【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成24年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「低炭素社会を実現する新材料パワー半導体プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記距離調節手段は、前記坩堝を保持する内側シャフトと、前記断熱部材を保持する外側シャフトとを有し、かつ、前記内側シャフトの外周面に沿って前記外側シャフトを相対移動させることが可能な二重シャフト構造を備えている請求項1から6までのいずれか1項に記載の単結晶製造装置。
【背景技術】
【0002】
近年、パワー半導体応用としてSiC単結晶が注目されており、その実用化には高品質な基板を効率良く製造する方法が求められている。昇華法などの気相成長法において、良質なSiC単結晶を得るための条件として、成長面近傍の温度と、成長面の平坦性(等温面の平坦性)を維持しながら成長を継続することが挙げられる。
【0003】
SiC単結晶の成長面の平坦性を向上させる方法として、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、成長装置内に配置された上下ヒータの間に仕切り壁部を設ける方法が開示されている。同文献には、このような方法により、等温面をほぼ種結晶の表面に対して平行にすることが可能となることが記載されている。仕切り壁部は、原料と種結晶の間の温度勾配を比較的大きくすることができ、原料部でのSiCの昇華と、単結晶部でのSiCの析出を確実に行わせる効果も有している。
【0004】
しかしながら、成長が進行し、単結晶部の成長高さが高くなると、成長面が原料表面に近づくため、成長面の温度が上昇するとともに、成長面近傍の温度分布も変化してしまう。成長面の温度上昇は、急激な成長速度の低下や、時として成長面の表面炭化を発生させる。また、成長面近傍の温度分布の変化は、結晶品質の低下を招く。
【0005】
これを抑制するため、装置内にて、原料部分と単結晶部分の上下方向の位置を独立に制御し、成長面と原料表面の距離を一定に保つ方法が提案されている(特許文献2、特許文献3)。しかし、特許文献2に記載されているように、坩堝内壁と種結晶保持部や原料保持部に隙間がある場合には、昇華ガスが坩堝外に漏れやすい。また、特許文献3に記載されているように、単結晶周辺部に可動部を設けると、インクルージョンなどの発生源となる恐れや、SiCの析出により可動部が固着しやすいという問題もある。
【0006】
仕切り壁部により形成される平坦な温度分布下で結晶の成長を継続させる別の手段として、成長の進行に伴って、坩堝位置を調節する方法が考えられる。しかしながら、この場合、ヒータに対して相対的に坩堝を移動することになり、原料中の温度分布が変化してしまう。原料中の温度分布が変化すると、原料からの昇華ガスの発生速度が変化し、それに伴って単結晶の成長速度も変動してしまい、結晶品質を低下させる恐れが高い。
以上の問題から、坩堝内に可動部を設けることなく、成長面近傍の温度分布と、原料部の温度分布を独立に制御できる装置構造が望まれる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 適用対象]
本発明は、SiC単結晶の製造に特に好適であるが、本発明は、昇華再析出法などの気相成長法を用いて製造可能な他の単結晶(例えば、GaN単結晶、AlN単結晶など)にも適用することができる。
【0015】
[2. 単結晶製造装置及び単結晶の製造方法(1)]
[2.1. 単結晶製造装置(1)]
図1に、本発明の第1の実施の形態に係る単結晶製造装置(以下、単に「装置」ともいう)の概略図を示す。
図1において、単結晶製造装置10aは、坩堝20と、第1加熱部30と、断熱部材40と、第2加熱部50と、距離調節手段(図示せず)とを備えている。
【0016】
[2.1.1. 坩堝]
坩堝20は、上部に単結晶を成長させるための種結晶22を固定し、下部に単結晶を成長させるための原料24を充填するためのものである。坩堝20は、本体20aと、本体20a上部の開口部を覆うための蓋20bとを備えている。蓋20bの裏面には、種結晶台座20cを介して、種結晶22が固定されている。
坩堝20の材料は、特に限定されるものではないが、通常、黒鉛が用いられる。坩堝20の内径は、種結晶22及びその成長面上に成長する単結晶の外径より大きくなっている。また、坩堝20は、原料24の保持を主たる目的とするものであり、その上部は、成長途中の単結晶の外径を規制する機能はない。
