特許第6033532号(P6033532)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6033532
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/133 20060101AFI20161121BHJP
【FI】
   G02F1/133 535
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-179382(P2011-179382)
(22)【出願日】2011年8月19日
(65)【公開番号】特開2013-41196(P2013-41196A)
(43)【公開日】2013年2月28日
【審査請求日】2014年5月22日
【審判番号】不服2015-22459(P2015-22459/J1)
【審判請求日】2015年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】中島 功
【合議体】
【審判長】 小松 徹三
【審判官】 恩田 春香
【審判官】 星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−184937(JP,A)
【文献】 特開2010−26137(JP,A)
【文献】 特開2006−261160(JP,A)
【文献】 特開2002−373795(JP,A)
【文献】 特開2008−294232(JP,A)
【文献】 特開2005−114684(JP,A)
【文献】 特開2005−241678(JP,A)
【文献】 特開2011−154359(JP,A)
【文献】 特開2006−323073(JP,A)
【文献】 特開2010−175913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F1/133,505-1/133,535
G09G3/20,3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射対象液晶パネルと、
LEDバックライト制御機構とを備えた液晶表示装置であって、
前記LEDバックライト制御機構は、
前記照射対象液晶パネルの側部に配置された少なくとも一つのLEDバックライト部を備え、前記少なくとも一つのLEDバックライト部はそれぞれ直列に接続された第1〜第nの発光ダイオードを含み、前記第1〜第nの発光ダイオードによる前記液晶パネルに対する第1〜第nの照射領域のうち、前記第1の照射領域が前記液晶パネルの第1の角部を含み、前記第nの照射領域が前記液晶パネルの前記第1の角部と異なる第2の角部を含み、
オン状態時に前記第1の発光ダイオードのアノード,カソード間を電気的に接続可能な第1のスイッチング手段と、
オン状態時に前記第nの発光ダイオードのアノード,カソード間を電気的に接続可能な第2のスイッチング手段と、
前記第1及び第2のスイッチング手段のオン/オフ動作を制御する制御回路とをさらに備え、
前記液晶表示装置は、
前記照射対象液晶パネル上における各画素の輝度信号を格納するフレームメモリをさらに備え、
前記LEDバックライト制御機構における前記制御回路は、前記フレームメモリから得られる輝度信号に基づき前記照射対象液晶パネルにおける画面上下に輝度信号の輝度値が“0”でない所定の基準値以下の低輝度領域があるか否かを判定し、低輝度領域があると判定した全期間において、前記第1及び第2のスイッチング手段がオンするように、前記第1及び第2のスイッチング手段を制御する、
液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶パネルのサイドエッジ型のLEDバックライト制御機構を備える液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の20インチ以上のTN(Twisted Nematic)モードの大型液晶パネルは、バックライトの温度上昇に伴う温度差により偏光板に熱歪が発生し、特に表示画面のコーナー部に対応する領域での光漏れが顕著であった。
【0003】
近年、液晶パネルにおけるバックライトとして、白色LEDを画面の1辺あるいは上下か左右の2辺に直列に多数並べたサイドエッジ型のLEバックライト部が主流となってきている。
【0004】
