特許第6033641号(P6033641)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6033641
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】オイルストレーナ
(51)【国際特許分類】
   B01D 35/30 20060101AFI20161121BHJP
   B01D 35/02 20060101ALI20161121BHJP
   F01M 11/03 20060101ALI20161121BHJP
   B01D 29/01 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   B01D35/30
   B01D35/02 E
   F01M11/03 G
   B01D29/04 510D
   B01D29/04 530B
   B01D29/04 510B
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-240566(P2012-240566)
(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公開番号】特開2014-87772(P2014-87772A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】幸 淳史
【審査官】 目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−127221(JP,A)
【文献】 特開2005−111432(JP,A)
【文献】 特開2012−031794(JP,A)
【文献】 特開2009−108765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D29/00−29/96
B01D35/00−35/34
F01M11/00−11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルを濾過するためのフィルタ(10)と、
上記フィルタ(10)を収容するための筒状のケーシング(20)とを備え、
上記ケーシング(20)の長手方向一側には、オイル吸入孔(A)が設けられ、他側にはオイル吐出孔(B)が設けられ、
上記オイル吸入孔(A)から上記ケーシング(20)に吸入したオイルを上記フィルタ(10)で濾過し、上記オイル吐出孔(B)から吐出させるように構成されたオイルストレーナ(1)において、
上記ケーシング(20)は、第1部材(30)と、該第1部材(30)から分割される第2部材(50)とを備え、
上記フィルタ(10)は、上記第1部材(30)のオイル流れ方向中間部に収容され、
上記第1部材(30)は、上記フィルタ(10)よりもオイル流れ方向上流側を構成する上流中空部(31)と、上記フィルタ(10)よりもオイル流れ方向下流側を構成する下流中空部(32)とを備え、
上記第1部材(30)の上流中空部(31)には、上記ケーシング(20)の長手方向に延びる筒状の非分割部(31a)が形成され、
上記第1部材(30)の下流中空部(32)には、上記ケーシング(20)の長手方向に延びる筒状の非分割部(32a)が形成され、
上記第1部材(30)には、上記非分割部(31a,32a)を除く一部に開放する開放部(34)が設けられ、
上記第2部材(50)は、上記開放部(34)を閉塞するように形成されるとともに、上記第1部材(30)の開放部(34)周縁に溶着されていることを特徴とするオイルストレーナ(1)。
【請求項2】
オイルを濾過するためのフィルタ(10)と、
上記フィルタ(10)を収容するための筒状のケーシング(20)とを備え、
上記ケーシング(20)の長手方向一側には、オイル吸入孔(A)が設けられ、他側にはオイル吐出孔(B)が設けられ、
上記オイル吸入孔(A)から上記ケーシング(20)に吸入したオイルを上記フィルタ(10)で濾過し、上記オイル吐出孔(B)から吐出させるように構成されたオイルストレーナ(1)において、
上記ケーシング(20)は、第1部材(60)と、該第1部材(60)から分割される第2部材(70)とを備え、
上記第1部材(60)には、上記ケーシング(20)の長手方向に延びる筒状の非分割部(62)と、長手方向の非分割部(62)を除く一部に開放する開放部(64)と、該開放部(64)のオイル流れ方向中間部を仕切る仕切板(65)とが設けられ、
上記フィルタ(10)は、上記第1部材(60)における上記仕切板(65)よりもオイル流れ方向下流側に形成されたフィルタ収容部(21)に収容され、
