【文献】
でぼにあん山村,科学玩具!地球ゴマで遊ぼう,子供の科学 2月号,2006年 2月 1日,第69巻第2号通巻838号,p.74〜79
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
(地球こま1の構成)
以下、本発明の実施の形態に係る地球こま1について、図面を参照しながら説明する。なお、地球こま1は、
図1の姿勢を逆にしても使用可能であるが、説明の都合上、
図1の図示上側を上方、図示下側を下方、図示右側を右方、図示左側の左方として説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係る地球こま1を紙面の正面側から見た斜視図である。
図1に示すように、地球こま1は、中心軸Pを回転軸として回転可能な回転円盤2と、回転円盤2外周と一定距離を有し、回転円盤2の円盤部5に平行なリング形状の第1の保護枠3と、第1の保護枠3に直交し、第1の保護枠3の内側に配置されるリング形状の第2の保護枠4を有している。なお、第1の保護枠3と第2の保護枠4とを区別するため、第1の保護枠3を水平保護枠3、第2の保護枠4を垂直保護枠4と記載する。水平保護枠3と垂直保護枠4は、右方側および左方側の互いに交差する位置で固定、一体化されている。水平保護枠3および垂直保護枠4は、原料となる直径が異なる金属製のパイプ(水平保護枠3用が大径、垂直保護枠4用が小径)を、パイプの延長方向に対して直角に切断、つまり輪切りして形成される。また、輪切りされた後、その内周がほぼ真円となるように真円加工が施される。
【0017】
回転円盤2は、円盤部5と、円盤部5の盤面から上下両方向に延びる芯軸6を有する。芯軸6のうち、円盤部5から上方を第1の芯軸部である上芯軸部7、下方側を第2の芯軸部である下芯軸部8とする。上芯軸部7と下芯軸部8の中心軸は、円盤部5の回転の中心軸Pと一致する。
図1に示す例では、回転円盤2は、鉄合金やステンレス鋼などの金属製棒材から切削加工によって円盤部5と芯軸6とが一体で成形されている。そして、回転円盤2の形状に形成された後、硬化処理によってHRC(ロックウェル硬度)55程度に硬化している。回転円盤2を円盤部5と芯軸6とを一体で形成することによって、円盤部5を含めた上方側と下方側の慣性を同じにすることができ、地球こま1の姿勢を変化させたときに、回転円盤2が慣性のアンバランスが生じないようにしている。上芯軸部7および下芯軸部8各々の先端側を、回転軸部9,10とする(
図2A参照)。なお、回転円盤2は、鉛や亜鉛、それらの合金などの鋳型成形によって製造するようにしてもよい。
【0018】
上芯軸部7は、円盤部5に接続する基部11から円盤部5の盤面に対して垂直に延びている。上芯軸部7には、軸を貫通する孔12が明けられている。この孔12は、回転円盤2に回転力を与える紐(不図示)を通すための孔であり、この孔12に紐を通して巻き付けるので、以降、紐巻き付け用孔12と記載する。なお、下芯軸部8は、上芯軸部7と姿勢こそ逆であるが同じ形状を有し、紐巻き付け用孔12に対して対称位置に紐巻き付け用孔13を有している。回転円盤2は、芯軸6を介して第1の回転支持軸である上回転支持軸20および第2の回転支持軸である下回転支持軸21で支持されている。
【0019】
図1に示すように、上回転支持軸20は、頭部22から上芯軸部7に向かう軸部23を有している。軸部23にはネジ部24が形成されている。このネジ部24は、垂直保護枠4に設けられたネジ孔にネジ込まれ、このネジ孔から突き出されている。軸部23の下方側には有底の軸穴33(
図2Aと図2B参照)が穿たれていて、この軸穴33内に、上芯軸部7の回転軸部9が挿入されている。上回転支持軸20は、右回転で下方側(回転円盤2に近づく方向)に進み、左回転で上方側(回転円盤2から離れる方向)進むようになっている。また、下回転支持軸21は、頭部25から下芯軸部8に向かう軸部26を有している。軸部26にはネジ部27が形成されている。このネジ部27は、垂直保護枠4に設けられたネジ孔にネジ込まれ、このネジ孔から突き出されている。軸部26上方側には有底の軸穴35(
