(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の車両用シートロック装置では、シートバックが起立位置に保持された状態(ロック時)において、車体の振動等によって上下方向の振動が生じた際にフック部材が上方へ回動して不用意にストライカから離脱するするおそれがある。また、それを抑えるために抑止部材を別に設けると、重量やコストの増加を招くおそれがあり好ましくない。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、シートバックが起立位置に保持された状態(ロック時)において、別の部材を設けることなくフック部材の上方への回動を抑止し、ロック状態を確実に維持することができる車両用シートロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、車両用シートロック装置における既存の部材を利用してフック部材の移動を効果的に抑止する工夫を設けたことを特徴とする。
【0010】
具体的には、第1の発明は、車体に起倒可能に支持されたシートバックを、第1起立位置及び該第1起立位置よりも傾倒側の第2起立位置に保持可能な車両用シートロック装置であって、車体側に固定され、第1係合軸と、該第1係合軸よりも傾倒側に位置する第2係合軸とが上記シートバックの起倒方向に沿って並設されたストライカと、上記シートバック側に取り付けられ、上記ストライカが進入して係合するロックアッセンブリとを備え、上記ロックアッセンブリは、上記シートバックに固定されたベースプレートと、基部が上記ベースプレートに水平方向の軸心をもって回動可能に支持されたフック部材とを備えている。上記フック部材には、上記シートバックを上記第1起立位置に保持する際に上記ストライカの第1係合軸が係合する一方、上記第2起立位置に保持する際に上記第2係合軸が係合する第1係合溝と、該第1係合溝よりもストライカ進入方向側に位置し、かつ上記シートバックを第2起立位置に保持する際に上記第1係合軸が遊嵌する第2係合溝とが、上記ストライカの進入方向に沿って並設されている。上記ロックアッセンブリは、基部が上記ベースプレートに水平方向の軸心をもって回動可能に支持されたアシスト部材と、基部が上記ベースプレートに水平方向の軸心をもって回動可能に支持され、外部からの操作により回動して上記フック部材を、上記第1係合溝とストライカの第1又は第2係合軸との係合が解除されるロック解除方向へ回動させるレバー部材とを備えている。上記アシスト部材には、上記ストライカの上記第1係合軸に当接可能な当接部と、上記ストライカが上記ロックアッセンブリに進入していない状態において上記フック部材と当接し、上記第1係合溝がストライカの第1又は第2係合軸と係合するロック方向へ上記フック部材が回動するのを規制する規制部とが形成され、上記アシスト部材は、上記当接部が上記ストライカの反進入方向へ向かうように付勢されている。そして、上記レバー部材には、上記フック部材の第1係合溝にストライカの第1又は第2係合軸が係合しているときに、該フック部材が上記ロック解除方向に回動するのを抑止する抑止部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
第1の発明は、さらに上記フック部材を上記ロック方向に回動付勢する第1バネ部材と、上記レバー部材を、上記抑止部が上記ストライカの反進入方向へ向かうように回動付勢する第2バネ部材とが設けられ、上記第1バネ部材の回動付勢力は上記第2バネ部材の回動付勢力よりも弱くなっていることを特徴とする。
【0012】
第
2の発明は、第
1の発明において、上記フック部材は、上記ベースプレート側に突出するように設けられた軸部を備え、上記レバー部材の上記抑止部は、上記フック部材の第1係合溝にストライカの第1又は第2係合軸が係合しているときに、上記フック部材の上記軸部に当接して該フック部材のロック解除方向への回動を抑止するように構成されていることを特徴とする。
【0013】
第
3の発明は、第