LEDバックライト部を構成する複数のLEDを点灯させると、各LEDに発熱が生じ、LEDバックライト部の前面に配置される液晶ガラスパネルに熱が伝わる。この熱は液晶ガラスパネルの両面に貼られている偏光板、特に裏面(LEDバックライト部により照射される側)に貼られている偏光板の温度上昇に大きく寄与する。
【0005】
上記した温度上昇によって、偏光板は熱歪みにより偏光特性が劣化し、本来、LEDバックライト部からの透過光を遮断しなければならない黒画面における光漏れが発生し、表示画面が白く光ってしまう光漏れ表示によって画面品位を低下させてしまう。特に表示画面の4コーナー部でこの光漏れ表示が顕著に現れてしまう。なお、本明細書中で「光漏れ表示」は、狭義には偏光板の光漏れにより黒画面表示時にコーナー部分に白っぽく見える部分が生じることを意味し、広義には偏光板の光漏れにより通常の映像表示に白く光る部分が見える「白浮き」をも含む概念で用いている。
【0006】
この改善策として、光学補償シート(位相差フィルム)にレターデーション値が高い光学的異方性を有する材料を使用して熱歪みを軽減する技術(例えば、特許文献1に開示された光学補償シート)。また、偏光板の接着材に光弾性係数の比較的低い材料を使用しているものもある(例えば、特許文献2に開示された偏光板等)。いずれの技術も発生した熱歪みを低減させる効果を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−071955号公報
【特許文献2】特開2006−259664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、偏光板の熱歪みに伴う光漏れによって、液晶パネルの表示画面の4コーナー部で光漏れ表示がなされてしまい、この光漏れ表示は、特に20インチ以上のTNモード大型液晶パネルにおいて顕著であった。
【0009】
また、上述した従来の改善方法は、発生する偏光板の熱歪みを低減することにより、ある程度光漏れを改善できるもの、光漏れ表示を効果的に解消できていないという問題点があった。
【0010】
この発明は上記問題点を解決するためになされたもので、光漏れ表示を効果的に解消したバックライト制御機構及び当該バックライト制御機構を有する液晶表示装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る請求項1記載の液晶表示装置は、照射対象液晶パネルと、LEDバックライト制御機構とを備えた液晶表示装置であって、前記LEDバックライト制御機構は、前記照射対象液晶パネルの側部に配置された少なくとも一つのLEDバックライト部を備え、前記少なくとも一つのLEDバックライト部はそれぞれ直列に接続された第1〜第nの発光ダイオードを含み、前記第1〜第nの発光ダイオードによる前記液晶パネルに対する第1〜第nの照射領域のうち、前記第1の照射領域が前記液晶パネルの第1の角部を含み、前記第nの照射領域が前記液晶パネルの前記第1の角部と異なる第2の角部を含み、オン状態時に前記第1の発光ダイオードのアノード,カソード間を電気的に接続可能な第1のスイッチング手段と、オン状態時に前記第nの発光ダイオードのアノード,カソード間を電気的に接続可能な第2のスイッチング手段と、前記第1及び第2のスイッチング手段のオン/オフ動作を制御する制御回路とをさらに備え、前記液晶表示装置は、前記照射対象液晶パネル上における各画素の輝度信号を格納するフレームメモリをさらに備え、前記LEDバックライト制御機構における前記制御回路は、前記フレームメモリから得られる輝度信号に基づき前記照射対象液晶パネルにおける画面上下に輝度信号の輝度値が“0”でない所定の基準値以下の低輝度領域があるか否かを判定し、低輝度領域があると判定した全期間において、前記第1及び第2のスイッチング手段がオンするように、前記第1及び第2のスイッチング手段を制御する。

【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の本願発明である液晶表示装置が備えるLEDバックライト制御機構は、第1及び第2のスイッチング手段をオン状態にすることにより、第1及び第nの発光ダイオードを選択的に消灯することができ、液晶パネル上の表示画面の上記第1及び第2の角部に現れる光漏れ表示を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の実施の形態1であるLEDバックライト制御機構の構成を示す回路図である。
図2】この発明の実施の形態2である液晶表示装置の概略構成を示すブロック図である。