図2Aと図2C参照)が穿たれていて、この軸穴35内に、下芯軸部8の回転軸部10が挿入される。下回転支持軸21は、下方側から見て右回転で上方側(回転円盤2に近づく方向)に進み、左回転で下方側(回転円盤2から離れる方向)に進むようになっている。上回転支持軸20、回転円盤2の芯軸6および下回転支持軸21の中心軸は、
図1のように組み立てられた状態で、回転円盤2の
中心軸P上に配列されている。回転円盤2の芯軸6と上回転支持軸20および下回転支持軸21の関係は、
図2を参照して詳しく説明する。
【0020】
図2Aは、地球こま1
を回転円盤2の側方からみた正面図、
図2Bは、下回転支持軸21と下芯軸部8の嵌合状態を拡大して示す断面図、
図2Cは、上回転支持軸20と下芯軸部7の嵌合状態を拡大して示す断面図である。なお、
図2Aにおいて、水平保護枠3は、円盤部5と同じ高さ位置に配置されるので二点鎖線で表している。
図2Aに示すように、水平保護枠3と垂直保護枠4は、互いに交差する位置A,Bにおいてロウ付けなどの接合手段で固定されている。水平保護枠3には、中心軸Pを直交する直線上に1対の貫通孔30が設けられている。垂直保護枠4には、垂直保護枠4の中心P1を通り、中心軸Pに直交する直線上に1対の貫通孔31が設けられている。水平保護枠3と垂直保護枠4とは、水平保護枠3の貫通孔30と、垂直保護枠4の貫通孔31の位置を合わせ、互いに直交するように組み合わせて接合されている。そのことについての詳細は、
図3を参照して後述する。
【0021】
図2Aに示すように、上芯軸部7の中央部には、紐巻き付け用孔12が明けられている。紐巻き付け用孔12は、回転軸部9に形成される側面が円弧形状のテーパ部37から基部11側に形成される側面が円弧形状のテーパ部38との間の円柱状部分のほぼ中央に設けられている。また、下芯軸部8側にも上芯軸9と同様な位置に円柱形状の紐巻き付け用孔13が明けられている。すなわち、紐巻き付け用孔13は、回転軸部10の先端側に形成される側面が円弧形状のテーパ部39と基部11側に形成される側面が円弧形状のテーパ部40との間の円柱状部分のほぼ中央に設けられている。紐巻き付け用孔12,13は、円盤部5の重心位置を中心として対象となる位置に対称形状に設けられている。なお、紐巻き付け用孔12,13は、対象位置に設けないようにしたり、一方を大きくし他方を小さくする等に対称形状にしないようにしてもよい。
【0022】
紐巻き付け用孔12,13は、巻き付ける紐が通し易い直径(たとえば、2.2mm)を有し、入り口部分に面取りが施されている。このように面取りを有することによって、紐を紐巻き付け用孔12,13に通しやすくすることと、巻き付けやすくすることと、回転円盤2に回転力を与えた後に紐を紐巻き付け用孔12,13から抜きやすくしている。なお、
図2Aでは、紐巻き付け用孔12,13は、上回転軸部20および下回転軸部21に対して同じ方向に明けられているが、同じ方向でなくてもよく、たとえば、水平方向に90度ずれた位置に明けてもよい。また、孔の直径を異ならせたり、円錐状の孔としてもよい。
【0023】
上回転支持軸20には、上芯軸部7側の端面32から有底の軸穴33が穿たれている。軸穴33の底部には、円柱状の軸受部材34が挿入されている。軸穴33と回転軸部9の径方向には、0.02mm〜0.05mmのクリアランスが設けられている。上回転支持軸20の上方端部には、軸部23よりも直径が大きい頭部22を有し、一文字の溝(マイナス溝)36が設けられている。この溝36は、上回転支持軸20を回転させるドライバー溝となる他、地球こま1を
図2Aに対して逆姿勢にしたときに、糸やワイヤなどをこの溝に嵌めて、糸やワイヤなどの上で地球こま1を回転させることを可能にしている。
