特許第6033510号(P6033510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6033510三次元造型サポート材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6033510
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】三次元造型サポート材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   B29C 67/00 20060101AFI20161121BHJP
   B33Y 70/00 20150101ALI20161121BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20161121BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20161121BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   B29C67/00
   B33Y70/00
   B33Y80/00
   C08F2/44 A
   C08F2/50
【請求項の数】12
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-535751(P2016-535751)
(86)(22)【出願日】2016年1月20日
(86)【国際出願番号】JP2016051515
【審査請求日】2016年6月8日
(31)【優先権主張番号】特願2015-12524(P2015-12524)
(32)【優先日】2015年1月26日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-31031(P2015-31031)
(32)【優先日】2015年2月19日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314001841
【氏名又は名称】KJケミカルズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】清貞 俊次
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−010164(JP,A)
【文献】 特開2012−111226(JP,A)
【文献】 特開平08−089779(JP,A)
【文献】 特開2000−154497(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/074331(WO,A1)
【文献】 特開2014−113695(JP,A)
【文献】 特表2002−516346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 67/00
B33Y 70/00
B33Y 80/00
C08F 2/44
C08F 2/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン性単量体(A)1.0〜30.0質量%、非イオン性水溶性単量体(B)2.0〜60.0質量%、非重合性化合物(C)25.0〜80.0質量%と光重合開始剤(D)0.1〜5.0質量%を含有することを特徴とするサポート材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であって、イオン性単量体(A)1.0〜30.0質量%、非イオン性水溶性単量体(B)10.0〜60.0質量%、非重合性化合物(C)25.0〜60.0質量%と光重合開始剤(D)0.1〜5.0質量%を含有し、活性エネルギー線照射によって得られた硬化物が水溶性もしくは水分散性であることを特徴とするサポート材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であって、イオン性単量体(A)1.0〜30.0質量%、非イオン性水溶性単量体(B)2.0〜50.0質量%、非重合性化合物(C)40.0〜80.0質量%、光重合開始剤(D)0.1〜5.0質量%と多官能性不飽和単量体(E)0.5〜5.0質量%を含有し、活性エネルギー線照射によって得られた硬化物が水膨潤性であることを特徴とするサポート材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
多官能性不飽和単量体(E)がポリウレタン(メタ)アクリルアミドであることを特徴とする請求項3に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
イオン性単量体(A)は、カチオン性単量体(a1)又はアニオン性単量体(a2)である請求項1〜4のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
イオン性単量体(A)が下記一般式(1)で示される化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【化1】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を、Rは及びRは各々独立に炭素数1〜3のアルキル基で互いに同一であっても異なっていてもよく、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルケニル基、又はベンジル基を表し、Yは酸素原子又はNHを表し、Zは炭素数1〜3アルキレン基を表し、Xはアニオンを表す。)
【請求項7】
非イオン性水溶性単量体(B)は、N−置換(メタ)アクリルアミドである請求項1〜6のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
非イオン性水溶性単量体(B)は、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド及び/又はN−アクロイルモルホリンであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
非重合性化合物(C)は、水及び/又は非重合性水溶性有機化合物である請求項1〜8のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
非重合性化合物(C)は、アルキレングリコール構造を含有する化合物である前記請求項1〜9のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を含有する三次元造形用インクジェットインク組成物。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物を構成成分として含有することを特徴とするサポート材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加製造における形状支持用サポート材を形成するために用いられる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、該組成物から形成されるサポート材、該サポート剤を用いた光三次元造形方法、特にインクジェット方式の光三次元造形方法、及びこれらの製造方法で得られる立体造形物に関する。
【背景技術】
【0002】
付加製造技術とは三次元の形状データをもとに、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、粉末樹脂、粉末金属等を溶融押出やインクジェット、レーザー光や電子ビーム等を用いて融着、硬化させることによって、薄膜状に積み重ねて目的の立体造形物を得る技術である。形状データから直接造形物が得られ、中空やメッシュ状等の複雑な形状を一体成型できるため、小ロットもしくはオーダーメイドのテストモデル作成を始め、医療、航空機産業、産業用ロボット等利用分野が広がっている。
【0003】
立体造形物を得るには一般的に3Dプリンターと呼ばれる付加製造装置が使用されている。具体的には、アクリル等の光硬化樹脂を用いたインクジェット紫外線硬化方式、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂等の熱可塑性樹脂を用いた熱溶解積層方式、他にも粉末造形方式や光造形方式の3Dプリンターが知られている。
【0004】
付加製造技術では複雑な形状の立体造形物を形成できるが、中空構造を製造する際に、立体造形物が自重により変形することを防止するため、形状支持用の支持体が必要になる。粉末原料を結着或いは融着させていく粉末造形方式の場合には、未結着、未融着の粉末が支持体として作用し、成形後には払い落とすことにより立体造形物を得ることが出来る。一方、光硬化性樹脂を段階的に硬化していくインクジェット方式や、熱可塑性樹脂を溶融押出して積層していく熱溶解積層方式においてはモデル材からなる立体造形物とサポート材からなる支持体をほぼ同時に形成していく必要があるので、成形後立体造形物からサポート材を除去する工程を設けなければならない。
【0005】
しかし、成形後のサポート材除去は決して簡単な作業ではない。サポート材は、目的とする立体造形物と融着、接着もしくは粘着しているため、造形物から剥離する作業において、通常ヘラやブラシ等を用いて手作業で剥離したり、ウォータージェットで吹き飛ばしたり等の手段が用いられるが、立体造形物破損の危険性があるため丁寧な作業が必要となり、大きな負担となっていた。
【0006】
そこでサポート材として熱可塑性樹脂や熱溶融するワックス、水や有機溶剤に溶解可能な材料、水膨潤ゲル等を使用し、サポート材の性質に応じて加熱、溶解、化学反応、水圧洗浄等の動力洗浄や電磁波照射、熱膨張差等を利用した分離方法が提案されている(特許文献1、2)。具体的にはモデル材との剥離が行いやすい樹脂を用いたり(特許文献3、4)、サポート材にワックスを用いることで熱による溶融除去を行ったり(特許文献5)、アルカリや水、有機溶剤に溶解、分散させる等の手段(特許文献6〜11)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の電解質溶液を洗浄液に用い、攪拌や通電によりサポート材を除去する手段(特許文献12)が提案されている。
【0007】