図3】実施の形態2のマイクロコンピュータにおける半導体スイッチを制御するソフトウェア処理の流れを示すフローチャートである。
図4】光漏れ表示が顕著となる一例のシネスコサイズのレターボックス映像を示す説明図である。
図5】前提技術となる液晶表示装置の概略を示す説明図である。
図6】偏光板における光漏れのメカニズムを説明する概念図である。
図7】全黒画面を表示させた時に現れる光漏れ表示の症状を示す一例を写真形式で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<前提技術>
図5は、この発明の前提技術として示す一例である、液晶パネルの左右に2列白色LEDアレイを配置した液晶表示装置の概略を示す説明図である。
【0015】
同図に示す様に、液晶パネル20の左右両側それぞれにLEDアレイ22が設けられる。各LEDアレイ22は複数のパッケージ型LED21(以下、単に「LED21」と略記)が基板23上に配置されることにより構成される。各LEDアレイ22において、複数のLED21が直列に電気的に接続される(図5では図示せず)。これら2つのLEDアレイ22によってLEDバックライト部を構成する。
【0016】
各LEDアレイ22における複数のLED21を点灯させると、各LED21に発熱が生じ、LEDバックライト部の前面に配置される液晶ガラスパネルに熱が伝わる。この熱は液晶ガラスパネルの両面に貼られている偏光板、特に裏面(LEDバックライト部により照射される側)に貼られている偏光板の温度上昇に強く寄与する。
【0017】
偏光板は一般的に樹脂フィルムで構成されているためガラスより膨張率が大きい。また、LEDアレイ22に近接している液晶パネル20(偏光板)の側面近傍領域の温度DT1は他の領域の温度DT2より温度上昇度合が高くなるため、LEDアレイ22内の複数のLED21の点灯時は、DT1>DT2となる。
【0018】
したがって、液晶パネル20の構成要素である偏光板のコーナー部における温度はDT1と他の領域の温度DT2より高くなる。
【0019】
温度上昇により偏光板の各部が左右同方向に延びた場合は偏光特性に問題はないが、コーナー部4箇所では水平方向と垂直方向の延びが構造的に制約されてアンバランスとなる。この偏光板の熱歪みに伴う光漏れにより、本来、バックライト部の透過光を遮断しなければならない黒画面表示時にコーナー部における遮断が不完全となり、表示画面のコーナー部が白く光る光漏れ表示が現れ画面品位を低下させてしまう。
【0020】
図6は偏光板における光漏れのメカニズムを説明する概念図である。同図に示す様に、偏光板30における同一垂直線30V(温度差が無い場合に同一垂直位置にある線)は温度上昇によってもさほど変形しないが、同一水平線30H(温度差が無い場合に同一水平位置にある線)は斜めに変形してしまうため、偏光板30の偏光特性が歪んでしまう。
【0021】
図7は全黒画面を表示させた時に現れる光漏れ表示の症状を示す一例を写真形式で示す説明図である。液晶パネルの表示画面31の4コーナー部で光漏れによる白っぽく見える部分である光漏れ表示32が顕著に現れている。
【0022】
図7で示したような表示画面のコーナー部に現れる光漏れ表示32を効果的に解消できるLEDバックライト制御機構及びこの制御機構を用いた液晶表示装置が、以下で述べる実施の形態である。
【0023】
<実施の形態1>
図1はこの発明の実施の形態1であるLEDバックライト制御機構の構成を示す回路図である。
【0024】
同図に示す様に、LEDアレイ2(LEDバックライト部)はn(n≧3)個のパッケージ型のLED11〜1n(第1〜第nの発光ダイオード)が直列に接続されて構成される。
【0025】
LEDアレイ2を構成するLED11〜1nは図示しないLED用のフィルム基板上に配置され、放熱のためにアルミ材等の放熱板に熱伝導性の良好な接着剤で貼り付けてバー状に一体化される。
【0026】
またLEDアレイ2は、液晶パネルのサイズにより1辺のサイドエッジ型では1組、2辺のサイドエッジ型で対向する辺それぞれ用に2組使用する。すなわち、1辺のサイドエッジ型では、液晶パネルの1辺にのみ隣接してLEDアレイ2が配置され、2辺のサイドエッジ型では、液晶パネルの対向する2辺に隣接して2つのLEDアレイ2がそれぞれ配置される。
【0027】
