(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記断熱パネルの積層裏面材は、その表裏面の合成樹脂フィルムが、厚さが0.03〜0.3mm、引張弾性率が1000MPa以上、引張破壊伸びが10%以上であることを特徴とする請求項1または2記載の農畜産用の断熱パネル。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細を説明する。
この農畜産用の断熱パネル10(以下、単に断熱パネルとする。)は、例えば畜舎の天井材として用いられるものであり、金属薄板の表面材11と、中間部のポリウレタン等の合成樹脂発泡体などを充填発泡させた断熱材12と、網状体の表裏面に合成樹脂フィルムを設けた積層裏面材13とを一体に積層し、表面材11の両端縁部には、互いに嵌合連結することができる嵌合連結部14,15が形成されるとともに、積層裏面材13の少なくとも一端縁部には、隣接する断熱パネル10,10同士を嵌合連結部14,15で連結したときの裏面側の目地部分を覆う延長部16が形成されたものである。
【0016】
この断熱パネル10では、金属薄板の表面材11が、例えば小さな波形と大きな波形とが交互に成形されており、この表面材11の一端縁部に嵌合連結部14としての嵌合受部が形成され、他端縁部に嵌合連結部15としての嵌合突部が形成され、嵌合受部14に嵌合突部15を挿入するようにして互いを連結できるようにしてある。
【0017】
そして、表面材11の一端縁部に形成される嵌合連結部14としての嵌合受部は、表面材11の大きな波形と略同一の段差を介して水平外方(図中の右方)に突き出した水平部の先端部14aから内方(図中の左方)およびさらに外方に折り曲げることで湾曲した凹部14bが形成されて
おり、この凹部14bは側方が開口し開口先端部が上下に狭まく形成され、端縁部14cが下方に折り返されて構成されている。
【0018】
この嵌合受部14と嵌合連結される表面材11の他端縁部に形成される嵌合連結部15としての嵌合突部は、表面材11に嵌合連結部14の凹部14bの開口部までの深さと略同一の段差部15aを介して水平外方(図中の左方)に突出して先端部が尖った横断面形状が三角形状の凸部15bが形成されて再び略水平外方(図中の左方)に折り曲げられ、さらに、この凸部15bの前方まで突出すように突出部15cが形成され、端縁部15dが上方に折り返されて構成されている。
【0019】
また、積層裏面材13の一端縁部に形成される延長部16は、表面材11の嵌合受部14が形成される端部側に形成されており、積層裏面材13をそのまま略水平に延長して構成してある。
これにより、断熱パネル10,10同士を嵌合連結部14,15で嵌合連結したときに、積層裏面材13の延長部16が隣接する断熱パネル10の積層裏面材13と密着するようにしてある。
【0020】
なお、断熱パネル10の嵌合連結部14側では、表面材11の先端縁部となる嵌合連結部14の端縁部14cと積層裏面材13との間に端面材18を当てるようにしてあり、この端面材18によって断熱材12の発泡充填の際に立ち上がってくる断熱材をせき止めてふくらみ等を抑えるとともに、製造装置側の発泡抑制盤と断熱材12との付着を防止する。
【0021】
ここでは、裏面材13の延長部16が設けられる一端縁部側に端面材18としての発泡抑制紙が当てられており、表面材11と断熱材12の端面とに連続して当てられるL字状に配置してあり、表面材11と積層裏面材13に当てるように単に配置したり、接着剤やテープでこれらと固定するようにしても良い。
【0022】
このような断熱パネル10の表面材11としては、例えば表面処理鋼板、亜鉛・ニッケル合金をめっきした鋼板、アルミ・亜鉛合金をめっきした鋼板、ステンレスで鋼板をクラッドしたクラッド鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板、鋼板でゴム,合成樹脂フィルムをクラッドした制振板等をあげることができ、これらの平板に限らず、エンボス加工、リシン塗装、ほうろう加工などを施したものであっても良い。