上記第2部材(70)は、上記開放部(64)を閉塞するように形成されるとともに、上記第1部材(60)の開放部(64)周縁に溶着され、
上記第2部材(70)には、上記フィルタ収容部(21)に収容された上記フィルタ(10)を支持するフィルタ支持部(72)が設けられていることを特徴とするオイルストレーナ(1)。
【請求項3】
請求項に記載のオイルストレーナ(1)において、
上記オイル吸入孔(A)を形成する吸入管部(61)を備え、
上記吸入管部(61)は、上記第1部材(60)及び上記第2部材(70)から分割されていることを特徴とするオイルストレーナ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、エンジン等の動力装置の内部を循環するオイルの不純物を除去するオイルストレーナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両におけるエンジンやトランスミッション等のオイルパンを有する動力装置では、オイルパンの内部に、該動力装置の内部を循環するオイルの不純物を除去するオイルストレーナが配設されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されているオイルストレーナは、オイルを濾過する板状フィルタと、フィルタを収容する筒状ケーシングとを備えている。ケーシングは、上下方向略中央部で上下に半割状に分割されている。そして、フィルタを上側部材の下端周縁と下側部材の上端周縁とで挟持した状態で、これら周縁同士を全周に亘って溶着して一体化している。
【0004】
ケーシングの長手方向一端部にはオイルの吸入孔が形成され、他端部にはオイルの吐出孔が形成されている。吐出孔は、動力装置のオイルポンプに接続される一方、吸入孔はオイルパン内においてオイルの吸い込み部分(オイルパン内において最も深い所近傍)に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−127221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、動力装置の構造等によっては、オイルポンプと、オイルパン内の最も深い所とが水平方向に大きく離れている場合等がある。このような場合、オイルストレーナの吸入孔と吐出孔とを離して配置しなければならないので、その分、ケーシングが長くなってしまう。
【0007】
特許文献1のケーシングは、その長手方向両端に亘って上下に分割しているので、上述のようにケーシングが長くなると、上側部材及び下側部材も長くなり、その結果、両部材の溶着部分の周長が長くなる。溶着部分の周長が長くなると部分的な溶着不良が発生し易くなり、不良品の発生懸念が高まる。
【0008】
さらに、ケーシングの上側部材及び下側部材が長い形状であると、溶着前において各部材の剛性が不足しがちになるので、溶着時に両部材の溶着面同士を強く、かつ、均一な接触状態に維持するのが困難になる。このことによってもケーシングの溶着不良を招くことが考えられる。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ケーシングが長い形状であっても溶着不良が起こりにくくして不良品の発生を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、ケーシングを構成する部材を分割する場合に、全体に亘って分割するのではなく、一部に非分割部を設けるようにした。
【0011】
第1の発明は、
オイルを濾過するためのフィルタ(10)と、
上記フィルタ(10)を収容するための筒状のケーシング(20)とを備え、
上記ケーシング(20)の長手方向一側には、オイル吸入孔(A)が設けられ、他側にはオイル吐出孔(B)が設けられ、
上記オイル吸入孔(A)から上記ケーシング(20)に吸入したオイルを上記フィルタ(10)で濾過し、上記オイル吐出孔(B)から吐出させるように構成されたオイルストレーナ(1)において、
上記ケーシング(20)は、第1部材(30)と、該第1部材(30)から分割される第2部材(50)とを備え、
上記フィルタ(10)は、上記第1部材(30)のオイル流れ方向中間部に収容され、
上記第1部材(30)は、上記フィルタ(10)よりもオイル流れ方向上流側を構成する上流中空部(31)と、上記フィルタ(10)よりもオイル流れ方向下流側を構成する下流中空部(32)とを備え、
上記第1部材(30)の上流中空部(31)には、上記ケーシング(20)の長手方向に延びる筒状の非分割部(31a)が形成され、
上記第1部材(30)の下流中空部(32)には、上記ケーシング(20)の長手方向に延びる筒状の非分割部(32a)が形成され、
上記第1部材(30)には、上記非分割部(31a,32a)を除く一部に開放する開放部(34)が設けられ、
