特許第6033657号(P6033657)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6033657-水圧計用容器およびそれを用いた水圧計 図000002
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  • 特許6033657-水圧計用容器およびそれを用いた水圧計 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6033657
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】水圧計用容器およびそれを用いた水圧計
(51)【国際特許分類】
   G01F 23/14 20060101AFI20161121BHJP
   G01L 19/00 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   G01F23/14
   G01L19/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-263187(P2012-263187)
(22)【出願日】2012年11月30日
(65)【公開番号】特開2014-109465(P2014-109465A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】512311155
【氏名又は名称】株式会社E−SYSTEM
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
(72)【発明者】
【氏名】藤本 尚伸
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−89313(JP,A)
【文献】 特開2007−33075(JP,A)
【文献】 特開平11−241939(JP,A)
【文献】 実開平2−48823(JP,U)
【文献】 実開昭60−3429(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0011930(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F23/14−23/296
G01L 7/00−23/32
G01L27/00−27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水圧を測定する水圧検知部を内蔵する水圧計用容器であって、
前記水圧検知部へ水圧を伝達させるための導水孔の開口部を、胴部の周囲面より突出した位置とする忌避部が形成され
前記忌避部は、前記胴部に形成された環状凸部であることを特徴とする水圧計用容器。
【請求項2】
前記忌避部は、前記周囲面から前記導水孔へ向かって細くなる形状に形成されている請求項1記載の水圧計用容器。
【請求項3】
前記胴部は、円柱状に形成されている請求項記載の水圧計用容器。
【請求項4】
水圧を測定する水圧検知部と、
前記水圧検知部を内蔵する水圧計用容器とを備えた水圧計において、
前記水圧検知部へ水圧を伝達させるための導水孔を、胴部の周囲面より突出した位置とする忌避部が形成され
前記忌避部は、前記胴部に形成された環状凸部であることを特徴とする水圧計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水内に浸漬して水圧を測定する水圧計ための水圧計用容器と、それを用いた水圧計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水圧計は、海に浸漬させて潮位を測定したり、河に設置して水位を測定して決壊の警報を発するために使用されたり、豪雨時に雨が道路のアンダーパスに溜まり車両が立ち往生してしまうのを防止するために使用されたり、また、ボーリング孔内の地下水の水位を測定する間隙水圧計とて使用されたりしている。
水圧を測定する構成としては、半導体を使用した電気的なものであったり、光学的なものであったりするなど、様々である。
例えば、電気式としては、半導体式水位計が特許文献1に記載されている。また、光学式水圧計として、特許文献2に記載されたものが知られている。これらの水圧計は、特許文献1に記載の投込式水位計では通水口と称され、特許文献2に記載の光学式水位計では水流入穴と称される、導水孔が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−241939号公報
【特許文献2】特開2007−33075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1や特許文献2に記載されているような従来の水圧計を海洋で放置して使用する場合、富士壺などの付着生物が、筐体全体に定着してしまい、その際に導水孔を覆ってしまい、塞がれてしまうことがある。そうなると、海水が導水孔に浸入しなくなるため、正確な水圧が計測できない。従って、誤った水位を通知してしまうことになる。
【0005】
そこで本発明は、付着生物の定着を忌避させることで、正確な水圧測定が可能な水圧計用容器および水位計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、水圧を測定する水圧検知部を内蔵する水圧計用容器であって、前記水圧検知部へ水圧を伝達させるための導水孔を周囲面より突出した位置とする忌避部が形成されていることを特徴とする水圧計用容器である。
また、本発明は、水圧を測定する水圧検知部と、前記水圧検知部を内蔵する水圧計用容器とを備えた水圧計において、前記水圧検知部へ水圧を伝達させるための導水孔の開口部を周囲面より突出した位置とする忌避部が形成されていることを特徴とする水圧計である。
【0007】
本発明によれば、忌避部により導水孔の開口部を周囲面より突出した位置とすることにより、付着生物が定着する場所としては忌避部が不安定な状態であるため、付着生物が周囲面に定着しても、付着生物が忌避部に付着することを抑止することができる。従って、水圧を測定するための導水孔への流入を確保することができる。
【0008】
前記忌避部が、前記周囲面から前記導水孔へ向かって細くなる形状に形成されていると、導水孔の位置を更に付着生物に取って不安定な場所とすることができると共に、忌避部の強度を向上させることができる。
【0009】
前記導水孔が胴部に形成され、前記忌避部を前記胴部に形成された環状凸部とするのが望ましい。忌避部が環状に形成されていると、忌避部の強度を更に向上させることができる。
【0010】