しかしこれらのサポート材においても、細部に詰まった部分を効率的に除去することは極めて困難である。また、ワックス等の熱による溶融除去の方法を用いる場合、除去後に立体造形物の表面に油状の残渣が付着するため、ふき取り等の立体造形物に対する仕上げ作業が必要となり、更に加熱によるワックスがモデル材に浸透してしまい、立体造形物の表面状態を悪化させる問題があった。
【0008】
一方、アルカリ性水溶液、水や有機溶剤を用いて、サポート材を溶解、分散或いは膨潤させて除去する場合においても、溶解、分散または膨潤で崩壊されたサポート材が洗浄槽に浸漬されている立体造形物に付着し、立体造形物の表面が汚染され、同様に表面ふき取り等の立体造形物に対する仕上げ作業が必要となっていた。また、サポート材除去後のアルカリ性水溶液、有機溶剤及び、酸性物質を含有したサポート材の除去から発生した酸性水溶液について、それぞれに合う処理工程や回収工程を設ける必要があった。
【0009】
更に活性エネルギー線を用いたインクジェット印刷方式においては、サポート材とモデル材が硬化前に接触面付近に発生する相溶や混合による界面の造型精度が低下し、サポート材除去後に接触部の表面が荒れる等、立体造形物の仕上がり精度の低下を招いていた。
【0010】
この様な状況のもとで、三次元光造形用サポート材として、簡便に除去でき、除去後の仕上がり工程が不要、かつ高精度の立体造形物を取得できるものの開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−035299号公報
【特許文献2】特開2012−096428号公報
【特許文献3】米国特許第5,503,785号公報
【特許文献4】WO2001−068375号公報
【特許文献5】特開2004−255839号公報
【特許文献6】特表2008−507619号公報
【特許文献7】特表2011−005658号公報
【特許文献8】特開2010−155889号公報
【特許文献9】特開2012−111226号公報
【特許文献10】特開2014−083744号公報
【特許文献11】WO2014−051046号公報
【特許文献12】特開2011−020412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、サポート材に支持された粗造形物を洗浄液に浸漬するだけで、サポート材を低温、短時間で効率よく除去でき、かつ仕上げ工程が必要とせず、高造型精度の立体造形物を取得できるサポート材及び該サポート材を形成するために用いられる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物及びそれを硬化して得られるサポート材を用いることを特徴とする、高効率、高精度で立体造形物を取得できる三次元光造形法及びその成形品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、サポート材としてイオン性単量体を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物を用いることにより前記の課題を解決し、目標を達成しえることを見出し、本発明に至ったものである。
【0014】
すなわち、本発明は
(1)イオン性単量体(A)1.0質量%以上を含む三次元造型サポート材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、
(2)イオン性単量体(A)1.0〜30.0質量%、非イオン性水溶性単量体(B)2.0〜60.0質量%、非重合性化合物(C)25.0〜80.0質量%と光重合開始剤(D)0.1〜5.0質量%を含有することを特徴とする前記(1)に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、
(3)前記(1)又は(2)に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であって、イオン性単量体(A)1.0〜30.0質量%、非イオン性水溶性単量体(B)10.0〜60.0質量%、非重合性化合物(C)25.0〜60.0質量%と光重合開始剤(D)0.1〜5.0質量%を含有し、活性エネルギー線照射によって得られた硬化物が水溶性もしくは水分散性であることを特徴とするサポート材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、
(4)前記(1)又は(2)に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であって、イオン性単量体(A)1.0〜30.0質量%、非イオン性水溶性単量体(B)2.0〜50.0質量%、非重合性化合物(C)40.0〜80.0質量%、光重合開始剤(D)0.1〜5.0質量%と多官能性不飽和単量体(E)0.5〜5.0質量%を含有し、活性エネルギー線照射によって得られた硬化物が水膨潤性であることを特徴とするサポート材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、
(5)多官能性不飽和単量体(E)がポリウレタン(メタ)アクリルアミドであることを特徴とする前記(4)に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、
(6)イオン性単量体(A)は、カチオン性単量体(a1)及び/又はアニオン性単量体(a2)である前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、
(7)イオン性単量体(A)が下記一般式(1)で示される化合物であることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、
【化1】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を、Rは及びRは各々独立に炭素数1〜3のアルキル基で互いに同一であっても異なっていてもよく、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルケニル基、又はベンジル基を表し、Yは酸素原子又はNHを表し、Zは炭素数1〜3アルキレン基を表し、X-はアニオンを表す。)
(8)非イオン性水溶性単量体(B)は、N−置換(メタ)アクリルアミドである前記(1)〜(7)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、
(9)非イオン性水溶性単量体(B)は、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド及び/又はN−アクロイルモルホリンであることを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、
(10)非重合性化合物(C)は、水及び/又は非重合性水溶性有機化合物である前記(1)〜(9)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、
(11)非重合性化合物(C)は、アルキレングリコール構造を含有する化合物である前記(1)〜(10)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、
(12)前記(1)〜(11)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を含有する三次元造形用インクジェットインク組成物、
(13)前記(1)〜(11)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を活性エネルギー線照射により硬化して得られることを特徴とするサポート材
を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、イオン性単量体を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が付加製造により成形されると同時に或いは成形される直後に活性エネルギー線照射により硬化され、サポート材を形成し、サポート材及びそれに支持されたモデル材と一体になった粗造形物を得る。得られる粗造形物を水等の洗浄液に浸漬することで、サポート材が洗浄液に溶解や分散し、もしくは洗浄液による膨潤しモデル材から剥離することで、立体造形物から容易にサポート材を除去することが出来る。更に、イオン性単量体を含むことで活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の極性が高くなり、モデル材用の硬化性樹脂組成物との相分離性が高く、表面汚染せずかつ高造型精度の立体造型物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられるイオン性単量体(A)は、アンモニウム塩、イミダゾリウム塩、コリン塩、スルホニウム塩、ピラゾリウム塩、オキサゾリウム塩、ピリジニウム塩、ピロリジニウム塩、ホスホニウム等からなる群から選ばれる少なくとも1種のカチオン性基とエチレン性不飽和結合を1分子内に有するカチオン性単量体(a1)、カルボン酸塩、スルホン酸塩及びリン酸塩等からなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオン性基とエチレン性不飽和結合を1分子内に有するアニオン性単量体(a2)もしくは、上記の少なくとも1種のカチオン性基と上記の少なくとも1種のアニオン性基を有し、更にエチレン性不飽和結合基を1分子内に有するベタイン型単量体(a3)である。これらのイオン性単量体は1種類単独で使用してもよいし、また2種類以上併用してもよい。
【0017】
本発明に用いられるカチオン性単量体(a1)として具体的には、カチオンとして、例えば、エチレン性不飽和結合を有するアンモニウム、イミダゾリウム、コリン、スルホニウム、ピラゾリウム、オキサゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ホスホニウム等が挙げられる。対アニオンとしては、Cl、Br、I等のハロゲンイオン又はOH、CHCOO、NO、ClO、PF、BF、HSO、CHSO、CFSO、CHSO、CSO、(CFSO、SCN等の無機酸アニオン又は有機酸アニオンから選ばれる少なくとも1種のイオンである。
【0018】
