(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の金属缶は、プリフォームを金属缶内にて膨張させるため、金属缶の形状によってその膨張度が異なり、内面コートの厚みが均一となりにくい。さらに、様々な形状の金属缶毎にそれぞれの形状に合わせたプリフォームが必要になり、金型費用が高く、作製に手間がかかる。また、缶の内部でプリフォームを膨張(ブロー成型)させて内袋を形成する場合は、内袋が冷えると収縮するため缶の容積に比べて小さくなり、内容物の充填率が小さくなる。そのため、内容物の充填量を同じにする場合、内袋を備えた缶は内袋を備えていない缶よりも大きくなり、特に金属缶を2本連結して使用する2液式染毛剤などは持ちにくく、吐出部材を操作しにくくなる。
また、特許文献2は、缶胴の一方の開口から他方の開口への空気流に荷電させた合成樹
脂粉末を乗せることによって合成樹脂粉末を缶胴内面全体に所望の厚さで均一に塗装するものであるが、金属缶とするには、缶胴に内面コートを設けた後、缶胴の両端に缶底と目金をそれぞれ巻き締めて固定する工程が必要となり、内面コートを傷つけやすい。
さらに、特許文献3は、溶液をスプレーして塗装するため、塗膜にムラが出来やすく、さらに均一にスプレーできずピンホールが発生しやすい。
本発明は、金属缶の内面に均一なコートを設けることができ、さらにエアゾールバルブを取り付けてもコートが損傷しにくいエアゾール容器用の金属缶の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のエアゾール容器用の金属缶の製造方法は、開口部の上端の切り口が真っ直ぐ上を向いており、開口部の下部にエアゾールバルブを保持するための環状凹部を有する有底筒状の金属製の缶体を成形し、
前記缶体をプラスまたはマイナスに荷電させる静電粉末塗装装置の有底筒状のホルダーに挿入し、静電粉末塗装装置の噴霧装置を缶体の上方からホルダー方向に移動させて、缶体と噴霧装置との間に缶体ごとに独立した閉鎖空間を形成し、前記噴霧装置のノズル部から前記缶体の内面に
缶体とは反対に荷電
された樹脂粉末を
噴霧して付着させ、加熱処理により内面コートを形成することを特徴としている。
このような製造方法であって、
前記噴霧装置が缶体の口部外周と当接することにより閉鎖空間を形成する方法、または、前記噴霧装置が前記ホルダーと当接することにより閉鎖空間を形成する方法が好ましい。
また前記缶体内に樹脂粉末を噴霧した後、加熱処理をする前に、缶体内をバキューム装置で吸引し、余分な樹脂粉末を回収する方法が好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明のエアゾール容器用の金属缶の製造方法は、開口部の上端の切り口が真っ直ぐ上を向いており、開口部の下部にエアゾールバルブを保持するための環状凹部を有する有底筒状の金属製の缶体を成形し、
前記缶体をプラスまたはマイナスに荷電させる静電粉末塗装装置の有底筒状のホルダーに挿入し、静電粉末塗装装置の噴霧装置を缶体の上方からホルダー方向に移動させて、缶体と噴霧装置との間に缶体ごとに独立した閉鎖空間を形成し、前記噴霧装置のノズル部から前記缶体の内面に
缶体とは反対に荷電
された樹脂粉末を
噴霧して付着させ、加熱処理により内面コートを形成させるため、内面コートは均一に形成され、内面コートにピンホールも生じない。またこの金属缶は、内面コートを設けた後は缶を加工しなくてもよく、エアゾールバルブはカバーキャップの開口部を外側から内側にかしめ付けて固定されるため、エアゾールバルブを取り付ける際に金属缶の内面コートに大きな外力が加わることがない。そのため、内面コートが割れにくく、金属缶が内容物によって腐食されにくい。特に、金属缶の高さや缶胴の直径、形状に関係なく、均一に内面コートを形成することができる。
【0007】
このような製造方法であって、
前記噴霧装置が缶体の口部外周と当接することにより閉鎖空間を形成する場合、または、前記噴霧装置が前記ホルダーと当接することにより閉鎖空間を形成する場合、簡易に閉鎖空間を形成できる。
さらに、前記缶体内に樹脂粉末を噴霧した後、加熱処理をする前に、缶体内をバキューム装置で吸引し、余分な樹脂粉末を回収する場合、閉鎖空間に浮遊する樹脂粉末を効率良く回収できる。
【0008】
このような製造方法によって製造された金属缶を用いたエアゾール製品は、耐腐食性の高い内面コートが均一に形成されているため、酸性またはアルカリ性の原液(染毛剤などの腐食性が高く、浸透性の高い内容物)を長期間保管でき、内容物による金属缶の耐腐食性も高いエアゾール製品とすることができる。
