイパが障害位置に到達する前に開始される。これにより、障害を起こしていないワイパを適時に他方のワイパ障害に応動させ、衝突を確実に回避できるようになるので、有利である。
【0009】
本発明の方法の有利な実施形態によれば、障害を起こしたワイパは、障害位置に到達したとき、払拭方向を変更する。これにより、ワイパが障害位置で停止せず、ウィンドウガラスの払拭領域の残りの部分を払拭することが保証される。
【0010】
本発明の方法の有利な実施形態によれば、障害を起こしたワイパと障害を起こしていないワイパとの同期が静止位置又は反転位置で行われる。ここで特に有利には、障害を起こしたワイパが障害位置に到達する前に、障害を起こしていないワイパも同様に、変更された払拭方向での払拭過程を続行する。こうした方法により、2つのワイパが払拭サイクルごとに再同期されることが保証される。
【0011】
さらに有利には、障害を起こしていないワイパが、障害を起こしたワイパの前方で、変更された払拭方向での払拭過程を続行することにより、2つのワイパのあらためての同期が障害位置で達成される。このようにすれば、払拭サイクル中にワイパの再同期を達成できる。
【0012】
特に有利には、各払拭サイクルにおいて、障害を起こしたワイパの障害位置が変化した場合、メモリ手段に記憶されている障害位置が更新される。これにより、次の払拭サイクルにおいて、障害を起こしていないワイパの停止位置又は反転位置が変更された障害位置へ適合される。ワイパ障害が解消されると、次の払拭サイクルでは、正常なシステム状態、すなわち、2つのワイパに対する完全な払拭領域が再び形成される。
【0013】
本発明の第2の特徴は、ウィンドウガラスの払拭装置であって、少なくとも2つのワイパと信号処理装置とを備え、少なくとも2つのワイパはそれぞれモータによって駆動され、少なくとも2つのワイパのそれぞれに対応して1つずつ、ワイパ位置に依存する位置センサ信号を形成する位置センサが配設されており、信号処理装置は、目標位置を記憶したメモリ手段を含み、位置センサ信号と設定された目標位置とに依存してモータを駆動する装置において、払拭サイクル中に障害を起こしたワイパが取った障害位置を信号処理装置の別のメモリ手段に記憶し、この障害位置を次の払拭サイクルにおいて障害を起こしていないワイパの制御に用いるように装置を構成することにある。これにより、障害位置の位置データが長期間にわたって利用可能となるので有利である。つまり、障害位置を記憶して、次の払拭サイクルでの払拭過程の閉ループ制御に用いることができる。障害を起こしていないワイパが障害を起こしたワイパの障害位置を「識別」できることにより、障害を起こしたワイパとの衝突を回避する制御を行うことができる。
【0014】
本発明の実施例を図示し、以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明のウィンドウガラス払拭装置を示す図である。
【
図2】同方向動作を行う2つのワイパの払拭領域が重なる場合の障害位置及び停止位置を示す図である。
【
図3】交差方向動作を行う2つのワイパの払拭領域が重なる場合の障害位置及び停止位置を示す図である。
【
図4a】ワイパ障害が起きた場合の衝突防止方法を示す図である。
【
図4b】ワイパ障害が解消された場合又は変更された場合の衝突防止方法を示す図である。
【0016】
図1には、本発明のウィンドウガラス払拭装置10、すなわち、第1のワイパ11及び第2のワイパ12によってウィンドウガラスの表面を払拭する装置10が示されている。第1のワイパ11は
図1の記号ABCで表された領域を払拭し、第2のワイパ12は
図1の記号DEFで表された領域を払拭する。各払拭領域ABC,DEFは、
図1に示されているように、払拭重畳領域13を有する。ウィンドウガラスワイパ11,12はそれぞれリバース動作可能なモータ14,15によって駆動される。2つのワイパ11,12の位置はそれぞれ第1の位置センサ16及び第2の位置センサ17によって検出される。各位置センサ16,17は、