【0023】
また、断熱材12としては、合成樹脂発泡体が用いられ、特にポリウレタンフォーム、ポリイソシアヌレートフォーム、フェノールフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリスチレンフォームなどを用いることもできる。
【0024】
つぎに、積層裏面材13は、網状体13aの表裏面に合成樹脂フィルム13b、13cを予め積層して構成されている。
【0025】
積層裏面材13の網状体13aは、有機繊維及び/又は無機繊維から成り、有機繊維及び/又は無機繊維を複数方向に交差させ、例えば、2軸方向(縦・横直交方向)あるいは多軸方向(縦・横・斜め方向)に交差させ接合しない構造を有するもの、あるいは、各繊維の交差部である交点(交差部)を熱融着又は接着剤にて接合した構造を有するもので、有機繊維同士あるいは無機繊維同士、有機繊維及び無機繊維の組合せが可能である。
【0026】
この網状体13aに使用される有機繊維としては、綿、麻、ケナフなどの天然繊維、レーヨン、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66)、芳香族ポリアミド(アラミド繊維)、ポリエステル繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成繊維を用いることができる。
また、無機繊維としては、ガラス繊維、ロックウール繊維、カーボン繊維など通常のものが使用出来る。
そして、これ等有機繊維や無機繊維は単独で使用することも出来るし、複数組合わせて使用することも出来る。
【0027】
各繊維については、一般的な方法で紡糸・紡績したフィラメント糸やスパン糸、融解牽引した繊維状体、延伸フィルムから製造した割繊網状体、フィルムをマイクロスリットした細い帯状体など通常の繊維及び繊維状体(総称して繊維と呼ぶ)が使用出来、これ等は単独で使用することも複数組み合わせて使用することも出来る。
【0028】
このような有機繊維及び/又は無機繊維から成る網状体13aの具体例として、例えばナイロンメッシュ、ポリエステルメッシュ、ポリプロピレンメッシュ、ポリエチレンメッシュなどモノフィラメントを2軸に直交したメッシュクロス、ガラスを融解牽引した長繊維を2軸に直交したガラスネット(グラスファイバーメッシュともいう)、ポリエチレンやポリプロピレンなどの延伸フィルムから造った割繊網状体を縦・横に連続的に積層・熱融着したワリフ(JX日鉱日石ANCI(株)製)、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリエステルなどのフィルムをマイクロスリットした細い帯状体を2軸、3軸、4軸に交差させ交点を接着固定したソフ(積水フィルム(株)製)などを挙げることができる。
【0029】
そして、この網状体13aの厚さは、0.05〜0.5mm、好ましくは0.07〜0.3mmで、坪量が7〜240g/m
2、好ましくは20〜200g/m
2のものが使用出来る。
厚さが0.05mm未満で、坪量が7g/m
2の場合、網状体13aが薄く強度が低いためその両面に合成樹脂製フィルム13b、13cを貼り合せた積層裏面材13の剛性が低くなり、嵌合連結部14,15において積層裏面材13の延長部16の密接状態が確保できないばかりか、強度も弱く高圧洗浄水の局部的な水圧で凹んだり、酷い場合には亀裂が入り易い問題がある。
また、厚さが0.5mmを超え、坪量が240g/m
2を超えると、網状体13aが厚くなり、その両面に合成樹脂製フィルム13b、13cを貼り合せた積層裏面材13の剛性が著しく高くなり、ロール状に巻き取り難く、巻数量を多く巻けないばかりか、使用材料の増大によるコストアップなどの問題がある。