本発明に用いられるカチオン性単量体(a1)に含有するエチレン性不飽和結合として、例えば、ビニル基、アリル基、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基等が挙げられる。また、活性エネルギー線硬化性、他の共重合できる単量体との共重合性がよい観点から、カチオン性単量体(a1)は下記一般式(1)(式中、Rは水素原子またはメチル基を、R及びRは各々独立に炭素数1〜3のアルキル基で互いに同一であっても異なっていてもよく、Rは炭素数1〜3のアルキル基、またはベンジル基を表し、Yは酸素原子またはNHを表し、Zは炭素数1〜3アルキレン基を表し、XはCl、Br、I等のハロゲンイオン又はOH、CHCOO、NO、ClO、PF、BF、HSO、CHSO、CFSO、CHSO、CSO、(CFSO、SCN等のアニオンを表す。)で示される化合物であることが好ましく、また、(2−アクリル酸エチル)トリメチルアンモニウムメチルスルホネートと(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムp−トルエンスルホネートが非イオン性水溶性単量体(B)との相溶性が高く、付加造型装置や洗浄槽の金属部品の腐食を抑制できるためより好ましい。
【化2】
【0019】
本発明に用いられるアニオン性単量体(a2)として具体的には、アニオンとして、例えば、(メタ)アクリル酸イオン、(メタ)アクリル酸エチルカルボン酸イオン、(メタ)アクリル酸エチルコハク酸イオン、(メタ)アクリル酸エチルフタル酸イオン、(メタ)アクリル酸エチルヘキサヒドロフタル酸イオン、マレイン酸イオン、テトラヒドロフタル酸イオン、イタコン酸イオン、(メタ)アクリル酸エチルスルホン酸イオン、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸イオン、ビニルカルボン酸イオン、ビニルスルホン酸イオンン、(メタ)アクリル酸エチルリン酸イオン、ビニルリン酸イオン等が挙げられる。対カチオンとしては、Li、Na、K、Ca2+、Mg2+等の無機カチオン、アンモニウム、イミダゾリウム、コリン、スルホニウム、オキサゾリウム、ピラゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ホスホニウム等の有機カチオンから選ばれる少なくとも1種のイオンである。
【0020】
本発明に用いられるベタイン型単量体(a3)として具体的には、(メタ)アクリロイルオキシアルキル−N,N−ジアルキルアンモニウム−ω−N−アルキルカルボキシベタイン、(メタ)アクリルアミドオキシアルキル−N,N−ジアルキルアンモニウム−ω−N−アルキルカルボキシベタイン等のカルボキシベタイン型モノマー、(メタ)アクリロイルオキシアルキル−N,N−ジアルキルアンモニウム−ω−N−アルキルスルホベタイン、(メタ)アクリルアミドオキシアルキル−N,N−ジアルキルアンモニウム−ω−N−アルキルスルホベタイン等のスルホベタイン型モノマー、(メタ)アクリロイルオキシアルキル−N,N−ジアルキルアンモニウム−ω−N−アルキルホスホベタイン、(メタ)アクリルアミドオキシアルキル−N,N−ジアルキルアンモニウム−ω−N−アルキルホスホベタイン等のホスホベタイン型単量体や2−(メタ)アクリロイルオキシ−N−メチルカルボキシ−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のイミダゾリニウムベタイン型単量体等が挙げられる。これらのベタイン型単量体は1種類単独で使用してもよいし、また2種類以上併用してもよい。
【0021】
また、これらのイオン性単量体であるカチオン性単量体(a1)、アニオン性単量体(a2)とベタイン型単量体(a3)は、1種単独で使用してもよいし、2種類以上併用してもよい。非イオン性水溶性単量体(B)等のサポート材中の他成分との相溶性や共重合性、及びモデル材を形成する樹脂組成物との非相溶性とのバランスを取る観点から、カチオン性単量体(a1)とアニオン性単量体(a2)がより好ましく、カチオン性単量体(a1)が更に好ましい。
【0022】
本発明におけるイオン性単量体(A)の含有量は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物全体に対して1.0質量%以上である。1.0質量%以上であれば、硬化後のサポート材が洗浄液に対する溶解性や分散性、或いは洗浄液に対する膨潤性、モデル材に対する分離性が良好であるため好ましい。また、イオン性単量体(A)の含有量は、1.0〜30.0質量%であることがより好ましい。30.0質量%以下であれば、得られるサポート材は非重合性化合物(C)のブリードアウトが抑制でき、溶解や分散によるサポート材を除去する工程では、十分な溶解速度、分散速度を有し、また、膨潤剥離によるサポート材を除去する工程では、洗浄液に対する溶解率を抑制でき、十分な膨潤率を保てるため好ましい。更に5.0〜20.0質量%であることがより好ましい。
【0023】
本発明に用いられる非イオン性水溶性単量体(B)は、水溶性のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、水溶性のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、水溶性のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフラフリル(メタ)アクリレート、水溶性のN−置換(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。また本発明において、水溶性とは、水に対する溶解度(25℃)が5(g/100g)以上であることを意味するものとする。これらの非イオン性水溶性単量体は1種類単独で使用してもよいし、また2種類以上併用してもよい。
【0024】
本発明に用いられる水溶性のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
本発明に用いられる水溶性のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートとしては、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
本発明に用いられる水溶性のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートとしては、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
本発明に用いられる水溶性のN−置換(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、炭素数が1〜3のアルキル基を導入したN−アルキル(メタ)アクリルアミド、N、N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、炭素数が1〜6のヒドロキシアルキル基を導入したN−ヒロドキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(ヒロドキシアルキル)(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシアルキル−N−(4−ヒドロキシフェニル)(メタ)アクリルアミド、炭素数が1〜6のヒドロキシアルキル基および炭素数1〜6のアルキル基を導入したN−アルキル−N−ヒロドキシアルキル(メタ)アクリルアミド、炭素数が1〜6のアルコキシ基と炭素数1〜6のアルキレン基からなるアルコキシアルキル基を導入したN−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(アルコキシアルキル)(メタ)アクリルアミド、炭素数が1〜6のアルコキシ基と炭素数1〜6のアルキレン基からなるアルコキシアルキル基、炭素数が1〜6のアルキル基を導入したN−アルキル−N−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドや、N−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
【0028】
本発明に用いられる非イオン性水溶性単量体(B)としては、N−置換(メタ)アクリルアミド類が水への溶解度が大きく、また活性エネルギー線照射による硬化性が高いため好ましい。また皮膚刺激性が低く安全性が高くて取り扱い易いN−アクロイルモルホリン(皮膚一次刺激性インデックスPII=0.5)、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド(PII=0.0)が特に好ましい。
【0029】
本発明の非イオン性水溶性単量体(B)の含有量は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物全体に対して2.0〜60.0質量%であることが好ましい。2.0質量%以上である場合には、硬化後のサポート材から非重合性化合物(C)のブリードアウトが抑制でき、また、硬化後のサポート材が洗浄液に対する溶解性や分散性、或いは洗浄液に対する膨潤性、モデル材に対する分離性が良好であるため好ましい。また、多官能性不飽和単量体(E)を含まない場合、(B)を10.0質量%以上含有すると、活性エネルギー線に対して十分な硬化性を示し、非重合性化合物(C)がブリードアウトしないため、より好ましい。一方、60.0質量%以下である場合には、得られるサポート材の硬化収縮率や硬化時の発熱が低く発泡が発生し難く、立体造形物が精度良く製造出来るため好ましい。また、多官能性不飽和単量体(E)を含む場合、硬化時の発熱及び硬化収縮率を制御しやすい観点から、(B)を50.0質量%以下含有することがより好ましい。
【0030】
本発明で用いる非重合性化合物(C)としては、イオン性単量体(A)、非イオン性水溶性単量体(B)とは相溶するが、それらと反応せず、かつ非重合性のものであれば特に限定されることはない。例えば、アルキレングリコール類、ポリアルキレングリコール類、グリコールエーテル類、グリコールエステル類、カルボン酸エステル類、ケトン類、水、液状ポリオレフィン類、液状ポリオレフィン誘導体、液状ポリエステル類、液状ポリカーボネート類、イオン性液体等が挙げられ、これらの非重合性化合物は、1種を単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
また、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化して得られたサポート材が水等洗浄液に溶解や分散し、もしくは洗浄液による膨潤して除去する観点から、非重合性化合物(C)は、水及び/又は非重合性水溶性有機化合物である事が好ましい。また本発明において、水溶性とは、水に対する溶解度(25℃)が5(g/100g)以上であることを意味するものとする。