2の発明において、上記ロックアッセンブリは、上記フック部材と上記ベースプレートとの間に、基部が該フック部材と同軸上にかつ回動可能に支持された補助フック部材を備え、上記補助フック部材は、上記ベースプレート側に突出するように設けられたピン部と、上記フック部材の上記軸部が移動可能に収容される長孔とを備え、上記フック部材の第1係合溝にストライカの第1又は第2係合軸が係合している状態を解除する際は、上記レバー部材を上記抑止部が上記ストライカの進入方向へ向かうように回動させて該抑止部を上記補助フック部材の上記ピン部に係合させることによって、該補助フック部材を上記ストライカから離間する方向へ回動させるとともに、該補助フック部材の回動により上記補助フック部材の上記長孔の端部を上記フック部材の上記軸部に当接させて、該フック部材をロック解除方向へ回動させるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明では、ロックアッセンブリは、ベース部材とフック部材とアシスト部材とレバー部材とを備えている。そして、外部からの操作によりレバー部材を回動させて、フック部材をロック解除方向へ回動させる。また、レバー部材には、フック部材の第1係合溝にストライカの第1又は第2係合軸が係合しているとき(ロック時)に、フック部材がロック解除方向に回動するのを抑止する抑止部が形成されている。すなわち、レバー部材は、ロック解除時にフック部材をロック解除方向へ回動させる本来の機能だけでなく、ロック時にフック部材がロック解除方向へ回動するのを抑止する機能をも兼ね備えている。
【0015】
そのため、部品点数を増やすことなくフック部材がロック解除方向へ回動することを抑止することができるので、重量やコストの増加を招くことなくロック状態を確実に維持することができる。
【0016】
第
1の発明では
さらに、フック部材をロック方向に回動付勢する第1バネ部材と、レバー部材を、その抑止部がストライカの反進入方向へ向かうように回動付勢する第2バネ部材とが設けられて、第1バネ部材の回動付勢力は第2バネ部材の回動付勢力よりも弱くなっている。すなわち、ロック解除時に、外部からの操作により最初に回動するレバー部材に設けられた第2バネ部材の回動付勢力よりも、レバー部材の回動により回動するフック部材に設けられた第1バネ部材の回動付勢力が弱くなっている。
【0017】
そのため、レバー部材の回動という動作がフック部材に伝達されてフック部材が回動する際に、回動付勢力の強い第2バネ部材から弱い付勢力の第1バネ部材の各付勢力に抗してレバー部材及びフック部材が回動することとなり、逆の場合に比べて、操作荷重が途中で急に上昇することを抑制できるので、ロック解除時の操作性を向上させることができる。
【0018】
第
2の発明では、フック部材の第1係合溝にストライカの第1係合軸又は第2係合軸が係合しているときに、フック部材に設けられた軸部にレバー部材の抑止部が当接してフック部材のロック解除方向への回動を抑止するようになっているため、フック部材のロック解除方向への回動を確実に抑止することができる。
【0019】
第
3の発明では、ロック解除時に、外部からの操作によってレバー部材を回動させて、その回動動作が補助フック部材に伝達されて補助フック部材が回動し、補助フック部材の回動動作がフック部材に伝達されてフック部材が回動するように構成されている。このとき、フック部材よりも補助フック部材の方が軽量になるように形成されていれば、レバー部材の回動動作は、まずフック部材よりも軽量の補助フック部材に伝達される。そのため、ロック解除時におけるレバー部材からフック部材までの回動に要する荷重の切替わりがよりスムーズになるので、操作性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0022】
なお、以下の説明において、
図1における左斜め下方を「車両前方」、右斜め上方を「車両後方」とし、左斜め上方を「車両右側方」、右斜め下方を「車両左側方」とする。
図3における左側を「ストライカ進入方向」(以下、単に「進入方向」という)、右側を「ストライカ反進入方向」(以下、単に「反進入方向」という)とする。
図2における左斜め上方を「進入方向」、右斜め下方を「反進入方向」とし、左斜め下方を「手前側」、右斜め上方を「裏側」とする。
図1と
図2ないし
図6との関係においては、
図1の「車両前方」が
図2ないし
図6の「進入方向」、
図1の「車両後方」が
図2ないし
図6の「反進入方向」となり、
図1の「車両左側方」が
図2の「手前側」、
図1の「車両右側方」が
図2の「裏側」となる。また、「アンロック状態」とは、シートバック3が起立しておらずロックされていない状態をいい、「ロック解除状態」とは、シートバック3が起立位置にありロックが解除された状態をいう。「ロック状態」とは、シートバック3が起立位置にありロックされた状態をいう。