図1に示されている第1の機械式接続部18及び第2の機械式接続部19を介して対応するワイパ11,12に結合されており、これによりワイパ11,12の位置を求めることができる。例えば位置センサ16,17はモータ14,15の各駆動軸に実装可能である。ワイパに機械的に結合される位置センサのほか、他のタイプの位置センサ、例えば光学式位置センサも利用可能である。
【0017】
位置センサ16,17は第1のワイパ11及び第2のワイパ12によって検出された実際位置を第1の位置センサ信号16’及び第2の位置センサ信号17’の形態で出力する。位置センサ信号16’,17’は信号処理装置20へ供給され、この信号処理装置20により、ワイパ11,12の位置実際値と位置目標値とがそれぞれの比較器24,25において比較される。位置目標値は目標値設定回路21によって設定される。比較によって求められた制御偏差は制御信号14’,15’へ変換され、この制御信号がそれぞれモータ14,15へ出力されて、第1のワイパ11及び第2のワイパ12が駆動される。ワイパ11,12の障害は、位置目標値からの位置実際値の偏差、及び、制御信号14’,15’ひいてはモータに印加される給電電圧を評価することにより識別される。なお、位置目標値は目標値設定回路のメモリ22に格納されている。払拭サイクル中のワイパ11,12の選択的な位置実際値をメモリ23に格納してもよい。この場合、位置実際値は、2つのワイパ11,12のうち一方のワイパの障害位置である。信号処理装置20は、次の払拭サイクル中、2つのワイパ11,12の一方のワイパについて格納されている位置実際値を読み出し、例えば目標値設定回路21を介して当該一方のワイパ又は他方のワイパの制御に用いる。
図1に記載されている装置は、3つ以上のワイパにも拡張可能である。
【0018】
ワイパ11,12の位置制御により、ワイパ11,12及び駆動部としての別個のモータ14,15を備えた多重払拭装置の同期が可能となる。同期は、特に、払拭重畳領域13が設けられており、その内部で衝突の危険が存在する場合に必須である。2つのワイパ11,12が障害なく通常動作していれば、2つのワイパ11,12の同期は、位置目標値を含むメモリ22の同期読み出しと、位置目標値の同期設定とによって行われる。ワイパ11,12について設定された目標位置は信号処理装置20による追従制御によって維持される。通常動作とは異なって、例えば2つのワイパ11,12のうち少なくとも1つのワイパの摩擦増大又は障害が発生しうる条件が生じてはじめて、上位からの同期措置が導入される。
【0019】
本発明の方法を
図2−
図4に則して詳細に説明する。
図2には、ウィンドウガラス10上の、第1のワイパ11の払拭領域ABC及び第2のワイパ12の払拭領域DEFが概略的に示されている。第1の払拭サイクルでは、2つのワイパ11,12が、第1の静止位置
27及び第2の静止位置26
から出発して、
図2に示されている扇形領域を、第1の運動方向で、第1の反転位置
27’及び第2の反転位置26’
まで払拭する。反転位置
27’,26’では払拭方向が反転され、2つのワイパ11,12は同じ払拭領域をあらためて第1の静止位置
27及び第2の静止位置26
(出発位置)まで払拭する。これにより、第1の払拭サイクルが終了し、持続モードでは次の第2の払拭サイクルが開始される。
【0020】
2つのワイパ11,12は、
図2に示されているように、1つの払拭サイクルでは同様に運動する。ただし、
図3に示されているように払拭領域の配置が変更されている場合、2つのワイパ11,12を対向方向で運動させることもできる。さらに、ここには、ウィンドウガラス10の第1のワイパ11の払拭領域ABCと第2のワイパ12の払拭領域DEFとが概略的に示されている。2つのワイパ11,12は、第1の静止位置
27及び第2の静止位置26
から出発して、第1の払拭サイクル中、
図3に示されている扇形の払拭領域を、それぞれの第1の運動方向で、第1の反転位置
27’及び第2の反転位置26’
まで運動する。反転位置
27’,26’で払拭方向が反転され、2つのワイパ11,12はあらためて同じ払拭領域をそれぞれ第1の静止位置
27及び第2の静止位置26
(出発位置)まで払拭する。これにより、第1の払拭サイクルが終了し、持続モードでは次の第2の払拭サイクルが開始される。
【0021】
