(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0010】
[表面処理シリカ]
実施形態に係る表面処理シリカは、シリカを、特定の変性液状ポリブタジエンと硫黄含有シランカップリング剤とで表面処理したものである。これら変性液状ポリブタジエン及び硫黄含有シランカップリング剤とともに、アミノシランカップリング剤で表面処理してもよい。従って、好ましい実施形態として、(a)変性液状ポリブタジエンと硫黄含有シランカップリング剤とで表面処理されたシリカでもよく、また、(b)上記変性液状ポリブタジエンと硫黄含有シランカップリング剤とアミノシランカップリング剤とで表面処理されたシリカでもよい。
【0011】
処理対象となるシリカとしては、粒子表面にヒドロキシル基(シラノール基)を有する各種の親水性シリカが挙げられ、例えば、湿式沈殿法シリカ、湿式ゲル化法シリカ、乾式シリカなどが挙げられる。特に限定するものではないが、該シリカとしては窒素吸着比表面積(BET)が100〜300m
2/gであるものが好ましい。なお、シリカのBETはISO 5794に記載のBET法に準拠し測定される。
【0012】
本実施形態では、該変性液状ポリブタジエンとして、1,2−ビニル結合量が50モル%以上のポリブタジエンを水素添加して得られる水添ポリブタジエンであって、ヘテロ原子を含む官能基を有する変性液状ポリブタジエンが用いられる。このような変性液状ポリブタジエンを硫黄含有シランカップリング剤とともに表面処理することにより、ゴム組成物に配合したときの分散性に優れ、低発熱性能に優れるとともに、ウェットグリップ性能に優れ、また、補強性が改善されることで、耐摩耗性能にも優れる。
【0013】
該変性液状ポリブタジエンは、常温(23℃)で液状のポリマーであり、数平均分子量(Mn)は通常1,000〜10万である。該変性液状ポリブタジエンの数平均分子量は、1,500〜5万であることが好ましく、より好ましくは1,500〜10,000であり、更に好ましくは2,000〜5,000である。数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)、溶媒:THF(テトロヒドロフラン)、40℃で測定される値である。
【0014】
該変性液状ポリブタジエンは、1,2−ビニル結合量が50モル%以上のポリブタジエンを水素添加して得られる水添ポリブタジエンである。このような高ビニルのミクロ構造のものを水添して用いることにより、シリカとの親和性が向上し、粒子表面との反応性を増大させることができる。また、水添することにより、架橋が抑制され、ゴム組成物の加硫後でも、ジエン系ゴム成分のマトリックス中で、水添ポリブタジエンの分子が動きやすくなるため、湿潤路面におけるグリップ性能を向上することができる。
【0015】
1,2−ビニル結合量は、水添前のポリブタジエンについて、そのポリマー中に含まれるブタジエンユニットの含有量に対する1,2−ビニル結合ユニットの含有量であり、
1HNMRスペクトルの積分比により算出される。なお、1,2−ビニル結合ユニットは水添によりビニル基がエチル基になるが、炭素数2の炭化水素基の側鎖を持つという1,2−結合の形態自体は保持されるので、水添及び未水添の1,2−ビニル結合ユニットを併せて1,2−結合成分とすれば、該水添ポリブタジエンは1,2−結合成分を50モル%以上含むものである。水添前の1,2−ビニル結合量は、70モル%以上であることが好ましく、より好ましくは80〜95モル%である。
【0016】
該変性液状ポリブタジエンの水素添加率(水添前のポリブタジエンの二重結合に対する水添された二重結合の比率)は、特に限定されないが、20モル%以上であることが好ましく、より好ましくは50モル%以上であり、更に好ましくは80〜95モル%である。水素添加率は、
1HNMRスペクトルにおける不飽和結合部のスペクトル減少率から算出される。なお、水添は、パラジウムなどの触媒を使用した公知の方法で行うことができ、特に限定されない。
【0017】
該変性液状ポリブタジエンは、また、ヘテロ原子を含む官能基を有する官能基変性液状ポリブタジエンである。該官能基としては、ヘテロ原子として酸素原子を含むものが好ましく、例えば、水酸基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、カルボン酸誘導体基、及びエポキシ基などが挙げられ、これらはそれぞれ1種のみ導入されてもよく、あるいはまた2種以上組み合わせて導入されてもよい。これらの官能基は、シリカ表面のシラノール基(Si−OH)と相互作用があるものであり、すなわち、シラノール基との間で化学結合し得る反応性又は水素結合などの親和性を持つものである。そのため、シリカと結合してその分散性を向上することができる。