【0032】
本発明に用いられる非重合性水溶性有機化合物としては、例えば、炭素数2から4のアルキレン基、炭素数1から4のアルキル基等からなる水溶性のアルキレングリコール、ジアルキレングリコール、トリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル、トリアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル、アルキレングリコールジアルキルエーテル、ジアルキレングリコールジアルキルエーテル、トリアルキレングリコールジアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールジアルキルエーテル、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、トリアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0033】
本発明で用いる非重合性化合物(C)の含有量は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物全体に対して25.0〜80.0質量%である。25.0質量%以上である場合には、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の粘度が低く、操作性が良好であり、また、硬化して得られるサポート材の硬化収縮率が低く、立体造形物を精度良く製造できるため好ましい。80質量%以下である場合には、非重合性化合物(C)のブリードアウトが抑制され、活性エネルギー線により重合して得られる硬化物の引張強度、硬度、弾性等が十分に満足でき、十分な支持体としての性能を示すため好ましい。更に、硬化物が洗浄液に溶解や分散する場合には、非重合性化合物(C)の含有量は25.0〜60.0質量%であることがより好ましく、35.0〜50.0質量%であることが更に好ましい。また、硬化物が洗浄液による膨潤する場合には、膨潤率が大きく維持できるため、40.0〜80.0質量%であることがより好ましく、50.0〜70.0質量%であることが更に好ましい。
【0034】
本発明で用いる光重合開始剤(D)としては、アセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、αアミノケトン系、キサントン系、アントラキノン系、アシルフォスフィンオキサイド系、高分子光開始剤系等の通常のものから適宜選択すればよい。例えば、アセトフェノン類としては、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾイン類としては、ベンゾイン、α−メチルベンゾイン、α−フェニルベンゾイン、α−アリルベンゾイン、α−ベンゾイルベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン類としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、αアミノケトン類としては、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−(4−モルホリニル)フェニル)−1−ブタノン、2−(ジメチルアミノ)−2−(4−メチルフェニル)メチル−1−(4−(4−モルホリニル)フェニル)−1−ブタノン、キサントン類としては、キサントン、チオキサントン、アントラキノン類としては、アントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、アシルフォスフィンオキサイド類としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、高分子光開始剤としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパン−1−オンのポリマー等が挙げられる。これらの光重合開始剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
本発明で用いる光重合開始剤(D)の含有量は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物全体に対して0.1〜5.0質量%が好ましい。0.1質量%以上である場合には、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を活性エネルギー線照射により十分に重合反応を起こし、得られるサポート材中の残存モノマー量が少なく、硬化物の引張強度、硬度、弾性等が良く、また、非重合性化合物(C)のブリードアウトが抑制できるため好ましい。5質量%以下である場合には、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物のポットライフが長く、保管中のゲル化等のトラブルが発生しないため好ましく、0.5〜3質量%がより好ましい。
【0036】
本発明に用いる多官能性不飽和単量体(E)としては、2官能モノマー、3官能以上のモノマーを用いることができ、具体例としては、2官能モノマーとしては、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ポリエステルジ(メタ)アクリレート類、ポリカーボネートジ(メタ)アクリレート類、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート類、ポリウレタン(メタ)アクリルアミド類が挙げられ、また、3官能以上のモノマーとしては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。特に、ポリウレタン(メタ)アクリルアミド類が、活性エネルギー線に対する硬化性が高いため好ましい。これらの多官能性不飽和単量体(E)については、2種以上併用することも可能である。
【0037】
アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類としては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(ネオペンチルグリコール)ジ(メタ)アクリレート、トリ(ネオペンチルグリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(ネオペンチルグリコール)ジ(メタ)アクリレート、ジ(3-メチル−1,5−ペンタンジオール)ジ(メタ)アクリレート、トリ(3-メチル−1,5−ペンタンジオール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(3-メチル−1,5−ペンタンジオール)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
ポリエステルジ(メタ)アクリレート類としては、分子中にポリエステル骨格を含む両末端又は側鎖に水酸基を有するポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸がエステル結合したものである。ポリエステルポリオールの多価カルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などが挙げられ、ジオール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。
【0040】
ポリカーボネートジ(メタ)アクリレート類としては、分子中にカーボネート骨格を含む両末端又は側鎖に水酸基を有するポリカーボネートポリオールと(メタ)アクリル酸がエステル結合したものである。ポリカーボネートポリオールのカルボニル成分としてホスゲン、クロロギ酸エステル、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート及びアルキレンカーボネート等が挙げられ、ジオール成分としてはエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。
【0041】
ポリウレタンジ(メタ)アクリレート類としては、分子中に1個以上の水酸基を有するアルコール化合物と、1分子内に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物と、水酸基を有する(メタ)アクレート化合物との付加反応で得られる化合物であり、合成方法は、特に限定することがなく、公知のウレタン化反応技術により合成することができる。
【0042】
ポリウレタン(メタ)アクリルアミド類としては、分子中に1個以上の水酸基を有するアルコール化合物と、1分子内に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物と、水酸基を有する(メタ)アクリルアミド化合物との付加反応で得られる化合物であり、合成方法は、特に限定することがなく、公知のウレタン化反応技術により合成することができる。
【0043】
分子中に1個以上の水酸基を有するアルコール化合物は主鎖骨格の末端又は側鎖に1個以上の水酸基を有するエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタングリコール、2−メチル−1,3−プロピレングリコール、2−メチル−1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリメチルペンタングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリグリセリン、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水添ポリイソプレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。これらのポリオールは、1種を単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また非重合性化合物(C)がアルキレングリコール構造を含む化合物が好ましい事から、アルキレングリコール構造を持つエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等を用いた場合にウレタン(メタ)アクリルアミド類の非重合性化合物との相溶性が高くなるため好ましい。
【0044】