そして、LEDアレイ2の外部において、LED11のアノードが接続される端子P1とカソードが接続される端子P2との間にNPNバイポーラトランジスタT1(第1のスイッチング手段)が介挿される。さらに、LEDアレイ2の外部において、LED1nのアノードが接続される端子P3とカソードが接続される端子P4との間にNPNバイポーラトランジスタT2(第2のスイッチング手段)が介挿される。
【0028】
また、端子P1に電気的に接続して+側の端子P11が設けられ、端子P4に電気的に接続して−側の端子P12が設けられる。
【0029】
LED電流は一定にしないと色相が変わるため、通常は+側の端子P11にDC電圧VDを加え、−側の端子P12に付与する電圧VCは0Vとなる期間の比率であるデューティー比がPWM制御によって変化させることにより輝度を変化させる。この輝度制御はディミングと呼ばれる。具体的には、端子P12に0Vを付与する第1の期間と、端子P11に付与するDC電圧VD相当の電圧を付与する第2の期間とのデューティー比によって輝度制御が行われる。この場合、CCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp)と同様にLED11〜1nがすべて点灯する全面点灯方式のため直下型LEDや分割エッジライト型のバックライトのように、特定エリアの輝度可変、すなわちローカルディミングはできない。実施の形態1はこのような全点灯方式のLEDエッジ型バックライトに対してローカルディミングを可能としている。
【0030】
図1に示すように、LED11のアノード,カソード間に介挿されるNPNバイポーラトランジスタT1はベースにスイッチング信号S1(制御信号)を受ける。LED1nのアノード,カソード間に介挿されるNPNバイポーラトランジスタT2はベースにスイッチング信号S2(制御信号)を受ける。なお、図1ではバイポーラトランジスタを例に挙げたが、MOSトランジスタ等、他の構成のトランジスタやFETで第1及び第2のスイッチング手段として構成しても良い。
【0031】
制御部3はスイッチング信号S1及びS2をNPNバイポーラトランジスタT1及びT2のベースに付与する。ここで、オフ状態を指示する“H”レベルのスイッチング信号S1及びS2の出力時を光漏れ抑制モード時、オン状態を指示する“L”レベルのスイッチング信号S1及びS2の出力時を通常時と呼ぶ。
【0032】
なお、1辺のサイドエッジ型では1単位のLEDアレイ2を液晶パネルの一辺に設けるだけであるため、図1で示す構成で十分である。一方、2辺のサイドエッジ型では2単位のLEDアレイ2を液晶パネルの左右(上下)2辺に設けるため、図1で示した構成が2組必要となる。この際、制御部3は一単位とし、2組のLEDアレイ2に対応して設けられた4つの半導体スイッチ(2組のNPNバイポーラトランジスタT1及びT2相当)をすべて制御するようにしても良い。
【0033】
LEDアレイ2における両端LEDであるLED11及び1nが、液晶パネルにおける表示画面のコーナー部のバックライトを担当している。すなわち、LED11の照射光L1による照射領域(第1の照射領域)が液晶パネル7(照射対象液晶パネル)の表示画面の上部角部(第1の角部)を含み、照射光Lnによる照射領域(第nの照射領域)が液晶パネル7の表示画面の下部角部(第2の角部)を含んでいる。
【0034】
“H”レベルのスイッチング信号S1及びS2が出力される光漏れ抑制モード時におけるLEDアレイ2について検討する。光漏れ抑制モード時ではLED11及び1nが消灯され、LED11及び1n以外のLED12〜LED1(n−1)は正常に点灯される。この場合、LEDアレイ2が1辺のサイドエッジ型の場合、及び2辺のサイドエッジ型として使用される場合のいずれにおいても、消灯される両端のLED11及び1nからの照射光L1及びLnは光漏れを生じさせる表示画面のコーナー部に照射されることになる。この照射条件は、またLEDアレイ2が上下左右どの位置に配置されていても変わらない。
【0035】
なお、大型液晶パネルでは1列に2本のLEDアレイを繋げる場合があるが、この場合は、2本の直接接続のLEDアレイの組合せを図1のLEDアレイ2に相当するとして、画面両端に相当するそれぞれ1個のLEDに対し、NPNバイポーラトランジスタT1及びT2に相当する半導体スイッチを設置することにより、本実施の形態を適用することができる。
【0036】
NPNバイポーラトランジスタT1及びT2等の半導体スイッチは、LEDアレイ2の外部に設置する。すなわち、LEDアレイ2用のフィルム基板とは別の基板上にNPNバイポーラトランジスタT1及びT2が形成される。なぜなら、LEDアレイ2内にLED11〜1n以外のNPNバイポーラトランジスタT1及びT2を余分に設けると、LED11〜1n間のピッチが均等とならず、輝度むらの原因となるからである。