本発明のエアゾール製品は、染毛剤などの浸透性の高い内容物に使用していた従来の容器の様に内袋を入れないため、容器に対する内容物の充填率が大きい。
よって金属缶を小型に設計しても十分な内容物を保管できる。そのため、2つのエアゾール容器を連結した2液式エアゾール製品としても好ましく使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に本発明の製造方法によって製造されるエアゾール容器10を説明する。
エアゾール容器10は、
図1aに示すように、上端が開口している有底筒状の金属缶11と、その金属缶11の開口を閉じるエアゾールバルブ12とからなる。このエアゾール容器10は、反応性の高い内容物、特に、金属缶11に使用される金属を腐食しやすい内容物に好ましく用いられる。
【0011】
金属缶11は、
図1cに示すように、缶体20と、その内面に形成された内面コート21とからなる。
缶体20は、円筒状の胴部16と、その胴部の下端を閉じる略平面状の底部17と、その胴部の上端に設けられる肩部18と、その肩部18の上端に設けられる口部19とからなる一体成形体である。また、肩部18と口部19の境界には、缶体20の中心方向に向けて凹んだ環状凹部15が形成されている。また、口部19の上端の環状の切り口19aは、真っ直ぐ上を向いている。つまり、缶体20は、上端が内面と外面とが連続しているビード部を備えておらず、口部19の真っ直ぐ上を向いている切り口19aを挟んで内面と外面とが設けられている。この実施形態において、底部17は平らになっている。しかし、上述したように、若干凹んで(内面側に凸)いてもよい。例えば、全体として、球面状あるいは円錐状に凹んでいてもよく、外周部は平面で中心部のみが球面状あるいは円錐状に凹んでいてもよく(
図1d、参照)、外周から中心に向かって、環状の平面部、環状のテーパー部、中心円形部(全体として円錐台状)(
図1e、参照)となっていてもよい。その中でも少なくとも外周部は平面となっているものが好ましい。これらの場合、それぞれの高さ(凹み)は、缶(底部)の直径に対して5%以下、好ましくは4%以下であることが好ましい。
缶体20の外周面を電極などでプラスまたはマイナスに荷電させ、胴部16、略平面状の底部17、肩部18、口部19の内面には、缶体とは反対の電荷を持った樹脂粉末を付着させる。その後、加熱処理して内面コート21が形成される。内面コート21は、内容物による腐食を防止するために設けられている。
缶体20は、アルミニウム、アルミニウム合金、ブリキなどの金属によって成形される
。
【0012】
金属缶11としては、底部17から口部19上端までの高さが40〜160mm、特に50〜150mmで、胴部16の外径が10〜35mm、特に、15〜32mm、で構成される金属缶11が好ましい。また、底部17から口部19上端までの高さが胴部16の外径の3〜10倍、特に、4〜8倍であることが好ましい。さらに、略平面状の底部17に十分な強度を与えるため、その厚さが0.3〜2mm、特に0.5〜1.5mmであることが好ましい。
0.3mmよりも薄い場合は強度が不充分になり、2mmよりも厚い場合は樹脂粉末が付着しにくくなり、コートの厚さが不均一になりやすい。
【0013】
内面コート21の樹脂粉末としては、ポリエチレン(PE)粉末、ナイロン粉末等のポリアミド(PA)粉末、ポリエチレンテレフタレート(PET)粉末、ポリブチレンテレフタレート(PBT)粉末、ポリプロピレン(PP)粉末等の熱可塑性樹脂が挙げられる。樹脂粉末の平均粒子径は0.1〜100μm、特に1〜80μmとすることが好ましい。平均粒子径が0.1μm未満の場合は飛散しやすいため付着効率が悪い、粉体同士が凝集し均一に付着できない問題がある。平均粒子径が100μm以上の場合は金属缶11内で浮遊し難くい、膜厚が不均一になりやすい、付着しても缶から剥がれ落ちやすくなるなどの問題がある。
前記粉末のうち、PE粉末、PA粉末は、原液が酸性である内容物および原液がアルカリ性の原液である内容物を充填する場合に用いることが好ましく、PET粉末は、原液が酸性である内容物を充填する場合に用いることが好ましい。熱処理後の内面コート21の膜厚は、10〜300μm、特に30〜200μmにすることが好ましい。膜厚が10μm未満の場合は膜厚が薄すぎ、浸透性の高い染毛剤などの内容物では金属缶が腐食されやすい傾向がある。膜厚が300μmよりも厚い場合は、膜厚が不均一になりやすく、また剥がれやすくなる傾向がある。
【0014】
エアゾールバルブ12は、
