(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6033626
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】LEDモジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 33/00 20100101AFI20161121BHJP
H05B 37/02 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
H01L33/00 J
H05B37/02 J
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-219969(P2012-219969)
(22)【出願日】2012年10月2日
(65)【公開番号】特開2014-72501(P2014-72501A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000131430
【氏名又は名称】シチズン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126583
【弁理士】
【氏名又は名称】宮島 明
(72)【発明者】
【氏名】落合 雄紀
(72)【発明者】
【氏名】秋山 貴
(72)【発明者】
【氏名】堺 圭亮
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 茂久
(72)【発明者】
【氏名】後藤 聡
(72)【発明者】
【氏名】荒井 秀和
【審査官】
村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/100183(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0273102(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全波整流波形で複数のLED素子を駆動するLEDモジュールにおいて、
前記LED素子が直列接続したLED列及びバイパス回路又は定電流回路を含むn個の発光回路ブロックがはしご状に接続し、
1<m≦n、
1≦k<m、
前記全波整流波形が入力する側の前記発光回路ブロックを第1段、
第m段の前記発光回路ブロックに含まれる電流検出抵抗の値を基準値R
としたとき、
第(m−k)段の前記発光回路ブロックに含まれる電流検出抵抗は、前記基準値Rの抵抗が(k+1)個直列接続したものであることを特徴とするLEDモジュール。
【請求項2】
前記バイパス回路がディプレッション型FETを備えていることを特徴とする請求項1に記載のLEDモジュール。
【請求項3】
前記第1段から第m段までの発光回路ブロックに含まれる電流検出抵抗がネットワーク抵抗であることを特徴とする請求項1又は2に記載のLEDモジュール。
【請求項4】
前記ネットワーク抵抗にゲート保護抵抗が含まれていることを特徴とする請求項3に記載のLEDモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全波整流波形でLEDを駆動するLEDモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
LEDを使った照明器具が普及してきている。商用交流電源から電力を得てLEDを駆動する場合、商用交流電源を整流及び平滑して得られる直流によりLEDを駆動する場合と、商用交流電源を整流しただけで得られる全波整流派形によりLEDを駆動する場合とがある。前者の場合には高耐圧で大容量の電解コンデンサが必要となる。この電解コンデンサは、大型であるばかりでなく、LEDの発熱により照明装置内において高温になりやすいため照明装置の寿命を律則することが多い。一方後者の駆動方法は、高耐圧で大容量の電解コンデンサを必要としないため、LEDの長寿命を享受できる。
【0003】
なおLEDは様々な形態をとるので、単体の発光ダイオードをLED素子と呼び、高電圧に耐えられるように多数のLED素子を直列接続したものをLED列と呼ぶ。例えば、全波整流波形でLEDを駆動する場合、商用交流電源の実効値が240Vであれば、LED列としてはLED素子を80段程度直列接続することになる。なおLED素子の閾値は3V程度である。このとき全波整流波形が240Vを越えた短い期間だけLED列が点灯する。