上記第2部材(50)は、上記開放部(34)を閉塞するように形成されるとともに、上記第1部材(30)の開放部(34)周縁に溶着されていることを特徴とするものである。
【0012】
この構成によれば、第1部材に筒状の非分割部を設けているので、第1部材の長手方向の一部に閉断面構造が形成されることになり、第1部材の剛性を確保し易くなる。そして、第1部材の非分割部を除く一部に開放部を設けたので、開放部は、ケーシングの長手方向の一部にのみ形成されることになり、この第1部材の開放部を閉塞する第2部材の長さは、ケーシングの長手方向の長さよりも短くて済む。よって、第2部材の剛性は、特許文献1のようにケーシングの長手方向両端に亘って延びるものに比べて高くなる。従って、第1部材及び第2部材を溶着する際に、両部材の溶着面同士を強く、かつ、均一な接触状態で維持することが可能になる。
【0013】
さらに、第1部材の開放部がケーシングの長手方向の一部にのみ形成されるので、第2部材との溶着部分の周長が短くなり、溶着不良が発生しにくくなる。
【0014】
第2の発明は、
オイルを濾過するためのフィルタ(10)と、
上記フィルタ(10)を収容するための筒状のケーシング(20)とを備え、
上記ケーシング(20)の長手方向一側には、オイル吸入孔(A)が設けられ、他側にはオイル吐出孔(B)が設けられ、
上記オイル吸入孔(A)から上記ケーシング(20)に吸入したオイルを上記フィルタ(10)で濾過し、上記オイル吐出孔(B)から吐出させるように構成されたオイルストレーナ(1)において、
上記ケーシング(20)は、第1部材(60)と、該第1部材(60)から分割される第2部材(70)とを備え、
上記第1部材(60)には、上記ケーシング(20)の長手方向に延びる筒状の非分割部(62)と、長手方向の非分割部(62)を除く一部に開放する開放部(64)と、該開放部(64)のオイル流れ方向中間部を仕切る仕切板(65)とが設けられ、
上記フィルタ(10)は、上記第1部材(60)における上記仕切板(65)よりもオイル流れ方向下流側に形成されたフィルタ収容部(21)に収容され、
上記第2部材(70)は、上記開放部(64)を閉塞するように形成されるとともに、上記第1部材(60)の開放部(64)周縁に溶着され、
上記第2部材(70)には、上記フィルタ収容部(21)に収容された上記フィルタ(10)を支持するフィルタ支持部(72)が設けられていることを特徴とするものである
【0015】
第3の発明は、第の発明において、
上記オイル吸入孔(A)を形成する吸入管部(61)を備え、
上記吸入管部(61)は、上記第1部材(60)及び上記第2部材(70)から分割されていることを特徴とするものである。
【0016】
この構成によれば、オイルストレーナを動力装置に組み付ける際、例えば吸入管部が他の部材と干渉する場合に、吸入管部を第1部材及び第2部材から外しておき、第1部材及び第2部材を先に組み付け、その後、吸入管部を取り付けることが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明によれば、ケーシングの第1部材に筒状の非分割部と、非分割部を除く一部に開放する開放部とを設け、ケーシングの第2部材を、開放部を閉塞するように形成するとともに、第1部材の開放部周縁に溶着するようにしている。これにより、第1部材及び第2部材の剛性を確保し易くなり、両部材の溶着面同士を強く、かつ、均一な接触状態で維持して確実に溶着することができる。さらに、第1部材と第2部材との溶着部分の周長を短くすることができるので、溶着不良の発生を防止できる。よって、ケーシングが長い形状であっても不良品の発生を防止することができる
【0018】
の発明によれば、吸入管部を第1部材及び第2部材から分割するようにしたので、オイルストレーナを動力装置に組み付ける際の作業性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態1に係るオイルストレーナを上方から見た斜視図である。
図2】実施形態1に係るオイルストレーナの蓋部材を外した状態を下方から見たである。
図3】実施形態1に係るオイルストレーナを下方から見た分解斜視図である。
図4図1のIV−IV線断面図である。
図5】実施形態2に係る図1相当図である。
図6】実施形態3に係る図1相当図である。
図7】実施形態3に係るオイルストレーナの分解斜視図である。
図8図6におけるVIII−VIII線断面図である。
