特許第6033503号(P6033503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6033503超音波処置具及び超音波処置アッセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6033503
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】超音波処置具及び超音波処置アッセンブリ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/32 20060101AFI20161121BHJP
【FI】
   A61B17/32 510
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-524553(P2016-524553)
(86)(22)【出願日】2015年11月30日
(86)【国際出願番号】JP2015083591
【審査請求日】2016年4月18日
(31)【優先権主張番号】62/196158
(32)【優先日】2015年7月23日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】酒井 昌裕
【審査官】 木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−327466(JP,A)
【文献】 特開2010−335(JP,A)
【文献】 特表2013−519437(JP,A)
【文献】 特表2013−519441(JP,A)
【文献】 特表2015−510787(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0147945(US,A1)
【文献】 国際公開第2015/045198(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/16
A61B 17/32
A61B 18/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節鏡視下手術に用いられる超音波処置具であって、
超音波振動が伝達される本体部と、前記本体部の先端方向側に設けられ、前記超音波振動で骨を切削する切削領域を有する処置部と、を有するプローブと、
前記プローブの前記本体部を覆う第1の部位と、前記処置部のうち前記切削領域よりも基端方向側の部位であり、前記切削領域が設けられた側を覆うように前記第1の部位から延びた第2の部位と、を有するシースと、
を備え、
前記第2の部位には、前記本体部の前記先端方向側とは反対側の基端方向側に向かって延びる切欠部が設けられる超音波処置具。
【請求項2】
前記処置部は、前記本体部の長手方向に対して湾曲する湾曲部を有し、
前記シースの前記第2の部位は、前記湾曲部のうち、前記切削領域が設けられた側を覆っている請求項1に記載の超音波処置具。
【請求項3】
前記本体部の長手方向と交差する方向に関する前記切欠部の幅寸法は、1mm以上で2mm以下である請求項1に記載の超音波処置具。
【請求項4】
前記シースの前記第1の部位と前記プローブとの間で前記プローブの前記本体部を覆うように設けられる筒状部材と、
前記シースの前記第1の部位と前記筒状部材との間に設けられるとともに吸引源と接続された吸引経路と、
を備える請求項1に記載の超音波処置具。
【請求項5】
前記筒状部材は、前記シースの中心軸に対して偏心して設けられるとともに、前記シースの内周面の一部に近接した近位部と、前記近位部の反対側に設けられた遠位部と、を有し、
前記遠位部と、前記シースの内周面の一部から外れた位置との間に、前記吸引経路が設けられる請求項4に記載の超音波処置具。
【請求項6】
請求項1に記載の超音波処置具と、
前記超音波処置具に着脱可能に取り付けられる超音波振動子ユニットと、
を備える超音波処置アッセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科手術に用いられる超音波処置具および超音波処置アッセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2010/087060号明細書には、関節鏡装置と手術用処置装置を有した手術用処置システムがある。この手術用処置システムでは、医師は、関節腔内に関節鏡装置の関節鏡と手術用処置装置の処置具とを挿入し、関節腔内において関節鏡視下で処置具を用いて処置を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010/087060号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スペースの小さい関節腔に関節鏡と処置具とを差し込むと、両者が接触する不具合を生じる可能性がある。例えば超音波振動を用いて処置を行う超音波処置具を用いた処置を行う場合、超音波振動が伝達されるプローブに関節鏡が接触する不具合を防止することが求められる。
