(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、マットレス等に使用されているクッション材として、軟質ポリウレタンフォームにプロファイル加工等を施して表面に凹凸形状を持たせ、体圧分散性を向上させたもの等が知られている。
【0003】
しかし、一般的に軟質ポリウレタンフォームは蒸れ易く、様々な改善方法が検討されてきた。
【0004】
例えば特許文献1には、高密度の軟質ポリウレタンフォーム(高密度フォーム)の両面に高い通気性を持たせるために無膜処理を施した軟質ポリウレタンフォーム(無膜フォーム)を積層させ、プロファイル加工を施してクッション材を得る技術が示されている。この特許文献1に記載のクッション材は、プロファイル加工により得た凹凸形状における凹部に無膜フォームを露出させることでクッション材の通気性を向上させ、更に凸部の大部分に高密度フォームを設けることによって使用時のクッション性を向上させている。
【0005】
しかし、無膜フォームは一般的な軟質ポリウレタンフォームと比較して長期間の使用による復元性の悪化(へたり)が目立つ。前記特許文献1のようにクッション材として製造した場合、長期間使用しているとクッション材の土台部分を構成している無膜フォームがへたる虞がある。その結果、クッション材の使用時において床に触れているように感じ(底付き感)、寝心地を損ねる虞があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、クッション材に求められる通気性を有して蒸れを抑制していながらも、へたりの小さく底付き感の無いクッション材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記知見に基づき、高い通気性を有する軟質ポリウレタンフォーム(高通気性フォーム)の両面に反発弾性50%以上及び/又は25%圧縮時の硬さが100N以上500N以下の比較的硬めの軟質ポリウレタンフォーム(高弾性及び/又は高硬度フォーム)を積層させ、プロファイル加工を施し二分することで得られたクッション材は、使用時において蒸れを抑制していながら、底付き感を解消することを見出した。
【0009】
すなわち、本発明のクッション材は、軟質ポリウレタンフォームの積層体からなり、A層の両面にB層を積層させた少なくとも3層構造からなる積層体をプロファイル加工して二分することにより製造され、分割面に凹凸形状を交互に有するクッション材であって、前記A層が高通気性フォームを少なくとも1層含む層からなり、前記B層は高弾性及び/又は高硬度フォームを少なくとも1層含む層からなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のクッション材は、前記A層が軟質ポリウレタンフォームの両面に高通気性フォームを積層させた3層構造とすることが好ましく、プロファイル加工により生じる前記凹凸形状の高さは前記A層を構成する3層構造の中間層である軟質ポリウレタンフォームの厚みを超えることにより高通気性フォームを露出させる。
【0011】
更に、プロファイル加工によって生じる前記凹凸形状の高さが前記A層の厚みを超え、凹凸形状における凸部の頂部及び基部が前記B層で構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のクッション材は、高通気性フォームを少なくとも1層含む層であるA層の両面に、高弾性及び/又は高硬度フォームを少なくとも1層含む層であるB層を積層させた少なくとも3層構造からなる積層体にプロファイル加工を施し二分することで製造され、該クッション材の表面凹凸形状に高通気性フォームを露出され、且つ設置面に高弾性及び/又は高硬度フォームを設けているため、蒸れを良好に防止すると同時に底付き感を解消して、良好な寝心地が得られた。
【0013】
また、前記A層を軟質ポリウレタンフォームの両面に高通気性フォームを設けた3層構造とし、プロファイル加工した際に生じる凹凸形状の高さはA層を構成する3層構造の中間層である軟質ポリウレタンフォームの厚み以上にすると、凸部中間に高通気性フォームとは異なる軟質ポリウレタンフォームが設けられ、凸部のへたりが抑制された。
【0014】
更に、プロファイル加工により製造されたクッション材の表面凹凸形状の高さを前記A層の厚みを超えるようにすると、凹凸形状における凸部の頂部及び基部が前記B層により構成され、凸部による指圧効果が向上した。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