【0017】
[2.1.2. 第1加熱部]
第1加熱部30は、主として原料24を加熱するためのものである。第1加熱部30は、原料24、これを保持する坩堝20、並びに、種結晶22及びその成長面上に成長する単結晶を所定の温度に加熱することが可能なものであれば良い。
例えば、第1加熱部30として、誘導コイルを用い、誘導コイルで坩堝20を発熱させることもできる。あるいは、第1加熱部30として、直接通電又は誘導加熱による黒鉛製ヒータを用い、黒鉛製ヒータからの輻射熱で坩堝20を加熱することもできる。これらの中でも、黒鉛製ヒータは、坩堝20の温度分布をより一定に維持しやすいので、第1加熱部30として好適である。
図1に示す例において、第1加熱部30には、黒鉛製ヒータが用いられている。
【0018】
[2.1.3. 断熱部材]
断熱部材40は、第1加熱部30の上方であって、坩堝20の周囲に配置されている。断熱部材40の中央には、坩堝20を挿入可能な孔が設けられている。断熱部材40は、孔の内部の温度分布を均一化させる機能、すなわち、孔の内部の等温面を平坦化させる機能を持つ。
有孔の断熱部材40は、一体物(円筒)が好ましいが、所定の個数の扇形などに分割されていても良い。また、有孔の断熱部材40は、第1加熱部30に対する距離が固定されている固定部と、第1加熱部30に対する距離を調節可能な可動部とを備えたものでも良い。
図1に示す例において、断熱部材40は、円筒形を呈している。また、断熱部材40は、固定部を備えておらず、その全体が第1加熱部30に対して相対移動可能になっている。
【0019】
断熱部材40の材料は、特に限定されるものではなく、上述した機能を奏する材料であれば良い。断熱部材40の材料としては、繊維状の炭素からなるもの(カーボンフェルト)などがある。カーボンフェルトは、断熱効果が高いので、断熱部材40として特に好適である。
【0020】
断熱部材40は、単結晶の成長高さに応じて、坩堝20の外壁面に沿って上下に移動させる必要がある。従って、断熱部材40の孔の内径は、坩堝20の外径以上である必要がある。一方、断熱部材40の孔の内径が大きくなりすぎると、断熱効果が小さくなる。従って、断熱部材40の孔の内径は、断熱効果を奏する大きさ以下である必要がある。
単結晶の成長過程を通じて成長面近傍の等温面を平坦化させるためには、断熱部材40の孔の内径に関し、次の(a)式の関係が成り立つことが好ましい。
d≦D≦2d ・・・(a)
但し、Dは断熱部材40の孔の内径、dは坩堝20の外径。
【0021】
断熱部材40は、孔の中央部付近の等温面を平坦化させる機能を持つが、断熱部材40の近傍においては若干の温度勾配を持つ。従って、断熱部材40が成長途中の単結晶に対して過度に接近すると、単結晶の外周付近は、湾曲した等温面に曝される。従って、断熱部材40は、成長途中の単結晶からある程度離れているのが好ましい。
単結晶の成長過程を通じて成長面近傍の等温面を平坦化させるためには、断熱部材40の孔の内径に関し、次の(b)式が成り立つことが好ましい。
1.5L≦D ・・・(b)
但し、Dは断熱部材40の孔の内径、Lは単結晶の外径。
【0022】
断熱部材40の高さ(移動方向の長さ)は、断熱効果に影響を与える。断熱部材40の高さが低すぎると、十分な断熱効果が得られず、また、等温面を平坦化するのが難しくなる。従って、断熱部材40の高さは、10mm以上が好ましい。断熱部材40の高さは、さらに好ましくは、20mm以上である。
一方、断熱部材40の高さが高すぎると、断熱部材40の位置で過度の温度低下が生じ、原料から種結晶に向かう正常な温度勾配を形成するのが難しくなる。従って、断熱部材40の高さは、100mm以下が好ましい。断熱部材40の高さは、さらに好ましくは、50mm以下である。
【0023】
[2.1.4. 第2加熱部]
第2加熱部50は、断熱部材40の上に配置されている。すなわち、断熱部材40は、第1加熱部30と第2加熱部50の間に配置されている。また、第1加熱部30と第2加熱部50は、断熱部材40の移動距離以上の間隔を隔てて配置されている。第2加熱部50は、必ずしも必要ではないが、第2加熱部50を設けると、種結晶22近傍の温度分布をより制御しやすくなる。
【0024】