【0005】
本発明の目的は、不具合を生じる可能性を低減した超音波処置具及び超音波処置アッセンブリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明のある態様では、関節鏡視下手術に用いられる超音波処置具は、超音波振動が伝達される本体部と、前記本体部の先端方向側に設けられ、前記超音波振動で骨を切削する切削領域を有する処置部と、を有するプローブと、前記プローブの前記本体部を覆う第1の部位と、前記処置部のうち前記切削領域よりも基端方向側の部位を覆うように前記第1の部位から延びた第2の部位と、を有するシースと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、不具合を生じる可能性を低減した超音波処置具及び超音波処置アッセンブリを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る処置システムを示す概略図である。
図2図2は、図1に示す処置システムの超音波処置具のハンドピースを示す側面図である。
図3図3は、図2に示すハンドピースの長手方向Cに沿う面で切断して示す断面図である。
図4図4は、図3に示すA部を拡大して示した断面図である。
図5図5は、図1に示す処置システムを用いて実際の手術を行う際の超音波処置具および関節鏡装置の位置関係を示す側面図である。
図6図6は、第2実施形態に係る処置システムのハンドピースを示す側面図である。
図7図7は、図6に示すB部を拡大して示した断面図である。
図8図8は、図6に示すF8−F8線に沿った断面図である。
図9図9は、第3実施形態に係る処置システムのハンドピースを長手方向Cに沿う面で切断して示す断面図である。
図10図10は、図9に示すハンドピースを矢印E方向から示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態について、図1乃至図5を参照して説明する。処置システムは、関節鏡視下手術に用いられ、処置対象部位として例えば、肩、膝、肘等の関節の処置に用いられる。より具体的には、図1に示すように、処置システム11は、関節内、すなわち第1の骨12と第2の骨13との間の処置に用いられる。この処置システム11は、関節鏡装置14と、超音波処置装置15(超音波処置アッセンブリ)と、灌流装置16とを有する。また、関節鏡装置14の関節鏡18は、第1カニューラ37aを介して関節腔17内に差し込まれ、超音波処置装置15の後述するシース51およびプローブ44は、第2カニューラ37bを介して関節腔17内に差し込まれる。
【0010】
関節鏡装置14は、患者の関節の内部すなわち関節腔17内を観察する関節鏡18と、関節鏡18によって撮像された被写体像に基づいて画像処理をする画像処理ユニット26と、画像処理ユニット26での画像処理によって生成された映像を映し出すモニタ22と、を有する。
【0011】
関節鏡18は、挿入部23と、保持部24と、を備える。これを用いた処置においては、挿入部23の先端部が関節内に挿入される。保持部24には、ユニバーサルコード25の一端が接続されている。ユニバーサルコード25の他端は、画像処理ユニット26に接続されている。画像処理ユニット26は、モニタ22(表示ユニット)に電気的に接続されている。
【0012】
挿入部23の先端部には、撮像素子が設けられており、撮像素子は、画像処理ユニット26に電気的に接続されている。撮像素子で取得した画像は、画像処理ユニット26で画像処理されてモニタ22に表示される。なお、関節鏡18には、図示しない光源ユニットが接続され、光源ユニットから出射された光が被写体に対して照射される。
【0013】
灌流装置16は、生理食塩水等の灌流液を収容する袋状の液体源27と、灌流ポンプユニット28と、液体源27に一端が接続された送液チューブ31と、排液チューブ32と、排液チューブ32の一端が接続された吸引ボトル33とを含む。吸引ボトル33は、手術室の壁に取り付けられた吸引ポンプユニット34に接続される。灌流ポンプユニット28は、送液ポンプ35により液体源27から灌流液を送り出し可能である。また、灌流ポンプユニット28は、排液弁としてのピンチバルブ36の開閉により関節腔17内の灌流液を吸引ボトル33に対して吸引/吸引停止を切り替えることができる。