【0024】
下回転支持軸21には、上回転支持軸20と同様に、下芯軸部8側の端面41から有底の軸穴35が穿たれている。軸穴35の底部には、円柱状の軸受部材42が挿入されている。軸穴35と回転軸部10の径方向には、0.02mm〜0.05mmのクリアランスが設けられている。下回転支持軸21の下方端部には、軸部26よりも直径が大きい頭部25を有し、頭部25の頂面には円錐形状の凹部43が形成されている。この凹部43は、地球こま1(凹部43)を先が尖った部材(たとえばペン先など)などの上に置き、回転させることを可能にしている。
【0025】
軸受部材34,42は、同じ形状のものを使用でき、材質としては摩擦係数が小さいフッ素樹脂などが好ましい。フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などである。PEFEと鉄系金属の組み合わせの静摩擦係数(銅摩擦係数も含む)は、鉄系金属と鉄系金属の組み合わせよりも1/10程度に小さくなる。また、PEFEは、各種樹脂のなかでも機械的強度が高いという特性を有している。なお、軸受部材34,42の材質としては、PTFEの他に、摩擦係数が小さく機械的強度が高いポリアセタール樹脂(POM)などでもよく、POMとしては、コポリマー、ホモポリマーなどがある。
【0026】
軸受部材34,42は、単体のとき、または組み立て直後の形状は単純な円柱形状である。
図2Aに示す地球こま1は、中心軸Pが鉛直方向に向く場合の姿勢を表している。この際、下芯軸部8の尖頭部44は、軸受部材42に接触し、上芯軸部7の尖頭部45は、軸受部材34から離れている。地球こま1が
図2Aの姿勢から逆さになったときには、下芯軸部8の尖頭部44は、軸受部材42から離れ、上芯軸部7の尖頭部45は、軸受部材34と接触する。このように、回転円盤2は、軸受部材34と軸受部材42との間で中心軸Pに沿うクリアランスを有している。このクリアランスは、主として上回支持転軸20を回転させることで適正に調整することができるようになっている。このクリアランスは、下回転支持軸21を回転させて、または、上回転支持軸20と下回転歯軸21の両方を回転させて調整してもよい。
図2Aに示す例では、尖頭部44,45の頂角は90度としているが、60度〜120度の範囲であればよい。なお、軸受部材34,42は、芯軸6よりも軟らかい。したがって、この硬さの違いを利用して、回転円盤2の摩擦ロスを低減することが可能である。このことについて
図2B,
図2Cを参照して説明する。
【0027】
前述したように、軸受部材34,42は、芯軸6よりも軟らかい。したがって、回転円盤2を回転し続けると、軸受部材34,42の各尖頭部側の受面34A,42A(
図2C,
図2B参照)に尖頭部
45,44の圧痕がつく。そこで、この圧痕を積極的に利用し、長時間回転後の回転円盤2の回転の横振れと、摩擦ロスを低減することが可能となる。
図2Bに示すように、
図2Aの姿勢で回転円盤2を回転させると、下方側の軸受部材42に尖頭部44が食い込む。この際、上方側の軸受部材34と尖頭部45の間にはクリアランスがあるので、軸受部材34は初期状態のままである(
図2A参照)。ここで、地球こま1を逆さにして、つまり、上回転支持軸20を下方に向けた状態で回転円盤2を回転させると、軸受部材34に尖頭部45が食い込む。このようにすると、軸受部材42の面42Aには尖頭部44の圧痕46ができ、軸受部材34の受面34Aには尖頭部45の圧痕47ができる(
図2C参照)。このようにすると、回転円盤2の中心軸P方向のクリアランスが初期よりも増えるので、上回転支持軸20または下回転支持軸21によってクリアランスを適切に調整する。
【0028】