【0030】
また、この網状体13aは、その少なくとも片面に必要に応じてコロナ放電処理やアンカーコートなどの接着処理を施すことができ、それにより合成樹脂フィルム13b,13cとの接着・一体化がより強固となり積層裏面材13としての性能向上をより図ることができる。
【0031】
積層裏面材13の網状体13aの表裏両面に貼り合せる合成樹脂フィルム13b,13cは、厚さが0.03〜0.3mm、引張弾性率が1000MPa以上、引張破壊伸びが10%以上の条件を満足する合成樹脂フィルムであれば、なんでも使用することが出来、表面と裏面に用いる合成樹脂フィルム13b,13cが同一のものであっても異なるものであっても良い。
具体的には、硬質塩化ビニル樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアセタール樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリアミド樹脂(6ナイロン、66ナイロン)、三フッ化塩化エチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂などの透明、半透明、不透明な無色や着色フィルムが挙げられ、これ等のフィルムは単独でも複数貼り合せた複層フィルムとしたものでも使用出来る。
また、これ等のフィルムを芯材としてその片面や両面に例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂など芯材より融点の低い接着性或いは熱融着性に優れた樹脂を積層したフィルムとすることも出来る。
【0032】
積層裏面材13の網状体13aの表裏両面に貼り合わせる合成樹脂フィルム13b,13cの厚さは、0.03〜0.3mm、好ましくは0.05〜0.2mmである。合成樹脂フィルム13b,13cの厚さが0.03mm未満の場合、強度が弱い上、この合成樹脂フィルム13b,13cを網状体13aに積層させた積層裏面材13は腰がなく(剛性が低く)、断熱パネル10,10同士を嵌合した際に相手の断熱パネル10との密接状態を確保し難い。また、合成樹脂フィルム13b、13cの厚さが0.3mmを超えた場合、積層裏面材13の厚さが厚くなると同時に、腰が強くなりすぎて(剛性が強くなり過ぎて)、ロール状に巻き難く、更に巻数量を多くできないので、積層裏面材13や断熱パネル10の生産効率が低下するなどの問題がある。
【0033】
この合成樹脂フィルム13b,13cは、その引張弾性率が1000MPa未満の場合、フィルムが柔軟で伸び易くフィルムをロール状に巻いた場合、その厚さのバラツキや偏肉(厚さの偏り)がフィルムの形状に即反映され、例えば次のような問題が生じ易い。
フィルムの片側が厚く、もう一方の側に行くほど徐々に薄くなる傾向にある場合には、巻き取ったロールからフィルムを引き出すと、フィルムがなだらかに湾曲し真直ぐに引き出せなくなる。
また、フィルムの両端部の厚さが中央部に比べて厚い場合には、巻き取ったロールからフィルムを引き出すと、フィルムの両端部が波打ち(フレア)状態と成ってしまう。
さらに、フィルムの中央部の厚さがその両端部より厚い場合には、巻き取ったロールからフィルムを引き出すと、中央部が波打ち(タルミ)状態と成ってしまう。
そして、上記何れの場合も網状体13aと貼り合せるラミネート作業が困難となり、不良品となったり、歩留が大幅に悪化し易い問題がある。
これと同時に、それぞれの合成樹脂フィルムを網状体13aの両面に貼り合せた積層裏面材13とした場合には、積層裏面材13の剛性が低くなり易い。
さらに、断熱パネル10とした場合に、嵌合連結部14,15において積層裏面材13の延長部16の密接状態が確保できないばかりか高圧洗浄水の局部的な水圧に対する抵抗力が低下しポリウレタンフォームなどの断熱材12の保護効果が弱まり凹んだり酷い場合は亀裂が入り易い問題がある。