【0014】
送液管路である送液チューブ31の他端は、第1カニューラ37aに接続されている。排液チューブ32の他端は、第1カニューラ37aに接続されている。このため、第1カニューラ37aを介して関節腔17内に灌流液を送り込んだり、関節腔17から灌流液を排出したり可能である。潅流液は、患者に形成した別のポータルから送出及び排出可能としても良い。潅流液は、患者に形成した別のポータルから送出及び排出可能としても良い。
【0015】
図1図2に示すように、超音波処置装置15は、ハンドピース(超音波処置具)41と、ハンドピース41に取り付けられる超音波振動子ユニット40と、電源ユニット42と、超音波振動子ユニット40と電源ユニット42とを接続するケーブル43と、を備える。以下では、図2に示すように、ハンドピース41に設けられるプローブ44(本体部61)の長手方向Cに平行な2方向の一方を先端方向C1とし、先端方向C1とは反対方向を基端方向C2として説明を進める。
【0016】
図1に示すように、電源ユニット42は、エネルギー制御部45と、エネルギー制御部45に制御されて振動発生部に電力を供給する超音波電流供給部46と、を有する。超音波振動子ユニット40は、超音波振動を発生する振動発生部48を振動子ケース40Aの内部に有する。
【0017】
図1から図3に示すように、ハンドピース(超音波処置具)41は、外殻を構成するハウジング47と、振動発生部48に接続された棒状のプローブ44と、プローブ44の周囲を覆ってプローブ44を保護する中空(円筒形)のシース51と、ハウジング47に設けられたエネルギー入力ボタン52(スイッチ)と、を備える。なお、図2図3では、エネルギー入力ボタン52の図示を省略している。エネルギー入力ボタン52は、ハンドピース41から分離したフットスイッチとして設けてもよい。
【0018】
振動子ケース40A(圧電素子53)には、ケーブル43の一端が接続されている。ケーブル43の他端は、電源ユニット42に接続されている。また、医師がエネルギー入力ボタン52を操作すると、エネルギー制御部45がエネルギー入力ボタン52の操作入力を感知する。そして、エネルギー制御部45は、超音波電流供給部46を制御して、振動発生部48に電力を供給する。これによってプローブ44に超音波振動(超音波エネルギー)が伝達され、プローブ44を介して処置対象の骨(生体組織)に超音波振動を付与できる。これによって、骨(生体組織)の切除、除去等を行うことができる。
【0019】
振動発生部48は、複数の圧電素子(振動子)53と、ホーン部材54と、を備える。圧電素子53は、電源ユニット42から電力供給を受けて超音波振動を発生する。ホーン部材54は、圧電素子53で発生した超音波振動の振幅を拡大しつつ当該超音波振動をプローブ44に伝達する。ホーン部材54およびこれに接続されるプローブ44には、例えば、長手方向Cに沿う方向(プローブ44が伸縮する方向)の超音波振動が伝達される。このようにプローブ44を伝わる超音波振動の節位置55(最も先端方向C1側にある節位置)に対応する位置に、シース51の内部に液体が侵入することを防止するための樹脂製のシール部材56が設けられている。シール部材56は、リング状をなしており、シース51の中心にプローブ44が位置するようにプローブ44を支持する。
【0020】
図2から図4に示すように、プローブ44は、例えば生体適合性のある金属材料(例えば、チタン合金等)によってロッド状に形成されている。プローブ44は、ロッド状に延びる本体部61と、本体部61の先端方向C1側に設けられた処置部61A(先端方向C1側部分)と、を有する。処置部61Aは、長手軸Cに沿う方向とは異なる方向に曲げられている。処置部61Aは、本体部61の先端方向C1側部分に設けられた湾曲部62と、湾曲部62よりも先端方向C1側の部分から長手軸C方向と交差する方向に突出し、超音波振動の伝達により骨を切削する切削領域63(爪部)と、を有する。処置部61Aは、プローブ44の他の部分よりも直径が小さくなっており、他の部分よりも折れやすい部分を構成する。特に、骨等の硬組織の除去では、超音波振動の振幅を比較的に大きく設定され、プローブ44にかかる応力が比較的に大きくなっていて、応力が比較的に大きいことは処置部61Aでも同様である。
【0021】