【0018】
ここで、カルボキシル基としては、例えば、マレイン酸、フタル酸、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。カルボン酸誘導体基としては、これらカルボン酸由来のエステル基(カルボン酸エステル基)や、マレイン酸やフタル酸などのジカルボン酸の無水物からなる酸無水物基が挙げられる。カルボン酸エステル基としては、上記の(メタ)アクリレート基が好ましい例として挙げられる。
【0019】
このような官能基変性液状ポリブタジエンは、例えば、液状ポリブタジエンを水素添加した水添ポリブタジエンに対して官能基を有する化合物を反応させて化学修飾することにより、分子末端に上記官能基を有する液状ポリブタジエンを得ることができる。但し、その製造方法は特に限定するものではない。
【0020】
上記硫黄含有シランカップリング剤としては、下記一般式(1)で表される化合物を用いることが好ましい。該化合物は、シリカのシラノール基と反応し得るアルコキシ基と、ジエン系ゴムと反応し得る硫黄原子を含む官能基Aとを有するものである。そのため、硫黄含有シランカップリング剤は、シリカ表面のシラノール基に結合するとともに、硫黄原子を含む官能基がゴム成分との混合時に反応することで、シリカとゴム成分を結合することができ、補強性を向上することができる。
【0021】
(R
1)
m(R
2)
nSi−A …(1)
(式中、R
1は炭素数1〜3のアルコキシ基、R
2は炭素数1〜40のアルキル基、アルケニル基又はアルキルポリエーテル基、m=1〜3、m+n=3であり、Aは下記一般式(2)〜(4)のいずれかである。)
−R
3−S
x−R
4−Si(R
1)
m(R
2)
n …(2)
−R
5−SH …(3)
−R
6−S−CO−R
7 …(4)
(式中、R
3,R
4はそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキレン基、R
5は炭素数1〜16のアルキレン基、R
6は炭素数1〜5のアルキレン基、R
7は炭素数1〜18のアルキル基、xは2〜8である。)
【0022】
上記式(1)において、R
1は、より好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。また、R
2は、炭素数1〜4のアルキル基又はアルケニル基であることが好ましく、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。R
2について、上記アルキルポリエーテル基とは、−O−(R
a−O)
k−R
b(ここで、R
aは炭素数1〜4のアルキレン基、R
bは炭素数1〜16のアルキル基、k=1〜20であることが好ましい。)で表される。なお、R
1,R
2は、それぞれ1分子中に複数有する場合、それらは同一でも異なってもよい。また、m,nについては、m=3及びn=0であることが好ましい。
【0023】
また、R
3,R
4は、より好ましくは、それぞれ独立に炭素数2〜4のアルキレン基である。R
5は、より好ましくは炭素数2〜4のアルキレン基である。R
6は、より好ましくは炭素数2〜4のアルキレン基である。R
7は、より好ましくは炭素数5〜9のアルキル基である。xは2〜8であり、より好ましくは2〜4である。なお、xは通常分布を有しており、即ち、硫黄連鎖結合の数が異なるものの混合物として一般に市販されており、xはその平均値を表す。なお、上記式(2)中のR
1、R
2、m、nは、上記式(1)と同じである。
【0024】
上記官能基Aが上記式(2)で表されるスルフィドシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエキトシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィドなどが好ましいものとして挙げられる。
【0025】
上記官能基Aが上記式(3)で表されるメルカプトシランカップリング剤としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、メルカプトエチルトリエトキシシラン、及びエボニック・デグサ社製「VP Si363」(R
1:OC
2H
5、R
2:O(C
2H
4O)
k−C
13H
27、R
5:−(CH
2)
3−、m=平均1、n=平均2、k=平均5)などが好ましいものとして挙げられる。
【0026】
上記官能基Aが上記式(4)で表される保護化メルカプトシランカップリング剤としては、例えば、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン、3−プロピオニルチオプロピルトリメトキシシランなどが好ましいものとして挙げられる。
