特許第6033493号(P6033493)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6033493
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】銅基合金スパッタリングターゲット
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20161121BHJP
   C22C 9/01 20060101ALI20161121BHJP
   C22C 9/02 20060101ALI20161121BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20161121BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20161121BHJP
   C22C 9/00 20060101ALN20161121BHJP
   C22C 9/05 20060101ALN20161121BHJP
【FI】
   C23C14/34 A
   C22C9/01
   C22C9/02
   H01L21/285 S
   H01L21/28 301R
   !C22C9/00
   !C22C9/05
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-507945(P2016-507945)
(86)(22)【出願日】2015年9月11日
(86)【国際出願番号】JP2015075916
【審査請求日】2016年3月1日
(31)【優先権主張番号】特願2015-31022(P2015-31022)
(32)【優先日】2015年2月19日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 真
【審査官】 山田 頼通
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2005/0285273(US,A1)
【文献】 特開2011−035347(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/064722(WO,A1)
【文献】 特開2014−156621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
C22C 9/01
C22C 9/02
H01L 21/28
H01L 21/285
C22C 9/00
C22C 9/05
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スズを4質量%以上16質量%以下、及びアルミニウムを質量%以上11質量%以下含み、残部が銅及び不可避不純物を含む、銅配線保護層形成用の銅基合金スパッタリングターゲット。
【請求項2】
スズを質量%以上16質量%以下、及びアルミニウムを4質量%以上11質量%以下含み、残部が銅及び不可避不純物を含む、銅配線保護層形成用の銅基合金スパッタリングターゲット。
【請求項3】
前記銅基合金スパッタリングターゲットを使用してガラス基板上に直接形成された保護層のアニール前の室温(25℃)における体積抵抗率をRとし、前記保護層を大気雰囲気下において350℃で30分間にわたりアニールした後の体積抵抗率をRとしたとき、R>Rとなる請求項1又は2に記載の銅基合金スパッタリングターゲット。
【請求項4】
前記体積抵抗率Rが前記体積抵抗率R1の85%以下である請求項に記載の銅基合金スパッタリングターゲット。
【請求項5】
スズ及びアルミニウムの合計量の割合が10質量%以上20質量%以下である請求項1ないしのいずれか一項に記載の銅基合金スパッタリングターゲット。
【請求項6】
Sn/Alの質量比が0.4以上2.5以下である請求項1ないしのいずれか一項に記載の銅基合金スパッタリングターゲット。
【請求項7】
銅及び不可避不純物を除き、構成元素としてスズ及びアルミニウムのみを含む請求項1ないしのいずれか一項に記載の銅基合金スパッタリングターゲット。
【請求項8】