本体部61は、振動発生部48から伝えられる超音波振動を基端から先端方向C1側に伝達できる。処置部61Aは、本体部61の長手方向Cと交差する方向に凸になるように湾曲する。湾曲部62(頂部)は、プローブ44の本体部61において最も曲率が大きい部分であり、処置中に、特に超音波振動が伝達されている状態で、関節鏡18と接触した場合に折れやすい部分である。
【0022】
超音波振動子ユニット40の圧電素子53の共振周波数によりプローブ44に入力される超音波振動の波長が決められる。すなわち、プローブ44の長さは、用いられる圧電素子53によって決められることになる。したがって、プローブ44は、超音波振動子ユニット40の圧電素子53からプローブ44の基端に超音波振動が入力され、プローブ44の基端から先端方向C1側に超音波振動が伝達されたとき、処置部61Aに振動の腹位置が規定される長さを有する。振動の腹位置は、切削領域63の位置に一致することが好ましい。すなわち、切削領域63の位置は、振動の腹位置に相当する位置となるように調整されている。超音波振動が伝達されたとき、振動の腹位置に対して基端側にある1つ目の振動の節位置は、プローブ44の本体部61の先端と基端と間に規定される。
【0023】
シース51は、円筒形などの筒状をなした第1の部位64と、第1の部位64から延出する第2の部位65と、を備える。第2の部位65は、切削領域63が設けられる側に設けられている。図4に示すように、第2の部位65は、例えば長手軸C回りに例えば180°の角度に対応して第1の部位64から円筒の略半分に相当する形状で突出するように設けられる。第2の部位65は、第1の部位64からプローブ44の湾曲部62に対応する部分を覆う位置まで延びている。このため、第2の部位65の先端は、第1の部位64の先端に対して、湾曲部62を超えて先端方向C1側に延びている。一方、切削領域63が設けられる側とは反対側には第2の部位65が設けられておらず、この位置でプローブ44が外界に露出されている。このため、プローブ44の処置部61Aの基端部のうち、第2の部位65に対向する側とは反対側は、露出部66を構成している。
【0024】
続いて、図5を参照して、本実施形態の処置システム11を用いた手術方法について説明する。本実施形態の処置システム11の超音波処置装置15は、例えば関節腔17内において使用され、超音波振動が伝達されたプローブ44を骨棘等の除去対象に当接させることで、当該除去対象の組織を削り取って除去することができる。
【0025】
まず、関節腔17内に灌流液を周知の方法で充填する。外界から関節腔17内に至る適切なポータルを利用して関節腔17内に関節鏡18を挿入し、患部の状態を確認する。さらに医師は、別のポータルを利用して関節腔17内にハンドピース41のプローブ44およびシース51を挿入する。なお、各関節には、関節内へのアクセス経路となる周知のポータルが複数存在している。
【0026】
プローブ44を関節腔17内に差し込む際には、その途中にある滑膜や滑液包、軟骨等の軟組織の除去にも、超音波振動させたプローブ44を用いることができる。このため、プローブ44およびシース51を関節腔17内に差し込む際に、処置具を入れ替える必要がなく作業性がよい。
【0027】
医師は、図5に示すように、プローブ44の切削領域63側が、シース51の近傍に関節鏡18の挿入部23の先端部が位置するような位置関係でプローブ44および関節鏡18を位置させることがある。医師は、関節鏡18視下において、処置対象となる骨12(生体組織)の骨棘等にプローブ44の切削領域63を突き当てた状態で、エネルギー入力ボタン52を押し下げることで、超音波振動をプローブ44に伝達できる。これによって、除去対象の骨等の硬組織を除去・切除することができる。このとき、図5に示すような位置関係でプローブ44の近傍に関節鏡18の挿入部23が配置されることが多いが、その場合でもプローブ44の切削領域63側がシース51のうち、第1の部位64に対して延ばされた第2の部位65によって保護される。このため、超音波振動するプローブ44が関節鏡18の挿入部23に接触することが防止される。したがって、プローブ44の切削領域63の近傍に関節鏡18の挿入部23が配置される場合、関節鏡18の挿入部23がシース51に近接又は当接されるため、プローブ44への接触が防止され、プローブ44が例えば処置部61Aで折れてしまう(或いは、関節鏡18が破損してしまう)ことが防止される。
【0028】
第1実施形態によれば、超音波処置装置15は、関節鏡18視下手術に用いられる超音波処置装置15であって、超音波振動が伝達される本体部61と、本体部61の先端側に設けられ、前記超音波振動で骨を切削する切削領域63と、を有するプローブ44と、プローブ44の本体部61を覆う第1の部位64と、本体部61の切削領域63が設けられた側を覆うように第1の部位64から延びた第2の部位65と、を有するシース51と、を備える。