【0034】
また、合成樹脂フィルム13b,13cの引張破壊伸びが10%未満の場合には、積層裏面材13が硬く脆くなり、断熱パネル10とした場合に、延長部16が欠けたり、衝撃により損傷や亀裂が入り易いなどの問題がある。
【0035】
さらに、合成樹脂フィルム13b,13cの耐光性や耐アンモニア性などの性能を向上させる目的で、必要に応じてフィルムの表面に紫外線の透過を抑制する高隠蔽性の着色剤及び/又は紫外線吸収剤などの耐光剤などを含む合成樹脂フィルムや液状合成樹脂、或いは耐アンモニア性に優れる合成樹脂フィルムや液状合成樹脂を貼り合せたり塗布したりすることが出来る。
【0036】
次に、このような網状体13aの表裏両面に合成樹脂製フィルム13b,13cを貼り合せて積層裏面材13を製造する方法は、通常行われている方法であればなんでも良いが、その中でも実績面からドライラミネート方式や押出ラミネート方式などが好ましい。
ドライラミネート方式の場合も、押出ラミネート方式の場合も網状体13aに貼り合せる合成樹脂製フィルム13b,13cの被接着面には、必要に応じて接着力を確保するためにコロナ放電処理やアンカーコートなどの接着処理が施される。
【0037】
ドライラミネート用接着剤としては、通常使用されているものが使用され、例えば有機溶剤系又は水系の一液又は二液反応型ウレタン樹脂系接着剤、有機溶剤系又は水系の反応型ポリエステル系接着剤、ウレタン樹脂系やポリエステル樹脂系反応又は非反応型ホットメルト接着剤などが使用され、合成樹脂製フィルムが透明又は半透明の場合は着色して使用することが好ましい。
また、接着剤に紫外線の透過を抑制する隠蔽性着色剤や紫外線吸収剤などの耐光剤を必要量配合することで、断熱パネル10とした場合の断熱材12や断熱材12側の合成樹脂性フィルム13bを紫外線から保護することも出来る。
ドライラミネートは、グラビアロールコーターなどの塗布手段により、貼り合せる一方の合成樹脂製フィルム13b(13c)の必要に応じてコロナ放電処理及び/又はアンカーコートなどの接着処理を施した面に接着剤を塗布、乾燥後直ちに網状体13aを圧着・貼り合せを行う。
そして、網状体13aのもう一方の面に貼り合せる合成樹脂製フィルム13c(13b)の必要に応じて接着処理を施した面に、同様に接着剤を塗布・乾燥後直ちに、先に貼り合せたものの網状体13aの表面を該フィルムの接着剤塗布面に貼り合せ圧着し、必要に応じて断熱パネル10の製造時に断熱材12と接着する面にコロナ放電処理或いはアンカーコートを施すことにより、ドライラミネート法で積層裏面材13が得られる。
尚、接着剤の塗布量は網状体13aの厚さにもよるが片方で固形分換算で数10μm〜数100μmの範囲である。
【0038】
押出ラミネート用接着剤は、必要に応じてコロナ放電処理及び/又はアンカーコートを施した合成樹脂フィルム13b,13cとの接着性を考慮して選定すればよいが、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などが使用され、合成樹脂製フィルムが透明又は半透明の場合は着色して使用することが好ましい。
また、接着剤に紫外線の透過を抑制する隠蔽性着色剤や紫外線吸収剤などの耐光剤を必要量配合することで、断熱パネル10の断熱材12や断熱材12側の合成樹脂製フィルム13bを紫外線から保護することも出来る。
押出ラミネートは、貼り合せる一方の合成樹脂製フィルム13b(13c)の必要に応じて接着処理を施した面に接着剤を押出機より皮膜状に押出しその上に網状体13aを圧着・貼り合せを行う。
そして、網状体13aのもう一方の面に貼り合せる合成樹脂製フィルム13c(13b)の必要に応じて接着処理を施した面に、同様に接着剤を皮膜状に押出し、先に貼り合せたものの網状体13aの表面を接着剤皮膜に貼り付け圧着し、必要に応じて断熱パネル10の製造時に断熱材12と接着する面にコロナ放電処理或いはアンカーコートを施すことにより、押出ラミネート法で積層裏面材13が得られる。