1分子内に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソンアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート類、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、2,5−ノルボルナンジイソシアネート、2,6−ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類、又は、これらのアダクトタイプ、イソシアヌレートタイプ、ビュレットタイプ等の多量体が挙げられる。これらのポリイソシアネートは、1種を単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
本発明に用いられる水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、炭素数が1〜6のヒドロキシアルキル基を導入したヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、炭素数が1〜6のアルキレングリコール基を導入したジアルキレングリコール(メタ)アクリレート、トリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0046】
本発明に用いられる水酸基を有する(メタ)アクリルアミド化合物としては、例えば、炭素数が1〜6のヒドロキシアルキル基を導入したN−ヒロドキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(ヒロドキシアルキル)(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシアルキル−N−(4−ヒドロキシフェニル)(メタ)アクリルアミド、炭素数が1〜6のヒドロキシアルキル基および炭素数1〜6のアルキル基を導入したN−アルキル−N−ヒロドキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N−アルキル−N−(4−ヒドロキシフェニル)(メタ)アクリルアミド、4−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(4−ヒドロキシフェニル)(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、特にN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドは、硬化性が高く、皮膚刺激性(PII=0)が低いので安全性が高くて取り扱い易く、さらに好ましい。
【0047】
多官能性不飽和単量体(E)の使用量は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物全体に対して0.5〜5.0質量%が好ましい。0.5質量%以上である場合には、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を活性エネルギー線照射により重合して得られる硬化物の引張強度、硬度、弾性等が良く、かつ、非重合性化合物(C)のブリードアウトが抑制できるため好ましい。また、5.0質量%以下である場合には、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の粘度が低く操作性が良好であり、硬化物の洗浄液に対する膨潤性が大きいため好ましい。
【0048】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は活性エネルギー線照射により硬化するが、本発明の活性エネルギー線とは、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するもの、すなわち、可視光、電子線、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線等の光エネルギー線等を指す。活性エネルギー線源としては、例えば、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LEDランプ、電子線加速装置、放射性元素等の線源が挙げられる。照射する活性エネルギー線としては、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の保存安定性と硬化速度および有害性の低さから紫外線が好ましい。
【0049】
必要な活性エネルギー線照射量(積算光量)は、特に制限するものではない。活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に用いられるイオン性単量体(A)、非イオン性水溶性単量体(B)、および光重合開始剤(D)の種類と添加量によって変動し、50mJ/cm以上1000mJ/cm以下であることが好ましい。積算光量が50mJ/cm以上であると、十分な硬化が進行し、硬化物の引張強度、硬度、弾性等が良好であり、非重合性化合物(C)のブリードアウトが抑制されるため好ましい。また、積算光量が1000mJ/cm以下であると、活性エネルギー線の照射時間が短く、付加製造における生産性向上につながるため、好ましい。
【0050】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、上記イオン性単量体(A)、非イオン性水溶性単量体(B)、多官能性不飽和単量体(E)以外にエチレン性不飽和化合物(F)を更に使用することができる。エチレン性不飽和化合物(F)としては単官能の(メタ)アクリレートやビニル化合物であり、また1種類単独で使用してもよいし、2種類以上併用してもよい。エチレン性不飽和化合物(F)の添加量は、本発明による活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が発現する特性に悪影響を与えない程度であれば特に限定されず、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物全体に対して10質量%以下の範囲が好ましい。
【0051】
前記の単官能(メタ)アクリレートは、例えば、炭素数が1〜22の直鎖、分岐、環状のアルキル基を導入したアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシ基と炭素数1〜4のアルキレングリコール基からなる官能基を導入したフェノキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジアルキレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートや、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0052】
前記のビニル化合物として、酢酸ビニル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、スチレン、炭素数1〜18のアルキル基を導入したp−アルキルスチレン、N−ビニルカプロラクタム等が挙げられる。
【0053】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて各種添加剤を使用できる。添加剤としては、熱重合禁止剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線増感剤、防腐剤、リン酸エステル系およびその他の難燃剤、界面活性剤、湿潤分散材、帯電防止剤、着色剤、可塑剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、顔料、有機フィラー、無機フィラー等が挙げられる。これら各種樹脂や添加剤の添加量は、本発明による活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が発現する特性に悪影響を与えない程度であれば特に限定されず、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物全体に対して5質量%以下の範囲が好ましい。
【0054】
熱重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、フェノチアジン、ピロガロール、β−ナフトール等が挙げられる。
【0055】
老化防止剤としては、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソール等のヒンダードフェノール系、ベンゾトリアゾール系、及びヒンダードアミン系の化合物が挙げられる。
【0056】
界面活性剤としては、例えばノニルフェノールのポリエチレンオキサイド付加物、ラウリン酸ポリエチレンオキサイド付加物、ステアリン酸ポリエチレンオキサイド付加物等のアルキレンオキサイド付加型非イオン界面活性剤、ソルビタンパルミチン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸トリエステル等の多価アルコール型非イオン界面活性剤、アセチレン系グリコール化合物型非イオン界面活性剤、アセチレン系ポリアルキレングリコール化合物型非イオン界面活性剤、パーフルオロアルキルポリエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベタイン等のフッ素含有界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンオイル、(メタ)アクリレート変性シリコーンオイル等の変性シリコーンオイル、両性の高分子界面活性剤(ビッグケミージャパン株式会社製、BYKJET−9150、BYKJET−9151等)が挙げられる。