【0023】
図1は、本発明を適用した車両用リヤシート1を示す。該車両用リヤシート1は、車体フロアに据え付けられるシートクッション2と、シートクッション2の後側に位置する車体に、左右方向を向くヒンジ軸(図示省略)により前後方向へ起倒可能に支持されるシートバック3とを備える。
【0024】
図1に示すように、上記シートバック3は、車両左側方の側端面であって、肩部よりも下方位置に埋設配置されるロックアッセンブリRと、車体パネル(図示省略)側に固着される金属製のストライカ4とが係合することによって、
図1に実線で示す第1起立位置と、第1起立位置よりも後傾した二点鎖線で示す第2起立位置とに保持可能であるとともに、シートバック3の肩部に設けられた操作手段20の操作に基づいて、前方へ倒伏する一点鎖線で示す倒伏位置に前回りに移動することができる。
【0025】
上記ストライカ4は、シートバック3の側端面に対向する車体パネル(図示省略)側に固定されかつ車体側壁(図示省略)から車両右側方に突出した平面視略U字状のものであり、車両前方に位置する水平方向に延びる第1係合軸41と、この第1係合軸41よりも傾倒側に位置する水平方向に延びる車両後方の第2係合軸42とを有している。
【0026】
図3ないし
図6に示すように、操作手段20は、シートバック3の肩部に配置され、上下方向に角筒状をなす枠部21と、枠部21内に上下方向へ摺動可能に収容される操作ノブ22とを備えている。後述するように、操作手段20とロックアッセンブリRは、操作ロッド30によって連結されている。
【0027】
図2に示すように、ロックアッセンブリRは、シートバック3にボルト等(図示省略)により固定される金属製で平板状のベースプレート5と、ベースプレート5の手前側に対向するように固定され、金属製で断面略コの字状のカバープレート6とを備えている。ベースプレート5及びカバープレート6の上下方向略中央部には、シートバック3を起立させた際にストライカ4の第1及び第2係合軸41,42が車両後方から進入できるように反進入方向側が開口した進入溝51が切欠状に形成されている。また、ベースプレート5とカバープレート6との間には、収容空間Sが形成されている。
【0028】
ベースプレート5とカバープレート6との間の収容空間Sには、ストライカ4の係合軸と係合するフック部材7と、フック部材7を保持するとともにシートバック3の倒伏位置への移動をアシストするアシスト部材9と、シートバック3をロック解除状態にする際に
フック部材7の回動を補助する補助フック部材8と、操作手段20(
図3参照)の操作に基づく作動を補助フック部材8に伝えるレバー部材10とが配置されている。
【0029】
上記ベースプレート5のカバープレート6との対向面には、
図2における進入溝51の奥側に位置する第1枢軸52と、第1枢軸52よりも上方位置に位置する第2枢軸53と、第1枢軸52よりも下方位置に位置する第3枢軸54とが突設され、これらの枢軸は収容空間Sを奥側から手前側に向かって水平方向に延びている。
【0030】
上記フック部材7は、金属製の板状部材からなり、
図2における左側下方にフック基部71を有する。フック基部71は、上記ベースプレート5の第1枢軸52に回動可能に支持され、フック部材7は第1枢軸52に巻装した第1バネ11(第1バネ部材)によってロック方向である
図2のY方向(手前側から見て時計回り方向)へ回動付勢されている。第1バネ11の付勢力は、後述する第4バネ14(第2バネ部材)の付勢力よりも小さくなるように設定されている。また、フック部材7の
図2における右(反進入方向)側には、ストライカ4の第1係合軸41及び第2係合軸42が選択的に係合可能な切欠状の第1係合溝72が開口を下方に向けて形成されている。第1係合溝72よりもフック基部71寄り側には、ストライカ4の第1係合軸41が遊嵌可能な切欠状の第2係合溝73が開口を下方に向けて形成されている。第1係合溝72と第2係合溝73との間には、後述するアシスト部材9の規制部93と当接可能な突出部74が下方に突出するように設けられている。フック部材7の上縁で第2係合溝73の上方には、後述するレバー部材10の受止部103が当接可能な突起部75が、山型に突出して形成されている。また、フック部材7の第2係合溝73の上方には、裏側(ベースプレート5側)に向けて突出し、後述するレバー部材10の抑止部102と当接可能でかつ後述する補助フック部材8の長孔84内を移動可能な軸部76が設けられている。