【0027】
以上列挙した各硫黄含有シランカップリング剤は、それぞれ単独であるいは2種以上を組合せて用いることができる。
【0028】
上記アミノシランカップリング剤としては、下記一般式(5)で示すものが好ましく用いられる。アミノシランカップリング剤は、シリカのシラノール基と結合することにより、分散性を向上させる。
【0029】
(R
8)
p(R
9)
qSi−R
10−(NH−R
11)
r−NH
2 …(5)
式(5)中、R
8は炭素数1〜3のアルコキシ基、R
9は炭素数1〜10のアルキル基又はアルケニル基、R
10は炭素数1〜4のアルキレン基、R
11は炭素数1〜4のアルキレン基であり、p=1〜3、p+q=3、r=0〜5である。
【0030】
上記一般式(5)において、R
8は、より好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。R
9は、炭素数1〜4のアルキル基又はアルケニル基であることが好ましく、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。R
8,R
9は、それぞれ1分子中に複数有する場合、それらは同一でも異なってもよい。R
10としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基が挙げられる。R
11としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基が挙げられる。pはより好ましくは2〜3である。また、rはより好ましくは0又は1である。
【0031】
このようなアミノシランカップリング剤の具体例としては、2−アミノエチルトリメトキシシラン、2−アミノエチルトリエトキシシラン、2−アミノエチルエチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルエチルジエトキシシラン等が挙げられ、これらは単独あるいは2種以上を組合せて用いることができる。
【0032】
上記(a)の表面処理シリカは、親水性シリカを、上記の硫黄含有シランカップリング剤と変性液状ポリブタジエンとで表面処理することにより得られる。好ましくは、まず、硫黄含有シランカップリング剤で表面処理した後、次いで、変性液状ポリブタジエンで表面処理することである。このような順番で処理することにより、粒子表面のシラノール基に反応によって結合させる硫黄含有シランカップリング剤の量を確保しやすい。表面処理方法は特に限定されるものではなく、通常の疎水化表面処理方法に準じて行うことができる。例えば、ミキサーやブレンダー中で、親水性シリカを攪拌しながら、硫黄含有シランカップリング剤を添加し、次いで、変性液状ポリブタジエンを添加して攪拌すればよい。なお、これらの表面処理は、水やイソプロピルアルコール、トルエンなどの溶媒中にシリカを分散させた状態で行うこともできる。このようにして製造することにより、硫黄含有シランカップリング剤が、親水性シリカの粒子表面のシラノール基に結合する。また、変性液状ポリブタジエンについては、親水性シリカの粒子表面に残存しているシラノール基に対して化学的又は物理的に結合する。
【0033】
上記(b)の表面処理シリカは、親水性シリカを、上記の硫黄含有シランカップリング剤とアミノシランカップリング剤と変性液状ポリブタジエンとで表面処理することにより得られる。好ましくは、まず、硫黄含有シランカップリング剤とアミノシランカップリング剤とで予め表面処理し、次いで変性液状ポリブタジエンで表面処理することである。表面処理方法は特に限定されるものではなく、通常の疎水化表面処理方法に準じて行うことができる。例えば、ミキサーやブレンダー中で、親水性シリカを攪拌しながら、硫黄含有シランカップリング剤とアミノシランカップリング剤を添加し、次いで、変性液状ポリブタジエンを添加して攪拌すればよい。硫黄含有シランカップリング剤とアミノシランカップリング剤は、いずれか一方を先に反応させてもよく、同時に反応させてもよい。なお、これらの表面処理は、水やイソプロピルアルコール、トルエンなどの溶媒中にシリカを分散させた状態で行うこともできる。このようにして製造することにより、硫黄含有シランカップリング剤とアミノシランカップリング剤が、親水性シリカの粒子表面のシラノール基にそれぞれ結合する。また、変性液状ポリブタジエンについては、親水性シリカの粒子表面に残存しているシラノール基に対して化学的又は物理的に結合する。
【0034】