回転円盤2を回転させると、下方側、たとえば、下芯軸部8の尖頭部44が回転円盤2の重量によって軸受部材42の受面42Aに圧痕46ができ、尖頭部44は圧痕46に入り込む。すると、回転円盤2の下方側は、尖頭部44と圧痕46とで支持されるので、摩擦ロスが小さくなると共に、横方向(中心軸Pに交差する方向)の振れを抑制することが可能となる。地球こま1を逆さにした場合も上記と同様に、上芯軸部7の尖頭部45が軸受部材34の圧痕47に入り込む。このような圧痕46,47を予め回転調整段階で形成しておけば、回転円盤2が回転する際の回転負荷を低減することが可能となる。
【0029】
圧痕46,47の形成方法としては、回転円盤2の中心軸P方向のクリアランスを0〜マイナスになるように調整して、回転円盤2を強制回転させて、圧痕46,47が所定の大きさになるまで繰り返すことで形成できる。その後、所定のクリアランスになるように上回転支持軸20または下回転支持軸21によって調整する。この際、回転円盤2の円盤部5が、水平保護枠3と同じ高さ位置になるように調整することが好ましい。なお、地球こま1を
図2Aの姿勢から90度回転させた状態、たとえば、中心軸Pが水平方向を向く状態の場合は、回転軸部9,10の各々は、軸穴33、35と軸方向で線接触となる。また、圧痕46,47の形成方法としては、軸受部材
42,34の回転軸部
10,9各々に接触する側の受面42A,34Aに、組み込み前に尖頭部44,45と同じ形状の治具を用いて押し圧する方法でも形成可能である。なお、予め、好適な圧痕46,47を形成しておけば、摩擦が小さいので、圧痕46,47が継続的に広がることは少ない。
【0030】
なお、
図2C,図2Bに示すように、上回転支持軸20の軸穴33、下回転支持軸21の軸穴35は、共にドリルまたはキリなどの穴明け刃具で開けられる。孔先端には穴開け刃具の先端形状が写されたほぼ円錐形の先端凹33A、先端凹35Aが形成され、この円錐形状の状態を残したままとする。また、軸受部材34,42は、フッ素樹脂などの棒材から切削加工によって成形される。その際、棒材から軸受部材34,42切り離す際に、軸の中心部に切り落としボツと呼ばれる凸部34B,42Bを残しておく。軸受部材34,42を各々軸穴33,35に挿入したときに、凸部34Bは先端凹33A内に納め、そして、凸部42Bを先端凹35A内に納める。こうすることで、凸部34B,42Bがあることによる軸受部材34,42の軸方向の位置のばらつきを防ぐと共に、凸部34B,42Bが大きく残った場合には、軸受部材34,42の位置決めを行うことができる。
【0031】
前述したように、水平保護枠3と垂直保護枠4とは、直交するように固定される。二つのリング状部材を直交するように固定することは容易ではない。そこで、
図3を参照して、その固定方法を説明する。
【0032】
図3は、水平保護枠3および垂直保護枠4を示す図で、(A)は、
図1の中心軸Pを通り、垂直保護枠4に沿う切断線で切断した縦断面図、(B)は、
図1の右方側から見た側面図である。なお、
図3(B)は、接合用治具50に水平保護枠3および垂直保護枠4をセットした状態を表している。まず、
図3(A)に示すように、水平保護枠3に設けられている1対の貫通孔30と垂直保護枠4に設けられている1対の貫通孔31に案内軸51を挿通させる。案内軸51と貫通孔30,31のクリアランスは、水平保護枠3と垂直保護枠4が回転できる範囲で小さい方がよい。案内軸51によって、貫通孔30と貫通孔31は、直線上に配置される。この状態で、接合治具50にセットする。
【0033】
図3(B)に示すように、水平保護枠3と垂直保護枠4の接合は、案内軸51が挿通された状態で、垂直保護枠4を接合用治具50に設けられた溝52内に挿入し、水平保護枠3を接合治具50の上面53に載せて行う。溝52は、上面53に対して直角に形成されているため、垂直保護枠4は、水平保護枠3に対して直交する。この状態で、水平保護枠3と垂直保護枠4とが交差している位置A,Bでロウ付けなどの接合手段で接合することで、水平保護枠3と垂直保護枠4とが一体化される。その後、案内軸51を引き抜く。なお、接合用治具は、垂直保護枠4の図示両側に直角ブロックなどを配置するようにしてもよい。