【0031】
補助フック部材8は、フック部材7よりも軽量の金属製の板状部材からなり、フック部材7とベースプレート5との間に設けられている。補助フック部材8は、
図2における左側下方に補助フック基部81を有する。補助フック基部81は、上記ベースプレート5の第1枢軸52に回動可能に支持されている。補助フック部材8は、第1枢軸52に巻装した第2バネ12によって
図2のY方向(手前側から見て時計回り方向)へ回動付勢されている。補助フック部材8には、
図2における補助フック基部81の右(反進入方向)側に下方へ延びる延出部82が形成されている。延出部82は、上記フック部材7の突出部74と略同形状に突出して形成されている。また、延出部82の車両後方側外縁8aは、上方に向かうにつれて第1枢軸52を中心とする円弧面よりも反進入方向へ広がる(第1枢軸52から離れる)ように形成されている。補助フック基部81と延出部82との間には、フック部材7の第2係合溝73と略同形状をなす補助係合溝83が、開口を下方に向けて形成されている。補助係合溝83の上方には、フック部材7の軸部76が相対的に移動可能な長孔84が、第1枢軸52を中心とする円弧に沿って延びるように形成されている。また、長孔84より上方で
図2における左側には、裏側(ベースプレート5側)に突出し、後述するレバー部材10の抑止部102と係合可能なピン部85が設けられている。
【0032】
アシスト部材9は、金属製の板状部材からなり、
図2における下方にアシスト基部91を有する。アシスト基部91は、上記ベースプレート5の第3枢軸54に回動可能に支持されている。アシスト部材9は、第3枢軸54に巻装した第3バネ13によって
図2のX方向(手前側から見て時計回り方向)へ回動付勢されている。アシスト部材9は、上部にストライカ4の第1係合軸41に当接可能な当接部92と、フック部材7の突出部74に当接可能な規制部93とが、二股に分かれて延出するように形成されている。規制部93の先端は、裏側に屈曲形成されていて、規制部93の先端がフック部材7の突出部74と当接した際に、フック部材7をアンロック状態に安定して保持しやすいようになっている。なお、規制部93の先端は手前側に屈曲形成しても良く、場合によってはどちらにも屈
曲させない形状としても良い。
【0033】
レバー部材10は、金属製の板状部材からなり、
図2における左上方にレバー基部101を有する。レバー基部101は、上記ベースプレート5の第2枢軸53に回動可能に支持されている。レバー部材10は、第2枢軸53に巻装した第4バネ14によって
図2のZ方向(手前側から見て時計回り方向)へ回動付勢されている。レバー部材10は、レバー基部101の下方に、下端102aがフック部材7の軸部76と当接可能でかつ進入方向側の側面102bが補助フック部材8のピン部85と係合可能な抑止部102と、フック部材7の突起部75に当接可能な受止部103とが、二股に分かれて延出するように形成されている。受止部103は、レバー基部101に対し補助フック部材8を越えるように、
図2における手前側(補助フック部材8側)に屈曲した後に下方に屈曲した段状をなすように折曲げ形成されて、補助フック部材8との干渉を避けてフック部材7の突起部75と当接できるようになっている。また受止部103は、
図3に示すように平面視でくの字状をなすように折れ曲がり状に形成されている。レバー部材10の上端部には、
図3ないし
図6に示すように、操作ロッド30を介して操作手段20に連結される連結孔104が形成されている。
【0034】
次に、実施形態における要部の作動状態を、
図3ないし
図6に基づいて説明する。なお、説明の便宜上、カバープレート6は外した状態で説明するものとする。
【0035】
まず、シートバック3を倒伏位置から起立させるときの作動状態を
図3に基づいて説明する。
【0036】
図3に示すように、シートバック3が倒伏位置にあるとき、アシスト部材9は第3枢軸54に巻装した第3バネ13によってX方向へ向けて回動付勢されている。第3バネ13の付勢力は、アシスト部材9が所定位置に維持されるように設定されている。
【0037】
フック部材7は、第1枢軸52に巻装した第1バネ11によってY方向へ向けて回動付勢されているが、第1係合溝72と第2係合溝73との間に形成された突出部74が、上記所定位置に維持されたアシスト部材9の規制部93と当接することで、上記Y方向への回動が規制されるため、車両後方側下端7aがストライカ4の移動軌跡L(第1及び第2係合軸41,42の軸中心が描く軌跡)よりも上方に保持されている。