【0004】
しかしながら全波整流波形でLED素子を駆動する方式では、前述のように全波整流波形の一周期に対し発光期間が短くなることがある。つまり、全波整流波形の電圧がLED列の閾値を越えないと各LED素子が発光しないため様々な問題が生じる。例えば、フリッカや高速で移動する物体が飛び飛びに見えるモーションブレークが目立ったり、力率の低下や高い歪率(全高調波歪率,THD,ともいう)を招いてしまったりする。そこでLED列を複数のブロックに分解し、全波整流波形の電圧に応じて点灯させるLED素子の数を調整し、点灯期間を延ばすことがある。この駆動方式のなかで、回路構成が簡単になるものとして、LED列に流れる電流を計測し点灯させるLED素子の数を制御するものが知られている(例えば特許文献1)。
【0005】
そこで特許文献1の
図26を
図6に再掲示して説明する。
図6は従来例として示すLEDモジュール2600の回路図である。LEDモジュール2600には、ダイオードブリッジ回路2605、LEDグループ1(LED列)、LEDグループ2(LED列)、LEDグループ3(LED列)、抵抗R1,R2,R3、電界効果トランジスタ(以降FETと呼ぶ)Q1、及びバイポーラトランジスタ(以降トランジスタと呼ぶ)Q2からなる。
【0006】
商用交流電源はダイオードブリッジ回路2605の入力端子に接続し、ダイオードブリッジ回路2605は全波整流波形を出力する。LEDグループ1とLEDグループ2は、それぞれ同数のLED素子を直列接続したLED列であり、並列接続することにより一本のLED列と等価なものとなっている。LEDグループ3は、複数のLED素子を直列接続したLED列である。抵抗R1はLEDグループ1,2,3に流れる電流を制限する電流制限抵抗である。抵抗R2,R3、FETQ1、及びトランジスタQ2からなる回路はバイパス回路2610を構成する。
【0007】
次に
図7により
図6に示したLEDモジュール2600の動作を説明する。
図7はLEDモジュール2600に係る波形図であり、(a)が全波整流波形の一周期を示し、(b)がLEDモジュール2600に流れる電流を示している。なお
図7において(a)と(
b)の時間軸は一致している。
【0008】
全波整流波形の電圧がLEDグループ1,2の閾値よりも低い期間t6では回路電流は存在しない。全波整流波形の電圧がLEDグループ1,2の閾値よりも高くなると、回路電流はLEDグループ1,2からバイパス回路2610を経由して流れる(期間t7)。このときバイパス回路2610はトランジスタQ2のベース−エミッタ間電圧が0.6Vを維持するようフィードバックが掛かり定電流動作する。全波整流波形の電圧がLEDグループ1,2の閾値とLEDグループ3の閾値の和の近傍に達すると(期間t7の最後の部分)、回路電流はLEDグループ1,2からバイパス回路2610を経由して流れるとともにLEDグループ3にも流れる。このときバイパス回路2610は、FETQ1を流れる電流とLEDグループ3を流れる電流の合算値が一定になるよう動作する。全波整流波形の電圧がLEDグループ1,2の閾値とLEDグループ3の閾値の和よりも充分に大きくなると(期間t8)、バイパス回路2610に含まれるFETQ1がカットオフし、ほとんど全ての回路電流がLEDグループ3を流れ、抵抗R1で制限される。全波整流波形の電圧が下降する期間では、全波整流波形の電圧が上昇する期間とは逆の過程を辿る。
【0009】
以上のようにしてLEDモジュール2600は点灯期間が広がる。このときバイパス回路2610が定電流動作を経てカットオフするため回路電流が滑らかに変化する。この結果、フリッカやモーションブレークが軽減するのに加え、力率が高くなり、歪率も小さくなる。
【0010】
次に
図6の回路を改良した
図8の回路を説明する。
図8は、電子部品点数を減らし、さらに商用電源の変動などの影響を受けにくくしたLEDモジュール80の回路図である。LEDモジュール80は、ダイオードブリッジ回路801、LED列811,821、FET814,824、抵抗815,825からなる。なお図中、左側の破線は、商用交流電源802がLEDモジュール80には含まれないことを示している。
【0011】