尚、接着剤の押出し皮膜厚さは網状体13aの厚さにもよるが片方で固形分換算で数10μm〜数100μmの範囲である。
【0039】
また、前述のように、積層裏面材13をドライラミネート方式や押出しラミネート方式により貼り合せて製造する際に、断熱パネル10の製造時に断熱材12と接着する側の合成樹脂製フィルム13bの張力を反対側の合成樹脂フィルム13cをラミネートの際より大きくし、合成樹脂製フィルム13bの内部歪をやや大きくすることにより、その合成樹脂製フィルム13bの収縮により積層裏面材13を断熱材12側に若干カールさせることができる。
これにより、断熱パネル10,10同士を嵌合連結した際に相手の断熱パネル10,10との密接状態をより向上させることができ、アンモニアや水の浸入を一層抑制することが出来る。
【0040】
さらに、積層裏面材13にカールを与える方法として、断熱材12側の合成樹脂フィルム13bの厚さを反対側の合成樹脂フィルム13cよりやや厚くしたり、断熱材12側の接着剤の厚さを反対側のそれより厚くしたり、あるいはこれらを組み合わせることにより適度なカールを付与することができ、積層裏面材13とその延長部16との密接性を一層向上することが出来る。
【0041】
このような積層裏面材13、すなわち、有機繊維及び/又は無機繊維から成る網状体13aを芯材としてその表裏両面に厚さが0.03〜0.3mm、引張弾性率が1000MPa以上で引張破壊伸びが10%以上の硬くて靭性のある合成樹脂製フィルム13b,13cを貼り合せることにより、得られる積層裏面材13は靭性に優れ、しかも厚さが比較的薄くても剛性、特に曲げ剛性が高い(腰の強い)特性を持ち、長く巻いてもシート形状が良好である。
これにより、次工程での断熱パネル10の製造に於いて、効率的な生産が可能であり、更に得られた断熱パネル10,10を嵌合した場合の嵌合連結部14,15の密接状態も良好な強靭で耐衝撃性に優れる積層裏面材13を与えるものである。
尚、網状体13aの厚さを厚くして相対する合成樹脂フィルム13b、13c間の間隔を増加することにより曲げ剛性は高くなる傾向にあり、合成樹脂フィルム13b、13cの種類や厚さそして網状体13aの厚さなどを適宜選定することにより、目的とする特性に,より近い低コストの積層裏面材(断熱パネル用裏面材)が得られることとなる。
【0042】
この積層裏面材13の厚さは0.15〜1.0mm、好ましくは0.2〜0.6mmである。積層裏面材13の厚さが0.15mm未満の場合は面材に腰がなく(剛性が低く)断熱パネルを嵌合した際に相手の断熱パネルとの密接状態が確保できず、1.0mmを超えると腰が強過ぎて(剛性が高くなり過ぎて)ロール状に巻き難く数量を多く巻けないばかりかコストがアップするなどの問題がある。
【0043】
本発明の断熱パネル10は、通常使用されている厚さ0.1〜0.5mmのガルバリウム鋼板を表面材11として嵌合連結部14,15を含む所定の形状に表面材成形機で冷間成形を行い、略樋状の表面材11の内側に断熱材12となる発泡性硬質ポリウレタン原液を吐出ノズルで注入し、積層裏面材13に必要に応じてコロナ放電処理やアンカーコート処理などの接着処理を施した被接着面を断熱材12である硬質ポリウレタン原液側に向けて断熱材12を覆うように積載し、ダブルコンベアにて発泡と同時に加熱圧着して連続製造した後、冷却・定寸に切断装置で裁断することにより製造される。
尚、ダブルコンベアでの加熱は概ね室温〜80℃で約1〜3分で、断熱パネル10の製品厚さは約15〜50mmである。
【0044】
