(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
各飛行セグメントが開始トリガー及び終了トリガーによって画定されており、最初の開始トリガー以外の各開始トリガーが、直前の終了トリガーに連結している、請求項1に記載の方法。
飛行セグメントの飛行の意図を表現することが、1の目的を、当該目的が最適化しようとする航空機の運動に対して持つ効果によって規定することを更に含む、請求項5に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
航空機の飛行経路を計算するシステム100が、
図1及び2に示されている。本出願人による米国特許出願公開第2010−0305781号(発明の表題「PREDICTING AIRCRAFT TRAJECTORY」には、航空機の意図が更に詳細に記載されている。本特許出願は、飛行の意図に関する。
【0020】
図1は飛行の意
図101を使用して航空機の意
図114を得るための方法、並びに航空機の意
図114を使用して航空機の飛行経路122の説明を得るための方法を示している。基本的に、飛行の意
図101は、意図生成インフラストラクチャー103への入力として供給される。この意図生成インフラストラクチャー103は、飛行の意
図101によって供給される明確な命令を使用して航空機の意
図114を決定し、更に一組の命令を裏付ける他の入力が供給されて、明確な飛行経路122の計算が可能になる。意図生成インフラストラクチャー103によって出力された航空機の意
図114は、次いで、飛行経路計算インフラストラクチャー110への入力として使用される。飛行経路計算インフラストラクチャー110は、航空機の意
図114と、航空機の運動方程式を解くために必要な他の入力とを使用して、明確な飛行経路122を計算する。
【0021】
図2は、
図1のシステムを更に詳細に示している。
【0022】
図示のように、意図生成インフラストラクチャー(IGI)103は、航空機の初期状態102の説明と共に、飛行の意
図101の説明を入力として受け取る(航空機の初期状態102は飛行の意
図101の一部と定義することができ、この場合これら2つの入力が同一であると効率的である)。意図生成インフラストラクチャー103は、意図生成エンジン104と一対のデータベースとを備えており、データベースの一方はユーザー嗜好モデル105を、他方は運航状況モデル106をそれぞれ保存している。
【0023】
ユーザー嗜好モデル105は、航空機を制御する好ましい運航戦略、例えば荷重(ペイロード及び燃料の両方)に関する航空会社の嗜好;航空機の水平方向及び垂直方向の経路と速度プロファイルとに影響する気温、風速、高度、ジェット気流、雷雨、及び乱気流といった気象条件にどのように反応するか;飛行時間又は飛行費用、メンテナンス費用、環境インパクトを最小化するような原価構成;通信容量;並びにセキュリティ上の考慮事項を具現化したものである。
【0024】
運航状況モデル106は、空域の使用上の制約を具現化したものである。意図生成エンジン104は、飛行の意
図101、初期状態102、ユーザー嗜好モデル105、及び運航状況モデル106を使用して、出力として航空機の意
図114を供給する。
【0025】
図2は、飛行経路計算インフラストラクチャー(TCI)110が飛行経路エンジン112を含んでいることを示している。飛行経路エンジン112は、上述の航空機の意
図114、及び航空機の初期状態116の両方を入力として必要とする。航空機の初期状態116は航空機の意
図114の一部と定義することができ、この場合、これら2つの入力は同一であると効率的である。飛行経路エンジン112が、計算された航空機の飛行経路122の説明を供給する場合、飛行経路エンジン112は、2つのモデル、即ち、航空機の性能モデル118と地球モデル120とを使用する。
【0026】
航空機の性能モデル118は、飛行経路エンジン112が運動方程式を統合するために必要とする航空機の性能的側面の値を供給する。これらの値は、飛行経路が計算される航空機の種類、航空機の現在の運動状態(位置、速度、重量など)及び現在の局所的な大気条件によって決まる。
【0027】
加えて、性能の値は、航空機に意図される運航、即ち航空機の意
図114によって決まる。例えば、飛行経路エンジン112は、航空機の性能モデル118を使用して、特定の航空機の重量、大気条件(気圧高度及び気温)、並びに意図される速度スケジュール(例えば、較正された一定の対気速度)に対応する瞬間的な降下率の値を供給することができる。飛行経路エンジン112はまた、航空機の運動が飛行エンベロープの範囲内に維持されることを保証するために、航空機の性能モデル118に対し、適用可能な制限の値を要求する。航空機の性能モデル118は、飛行経路エンジン112に対し、フラップ及びランディングギヤの配備時間といった航空機に固有のその他の性能関連側面を提供するという役割も担っている。
【0028】
地球モデル120は、大気の状態、気象条件、重力、及び磁気変動といった環境条件に関する情報を供給する。
【0029】
飛行経路エンジン112は、これらの入力と、航空機の性能モデル118及び地球モデル120とを使用して、一組の運動方程式を解く。複雑さを異にする様々な運動方程式の組を利用することができ、これは、特定の組の単純化の仮定を用いて航空機の運動の自由度を低下させることができる。
【0030】
飛行経路計算インフラストラクチャー110は、対気ベースのものでも、対地ベースのものでもよい。例えば、飛行経路計算インフラストラクチャー110は、航空会社の運航嗜好と事業目的とを取り込む予測された飛行経路に基づいて航空機を制御する航空機の飛行管理システムに関連付けられる。対地ベースの飛行経路計算インフラストラクチャー110の主要な役割は、航空交通流の管理を目的としている。