商用交流電源802はダイオードブリッジ回路801の入力端子に接続し、ダイオードブリッジ回路801は全波整流波形を出力する。LED列811とLED列821の接続部にはFET814と抵抗815からなるバイパス回路813が接続し、LED列821のカソード端子にはFET824と抵抗825からなる定電流回路823が接続している。なお、LED列811は複数のLED素子812が直列接続したものであり、同様にLED列821は複数のLED素子822が直列接続したものである。また、FET814,824はディプレッション型FETである。
【0012】
バイパス回路813ではFET814を流れる電流と定電流回路823から流入する電流とが電流検出用の抵抗815を流れる。定電流回路823から流れ込む電流が0又は小さい場合、バイパス回路813は抵抗815からFET814のゲートにフィードバックが掛かり定電流動作する。定電流回路823からバイパス回路813に流れ込む電流が充分に大きくなるとFET814がカットオフする。このとき定電流回路823は電流検出抵抗825からのフィードバックにより定電流動作する。
【0013】
以上の結果、全波整流波形に対しLEDモジュール80は
図6で示したLEDモジュール2600とほぼ同等の動作をする。なおLEDモジュール80では、LEDモジュール2600の電流制限用抵抗R1を定電流回路823に置き換えているので、全波整流波形の電圧(実効値)変動の影響を受けにくくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】WO2011/020007号公報 (
図26)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
図8に示したLEDモジュール回路80は、LED列811とバイパス回路813からなる発光回路ブロック810と、LED列821と定電流回路823からなる発光回路ブロック820とが相似している。すなわちフリッカやモーションブレーク、力率、及び歪率を改善するには、LED列811等、FET814等及び抵抗815等からなる発光回路ブロックをはしご状に多段接続すれば良いことが容易に推測できる。しかしながら、各発光回路ブロックにおいてLED列に含まれるLED素子やFETを共通化できるとしても、電流検出用の抵抗は異なった値にせざるを得ない。このため発光回路ブロックを多段化すればするほど電流検出用の抵抗の種類が増え管理負荷が増大する。
【0016】
そこで本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、LED素子を全波整流波形で駆動する際、LED列と電流検出用の抵抗を含む発光回路ブロックが多段接続しても、電流検出用の抵抗の管理負荷が小さいLEDモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のLEDモジュールは、全波整流波形で複数のLED素子を駆動するLEDモジュールにおいて、前記LED素子が直列接続したLED列及びバイパス回路又は定電流回路を含むn個の発光回路ブロックがはしご状に接続し、
1<m≦n、
1≦k<m、
前記全波整流波形が入力する側の前記発光回路ブロックを第1段
、
第m段の前記発光回路ブロックに含まれる電流検出抵抗の値を基準値
Rとしたとき、第(m−k)段の前記発光回路ブロックに含まれる電流検出抵抗
は、前記基準値Rの抵抗が(k+1)個直列接続したものであることを特徴とする。
【0018】
本発明のLEDモジュールは、LED素子が直列接続したLED列と、バイパス回路若しくは定電流回路を含む発光回路ブロックがはしご状に接続している。ここで発光回路ブロックの個数をnとしている。このはしご状接続では、全波整流波形が入力する側の発光回路ブロックを第1段としたとき、第1段から第(n−1)段の発光回路ブロックはLED列とともにバイパス回路を備えている。また第n段の発光回路ブロックはLED列とともに定電流回路を備えている。
【0019】
第n段の発光回路ブロックを最上段として、バイパス回路を有する各発光回路ブロックに含まれる電流検出抵抗はバイパス電流と上段の発光回路ブロックから流入する電流を計測する。なお第n段の発光回路ブロックに含まれる定電流回路が電流検出抵抗を有する場合、この電流検出抵抗はこの発光回路ブロックに流れる電流のみ計測する。
【0020】