スズを4質量%以上16質量%以下、及びアルミニウムを4質量%以上11質量%以下含み、残部が銅及び不可避不純物を含む、銅配線保護膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅基合金スパッタリングターゲットに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイは、多数の薄膜トランジスタ(TFT)を有するものであり、その配線にはアルミニウムが用いられている場合が多い。近年ではフラットパネルディスプレイが大型化や高精細化しており、このことに起因して信号の高速化の要求が高まっている。その要求に対応すべく、TFTの配線の一層の低抵抗化が必要となる。
【0003】
配線の低抵抗化の観点から、配線材料としてアルミニウムよりも抵抗の低い金属である銅が用いられつつある。銅自体はアルミニウムよりも抵抗は低いものの、高温の大気や酸素を含む雰囲気に曝されると酸化されやすく、そのことに起因して高抵抗化してしまうという欠点がある。
【0004】
銅配線の酸化を防止する観点から、銅配線の表面に保護層を設ける方法が提案されている。例えば特許文献1には、Cr、Ti、V、Al、Ta、Co、Zr、Nb、Moを含み、残部が銅と不可避的不純物であるCu合金スパッタリングターゲットを用いて保護層を形成することが記載されている。特許文献2には、Niを含み、更にAl及び/又はTiを含み、残部がCuからなるCu合金を用いてCu配線保護層を形成することが記載されている。特許文献3には、Ni及びMgを含み、残部がCuからなるCu合金を用いてCu配線保護層を形成することが記載されている。
【0005】
特許文献4には、Zn、Ni及びMnを含み、残部がCuと不可避不純物とからなるスパッタリングターゲットを用いてCu配線の保護層を形成することが記載されている。特許文献5には、Al、Fe、Ni及びMnを含み、残部がCuと不可避不純物とからなるスパッタリングターゲットを用いてCu配線の保護層を形成することが記載されている。
【0006】
一方で、Mo基合金を用いて保護層を形成する方法も提案されている。例えば特許文献6には、Mo、Ni及びWを含み、残部が不可避的不純物からなる保護層が、350℃大気中でも耐酸化性を有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−133489号公報
【特許文献2】特開2014−105362号公報
【特許文献3】特開2014−129596号公報
【特許文献4】特開2014−114481号公報
【特許文献5】特開2014−156621号公報
【特許文献6】特開2014−199920号公報
【発明の概要】
【0008】
前述した特許文献1ないし5に記載の材料を用いれば、ある程度の温度範囲までであれば、銅配線が酸化されることを防止できる。しかし、フラットパネルディスプレイ等の製造プロセスの温度は今後一層高くなることが予想され、そのような高温領域、例えば250℃を超える高温領域では、前述した各特許文献に記載の材料を用いても、銅配線の酸化を防止することは困難である。一方、Mo基合金を保護層に用いると、該保護層をCu配線と一括でエッチングする際に、一般に両者のエッチング速度の差が大きいため、テーパー部に段差が生じるなど、所望のパターン形状が得られない場合がある。このため、保護層としては、Cu配線とのエッチング速度の差が少ない材料を用いることが望ましい。
【0009】
したがって、本発明の課題は銅配線の酸化の防止にあり、更に詳しくは、高温領域においても銅配線の酸化を効果的に防止し得る銅配線保護層形成用の銅基合金スパッタリングターゲットを提供することにある。
【0010】
本発明は、スズを質量%以上16質量%以下、及びアルミニウムを4質量%以上11質量%以下含み、残部が銅及び不可避不純物を含む、銅配線保護層形成用の銅基合金スパッタリングターゲットを提供することで、前記課題を解決したものである。