図9】上側部材を下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0021】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るオイルストレーナ1を上方から見た斜視図である。オイルストレーナ1は、図示しないが、例えば車両のエンジン(動力装置)の下部に設けられたオイルパンの内部に配設されて、オイルパンに貯留されたオイルを濾過してオイルポンプに供給するためのものである。このエンジンでは、オイルポンプの吸入孔と、オイルパン内におけるオイル吸い込み部分(最も深い部分)とが水平方向に大きく離れており、オイルストレーナ1は、全体的に水平方向に長く延びる形状となっている。
【0022】
尚、オイルストレーナ1は、エンジン以外にも、例えば自動変速機等、各種動力装置のオイルパンの内部に配設して使用することができ、その場合にはオイルパンの内部構造に合わせて形状変更等をすればよい。
【0023】
図2図3に示すように、オイルストレーナ1は、オイルを濾過するための樹脂製フィルタ10と、フィルタ10を収容するための筒状の樹脂製ケーシング20とを備えている。ケーシング20の長手方向一側(図1における右側)には、オイル吸入孔Aが設けられ、他側(図1における左側)にはオイル吐出孔Bが設けられている。オイル吸入孔Aからケーシング20に吸入したオイルをフィルタ10で濾過した後、オイル吐出孔Bから吐出させるように構成されている。
【0024】
尚、この実施形態の説明では、オイルストレーナ1の長手方向一側を上流側といい、長手方向他側を下流側というものとする。
【0025】
ケーシング20は、本体部材(第1部材)30と蓋部材(第2部材)50とを備えている。これら本体部材30及び蓋部材50は樹脂材を射出成形してなるものである。尚、図2及び図3において、蓋部材50は裏返した状態で示しているので、図において上に向いている面を下にして本体部材30に組み付ける。
【0026】
本体部材30は、長手方向(オイル流れ方向)の中間部にフィルタ10が収容されるようになっており、フィルタ10よりも上流側を構成する上流中空部31と、下流側を構成する下流中空部32とを備えている。上流側中空部31及び下流側中空部32は、オイルの流れ方向に長く延びるように形成されており、ケーシング20の幅方向に並び、互いに連通状態で一体化している。
【0027】
上流側中空部31は、上流側へ突出する上流側筒状部31aを有している。上流側筒状部31aは角筒状をなしており、内部はオイルの流通路となっている。上流側筒状部31aの上流端近傍の下壁部には、図4にも示すように上流側の端部に行くに従って上に位置するように傾斜する傾斜壁部31bが形成されている。傾斜壁部31bには、開口部31cが形成されている。さらに、傾斜壁部31bの開口部31c周縁部には、ケーシング20の長手方向一側に位置する吸入管部31dが一体成形されている。吸入管部31dの内部がオイル吸入孔Aとなっている。吸入管部31dは、斜め下方へ突出しているが、オイルパン内の構造に応じて鉛直に延びる形状としてもよい。
【0028】
一方、下流側中空部32は、下流側へ突出する下流側筒状部32aを有している。下流側筒状部32aは角筒状をなしており、内部はオイルの流通路となっている。下流側筒状部32aの下流端近傍の上壁部には、開口部32cが形成されている。さらに、下流側筒状部32aの上壁部には、ケーシング20の長手方向他側に位置する吐出管部32dが上方へ突出するように一体成形されている。吐出管部32dの内部がオイル吐出孔Bとなっている。吐出管部32dの延びる方向は略鉛直方向であるが、オイルパン内の構造に応じて斜めに延びる形状としてもよい。
【0029】
吐出管部32dの上端部には、径方向に延出するフランジ32eが形成されている。フランジ32eの上面には、オイル吐出孔Bの開口を囲むように環状溝32fが形成されている。環状溝32fには、シール材(図示せず)が嵌るようになっている。シール材は、オイルポンプの吸入口(図示せず)とオイル吐出孔Bとの間をシールするためのものである。また、フランジ32eには、オイルストレーナ1をエンジンブロックに締結するための締結部材が挿通する締結穴32gが形成されている。
【0030】
ケーシング20の本体部材30は、上流側中空部31と下流側中空部32とが幅方向に並ぶように一体化されて、かつ、上流側中空部31からは上流側筒状部31aが突出し、下流側中空部32からは下流側筒状部32aが突出しているので、全体としては、オイル流れ方向中間部の幅が広く、上流側及び下流側の幅が狭くなっている。このような形状としているので、例えば、オイルパン内において上流側筒状部31aの側方に他の部品等が存在している場合にその部品との干渉を回避することが可能になる。
【0031】