さらに第m段の発光回路ブロックに含まれる電流検出抵抗の値を基準値Rとしたとき、この発光回路ブロックよりk段下の発光回路ブロックに含まれる電流検出抵抗の値を(k+1)Rとしている。このようにすると第1段から第m段までの発光回路ブロックに含まれる電流検出抵抗を基準値Rの抵抗の個数として管理できるようになる。
【0021】
また、力率や歪率の改善にあたり全波整流波系の増減にあわせて回路電流を増減させるため、下段側の発光回路ブロックに含まれる電流検出抵抗を上段側より大きくしなければならないなかでは、第1段から第m段までの間で隣接する発光回路ブロック間において、電流検出抵抗の値の差を基準とする抵抗の一個分としているので全体として管理される基準値Rの抵抗の
種類を最小化できる。
【0023】
前記バイパス回路がディプレッション型FETを備えていると良い。
【0024】
前記第1段から第m段までの発光回路ブロックに含まれる電流検出抵抗がネットワーク抵抗であっても良い。
【0025】
前記ネットワーク抵抗にゲート保護抵抗が含まれていると良い。
【発明の効果】
【0026】
以上のようにLED素子を全波整流波形で駆動する本発明のLEDモジュールは、LED列と電流検出抵抗とを含む発光回路ブロックがはしご状に多段接続しても、電流検出抵抗の管理負荷を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1実施形態として示すLEDモジュールの回路図。
【
図4】本発明の第2実施形態として示すLEDモジュールの回路図。
【
図6】従来例として示したLEDモジュールの回路図。
【
図8】従来例として示したLEDモジュールの回路図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付
図1〜5を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また説明のため部材の縮尺は適宜変更している。さらに特許請求の範囲に記載した発明特定事項との関係をカッコ内に記載している。
(第1実施形態)
【0029】
図1〜3により本発明の第1実施形態として示すLEDモジュール10を説明する。
図1はLEDモジュール10の回路図である。
図2はLEDモジュール10に含まれるLED列111の回路図である。
図3はLEDモジュール10に係る波形図であり、(a)が全波整流波形の一周期を示し、(b)がLEDモジュール10に流れる電流を示している。なお
図3において(a)と(b)の時間軸は一致している。
【0030】
図1に示すようにLEDモジュール10は、ダイオードブリッジ回路101、LED列111,121,131,141,151、バイパス回路113,123,133,143、定電流回路153からなっている。商用交流電源102はダイオードブリッジ回路101の入力端子に接続し、ダイオードブリッジ回路101は全波整流波形を出力する。LED列111,121,131,141,151は直列接続しており、各LED列111,121,131,141,151の接続部にバイパス回路113,123,133,143が接続している。またLED列151のカソードには定電流回路153が接続している。なお図中、左側の破線は、商用交流電源102がLEDモジュール10には含まれないことを示している。
【0031】
LED列111は複数のLED素子112が直列接続したのである。さらに詳しくは、
図2に示すように、LED列111は20個のLED素子112が直列接続したLED列がさらに2列並列に接続したものである。20個のLED素子112が直列接続したLED列と、このLED列が2列並列に接続したLED列111は、閾値など基本的な特性が等しく機能的に等価なものといえる。しかしながら発光効率は、LED素子112に流れる電流が増えるに従って低下するので、一本のLED列よりも、同じLED列を2本並列にしたLED列111の方が良くなる。また素子数が多い分、2本並列にしたLED列111の方が放熱効率も良くなる。
【0032】
同様にLED列121,131も、LED素子122,132が20個直列接続したLED列が2本並列接続したものである。LED列141はLED素子142が17個直列接続したLED列が2本並列接続したものであり、LED列151はLED素子152が13個直列接続したLED列が2本並列接続したものである。