また本発明は、スズを4質量%以上16質量%以下、及びアルミニウムを5質量%以上11質量%以下含み、残部が銅及び不可避不純物を含む、銅配線保護層形成用の銅基合金スパッタリングターゲットを提供することで、前記課題を解決したものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明のスパッタリングターゲットは銅基合金からなる。本発明のスパッタリングターゲットは、銅配線の上に保護層を形成するために使用されるものである。本発明において銅配線とは、銅又は銅合金からなる電気回路の配線のことであり、一般には各種の薄膜形成方法によって形成された薄膜層から構成されている。銅配線を構成する銅合金としては、合金成分としてマンガン、マグネシウム、ビスマス、インジウム等から選択される1種又は2種以上の元素を含む銅基合金が挙げられる。これらの合金成分は、銅合金中に0.01原子%以上20原子%以下の割合で含有させることができる。銅配線が銅合金からなる場合、該銅合金は、後述する保護層を構成する合金とは異種のものが用いられる。
【0012】
本発明のスパッタリングターゲットは、スズを4質量%以上16質量%以下、及びアルミニウムを4質量%以上11質量%以下含み、残部が銅及び不可避不純物を含むものである。本発明のスパッタリングターゲットは、銅及び不可避不純物を除けば、構成元素としてスズ及びアルミニウムのみを含むものであることが好ましい。しかし、本発明の有利な効果を損なわない範囲において、他元素が少量含まれていることは許容される。
【0013】
本発明のスパッタリングターゲットにスズ及びアルミニウムを組み合わせて含有させることで、該スパッタリングターゲットを用いて形成された保護層による銅配線の酸化が効果的に防止されることが、本発明者の検討の結果判明した。詳細には、スパッタリングターゲットに含まれるスズの割合を4質量%以上に設定し、かつアルミニウムの割合を4質量%以上に設定することで、保護層に起因する銅配線の耐酸化性を充分に高めることが可能となる。また、スパッタリングターゲットに含まれるスズの割合を16質量%以下に設定し、かつアルミニウムの割合を11質量%以下に設定することで、保護層と銅配線とを一括で同時にエッチングする際に、両者のエッチング速度差が小さくなり、所望の配線パターンをエッチングによって容易に形成することができる。
【0014】
上述した本発明の効果を一層顕著なものとする観点から、スパッタリングターゲットに含まれるスズの割合は4質量%以上10質量%以下であることが好ましく、5質量%以上7質量%以下であることが更に好ましい。一方、スパッタリングターゲットに含まれるアルミニウムの割合は4質量%以上10質量%以下であることが好ましく、5質量%以上9質量%以下であることが更に好ましい。更に、スパッタリングターゲットに含まれるスズ及びアルミニウムの合計量の割合は8質量%以上20質量%以下であることが好ましく、10質量%以上16質量%以下であることが更に好ましい。
【0015】
前記と同様の観点から、銅基合金におけるスズとアルミニウムとの比率は、質量比で表して、Sn/Alの値が0.4以上2.5以下であることが好ましく、0.5以上1.4以下であることが更に好ましい。
【0016】
本発明のスパッタリングターゲットは、これを用いて形成された銅配線の保護層の体積抵抗率が、該保護層のアニール温度の上昇に連れて低下するものであるという特徴を有する。このことに起因して、保護層の上にITOなどの透明導電膜を形成する場合、透明導電膜に対するコンタクト抵抗を低減できるという有利な効果が奏される。前述の特徴は、例えば本発明のスパッタリングターゲットを用いて基板上に直接保護層を形成し、該保護層のアニール前後での体積抵抗率を測定することで評価することができる。詳細には、まず本発明のスパッタリングターゲットを使用してガラス基板上に直接保護層を形成する。そして、前記保護層をアニールする前の室温(25℃)における前記保護層の体積抵抗率Rを測定し、前記保護層を350℃でアニールした後の前記保護層の体積抵抗率Rを測定して比較評価する。本発明のスパッタリングターゲットは、これを用いて保護層を形成すると前記体積抵抗率Rよりも前記体積抵抗率Rが低くなる、すなわちR>Rとなる特徴を有する。体積抵抗率Rは体積抵抗率Rに対して85%以下になることが好ましく、80%以下になることが更に好ましく、75%以下になることが一層好ましい。保護層の体積抵抗率が、該保護層のアニール温度の上昇に連れて低下する理由は、アニールによって銅基合金中に銅とスズの金属間化合物が析出し、そのことによって純銅成分が相対的に増加するからではないかと、本発明者は考えている。なお、この体積抵抗率の低下は、アニール温度の上昇に連れて漸次連続するものであることがより好ましい。アニールは、大気雰囲気下において、目的とするアニール温度を例えば30分間保持することで行う。アニールは、例えば室温から温度を徐々に上昇させることで行う。体積抵抗率の測定のために使用するガラス基板としては、例えばEAGLE XG(コーニング社/液晶ディスプレイ用ガラス、登録商標)等を用いることができる。