【0037】
このような構成において、制御部3は光漏れ影響度合が所定の基準以上であると判断した場合、“H”レベルのスイッチング信号S1及びS2を出力し、NPNバイポーラトランジスタT1及びT2をオンさせる光漏れ抑制モード時を設定する。なお、光漏れ影響度合が所定の基準以上である場合として、例えば、レターボックス表示時にように、偏光板に光漏れが発生すると表示画面におけるコーナー部(角部)の光漏れ表示が顕著に現れる場合等が考えられる。
【0038】
光漏れ抑制モード時では、NPNバイポーラトランジスタT1及びT2はオンし、LED11及び1nのアノード,カソード間が短絡されるため、LED11及び1nは消灯する。その結果、液晶パネルにおける表示画面の4つのコーナー部においてバックライト光は照射されなくなるため、表示画面に光漏れ表示が現れず偏光板の熱歪みに伴う光漏れを効果的に抑制することができる。
【0039】
また、制御部3は、表示画面におけるコーナー部(角部)の光漏れ影響度合が所定の基準未満である場合、“L”レベルのスイッチング信号S1及びS2を出力し、NPNバイポーラトランジスタT1及びT2をオフさせる通常時モードを設定することにより、LEDアレイ2のすべてのLED11〜1nを発光させることができる。
【0040】
上述したように、光漏れ抑制モード時は、両端のLED11及び1nが選択的にオフする。この場合、LED11〜1nを流れる電流は一定であるため、供給するDC電圧(+側)VDはLEDの順方向電圧VF分降下する。
【0041】
両端2個のLED11及び1nが同時にオフする場合は、仮にLED11〜1nそれぞれの順方向電圧VFが3.2Vとすると、6.4V(=3.2V×2)の電圧値分、DC電圧VDが低下する。
【0042】
端子P11及びP12に駆動電圧VD及びVCを供給するLEDバックライト駆動回路(図示せず)には、回路保護のために各種の保護回路が設置される。LEDのショート検出のためには減電圧(状態の)検出がある。通常はLED2個または3個ショートすると減電圧検出がかかるように設定されている。
【0043】
実施の形態1では、両端2個のLED11及び1nを一時的に強制オフさせる場合があるので、光漏れ抑制モード時に減電圧検出されるのを回避すべく、減電圧検出の設定は3個または4個のLEDショートで働くようにする必要がある。また、1辺に2本の直列接続LEDアレイ2を使用する大型液晶パネルの場合ではLEDアレイ単位では1個のLEDしかオフしないため、1個分の増加のみを考慮し、減電圧検出の設定は2個以上で働くようにすることができる。
【0044】
このように、実施の形態1のLEDバックライト制御機構では、制御部3の制御下で、光漏れ抑制モード時はNPNバイポーラトランジスタT1及びT2(第1及び第2のスイッチング手段)をオン状態にすることにより、LED11〜1n(第1及び第nの発光ダイオード)を選択的に消灯することができ、液晶パネルの表示画面における4つのコーナー部における光漏れ表示を効果的に抑制することができる。
【0045】
<実施の形態2>
図2はこの発明の実施の形態2である液晶表示装置(液晶テレビジョン,液晶モニタ等)の概略構成を示すブロック図である。実施の形態2の液晶表示装置は実施の形態1に相当するLEDバックライト制御機構を内部に組み込んでいる。
【0046】
同図に示す様に、液晶パネル7の表示画面における映像信号SVがフレームメモリ4に取り込まれる。フレームメモリ4に入力された映像信号SVのうち輝度信号データSLがマイクロコンピュータ5に取り込まれる。なお、マイクロコンピュータ5は、図1で示した制御部3の機能を発揮することができる。
【0047】
マイクロコンピュータ5は、液晶パネル7の画面に応じた輝度信号データSLのヒストグラム情報として、液晶パネル7の表示画面の角部における光漏れ影響度合を検出する処理を実行する。そして、検出した光漏れ影響度合いが所定の基準以上である場合、すなわち、偏光板の熱歪みに伴い表示画面におけるコーナー部に光漏れ表示が顕著に現れる画像表示であると判断すれば、半導体スイッチ6(図1のNPNバイポーラトランジスタT1及びT2相当)にオン状態を指示する制御信号S5(図1のスイッチング信号S1及びS2相当)を出力する。その結果、LEDアレイ2の両端のLED(図1のLED11及び1n相当)を選択的に消灯させることにより、液晶パネル7のコーナー部に発生している偏光板の光漏れをマスキングして表示画面上では光漏れ表示が視認できないようにする。