このように構成した断熱パネル10を天井材として使用する場合の施工方法を説明する。先ず最初の断熱パネル10を所定の位置に配置した後、パネルの裏面よりビスで下地(桟木)に固定し、次いで隣接する断熱パネル10の嵌合突部15の突出部15bを先に固定した断熱パネル10の嵌合受部14の凹部14bに挿入し嵌合する。こうして、隣接する断熱パネル10,10同士が嵌合連結された後、嵌合部の積層裏面材13の延長部を裏面側よりビスで固定する。
【0045】
このような操作を繰り返して天井材としての断熱パネル10の施工が行われる。
【0046】
こうして構築された断熱パネル10による天井や屋根、内外壁面によれば、外壁面と断熱材と内壁面との3つの機能を持つ建材の施工が同時にでき、しかも積層裏面材13を室内側に配置することで、耐アンモニア性や強度に優れた壁面とすることができ、高圧液により凹んだり亀裂が生じることがなくなるとともに、積層裏面材13の延長部16で嵌合連結部14,15を覆うことで、目地部分を密着状態に塞ぐことができる。
これにより、畜舎等で定期的に行われる薬剤の散布や水などによる洗浄の際にこれらが目地部分に浸入することを防止することができる。
【0047】
さらに、積層裏面材13にカールを付与することで、延長部16の先端部を断熱材12側に反らせて隣接する断熱パネル10の積層裏面材13との圧着力を増大でき、一層確実に水などの浸入を防止することができる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の実施例を比較例とともに、具体的に説明するが、本発明はこれ等実施例に何ら限定されるものではない。
なお、実施例と比較例では、主として積層裏面材の仕様を替えた断熱パネルについて評価した。
この断熱パネルの積層裏面材に使用している合成樹脂フィルム、および比較例の防蝕層付きアルミ箔ラミネート紙の厚さ、引張破壊強さ、引張破壊伸び、引張弾性率については、表2に記載のとおりである。
【0049】
積層裏面材、断熱パネルの評価方法と評価基準について
1)積層裏面材の剛性(腰の強さ)
積層裏面材を水平状態にし、面材の垂れ具合を評価した。
○:垂れなかった
△:やや垂れた
×:垂れ下がった
2)面材の引張破壊強さ(kgf/cm)
JIS K7127に準じて、引張速度50mm/minの条件下で測定を行った。
3)断熱パネルの耐高圧洗浄性
高圧洗浄機が噴射する高圧の点状(噴角が極小さい時)の水により、被洗浄体(断熱パネル)は衝撃力を受けるので、それを想定し、落錘を使った耐衝撃試験を行った。
また、高圧洗浄機が噴射する高圧の点状(噴角が極小さい時)の水により、被洗浄体(断熱パネル)は打撃圧力を受けるので、それを想定し、局部圧縮抵抗性試験を行った
3−1)耐衝撃性
落錘(先端中央に7.8mmφ×10mmの円柱状鋼製突起を設けたナス型錘)を30cmの高さから試験体(0.27mmガルバリウム鋼板/硬質ウレタンフォーム/面材、厚さ30mm)の面材表面に落下させた。
○:面材が損傷しなかった。
×:面材が損傷した。
3−2)耐局部圧縮抵抗性
落錘(先端中央に7.8mmφ×10mmの円柱状鋼製突起を設けたナス型錘)を試験体(0.27mmガルバリウム鋼板/硬質ウレタンフォーム/面材、厚さ30mm)の面材側に、200mm/minの押し込み速度で押込み、その際の応力をオートグラフで測定し、同様の操作を3回繰り返して測定した。
なお、この試験において70kgf/cm
2を超えたものは、高圧洗浄機が噴射する点状の水の距離10cmによる70kgf/cm
2の打撃圧力に耐えられるものである。
○:3回の平均値が70kgf/cm
2を超えていた。
×:3回の平均値が70kgf/cm
2以下であった。
6)断熱パネルの嵌合連結部の密接状態
得られた断熱パネル同士を嵌合連結した。
◎:裏面材の延長部が、隣接する断熱パネルの裏面材と密接状態であった。
○:裏面材の延長部が、隣接する断熱パネルの裏面材と触れている状態であった。
×:裏面材の延長部と、隣接する断熱パネルの裏面材との間に隙間が生じていた。