【0033】
バイパス回路113はFET114と抵抗115,116,117,118,119からなる。FET114はディプレッション型FETであり、ドレインがバイパス電流入力端子となる。抵抗115はサージやノイズからFET114のゲートを守るための保護抵抗であり、10kΩ程度で良い。抵抗116〜119は電流検出抵抗であり、それぞれ抵抗値が基準値R(Ω)で、その合成抵抗は4R(Ω)となる。なお本実施形態では基準値Rを11.8Ωとし、LEDモジュール10の消費電力を30Wとしている。FET114のソースと抵抗119の接続部が外部電流入力端子となる。同様に抵抗115と抵抗116の接続部が電流出力端子となる。
【0034】
同様にバイパス回路123,133,143は、ディプレッション型のFET124,134,144、ゲート保護用の抵抗125,135,145を含み、バイパス電流入力端子、外部電流入力端子、電流出力端子を備えている。なおバイパス電流入力端子はFET124,134,144のドレインであり、外部電流入力端子はFET124,134,144のソースと接続する部分である。電流出力端子は保護用の抵抗125,135,145と電流検出用の抵抗126,136,146の接続部である。
【0035】
バイパス回路123に含まれる電流検出用の抵抗126,127,128の値は、それぞれ基準値R(Ω)であり、その合成抵抗は3R(Ω)である(本実施形態では前述のようにRが11.8Ωである、以下同様)。バイパス回路133に含まれる電流検出用の抵抗136,137の値も、それぞれ基準値R(Ω)であり、その合成抵抗は2R(Ω)である。バイパス回路143に含まれる電流検出用の抵抗146の値も基準値R(Ω)である。すなわちバイパス回路143が含まれる回路ブロック140の電流検出抵抗は基準値R(Ω)の抵抗一個分であり、バイパス回路133,123,113が含まれる回路ブロック130,120,110の電流検出抵抗は、順に基準値R(Ω)の抵抗2,3,4個分となっている。
【0036】
定電流回路153は、ディプレッション型のFET154、ゲート保護用の抵抗155及び電流検出用の抵抗156からなり、FET154のドレインが電流入力端子、抵抗155と抵抗156の接続部が電流出力端子となる。なお本実施形態では抵抗156を5.6Ωとした。
【0037】
LEDモジュール10は、発光回路ブロック110,120,130,140,150をはしご状に接続するのにあたり、発光回路ブロック150に含まれる定電流回路153の電流出力端子を発光回路ブロック140に含まれるバイパス回路143の外部電流入力端子に接続している。同様に、隣接する発光回路ブロック110,120,130,140の間でも、各発光回路ブロック110,120,130,140に含まれるバイパス回
路113,123,133,143同士で電流出力端子と外部電流入力端子とが接続している。
【0038】
次に
図3によりLEDモジュール10の動作を説明する。(a)に示した全波整流波形が0Vから上昇し始めLED列111の閾値に達するまでの期間t0では、(b)に示すように回路電流は流れない。
【0039】
期間t1において全波整流波形の電圧がLED列111の閾値よりも高くなると、回路電流はLED列111からバイパス回路113を経由して流れる。このときバイパス回路113はFET114のゲートに電流検出抵抗116〜119からフィードバックが掛かり定電流動作する。全波整流波形の電圧がLED列111の閾値とLED列121の閾値の和の近傍に達すると(期間t1の最後の部分)、回路電流はLED列111からバイパス回路113を経由して流れるとともに、LED列121とバイパス回路123を経由してバイパス回路113に流れ込む。このときバイパス回路113は、FET114を流れる電流とLED列121を流れる電流の合算値が一定になるよう動作する。
【0040】
期間t2において全波整流波形の電圧がLED列111の閾値とLED列121の閾値の和よりも十分の大きくなると、バイパス回路113に含まれるFET114がカットオフし、ほとんど全ての回路電流がLED列121を経由してバイパス回路123を流れる。このときバイパス回路123は定電流動作する。全波整流波形の電圧がLED列111,121,131の閾値の和の近傍に達すると(期間t2の最後の部分)、回路電流はバイパス回路123を経由して流れるとともに、LED列131とバイパス回路133を経由してバイパス回路123に流れ込む。このときバイパス回路123は、FET124を流れる電流とLED列131を流れる電流の合算値が一定になるよう動作する。