【0034】
(地球こま1の組み立て方法)
続いて、地球こま1の組み立て方法について
図1〜
図3を参照しながら説明する。まず、準備段階として、
図2Aに示すように、上回転支持軸20の軸穴33内に軸受部材
34を挿入し、下回転支持軸21の軸穴35内に軸受部材42を挿入しておく。また、水平保護枠3と垂直保護枠4は、前述した接合方法で一体化しておく。そして、上回転支持軸20と下回転支持軸21とを垂直保護枠4のネジ孔にネジ込む。この際、上回転支持軸20と下回転支持軸21との間の距離は、回転円盤2が組み込める距離とする。続いて、水平保護枠3と垂直保護枠4の隙間から回転円盤2を内側に挿入する。次に、上回転支持軸20の軸穴33または下回転支持軸21の軸穴35のどちらか一方に回転軸部
9または回転軸部
10を挿入する。そして、回転軸部9,10の両方が各々軸穴33,35に挿入できるように、上回転支持軸20および下回転支持軸21を回転させて、回転円盤2が、中心軸Pに沿うクリアランスが所定の大きさになるように調整する。
【0035】
この際、回転円盤2の円盤部5が、水平保護枠4と同じ高さになるように調整する。この際、下回転支持軸21側を先行して回転円盤2の位置調整を行い、次いで上回転支持軸20側でクリアランス調整をする。この組み立て順は、上回転支持軸20の先端に溝36が形成されていて、この溝36をドライバー溝とすることで、微調整をしやすくするためである。ただし、この逆の順で調整を行ってもよい。なお、軸受部材34,42の圧痕
47,46は、前述した形成方法で行われる。ただし、圧痕46,47は、ユーザーが使用する間にも形成されていくので、時折、ユーザー自身が上回転支持軸20を回転させて(ネジにて調整をし)でクリアランス調整をすれば、予め形成しなくてもよい。
【0036】
なお、回転円盤2が、安定して回転できるように調整したところで、上回転支持軸20および下回転支持軸21が容易に回転してしまわないようにしておくことが望ましい。たとえば、
図1に示すように、垂直保護枠4の上回転支持軸20のネジ込み部近傍を押しつぶして仮止めし(
図1のCで示す)、下回転支持軸21のネジ込み部近傍を押しつぶして仮止めする(
図1のDで示す)。なお、仮止めとは、通常使用状態で上回転支持軸20および下回転支持軸21が回転せず、調整時には回転可能なこととする。
【0037】
上記のように構成された地球こま1は、回転円盤2が高速で回転していれば、回転軸(回転中心軸P)の向きが一定に保持され、外力が加えられたときには、力の方向に対して垂直方向に中心軸Pが傾く、いわゆるジャイロ効果を応用したこまとなる。したがって、細い糸やワイヤ上などで綱渡りをさせたり、ペン先のような尖頭部材上などで回転させたりすることができる。
【0038】
以上説明した地球こま1は、円盤部5と、円盤部5の中心軸Pの延長線上で円盤部5から各々逆方向に延びる第1の芯軸部である上芯軸部7と第2の芯軸部である下芯軸部8とを有する回転円盤2と、円盤部5の外周と一定の距離を有してその外周を囲むように配置されるリング形状の第1の保護枠である水平保護枠3と、水平保護枠3に直交し、かつ水平保護枠3との交差位置A,Bで水平保護枠3に固定されたリング形状の第2の保護枠である垂直保護枠4と、垂直保護枠4上の180度離れた各頂部位置に、回転円盤2に近づいたり、遠ざかる方向に移動可能な第1の回転支持軸である上回転支持軸20および第2の回転支持軸である下回転支持軸21と、を有している。第1の芯軸部である上芯軸部7と第2の芯軸部である下芯軸部8の対向する各先端部には、円錐形状の尖頭部
45,44が形成され、上回転支持軸20および下回転支持軸21の各芯軸部7,8に対向する各々の端面32,41には、有底の軸穴33,35が設けられている。また、軸穴33,35には、上芯軸部7の尖頭部45および下芯軸部8の尖頭部44との間の摩擦係数が小さくなるように樹脂の軸受部材34,42が挿入されている。回転円盤2は、尖頭部44,45と軸受部材34,42の間で軸方向のクリアランスが設けられている。