【0048】
マスキングする幅は片側LED1個分なので狭い範囲であるが、コーナー部の温度上昇度合も同時に低下するのでコーナー部の光漏れに対しては実用上問題ないレベルにまで軽減できる。
【0049】
図3は実施の形態2のマイクロコンピュータ5における半導体スイッチ6を制御するソフトウェア処理の流れを示すフローチャートである。
【0050】
同図を参照して、ステップST1において、フレームメモリ4に映像信号SVを取り込む。
【0051】
次に、ステップST2において、映像信号SVから輝度信号データSLを抽出し、画面の垂直方向における輝度信号データSLのヒストグラムを作成する。
【0052】
その後、ステップST3でこのヒストグラムから画面上下端が“0”またはそれに近い輝度値であるかどうか、すなわち画面上下に黒帯がある(YES)か否か(NO)を判定する。このように、マイクロコンピュータ5は、画面上下端が“0”またはそれに近い輝度値である場合、光漏れ影響度合いが所定の基準以上であると判定する黒帯判定処理を実行する。
【0053】
ステップST3の黒帯判定処理にて上下黒帯が在ると判定した(YES)場合はステップST4に進み、ステップST4において、半導体スイッチ6をオンさせる光漏れ抑制モード時を指示する制御信号S5を出力する。その結果、オン指示の制御信号S5を受けた半導体スイッチ6がオン状態となり、LEDアレイ2の両端のLEDを選択的に消灯させる。そうでない場合はS5のステップに進む。
【0054】
図4は光漏れ表示が顕著となる一例のシネスコサイズのレターボックス映像を示す説明図である。同図に示す様に、液晶パネル7の表示画面7V上の中央に表示されるレターボックス領域25の上下に黒帯領域26が表示される。この際、LEDアレイ2の全LED11〜1nを点灯させた状態では、上述した偏光版における熱歪みに伴う光漏れにより、表示画面7Vの4コーナー部が白く光ってしまう光漏れ表示が現れ、黒帯領域26を精度良く表示することができない。
【0055】
しかし、実施の形態2の液晶表示装置では、マイクロコンピュータ5の制御下で図4に示したようなレターボックスを表示する場合は、ステップST3がYESとなり、必ずステップST4が実行されるため、LEDアレイ2の両端のLEDを選択的に消灯されることにより、偏光板の光漏れをマスキングして、表示画面7V上における黒帯領域26に光漏れ表示が現れないようにすることができる。
【0056】
また、レターボックス表示ではない表示画面7Vにおける全画面に映像表示が行われる場合でも、コーナー部が暗い映像では同様に不自然な白浮きが発生し映像品位を損なうため、ステップST3でYESとなり同様にマスキングをかけることができる。
【0057】
この場合は、レターボックス表示時のように必ずしもLEDアレイ2の両端2個のLEDを同時消灯させる必要はなく、比較的暗い映像が上部のみであれば(例えば夜景の空)最上部のLED(図1のLED11相当)のみを消灯させ、逆に比較的暗い映像が下部(例えば日陰が画面下部にある映像)であれば最下部のLED(図1のLED1n相当)のみを消灯させるようにしても良い。すなわち、ステップST4における半導体スイッチ6のスイッチON動作は、図1のNPNバイポーラトランジスタT1及びT2相当に対して、双方(一方及び他方)のトランジスタをオンさせる、一方のトランジスタのみをオンさせる、他方のトランジスタのみをオンさせる3つの制御態様を採ることも可能である。
【0058】
一方、ステップST3で上下黒帯でないと判定した(NO)場合はステップST5に進む。ステップST5では、輝度信号データSLのヒストグラムから求めた平均輝度に応じたバックライトのディミング設定値を計算してバックライトの輝度が映像画面の輝度に同期した明るさとなるようにする。
【0059】
明るい映像ではバックライトの輝度を上げ、暗い映像ではバックライトの輝度を下げる。この処理はバックライト全面の輝度を制御するもので、全面黒の画面ではコーナー部を含めた全LEDをオフできるので、偏光板の光漏れに伴う表示画面上における光漏れ表示を完全に視認不能にすることができる。また全面が比較的暗い画面でもLEDの輝度を下げるのでコーナー部の偏光板における光漏れ度合や、光漏れの原因となるLED発熱を低減することができる。
【0060】