なお、表2における合成樹脂フィルム、防蝕層付きアルミ箔ラミネート紙の引張破壊強さ(kgf/cm)、引張破壊伸び(%)は、JIS K7127に準じて、引張速度50mm/minの条件下で測定を行った。また、引張破壊弾性率(Mpa)は、JIS K7127に準じて、引張速度1mm/minの条件下で測定を行った。
【0050】
(実施例1)
1)積層裏面材の製造
押出機を使用し、
合成樹脂フィルムとしての厚さが50μmのOPPフィルムと、
網状体としての厚さが200μm、坪量が48g/m
2の割繊網状体(JX日鉱日石ANCI(株)社製のワリフEX(T)とを、
白色に着色したポリエチレン系接着剤40μmを介して貼り合せ、
続いて、押出機を使用し、
得られた合成樹脂フィルム/接着剤/網状体と、
合成樹脂フィルムとしての厚さが50μmのOPPフィルムとを、
白色に着色したポリエチレン系接着剤40μmを介して貼り合せ、
続いて、後述する硬質ポリウレタンフォームと接着する表面、すなわち、合成樹脂フィルムの表面にコロナ放電処理を施し、
総厚が0.35mmの合成樹脂フィルム/接着剤/網状体/接着剤/合成樹脂フィルムからなる積層裏面材を得た。
得られた積層裏面材は、垂れることがなく剛性(腰の強さ)があるもの(○)であり、引張破壊強さにおいてもMD(縦方向)が11.5 kgf/cm、TD(横方向)が34.6kgf/cmで、ともに10kgf/cmを超えるものであり、更には、蛇行やフレア、タルミ、反りが無く、シート形状が良好なものであった。
2)断熱パネルの製造
厚さが0.27mmのガルバリウム鋼板を表面材とし、例えば
図1に示すように、両端縁部に嵌合連結部を含む所定の形状に冷間成形し、表面材の内側に断熱材となる発泡性硬質ウレタン原液を注入し、その後直ちに積層裏面材を25mm程突出させて、発泡しつつあるウレタン原液に接するように積載し、これを所定の間隙に設定されたダブルコンベアベルトに搬送し、加熱・加圧して硬質ウレタン原液の発泡を完結させ、冷却後定寸に裁断して、厚さが30mmのガルバリウム鋼板/硬質ポリウレタンフォーム/面材からなる断熱パネルを得た。
3)評価
得られた断熱パネルについて、耐高圧洗浄性、嵌合部の密接状態について評価を行った。
その結果、表1に示すように、耐衝撃性は面材に損傷はなく(○)、耐局部圧縮抵抗性など高圧洗浄時の高圧水に対する抵抗は3回の平均値が70kgf/cm
2を超えており(○)、パネル同士を嵌合した場合の嵌合部の密接状態も良好なもの(○)であった。
【0051】
(実施例2)
1)積層裏面材の製造、
合成樹脂フィルムとしての厚さが50μmのPETフィルムと、
網状体としての厚さが90μm、坪量が29 g/m
2の割繊網状体(JX日鉱日石ANCI(株)社製のワリフMS24)を使用し、断熱パネルの製造時に断熱材と接着する側の合成樹脂フィルムの張力を反対側の合成樹脂フィルムのラミネートの際よりやや大きくした以外は、実施例1の積層裏面材と同じ方法にて、総厚0.24mmの合成樹脂フィルム/接着剤/網状体/接着剤/合成樹脂フィルムからなる積層裏面材を得た。
得られた積層裏面材は、やや垂れ、剛性(腰の強さ)がやや劣るもの(△)であったが、引張破壊強さにおいてはMD(縦方向)が20.2 kgf/cm、TD(横方向)が29.2kgf/cmで、ともに10kgf/cmを超えるものであった。更には、蛇行やフレア、タルミが無く、シート形状としては良好であり、コロナ放電処理面側(硬質ウレタンフォームと接着する面側)にカールを付与することができた。
2)断熱パネルの製造
続いて、得られた積層裏面材を使用して実施例1と同じように厚さ30mmのガルバリウム鋼板/硬質ポリウレタンフォーム/面材からなる断熱パネルを得た。
3)評価
そして、得られた断熱パネルについて、耐高圧洗浄性、嵌合部の密接状態について評価を行った。
その結果、表1に示すように、耐衝撃性は面材に損傷はなく(○)、耐局部圧縮抵抗性など高圧洗浄時の高圧水に対する抵抗は3回の平均値が70kgf/cm