例えば、第1加熱部30のみを用いて加熱を行う場合、原料24の温度と種結晶22の温度は、坩堝20の第1加熱部30に対する位置(すなわち、温度勾配)と、第1加熱部30の出力(すなわち、全体的な温度)のみで制御する必要がある。そのため、昇華ガスの流れる方向、昇華量、成長速度等を独立に制御するのが難しい。
これに対し、第1加熱部30と第2加熱部50を用いて加熱を行うと、原料24の温度と種結晶22の温度を独立に制御することができる。そのため、昇華ガスの流れる方向、昇華量、成長速度等を独立に制御するのが容易化する。
第2加熱部50のその他の点については、第1加熱部30と同様であるので、説明を省略する。
【0025】
[2.1.5. 距離調節手段]
距離調節手段(図示せず)は、断熱部材40の少なくとも一部と第1加熱部30(第2加熱部50を備えている場合には、第1加熱部30及び第2加熱部50)との距離を調節するための手段である。「断熱部材40の少なくとも一部」とは、断熱部材40が固定部と可動部からなる場合には、可動部の位置のみを調節することを意味する。
図1に示す例において、断熱部材40は可動部のみからなるので、距離調節手段は、断熱部材40の全体の位置を調節するようになっている。
【0026】
距離調節手段は、
(a)断熱部材40を上下方向に移動可能なもの、
(b)第1加熱部30(及び、第2加熱部50)、並びに、坩堝20を同時に上下方向に移動可能なもの、又は、
(c)断熱部材40と、第1加熱部30(及び、第2加熱部50)並びに坩堝20の双方を上下方向に移動可能なもの
のいずれであっても良い。
特に、距離調節手段は、第1加熱部30(第2加熱部50を備えている場合には、第1加熱部30及び第2加熱部50)並びに坩堝20の位置が固定された状態で、断熱部材40の位置を上下動させるものが好ましい。断熱部材40を上下動させる方が、装置構造が簡単となる。
【0027】
[2.2. 単結晶の製造方法(1)]
本発明の第1の実施の形態に係る単結晶の製造方法は、本発明の第1の実施の形態に係る単結晶製造装置10aを用いて、成長中に断熱部材40の少なくとも一部と第1加熱部30(及び、第2加熱部50)との距離を調節しながら、種結晶22の成長面上に単結晶を成長させることを特徴とする。
【0028】
まず、
図1(a)に示すように、本体20aに原料24を充填する。次いで、種結晶台座20cに種結晶22を固定し、蓋20bを本体20aの上に載せる。この状態で坩堝20を第1加熱部30及び第2加熱部50のほぼ中心に挿入する。坩堝20は、第1加熱部30により原料24を適切な温度に加熱することが可能な位置(すなわち、適量の昇華ガスを発生させることが可能な位置)に設置する。また、断熱部材40は、種結晶22の成長面近傍に平坦な等温面を形成することが可能な位置に設置する。
【0029】
この状態で第1加熱部30及び第2加熱部50を適切な温度に加熱すると、原料24から昇華ガスが発生すると同時に、原料24から種結晶22に向かう温度勾配が形成される。その結果、種結晶22表面近傍の平坦な等温面に倣うように単結晶22’が成長する。
また、
図1(b)に示すように、単結晶22’の成長高さの増大に伴い、断熱部材40のみを第1加熱部30に近づけると、原料24の最高温度部の位置を移動させることなく、単結晶22’の成長面近傍の等温面を平坦に維持することができる。
【0030】
[2.3. 作用(1)]
図2に、断熱部材と第1加熱部との距離を調節するための距離調節手段を備えていない単結晶製造装置の概略図を示す。
図2において、単結晶製造装置12は、坩堝20と、第1加熱部30と、断熱部材40と、第2加熱部50とを備えている。また、単結晶製造装置12は、断熱部材40と第1加熱部30との距離を調節する距離調節手段に代えて、坩堝20と第1加熱部30の相対的位置関係を調節するための手段を備えている。この点が第1の実施の形態とは異なる。
【0031】
図2に示す単結晶製造装置12を用いて単結晶を製造した場合、成長初期においては、原料24を適切な温度に加熱することができ、かつ、種結晶22の成長面近傍の等温面を平坦に維持することができる。
しかしながら、単結晶22’の成長の進行とともに坩堝20の位置を調節しようとすると、単結晶22’の成長面近傍の温度分布の平坦性を維持することはできるが、原料24の最高温度部の位置も移動してしまう。そのため、成長速度が大きく変動し、結晶品質が低下することがある。
【0032】
これに対し、