実施形態に係る表面処理シリカにおいて、硫黄含有シランカップリング剤の使用量は、特に限定されないが、親水性シリカ100質量部に対して2〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは4〜15質量部である。このような使用量とすることにより、ゴム組成物に配合したときの補強性向上効果を高めることができる。
【0035】
変性液状ポリブタジエンの使用量は、特に限定されないが、親水性シリカ100質量部に対して0.5〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜15質量部であり、更に好ましくは2〜10質量部である。このような使用量とすることにより、シリカの分散性向上効果を高めることができる。
【0036】
アミノシランカップリング剤を使用する場合、その使用量は、特に限定されないが、親水性シリカ100質量部に対して0.5〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.8〜5質量部である。このような使用量とすることにより、アミノシランカップリング剤を使用したことに対する、十分な分散性向上効果を得ることができる。
【0037】
[ゴム組成物]
本実施形態に係るゴム組成物は、上記表面処理シリカをゴム成分に配合してしなるものである。
【0038】
該ゴム成分としては、硫黄含有シランカップリング剤の硫黄原子を含む官能基と反応し得る不飽和結合を持つジエン系ゴムが好適である。ジエン系ゴムとしては、特に限定されないが、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−イソプレンゴム、ブタジエン−イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン−イソプレンゴム、ニトリルゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマーなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で、または2種以上混合して用いることができる。より好ましくは、NR、SBR、BR、又はこれらのブレンドゴムである。
【0039】
上記表面処理シリカのゴム組成物中における配合量については、特に限定されないが、ゴム成分100質量部に対して10〜200質量部であることが好ましく、より好ましくは20〜120質量部である。
【0040】
本実施形態に係るゴム組成物には、上記表面処理シリカとともに、表面処理していない未処理のシリカを配合してもよい。その場合、表面処理シリカと未処理シリカは、両者の合計量で、ゴム成分100質量部に対して20〜200質量部配合させることが好ましい。なお、未処理シリカを配合する場合、ゴム組成物に硫黄含有シランカップリング剤を別途添加することが好ましい。その場合、後添加の硫黄含有シランカップリング剤の配合量は、未処理シリカ100質量部に対して2〜20質量部であることが好ましい。該硫黄含有シランカップリング剤としては、上記一般式(1)で表される各種の硫黄含有シランカップリング剤を用いることができる。
【0041】
本実施形態に係るゴム組成物には、上記成分の他、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、亜鉛華、ステアリン酸、軟化剤、可塑剤、活性剤、カーボンブラック等の他の充填剤、滑剤等の各種添加剤を必要に応じて添加することができる。上記加硫剤としては、硫黄、硫黄含有化合物等が挙げられ、特に限定するものではないが、その配合量は上記ゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。また、加硫促進剤の配合量としては、上記ゴム成分100質量部に対して0.1〜7質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。
【0042】
本実施形態のゴム組成物は、通常に用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。すなわち、第一混合段階で、ゴム成分に、上記表面処理シリカとともに、加硫剤及び加硫促進剤を除く他の添加剤を添加混合し、次いで、得られた混合物に、最終混合段階で加硫剤及び加硫促進剤を添加混合してゴム組成物を調製することができる。
【0043】
該ゴム組成物の用途は、特に限定されず、例えば、トレッドやサイドウォール等のタイヤ、防振ゴム、コンベアベルトなどのゴム部分を形成する各種ゴム組成物に用いることができる。好ましくは、タイヤに用いることであり、常法に従い、例えば140〜180℃で加硫成形することにより、各種空気入りタイヤのゴム部分(トレッドゴムやサイドウォールゴムなど)を構成することができる。特には、空気入りタイヤのトレッドゴムに用いることが好ましく、低燃費性能、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性能に優れたタイヤを製造することができる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