払拭重畳領域13でワイパ11,12の一方が障害を起こした場合、他方のワイパを適時に停止させて衝突を防止しなければならない。
図2,
図3に示されているように、第1の払拭サイクルにおいて第2のワイパ12が障害位置44で障害を起こした場合、第1のワイパ11は、最大で、第2のワイパ12に接触する接触位置45まで運動可能である。このため、第1のワイパ11の払拭領域はハッチング領域分だけ制限される。衝突を回避するために、第1のワイパ11の運動は、その静止位置27(
図2)又はその反転位置27’(
図3)から出発して、接触位置45に到達する前に停止させなければならない。障害位置44でのワイパ12の障害が識別されたとき、第1のワイパ11は位置46にある。ただし、既知の障害識別及び第1のワイパ11の停止過程は接触位置45に到達する直前に行われるので、2つのワイパ相互の衝突又は接触は必ず回避できるわけではない。ワイパアーム又はワイパブレードの機械的可撓性が大きい場合には特にそうである。第2のワイパ12が障害位置44に到達した後、第1のワイパ11及び第2のワイパ12は払拭方向を変更し、払拭領域ABC,DEFのそれぞれの残りの部分をあらためて払拭する。
【0022】
第2のワイパ12の障害位置44での障害が持続する場合、次の払拭サイクルで2つのワイパ11,12の衝突を防止するために、第1の払拭サイクルでの第2のワイパ12の障害位置44の実際値が信号処理装置20のメモリ23に格納される。次の払拭サイクルでは、メモリ23に格納された位置実際値が読み出され、第1のワイパ11の制御に用いられる。これにより、第1のワイパ11に対して、位置47で、つまり、第1のワイパ11が位置46に到達する前に、すなわち、第2のワイパ12が障害位置44に到達する前に、停止信号を出力することができる。第1のワイパ11が接触位置45にいたるまでの残りの区間が充分に長いので、第1のワイパ11は確実に位置48で停止し、第2のワイパ12に接触しない。
【0023】
位置47では、停止過程の導入に代えて、第1のワイパ11の払拭速度を低減することもできる。本来の停止過程は、第2のワイパ12が障害位置44に到達した後に既知の障害識別によって開始される。この場合にも、第1のワイパ11の緩慢な速度によって衝突を確実に回避できる。
【0024】
第1のワイパ11に対して停止過程が開始される位置は、ワイパの障害位置44に固定の「オフセット」を加えることにより、信号処理装置20で求められる。ただし、停止過程が開始されるたびに、例えば信号処理装置20によって求められた2つのワイパ11,12の払拭速度及びジオメトリ及び材料特性に応じて、当該「オフセット」を変化させることもできる。
【0025】
重要なのは、ウィンドウガラス払拭装置の動作時に、
図2,
図3に示されているように、第2のワイパ12の障害と第1のワイパ11の位置48での先行時点の停止とにより、2つのワイパ11,12の同期が再び達成されるということである。このことは、1つの手段としては、第1のワイパ11が位置48で停止された後、第2のワイパ12の前方で、払拭方向を変更して払拭過程を続行し、障害位置44での2つのワイパ11,12の新たな同期を行うことにより可能となる。別の手段としては、第1のワイパ11が停止位置48に到達した後、又は、第2のワイパ12が障害位置44に到達した時点で、払拭方向を反転させ、ワイパ11,12がそれぞれの静止位置
27,26(出発位置)又はそれぞれの反転位置
27’,26’で相互に「待ち合わせ」を行うことにより、再同期を達成することもできる。
【0026】
図2,
図3の衝突回避方法は、上述したのとは逆に、第1のワイパ11が障害を起こしたワイパであり、第2のワイパ12を次の払拭サイクルで障害を起こした第1のワイパにつき記憶された障害位置によって制御する場合にも適用可能である。
【0027】
記憶されたワイパの障害位置は、さらに、障害を起こしたワイパを次の払拭サイクルで制御するためにも用いられる。例えば、障害を起こしたワイパの払拭速度は、このワイパが障害位置に到達する前に低減される。これにより、ワイパが全速で障害物に衝突して損傷を受けるおそれが回避される。
【0028】