【0031】
航空機の飛行経路を説明する標準化された方式を使用して、空域のユーザーと管理者との相互運用性を高めることができる。更に、標準化された形式から専用の形式へと情報を変換することが必要であるとしても、現在飛行経路の予測を行う多くの従来式ソフトウェアパッケージ間における互換性が向上する。
【0032】
更に、標準化された方式は、飛行の意
図101及び航空機の意
図114にも有用に働く。例えば、飛行の意
図101は、航空機の意
図114の命令、及びその他の構造を使用することができる。加えて、航空機の運動の一部の側面しか判明していない場合に、本明細書に開示される飛行の意
図101により、ユーザーは、航空機の意
図114の定式化を可能にする航空機の意図の言語を拡張することができる。
【0033】
飛行の意
図101は、航空機の意
図114を拡大及び標準化した形式と考えることができるので、航空機の意
図114を元に、飛行の意
図114の標準化に使用される主要な概念の導入を併せて行うことが有用である。
【0034】
航空機の意図
好ましい一実施形態では、航空機の意
図114の説明は、形式言語を用いて表現される。一定の時間間隔の間の航空機の飛行方法を規定する情報が受け取られ、航空機の空力形状を説明する機体形状命令と、航空機の運動を説明する運動命令とを含む一組の命令が生成される。この命令の組は、機体形状命令が航空機の空力形状を規定していることと、運動命令が、航空機の運動を説明するために使用される運動方程式の自由度を決定していることとを保証する一組のルールに準拠しているかどうかをチェックされる。航空機の意図の説明は、形式言語、即ち航空機の意図を記述する言語での一組の命令の表現式であり、航空機の飛行経路122を明確に規定する。この表現式を飛行経路計算エンジン112が使用して、航空機の運動を決定する運動方程式を解く。
【0035】
航空機の運動を説明する運動方程式の多数の組が従来技術に存在する。このような方程式の組は、通常、複雑さを異にしている。基本的には、これらの方程式の組のいずれを使用してもよい。運動方程式に登場する変数は航空機の意
図114を規定する命令にも登場するため、運動方程式の実際の形式は、航空機の意図を記述する言語の定式化方法に影響する。しかしながら、飛行の意
図101は、飛行の意
図101が表現する航空機の意
図114により、使用される特定の運動方程式に特有の詳細が何も特定されないという意味で、そのような制約を受けない。しかしながら、航空機の意
図114は特定の組の運動方程式に特有であり、したがって変数を含みうる。
【0036】
運動方程式の組は、航空機を質量が変動する剛性の固体と考えた場合の、航空機の重心の運動を説明する。航空機の重心の位置(経度、緯度、及び高度)は3つの座標により説明され、航空機の姿勢(ロール、ピッチ、及びヨー)は3つの値により説明される。方程式を得るために、一組の単純化の仮説を、大気圏内の動力飛行を表わす一般式に適用することができる。
【0037】
運動方程式には、航空機の性能及び気象条件に関する変数が含まれ、これらは航空機の性能モデル118及び地球モデル120により供給される。これらの方程式を解くには、航空機の機体形状を特定しなければならない。例えば、ランディングギヤ、スピードブレーキ、及び高揚力装置の設定を決定するための情報が必要とされる。
【0038】
欧州特許出願公開第2040137号は、上述のように、7つの非線形常微分方程式からなる系を形成する運動方程式を、ランディングギヤ設定、高揚力装置設定、及びスピードブレーキ設定を含む所定の航空機の機体形状の画定に用いることを記載している。この運動方程式は、1の独立変数(時間)と10の従属変数とを有し、したがって3の数学的自由度(即ち、従属変数の数−方程式の数)を有している。つまり、運動方程式をこのように選択することは、外形に関する3の自由度を規定して決定された解を得ることにより、航空機の飛行経路を明確に規定する必要があること、加えて、更に3の自由度を決定することにより航空機の機体形状を規定する必要がある(飛行経路122を取得するために、ランディングギヤ、スピードブレーキ、及び高揚力装置の入力が常に決定されていなくてはならない)ことを意味している。
【0039】
航空機の意図を記述する言語は、基本が命令である形式言語である。形式言語の文法は、運航を説明する文へと命令を組み合わせることができる枠組みを提供する。各運航は、必要とされる運動方程式中の6の自由度を決定する命令の完全な組を含み、したがって関連する運航インターバル中の航空機の飛行経路122を明確に規定する。
【0040】
命令は、パイロット及び/又は飛行管理システムの自由な基本的なコマンド、誘導モード、及び制御入力を取り込んでいる。各命令は、3つの主要な機能により特徴付けられる。
【0041】
命令の効果は、航空機の運動に対するその影響の数学的記述により規定される。命令の効果は、実行インターバル中の運動方程式と共に満たされなければならない数学的方程式として表現される。
【0042】
命令の意味は、その内在的な目的により与えられ、命令に取り込まれたコマンド、誘導モード、又は制御入力の運航上の目的に関連付けられる。
【0043】
実行インターバルは、命令が航空機の運動に影響している期間、即ち、運動方程式と命令の効果が同時に満足されなければならない期間である。複数の命令の実行は重複させることができ、このような命令は両立性と呼ばれる。両立不能な命令も存在し、これらは重複する実行インターバルを有することができない(例えば、航空機の上昇と下降のように相反する要求を生じる命令)。
【0044】