図1bに示すように、金属缶11の口部19に挿入され、金属缶11を塞ぐ合成樹脂製の筒状の栓体26と、その栓体に保持される筒状のハウジング27と、そのハウジング内に上下動自在に保持されるステム28と、ハウジング内に保持され、ステムのステム孔を塞ぐステムラバー29と、ステム28を常時上方に付勢するバネ30と、栓体26を覆い、下端が金属缶11の環状凹部15にカシメつけられるカバーキャップ31とからなる。このエアゾールバルブを金属缶に固着する際には、カバーキャップ31の下端を環状凹部15にカシメつけるが、環状凹部15の内面コートが直接接触する栓体26を合成樹脂製としているため、その弾性力により環状凹部15の内側の内面コート21への負荷を最小限に抑えることができる。さらにこの栓体26は環状凹部15と当接する部分(外周部分)26aとハウジング保持部26bとの間に空間(環状溝部26c)があり、この空間は半径方向内側に外力を受けることにより内側に収縮できるため、環状凹部15の内側の内面コート21への負荷を最小限に抑えることができる。そのため、内面コート21に傷等がつきにくい。
また、栓体26と、缶の口部19の上端との間には、リング状のシール材32が設けられている。この実施形態では、栓体26を用いているが、
図4のように栓体26を用いずに合成樹脂製のハウジング27aを環状凹部15に保持させ、直接金属缶11の口部を塞いでもよい。その場合、シール材32は、ハウジング27aと、金属缶の口部19の上端との間に設けられ、カバーキャップ31は、ハウジングを覆い、下端が金属缶11の環状凹部15にカシメつけられる。このときも環状凹部15は若干変形するが、その変形を合成樹脂製のハウジング27aの弾性力で最小限に抑えることができ、内面コート21に傷等がつきにくい。また、この場合も、ハウジング27aは、環状凹部16と当接する外周部27a1の内側に半径方向内側の外力を受けることにより内側に収縮する環状凹部27a2が形成されている。
【0015】
エアゾール容器用の金属缶11の製法を次に示す。金属のペレットをインパクト加工や絞り・しごき加工などにより有底筒状に成形し、その上端の切り口を切断して揃え(トリミング加工)、有底筒状体を成形する。その後、有底筒状体の上部に絞り加工を施して肩部を形成し、環状凹部15を形成して缶体20が成形される。最後に、缶体20の内面に内面コート21を形成して金属缶11は製造される。
【0016】
缶体20への内面コート21の形成は、
図2の静電粉末塗装装置35を用いた静電粉末塗装法で行われる。
静電粉末塗装装置35は、缶体20を挿入して保持する有底筒状のホルダー36と、ホルダー36に対してホルダー36の軸方向に移動し、保持された缶体20の開口部から樹脂粉末Pを噴霧する噴霧装置37とからなる。ホルダー36は、外筒のカバー部36aと、内筒の帯電部36bとからなる。帯電部36bは、高圧電源36cに接続されており、缶体20を陽イオンまたは陰イオンに帯電させるものである。噴霧装置37は、円筒状の外壁部37aと、その内部に設けられる円筒状の保持部37bと、その中心に設けられたノズル部37cとからなる。噴霧装置37は、ホルダー36方向に移動することにより、缶体20と噴霧装置37とで閉鎖空間S1が形成され、ノズル部37の先端が缶体20の開口部近辺に配置される。この実施形態では、保持部37bが缶体20の口部外周と当接することにより、閉鎖空間S1は形成される。保持部37bには、バキューム装置37dが設けられており、缶体の内面に付着せずに閉鎖空間に浮遊する樹脂粉末を回収することができる。また、閉鎖空間は、噴霧装置37の外壁部37aとホルダー36のカバー体36aとを当接させて形成してもよい。
【0017】
このように静電粉末塗装装置35は構成されているため、
図2aに示すように、缶体20の外周を覆うホルダー36に、缶体20を保持させ、高圧電源36cを用いて帯電部36bを陰イオンに荷電する。これにより、缶体20の全体が陰イオンに帯電する。一方、陽イオンに荷電した樹脂粉末Pをノズル部37cの先端から缶体20内に噴霧する。これにより、陽イオンに荷電された樹脂粉末Pは、陰イオンに帯電された缶体20の内面に均一に付着する。特に、缶体20は、略平面状の底部を備えているため、底部17全体と高圧電源36cとの接続を均一にでき、底部17における電位差が生じにくく、樹脂粉末Pを均一に付着させることができる。樹脂粉末Pを缶体20内に噴霧した後は、
図2bに示すように、缶体20内をバキューム装置37dで吸引し、余分な樹脂粉末Pを回収する。
【0018】
また、
図3に示すような静電粉末塗装装置35aを用いてもよい。
図3の静電粉末塗装装置35aは、ノズル部39以外は、