【0041】
以上動作を期間t3、t4、t5で繰り返し、順次FET124,134,144がカットオフする。なお期間t5では定電流回路153により回路電流の上限値が制限される。また期間t5で最も大きな電流を流すので電流検出用の抵抗156は他の電流検出用の抵抗116〜119,126〜128,136〜137,146(それぞれの合算値)に対し最も小さな値にする。全波整流波形の電圧が下降する期間では、全波整流波形の電圧が上昇する期間とは逆の過程を辿る。
【0042】
図3のように全波整流波形の上昇とともに回路電流が増加し、全波整流波形の下降とともに回路電流が下降させることで力率が改善する。また電流が小刻みに変化(
図3では5段階)することにより歪率も改善する。特に本実施形態のLEDモジュール10の場合は定電流動作状態から次の定電流動作状態に滑らかに移るため高調波成分が少ない。このとき各バイパス回路113,123,133,143、及び定電流回路153に含まれる電流検出抵抗は定電流回路153側からバイパス回路113側に向かって順次大きくしなければならない。また電流検出用の抵抗146,136〜137,126〜128,116〜119は順に発熱量が大きくなるが、発熱量に応じて抵抗の個数が増加しているため抵抗の耐熱設計及び放熱設計が容易になる。
【0043】
本実施形態のLEDモジュール10では、発光回路ブロック110,120,130,140,150の数が5個であった(
図1参照)。しかしながら発光回路ブロックの数は5個に限定されない。LED列及びバイパス回路若しくは定電流回路を含む発光回路ブロックがn個あり、n個の発光回路ブロックをはしご状に接続し、全波整流波形の入力側を第1段としたとき、1<m≦nとして、m段目の発光回路ブロックに含まれる電流検出抵抗の値を基準値Rとできる場合、第(m−k)段目の電流検出抵抗の値が(k+1)Rであれば良い。なお、k,m,nは整数であり、1≦k<mである。このとき発光回路ブロックに含まれる各LED列は直列接続しており、電流の方向に合うようにして隣接する発
光回路ブロックの電流出力端子と外部電流入力端子が接続している。なおLEDモジュール10では、n=5、m=4に相当する。
【0044】
また、n=mの例として第n段の発光回路ブロックに含まれる定電流回路が電流検出抵抗を備えている場合、この電流検出抵抗を基準値Rの抵抗としても良い。このとき第(n−1)段の発光回路ブロックに含まれる電流検出抵抗の値は2Rとなる。同様に第(n−2),(n−3),‥‥,2,1段の発光ブロックに含まれる電流検出抵抗の値は、順に3R,4R,‥‥,(n−1)R,nRとなる。
【0045】
本実施形態のLEDモジュール10では、発光回路ブロック150に含まれる定電流回路153は、バイパス回路143等と相似するようにディプレッション型のFET154と抵抗155,156で構成していた。しかしながら定電流回路は、電流入力端子と電流出力端子があれば良いのでこの形式に限定されない。定電流回路としては、定電流ダイオードや、良く知られたバイポーラトランジスタを使う回路でも良く、簡易的なものとしては抵抗でも良い。
【0046】
同様にLEDモジュール10では、バイパス回路113等をディプレッション型FET114等と抵抗116等から構成していたが、バイパス回路はこの形式に限定されない。例えば、
図6に示したバイパス回路2610のように、エンハンスメント型FET、バイポーラトランジスタ、プルアップ抵抗及び電流検出抵抗からなる電流制限回路でも良い。なおこの場合、バイポーラトランジスタのベース端子が外部電流入力端子となり、ベース電圧が0.6Vを維持するようにして定電流動作する。また外部電流入力端子から大量の電流が入力するとエンハンスメント型FETがカットオフする。
(第2実施形態)
【0047】
一般に複数の抵抗があるとき、これらをネットワーク抵抗で置き換えることにより製品の小型化を図ることがある。LEDモジュール10でも
図1に示したように、例えばFET114の周りに抵抗115〜119があるのでこれらをネットワーク抵抗化できる。そこで