【0029】
この構成によれば、第2の部位65がプローブ44の切削領域63が設けられた側を覆うように設けられるため、超音波振動中のプローブ44が関節鏡18に接触する不具合を防止できる。
【0030】
本体部61は、本体部61の長手方向Cに対して湾曲する湾曲部62を有し、シース51の第2の部位65は、湾曲部62のうち切削領域63が設けられた側を覆う。この構成によれば、プローブ44において最も曲率が大きく、最も破損しやすい湾曲部62に対応する部分を第2の部位65で保護することができる。このため、医師が手術中に意図せずプローブ44を関節鏡18に近づけてしまった場合でも、プローブ44の湾曲部62に対応する部分に関節鏡18が接触してしまうことがない。このため、プローブ44が湾曲部62の位置で折れてしまう事態を生ずることを防止できる。また、第2の部位65は、円筒の略半分に相当する形状であり、簡単な形状で実現することができる。このため、第2の部位65を設けたとしても、若干の製造コスト増加で抑えることができる。
【0031】
[第2実施形態]
図6から図8を参照して、第2実施形態の処置システム11について説明する。第2実施形態の処置システム11は、超音波処置装置15のシース51の内側に第2シース76および吸引経路71を有する点で、第1実施形態のものと異なっているが、他の部分は第1実施形態と共通している。このため、主として第1実施形態と異なる部分について説明し、第1実施形態と共通する部分については図示或いは説明を省略する。
【0032】
図6から図8に示すように、超音波処置装置15のハンドピース41は、棒状のプローブ44と、プローブ44の周囲を覆ってプローブ44を保護する中空(円筒形などの筒状)のシース51と、シース51の内側に設けられた円筒形などの筒状の第2シース76(筒状部材)と、シース51と第2シース76との間に設けられた吸引経路71と、吸引経路71に接続された接続口金72と、ハウジング47に設けられたエネルギー入力ボタン52(スイッチ)(図1参照)と、を備える。
【0033】
図6に示すように、超音波処置装置15は、真空ポンプ等で構成されるとともに吸引経路を負圧にする吸引源73と、吸引経路71と吸引源73との間に回収した液や生体組織を溜めるためのタンク74と、をさらに備える。吸引経路71は、接続口金72およびこれに接続されるチューブ75等を介して吸引源73と接続されている。
【0034】
図6図7に示すように、内シースとなる第2シース76(筒状部材)は、外シースとなるシース51の第1の部位64とプローブ44との間に介在されている。第2シース76は、プローブ44(本体部61)を覆うように設けられる。本実施形態において、第2シース76は、シース51の中心軸Dに対して偏心して配置されている。したがって、第2シース76の中心軸Cは、シース51の中心軸Dとは位置ずれしている。図8に示すように、第2シース76は、シース51の内周面の一部51Aと近接した近位部76Aと、近位部76Aとは反対側の遠位部76Bと、を有する。
【0035】
図7図8に示すように、吸引経路71は、シース51の第1の部位64の内側と、第2シース76の外側と、の間の空間に設けられている。より詳細には、吸引経路71は、遠位部76Bと、シース51の内周面(シース51の内周面の一部51Aから外れた位置)と、の間に設けられる。吸引経路71は、先端方向C1側に、外界に露出した吸引口71Aを含んでいる。
【0036】
図6から図8等を参照して、本実施形態の処置システム11を用いた手術方法について説明する。
【0037】
関節腔17内に灌流液を周知の方法で充填する。適切なポータルから関節腔17内に関節鏡18を挿入し、患部の状態を確認する。さらに医師は、別のポータルを利用して関節腔17内にハンドピース41のプローブ44およびシース51を挿入する。プローブ44を関節腔17内に差し込む際に、その途中にある滑膜や滑液包、軟骨等の軟組織の除去にも、超音波振動させたプローブ44を用いることができることは第1実施形態と同様である。
【0038】
医師は、図5に示すように、プローブ44の切削領域63側で、シース51の近傍に関節鏡18の先端部が位置するような位置関係でプローブ44および関節鏡18を位置させる。医師は、関節鏡18視下において、処置対象となる骨12(生体組織)の骨棘等にプローブ44の切削領域63を突き当てた状態で、エネルギー入力ボタン52を押し下げることで、超音波振動をプローブ44に伝達できる。これによって、除去対象の骨等の硬組織を除去・切除することができる。このとき、プローブ44の切削領域63側(湾曲部62に対応する部分)がシース51の第2の部位65によって保護されているため、超音波振動中のプローブ44が関節鏡18に接触してプローブ44が折れてしまうことが防止される。