図3に示すように、命令は、まず命令の効果に焦点を当てて分割し、次いで両立不能な命令をまとめることによりグループ分けされる。最上位では、命令は、2つのグループ、即ち、機体形状命令270と運動命令260とに分割される。
【0045】
機体形状命令270は、高揚力装置、ランディングギヤ、及びスピードブレーキにより決定される航空機の瞬間的な空力形状に関する。このグループのメンバーの効果はどれも、関連するコンポーネントの位置の、時間の経過に伴う変化である。
【0046】
第1のグループは、高揚力形状、即ちHLCと呼ばれ、高揚力装置の設定(SHL)高揚力装置の法則(HLL)、及び高揚力装置の保持(HHL)という命令を含む。
【0047】
第2のグループは、スピードブレーキ形状、即ちSBCと呼ばれ、スピードブレーキの設定(SSB)、スピードブレーキの法則(SBL)、オープンループスピードブレーキ(OLSB)、及びスピードブレーキの保持(HSB)という命令を含む。
【0048】
第3のグループは、ランディグギヤ形状、即ちLGCと呼ばれ、ランディングギヤの設定(SLG)、及びランディングギヤの保持(HLG)という命令を含む。
【0049】
航空機の機体形状は常に完全に決定されていなければならないので、これらのグループの各々からのアクティブな1の命令が常に存在しなければならない。
【0050】
運動命令260には、採用される操縦コマンド、誘導モード、及び航法戦略が取り込まれている。運動命令の効果は、命令の実行インターバルの間の自由度の1つを明確に決定する数学的方程式として規定される。3の自由度を決定するために、常に3つの運動命令がアクティブでなければならない。下記のように、運動命令は、それらの効果にしたがって10のグループに分類され、各グループは両立不能な命令を含んでいる。
1.グループSG−速度誘導: 速度の法則(SL)及び速度の保持(HS)を含む。
2.グループHSG−水平方向の速度誘導: 水平方向の速度の法則(HSL)及び水平方向の速度の保持(HHS)を含む。
3.グループVSG−垂直方向の速度誘導: 垂直方向の速度の法則(VSL)及び垂直方向の速度の保持(HVS)を含む。
4.グループPAG−経路角度の誘導: 経路角度の設定(SPA)、経路角度の法則(PAL)、及び経路角度の保持(HPA)を含む。
5.グループLAG−局所高度の誘導: 高度の法則(AL)、及び高度の保持(HA)を含む。
6.グループVPG−垂直方向位置の誘導: 垂直経路の飛行(TVP)を含む。
7.グループTC−スロットル制御: スロットルの設定(ST)、スロットルの法則(TL)、スロットルの保持(HT)、及びオープンループスロットル(OLT)を含む。
8.グループLDC−側方方向の制御: バンク角の設定(SBA)、バンク角の法則(BAL)、バンク角の保持(HBA)、及びオープンループバンク角(OLBA)を含む。
9.グループDG−方向誘導: コースの法則(CL)及びコースの保持(HC)を含む。
10.グループLPG−側方位置の誘導: 水平経路の飛行(THP)を含む。
【0051】
航空機の意図に関して受け取られた情報(例えば、飛行の意図、オペレーターの嗜好、パイロットの選択、飛行手順など)は、上記グループの命令にマッピングすることができる。例えば、手動入力されるスロットルの制御は、TCグループにマッピングされる。同様に、パイロットは、VSG及びPAGグループにマッピングされる速度及び経路角度の両方を含む降下手順を選択しながら、LPGグループにマッピングされる磁方位を維持することができる。
【0052】
下記のように、7つのルールにより命令の可能な組み合わせが決定される。
1.1の運航は6の命令を有さなければならない(下記3及び4に従う)。
2.各命令は異なるグループに属するものでなければならない(同じグループのメンバーは両立不能であるため)。
3.HLC、LGC、及びSBCの各々(例えば、航空機の機体形状を規定する形状命令グループ)に属する命令をそれぞれ1つ有さなければならない。
4.グループDG、LPG、LDC、TC、SG、HSG、VSG、PAG、AG、及びVPGのいずれか(即ち、3の自由度を決定する運動命令グループ)に属する命令を3つ有さなければならない。
5.DG、LPG、及びLDCに属する命令は1つしか有することができない(側方運動について相反する要件を避けるため)。
6.SGグループ及びHSGグループに属する命令は同時に存在することができない(速度について相反する要件を避けるため)。
7.グループVSG、PAG、AG、及びVPGに属する命令は同時に存在することができない(垂直方向の速度、経路角度、及び高度について相反する要件を避けるため)。
【0053】
上記のルールの文言は、飛行経路の計算に先立って航空機の飛行経路を明確に規定する全ての方法を取り込んだものである。したがって、航空機の意図が上記ルールに適合する1の事例には、航空機の唯一の飛行経路を計算するために必要十分な情報が含まれている。
【0054】
ここまで、航空機の意図について説明した。次に、飛行の意図についてもう一度考慮する。
【0055】
飛行の意図
特定の航空機の飛行経路は、所定の目的の組と、所定の制約の組との折衷として規定される。これらの制約及び目的は、特定の航空機の挙動に関係なく飛行の青写真と考えることができ、飛行経路に加味される制限として従わなければならない。上述のように、このような概念は飛行の意図と呼ばれる。重要なのは、飛行の意図により航空機の運動が明確に決定されなくてもよいということである。原理的には、所与の飛行の意図により規定される制約の組を満たす多数の飛行経路があってよい(無限にあってもよい)。飛行の意図と航空機の意図との関係を別の観点から考慮すると、飛行の意図の一事例が一連の航空機の意図を生じ、航空機の意図の各事例が個別の明確な飛行経路に帰結するといえる。特定の航空機の意図の決定、即ち最終的な飛行経路の決定は、意図生成エンジン104により行われる。