図1(b)に示すように、単結晶22’の成長高さの増大とともに断熱部材40のみを下降させると、単結晶22’の成長面近傍の温度分布の平坦性を維持することができ、かつ、原料24の最高温度部の位置も移動しない。また、第1加熱部30及び第2加熱部50の出力を調節することにより、単結晶22’の成長面の温度や原料24の温度を適切な温度に、かつ、独立に維持することができる。そのため、成長速度の変動が小さくなり、結晶品質の低下を抑制することができる。
【0033】
[3. 単結晶製造装置及び単結晶の製造方法(2)]
[3.1. 単結晶製造装置(2)]
図3に、本発明の第2の実施の形態に係る単結晶製造装置(以下、単に「装置」ともいう)を示す。
図3において、単結晶製造装置10bは、坩堝20と、第1加熱部30と、断熱部材40と、第2加熱部50と、距離調節手段60とを備えている。なお、
図3(a)の上図は、断熱部材40の平面図を表す。
【0034】
[3.1.1. 坩堝、第1加熱部、断熱部材及び第2加熱部]
坩堝20、第1加熱部30、断熱部材40及び第2加熱部50の詳細は、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0035】
[3.1.2. 距離調節手段]
本実施の形態において、距離調節手段60は、坩堝20を保持する内側シャフト62と、断熱部材40を保持する外側シャフト64とを有し、かつ、内側シャフト62の外周面に沿って外側シャフト64を相対移動させることが可能な二重シャフト構造を備えている。
図3に示す例において、内側シャフト62は固定され、外側シャフト64は、内側シャフト62に沿って上下方向に移動可能になっている。
距離調節手段60のその他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0036】
[3.2. 単結晶の製造方法(2)]
本発明の第2の実施の形態に係る単結晶の製造方法は、本発明の第2の実施の形態に係る単結晶製造装置10bを用いて、成長中に断熱部材40の少なくとも一部と第1加熱部30(及び、第2加熱部50)との距離を調節しながら、種結晶22の成長面上に単結晶を成長させることを特徴とする。
【0037】
まず、
図3(a)に示すように、坩堝20を第1加熱部30及び第2加熱部50のほぼ中心に挿入する。坩堝20は、第1加熱部30により原料24を適切な温度に加熱することが可能な位置(すなわち、適量の昇華ガスを発生させることが可能な位置)に設置する。また、断熱部材40は、種結晶22の成長面近傍に平坦な等温面を形成することが可能な位置に設置する。
【0038】
この状態で第1加熱部30及び第2加熱部50を適切な温度に加熱すると、原料24から昇華ガスが発生すると同時に、原料24から種結晶22に向かう温度勾配が形成される。その結果、種結晶22表面近傍の平坦な等温面に倣うように単結晶22’が成長する。
また、
図3(b)に示すように、単結晶22’の成長高さの増大に伴い、断熱部材40のみを第1加熱部30に近づけると、原料24の最高温度部の位置を移動させることなく、単結晶22’の成長面近傍の等温面を平坦に維持することができる。
【0039】
[3.3. 作用(2)]
図3(b)に示すように、単結晶22’の成長高さの増大とともに断熱部材40のみを下降させると、単結晶22’の成長面近傍の温度分布の平坦性を維持することができ、かつ、原料24の最高温度部の位置も移動しない。また、第1加熱部30及び第2加熱部50の出力を調節することにより、単結晶22’の成長面の温度や原料24の温度を適切な温度に、かつ、独立に維持することができる。そのため、成長速度の変動が小さくなり、結晶品質の低下を抑制することができる。
さらに、距離調節手段60として二重シャフト構造を用いると、坩堝20の炉内へのセッティングがしやすくなり、装置構造も簡略となる。
【0040】
[4. 単結晶製造装置及び単結晶の製造方法(3)]
[4.1. 単結晶製造装置(3)]
図4に、本発明の第3の実施の形態に係る単結晶製造装置(以下、単に「装置」ともいう)を示す。
図4において、単結晶製造装置10cは、坩堝20と、第1加熱部30と、断熱部材40’と、第2加熱部50と、距離調節手段60とを備えている。なお、
図4(a)の上図は、断熱部材40’の平面図である。
【0041】
[4.1.1. 坩堝及び第1加熱部]
坩堝20及び第1加熱部30の詳細は、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0042】
[4.1.2. 断熱部材]
本実施の形態において、断熱部材40’は、第1加熱部30(及び、第2加熱部50)に対する距離が固定された固定部40a’と、第1加熱部30(及び、第2加熱部50)に対する位置を調節可能な可動部40b’とを備えている。この点が第1の実施の形態と異なる。