しかしながら、図4で示したシネスコサイズのレターボックス映像のような映像では映像画面が比較的明るい場合には黒帯領域26のLEDは常に明るく光るため問題の光漏れ表示は顕著に現れる。したがって、上述したステップST3のYES判定とステップST4の処理が必要となる。
【0061】
シネスコサイズでの画面比率は、液晶パネルの画面比率16:9(1:1.77)に対し、1:2.1〜2.5程度の比率を有している。したがって、16:9の表示画面7Vにシネスコサイズを映すと上下に黒帯が現れる。この黒帯の幅について詳述する。
【0062】
表示画面7Vの垂直幅を“1”とし、垂直幅に対して1:2.1のシネスコサイズの黒帯幅WB1は以下のように求められる。まず、映像表示部分の幅WV1は、「2.1:1=1.77:WV1」の関係から、「WV1=1.77/2.1≒0.84」と求めることができる。したがって、黒帯幅WB1=0.16(1−0.84)となる。
【0063】
同様に、“1”の垂直幅に対して1:2.5のシネスコサイズの黒帯幅WB2は以下のように求められる。まず、映像表示部分の幅WV2は、「2.5:1=1.77:WV2」の関係から、「WV2=1.77/2.5≒0.71」と求めることができる。したがって、黒帯幅WB2=0.29(=1−0.71)となる。
【0064】
そして、上または下の黒帯それぞれの幅は、上記算出した黒帯幅WB1,WB2の半分となるため、シネスコサイズの上下黒帯幅の想定値は「0.08〜0.145」になると設定することができる。したがって、シネスコサイズ表示時における上下黒帯はそれぞれ、垂直幅“1”に対して片側「0.08〜0.145」の幅で現れることが推測できる。そこで、ステップST3における検出用の設定値は、1:2.1〜2.5の比率を有するシネスコサイズの黒帯領域をすべて検出可能な「0.07」にする。
【0065】
一方、検出する輝度信号データSLは黒である“0”は勿論、上または下が比較的暗い映像でも光漏れ表示が現れるため、15〜10%程度の輝度を所定の基準値として用いて黒帯判定処理を行う。なお、輝度100%とは表示画面7Vに表示可能な最大輝度を意味している。
【0066】
なお、ステップST3における上下黒帯判定、すなわち、LEDアレイ2の両端部LEDを消灯させるべきかどうかを判定する所定の基準値とする黒帯検出用検出輝度レベルは、実際の液晶パネルで各種の映像を見ながら調整するべきである。また、マイクロコンピュータ5によるステップST3の処理時におけるは光漏れ影響度合を判定する方法は、上述した処理に限定されず、他の方法を採用することは勿論可能である。
【0067】
このように、実施の形態2の液晶表示装置内の制御部であるマイクロコンピュータ5はフレームメモリ4から得られる輝度信号データSLに基づき液晶パネル7の表示画面7Vにおけるコーナー部の光漏れ影響度合を検出し、検出した光漏れ影響度合いが所定の基準以上である場合、光漏れ抑制モード時とし、半導体スイッチ6(NPNバイポーラトランジスタT1及びT2)がオンするように制御している。
【0068】
このため、例えば表示画面7Vにレターボックス映像表示を行う場合のように、光漏れ影響度合いが所定の基準以上であると判断し、半導体スイッチ6をオンさせてLEDアレイ2の両端LEDを選択的に消灯させることにより、光漏れ影響度合いが高い映像表示のタイミングで、液晶パネル7の表示画面7Vにおける4コーナー部における光漏れ表示が現れることを効果的に抑制することができる。
【0069】
<その他>
なお、上述した実施の形態では、LEDアレイ2の両端のLED(図1のLED11,1n)のみ選択的に消灯可能な構成を示したが、これに限定されず、両端のLED(図1のLED11,1n相当)を含みさらに、両端のLEDに隣接配置された所定数のLED(所定数が“1”の場合、図1のLED12,1(n−1)相当)を併せて選択的に消灯可能な構成を実現することも勿論可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、サイドエッジ型のLEDバックライト方式の大型液晶テレビジョンや液晶モニター等の液晶表示装置に適用できる。
【符号の説明】
【0071】
1,11〜1n LED、2 LEDアレイ、3 制御部、4 フレームメモリ、5 マイクロコンピュータ、6 半導体スイッチ、7 液晶パネル、T1,T2 NPNバイポーラトランジスタ。
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