【0056】
上述のように、飛行の意図の各事例は、航空機の運動を一義に決定することはないが、航空機が運動する上で留意するべき特定の側面を規定する一組の高レベル条件(例えば、特定のルートを飛行すること、特定の領域では固定速度を保つこと)を含む飛行経路関連情報を含んでいる。飛行の意図は、重要な運航目的及び制約を取り込んだものであり、飛行経路はこれらの目的及び制約(意図されたルート、オペレーターの嗜好、標準運航手順、ATCの制約など)を満たさなければならない。
【0057】
飛行の意図を生成するために直接使用される情報を考慮すると、同様の要素を3つの構造分類、即ち飛行セグメント、運航状況、及びユーザーの嗜好にグループ化することができる。
【0058】
飛行セグメントは、組み合わせると、フライト中に航空機が飛行する飛行経路を形成する。運航状況は、一次元又は二次元において航空機が飛行する飛行経路を制限するATMの制約の組を含む。これらには、高度の制約、速度の制約、上昇/降下の制約、機首方位/ベクタリング/ルートの制約、標準手順の制約、ルート構造の制約、SIDの制約、STARの制約、並びに、調整及び転移の制約(例えば、速度及び高度の範囲や、1のセクターから次のセクターに移動するときに全てのフライトにおいて留意されるべき入口点及び出口点の位置)が含まれうる。ユーザーの嗜好は、普通、安全性及び効率に向けられ、通常はユーザーによって異なる。最も一般的なユーザーの志向は、ペイロード重量の最大化、燃料消費の最小化、超過飛行費の最小化、着陸料の最小化、メンテナンス費用の最小化といった運航利益と、COx及びNOx排出量の最小化、騒音放射の最小化といった環境インパクトの最小化と、乗客の快適さの向上(例えば、急な操縦及び極端な操縦の回避)、遅延の短縮といったサービスの質とに関連している。
【0059】
飛行の意図を記述する言語(FIDL)
記号又は文字(アルファベット)からなる空でない有限集合から構成されて、一組の文字列又は語句を生成するために使用される形式言語を用いて飛行の意図を表わすことが提案される。文法、即ちアルファベットから文字列へ、及び文字列から文への許容可能な連結を決定する一組のルールも必要となる。
【0060】
アルファベットには、
図4に示されるように、3種類の文字、即ち飛行セグメント、制約、及び目的が含まれる。後述する文法規則に従うこれらの要素の適切な組み合わせにより、1の文が形成される。1の文は、飛行セグメントを順番に、即ち発生順に並べたものであり、航空機の運動を左右するのにアクティブな種々の制約と目的とが含まれている。
【0061】
アルファベットに含まれる飛行セグメントは、航空機の運動状態の、1の状態から別の状態への変更(例えば、3Dの1の点から別の3Dの点への平行移動、2つのコースの間での方向転換、2つの速度間での加速、又は高度の変更)の意図を表わしている。飛行セグメントは、飛行すべき飛行経路に特定の要件を確立する条件又は事象により特定される2つの航空機の運動状態によって特徴付けられる。これらの条件は、飛行セグメントの実行インターバルを表わす。このような条件は、飛行セグメントの間の航空機の運動の1又は複数の自由度を決定することができる。
【0062】
制約は飛行経路に対する制限を表わし、このような制約は、適用可能な1又は複数の飛行セグメントの間に利用できる未決の自由度を使用することにより満たされる。
【0063】
目的は、特定の一次関数(例えば、費用を最小化する巡航)を最大化又は最小化する飛行経路に関する欲求を表わしている。目的は、飛行セグメントに影響する制約を考慮するために使用されるものを除いて、適用可能な飛行セグメント中に利用できる未決の自由度を利用することによって達成される。
【0064】
これら3つの要素を組み合わせることにより、有効なFIDL文字列として語句を構築することができる。例えば、「地点RUSIKから地点FTVまで飛行する」という飛行の意図の情報は、初期状態が地点RUSIKの座標により規定され、最終状態が地点FTVの座標によって規定される飛行セグメントを含むFIDL語句によって表現することができる。このような飛行の意図の情報は、「飛行レベルを300フィート(FL300)より上に維持する」などの制約により拡大することができる。同様に、FIDL語句に対し、飛行経路を左右する何らかの目的に関するこのような情報を付加することが可能である。全ての制約又は目的が飛行セグメントに適合することを確実にするために、自由度として表現される航空機の運動の影響される側面は、飛行セグメントによって予め決定されていてはならない。前例では、飛行セグメントがどのような垂直方向の挙動も規定していないことにより、飛行レベルの制約は飛行セグメントに適合する。しかしながら、飛行セグメントに、RUSIKとFTVの間で航空機が一定の経路角度で降下することが明示されている場合、垂直方向の自由度は決定されており、制約は許容されない。したがって、後述されるFIDLの語彙規則は制約を禁じている。
【0065】
多くの場合、制約及び目的は、複数の飛行セグメントからなる1のシーケンス全体に亘る。1の制約又は目的は、それが影響しうる一組の連続する飛行セグメントに関連付けることができる。このことは、このような制約又は目的が、第1の飛行セグメントの初期状態が達成された直後から最後の飛行セグメントの最終状態まで、航空機の意図の生成プロセスにおいて考慮されることを意味する。これは、この制約又は目的が全ての飛行セグメントに影響することを意味しているのではなく、この制約又は目的が、全ての飛行セグメントについて考慮され、特定の飛行セグメントにおける航空機の運動に影響することもあれば又はしないこともあるということを意味する。