【0039】
このように構成される地球こま1は、中心軸P方向の負荷(回転円盤2の重量が主成分)を、摩擦係数が小さいフッ素樹脂製の軸受部材34または軸受部材42で受けているので、摩擦ロスが小さく、回転円盤2の回転を持続させることができる。
【0040】
また、第1の保護枠である水平保護枠3および第2の保護枠である垂直保護枠4は、金属製のパイプを、パイプの延長方向に対して直角に切断して形成され、水平保護枠3および垂直保護枠4共に、180度離れた2か所に貫通孔30,31が設けられ、両者の貫通孔30と貫通孔31の位置を合わせ、両者が直交するように接合している。
【0041】
二つのリング状部材である大径の水平保護枠3と小径の垂直保護枠4を製造し、正確な位置で直交させて接合するのは容易ではない。本実施の形態では、水平保護枠3および垂直保護枠4は、原料であるパイプを切断(輪切り)して形成するので、外径に対して薄肉のリング形状を短時間で正確に形成でき、また、切削残渣(切りくずなど)が少なく、材料の無駄を省くことができる。なお、パイプを輪切りした後、少なくとも内周の仕上げ加工(真円加工)をすれば、真円度および寸法精度が高い水平保護枠3と垂直保護枠4を製造することができる。また、
図3に示す例では、貫通孔30,31に案内軸51を通し、接合用治具を用いて水平保護枠3と垂直保護枠4を直交させて接合するので、水平保護枠3と垂直保護枠4との接合位置および接合角度を高精度に管理できる。
【0042】
また、第1の回転支持軸である上回転支持軸20側の軸受部材34における第1の芯軸部である上芯軸
部7の尖頭部45が当たる面34Aと、第2の回転支持軸である下回転支持軸21側の軸受部材42における第2の芯軸部である下芯軸
部8の尖頭部44が当たる面42Aには、尖頭部各々の頂部形状に倣った圧痕47,46が形成される。
【0043】
回転円盤2の重心が軸受部材42側に有るとき、軸受部材42の圧痕46で尖頭部44を支持し、回転円盤2の重心が軸受部材34側に有るとき、軸受部材34の圧痕47で尖頭部45を支持すれば、軸受部材34,42と尖頭部
45,44との間の摩擦ロスを低減すると共に、回転円盤2の横振れ(中心軸Pに直交する径方向の振れ)を抑制でき、回転円盤2の安定回転を持続できる。
【0044】
(軸受部材の変形例)
図4は、以上説明した実施の形態の変形例に係る上回転支持軸20による上芯軸部7の支持構造を示す図である。なお、下回転支持軸21による下芯軸部
8の支持構造も同じなので、上回転支持軸20側を例示して説明する。なお、
図2Cに示す部品と同じ構成の部品には、
図2Cと同じ符号を付して説明する。上回転支持軸20には、上芯軸部7側の端部32から有底の軸穴54が穿たれている。軸穴54には、筒状の軸受部材55が挿入されている。軸受部材55には、上芯軸部7側から穿たれた有底の軸穴56を有している。この軸穴56に上芯軸部7の回転軸部9が挿入される。軸穴56と回転軸部9との径方向のクリアランスは、0.02mm〜0.05mmとする。軸穴56の底部は、尖頭部45の受面57である。回転円盤2の中心軸Pに沿う方向のクリアランスは、上回転支持軸20または下回転支持軸21(
図2A,図2B参照)によって適切に調整される。
【0045】
軸受部材55は、
上芯軸部7との間の摩擦係数が小さいフッ素樹脂などで形成されている。フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などである。PTFEの他に、摩擦係数が小さく機械的強度が高いポリアセタール樹脂(POM)などでもよく、POMとしては、コポリマー、ホモポリマーなどがある。軸受部材55は、フッ素樹脂の棒材を切削加工などによって有底の筒状に形成される。
【0046】