図2の静電粉末塗装装置35と実質的に同じものである。ノズル部39は、円筒状の側面に複数の噴霧口39aが形成されているものである。また、噴霧装置37がホルダー36方向に移動したとき、缶体20内に深く挿入されるものである。2つあるいは3つずつの噴霧口39aが、ノズル部39の軸方向に等間隔に設けられるのが好ましい。これにより、樹脂粉末Pを缶体20の内面に均一に噴霧させることができる。
【0019】
その後、缶体20内に樹脂粉末を付着させた状態において、缶体20を樹脂粉末の溶融温度以上で加熱処理し、樹脂粉末を溶融させ、内面コート21を形成させる。
缶体20および樹脂粉末Pは、それぞれ逆のイオンで荷電してもよい。また、
図3aのように缶体20の外周面を帯電部36bを介してアース線に連結し、陽イオンまたは陰イオンに荷電された樹脂粉末Pを噴霧してもよい。この場合も、樹脂粉末Pを缶体20の内面に均一に付着させることができる。
本発明の金属缶の製造方法では、缶体20の外周面で高圧電源あるいはアースと連結させるため、外面塗装等の外面処理は金属缶11の製造後に行うのが好ましい。
【0020】
本発明の製造方法によって製造されるエアゾール容器用の金属缶11は、内面コート21を、缶体20を成形してから設けているため、従来のように内面コート21を形成した後、絞り加工等の缶成形加工を施す必要がなく、形成された内面コート21に傷等が形成されない。特に、金属缶11が小型である場合、加工によって与える応力が大きいため、好ましい。また、エアゾール容器10は、上端に真っ直ぐ上を向いている切り口19aを備えた金属缶11を用いているため、エアゾールバルブを固定するとき、最小限の変形でエアゾール容器10を組み立てることができ、内面コートに傷がつきにくい。さらに、内面コート21を静電粉体塗装方法により形成しているため、金属缶11内に均一に設けることができる。このように内面コート21は、ピンホールがなく、均一であるため、耐食性の高い内容物を充填しても、金属缶の腐食がなく内容物を長期間保持することができる。
【0021】
エアゾール容器10に内容物を充填する場合は、金属缶11を準備し、その内部に原液を充填した後、エアゾールバルブ12を金属缶11の環状凹部15に保持させて開口を塞ぎ、エアゾールバルブのカバーキャップ31の下端を金属缶11の環状凹部15にカシメて固着する。次いで、エアゾールバルブのステム28から噴射剤を充填する。しかし、噴射剤を充填した後にエアゾールバルブ12を金属缶11にカシメて固着して製造してもよい(アンダーカップ充填)。
【0022】
本発明の製造方法によって製造されるエアゾール容器用の金属缶に充填するエアゾール組成物の好ましいものとしては、金属に対する腐食性の高い原液と噴射剤が挙げられる。特に、浸透性が高く反応性の高い染毛剤が好ましい。このような染毛剤として、酸化染料を含むアルカリ性の第1剤原液と噴射剤とからなる染毛剤用の第1エアゾール組成物と、酸化剤を含む酸性の第2剤原液と噴射剤とからなる染毛剤用の第2エアゾール組成物とからなる2液式染毛剤や、酸性染料を含む1液式の酸性染毛剤などが挙げられる。
【0023】
前記内容物が2液式染毛剤の場合について説明する。
前記2液式染毛剤の染毛剤用第1エアゾール組成物としては、酸化染料、染毛補助成分、アルカリ剤、安定化剤、粘度調整剤、染毛効果以外の効果を発揮する他の有効成分、界面活性剤、油性成分などを溶媒に含有した第1剤原液、および噴射剤からなるものが挙げられる。
【0024】
前記酸化染料としては、酸化染毛剤に使用される通常の酸化染料であれば特に限定されず、例えばパラフェニレンジアミン、硫酸パラフェニレンジアミン、パラトルイレンジアミン、N、N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−パラフェニレンジアミン、N−フェニル−パラフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルアミン、2−クロロパラフェニレンジアミン、N、N−ジメチルパラフェニレンジアミン、パラアミノフェノール、メタアミノフェノール、オルトアミノフェノールなどの1種または2種以上を用いることができる。特に染毛効果が良好な点から、パラフェニレンジアミン、硫酸パラフェニレンジアミン、パラアミノフェノール、メタアミノフェノールなどが好ましい。
前記酸化染料の含有量は第1剤原液中に0.01〜10質量%、さらには0.1〜5質量%が好ましい。酸化染料の含有量が下限より少ない場合は充分な染毛効果が得られにくい傾向があり、上限より多く含有した場合でも染毛力は変わらず経済的でない。
【0025】
前記染毛補助成分としては、酸化染毛剤に使用される通常の染毛補助成分であれば特に限定されず、例えば酸性染料、直接染料、他の補助成分などの1種または2種以上を用いることができる。