【0066】
図5は、上記3つの要素を使用して表現されたFIDLシーケンスをグラフで示している。この図は、地点RUSIKから地点FAYTAまで、途中の地点FTVにおいて方向転換することにより飛行するという意図を表わしている。このシーケンスは以下の要素によって形成される。
【0067】
飛行セグメント
FS
1: 地点RUSKIによって規定される初期状態と、地点FTVにおける方向転換操作の開始によって規定される最終状態との間
FS
2: 地点FTVにおける方向転換操作の開始と終了との間
FS
3: 地点FTVにおける方向転換操作の終了により規定される初期状態と、地点FAYTAにより規定される最終状態との間
【0068】
制約
C
1: コース223°を維持するという側方の制限
C
2: 250ノット較正対気速度以下(AoB)で飛行するという速度制限
C
3: 5000フィート以上(AoA)で飛行するという高度制限
【0070】
初期状態及び最終状態は開始トリガー及び終了トリガーにより規定され、開始トリガー及び終了トリガーは、飛行経路上での飛行セグメントの効果のアクティブ化とアクティブ解除を示す。1の飛行セグメントの開始トリガーは、直前の飛行セグメントの終了トリガーに常に連結する。第1の飛行セグメントの開始トリガーは、フライトの初期条件に連結する。
【0071】
飛行セグメント
1の飛行セグメントの属性は、効果、実行インターバル、及び飛行セグメントコードである。
【0072】
効果は、飛行セグメントの間の航空機の挙動に関する情報を供給し、その情報は、ゼロから、その飛行セグメントの間に航空機がどのように飛行するかに関する完全な説明までの多様性を有する。効果は、常に、航空機の意図を記述する言語(AIDL)による命令のグループにより形成される集合要素であるコンポジットか、又は他のコンポジットの組み合わせであるコンポジットにより特徴付けられる。明確な情報がなくとも1の効果を定義することができるため、コンポジットの概念は、AIDL命令が何もなくても構築されるコンポジットを含むというように一般化されているがそうではなく、コンポジットの概念はその開始トリガー及び終了トリガーのみにより定義される。このような定義は、飛行セグメントに亘って航空機の挙動が未知である場合をサポートする。
【0073】
コンポジットは、上述のAIDLの語彙規則に従ってAIDL命令を連結させた結果であるが、6の自由度を決定するという要件を満たす必要はない。航空機の運動に対する飛行セグメントの効果は、コンポジットを作り上げるAIDL命令の個々の効果の集合に相当する。
【0074】
実行インターバルは、飛行セグメントがアクティブである期間を定義し、航空機の初期状態と最終状態を定義する。実行インターバルは開始トリガー及び終了トリガーによって固定され、これらのトリガーは、この飛行セグメントを定義するコンポジットの開始トリガー及び終了トリガーと同じでなければならない。
【0075】
開始トリガー及び終了トリガーは、
図6に示されるように、異なる形態をとることができる。明示トリガー310は、固定トリガー312と浮遊トリガー314とに分けられる。黙示トリガー320は、連結トリガー322、自動トリガー324、及び初期設定トリガー326に分けられる。
【0076】
まず、明示トリガーの場合、固定トリガーは、例えば固定時刻に対気速度を設定するといったような、実行インターバルを開始又は終了させる特定の時刻を指す。浮動トリガーは、実行インターバルを開始又は終了させる特定の値に到達する速度又は高度のような、航空機の状態変数に基づいている。一実施例では、高度が10000フィートを超えるまで、対気速度を250ノットCAS未満に維持する。
【0077】
次に黙示トリガーの場合、連結トリガーは、別の飛行セグメントを基準にすることにより特定される。このように、一連のトリガーが論理的に順序付けられた飛行セグメントのシーケンスを形成する場合があり、開始トリガーの連鎖は直前の飛行セグメントの終了トリガーに基づいている。
【0078】
自動トリガーは、条件が満たされたかどうかを決定する責任を、飛行経路計算エンジンに任せる。このような構成は、それらの条件が意図生成時に不明であって飛行経路計算時でなければ判明しない場合に必要である。一実施例は、一定のバンク角でフライバイを実行する意図を有する航空機がVORラジアルを飛行することにより、別のVORラジアルを横切る場合である。意図生成時には、旋回を開始する時点に関する情報はない。その代わり、この時点は、飛行経路計算エンジンによって計算される(多くの場合、問題の様々な解法を繰返す)。
【0079】
初期設定トリガーは、航空機の性能モデルを参照することに基づいているので、意図生成時には不明であり、飛行経路計算時に決定される条件を表わす。バンク角設定命令の上記実施例は、自動開始トリガーを有していた。上記実施例の初期設定終了トリガーは、航空機の性能モデルにより供給される航空機のバンク角の時間の経過に伴う変化を定義する法則により決定される。
【0080】
飛行セグメントコード
飛行セグメントコードは、飛行セグメントの効果を特徴付けるコンポジットにより決定されない航空機の運動の自由度を示す文字数字の列である。この情報は、これらの要素が未決の自由度に影響する場合にのみ組み合わせることができるため、制約及び目的に用いられる。飛行セグメントコードは、以下のように、5つ又は6つの数字/文字により形成される。最初の4桁は、1又は0の値をとり、機体形状設定に対応する3の自由度(ランディングギヤ、スピードブレーキ、及び高揚力装置)と、航空機の運動を規定する側方の自由度とに関連している。値は、自由度が未決か決定済みかを示し、例えば、0は決定済みを、1は未決を示す。次の位置は、縦方向の両自由度が決定済み(0)であるか、両方が未決(1)であるか、又は一方のみが未決であるかを示すために、S、V、P、1、又は0のいずれかでありうる(いずれの自由度が決定済みであるかに応じたS、V、Pの組み合わせ)。最後の実施例の場合、このコードは、制約又は目的によって影響されうる航空機の運動の側面を示す。