【0057】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の使用方法としては、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を所定の形状パターンに形成すると同時に、または形成した直後、活性エネルギー線を照射して硬化させことである。また、インクジェット方式により吐出し、活性エネルギー線照射により硬化させる光造型法に用いることが好ましい。活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の安定吐出を行う観点から、粘度は25℃において1mPa・sから100mPa・sが好ましく、吐出温度は20〜80℃の範囲が好ましい。吐出温度を高温に設定すると活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の粘度が低下し、高粘度の樹脂を吐出できるが、熱による変性や重合が起こりやすくなる。活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の熱的な安定性の観点から80℃より低温での吐出が好ましいため、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の粘度が80mPa・s以下であることがより好ましい。
【0058】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の使用方法としては、インクジェット方式により活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の微小液滴をインク吐出ノズルから所定の形状パターンを描画するよう吐出してから活性エネルギー線を照射して硬化薄膜を形成する方式が好ましい。具体的には、まず造形すべき物体の三次元CADデータを基に、三次元造形用のデータとして、造形する立体造形物に対応するモデル材の硬化薄膜を積層する方向にスライスした断面形状のデータおよび、造形時にモデル材を支持するためのサポート材の硬化薄膜を積層する方向にスライスしたデータを作成する。サポート材の設置データは、例えば上方位置のモデル材がいわゆるオーバーハングしている部分がある場合、下方位置のモデル材の周囲にサポート材を配置することにより、このオーバーハング部分を下方より支持するようにサポート材が設けられる様に作成する。モデル材およびサポート材の断面形状データに応じた所望のパターンでインクジェットノズルからモデル材用の光硬化性インクまたはサポート材の原料となる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を吐出して該樹脂の薄膜層を形成した後、光源から硬化光を照射して該樹脂の薄膜層を硬化させる。次いで、該硬化させた樹脂の薄膜層の上に、次の断面形状に応じてインクジェットノズルからモデル材用の光硬化性インク及び/またはサポート材用の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を供給する。以上を繰り返すことにより、各断面形状に相当する樹脂硬化層を積層して、目的とする立体造形物および支持体を形成する。支持体は通常、平面ステージと立体造形物との間に形成させる。支持体を形成するときにはサポート材形成用の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物をインクジェットノズルから供給し、立体造形物を形成するときにはモデル材用の光硬化性インクをインクジェットノズルから供給する。モデル材用の光硬化性インクとサポート材形成用の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は同一のインクジェットノズルから吐出してもよいし、別個のインクジェットノズルから吐出してもよい。
【0059】
本発明のサポート材は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を活性エネルギー線照射により硬化して得ることができ、また三次元造形における形状支持用サポート材として使用することにより、立体造形物がサポート材により支持された状態の粗造形物を得ることができる。得られた粗造形物は洗浄液に浸漬し、サポート材を洗浄液に溶解、分散もしくは膨潤させて除去することによって立体造形物を簡便に取得することができる。また、洗浄液により膨潤させる場合、サポート材が立体造形物(モデル材)との膨潤率の差から内部応力が生じ、外力を加えることなく立体造形物から剥離、除去することができる。さらに、膨潤剥離したサポート材が洗浄液を吸収した膨潤ゲルとなり、洗浄液と二相分離するため、立体造形物の表面は洗浄液に溶解した樹脂により汚染が認められず、仕上工程としては洗浄液を揮発させることで除去すれば良く、工程を簡略化できる。また膨潤したサポート材は洗浄液と相分離しているため、ろ過により洗浄液から容易に分離回収でき、環境負荷を減らす効果も期待できる。
【0060】
本発明のサポート材の洗浄には、通常水を用い、水としては水道水、純水、イオン交換水等を用いる。また本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させて得られたサポート材を溶解、分散または膨潤させ、立体造形物が溶解、膨潤しないことができれば、アルカリ水溶液や電解質溶液、有機溶剤を用いる事も可能である。アルカリ水溶液としては水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物の水溶液が挙げられ、電解質溶液としては炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の電解質の水溶液が挙げられる。有機溶剤としてアルコール類、ケトン類、アルキレングリコール類、ポリアルキレングリコール類、グリコールエーテル類、グリコールエステル類等が挙げられる。これらの水、アルカリ水溶液、電解質溶液、有機溶剤は、1種を単独、又は2種以上を組み合わせて用いることが出来る。立体造形物を溶解しないことと、またサポート材が洗浄液に溶解、分散もしくは膨潤し易いこと、更に安全性の面から洗浄液としては水が特に好ましい。
【0061】
サポート材の洗浄時間としては、24時間以下が好ましく10時間以下がより好ましい。生産効率の点から洗浄時間が24時間以下であれば、一日毎に洗浄サイクルを繰り返す事ができて効率が良いため好ましく、10時間以下であれば昼間に製造した造形物を夜間に洗浄し、翌日には洗浄が完了できるためより効率よく生産可能なためより好ましい。また洗浄時間は短い方は生産効率が上がるため好ましく、5時間以下であればより好ましく、1時間以下であれば更に好ましい。
【0062】
サポート材の洗浄温度としては、0℃〜100℃の任意の温度において可能であるが、高温での洗浄では立体造形物を形成する樹脂が熱による変形を起こす可能性があり、一方でサポート材の溶解、分散もしくは膨潤は温度が高いほうが速やかに進むため10℃以上40℃以下での洗浄がより好ましい。
【0063】
サポート材の形状は立体造形物の形状を支持する様に設けられれば任意であるが、本発明のサポート材は洗浄水に浸漬することで、溶解、分散もしくは膨潤により除去可能な支持体として得ることができ、粗造形物の任意の外表面に接して多数の支持体を設けることも可能である。このように多数の支持体を設けることにより、自重による変形を防止するだけでなく、造形終了部分に対して光を遮蔽する効果があり、過剰な活性エネルギー線照射による粗造形物の劣化を防止することもできる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下において「部」及び「%」は特記しない限りすべて質量基準である。
【0065】
製造例1 ウレタンアクリルアミド(E−1)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却器を備えた300mLセパラフラスコに水酸基価374mgKOH/g、数平均分子量300の末端水酸基を有するポリエチレングリコール44.07g、重合禁止剤としてメチルハイドロキノン0.20gを添加し、そこにポリイソシアネートとしてトリレンジイソシアネート38.31gを添加し、窒素雰囲気中で攪拌しながら、60℃で3時間反応させた。更に、この反応物にN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド17.40g、および触媒としてジブチルスズジラウレート0.02gを添加し、60℃で3時間反応して、IR測定で2230cm−1のイソシアネート基の吸収ピークが消失したことを確認した。その後、反応容器を冷却し、重量平均分子量4,800のウレタンアクリルアミド(E−1:PEG300/TDI系ウレタンアクリルアミド)を得た。なお得られたウレタンアクリルアミド(E−1)の重量平均分子量は、高速液体クロマトグラフィー(株式会社島津製作所製のLC−10Aを用いて、カラムはShodex GPC KF−806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100〜2×10、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)、溶離液としてテトラヒドロフランを使用した。)により測定し、標準ポリスチレン分子量換算により算出した。
【0066】
製造例2 ウレタンアクリルアミド(E−6)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却器を備えた300mLセパラフラスコに水酸基価187mgKOH/g、数平均分子量600の末端水酸基を有するポリエチレングリコール65.41g、重合禁止剤としてメチルハイドロキノン0.20gを添加し、そこにポリイソシアネートとしてイソホロンジイソシアネート29.03g、および触媒としてジブチルスズジラウレート0.02gを添加し、窒素雰囲気中で攪拌しながら、60℃で3時間反応させた。更に、この反応物にN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド5.32g、および触媒としてジブチルスズジラウレート0.02gを添加し、60℃で3時間反応して、IR測定で2230cm−1のイソシアネート基の吸収ピークが消失したことを確認した。その後、反応容器を冷却し、重量平均分子量12,600のウレタンアクリルアミド(E−6:PEG600/IPDI系ウレタンアクリルアミド)を得た。
【0067】
実施例1〜9と比較例1〜4 水溶性もしくは水分散性サポート材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物
実施例1