【0043】
可動部40b’は、固定部40a’の内側に設けられている。可動部40b’の高さ(移動方向の長さ)は、固定部40a’の高さより低くなっている。可動部40b’の高さは、単結晶の成長過程を通じて、成長面近傍の等温面を平坦に維持できる高さであればよい。可動部40b’の高さは、具体的には、10mm以上100mm以下が好ましい。可動部40b’の高さは、さらに好ましくは、20mm以上50mm以下である。
断熱部材40’のその他の点については、第1の実施の形態の断熱部材40と同様であるので説明を省略する。
【0044】
[4.1.3. 第2加熱部]
第2加熱部50の詳細は、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0045】
[4.1.4. 距離調節手段]
本実施の形態において、距離調節手段60は、坩堝20を保持する内側シャフト62と、断熱部材40’の可動部40b’を保持する外側シャフト64とを備え、内側シャフト62の外周面に沿って外側シャフト64を相対移動させることが可能な二重シャフト構造を備えている。
図4に示す例において、内側シャフト62は固定され、外側シャフト64は、内側シャフト62に沿って上下方向に移動可能になっている。また、外側シャフト64の先端には、可動部40b’が固定されている。
距離調節手段60のその他の点については、第1及び第2の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0046】
[4.2. 単結晶の製造方法(3)]
本発明の第3の実施の形態に係る単結晶の製造方法は、本発明の第3の実施の形態に係る単結晶製造装置10cを用いて、成長中に断熱部材40’の少なくとも一部と第1加熱部30(及び、第2加熱部50)との距離を調節しながら、種結晶22の成長面上に単結晶を成長させることを特徴とする。
【0047】
まず、
図4(a)に示すように、坩堝20を第1加熱部30及び第2加熱部50のほぼ中心に挿入する。坩堝20は、第1加熱部30により原料24を適切な温度に加熱することが可能な位置(すなわち、適量の昇華ガスを発生させることが可能な位置)に設置する。また、断熱部材40’は、種結晶22の成長面近傍に平坦な等温面を形成することが可能な位置に設置する。
【0048】
この状態で第1加熱部30及び第2加熱部50を適切な温度に加熱すると、原料24から昇華ガスが発生すると同時に、原料24から種結晶22に向かう温度勾配が形成される。その結果、種結晶22表面近傍の平坦な等温面に倣うように単結晶22’が成長する。
また、
図4(b)に示すように、単結晶22’の成長高さの増大に伴い、可動部40b’のみを第1加熱部30に近づけると、原料24の最高温度部を位置を移動させることなく、単結晶22’の成長面近傍の等温面を平坦に維持することができる。
【0049】
[4.3. 作用(3)]
図4(b)に示すように、単結晶22’の成長高さの増大とともに可動部40b’のみを下降させると、単結晶22’の成長面近傍の温度分布の平坦性を維持することができ、かつ、原料24の最高温度部の位置も移動しない。また、第1加熱部30及び第2加熱部50の出力を調節することにより、単結晶22’の成長面の温度や原料24の温度を適切な温度に、かつ、独立に維持することができる。そのため、成長速度の変動が小さくなり、結晶品質の低下を抑制することができる。
さらに、距離調節手段60として二重シャフト構造を用いると、坩堝20の炉内へのセッティングがしやすくなり、装置構造も簡略となる。
【0050】
[5. 単結晶製造装置及び単結晶の製造方法(4)]
[5.1. 単結晶製造装置(4)]
図5に、本発明の第4の実施の形態に係る単結晶製造装置(以下、単に「装置」ともいう)を示す。
図5において、単結晶製造装置10dは、坩堝20と、第1加熱部30と、断熱部材40と、距離調節手段60とを備えている。なお、
図5(a)の上図は、断熱部材40の平面図を表す。
【0051】
単結晶製造装置10dは、第2加熱部を備えていない。この点が第2の実施の形態に係る単結晶製造装置10bとは異なる。
単結晶製造装置10dのその他の点は、第1〜第3の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0052】
[5.2. 単結晶の製造方法(4)]