【0081】
飛行セグメントコードの一例は0110VPである。最初の位置が0であることは、ランディングギヤ(LG)自由度が決定済みであることを示している。第2の位置が1であることは、スピードブレーキ(SB)に関する自由度が未決であることを示している。第3の位置が1であることは、高揚力装置(HL)に関する自由度が未決であることを示している。第4の位置が0であることは、側方運動(LT)に関する自由度が決定済みであることを示している。第5及び第6の位置がそれぞれV及びPであることは、縦運動に関して未決である自由度が1のみであることを示している。文字は、垂直方向のプロファイル(v)又は推進プロファイル(P)に影響する制約又は目的を付加することが可能であることを示している−Sは速度プロファイルに関する。
【0082】
コンポジット
上述のように、コンポジットは、一組のAIDL命令、又は他のコンポジットにより形成された集合要素である。コンポジットは、6全ての自由度を決定する必要なくAIDL文法規則に従って構築される。コンポジットは、3つの属性、即ち、効果、実行インターバル、及びコンポジットコードを有している。
【0083】
効果は、コンポジットを定義する各AIDL命令の個々の効果の付加である。効果を有さないコンポジットを生成することもできる。このようなコンポジットは、航空機の挙動が完全に不明である飛行セグメントを特徴付けるという特別なタスクを有している。実行インターバルは、コンポジットがアクティブなインターバルを定義する。実行インターバルの定義は、開始及び終了トリガーの説明を含めて、上記に説明したものに相当する。
【0084】
コンポジットコードは、コンポジットを定義するAIDL命令に含まれる情報を圧縮したものである。エンコードされる情報は、AIDL命令によって決定される自由度によって決まる。コンポジットコードは飛行セグメントコードに似ているが、コンポジットコードが命令によって決定済みの自由度を示す一方、飛行セグメントコードは未決の自由度を示す。
【0085】
合成プロセスの間にコンポジットを分類して異なるコンポジット間の両立性を特定するために、各コンポジットをそのコンポジットコードにより示す。コンポジットコードは、1のコンポジットに含まれるAIDL命令中に存在する文法情報、影響される自由度、及び縦方向の自由度中のプロファイルを集める。有効なコンポジットを構築するための基本的な規則は、AIDL命令を組み合わせる間に、AIDL語彙規則1(上記参照−6全ての自由度の決定)以外のAIDL文法規則を考慮しなければならないということである。
【0086】
コンポジットコードは、6〜10の数字/文字からなる文字数字の列である。最初の4桁は、1(命令が存在する)又は0(命令が存在しない)の値をとり、3の機体形状自由度(順に、ランディングギヤ、スピードブレーキ、及び高揚力装置)と、側方自由度とに関連している。最後の4桁は、速度(S)、垂直プロファイル(V)、及び推進プロファイル(P)に属する縦方向の運動に関するAIDL命令がコンポジットに含まれているかどうかを示す一組の文字(S、V、及びPの組み合わせ)である。最後の0は、2つの縦方向スレッドのうちの一方が命令を含まない場合にだけ使用される。コンポジットコード1001S0は、このコンポジットが、ランディングギヤに関する命令により(1桁目が1である)、側方運動について(4桁目が1である)、且つ速度にのみ関連する縦方向の自由度の1つについて(5及び6桁目がそれぞれS及び0である)形成されていることを意味する。
【0087】
制約
制約は、航空機が辿る飛行経路を制限することができる規則又は制限である。制約は、航空機のオペレーター、運航状況、又は航空交通管制によって自ずと課されるものである。いずれにせよ、航空機の運動に及ぼされる最終的な効果は、特定のインターバルの間の航空機の挙動に対する制限である。
【0088】
制約の属性は、効果、適用ドメイン、及び実行インターバルである。効果は、航空機の運動に対する制約の影響を表わす数式である。この影響は、方程式を定義して航空機の運動の1自由度を決定することに相当する。適用ドメインは、制約がアクティブであって、その効果が航空機の運動に適用されるインターバルを定義する。このドメインは、空間的インターバル、時間的インターバル、又はもっと複雑なインターバルとすることができる。開始トリガー及び終了トリガーが実行インターバルの範囲を示す。任意の制約の開始トリガー及び終了トリガーは、関連する飛行セグメントの開始トリガー及び終了トリガーとそれぞれ連結している。これらのトリガーは、制約が航空機の運動に影響するところを規定するのではなく、制約がアクティブとなるときを規定するだけである。制約が航空機の運動に影響するときを規定するのは適用ドメインである。
【0089】
制約は、制約の効果により影響される自由度に従って分類される。これは、飛行セグメントに適用できるかどうか(即ち、その自由度が未決であり、したがって利用可能であるかどうか)を規定する際に有用である。
【0090】
速度プロファイル制約(SPC)は、速度プロファイルに関する自由度に条件を課すという効果を有する制約である。
【0091】
垂直プロファイル制約(VPC)は、垂直方向のプロファイルに関連する自由度に条件を課すという効果を有する制約である。
【0092】
推進プロファイル制約(PPC)は、推進プロファイルに関連する自由度に条件を課すという効果を有する制約である。
【0093】