上記変形例の構成によれば、回転円盤2は、摩擦係数が小さい上芯軸部7側の軸受部材55と下芯軸部8の軸受部材(不図示)とで支持される。したがって、中心軸P方向および径方向の両方共に摩擦係数が小さい軸受部材で支持されるので、芯軸6が垂直方向に向いている場合、あるいは水平方向に向いている場合や傾いている場合などでも、がたつきを抑制しつつ摩擦ロスを低減できる。なお、受面57には、図示は省略するが、上記実施の形態(
図2B,
図2C参照)で説明した尖頭部45による圧痕が形成される。
【0047】
(円盤部5と芯軸6の変形例)
以上説明した実施の形態では、回転円盤2は、金属の棒材から切削加工によって円盤部5と芯軸6とを一体で形成されている。しかし、円盤部5と芯軸6を別体とすることが可能である。このことについて、
図5を参照しながら説明する。
【0048】
図5は、円盤部5と芯軸6の変形例を示す図で、(A)は第1の変形例、(B)は第2の変形例を示す図である。まず、第1の変形例について
図5(A)を参照して説明する。回転円盤2は、円盤部5と芯軸6とで構成されている。
図5(A)に示すように、円盤部5には、中心軸Pを中心とする貫通孔60が開けられている。芯軸6の軸方向中央には、基部61が設けられ、この基部61が、円盤部5の貫通孔60に圧入固定されている。基部61は、上芯軸部7および下芯軸部8の直径よりも大きくしている。基部61の直径を大きくすることで、貫通孔60の内壁との間で接触面積を増やして固定力を高めることと、円盤部5に対して傾斜しないようにしている。なお、基部61は、
図2Aに示す基部11とほぼ同形状にできる。また、円盤部5
と芯軸6の一方または両者を切削加工で形成したり、鋳型成形としたりすることができる。
【0049】
なお、第1の変形例による円盤部5と芯軸6の組み立て方法の1例を説明する。
図5(A)に示すように、円盤部5をダイ64上に載せて芯軸6を貫通孔60に挿し込み、押し込み治具65によって所定の高さ位置まで押し込む。なお、図示は省略するが、ダイ64には、円盤部2の外周を取り巻く案内璧を設けておく。また、ダイ64と押し込み治具65の間にスペーサー(不図示)を介在させれば、芯軸6の押し込み高さの精度が高まる。
【0050】
第2の変形例は、
図5(B)に示すように、円盤部5に厚肉部66を設けている。厚肉部66は、円盤部5の表裏両面側に設けられる。また、円盤部5(厚肉部66)には、中心軸Pを中心とする貫通孔60が開けられている。芯軸6は、軸方向の中央部に上芯軸部7および下芯軸部8の直径よりも太い基部68が設けられていて、貫通孔60に基部68を圧入し円盤部5と芯軸6が一体化されている。第2の変形例による円盤部5と芯軸6の組み立て方法は、第1の変形例と同様に、円盤部5をダイ64上に載せて芯軸6を貫通孔60に挿し込み、押し込み治具65によって所定の高さ位置まで押し込む。なお、基部68の長さは、厚肉部66の厚みと同じにしているので、押し込み治具65の端面が厚肉部66に接触する位置まで押し込めばよい。なお、厚肉部66は、
図2(A)に示す基部とほぼ同じ形状にすることができる。
【0051】
以上説明した第1の変形例および第2の変形例では、回転円盤2は、円盤部5と、円盤部5の中心軸Pを貫通する芯軸6とが別体で構成されている。前述した実施の形態(
図2A参照)による回転円盤2が、金属の棒材から切削加工によって円盤部5と芯軸6とを一体で形成していることに対して、第1の変形例では、円盤部5は厚さが一定の円盤なので、たとえば、プレス可能などで金属板材から容易に形成することが可能となる。第2の変形例では、円盤部5の中心に厚肉部66を有しているが、
図2Aに示す回転円盤2の切削加工に対してはるかに加工時間を短縮することが可能となる。また、円盤部5と芯軸6を別体にすることで、円盤部5は、加工しやすい材料や熱処理が不要な材料(たとえば、真鍮などの銅系合金)にすることができる。
【0052】