前記酸性染料としては、例えば、アマランス(赤色2号)、エリスロシン(赤色3号)、ニューコクシン(赤色102号)、ローズベンガル(赤色105号)、アシッドレッド(赤色106号)、タートラジン(黄色4号)、サンセットイエロー(黄色5号)、ファ
ストグリーン(緑色3号)、ブリリアントブルーFCF(青色1号)、インジゴカルミン(青色2号)、ローズベンカルK(赤色232号)、オレンジII(だいだい色205号)、ウラニン(黄色202号)、キノリンエローWS(黄色203号)、アリザニンシアニングリーンF(緑色201号)、ピラニンコンク(緑色204号)、パテントブルー(青色203号)、レゾルシンブラウン(かっ色201号)、ビオラミンR(赤色401号)、オレンジI(だいだい色402号)、ナフト−ルエローS(黄色403号)、ナフトールグリーンB(緑色401号)、アリズロールパープル(紫色401号)、ナフトールブルーブラック(黒色401号)などが挙げられる。
前記直接染料としては、例えば4−ニトロ−O−フェニレンジアミン、2−ニトロ−p−フェニレンジアミン、1−アミノ−4−メチルアントラキノン、1,4−ジアミノアントラキノン、2−アミノ−4−ニトロフェノール、2−アミノ−5−ニトロフェノール、ピクリン酸などが挙げられる。
前記他の補助成分としては、例えば、レゾルシン、ピロガロール、カテコール、メタアミノフェノール、メタフェニレンジアミン、オルトアミノフェノール、2,4−ジアミノフェノール、1,2,4−ベンゼントリオール、トルエン−3,4−ジアミン、トルエン−2,4−ジアミン、ハイドロキノン、α−ナフトール、2,6−ジアミノピリジン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、5−アミノオルトクレゾール、ジフェニルアミン、パラメチルアミノフェノール、フロログルシン、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、没食子酸、タンニン酸、没食子酸エチル、没食子酸メチル、没食子酸プロピル、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール等およびそれらの塩、ベンジルアルコールなどの芳香族アルコール、フェネチルアルコール、ベンジルオキシエタノール等、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドンなどのアルキルピロリドン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの低級アルキレンカーボネートなどが挙げられる。
【0026】
前記アルカリ剤としては、酸化染毛剤に使用される通常のアルカリ剤であれば特に限定されず、例えば2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどのアルカノールアミンや、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウムなどの1種または2種以上を用いることでき。特に染毛効果が高い点からアンモニアなどのアミン類を用いることが好ましい。
前記アルカリ剤を含有させる場合は第1剤原液中に0.01〜10質量%、さらには0.1〜5質量%が好ましい。アルカリ剤の含有量が下限より少ない場合は染毛効果が得られにくい傾向があり、上限より多い場合は、頭髪や頭皮などへの刺激が強くなる傾向がある。
【0027】
前記安定化剤としては、酸化染毛剤に使用される通常の安定化剤であれば特に限定されず、例えば無水亜硫酸ナトリウム、L−アスコルビン酸ナトリウム、ペンテト酸、リン酸水素2ナトリウム、エチドロン酸、フェナセチン、EDTA、8−ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸、尿酸、タンニン酸、パラベン、エデト酸塩などの1種または2種以上を用いることできる。
【0028】
前記粘度調整剤としては、酸化染毛剤に使用される通常の粘度調整剤であれば特に限定されず、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースエチルエーテル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、第4級窒素含有セルロースエーテル、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガムなどの1種または2種以上を用いることができる。
【0029】