側方プロファイル制約(LPC)は、側方プロファイルに関連する自由度に条件を課すという効果を有する制約である。
【0094】
ランディングギヤプロファイル制約(LGPC)は、ランディングギヤのプロファイルに関連する自由度に条件を課すという効果を有する制約である。
【0095】
スピードブレーキプロファイル制約(SBPC)は、スピードブレーキのプロファイルに関連する自由度に条件を課すという効果を有する制約である。
【0096】
高揚力装置プロファイル制約(HLDC)は、高揚力装置に関連する自由度に条件を課すという効果を有する制約である。
【0097】
時間制約(TMC)は、決定された1の航空機の状態に関する固定の時間、例えば、1の地点における到着要求時間を設けるという効果を有する制約である。この制約は、航空機の運動の自由度に直接連結されてはいないが、飛行経路に課される条件であり、少なくとも1の自由度に必然的に影響する。
【0098】
目的
目的は、特定の適用ドメインに亘って特定の目的関数を最適化するように航空機の運動に影響を与えたいという希望を表わしている。これらの関数は、特定の航空会社の戦略又はパイロットの手順をエンコードすることができる。目的の属性は、効果、制御変数、適用ドメイン、及び実行インターバルである。
【0099】
効果は、航空機の運動に対する目的の影響を表わす数式である。目的は、最適化が最適な飛行経路を発見するプロセスとなる一次関数と定義される。この一次関数は、最適化に使用される1又は複数の変数を明示的に定義することができ、且つそれら変数に、関数を最小化または最大化する値を返すことができる。例えば、目的とされる最小コストは、速度を最適化に使用される変数として用いて、飛行経路の運航費を評価する一次関数として表現することができる。
【0100】
制御の変数は、最適化に明示的に使用される変数である。定義された一次関数の最大値又は最小値を得ることにより、最大化又は最小化の判定基準を満足させる制御変数の関数が返される。これらの変数は、一次関数を満たすために使用される航空機の運動の自由度に関連している。したがって、これらの変数は、最適化を達成するために1又は複数の自由度を使用する意図を特定する。制御変数が定義されていないとき、航空機の意図の生成プロセスは、最適化を達成するために、残っている未決の自由度のいずれかを使用する。
【0101】
適用ドメインは、目的がアクティブであって航空機の運動に影響するインターバルを定義する。このドメインは、空間的インターバル、時間的インターバル、又はもっと複雑なインターバルとすることができる。
【0102】
実行インターバルは、目的がアクティブとなって航空機の運動に影響しうるときを示す開始トリガー及び終了トリガーによって区切られる。
【0103】
目的は、目的の効果によって影響されうる自由度を考慮して分類することができる。
【0104】
速度プロファイル目的(SPO)は、速度プロファイルに関連する自由度に条件を課すという効果を有する目的である。
【0105】
垂直プロファイル目的(VPO)は、垂直方向のプロファイルに関連する自由度に条件を課すという効果を有する目的である。
【0106】
推進プロファイル目的(PPO)は、推進プロファイルに関連する自由度に条件を課すという効果を有する目的を含む。
【0107】
側方プロファイル目的(LPO)は、側方プロファイルに関連する自由度に条件を課すという効果を有する目的である。
【0108】
ランディグギヤプロファイル目的(LGPO)は、ランディングギヤのプロファイルに関連する自由度に条件を課すという効果を有する目的である。
【0109】
スピードブレーキプロファイル目的(SBPO)は、スピードブレーキのプロファイルに関連する自由度に条件を課すという効果を有する目的である。
【0110】
高揚力装置目的(HLPO)は、高揚力装置に関連する自由度に条件を課すという効果を有する目的である。
【0111】
複数プロファイル目的(MPO)は、自由度を固定せずに自由度に条件を課すという効果を有する目的である。この目的は、特定のプロファイルの最適化を行うものではない。したがって、飛行セグメント、制約、又はその他の目的によって決定されていない最適な自由度を使用することができる。
【0112】
FIDLの文法
FIDLの文法は、語彙規則と構文規則に分けられる。語彙規則は、飛行セグメント、制約、及び目的を用いた有効な語句の作成を支配する一組の規則を含む。構文規則は、有効なFIDL文を生成するための一組の規則を含む。
【0113】
語彙規則は、飛行セグメントを、FIDL語彙素、即ちそれ自体が意味を持つ最小且つ分割不能な要素と考える。制約及び目的は、語彙素の意味を補い、且つ強めるが、それ自体は意味を有さないFIDLの接頭語(又は添え字)と考えられる。したがって、語彙規則は、語彙素と接頭語を組み合わせることにより、有効なFIDL文字列を確実に生成する方法を説明している。語彙規則は、語彙素及び接頭語により形成される文字列がFIDLにおいて有効であるかどうかも判別する。
【0114】
語彙規則は、飛行セグメントを特徴付ける未決の自由度及び決定済みの自由度に基づいている。飛行セグメントが未決の自由度を有さない場合、それは関連する語彙素が完全に有意義であり、それらの意味は接頭語(制約又は目的)によって補われることがないことを意味する。飛行セグメントが1又は複数の未決の自由度を有する語彙素の場合、未決の自由度と同数の接頭語を付加することができる。語彙規則は、飛行セグメント及び関連する制約及び目的を、1又は複数の自由度が未決のままで残すこともできる。この場合、制約又は目的を付加することにより自由度を後で決定することができる。
【0115】
語彙素及び接頭語に関する上述の定義を考慮して、有効なFIDL文字列の形成を支配する語彙規則は以下のように要約される。