【0039】
本実施形態では、処置システム11の超音波処置装置15が電源オンとなった状態では、吸引源73が常時作動しており、吸引経路71を介して切削領域63で発生した生体組織の破片や気泡を吸引除去することができる。また、本実施形態では、シース51の中心軸Dに対して第2シース76が偏心して設けられているため、吸引経路71および吸引口71Aの直径が比較的に大きく確保される。このため、ある程度大きい骨の破片についても吸引口71Aおよび吸引経路71を介して回収することができる。
【0040】
本実施形態によれば、シース51の第1の部位64とプローブ44との間でプローブ44を覆うように設けられる筒状部材と、第1の部位64と筒状部材との間の空間に設けられるとともに吸引源73と接続された吸引経路71と、を備える。
【0041】
この構成によれば、処置によって生じた生体組織の破片や気泡を吸引経路71によって除去することができるため、関節鏡視下において明瞭な視野を確保できる。特に、破片の発生個所(プローブ44の切削領域63)の近くで破片を吸引除去することができるため、破片が周囲に拡散する前に破片を除去できる。このため、破片を効率良く除去することができ、灌流液の濁りを防止して関節鏡視下で明瞭な視界を確保できる。また、粉状の小さな破片は、関節鏡18の視野を遮るように舞い上がる。このため、このような破片を切削領域63付近で除去できることは効率的かつ安全な手術を行うために極めて有用である。
【0042】
筒状部材は、シース51の中心軸Dに対して偏心して設けられるとともに、シース51の内周面の一部51Aに近接した近位部76Aと、近位部76Aの反対側に設けられた遠位部76Bと、を有し、遠位部76Bと、シース51の内周面の一部51Aから外れた位置との間に、吸引経路71が設けられる。
【0043】
この構成によれば、シース51の中心軸Dに対して筒状部材の中心軸Cを合致するように配置した場合に比して、吸引経路71の直径を大きく確保することができる。これによって、粉状の小さな破片だけでなく、比較的に直径の大きな破片を吸引除去することも可能となり、破片の除去効率を向上できる。これによって、関節鏡18視下で明瞭な視野を確保して、手術の安全性を向上できる。
【0044】
[第3実施形態]
図9図10を参照して、第3実施形態の処置システムについて説明する。第3実施形態の処置システム11は、超音波処置装置15のシース51の第2の部位65に切欠部81を有する点で、第2実施形態のものと異なっているが、他の部分は第2実施形態と共通している。このため、主として第2実施形態と異なる部分について説明し、第2実施形態と共通する部分については図示或いは説明を省略する。
【0045】
図9図10に示すように、シース51は、円筒形などの筒状をなした第1の部位64と、第1の部位64から延出する第2の部位65と、を備える。第2の部位65は、切削領域63が設けられる側に設けられており、第2の部位65は、例えば長手軸回りに180°の角度に対応するように設けられる。第2の部位65には、その先端部から基端方向C2側に向かって延びるスリット状の切欠部81が設けられる。切欠部81は、長手方向Cに沿って直線的に延びる本体部分81Aと、本体部分81Aの基端方向C2側の端部に設けられる半円形の底部81Bと、を含む。長手方向Cにおける切欠部81の長さは、長手方向Cにおける第2の部位65の長さと略同等である。
【0046】
切欠部81は、第2の部位65だけでなく、第2の部位65と第1の部位64とに跨って設けられていてもよい。この場合、切欠部81は、第2の部位65の先端部から基端方向C2側に延びて、切欠部81の底部81Bがプローブ44を伝わる超音波振動の節位置55(最も先端方向C1側にある節位置)よりも先端方向C1側に位置することが好ましい。
【0047】
切欠部81の長手方向Cと交差する方向に関する幅寸法は、使用する関節鏡18の直径よりも小さく設定される。より具体的には、関節鏡18の直径D1は、例えば、2<D1≦10(mm)の範囲内で設定されるのに対して、切欠部81の幅寸法D2は、例えば、1≦D2≦2(mm)の範囲内に設定される。
【0048】
図9図10等を参照して、本実施形態の処置システム11を用いた手術方法について説明する。
【0049】