【0017】
本発明のスパッタリングターゲットは当該技術分野において公知の種々の方法で製造することができる。例えば真空中で溶融させた銅、スズ及びアルミニウムを鋳造して合金化させる。次に、得られた鋳塊を用いてスパッタリングターゲットを製造する。スパッタリングターゲットに加工する加工方法に特に制限はなく、例えば熱間鍛造でもよく、冷間鍛造でもよく、あるいは熱間圧延でもよい。また、ワイヤーカットで切り出し加工を行い、板材に形成してもよい。得られた板材を、スパッタリングの冶具であるバッキングプレートにインジウムなどのボンディング材を用いて貼り付けることで、銅基合金スパッタリングターゲットを得ることができる。なお本発明において、銅基合金スパッタリングターゲットとは、平面研削やボンディング等のスパッタリングターゲット仕上げ工程前のスパッタリングターゲット材の状態も包含する。
【0018】
次に、本発明のスパッタリングターゲットを用いて銅配線の保護層を形成する方法について説明する。まず基板上に、配線材である銅又は銅基合金を用い、各種の薄膜形成方法によって銅配線を成膜する。薄膜形成方法としては、例えばスパッタリングが挙げられるが、これに限られない。基板としては、例えばガラス基板等の非導電性材料からなる基板を用いることができる。あるいはITOなどの透明導電膜が表面に形成されたガラス基板における該透明導電膜上に配線材を形成してもよい。銅配線の厚みは、その具体的な用途に応じて任意に設定可能であり、例えば50nm以上500nm以下に設定することができる。基板と銅配線との密着性を高めることを目的として、両者間に密着層を形成してもよい。密着層としては、例えば基板がガラス基板である場合には、チタンからなる層を用いることができる。
【0019】
このようにして形成された銅配線の上に保護層を形成する。保護層の形成は、本発明のスパッタリングターゲットを用い、スパッタリングによって行う。形成された保護層は、スパッタリングターゲットと実質的に同組成の銅基合金からなるものである。保護層の厚みは、具体的な用途に応じて任意に設定可能であり、例えば20nm以上60nm以下に設定することができる。保護層の厚みを20nm以上に設定することで、保護の対象である銅配線の酸化を効果的に防止することができる。また、保護層の厚みを60nm以下に設定することで、保護層の生産性が損なわれないようにすることができる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0021】
まず、本発明のスパッタリングターゲットを使用して形成した保護層の、銅配線に対する耐酸化効果を調べるため、以下の評価を行った。
〔実施例1ないし9〕
銅、スズ及びアルミニウムの各インゴットを、以下の表1に示す組成を有するように精秤した。これらのインゴットをマグネシア製のるつぼに入れ、真空中で加熱して溶融させた。得られた溶湯を用いて鋳造を行い銅基合金からなる鋳塊を得た。得られた鋳塊を圧延後、加工して直径101.6mmで、厚み5mmのターゲットを得た。なお表1中、例えば「Cu−4Sn−4Al」とあるのは、銅基合金に含まれるSnの割合が4質量%で、Alの割合が4質量%であることを意味する。
【0022】
DCマグネトロンスパッタ装置にガラス基板を装着するとともに、チタン、銅及び、前記で得られた銅基合金の各スパッタリングターゲットを装着した。この状態下でスパッタリングを行い、前記ガラス基板上に、チタンからなる厚み15nmの密着層、厚み400nmの銅配線、及び厚み50nmの保護層をこの順で形成しガラス基板上に3層を有する配線基板とした。スパッタリングの条件は、以下のとおりとした。
・スパッタ方式 :DCマグネトロンスパッタ
・排気装置 :ロータリーポンプ+クライオポンプ
・到達真空度 :2×10−5Pa以下
・Ar圧力 :0.5Pa
・基板温度 :室温
・スパッタ電力 :250W (電力密度3.2W/cm2
・使用基板 :EAGLE XG(コーニング社/液晶ディスプレイ用ガラス、登録商標
)50mm×50mm×0.7mmt