前記染毛効果以外の効果を発揮する他の有効成分としては、酸化染毛剤に使用される通
常の有効成分であれば特に限定されず、例えばプロピレングリコール、グリセリン、1、3−ブチレングリコール、コラーゲン、ヒアルロン酸、乳酸ナトリウム、尿素などの保湿剤、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化クロルヘキシジン、銀などの殺菌・防腐剤、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸モノグリセリンエステル、サリチル酸オクチル、サリチル酸フェニル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチルなどの紫外線吸収剤、グリシン、アラニン、ロイシン、セリン、トリプトファン、シスチン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニンなどのアミノ酸、レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸アミド、ニコチン酸dl−α−トコフェロール、ビタミンD2、dl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、パントテン酸などのビタミン類、エラストラジオール、エチニルエストラジオールなどのホルモン類、アスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールなどの酸化防止剤、シャクヤクエキス、ヘチマエキス、バラエキス、レモンエキス、アロエエキス、ユーカリエキス、セージエキス、茶エキス、海藻エキス、プラセンタエキス、シルク抽出液などの各種抽出液、ポリオクタニウム6、ポリオクタニウム7、ポリオクタニウム22などのコンディショニング剤、香料などの1種または2種以上を用いることができる。
【0030】
前記界面活性剤はエアゾール組成物を泡状に吐出するなどの目的で用いられ、酸化染毛剤に使用される通常の界面活性剤であれば特に限定されず、例えばソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルポリグルコシド、ポリオキシエチレン/メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシプロピレン/メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)/メチルポリシロキサン共重合体、脂肪酸石鹸、N−アシルグルタミン酸塩、N−アシルグルタミン酸、N−アシルグリシン塩、N−アシルアラニン塩、ベヘントリモニウムメトサルフェート/セタノール/イソアルキル(C10〜40)アミドプロピルエチルジモニウムメトサルフェート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムなどの1種または2種以上を用いることができる。
【0031】
前記油性成分としては、酸化染毛剤に使用される通常の油性成分であれば特に限定されず、例えばメチルポリシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーンオイル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、コハク酸ジエトキシエチルなどのエステル油、スクワラン、スクワレン、イソパラフィン、流動パラフィンなどの炭化水素、ツバキ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、ホホバ油、ヤシ油などの油脂、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸などの高級脂肪酸、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコールなどの高級アルコール、ミツロウ、ラノリン、カンデリラロウ、マイクロクリスタリンワックスなどのロウ(ワックス)などの1種または2種以上を用いることができる。
【0032】
前記溶媒としては、水やアルコール類およびこれらの混合物などが挙げられる。前記水としては、精製水、イオン交換水、生理食塩水などが挙げられる。また、前記アルコール類としては、エタノール、イソプロパノールなどの1価の低級アルコールや、エチレング
リコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコールなどが挙げられる。
【0033】