[使用成分の詳細]
・シリカ:東ソー・シリカ株式会社製「ニップシールAQ」(BET=210m
2/g)
・硫黄含有シランカップリング剤A:エボニック・デグサ社製「Si75」、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド
・硫黄含有シランカップリング剤B:東レ・ダウコーニング(株)製「Z−6062」、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
・アミノシランカップリング剤:東レ・ダウコーニング(株)製「Z−6020」、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン
【0046】
・液状ポリブタジエン1:日本曹達株式会社製「BI−3000」(未変性の水添液状ポリブタジエン、Mn=3,300、水添前の1,2−ビニル結合量(Vi)=90モル%、水素添加率=90モル%以上)
・液状ポリブタジエン2:日本曹達株式会社製「GI−3000」(OH末端変性水添液状ポリブタジエン、Mn=3,100、水添前のVi=90モル%、水素添加率=90モル%以上)
・液状ポリブタジエン3:日本曹達株式会社製「TEAI−1000」(アクリレート基末端変性水添液状ポリブタジエン、Mn=2,000、水添前のVi=90モル%、水素添加率=90モル%以上)
・液状ポリブタジエン4:株式会社クラレ製「L−1502」(OH変性水添液状ポリブタジエン、Mn=7,000、水添前のVi=40モル%以下、水素添加率=90モル%以上)
・液状ポリブタジエン5:JX日鉱日石エネルギー株式会社製「EC1336」(アミン変性液状ポリブタジエン、Mn=1,800 、未水添、Vi=65モル%)
・液状ポリブタジエン6:出光興産株式会社製「Poly pbR45HT」(OH変性液状ポリブタジエン、Mn=2,500、未水添、Vi=20モル%以下)
【0047】
・SBR:ランクセス(株)製「VSL5025−0HM」、スチレン−ブタジエンゴム
・BR:宇部興産(株)製「BR150B」、ブタジエンゴム
【0048】
[表面処理シリカ1](比較例)
100℃に予熱したヘンシェルミキサーに、1000gのシリカを入れて撹拌し、80gの硫黄含有シランカップリング剤Aを噴霧した。20分間撹拌を続け、温度を120℃に上昇させた。さらに30分間撹拌を続け、表面処理シリカ1を得た。
【0049】
[表面処理シリカ2](比較例)
100℃に予熱したヘンシェルミキサーに、1000gのシリカを入れて撹拌し、80gの硫黄含有シランカップリング剤Aを噴霧した。続いて30gの液状ポリブタジエン1を添加し、20分間撹拌を続け、温度を120℃に上昇させた。さらに30分間撹拌を続け、表面処理シリカ2を得た。
【0050】
[表面処理シリカ3](実施例)
100℃に予熱したヘンシェルミキサーに、1000gのシリカを入れて撹拌し、80gの硫黄含有シランカップリング剤Aを噴霧した。続いて30gの液状ポリブタジエン2を添加し、20分間撹拌を続け、温度を120℃に上昇させた。さらに30分間撹拌を続け、表面処理シリカ3を得た。
【0051】
[表面処理シリカ4](実施例)
液状ポリブタジエン2の代わりに液状ポリブタジエン3を用い、その他は表面処理シリカ3と同様にして、表面処理シリカ4を得た。
【0052】
[表面処理シリカ5](実施例)
100℃に予熱したヘンシェルミキサーに、1000gのシリカを入れて撹拌し、80gの硫黄含有シランカップリング剤Aと、20gのアミノシランカップリング剤を噴霧した。続いて30gの液状ポリブタジエン3を添加し、20分間撹拌を続け、温度を120℃に上昇させた。さらに30分間撹拌を続け、表面処理シリカ5を得た。
【0053】
[表面処理シリカ6](実施例)
硫黄含有シランカップリング剤Aの代わりに硫黄含有シランカップリング剤Bを用い、その他は表面処理シリカ3と同様にして、表面処理シリカ6を得た。
【0054】
[表面処理シリカ7](比較例)
液状ポリブタジエン1の代わりに液状ポリブタジエン4を用い、その他は表面処理シリカ2と同様にして、表面処理シリカ7を得た。
【0055】
[表面処理シリカ8](比較例)
液状ポリブタジエン1の代わりに液状ポリブタジエン5を用い、その他は表面処理シリカ2と同様にして、表面処理シリカ8を得た。
【0056】
[表面処理シリカ9](比較例)