ウィンドウガラス払拭装置10の2つのワイパ11,12の一方が障害を起こした場合の本発明の衝突回避方法のフローチャートが、
図4に示されている。
図4aには、ワイパ12の障害が発生した場合の各ステップが示されている。最初に、障害位置が2つのワイパ11,12の衝突領域13に入っているか否かが検査される。入っていない場合、障害を起こしていないワイパ11は自身の反転位置まで払拭過程を続行し、その戻り運動で障害を起こしたワイパ12を一緒に運動させる。これにより、障害を起こしたワイパ12の払拭領域が制限されていても、2つのワイパ11,12が同期されることが保証される。
【0029】
障害位置が衝突領域13内に入っているが、ワイパ障害の後、2つのワイパ11,12が相互に遠ざかる方向で運動している場合には、障害を起こしていないワイパ11が反転位置まで払拭過程を続行し、その戻り運動で障害を起こしたワイパ12を一緒に運動させる。これにより、障害を起こしたワイパ12の払拭領域が制限されていても、2つのワイパ11,12が同期されることが保証される。
【0030】
障害位置が衝突領域13内に入っており、かつ、2つのワイパ11,12が相互に近づく方向で運動している場合、障害位置の実際値がメモリ23に格納される。障害を起こしたワイパ12の障害位置では、既知の障害識別により、ワイパが停止され、続いて2つのワイパ11,12の払拭方向が反転され、さらにワイパ11,12のあらためての同期がそれぞれの静止位置(出発位置)
27,26又は反転位置
27’,26’で行われる。次の払拭サイクルでは、メモリ23の読み出しによって、つまり、記憶されている先行の払拭サイクルでの位置実際値を用いて、障害を起こしたワイパ12が障害位置に到達する前に、障害を起こしていないワイパ11の停止過程が導入される。これにより、2つのワイパ11,12の衝突が確実に回避される(
図2,
図3を参照)。続いて、障害を起こしていないワイパ11の停止及び方向反転が行われる。再同期は、障害を起こしたワイパ12の停止位置で、又は、それぞれの静止位置(出発位置)
27,26、又は、それぞれの反転位置
27’,26’で行われる。これにより、ワイパの払拭領域が制限されている場合にも、2つのワイパ11,12の同期が保証される。
【0031】
図4bには、障害位置が変化した場合、又は、ワイパ障害がいったん解消された場合の方法ステップが示されている。ワイパの障害位置が変化した場合、まず、新たな障害位置が重畳領域13の外部に存在するか否か、又は、新たな障害位置は重畳領域内に存在するが、ワイパ11,12が相互に離れる方向へ運動しているために衝突の危険がないかどうかが検査される(
図4aを参照)。後者の場合、その時点での障害位置がメモリ23から消去され、障害を起こしていないワイパ11が次の払拭サイクルで再び払拭領域全体を払拭する。
【0032】
新たな障害位置が重畳領域13内に存在し、かつ、ワイパ11,12が相互に近づく方向に運動しているために衝突の危険が存在する場合、障害を起こしたワイパ12の新たな障害位置の実際値がメモリ23に格納され、同時に、先行の障害位置の実際値が消去される。なお、当該払拭サイクルでは、障害を起こしていないワイパ11の制御は、新たな障害位置の状態に応じて、先行の障害位置を用いて、又は、既知の障害識別により、行われている。次の払拭サイクルでは、メモリ23の読み出しによって、つまり、記憶されている先行の払拭サイクルでの位置実際値を用いて、障害を起こしたワイパ12が新たな障害位置に到達する前に、障害を起こしていないワイパ11の停止過程が導入される。これにより、2つのワイパ11,12の衝突は確実に回避される(
図2,
図3を参照)。続いて、障害を起こしていないワイパ11の停止及び方向反転が行われる。再同期は、障害を起こしたワイパ12の停止位置で、又は、それぞれの静止位置(出発位置)
27,26、又は、それぞれの反転位置
27’,26’で行われる。これにより、ワイパの払拭領域が制限されている場合にも、2つのワイパ11,12の同期が保証される。
【0033】
ワイパ障害が解消された場合、その時点の障害位置の実際値はメモリ23から消去される。これにより、次の払拭サイクルでは、2つのワイパ11,12が再び払拭領域全体を払拭できる。