関節腔17内に灌流液を周知の方法で充填する。適切なポータルから関節腔17内に関節鏡18を挿入し、患部の状態を確認する。さらに医師は、別のポータルを利用して関節腔17内にハンドピース41のプローブ44およびシース51を挿入する。プローブ44を関節腔17内に差し込む際に、その途中にある滑膜や滑液包、軟骨等の軟組織の除去にも、超音波振動させたプローブ44を用いることができる点は本実施形態でも同様である。
【0050】
医師は、図5に示すように、プローブ44の切削領域63側で、シース51の近傍に関節鏡18の先端部が位置するような位置関係でプローブ44および関節鏡18を位置させる。医師は、関節鏡18視下において、処置対象の骨(生体組織)12の骨棘等にプローブ44の切削領域63を突き当てた状態で、エネルギー入力ボタン52を押し下げることで、超音波振動をプローブ44に伝達できる。これによって、除去対象の骨等の硬組織を除去・切除することができる。このとき、プローブ44の切削領域63側がシース51の第2の部位65によって保護されているため、超音波振動中のプローブ44が関節鏡18に接触してプローブ44が折れてしまうことがない。
【0051】
本実施形態では、第2の部位65にスリット状の切欠部81が設けられている。このため、図5のような位置関係で処置を行ったとしても、関節鏡18によって切欠部81を介してプローブ44およびその切削領域63を視認できる。したがって、本実施形態では、手術の効率性および安全性がさらに向上する。
【0052】
さらに、本実施形態では、処置システム11の超音波処置装置15が電源オンとなった状態では、吸引源73が常時作動しており、吸引経路71を介して切削領域63で発生した生体組織の破片や気泡を吸引除去することができる。また、本実施形態では、シース51の中心軸Dに対して第2シース76が偏心して設けられているため、吸引経路71および吸引口71Aの直径が大きく確保されて大きな破片が吸引可能である点は第2実施形態と同様である。
【0053】
本実施形態によれば、第2の部位65には、本体部61の先端方向C1側とは反対側の基端方向C2側に向かって延びる切欠部81が設けられる。この構成によれば、関節鏡18をプローブ44の切削領域63側において処置を行う際に、プローブ44保護用の第2の部位65によってプローブ44および切削領域63を覆い隠してしまうことがなく、プローブ44および切削領域63の視認性を向上することができる。これによって、医師は、効率的かつ安全に手術を行うことができる。
【0054】
さらに、本体部61の長手方向Cと交差する方向に関する切欠部81の幅寸法は、関節鏡視下手術で用いられる関節鏡18の直径よりも小さい。この構成によれば、第2の部位65に切欠部81を設けた場合でも、関節鏡18が誤って切欠部81内に侵入してしまうことがない。このため、切欠部81を設けたことに起因して、関節鏡18とプローブ44とが接触してしまう危険を防止できる。
【0055】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変形実施することができる。さらに、上記各実施形態の処置システム11を組み合わせて一つの処置システムを構成することも当然に可能である。
【符号の説明】
【0056】
11…処置システム、14…関節鏡装置、15…超音波処置具、18…関節鏡、44…プローブ、51…シース、61…本体部、61A…処置部、62…湾曲部、63…切削領域、64…第1の部位、65…第2の部位、71…吸引経路、76…第2シース、76A…近位部、76B…遠位部、81…切欠部。
【要約】
超音波処置装置(15)はハンドピース(41)を有する。ハンドピース(41)はプローブ(44)及び中空のシース(51)を有する。シース(51)はプローブ(44)の周囲を覆って保護する。プローブ(44)はロッド状の本体部(61)及び本体部(61)の先端に設けられた処置部(61A)を有する。処置部(61A)は切削領域(63)を有する。シース(51)は本体部(61)を覆う第1の部位(64)及び処置部(61A)の湾曲部(62)を覆う第2の部位(65)を有する。医師はプローブ(44)及びシース(51)を関節腔(17)内に挿入し、骨(12)に切削領域(63)を突き当てる。超音波振動がプローブ(44)に伝達されると、骨(12)が切削される。振動中のプローブ(44)に関節鏡(18)が接触すると、プローブ(44)が破損することがある湾曲部(62)が最も破損しやすい。そこで、シース(51)の第2の部位(65)が湾曲部(62)を覆い、関節鏡(18)との接触から保護している。
図1
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図10