液状ポリブタジエン1の代わりに液状ポリブタジエン6を用い、その他は表面処理シリカ2と同様にして、表面処理シリカ9を得た。
【0057】
[ゴム組成物の調製及び評価]
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合(質量部)に従い、第一混合段階で、硫黄と加硫促進剤を除く成分を添加混合し(排出温度=160℃)、次いで、得られた混合物に、最終混合段階で硫黄と加硫促進剤を添加混合して(排出温度=90℃)、タイヤトレッド用ゴム組成物を調製した。共通配合については以下の通りである。なお、実施例及び比較例の各配合では、シリカ分のトータルの質量が80質量部で一定となるように表面処理シリカと未処理のシリカの配合量を設定した。
【0058】
共通配合は、ゴム成分100質量部に対して、プロセスオイル(昭和シェル石油(株)製「エキストラクト4号S」)40質量部、カーボンブラック(三菱化学(株)製「ダイヤブラックN339」)10質量部、亜鉛華(三井金属鉱業(株)製「亜鉛華1号」)3質量部、老化防止剤(住友化学(株)製「アンチゲン6C」)2質量部、ステアリン酸(花王(株)製「ルナックS−20」)2質量部、ワックス(日本精鑞(株)製「OZOACE0355」)2質量部、硫黄(鶴見化学工業(株)製「5%油入微粉末硫黄」)1.5質量部、加硫促進剤1(住友化学(株)製「ソクシノールCZ」)1.8質量部、加硫促進剤2(大内新興化学工業(株)製「ノクセラーD」)2.0質量部とした。
【0059】
得られた各ゴム組成物をトレッドゴムに用いて、常法に従い、185/70R14の空気入りラジアルタイヤを製造し、低燃費性能(低発熱性能)、ウェットグリップ性能、耐摩耗性能、これらの3性能のバランスを評価した。各評価方法は以下の通りである。
【0060】
・低燃費性能:空気圧230kPa、荷重4.4kNとして、転がり抵抗測定用の1軸ドラム試験機にて、室温を23℃に設定し、80Km/hで走行させたときの転がり抵抗を測定した。結果は、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が小さいほど、転がり抵抗が小さく、従って低燃費性能に優れることを示す。
【0061】
・ウェットグリップ性能:上記タイヤを2000ccのFF車に4本装着し、湿潤路面(2〜3mmの水深で水をまいた路面)上を走行した。時速100kmでの摩擦係数を測定してグリップ性能を評価した。比較例1の値を100とした指数で表示し、指数が大きいほど摩擦係数が大きく、ウェットグリップ性能に優れることを示す。
【0062】
・耐摩耗性能:各タイヤを2000ccのFF車に4本装着して、2500km毎に前後ローテーションさせながら、10000km走行後の残溝深さを測定した。残溝は4本のタイヤの平均値とし、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど、耐摩耗性能に優れることを示す。
【0063】
・3性能のバランス:低燃費性能とウェットグリップ性能と耐摩耗性能のバランスの指標であり、(ウェットグリップ性能×耐摩耗性能)/低燃費性能により算出した。この値が高いほど良好である。
【0064】
【表1】
【0065】
結果は、表1に示す通りであり、比較例2〜5のように、ゴム混合時に、液状ポリブタジエンを添加して混合したものでは、コントロールである比較例1に対して、低燃費性能の改善効果が小さいか、又はほとんど得られず、また特に、耐摩耗性能の改善効果が得られず劣っていた。比較例6では、シリカを予め表面処理したものの、液状ポリブタジエンで処理していないため、低燃費性能や耐摩耗性能の改善効果が不十分であり、ウェットグリップ性にも劣っていた。比較例7では、表面処理した液状ポリブタジエンが未変性品であり、また、比較例8では、表面処理した液状ポリブタジエンが低ビニル品であったため、液状ポリブタジエンとシリカとの親和性ないし反応性が不十分であったと考えられ、そのため、低燃費性能とウェットグリップ性能と耐摩耗性能の3性能の向上効果が不十分であった。また、比較例9及び比較例10では、表面処理した液状ポリブタジエンが未水添品であったためウェットグリップ性能の改善効果が得られず、更に比較例10では低ビニル品でもあったため3性能の向上効果が不十分であった。
【0066】
これに対し、表面処理に高ビニル品を水添した官能基変性液状ポリブタジエンを用いた実施例1〜4であると、コントロールである比較例1に対してはもちろんのこと、表面処理シリカを用いた比較例6〜10に対しても、低燃費性能、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性能の全てで改善効果が得られ、これら3性能のバランスが顕著に改善されていた。