【実施例】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を、
図1〜
図5を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の起伏ゲート式防波堤の第1の例を示した概略構成図である。
【0018】
図1において、1は起伏ゲート式防波堤を構成する扉体であり、平時は格納部2の扉体格納空間2aに倒伏した状態で格納されている。そして、高潮や津波の発生が予測された際には、先端側の空気室に給気して基端側の回転軸1aを支点として先端側を起立させ、港口を塞ぐ。
【0019】
本発明は、上記起伏ゲート式防波堤において、海水を貯留する海水タンク3と、この海水タンク3内の海水を前記扉体格納空間2aに送水する送水配管4と、前記扉体格納空間2aに送水された海水を海域6に排出する排水配管5を備えた構成である。
【0020】
前記海水タンク3は、例えば満潮時の水位と同程度の高さを有した上部が開口したタンクで、満潮時に海水タンク3の上部から海水を取水して貯留するもので、例えば起伏ゲート式防波堤の機械室下部の空間に備えられる。
【0021】
また、前記送水配管4は、一端を前記海水タンク3内の下方に開口させる一方、他端は、海水タンク3の上部開口3aを経て扉体格納空間2aの床面2aaと前記倒伏状態にある扉体1の反海域側の面1bとの間の扉体格納空間2a内に開口させている。そして、送水配管4の内部に海水が留まっていない気中部分に、常時は閉状態で潮位が低下した時に開放される送水弁7を設置している。
【0022】
また、前記排水配管5は、前記送水配管4の他端側開口4bと対向するように、一端を扉体格納空間2a内に開口する一方、他端は海域6に開口させている。そして、その途中に、一端側開口5aから他端側開口5bに向かう方向にのみ海水の移動を許容する逆止弁8を設けている。
【0023】
これら送水配管4及び排水配管5は、扉体格納空間2aの床面2aaに堆積した底質9を効率良く海域6に排出するために、扉体1の幅方向に所定の間隔を存して複数設置している。
【0024】
10は、海域6から扉体格納空間2aの内部に落下してくる底質9を通過させるが、扉体格納空間2aの床面2aaに堆積した底質9が倒伏状態の扉体1側に移動することを抑制する半透過部材である。この半透過部材10は、倒伏状態の扉体1の反海域側の面1bと、前記送水配管4の他端側開口4b(前記排水配管5の一端側開口5a)との間に配置されている。
【0025】
前記半透過部材10は、上記作用を奏することができるものであれば、その構成は問わない。例えば
図2(a)では山形鋼10aを複数個、
図2(b)では横断面が三角形状の各材10bを複数個、それぞれの山部を上方向に向け、それぞれの山裾間が適宜の間隔dとなるように配置したものを示している。
【0026】
上記本発明では、満潮時には満潮時の水位と同程度まで海水タンク3に海水が取水されて貯留される(
図1(a))。この状態では、送水弁7は閉じていることから、潮位が低下すれば、海水タンク3内と海域6との間で水位差が生じる(
図1(b))。
【0027】
従って、例えば潮位検出センサーによって潮位を検出し、前記水位差が予め規定した水位差になった時に、
図1(c)のように、送水弁7を開放するように制御すれば、送水配管4を介して扉体格納空間2aに海水タンク3内の海水が送り込まれる。送り込まれた海水は扉体格納空間2aの床面2aa上に堆積した底質9を押し流す。押し流された底質9は、半透過部材10の作用によって排水配管5の一端側開口5aに流れ込んで他端側開口5bから海域6に排出される。
【0028】
送水が完了して海水タンク3の水位が低下すれば送水弁7を閉じ、潮位の上昇により海水タンク3内の貯水が回復するのを待つ。干満の周期は約半日であるため、潮位差を利用した本発明の運転は1日2回実施される。
【0029】
すなわち、本発明では、ダイバーが潜らなくても、干満による潮位差によって扉体格納空間2aに堆積した底質9を排出することができる。なお、排水配管5に設けた逆止弁8の作用によって排水配管5を介して扉体格納空間2a内に海水が流れ込むことはない。
【0030】
本発明は、前記の例に限るものではなく、各請求項に記載の技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0031】
例えば、海水の取水時に海水タンク3に異物が入るのを防止するため、
図3(a)に示すように、海水タンク3の側壁上端に網状の異物捕捉材11を設置しても良い。
【0032】
或いは、
図3(b)に示すように、海水タンク3の側壁上端からその両端部を海水タンク3の内側及び外側に降ろした逆U字型の配管12の途中に、開閉弁13と取り替えが可能なフィルター14を備えたものでも良い。この逆U字型の配管12による取水は、サイフォンの原理によるものであるため、その両端部は海面から出ないようにしておくことは言うまでもない。なお、前記開閉弁13は、前記送水弁7と同様、逆U字型の配管12の内部に海水が留まっていない気中部分に設ける。
【0033】
この
図3(b)に示した構造の場合、
図4に示すように、上面を密閉した海水タンク3に配管15を介して蓄圧タンク16を繋げば、配管15に設けた開閉弁17を開けて蓄圧タンク15の圧力を作用させれば、海水タンク3内の海水を送水することができる。なお、この場合、海水タンク3の上面を密閉するので、海水を取水するためには、海水タンク3の上面にタンク内の圧力を開放する排気弁18を設けておくことが必要である。
【0034】
また、排水配管5の途中に設ける逆止弁8の設置位置は特に限定されるものではないが、メンテナンスの容易性を考慮すれば、
図5に示すように、扉体1の格納部2からダイバーがアクセスできる位置に設置することが望ましい。
【0035】
上記実施例では、倒伏状態の扉体1の反海域側の面1bと、前記送水配管4の他端側開口4b(排水配管5の一端側開口5a)との間に半透過部材10を配置しているが、この半透過部材10は必須の構成要素ではない。