図2図3に示すように、本体部材30の下壁部には、本発明の開放部となる開放口34が形成されている。この開放口34から上記フィルタ10が本体部材30の内部に収容されるようになっている。開放口34の形状は、オイル流れ方向に長い略矩形状とされている。開放口34は、上流側中空部31の上流側筒状部31a以外の部分から、下流側中空部32の下流側筒状部32a以外の部分に亘って形成されている。このように開放口34をケーシング20の長手方向中間部にのみ設けてケーシング20の中間部のみを分割して蓋部材50とし、上流側筒状部31a及び下流側筒状部32aを非分割部としているので、開放口34の形成範囲が上記特許文献1のものに比べて狭くなる。非分割部とは、ケーシング20の長手方向に交差する方向(上下方向や左右方向)に分割されていない、成形時に一体に成形された筒状の部分である。
【0032】
本体部材30の下壁部には、開放口34の周囲を囲むように環状の溶着用突条部35が下方へ突出するように形成されている。溶着用突条部35は、蓋部材50に溶着される部分である。
【0033】
また、本体部材30の内面には、フィルタ10の外周部が嵌る嵌合溝36が形成されている。嵌合溝36は、本体部材30の幅方向中央部近傍に位置しており、本体部材30の底壁部から側壁部に亘って連続している。この嵌合溝36には、後述するフィルタ10の側面突条部12a,12aと下面突条部12bとが嵌り、かつ、フィルタ10の枠部12も嵌るようになっている。本体部材30の側壁部には、嵌合溝36の形成位置に対応して膨出部37,37が形成されている。環状の溶着用突条部35は、嵌合溝36の外周側、つまり、フィルタ10の縁部を迂回するように膨出部37,37の形成箇所に対応して延びている。これにより、ケーシング20の本体部材30と蓋部材50とを全周に亘って確実にシールできる。
【0034】
図2に示すようにケーシング20の幅広部分にフィルタ10が収容されることになる。フィルタ10は、図3にも示すように、上下方向に延びる矩形板状をなし、樹脂材を用いて成形された一体成形品である。フィルタ10の形状は、上下方向の寸法よりもオイル流れ方向の寸法の方が長い形状である。フィルタ10は、矩形状の網目部11と、網目部11の周囲を囲む枠部12と、枠部12の内側に設けられたリブ13とを有している。網目部11は多数の濾過用の小孔を有している。また、リブ13は、網目部11と一体化しており、網目部11の補強を行うものである。
【0035】
枠部12の両外側面には、上下方向に延びる側面突条部12a,12aが形成され、また、枠部12の下面には、フィルタ10の長手方向に延びる下面突条部12bが形成され、さらに、枠部12の上面には、フィルタ10の長手方向に延びる上面突条部12cが形成されている。側面突条部12a、下面突条部12b及び上面突条部12cは枠部12の周方向に連続している。図2に示すように、上面突条部12cは、フィルタ10をケーシング20の本体部材30に組み付けた状態で、本体部材30の溶着用突条部35と同一面上に位置するようになっている。
【0036】
蓋部材50は、本体部材30の開放口34を覆う略矩形の板部材からなるものである。蓋部材50の内面(本体部材30の内部空間に臨む面)には、溶着用突条部51が形成されている。溶着用突条部51は、蓋部材50の周縁部から突出して環状に延びる環状部51aと、環状部51aの内側で蓋部材50の幅方向中央部において該蓋部材50の長手方向に延びる直線部51bとを有している。環状部51aは、本体部材30の溶着用突条部35と一致する形状であり、該溶着用突条部35に溶着される部分である。また、直線部51bは、環状部51aよりも幅広で、フィルタ10の上面突条部12cの延びる方向と一致する方向に延びる形状であり、上面突条部12cに溶着される部分である。
【0037】
また、蓋部材50には、長手方向に延出する延出板部52,52が形成されている。延出板部52,52は、本体部材30の膨出部37,37を下方から覆うように位置している。直線部51bは、延出板部52,52側に延長して延びている。
【0038】
次に、上記のように構成されたオイルストレーナ1の製造要領について説明する。まず、フィルタ10をケーシング20の本体部材30の開放口34から内部へ挿入し、フィルタ10の側面突条部12a,12a及び下面突条部12bを嵌合溝36に嵌合して本体部材30にセットする。
【0039】
その後、蓋部材50を本体部材30に熱板溶着法で溶着する場合には、蓋部材50を、本体部材30の開放口34を覆う位置に任意の隙間を設けて配置して蓋部材50の溶着用突条部51と、本体部材30の溶着用突条部35との間に熱板を挿入し接近させる。このとき、蓋部材50の溶着用突条部51のうち、環状部51aと本体部材30の溶着用突条部35とが溶融し、直線部51bとフィルタ10の上面突条部12cとが溶融する。
【0040】