前記胴部が円柱状に形成されていると、胴部を切削して形成する際に、周囲面より切削深さを浅くするだけで、容易に円環状凸部を形成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、付着生物が定着する場所としては忌避部を不安定な場所とすることができるので、付着生物が忌避部に付着することを抑止することができる。従って、水圧を測定するための導水孔への流入を確保することができるので、正確な水圧測定が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係る水圧計の正面図である。
図2図1に示す水圧計のA−A線断面図である。
図3図1に示す水圧計の一部を切り欠いて水圧検知部が見える状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態に係る水圧計を図面に基づいて説明する。なお、図2においては、水圧検知部の詳細を省略している。
図1から図3に示す水圧計1は、水圧検知部2が水圧計用容器3に内蔵されたものである。水圧計1は、上部にケーブル4が配線されており、地上の計測器(図示せず)にて水圧検知部2からの信号に基づいて水位を計測する。
【0014】
図3に示すように、水圧検知部2は、耐腐食性の高いステンレス製の本体21に、圧力を検知する半導体圧力素子と、半導体圧力素子からの信号を増幅する増幅器とが内蔵されている。本体21の底部には水圧を検知するために軟質のカバー22が設けられている。
【0015】
図1に示すように、水圧計用容器3は、先端部が縮経した略円筒状に形成された容器本体31と、ケーブル4を挿通させて容器本体31の開口部を閉塞する蓋部32とから構成されている。容器本体31は、エンジニアプラスチックと称される高強度で、耐候性、耐腐食性の高い樹脂により形成されている。例えば、ジュラコン(登録商標)などが使用できる。
【0016】
容器本体31の胴部33には、水圧検知部2を配置する内部の収容室34に連通して、水圧検知部2へ水圧を伝達させるための導水孔35が形成されている。
図1および図2に示すように、導水孔35は、同じ高さ位置の90°ごと、合計4ヵ所に形成されている。容器本体31の胴部33に形成された4ヵ所の導水孔35の開口部は、忌避部36により周囲面37より突出させた位置としている。
【0017】
忌避部36は、容器本体31の胴部33を一周する円環状凸部により形成されている。導水孔35は、この円環状凸部の頂部の平面に位置している。忌避部36は、周囲面37から導水孔35へ向かって細くなる形状に形成されている。
【0018】
容器本体31の収容室34は、図2に示すように、水平断面が円形状に形成されている。容器本体31の内周面と水圧検知部2との間(水圧検知部2を内蔵する収容室34の隙間)には、液面が導水孔35より下となるように、圧力伝達媒体が封入されている。本実施の形態では、圧力伝達媒体としてシリコン系のオイルが封入されている。導水孔35には、綿状体5が詰められている。この綿状体5はフィルタとして機能するものであり、綿状体5が導水孔35に詰められていても、導水孔35が水圧検知部2へ水圧を伝達させることの支障にはならない。
【0019】
容器本体31は、円柱状部材の軸線を回転中心として、円柱状部材を回転させながら、収容室34を切削すると共に、外周面を切削して製造することができる。外周面を切削するときに、例えば、容器本体31の底部38から切削し始めるときには、底部38から忌避部36まで切削深さを同じとすることで均一な外径とする。次に、忌避部36(導水孔35)の位置に切削位置が到来すると、切削深さを浅くすることで、円環状凸部に形成された忌避部36を残す。そして、再び、切削深さを戻した後、切削位置が先端部に到来すると、徐々に切削深さを深くすることで、先端部を縮経とする。導水孔35は、切削が終わった忌避部36の頂部に、軸線に向かって穿孔することで、形成することができる。このようにして、容器本体31を円柱状部材から切り出すことができる。忌避部36が円環状凸部に形成されているため、円柱状部材を回転させながら切削位置を浅くしたり深くしたりして変更するだけで忌避部36を容易に形成することができる。
【0020】
このように形成された水圧計1が海洋に投入されると、水圧に基づいた信号を、ケーブル4を介して出力するが、長期にわたって設置されると、富士壺や貝類が水圧計用容器3に付着する。しかし、忌避部36が周囲面37より突出しているため、付着生物が定着する場所としては、忌避部36は不安定な状態である。従って、付着生物が周囲面37に定着しても、忌避部36に付着することを抑止することができるので、忌避部36の頂部に位置する導水孔35への流入を確保することができる。よって、本実施の形態に係る水圧計用容器3は、付着生物の定着を忌避させることができるので、水圧計1は正確な水圧測定が可能である。
【0021】
この忌避部36は、周囲面37から導水孔35へ向かって細くなる形状に形成されているので、導水孔35が位置する忌避部36の頂部を狭くすることができる。従って、忌避部36に位置する導水孔35を、更に付着生物に取って不安定な場所とすることができる。また、忌避部36の底部が太くなっていることで、忌避部36の強度を向上させることができる。
【0022】
更に、忌避部36が容器本体31の胴部33の全周にわたって突出した円環状凸部に形成されているため、導水孔35の周りのみを突出させた場合と比較して、更に忌避部36の強度を向上させることができる。従って、漂流物が水圧計1に衝突したり、水圧計1が流され固定物に衝突したりしても、忌避部36の破損を抑えることができる。
【0023】
なお、本実施の形態では、忌避部36が円環状凸部に形成されているが、忌避部の強度が十分に確保できるのであれば、導水孔35の周りのみを突出させてもよい。この場合、忌避部36を円環状凸部とするより忌避部の頂部の平面をより狭く形成することができるので、付着生物の定着をより忌避させることが期待できる。
また、導水孔35が4ヵ所に形成されているが、水圧検知部2での測定に問題がなければ、導水孔35は1ヵ所〜3ヵ所でもよいし、5ヵ所以上でもよい。
更に、本実施の形態では、導水孔35と共に忌避部36が容器本体31の胴部33に形成されているが、導水孔を容器本体の底部や上部に形成してあれば、忌避部も導水孔の位置に合わせて形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、水圧を測定するものとして好適であり、特に、水位を測定する投げ込み式の水位計に最適である。
【符号の説明】
【0025】
1 水圧計
2 水圧検知部
21 本体
22 カバー
3 水圧計用容器
31 容器本体
32 蓋部
33 胴部
34 収容室
35 導水孔
36 忌避部
37 周囲面
38 底部
4 ケーブル
5 綿状体
図1
図2
図3