【0038】
補助フック部材8は、第1枢軸52に巻装した第2バネ12によってY方向に回動付勢されているが、長孔84の上端面84aがフック部材7の軸部76に当接することで所定位置に維持されている。このとき、補助フック部材8の延出部82先端は、ベースプレート5に形成された進入溝51の下縁51aよりも下方に位置するようになっている。
【0039】
レバー部材10は、第2枢軸53に巻装した第4バネ14によってZ方向に回動付勢されているが、受止部103がフック部材7の突起部75と当接しているため、反Z方向に回動した状態となっている。レバー部材10の回動動作は操作ロッド30を介して操作ノブ22に伝達されているため、操作ノブ22は下方に摺動した状態となっている。すなわち、シートバック3が倒伏位置にあるときは、
図3に示すように、操作ノブ22が操作手段20の枠部21内で枠部上面21aから下方に摺動し、枠部内面21bが露出した状態(操作ノブ22の上面22aが枠部21内で下がった状態)となる。それにより、乗員はアンロック状態であることを認識することができる。
【0040】
シートバック3を倒伏位置から後回りに回動させて起立させると、
図3に示すように、ストライカ4はベースプレート5の進入溝51に相対的に進入し、第1係合軸41がアシスト部材9の当接部92に当接する。アシスト部材9は第3枢軸54に第3バネ13によ
り回動付勢された状態で回動可能に支持されているため、ストライカ4の当接による衝撃力を緩和することができ、緩衝音を低減させることができる。そのまま、当接部92と第1係合軸41とが当接した状態でストライカ4をさらに進入方向(車両前方)へ進入させると、アシスト部材9は第3バネ13による付勢に抗して反X方向に回動し、アシスト部材9の規制部93とフック部材7の突出部74との当接状態が解除される。それとともに、ストライカ4の第1係合軸41がフック部材7の車両後方側下端7aに当接してフック部材7をわずかに持ち上げ、第1係合軸41はフック部材7の第1係合溝72に進入する。
図3に二点鎖線で示すように、第1係合軸41は補助フック部材8の延出部82に当接して、進入方向への進入が止まる。そのため、ストライカ4を勢いよく進入させた場合でも、第1係合軸41がフック部材7の突出部74を超えて第2係合溝73まで進入することを阻止できる。
【0041】
次に、シートバック3が第1起立位置でロック状態になるときの作動状態を、
図4に基づいて説明する。
【0042】
第1係合軸41がフック部材7の第1係合溝72に進入すると、フック部材7は第1バネ11の回動付勢力により、Y方向(ロック方向)へ回動する。それとともに、フック部材7に設けられた軸部76は、補助フック部材8に形成された長孔84内を上方からY方向へ移動する。また、レバー部材10はその受止部103とフック部材の突起部75との当接が解除されて、Z方向へ回動する。
図4に示すように、フック部材7がY方向に回動することにより、ストライカ4の第1係合軸41とフック部材7の第1係合溝72とが係合し、シートバック3は第1起立位置に確実かつ安定して保持される。補助フック部材8は、Y方向へ付勢されるとともに、延出部82の車両後方側外縁8aが上方に向かうにつれて第1枢軸52を中心とする円弧面よりも車両後方(反進入方向)側に広がるよう形成されている。そのため、ストライカ4の第1係合軸41は補助フック部材8の延出部82によって反進入方向(車両後方)へ押圧される。また、X方向へ付勢されたアシスト部材9の当接部92によっても反進入方向(車両後方)へ押圧される。そのため、ストライカ4の第1係合軸41は、延出部押圧面82b及び当接部押圧面92aと、第1係合溝72の反進入方向面72a(車両後方面)とで挟持されることとなり、ガタつきが防止される。それによって、シートバック3は第1起立位置へ確実かつ安定して保持される。
【0043】
このとき、フック部材7に設けられた軸部76はレバー部材10における抑止部102の下端102aと当接可能である。そのため、仮に車両の振動や衝撃によってフック部材7がロック解除方向である上方(反Y方向)に回動してストライカ4の第1係合軸41から離脱しようとしても、そのフック部材の軸部が抑止部102の下端102aに当接するだけとなり、その抑止部102に邪魔されてフック部材7の回動が阻止される。
【0044】