しかる後、熱板を退避させて、本体部材30の開放口34を覆うように蓋部材50を重ね合わせて接合する。このとき、本体部材30には、筒状の非分割部として、上流側筒状部31a及び下流側筒状部32aを設けているので、本体部材30の長手方向の一部に閉断面構造が形成されることになり、本体部材30の剛性が高まっている。さらに、本体部材30の上流側筒状部31a及び下流側筒状部32aを除く一部にのみ開放口34を設けたので、開放口34は、ケーシング20の長手方向の一部にのみ形成されることになる。よって、本体部材30の剛性低下が抑制される。
【0041】
また、蓋部材50については、本体部材30の開放口34を閉塞するだけの大きさで済むので、上記特許文献1のようにケーシング20の長手方向両端に延びるものに比べて蓋部材50の長さが短くて済む。よって、蓋部材50の剛性も高まる。
【0042】
このように剛性の高い本体部材30及び蓋部材50を溶着するので、溶着時に溶着用突条部35,51を強く、かつ、均一な接触状態で維持することが可能になる。よって、溶着不良が発生しにくくなる。
【0043】
しかも、本体部材30の開放口34がケーシング20の長手方向の一部にのみ形成されるので、蓋部材50との溶着部分の周長が短くなっている。このことによっても溶着不良が発生しにくくなる。
【0044】
また、この実施形態では、フィルタ10が蓋部材50に溶着されるので、経年変化によるフィルタ10のがたつきを防止できるとともに、フィルタ10と蓋部材50内面との間のシール性も確保できる。
【0045】
尚、蓋部材50を本体部材30に振動溶着法等で溶着する場合にも、同様に本体部材30及び蓋部材50の剛性が高く、しかも、溶着部分の周長が短いので、溶着不良が発生しにくくなる。
【0046】
また、オイルストレーナ1では、吸入管部31d及び吐出管部32dを本体部材30に一体成形しているので、吸入管部31dと吐出管部32dとの相対的な位置関係を正確に保つことが可能になる。よって、使用時において吸入管部31dや吐出管部32dが他の部品に干渉するのを防止できる。この構成によれば、部品点数が少なくなるという利点もある。
【0047】
そして、オイルストレーナ1の使用状態では、オイルパン内のオイルが吸入管部31dの下端からオイル吸入孔Aに吸入されて上流側中空部31の上流側筒状部31aを流通した後、フィルタ10を通過して濾過される。濾過後のオイルは、下流側中空部32に流入して下流側筒状部32aを流通した後、吐出管部32dの吐出孔Bから吐出されてオイルポンプに吸入される。
【0048】
以上説明したように、この実施形態1に係るオイルストレーナ1によれば、ケーシング20の本体部材30に上流側筒状部31a及び下流側筒状部32aを設け、これら筒状部31a,32aを除く部分に開放口34を設けているので、本体部材30の剛性を高めることができる。さらに、ケーシング20の蓋部材50を小さくすることができ、蓋部材50の剛性も高めることができる。よって、蓋部材50を本体部材30に確実に溶着することができる。しかも、本体部材30と蓋部材50との溶着部分の周長を短くすることができるので、溶着不良の発生を防止できる。よって、ケーシング20が長い形状であっても不良品の発生を防止することができる。
【0049】
尚、この実施形態1では、蓋部材50をケーシング20の下壁部に設けているが、これに限らず、ケーシング20の上壁部に設けてもよい。この場合、ケーシング20の本体部材30の上壁部に開放口を形成する。
【0050】
(実施形態2)
図5は、本発明の実施形態2に係るオイルストレーナ1の斜視図である。この実施形態2のオイルストレーナ1は、実施形態1のものに対し、フィルタ10の配置、ケーシング30の構造、蓋部材50の位置が異なっており、他の部分は実施形態1と同様に構成されている。以下、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0051】
この実施形態2のケーシング20の本体部材30は、上流側中空部31と下流側中空部32とが上下方向に並んだ状態で一体化されている。フィルタ10は、本体部材30の上下方向中央部近傍において略水平に延びる姿勢で収容されている。
【0052】
本体部材30の開放口34は、本体部材30の側壁部に形成されている。図示しないが、本体部材30の開放口34の周囲には、蓋部材50の溶着用突条部に溶着される溶着用突条部が形成されている。
【0053】
この実施形態2のオイルストレーナ1も実施形態1と同様にケーシング20の本体部材30に上流側筒状部31a及び下流側筒状部32aを設け、これら筒状部31a,32aを除く部分に開放口34を設けているので、本体部材30及び蓋部材50の剛性を高めることができる。また、本体部材30と蓋部材50との溶着部分の周長を短くすることができる。よって、ケーシング20が長い形状であっても不良品の発生を防止することができる。