N,N,N−トリメチルアンモニウムプロピルアクリルアミド p−トルエンスルホン酸塩(a1−1)1.0質量部、N−アクロイルモルホリン(B−1)44.0質量部、数平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600、東邦化学工業株式会社社製)(C−1)50.0質量部、IRGACURE184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASFジャパン株式会社製))(D−1)5.0質量部をそれぞれ容器に仕込み、25℃で1時間攪拌することにより、均一透明な実施例1の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得た。
【0068】
実施例2〜9
表1に示す組成で、実施例1と同様の操作を行うことにより、実施例2〜9に相当する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得た。
【0069】
比較例1〜4
表1に示す組成で、実施例1と同様の操作を行うことにより、比較例1〜4に相当する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得た。ここにおいて、比較例2は特許文献11(WO2014−051046号公報)に記載の実施例5を、比較例3は特許文献8(特開2010−155889号公報)に記載の実施例9を、比較例4は特許文献9(特開2012−111226号公報)に記載の実施例2−1を参考にした。
【0070】
【表1】
【0071】
実施例10〜16と比較例5 水膨潤性サポート材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物
実施例10
アクリル酸ナトリウム(a2−1)2.0質量部、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド(B−2)17.4質量部、イオン交換水(C−3)10.0質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(C−4)70.0質量部、IRGACURE184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASFジャパン株式会社製))(D−1)0.1質量部、ジエチレングリコールジアクリレート(E−5)0.5質量部をそれぞれ容器に仕込み、25℃で1時間攪拌することにより、均一透明な実施例10の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得た。
【0072】
実施例11〜16
表2に示す組成で、実施例10と同様の操作を行うことにより、実施例11〜16に相当する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得た。
【0073】
比較例5
表2に示す組成で、実施例10と同様の操作を行うことにより、比較例5に相当する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得た。ここにおいて、比較例5は特許文献9(特開2012−111226号公報)に記載の実施例2−2を参考にした。
【0074】
表2
【0075】
表1、2中の略号の説明
A:イオン性単量体(a1:カチオン性単量体、a2:アニオン性単量体)
a1−1:N,N,N−トリメチルアンモニウムプロピルアクリルアミド p−トルエンスルホン酸塩
a1−2:N,N,N−トリメチルアンモニウムプロピルアクリルアミド 塩酸塩
a1−3:N,N,N−トリメチルアンモニウムエチルアクリレート メタンスルホン酸塩
a2−1:アクリル酸ナトリウム
a2−2:アクリル酸2−アミノエタノール塩
B:非イオン性水溶性単量体
B−1:N−アクロイルモルホリン
B−2:N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド
B−3:4−ヒドロキシブチルアクリレート
B−4:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
B−5:N,N−ジエチルアクリルアミド
C:非重合化合物
C−1:数平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600、東邦化学工業株式会社社製)
C−2:数平均分子量200のポリエチレングリコール(PEG200、東邦化学工業株式会社社製)
C−3:イオン交換水
C−4:ジエチレングリコールモノエチルエーテル
C−5:ジエチレングリコール
C−6:数平均分子量400の1,2−ポリプロピレングリコール(ユニオールD400、日油株式会社社製)
C−7:1,2−ポリプロピレングリコール
C−8:数平均分子量1000の1,2−ポリプロピレングリコール(ユニオールD1000、日油株式会社社製)
D:光重合開始剤
D−1:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IRGACURE184、BASFジャパン株式会社製)
D−2:2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(IRGACURE−TPO、BASFジャパン株式会社製)
E: 多官能性不飽和単量体
E−1:PEG300/TDI系ウレタンアクリルアミド
E−2:ポリエチレングリコール(分子量200)ジアクリレート
E−3:エトキシレートグリセリントリアクリレート
E−4:ポリエチレングリコール(分子量1000)ジアクリレート
E−5:ジエチレングリコールジアクリレート
E−6:PEG600/IPDI系ウレタンアクリルアミド
F:A、B、E以外のエチレン性不飽和化合物
F−1:n−ブチルアクリレート
G:その他の添加物
G−1:サーフィノール440(エアープロダクツジャパン社製)
G−2:エマノーン1112(ラウリン酸ポリエチレンオキサイド(12E.O.)付加物、花王株式会社製)
G−3:BYK307(ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ビックケミージャパン株式会社製]
G−4:ネオペレックスG−15(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、花王株式会社製)
G−5:2,4−ジフェニル−4−メチル−ペンテン
【0076】
実施例1〜9および比較例1〜4、実施例10〜16および比較例5〜7で得られたサポート材形成用の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いた評価を以下の方法で実施し、結果を表3、4に示す。
【0077】
粘度測定
コーンプレート型粘度計(装置名:RE550型粘度計 東機産業株式会社製)を使用し、JIS K5600−2−3に準じて、25℃にて、各実施例と比較例で得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の粘度を測定した。
【0078】
硬化性
水平に設置したガラス板上に厚さ75μmの重剥離PETフィルム(東洋紡株式会社製、ポリエステルフィルムE7001)(処理面を表に)を密着させ、バーコーターにて各実施例と比較例で得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を50μmの厚みに塗布し、空気下にて紫外線を照射(装置:アイグラフィックス製、インバーター式コンベア装置ECS−4011GX、メタルハライドランプ:アイグラフィックス製M04−L41、紫外線照度300mW/cm、1パスでの積算光量200mJ/cm)し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化に必要な積算光量を測定した。またここで記載する硬化とは塗膜の表面がベタ付かなくなる状態とする。
【0079】
耐ブリードアウト性
水平に設置したガラス板上に厚さ75μmの重剥離PETフィルム(東洋紡株式会社製、ポリエステルフィルムE7001)を密着させ、厚さ1mm、内部が50mm×20mmのスペーサーを設置し、スペーサーの内側に各実施例と比較例で得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を充填した後、更にその上に厚さ50μmの軽剥離PETフィルム(東洋紡株式会社製、ポリエステルフィルムE7002)を重ね、紫外線を照射(装置:アイグラフィックス製、インバーター式コンベア装置ECS−4011GX、メタルハライドランプ:アイグラフィックス製M04−L41、紫外線照度300mW/cm、1パスでの積算光量200mJ/cm)し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させた。また紫外線を照射する積算光量は上記硬化性評価で得られた積算光量とした。その後、両側の剥離PETフィルムを取り除いて作成した硬化物を試験片として用い、25℃、50%RHに設定した恒温恒湿槽中に168時間静置し、静置前後の試験片表面を目視により評価を行った。
◎:静置前、静置後共にブリードアウトが認められない
○:静置前にブリードアウトが見られないが、静置後にブリードアウトが僅かに認められる
△:静置前にブリードアウトが僅かに認められ、静置後にブリードアウトが若干認められる
×:静置前にブリードアウトが若干認められ、静置後にブリードアウトが激しく認められる
【0080】
サポート材の除去性(水溶性、水分散性サポート材)
水平に設置した厚さ1mmのポリメチルメタクリレート板(PMMA板)に厚さ1mm、内部が50mm×40mmのスペーサーを設置し、スペーサーの内側にモデル材を形成する光硬化前の硬化性樹脂組成物としてミマキエンジニアリング社製「LH100white」と、実施例1〜9と比較例1〜4で得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を各1gずつ相互に接触するように充填した後、紫外線を照射(装置:アイグラフィックス製、インバーター式コンベア装置ECS−4011GX、メタルハライドランプ:アイグラフィックス製M04−L41、紫外線照度300mW/cm、1パスでの積算光量200mJ/cm)し、モデル材およびサポート材を得た。また紫外線を照射する積算光量は上記硬化性評価で得られた積算光量とした。その後、室温(25℃)において、得られたPMMA板上のモデル材およびサポート材を洗浄液としてイオン交換水に浸漬し、サポート材が水に溶解もしくは分散し、モデル材およびPMMA板上からサポート材が除去されるまでの時間と除去後のモデル材およびPMMA板の状態を確認し、下記の評価方法により評価した。
◎:サポート材がすべて除去(モデル材との接触部およびPMMA板表面にザラツキ、べた付き等も無い状態)