噴射剤としては、圧縮ガス、液化ガスが挙げられる。圧縮ガスとしては、窒素ガス、炭酸ガス、亜酸化窒素ガス、酸素ガス、圧縮空気などが上げられる。液化ガスとしては、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、およびこれらの混合物である液化石油ガス、ジメチルエーテル、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロオレフィンなどのハイドロフルオロオレフィン、およびこれらの混合物などが挙げられる。さらに、圧縮ガスと液化ガスを配合しても良い。
【0034】
前記酸化剤を含有する染毛剤用第2エアゾール組成物としては、酸化剤、pH調整剤、安定化剤、粘度調整剤、染毛効果以外の効果を発揮する他の有効成分、界面活性剤、油性成分などを溶媒に含有した第2剤原液、および噴射剤からなるものが挙げられる。
【0035】
前記酸化剤としては、酸化染毛剤に使用される通常の酸化剤であれば特に限定されず、例えば過酸化水素、酸化酵素などを用いることができる。
前記酸化剤として過酸化水素を含有させる場合は第2剤原液中に純分換算で0.1〜10質量%、さらには1〜6質量%が好ましい。酸化剤の含有量が下限より少ない場合は酸化力が不充分であり良好な染毛効果が得られにくくなる傾向があり、上限より多い場合は、頭髪や頭皮への刺激が強くなる傾向がある。
前記酸化酵素としては、酸化染毛剤に使用される通常の酸化酵素であれば特に限定されず、例えばラッカーゼ、パーオキシターゼ、ウリターゼ、カタラーゼ、チロシナーゼなどの1種または2種以上を用いることができる。
【0036】
前記pH調整剤としては、酸化染毛剤に使用される通常のpH調整剤であれば特に限定
されず、例えばリン酸、クエン酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸などの1種または2種以上を用いることでき、第2剤原液のpHを1〜6、さらに2〜5の範囲に調整することが好ましい。
【0037】
なお、前記安定化剤、粘度調整剤、界面活性剤、油性成分、溶媒、噴射剤は、前述の第1エアゾール組成物で例示したものと同じ成分を用いることができる。
また、1液式の酸性染毛剤の場合は、酸性染料、染毛補助成分、pH調整剤、安定化剤、粘度調整剤、染毛効果以外の効果を発揮する他の有効成分、界面活性剤、油性成分などを溶媒に含有した原液、および噴射剤からなるものが挙げられ、
これら成分は前述の2液式染毛剤で例示したものと同じ成分を用いることができる。
【0038】
2液式の染毛剤の保管は、
図4に示すようにそれぞれ染毛剤用第1エアゾール組成物および染毛剤用第2エアゾール組成物をそれぞれ2つのエアゾール容器に充填することになる。
図4に示す2液式エアゾール製品40は、上記染毛剤第1エアゾール組成物Aを充填した第1エアゾール製品41と、上記染毛剤第2エアゾール組成物Bを充填した第2エアゾール製品42と、それらを連結し、それぞれのエアゾール製品を同時に操作する吐出部材43とからなる。
第1エアゾール製品41は、アルカリ性の染毛剤第1原液と噴射剤とからなる第1エアゾール組成物Aが充填されているため、金属缶11の内面コート21としてPAあるいはPEが用いられている。一方、第2エアゾール製品42は、酸性の染毛剤第2原液と噴射剤とからなる第2エアゾール組成物Bが充填されているため、金属缶11の内面コート21として、PA、PEまたはPETが用いられている。
吐出部材43は、2本のエアゾール容器10を保持する筒状の保持部材46と、2本のエアゾール容器10のステム28に取り付けられる押ボタン47とからなる。保持部材46は、筒状の外筒部46aと、その内部に設けられ、それぞれのエアゾール容器10を保持する2つの筒状の保持部46bと、外筒部46aと保持部46bとを繋ぐ外連結部46cと、保持部46b同士を連結する内連結部46dとからなる。押ボタン47は、矩形状の本体47aと、その前面から前方に突出した筒状のノズル部47bとからなる。本体47aの下端には、それぞれのエアゾール容器10のステム28と連結するステム連結部48aが2つ形成されている。さらに、本体47aの内部には、その2つのステム連結部48aとノズル部47bとを連結する連通路48bが形成されている。
このように構成されているため、押ボタン47を下方に押し下げることにより、第1および第2エアゾール製品41、42のステム28を同時に押し下げることができ、2つの内容物をノズル部47bから吐出できる。
エアゾール製品40は、本発明によって製造される金属缶11を用いているため、2液式の染毛剤であってもそれぞれのエアゾール容器内で安定して、長期間保管することができる。