【0054】
尚、蓋部材50は、本体部材30において実施形態2で図示した面とは反対側の側面に設けることもできる。
【0055】
また、上記実施形態1、2では、本体部材30に上流側筒状部31a及び下流側筒状部32aを設けているが、これに限らず、上流側筒状部31aのみ、または、下流側筒状部32aのみ設けてもよい。
【0056】
尚、実施形態1、2の本体部材30は、長手方向の中間部にフィルタ10が収容されるようになっているが、長手方向と交差する方向の中間部にフィルタ10が収容されるようになっていてもよい。また、開口部34の内方において、フィルタ10の位置は、オイル流れ上流側と下流側とを分割するように設定してもよい。つまり、フィルタ10の位置は、実施形態1、2の位置に限定されるものではなく、本体部材30の任意に位置に設定できる。
【0057】
(実施形態3)
図6は、本発明の実施形態3に係るオイルストレーナ1の斜視図である。この実施形態3のオイルストレーナ1は、実施形態1のものに対し、ケーシング30の構造が異なっており、他の部分は実施形態1と同様に構成されている。以下、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0058】
オイルストレーナ1のケーシング20は、細長く形成されるとともに、上下方向の中間部において上下に分割された上側部材(第1部材)60と下側部材(第2部材)70とを有している。ケーシング20の下流側には図7図8に示すフィルタ10が収容されるフィルタ収容部21が設けられている。フィルタ収容部21は、ケーシング20の上流側に比べて幅が広く、かつ、下方へ膨出しており、断面積が上流側に比べて広く設定されている。
【0059】
上側部材60の上流側には、該上側部材60及び下側部材70から分割された吸入管部61が着脱可能に取り付けられるようになっている。吸入管部61は、オイル吸入孔Aを形成する樹脂製部材であり、ケーシング20の一部を構成している。図8図9に示すように、上側部材60の上流側の下壁部には、開口部60aが形成されるとともに、この開口部60aの周囲から延出する上流側フランジ60bも形成されている。開口部60aが吸入管部61に連通するようになっている。上流側フランジ60bには、吸入管部61を締結するためのボス60c,60cが設けられている。該ボス60c,60cには、ナット(図示せず)がインサート圧入される。
【0060】
上側部材60の上流側において開口部60aよりも下流側は、上下に分割されていない非分割部としての筒状部62となっている。この筒状部62の内部はオイルの流通路である。筒状部62の下壁部は略平坦に形成されている。
【0061】
上側部材60の下側において筒状部62よりも下流側は、本発明の開放部となる開放口64が形成されている。この開放口64は、上側部材60の下流側の端部まで開口しており、オイル流れ方向中間部が仕切板65によって仕切られている。仕切板65は、ケーシング20の内部にフィルタ収容部21を区画形成するためのものであり、上側部材60の内面から突出している。
【0062】
上側部材60の下側には、開放口64の周囲を囲むように環状の溶着用突条部66が下方へ突出するように形成されている。溶着用突条部66は、下側部材70及びフィルタ10に溶着される部分である。溶着用突条部66は、仕切板65の下端面にも連続して設けられており、この仕切板65の溶着用突条部66はフィルタ10に溶着される。
【0063】
上側部材60の下流側には、図6にも示すようにオイル吐出孔Bが上方へ延びるように形成されている。オイル吐出孔Bの周縁部には、径方向に延出する下流側フランジ60fが形成されている。下流側フランジ60fの上面には、オイル吐出孔Bの開口を囲むように環状溝60gが形成されている。環状溝60gには、シール材(図示せず)が嵌るようになっている。また、下流側フランジ60fには、オイルストレーナ1をエンジンブロックに締結するための締結部材が挿通する締結穴60hが形成されている。
【0064】
上側部材60の下流側には、下流側フランジ60fを補強するためのリブ68,68が形成されている。リブ68,68は、下流側フランジ60fと上側部材60の側壁部とを繋ぐように延びている。
【0065】
上側部材60の長手方向中間部には、締結板部69が設けられている。締結板部69は、上側部材60の側面から側方へ延出する板状に形成されている。締結板部69には、オイルストレーナ1をエンジンブロックに締結するための締結部材が挿通する締結穴69aが形成されている。この締結板部69は省略してもよい。
【0066】