【0023】
〔比較例1ないし6〕
実施例1ないし9で用いたターゲットに代えて、以下の表1に示す組成を有する銅基合金からなるターゲットを用いた。これ以外は実施例1ないし9と同様にして保護層を形成した。
【0024】
〔比較例7〕
本比較例は、実施例1ないし9において保護層を形成しなかった例である。したがって、本比較例では、銅配線が露出した状態になっている。
【0025】
〔評価1〕
実施例及び比較例で得られた前記の3層を有する配線基板について、アニール温度と体積抵抗率との関係、及びアニール温度と表面反射率との関係を調べた。具体的には、大気雰囲気下において、前記配線基板を加熱して温度を上昇させ、350℃で30分間にわたりその温度を保持して、その温度での前記配線基板の表面側からの体積抵抗率及び表面反射率を測定した。そして、25℃(すなわちアニール前)における体積抵抗率及び表面反射率を基準として、当該温度での体積抵抗率及び表面反射率の割合(%)を算出した(アニール後の値/アニール前の値×100)。アニール温度が350℃のときの結果を以下の表1に示す。
【0026】
体積抵抗率は、低抵抗率計(ロレスタ−HP/(株)三菱化学アナリテック製)と四探針プローブを用い、このプローブを前記配線基板最表面の保護膜層に押し当てることにより測定した。また、表面反射率は、紫外可視分光光度計を用い、波長550nmにおける値を測定した。
【0027】
【表1】
【0028】
表1に示す結果から明らかなとおり、実施例で得られた配線基板においては、350℃という高温でアニールを行った場合であっても、低抵抗である銅配線部分を含む3層全体の体積抵抗率の上昇及び表面反射率の減少が小さく、最表層の保護層の形成に起因する耐酸化効果が高いことが判る。これに対して、各比較例の配線基板においては、350℃という高温でアニールを行うと、体積抵抗率の上昇及び表面反射率の減少が著しくなり、銅配線が酸化されていることが判る。
【0029】
次に、保護層のアニール温度上昇に伴う体積抵抗率の変化を調べるため、以下の評価を行った。
〔実施例10ないし18〕
実施例1ないし9の組成を有するターゲットを使用して、ガラス基板上に直接保護層を形成した。スパッタ条件は実施例1ないし9と同様にし、保護層の厚みは400nmとした。ガラス基板はEAGLE XG(コーニング社/液晶ディスプレイ用ガラス、登録商標)を使用した。
【0030】
〔比較例8ないし13〕
実施例10ないし18で用いたターゲットに代えて、比較例1ないし6の組成を有するターゲットを用いた。これ以外は実施例10ないし18と同様にしてガラス基板上に直接保護層を形成した。
【0031】
〔評価2〕
実施例及び比較例で得られた保護層付き基板について、アニール温度と体積抵抗率との関係を、上述の評価1と同様の手順で調べた。アニール温度が350℃のときの結果を以下の表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
表2に示す結果から明らかなとおり、実施例10ないし18で得られた保護層付き基板においては、アニール前に比べて、アニール温度が350℃のときに、体積抵抗率が低下していることが判る。これに対して、比較例11ないし13の保護層付き基板においては、アニール前に比べて、アニール温度が350℃のときでも体積抵抗率に大きな変化は観察されない。また、比較例8ないし10の保護層付き基板においては、アニール温度が350℃のときに、若干体積抵抗率の低下が見られる。しかし、比較例1ないし3の結果から判るように銅配線への耐酸化効果は十分には得られない。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、高温領域においても銅配線の酸化を効果的に防止し得る銅基合金スパッタリングターゲットが提供される。
【要約】
本発明の銅基合金スパッタリングターゲットは、スズを4質量%以上16質量%以下、及びアルミニウムを4質量%以上11質量%以下含み、残部が銅及び不可避不純物を含む。本発明のターゲットは、該ターゲットを使用してガラス基板上に直接形成された保護層のアニール前の室温(25℃)における体積抵抗率をRとし、前記保護層を大気雰囲気下において350℃で30分間にわたりアニールした後の体積抵抗率をR2としたとき、R>Rとなることが好適である。