各実施形態には2つのパターンが存在し、1つ目は高通気性フォーム層を有するA層が高通気性フォーム1層から構成されるパターンであり、2つ目はA層が少なくとも高通気性フォームを含む3層構造以上で構成されるパターンである。
図1及び
図2に示す第1の実施形態は、クッション材2及び4のようにプロファイル加工によって成形された凹凸形状の全体がA層で構成され、且つB層が高弾性及び/又は高硬度フォームのみで構成されている。
図3に示す第2の実施形態は、クッション材6及び7のようにプロファイル加工によって成形された凹凸形状における凸部の頂部及び基部にB層が設けられ、且つB層が高弾性及び/又は高硬度フォームのみで構成されている。
図4に示す第3の実施形態は、クッション材9及び10のようにプロファイル加工によって成形された凹凸形状の全体がA層で構成され、且つB層が多層構造となっている。
図5に示す第4の実施形態は、クッション材12及び13のようにプロファイル加工によって成形された凹凸形状における凸部の頂部及び基部にB層を構成する少なくとも1層が設けられ、且つB層が多層構造となっている。
【0017】
本発明におけるクッション材は軟質ポリウレタンフォームの積層体からなり、A層の両面にB層を積層させた少なくとも3層構造からなる積層体をプロファイル加工して二分することにより製造される分割面に凹凸形状を有するクッション材である。
前記A層は高通気性フォームを少なくとも1層含む層からなり、前記B層は高弾性及び/又は高硬度フォームを少なくとも1層含む層からなることを特徴とする。
【0018】
図1に示すように、A層を構成する高通気性フォームaの両面にB層を構成する高弾性及び/又は高硬度フォームbを接着剤等で貼り合わせた三層構造の積層体1を成形する。
【0019】
本発明における高通気性フォームaは、通気性に優れた軟質ポリウレタンフォームとし、JIS K6400に基づく物性試験において通気量3.0dm
3/s以上のものを使用できる。この為、クッション材の使用時において良好な通気性を有し、蒸れを防止できる。
このような高通気性フォームとしては、爆発処理や溶剤処理等によって、無膜化処理を施した軟質ポリウレタンフォーム等が適用される。
また、前記通気量の他に、密度25kg/m
3以上の性質を兼備える軟質ポリウレタンフォームを使用すると、クッション材とした際にへたりを抑制する為好ましい。ここで、本発明における密度とはJIS K7222に則って測定している。
【0020】
また、本発明において弾性及び硬さの測定はJIS K6400に則っている。本発明に用いる高弾性及び/又は高硬度フォームとは、前記反発弾性が50%以上及び/又は25%圧縮時の硬さが100N以上500N以下の性質を有する軟質ポリウレタンフォームである。この為、高弾性及び/又は高硬度フォームbを土台部分に積層した本発明におけるクッション材は使用時において底付き感を解消できる。
また、前記物性の他に、密度25kg/m
3以上の性質を兼備えるポリウレタンフォームを使用すると、より良好に底付き感を解消できる為好ましい。
【0021】
次に、
図2に示す積層体3ように前記A層は3層構造であってもよく、中間層として軟質ポリウレタンフォームcを用い、その両面に高通気性フォームdを貼り合わせて3層構造を形成することが出来る。
前記高通気性フォームdは高通気性フォームaと同様に無膜処理を施した軟質ポリウレタンフォームからなり、JIS K6400に基づく物性試験において通気量3.0dm
3/s以上のものを使用できる。この為、クッション材の使用時において良好な通気性を有し、蒸れを防止できる。
また、前記通気量の他に、密度25kg/m
3以上の性質を兼備える軟質ポリウレタンフォームを使用すると、クッション材とした際にへたりを抑制する為好ましい。
【0022】
軟質ポリウレタンフォームcとしては、クッション材に用いることができ、高通気性フォームdと硬さの異なる軟質ポリウレタンフォームなら特に限定はしないが、例えばJIS K6400に基づく物性試験においてヒステリシスロス率35%以下であり、反発弾性25%以下な軟質ポリウレタンフォームを用いると、クッション材の使用時においてクッション性が増すため好ましい。
【0023】
本発明におけるクッション材の製造方法は、まず各層を積層させた後に、該積層体にプロファイル加工を施し二分することによって製造する。