2を超えており(○)、パネル同士を嵌合連結した場合の積層裏面材の延長部がカールし、もう一方の断熱パネルの積層裏面材に隙間無く密着し、このカールした積層裏面材により一層良好な密接状態を得ることが出来た(◎)。
【0052】
(実施例3)
1)積層裏面材の製造
合成樹脂フィルムとしての厚さが100μmのPETフィルムと、
網状体として厚さが170μm、坪量が36 g/m
2の割繊網状体(JX日鉱日石ANCI(株)社製のワリフHS(T))を使用し、断熱パネルの製造時に断熱材と接着する側の合成樹脂製フィルムの張力を反対側の合成樹脂フィルムのラミネートの際よりやや大きくした以外は、実施例1の面材と同じ方法にて、総厚0.38mmの合成樹脂フィルム/接着剤/網状体/接着剤/合成樹脂フィルムからなる面材を得た。
得られた面材は、垂れることがなく剛性(腰の強さ)があり(○)、引張破壊強さにおいてはMD(縦方向)が42.3 kgf/cm、TD(横方向)が49.4 kgf/cmであり、ともに10kgf/cmを超えるものであった。更には、蛇行やフレア、タルミが無く、シート形状としては良好であり、コロナ放電処理面側(硬質ウレタンフォームと接着する面側)にカールを付与することができた。
2)断熱パネルの製造
続いて、得られた積層裏面材を使用して実施例1と同じように厚さ30mmのガルバリウム鋼板/硬質ポリウレタンフォーム/面材からなる断熱パネルを得た。
3)評価
そして、得られた断熱パネルについて、耐高圧洗浄性、嵌合部の密接状態について評価を行った。
その結果、表1に示すように、耐衝撃性は面材に損傷はなく(○)、耐局部圧縮抵抗性など高圧洗浄時の高圧水に対する抵抗は3回の平均値が70kgf/cm
2を超えており(○)、断熱パネル同士を嵌合連結した場合の積層裏面材の延長部がカールし、もう一方の積層裏面材に隙間無く密着し、このカールした積層裏面材により一層良好な密接状態を得ることが出来た(◎)。
【0053】
(比較例1)
裏面材として厚さが0.2mmの表面に12μmのPETフィルムを設けたアルミニウム箔ラミネート紙(詳細:PETフィルム(12μm)/PUR接着剤/AL箔(7μm)/LDPE(20μm)/Kライナー125g/LDPE(25μm)/コロナ処理)からなる面材を使用した以外は、実施例1と同じ方法にて、厚さ30mmのガルバリウム鋼板/硬質ポリウレタンフォーム/面材からなる断熱パネルを得た。
そして、得られた断熱パネルについて、耐高圧洗浄性、嵌合部の密接状態について評価を行った。
その結果、表1に示すように、裏面材がやや垂れ(△)、面材が損傷し耐衝撃性が劣る(×)とともに、耐局部圧縮抵抗性において3回の平均値が70kgf/cm
2以下の劣るもの(×)であり、高圧洗浄に耐え得るものではなかった。更に、得られた断熱パネル同士を嵌合連結した場合、裏面材における延長部が、断熱材側とは反対に反り上がり、良好な密接状態が得られなかった(×)。
【0054】
(比較例2)
裏面材として厚さが0.62mmの白色に着色したPPシートを使用した以外は、実施例1と同じ方法にて、厚さ30mmのガルバリウム鋼板/硬質ポリウレタンフォーム/面材からなる断熱パネルを得た。
そして、得られた断熱パネルについて、耐高圧洗浄性、嵌合部の密接状態について評価を行った。
その結果、表1に示すように、裏面材がやや垂れ(△)、面材が損傷し耐衝撃性が劣る(×)とともに、耐局部圧縮抵抗性において3回の平均値が70kgf/cm
2以下の劣るもの(×)であり、高圧洗浄に耐え得るものではなかった。更に、得られた断熱パネル同士を嵌合連結した場合、裏面材が波打っていた(フレア)ので隣接する断熱パネル同士を所定位置に嵌合することが出来なかった(×)。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】