LR1: 有効なFIDL語は、少なくとも1の飛行セグメントによって構成されなければならない。
LR2: 全自由度が決定されている飛行セグメントを、何らかの制約又は目的と同時にアクティブにすることはできない。
LR3: 同じ自由度に影響する制約と目的、即ち、速度プロファイル制約と速度プロファイル目的;垂直プロファイル制約と垂直プロファイル目的;推進プロファイル制約と推進プロファイル目的;側方プロファイル制約と側方プロファイル目的;ランディングギヤプロファイル制約とランディングギヤプロファイル目的;スピードブレーキプロファイル制約とスピードブレーキプロファイル目的;高揚力装置プロファイル制約と高揚力装置プロファイル目的は、同時にアクティブにすることはできない。
LR4: 速度プロファイル制約と速度プロファイル目的は、飛行セグメントが少なくとも1の未決の縦方向自由度を有し、飛行セグメントの効果にアクティブな速度プロファイル命令が含まれない場合にのみ、同時にアクティブにすることができる。
LR5: 垂直プロファイル制約と垂直プロファイル目的は、飛行セグメントが少なくとも1の未決の縦方向自由度を有し、飛行セグメントの効果にアクティブな垂直プロファイル命令が含まれない場合にのみ、同時にアクティブにすることができる。
LR6: 推進プロファイル制約と推進プロファイル目的は、飛行セグメントが少なくとも1の未決の縦方向自由度を有し、飛行セグメントの効果にアクティブな推進プロファイル命令が含まれない場合にのみ、同時にアクティブにすることができる。
LR7: 側方プロファイル制約と側方プロファイル目的は、飛行セグメントが少なくとも1の未決の縦方向自由度を有し、飛行セグメントの効果にアクティブな側方プロファイル命令が含まれない場合にのみ、同時にアクティブにすることができる。
LR8: ランディングギヤプロファイル制約とランディングギヤプロファイル目的は、飛行セグメントが少なくとも1の未決縦方向自由度を有し、飛行セグメントの効果にアクティブなランディングギヤプロファイル命令が含まれない場合にのみ、同時にアクティブにすることができる。
LR9: スピードブレーキプロファイル制約とスピードブレーキプロファイル目的は、飛行セグメントが少なくとも1の未決の縦方向自由度を有し、飛行セグメントの効果にアクティブなスピードブレーキプロファイル命令が含まれない場合にのみ、同時にアクティブにすることができる。
LR10: 高揚力装置プロファイル制約と高揚力装置プロファイル目的は、飛行セグメントが少なくとも1の未決の縦方向自由度を有し、飛行セグメントの効果にアクティブな高揚力装置プロファイル命令が含まれない場合にのみ、同時にアクティブにすることができる。
【0116】
次に、FIDL構文規則を考慮する。構文規則は、FIDL語句によって形成された文が有効か否かを確認するために使用される規則である。
【0117】
適切に形成されたFIDL文は、時間の経過に伴う航空機の運動状態の遷移を表わす連結された飛行セグメントのシーケンスにより定義される。これらの航空機の状態は、飛行セグメントのトリガーにより設定される定義を有する飛行経路の要件である。
【0118】
時間の制約は、特定の自由度に直接影響しないので、特別に考慮されなければならない。時間の制約の適用ドメインは常に1の事象に関連付けられる(例えば、1の地点、高度、又は速度に到達する時刻)ということを考慮すると、時間の制約に先立つ任意の飛行セグメントにおいて利用可能なあらゆる自由度を使用して、そのような事象の時刻を達成することができる。したがって、時間の制約を飛行セグメントに関連付けるために必要な条件は、その自由度の1つが未決でなければならないことである。このような制約が適用されると、飛行セグメントにより未決自由度が減少する。時間の制約が飛行セグメントのシーケンスに関連付けられている場合、必要な条件は、シーケンスに含まれる飛行セグメントの1又は複数が少なくとも1の未決の自由度を有することである。
【0119】
複数プロファイル目的の状況は、時間制約の状況と似ている。複数プロファイル目的が、1の飛行セグメント、又は飛行セグメントの1シーケンスに関連付けられているとき、必要な条件は、目的の効果により決定される未決の自由度を有することである。全ての制約及び目的に関して、複数プロファイル目的を飛行セグメントに適用することにより、未決の自由度が減少する。複数プロファイル目的が飛行セグメントのシーケンスに関連付けられているとき、そのような減少は、シーケンス内の、未決の自由度を有する全ての飛行セグメントに適用される。
【0120】
適用される言語及び語彙規則の要素の定義を考慮すると、FIDL語句を使用して構築される文の有効性を確立するFIDL構文規則は下記のように要約される。
SR1: 有効なFIDL文は少なくとも1の飛行セグメントによって形成される。
SR2: 飛行セグメントの開始トリガーは、常に直前の飛行セグメントの終了トリガーに連結される。但し、最初の開始トリガーは初期条件によって定義される。
SR3: 制約又は目的は、連鎖する飛行セグメントの各々の語彙規則のいずれにも違反しないときのみ、飛行セグメントのシーケンスに関連付けることができる。
SR4: 時間の制約は、時間の制約が適用される飛行セグメントにおいて、又はいずれかの以前の飛行セグメントにおいて、他のいずれの制約又は目的にも影響されない少なくとも1の未決の自由度がある場合にのみ、飛行セグメントに関連付けることができる。
SR5: 複数の時間制約を同じ飛行セグメントに適用することはできない。
SR6: 複数プロファイル目的は、他のいずれの制約又は目的にも影響されないシーケンスに少なくとも1の未決の自由度がある場合にのみ、飛行セグメントシーケンスに関連付けることができる。