下側部材70は、上側部材60の開放口64を覆うように全体として凹状に形成されている。上側部材60の開放口64は、筒状部62よりも下流側の領域に設けられているので、開放口64の長手方向の寸法は、上側部材60の長手方向の寸法よりも短くなっている。このため、下側部材70は、開放口64の寸法に対応して上側部材60の長手方向の寸法よりも短いものとなる。
【0067】
図7に示すように、下側部材70のフィルタ収容部21内面には、フィルタ10の周縁部が嵌る段部71が形成されている。フィルタ10が段部71に嵌ることでフィルタ10の位置ずれが防止される。また、下側部材70のフィルタ収容部21内面には、一対のフィルタ支持部72,72(図7には一方のみ示す)がケーシング20の幅方向に間隔をあけて設けられている。各フィルタ支持部72は、柱状をなしており、フィルタ10の支持板14を下方から支持するものである。フィルタ支持部72は板状であってもよい。
【0068】
下側部材70の周縁部には、溶着用突条部74が全周に亘って設けられている。この溶着用突条部74は、上側部材60の溶着用突条部66に溶着される。
【0069】
フィルタ10は、実施形態1のものと同様に、網目部11、枠部12及びリブ13を備え、さらに、支持板14と溶着用突条部15も備えている。支持板14は、フィルタ10の端部からオイル流れ方向上流側へ延出している。この支持板14の上面に溶着用突条部15が形成されている。この溶着用突条部15が上側部材60の溶着用突条部66に溶着される。
【0070】
吸入管部61は全体として傾斜して延びており、上端部には略水平なフランジ61aが形成されている。フランジ61aの上面には、オイル吸入孔Aの開口を囲むように環状溝61bが形成されている。環状溝61bには、シール材C(図8にのみ示す)が嵌るようになっている。シール材Cは、上側部材60の開口部60aとオイル吸入孔Aとの間をシールするためのものである。また、フランジ61aには、吸入管部61を上側部材60に締結するための締結部材が挿通する締結穴61c,61cが形成されている。
【0071】
実施形態3のオイルストレーナ1も熱板溶着法や振動溶着法を用いて製造することができる。このとき、上側部材60には、非分割部として筒状部62を設けているので、上側部材60の長手方向の一部に閉断面構造が形成されることになり、上側部材60の剛性が高まっている。さらに、上側部材60の筒状部62を除く一部にのみ開放口64を設けたので、開放口64は、ケーシング20の長手方向の一部にのみ形成されることになる。よって、上側部材60の剛性低下が抑制される。
【0072】
また、下側部材70については、上側部材60の開放口64を閉塞するだけの大きさで済むので、上記特許文献1のようにケーシング20の長手方向両端に延びるものに比べて長さが短くて済む。よって、下側部材70の剛性も高まる。
【0073】
このように剛性の高い上側部材60及び下側部材70を溶着するので、溶着時に溶着用突条部66,74を強く、かつ、均一な接触状態で維持することが可能になる。よって、溶着不良が発生しにくくなる。
【0074】
しかも、上側部材60の開放口64がケーシング20の長手方向の一部にのみ形成されるので、下側部材70との溶着部分の周長が短くなっている。このことによっても溶着不良が発生しにくくなる。
【0075】
以上説明したように、この実施形態3に係るオイルストレーナ1によれば、実施形態1のものと同様に、ケーシング20が長い形状であっても不良品の発生を防止することができる。
【0076】
また、吸入管部61を上側部材60及び下側部材70から分割しているので、例えば、オイルストレーナ1をエンジンに組み付ける際、例えば吸入管部61が他の部材と干渉する場合に、吸入管部61を上側部材60及び下側部材70から外しておき、上側部材60及び下側部材70を先に組み付け、その後、吸入管部61を取り付けることが可能になるので、組み付け作業性を良好にすることができる。
【0077】
尚、吸入管部61を上側部材60に一体成形してもよい。
【0078】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上説明したように、本発明にかかるオイルストレーナは、動力装置の内部を循環するオイルを濾過する場合に使用できる。
【符号の説明】
【0080】
1 オイルストレーナ
10 フィルタ
20 ケーシング
30 本体部材(第1部材)
31a 上流側筒状部
31d 吸入管部
32a 下流側筒状部
32d 吐出管部
34 開放口(開放部)
50 蓋部材(第2部材)
60 上側部材(第1部材)
70 下側部材(第2部材)
61 吸入管部
64 開放口(開放部)
A オイル吸入孔
B オイル吐出孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9