本発明の第4の実施の形態に係る単結晶の製造方法は、本発明の第4の実施の形態に係る単結晶製造装置10dを用いて、成長中に断熱部材40の少なくとも一部と第1加熱部30との距離を調節しながら、種結晶22の成長面上に単結晶を成長させることを特徴とする。
【0053】
まず、
図5(a)に示すように、坩堝20を第1加熱部30のほぼ中心に挿入する。坩堝20は、第1加熱部30により原料24を適切な温度に加熱することが可能な位置(すなわち、適量の昇華ガスを発生させることが可能な位置)に設置する。また、断熱部材40は、種結晶22の成長面近傍に平坦な等温面を形成することが可能な位置に設置する。
【0054】
この状態で第1加熱部30を適切な温度に加熱すると、原料24から昇華ガスが発生すると同時に、原料24から種結晶22に向かう温度勾配が形成される。その結果、種結晶22表面近傍の平坦な等温面に倣うように単結晶22’が成長する。
また、
図5(b)に示すように、単結晶22’の成長高さの増大に伴い、断熱部材40のみを第1加熱部30に近づけると、原料24の最高温度部を位置を移動させることなく、単結晶22’の成長面近傍の等温面を平坦に維持することができる。
【0055】
[5.3. 作用(4)]
図5(b)に示すように、単結晶22’の成長高さの増大とともに断熱部材40のみを下降させると、単結晶22’の成長面近傍の温度分布の平坦性を維持することができ、かつ、原料24の最高温度部の位置も移動しない。また、第1加熱部30の出力を調節することにより、単結晶22’の成長面の温度や原料24の温度を適切な温度に維持することができる。そのため、成長速度の変動が小さくなり、結晶品質の低下を抑制することができる。
さらに、距離調節手段60として二重シャフト構造を用いると、坩堝20の炉内へのセッティングがしやすくなり、装置構造も簡略となる。
【0056】
[6. 単結晶製造装置及び単結晶の製造方法(5)]
[6.1. 単結晶製造装置(5)]
図6に、本発明の第5の実施の形態に係る単結晶製造装置(以下、単に「装置」ともいう)を示す。
図6において、単結晶製造装置10eは、坩堝20と、第1加熱部30’と、断熱部材40と、距離調節手段60とを備えている。なお、
図6(a)の上図は、断熱部材40の平面図を表す。
【0057】
単結晶製造装置10eは、第1加熱部30’として、黒鉛製ヒータに代えて、誘導コイルが用いられている。この点が第4の実施の形態に係る単結晶製造装置10dとは異なる。
単結晶製造装置10eのその他の点は、第1〜第4の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0058】
[6.2. 単結晶の製造方法(5)]
本発明の第5の実施の形態に係る単結晶の製造方法は、本発明の第5の実施の形態に係る単結晶製造装置10eを用いて、成長中に断熱部材40の少なくとも一部と第1加熱部30’との距離を調節しながら、種結晶22の成長面上に単結晶を成長させることを特徴とする。
【0059】
まず、
図6(a)に示すように、坩堝20を第1加熱部30’のほぼ中心に挿入する。坩堝20は、第1加熱部30’により原料24を適切な温度に加熱することが可能な位置(すなわち、適量の昇華ガスを発生させることが可能な位置)に設置する。また、断熱部材40は、種結晶22の成長面近傍に平坦な等温面を形成することが可能な位置に設置する。
【0060】
この状態で第1加熱部30’により坩堝20を発熱させると、原料24から昇華ガスが発生すると同時に、原料24から種結晶22に向かう温度勾配が形成される。その結果、種結晶22表面近傍の平坦な等温面に倣うように単結晶22’が成長する。
また、
図6(b)に示すように、単結晶22’の成長高さの増大に伴い、断熱部材40のみを第1加熱部30’に近づけると、原料24の最高温度部を位置を移動させることなく、単結晶22’の成長面近傍の等温面を平坦に維持することができる。
【0061】
[6.3. 作用(5)]
図6(b)に示すように、単結晶22’の成長高さの増大とともに断熱部材40のみを下降させると、単結晶22’の成長面近傍の温度分布の平坦性を維持することができ、かつ、原料24の最高温度部の位置も移動しない。また、第1加熱部30’の出力を調節することにより、単結晶22’の成長面の温度や原料24の温度を適切な温度に維持することができる。そのため、成長速度の変動が小さくなり、結晶品質の低下を抑制することができる。
さらに、距離調節手段60として二重シャフト構造を用いると、坩堝20の炉内へのセッティングがしやすくなり、装置構造も簡略となる。