○:サポート材はほぼ除去(モデル材との接触部およびPMMA板表面にザラツキ、べた付き等がわずかにあるが、水流で洗浄可能な状態)
△:サポート材は大部分除去(モデル材との接触部およびPMMA表面にザラツキ、べた付き等の残留があり、水流では洗浄不可な状態)
△×:サポート材は一部除去(モデル材との接触部およびPMMA表面にサポート材の残留が多量にある状態)
×:サポート材は除去されていない状態
【0081】
サポート材除去後の洗浄液の状態(水溶性、水分散性サポート材)
上記サポート材の除去性において、サポート材が水に溶解もしくは分散した後の洗浄液の状態を確認し、下記の評価方法により評価した。
◎:サポート材が洗浄液に均一に溶解し、透明な状態
○:サポート材が洗浄液に均一分散し、白濁した状態
△:サポート材が洗浄液に不均一に分散し、分散物の沈殿が見られる状態
×:サポート材の一部が沈殿した状態
【0082】
膨潤性(水膨潤性サポート材)
サポート材の膨潤率は下記の計算式から求められる。耐ブリードアウト性と同様にして各実施例10〜16と比較例3、5から得た50mm×20mm×1mmの長方形のサポート材を用いて、25℃の洗浄液に24時間浸漬し、浸漬前後のサポート材の長辺の長さから膨潤率を算出する。
膨潤率(%)=(浸漬後の硬化物の長さ−浸漬前の硬化物の長さ)/浸漬前の硬化物の長さ×100
なお、洗浄液としてはイオン交換水を使用した。
【0083】
水膨潤サポート材の除去性
水平に設置した厚さ1mmのPMMA板に厚さ1mm、内部が50mm×20mmのスペーサーを設置し、スペーサーの内側に各実施例10〜16と比較例3、5で得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を充填した後、紫外線を照射(装置:アイグラフィックス製、インバーター式コンベア装置ECS−4011GX、メタルハライドランプ:アイグラフィックス製M04−L41、紫外線照度300mW/cm、1パスでの積算光量200mJ/cm)し、サポート材を得た。また紫外線を照射する積算光量は上記硬化性評価で得られた積算光量とした。その後、得られたPMMA板上のサポート材を洗浄液に浸漬し、PMMA板上からサポート材が自然に剥離するまでの時間と剥離状態を確認し、下記の評価方法により評価した。なお、洗浄液としてはイオン交換水を使用した。
◎:サポート材がすべて除去(PMMA板表面にザラツキ、べた付き等も無い状態)
○:サポート材はほぼ除去(PMMA板表面にザラツキ、べた付き等がわずかにあるが、水流で洗浄可能な状態)
△:サポート材は大部分除去(PMMA表面にザラツキ、べた付き等の残留があり、水流では洗浄不可な状態)
△×:サポート材は一部除去(PMMA表面にサポート材の残留が多量にある状態)
×:サポート材は除去されていない状態
【0084】
モデル材/サポート材の分離性
10mlのメスシリンダーに、各実施例と比較例で得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を3g入れ、その上から、「LH100white」を3gサポート材に混ざらないように静かに入れた。光が入らないようにメスシリンダー全体をアルミ箔で覆い24時間静置後、LH100whiteとサポート材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の界面状態を観察して、下記の評価方法によりモデル材とサポート材の分離性を評価した。
◎:分離性良好(界面がはっきり確認できる)
○:分離性が十分認められる(界面付近が白濁せず、界面が確認できる)
△:分離性が認められるが不十分(界面付近が白濁し、界面が殆ど確認できず)
×:分離性がない(全体的に白濁し、混合状態がある)
【0085】
モデル材/サポート材の境界部の造形精度
上記サポート材の除去性と同様に硬化物を作成するが、紫外線照射装置で照射する直前に「LH100white」中に垂直に突き刺し先端をPMMA面まで到達させた後、そのままの各実施例と比較例で得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物側に水平移動してモデル材がサポート材側に細く伸びる部分を作成する。この状態ですぐに紫外線照射して得られた硬化物をイオン交換水に浸漬した。サポート材除去後に取り出し、下記の評価方法によりモデル材とサポート材の境界部の状態を評価した。
◎:境界部の造形精度良好(細く伸ばしたモデル材がほぼそのまま硬化して残留)
○:境界部の造形精度やや良好(細く伸ばしたモデル材が半分の長さ程度まで残留)
△:境界部の造形精度やや不良(細く伸ばしたモデル材の断面積約1mmの根元部分のみが硬化して残留)
×:造形精度不良(細く伸ばしたモデル材の部分がなくなり、伸張箇所が特定できない。)
【0086】
表3
【0087】
表4
【0088】
表3の結果から明らかなように、実施例1〜9の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、25℃において100mPa・s以下の粘度を有し、操作性に優れる。また空気中においても積算光量1000mJ/cm以下で硬化可能であり、優れた硬化性を示した。また、硬化して得られたサポート材からの非重合性化合物のブリードアウトが殆ど認められず、サポート材として好適な樹脂であった。更に、実施例においていずれもイオン交換水に良好な溶解、分散性を示し、低温かつ短時間でサポート材を完全に除去することができた。またモデル材との分離性が良好であり、高い造型精度を示した。更に、溶解、分散したサポート材はイオン性を含み、界面活性能を有するため、サポート材除去後のPMAA板やモデル材表面の洗浄性にも優れていた。一方、イオン性単量体を含まない比較例1〜3では、水分散に時間が掛かり、また、除去後のPMAA板やモデル材の表面にサポート材が残留しており、それらの残渣がベタ付き状態であり、水洗では完全に除去できなかった。更に、比較例のサポート材はモデル材との分離性が低かったため、硬化前の比較例1、比較例2の組成物「がLH100white」と接触部で合が起こり、造型精度が低かった。比較例3では硬化に必要な積算光量が2000mJ/cm以上であり、硬化性が低く、またイオン交換水に浸漬してもサポート材が殆ど除去されず、ヘラ等で削り取る工程が必要な状態であった。比較例4では、硬化性は良かったが、液状樹脂の粘度が25℃において200mPa・s以上と高く、操作性の低下が見られた。また、比較例4では非重合性化合物に相当するポリプロピレングリコールを75質量%以上使用しているためブリードアウトが激しく、モデル材との分離性および造型精度も低かった。除去性については比較例4のサポート材が1時間でイオン交換水に分散したが、分散したサポート材の一部がPMMA板表面やモデル材界面に黄色油状の付着物としてみられ、水洗では完全に除去できず、アルコール等の有機溶剤でふき取る必要があった。
【0089】
表4の結果から明らかなように、得られた実施例10〜16の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、25℃において100mPa・s以下の粘度を有し、操作性に優れる。またN−置換(メタ)アクリルアミドを配合しているため、空気中においても積算光量1000mJ/cm以下で硬化可能であり、優れた硬化性を示した。また、硬化して得られたサポート材からの非反応性希釈剤のブリードアウトが確認されず、サポート材として好適な樹脂であった。さらに、実施例においていずれもイオン交換水では良好な洗浄性を示した。一方、特許文献8(特開2010−155889号公報)記載の実施例9に相当する本発明の比較例3では、液状樹脂の粘度は低く、操作性は良好であったが、硬化に必要な積算光量が2000mJ/cm以上であり、硬化性が低かった。またイオン性単量体を含まない比較例3は、イオン交換水に浸漬してもサポート材の膨潤はほとんど見られず、サポート材の除去にはヘラ等で削り取るなどの工程が必要な状態であった。特許文献9(特開2012−111226号公報)記載の実施例2−2に相当する本発明の比較例5では、硬化性は良かったが、液状樹脂の粘度が25℃において200mPa・s以上と比較的高く、操作性の低下が見られた。また、比較例3では多官能性不飽和単量体を使用しておらず、十分な架橋構造を形成できないためポリプロピレングリコールのブリードアウトが多量に見られた。洗浄性についてはサポート材が1時間でイオン交換水に分散し除去され、サポート材の除去は可能であったが、PMMA板表面に黄色油状の残渣がみられ、水洗では完全に除去できず、アルコールなどの有機溶剤でふき取る必要があった。またサポート材除去後、比較例3の洗浄液は白濁し、サポート材の回収は不可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上説明してきたように、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は付加製造用のサポート材を形成するために好適に用いることができる。また活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は粘度が低く、操作性に優れるためインクジェットによる付加製造にも用いる事が出来る。更に立体造形物が本発明のサポート材により支持された状態の粗造形物を洗浄液に浸漬した場合、サポート材が洗浄液に溶解、分散、もしくは膨潤し、容易に除去することができる。またイオン性単量体を含むことによりモデル材を形成する硬化性樹脂組成物との分離性に優れ、優れた造型精度を発揮すると共に、イオン性により界面活性能を有するサポート材がモデル材表面に付着せず、造形物の表面拭き取り等の仕上げ工程が不要となる。この様に本発明のサポート材は優れた除去性を発揮すると共に、立体造形物の製造工程を短縮化できる利点がある。
【要約】
【課題】付加製造において造形後に効率よく除去可能な形状支持用サポート材及び、当該サポート材を形成するために用いられる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】イオン性単量体(A)、非イオン性水溶性単量体(B)、非重合性化合物(C)と光重合開始剤(D)、及び/又は多官能単量体(E)を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いることにより、形成された粗造形物からサポート材を効率よく除去することができ、表面汚染せずかつ高造型精度の立体造型物を得ることができる。
【選択図】なし