この為、本発明に用いることができる積層体全体の厚みの範囲は、プロファイル加工可能な厚みの範囲と同義であり、プロファイル加工機の性能にもよるが、積層体全体の厚みが30mm〜300mmの範囲で加工可能であり、得られたクッション材とした際のクッション性の観点から、好ましくは100mm〜300mmである。
ここで、積層体全体の厚みが30mm未満又は300mmを超える場合、表面に良好な凹凸形状を有するクッション材を得ることが難しい。
【0024】
また、前記積層体全体の厚みの範囲内においてA層及び各B層の厚みとしては特に限定されるものではないが、A層は10mm〜140mmが好ましく、各B層は10mm〜80mmが好ましい。
クッション材とした際、A層の厚みが10mm未満である場合は使用時において通気性を損ない蒸れを生じる虞があり、各B層の厚みが10mm未満である場合は底付き感を生じる虞がある。
【0025】
図1における高通気性フォームa及び高弾性及び/又は高硬度フォーム各bの厚みとしては、A層が高通気性フォームaのみで構成されている為、前記A層と各B層の厚みの条件がそのまま高通気性フォームaと高弾性及び/又は高硬度フォーム各bの条件となる。
【0026】
図2におけるA層を構成する各層の厚みとしては、前記A層の厚みの範囲内において、高通気性フォーム各dは3mm〜68mmが好ましく、前記高通気性フォームdとは異なる硬さを有する軟質ポリウレタンフォームcは4mm〜20mmが好ましい。
軟質ポリウレタンフォームcの厚みが前記範囲であると凸部のへたりの抑制が得られるため好ましい。また、高通気性フォーム各dの厚みが3mm未満であるとクッション材使用時において通気性を損なう虞がある。
【0027】
次に、本発明におけるプロファイル加工について説明する。
プロファイル加工機は、表面に凹凸面部を有する一対のロールと、一対のロールによる送り方向の出口中央部に配置されている切断刃を備えており、一対のロールの表面に存在する凹凸面部は互いの凸部が相手側の凹部と重なるような対称的な凹凸形状にされている。
このような一対のロール間に積層体を送り込んでロール表面の凹凸面部で厚み方向に圧縮し出口側の切断刃で厚み中央を切断すると図中の切断面Sのように分割面を凹凸形状に加工することが出来る。
【0028】
また、凹凸形状の高さhはプロファイル加工時において、積層体へのロールによる圧縮力を変化させることによって調整することができ、とりえる範囲としては5mm〜150mmである。
凹凸形状の高さhとA層の厚みの関係によって積層体1及び5に表示の切断面Sのように前記A層の厚みが凹凸形状の高さhより大きい場合と小さい場合がある。
【0029】
次に本発明における実施形態について説明する。
第1の実施形態はA層の厚みが凹凸形状の高さhより大きく、クッション材2及び4となる。
第2の実施形態はA層の厚みが凹凸形状の高さhより小さく、クッション材6及び7となる。
【0030】
クッション材2及び4は、A層の厚みが凹凸形状の高さhより大きい為、凸部の全体がA層で構成され、高通気性フォームが露出している。
この為、使用時において良好に蒸れを解消でき、更にクッション材の土台として高弾性及び/又は高硬度フォームbが積層されているため底付き感が無く、良好なクッション性を有する。
【0031】
また、クッション材4のようにA層が3層構造からなる場合は、凹凸形状の高さhは少なくとも軟質ポリウレタンフォームcの厚みを越える。その結果、クッション材とした際に凹凸形状に高通気性フォームdが露出し、更に凸部の中間に軟質ポリウレタンフォームcが設けられる。この為、クッション材4は蒸れ防止の他に、凸部のへたり抑制が得られる。
【0032】
クッション材6及び7は、A層の厚みが凹凸形状の高さhより小さい為、凹凸形状における凸部の頂部b
I及び基部b
IIが高弾性及び/又は高硬度フォームbで構成される。
この為、クッション材使用時における蒸れ防止や底付き感の解消の他に、良好な指圧効果やクッション材2及び3とは異なる感触を与えることができる。
【0033】
本発明は第1及び第2の実施形態以外にも、
図4及び
図5に示すクッション材ようにB層を多層化した第3及び第4の実施形態が挙げられる。
【0034】
B層を多層化した場合、B層を構成する複数の軟質ポリウレタンフォームは積層した際にB層に必要な物性を有していれば、用いる軟質ポリウレタンフォームの種類は特に限定しない。つまり、
図4及び
図5のようにB層を軟質ポリウレタンフォームe及び軟質ポリウレタンフォームfの2層で構成した場合、両軟質ポリウレタンフォームを積層した積層体がB層に必要な物性を有していれば軟質ポリウレタンフォームe及び軟質ポリウレタンフォームfにはどのような種類の軟質ポリウレタンフォームでも用いることが出来る。