また、フック部材7のY方向への回動に伴って、レバー部材10は付勢されているZ方向へ回動する。それとともにレバー部材10の回動に伴う作動が、操作ロッド30を介して操作ノブ22に伝達される。それにより、操作ノブ22は上方に押上げられ、操作ノブ上面22aが枠部上面21aと平坦になる。すなわち、シートバック3が第1起立位置でロック状態にあるとき、操作手段20の枠部内面21bは外から視認できない状態(操作ノブ22の上面22aが枠部21内で上がった状態)となる。それにより乗員はロック状態であることを認識できる。
【0045】
次に、第1起立位置から第2起立位置へ変位させるときの作動状態について、
図5に基づいて説明する。この作動状態にするためには、操作手段20を操作して、フック部材7及び補助フック部材8をロック解除状態にする。その操作手段20の操作について、以下説明する。
【0046】
図5は、シートバック3が第2起立位置でロック解除状態にあるときの作動状態を示す。この
図5に示すように、操作手段20の枠部21内に上下摺動可能に設けられた操作ノブ22を下方へ押込むことにより、詳細は省略するが、その作動が操作ロッド30を介してレバー部材10に伝達されてレバー部材10が押される。そうすると、レバー部材10が第2枢軸53を中心に反Z方向へ回動することになり、レバー部材10の抑止部102とフック部材7の軸部76との当接が解除される。引き続いて今度は、レバー部材10の抑止部102における進入方向側の側面102bで補助フック部材8のピン部85に係合する。そのまま操作ノブ22を下方へ押込み続けると、補助フック部材8は、そのピン部85とレバー部材10の抑止部102の側面102bとの係合により、第2バネ12による付勢力に抗して第1枢軸52を中心に反Y方向へ回動することとなる。それに伴って、補助フック部材8の長孔84も反Y方向へ回動することとなり、長孔84の下端面84bがフック部材7の軸部76に当接する。さらに操作ノブ22を下方へ押込み続けると、補助フック部材8はその状態からさらに反Y方向へ回動するため、フック部材7は、その軸部76と補助フック部材8の長孔84との当接により、第1バネ11による付勢力に抗して、補助フック部材8の回動に伴って反Y方向(ロック解除方向)へ回動する。すなわち、レバー部材10、補助フック部材8、フック部材7の順に回動することとなる。このとき、フック部材7を回動付勢する第1バネ11の付勢力は、レバー部材10を回動付勢する第4バネ14の付勢力よりも小さく設定されているため、回動付勢力の強い第4バネ14から弱い付勢力の第1バネ11の各付勢力に抗してレバー部材10及びフック部材7が回動することとなり、逆の場合に比べて、回動する部材が追加されても操作荷重が急に上昇することはなく、操作ノブ22の押込みが違和感なくスムーズに行える。また、補助フック部材8はフック部材7よりも軽量に形成されているため、レバー部材10からフック部材7までの回動に要する荷重の変化がよりスムーズになり、操作性を向上させることができる。
【0047】
フック部材7の第1係合溝72および第2係合溝73は補助フック部材8の回動に伴って反Y方向へ回動することにより上方に持上げられ、第1係合溝72は、ストライカ4の第1係合軸41から離間し、ロック解除状態となる。このとき、アシスト部材9及びストライカ4は
図5に二点鎖線で示す状態となる。
【0048】
かかるロック解除状態においてシートバック3を第1起立位置から第2起立位置に移動させると、ストライカ4は
図5に二点鎖線で示す状態から、第1係合軸41がアシスト部材9の当接部92と当接したままさらに進入方向(車両前方)へ進入し、アシスト部材9及びストライカ4は
図5に実線で示す状態となる。このときストライカ4は、X方向へ付勢されたアシスト部材9により反進入方向へ押されながら、進入溝51の進入方向端部51bまで移動するので、ストライカ4の第1係合軸41と進入溝51の進入方向端部51bとの当接による緩衝音が効果的に緩和される。なお、緩衝音をより低減させるよう、進入溝51の進入方向端部51bにゴム等の緩衝材を設けても良い。
【0049】
そして、
図5に実線で示す状態で操作ノブ22の操作を止めると、それぞれのバネ11,12,14の付勢力によって、レバー部材10はZ方向へ、補助フック部材8及びフック部材7はY方向へそれぞれ回動し、ストライカ4の第2係合軸42とフック部材7の第1係合溝72が係合し、シートバック3が第2起立位置にあるロック状態となる(
図6参照)。
【0050】