また、前述した変形例を含む実施の形態の地球こま1の製造方法では、直径が異なる2種類の金属製のパイプを、該各パイプの延長方向に対して直角に切断して継ぎ目がない直径が異なる2種類のリングを形成する工程と、これら各リングの内周をほぼ真円に加工する工程と、各リングうち大径のリングを水平保護枠3および小径の垂直保護枠4とし、第1の保護枠となる水平保護枠3および第2の保護枠となる垂直保護枠4に、それぞれ、180度離れた2か所に貫通孔30,31を設ける工程と、両保護枠3,4の貫通孔30,31の位置を合わせ、両者が直交するように接合する工程と、を有している。
【0053】
水平保護枠3および垂直保護枠4は、原料であるパイプを切断(輪切り)して形成するので、外径に対して薄肉のリング形状を短時間で正確に形成できる。また、切削残渣(切りくずなど)が少なく、材料の無駄を省くことができる。なお、パイプを輪切りした後、少なくとも内周の仕上げ加工(真円加工)をすれば、真円度および寸法精度が高い水平保護枠3および垂直保護枠4を容易に製造することができる。
【0054】
なお、本発明は変形例を含む前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。たとえば、前述した実施の形態では、回転円盤2側に回転軸部9,10を有し、上回転支持軸20および下回転支持軸21側に各々軸穴33,35を有する構成といているが、回転円盤2側の上芯軸部7および下芯軸部8に軸穴33,35に相当する穴を設け、上回転支持軸20および下回転支持軸21側に回転軸部9,10に相当する穴を設けるようにしてもよい。
【0055】
また、前述した実施の形態では、地球こま1は、二つの紐巻き付け用孔12,13を有しているが、二つのうち、どちらか一方だけでもよい。また、前述した実施の形態では、水平保護枠3が、垂直保護枠4よりも大径としているが、大小を逆にしてもよい。また、使用する紐は、先端をセメダインなどの接着剤を使用して堅くしたものが好ましい。堅くする先端の長さは、貫通孔30,31が設けられる部分の芯軸6の直径をXとすると、0.5X〜3Xの範囲が好ましく、X〜2Xの範囲がさらに好ましい。セメダインなどの接着剤を塗布する場合、紐の先端をほぐして、紐の内側に接着剤が十分入り込むようにし、その後、円柱状に固形化するのが好ましい。また、紐は、貫通孔30,31に入りやすいように、先端に行くに従い細くなるような形状とするのが良い。この徐々に細くなる部分を形成する場合、その長さは、0.7X〜1.5Xの範囲とするのが好ましい。たとえば、貫通孔30,31が設けられる部分の芯軸6の直径を5mmとすると、セメダインなどの接着剤を使用して堅くする先端部分の長さを10mmとし、徐々に細くなる部分の長さを3.5〜7.5mmとすることが考えられる。
【0056】
また、前述した実施の形態では、大径の水平保護枠3と小径の垂直保護枠4は、ロウ付などで接合しているが、内側の垂直保護枠4の貫通孔31をネジ孔とし、水平保護枠3を垂直保護枠4に皿小ネジなどで固定するようにしてもよい。また、垂直保護枠4の貫通孔31と、水平保護枠3の貫通孔30の両方をネジ孔とし、ネジ頭のないイモネジなどで固定するようにしてもよい。この場合、ネジ用接着剤などでネジ緩みがないようにすることが好ましい。
【解決手段】地球こま1は、円盤部5と、円盤部5の中心軸Pの延長線上に延びる上芯軸部7と下芯軸部8で構成される回転円盤2と、水平保護枠3に直交し、水平保護外枠3との交差位置で固定された垂直保護枠4を有する。垂直保護枠4上の180度離れた2か所の頂部位置には、上回転支持軸20および下回転支持軸21を有している。上芯軸部20と下芯軸部の対向する先端部には、円錐形状の尖頭部44,45が形成され、上回転支持軸20および下回転支持軸21の対向する端面には軸穴33,35が設けられている。軸穴33,35には、尖頭部44,45との間の摩擦係数が小さい樹脂で形成される軸受部材34,42が挿入されている。