図4,5により本発明の第2実施形態としてネットワーク抵抗401,402,403,404,405,406を使ったLEDモジュール40を説明する。
【0048】
図4はLEDモジュール40の回路図である。
図4において示した部品及び発光回路ブロックのなかで、
図1に示したLEDモジュール10の回路に含まれる部品及び発光回路ブロックと同じ番号を持つ部品及び発光回路ブロックは、同等のものであり説明を省略する。
【0049】
図4と
図1との違いは、
図1に示した抵抗115〜119,125〜128,135〜137,145〜146がネットワーク抵抗401〜406に置き換わっていることだけである。各ネットワーク抵抗401〜406は同じものであり、端子411,412,413,414を備えている。
【0050】
そこで先ず
図5により
図1と比較しながらネットワーク抵抗401について説明する。なお他のネットワーク抵抗402〜406はネットワーク抵抗401と同等なので説明を省略する。
図5はLEDモジュール40に含まれるネットワーク抵抗401の平面図である。ネットワーク抵抗401は、シリコン基板415上にTaNで抵抗115,116,117を形成したものであり、チップサイズは0.5mm角である(LEDモジュール40における抵抗115,116,117の役割については
図1参照)。シリコン基板415の周辺部には端子411,412,413,414が配置されている(端子411,412,413,414の役割については
図4参照)。端子411〜414はワイヤボンディング用のパッドであり、抵抗115〜117に接続している。抵抗115はサージ対策
用の保護抵抗であり10kΩ程度あれば良く、発熱しないので細長い形状をとっている。これに対し抵抗116,117は、電流検出用の抵抗であり、数〜数百Ω程度になり、発熱するので定格電力を大きくするため帯状で幅の広い形状となっている。なお抵抗116,117は一本の帯状のTaNからなる抵抗体に含まれ、抵抗116が端子414と端子413の間の部分、抵抗117が端子413と端子412の間の部分となる。抵抗116と抵抗117は横方向の長さが等しく、それぞれの値は基準値Rである。
【0051】
以上のようなネットワーク抵抗401〜406を
図4にように用いることで、LEDモジュール40を
図1で示したLEDモジュール10の回路と等価にできる。ネットワーク抵抗401〜406にはゲート保護用の抵抗115等と2個の基準値Rの抵抗116等が含まれていた。このようにした場合、前述のmが偶数(LEDモジュール40ではm=4)であるとき、mが奇数である場合より使用効率が若干良くなる。またLEDモジュール10の説明のなかで述べた理由と同様に放熱設計も楽になる。
【0052】
前述のようにネットワーク抵抗401は、サージ等からFET114を保護するための抵抗115と電流検出用の抵抗116,117を備えていた(
図1、
図5参照)。しかしながらネットワーク抵抗に取り込む抵抗には自由度があるので、本実施形態のような抵抗の組合せに限定されない。しかしながらネットワーク抵抗401等にサージ保護用の抵抗115等と電流検出用の抵抗116等を含ませると、ディプレッション型のFET114等を使用しているバイパス回路113等及び定電流回路153等では、ワイヤボンディングがそれぞれの回路で一本ずつ減るため、製品の小型化に加えコストダウン及び生産性向上につながる。
【0053】
また高価で製造期間の長いディプレッション型のFET114等(
図4参照)は、閾値(オフさせるためのゲート−ソース間電圧)が製造ロットにより変動することがある。これに対し、FET114等に比べ製造期間が短く価格の安いネットワーク抵抗401等を、FET114等の特性にあわせてトリミングすると電子部品の利用効率が良くなる。
【符号の説明】
【0054】
10,40…LEDモジュール、
101…ダイオードブリッジ回路、
102…商用交流電源、
110,120,130,140,150…発光回路ブロック、
111,121,131,141,151…LED列、
112,122,132,142,152…LED素子、
113,123,133,143…バイパス回路、
153…定電流回路、
114,124,134,144,154…FET、
115〜119,125〜128,135〜137,
145〜146,155〜156…抵抗、
401〜406…ネットワーク抵抗、
411〜414…端子。