次に、シートバック3が第2起立位置でロック状態になるときの作動状態を
図6に基づいて説明する。
【0051】
図6に示すように、フック部材7がY方向に回動することによりストライカ4の第2係合軸42とフック部材7の第1係合溝72とが係合し、シートバック3は第2起立位置に
確実かつ安定して保持される。ストライカ4の第1係合軸41は、第2係合溝73及び補助係合溝83に遊嵌している。それによって、ストライカ4の第2係合軸42は、ストライカ4の第1係合軸41と第2係合軸42の寸法のばらつきやロックアッセンブリRの取付位置の誤差等の影響を受けることなく、フック部材7の第1係合溝72へ確実に所定状態にて係合する。ストライカ4の第1係合軸41は、X方向へ付勢されたアシスト部材9の当接部押圧面92aによって、反進入方向へ押圧される。また、ストライカ4の第2係合軸42は、Y方向へ付勢されるとともに、車両後方側外縁8aが上方へ向かうにつれて車両後方側にやや広がるよう形成された補助フック部材8の延出部82によって、反進入方向へ押圧される。そのため、第2係合軸42は補助フック部材8の延出部押圧面82bと、フック部材7の第1係合溝反進入方向(車両後方)面72aとで挟持され、ガタつきが防止される。それによって、シートバック3は第2起立位置に確実かつ安定して保持される。
【0052】
このとき、上述の第1起立位置でロック状態にあるときと同様、フック部材7に設けられた軸部76はレバー部材10における抑止部102の下端102aと当接している。そのため、振動や衝撃によってフック部材7が上方(反Y方向)に回動しようとしてもそれは阻止され、ストライカ4の第1係合軸41および第2係合軸42から離脱することを抑止できる。
【0053】
また、上述の第1起立位置でロック状態にあるときと同様、操作ノブ22は、フック部材7及びレバー部材10の回動に伴って上方に押上げられ、操作ノブ上面22aは枠部上面21aと平坦になる。すなわち、シートバック3が第2起立位置でロック状態にあるときも、第1起立位置でロック状態にあるときと同様に、操作手段20の枠部内面21bは外から視認できない状態となり、乗員はロック状態であることを認識できる。
【0054】
次に、シートバック3を第2起立位置から倒伏位置または第1起立位置に変位させる場合の作動状態について説明する。この位置に変位させる場合には、操作手段20の操作を要する。この操作は、
図5における上述の説明と同様な操作となる。すなわち、第2起立位置から倒伏位置あるいは第1起立位置に変位させる場合においても、
図5に示すように操作ノブ22を押し下げる操作が行われる。
【0055】
この操作手段20の操作により、
図5に示すようにフック部材7がロック解除状態に作動する。アシスト部材9は第3バネ13によりX方向に回動付勢されているため、このアシスト部材9からストライカ4に対して反進入方向への力が作用している。すなわち、第2起立位置から第1起立位置あるいは倒伏位置に変位させる方向へバネ力が作用している。そこで、上記フック部材7がロック解除状態に作動するのに伴い、上記バネ力の作用のアシストによって、上記とは逆の動きが行われるようにシートバック3を軽い力で第2起立位置から倒伏位置あるいは第1起立位置に変位させることができる。また、第1起立位置から倒伏位置に変位させる場合も同様にして容易に変位させることができるものであり、詳細な説明は省略する。
【0056】
(他の実施形態)
なお、本実施形態では、操作ノブ22を押込むことによりロック機構を作動させたが、かかる構成に限られるものでなく、引上げたり、スライドさせたりする構成でも良い。また、操作ロッド30は、リンク機構にしても良い。また、補助フック部材8はフック部材7よりベースプレート5側に配置する構成としたが、この構成に限られるものではなく、フック部材を補助フック部材よりもベースプレート側に配置する構成としても良い。また、
図3においては、フック部材7の車両後方側下端7aがストライカ4の移動軌跡Lよりも上方に保持されるが、かかる構成においてフック部材の車両後方側下端は、ストライカ4が進入方向へ移動したときに全く当接しないようにしても良いし、一部が当接してフッ
ク部材7を上方へ回動させるようにしても良い。
【0057】
また、本実施形態は、シートバック3の車両左側方にロックアッセンブリRが設けられた場合であるが、本発明はこれに限られるものではなく、シートバック3の車両右側方にロックアッセンブリが設けられた場合にも適用することができる。