【0035】
また、B層を構成する軟質ポリウレタンフォームの各層の厚みは、B層を構成する各層の厚みの合計がB層の厚み範囲内であり、且つ各層を積層させた積層体がB層の物性を有していれば特に限定はしない。
【0036】
B層を多層化したクッション材において、A層の厚みよりも凹凸形状の高さhが小さい場合は、第3の実施形態を示すクッション材9及び10に、A層の厚みよりも凹凸形状の高さhが大きい場合は第4の実施形態を示すクッション材12及び13となる。
【0037】
図4におけるクッション材9及び10は、A層と軟質ポリウレタンフォームfの間に軟質ポリウレタンフォームeを有しており、軟質ポリウレタンフォームeの性質によって様々な効果が期待できる。例えば、軟質ポリウレタンフォームeとして低反発な軟質ポリウレタンフォームを使用した場合、体圧分散性が向上する。
【0038】
図5におけるクッション材12及び13は、凹凸形状における凸部の頂部e
I及び基部e
IIが軟質ポリウレタンフォームeで構成されており、軟質ポリウレタンフォームeの性質によって様々な効果が期待できる。例えば、e層として高硬度の軟質ポリウレタンフォームを使用した場合、指圧効果が向上する。
【0039】
第3及び第4の実施形態ではB層を2層としているが、本発明におけるB層の多層化とは2層構造に限定されず、本発明の効果を損なわない範囲であれば2層以上に多層化しても良い。
【0040】
ところで、本発明におけるクッション材は、マットレス等の寝具に好適に用いることができる。
例えば、JIS K6400に基づく物性試験において反発弾性が15%であり、且つヒステリシスロス率が31%、厚みが10mmの軟質ポリウレタンフォームの両面に通気量が4.7dm
3/s、厚みが20mmの高通気性フォームを積層し、更に外側に反発弾性51%であり、且つ25%圧縮時の硬さが135N、厚みが50mmの高弾性フォームを積層させ、5層構造体を成形する。
【0041】
次に、この5層構造体にプロファイル加工を施す。この際、凹凸形状の高さhをA層の厚みよりも小さくした場合はクッション材4のような一対のクッション材を製造することができ、凹凸形状の高さhをA層の厚みよりも大きくした場合、クッション材7のようなクッション材を製造することが出来る。
【0042】
このように製造したクッション材は、使用時において蒸れを防止していると同時に、良好なクッション性を有している。
この為、本発明のクッション材をマットレスとして使用した場合、極めて寝心地の良い寝具となる。
【0043】
尚、プロファイル加工により生じる凹凸形状は、加工時に使用するロール表面の突起形状を異ならせることで各図のクッション材のような山形以外にも様々な形状を与えられ、凸部形状を変化させることで硬さを異ならせることが可能である。
本発明のクッション材の凹凸形状における凸部形状は、各図のクッション材のような山形に限定されるものではなく、様々な形状を採用することができる。
【0044】
例えば、クッション材における領域を頭部領域、腰部領域、脚部領域に区分し、それぞれの領域における凹凸形状を変化させて、硬さを異ならせるようにしても良く、体圧の高い腰部領域の硬度を比較的硬くし、体圧の低い脚部領域の硬度を比較的柔らかくする等によって、より快適な寝具にすることが出来る。
【符号の説明】
【0045】
A層
・a、d:高通気性フォーム
・c :軟質ポリウレタンフォーム
B層
・b :高弾性及び/又は高硬度フォーム
・e、f:軟質ポリウレタンフォーム
S:プロファイル加工における切断面
h:凹凸形状の高さ
1:3層構造の積層体
2:第1の実施形態を示すクッション材(A層が1層から構成)
3:A層が3層構造からなる5層構造の積層体
4:第1の実施形態を示すクッション材(A層が3層から構成)
5:3層構造の積層体
6:第2の実施形態を示すクッション材(A層が1層から構成)
7:第2の実施形態を示すクッション材(A層が3層から構成)
b
I:凹凸形状における凸部の頂部
b
II:凹凸形状における凸部の基部
8:B層が2層構造からなる5層構造の積層体
9:第3の実施形態を示すクッション材(A層が1層から構成)
10:第3の実施形態を示すクッション材(A層が3層から構成)
11:B層が2層構造からなる5層構造の積層体
e
I:凹凸形状における凸部の頂部
e
II:凹凸形状における凸部の基部
12:第4の実施形態を示すクッション材(A層が1層から構成)
13:第4の実施形態を示すクッション材(A層が3層から構成)