【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の事項を提案している。
(1) 本発明は、フレーム内予測またはフレーム間予測により、複数の色成分を有する動画像を符号化する動画像符号化装置であって、符号化済みの画素を用いて変換行列を導出する変換行列導出手段(例えば、
図1の変換行列導出部90Aに相当)と、前記動画像を構成する入力画像と、前記フレーム間予測またはフレーム内予測により生成された予測画像と、の差分である残差信号に、前記変換行列導出手段により導出された変換行列を適用して色空間変換を行って、無相関空間における残差信号を生成する色空間変換手段(例えば、
図1の色空間変換部100Aに相当)と、前記色空間変換手段により生成された無相間空間における残差信号を量子化して量子化係数を生成する量子化手段(例えば、
図1の変換・量子化部30に相当)と、前記量子化手段により生成された量子化係数を符号化する符号化手段(例えば、
図1のエントロピー符号化部40に相当)と、を備えることを特徴とする動画像符号化装置を提案している。
【0031】
ここで、残差信号には、色成分間の相関性が残っている。そこで、この発明によれば、残差信号に対して変換行列を適用して、色空間変換を行うこととした。このため、残差信号に含まれる色成分間の相関性を減らすことができ、色空間の冗長性を削減することができる。
【0032】
また、この発明によれば、上述のように、残差信号に対して変換行列を適用して、色空間変換を行うこととした。このため、
図8に示した従来例に係る動画像符号化装置PPでは3つ必要であった色空間変換部を、1つにすることができる。したがって、色空間変換を適用する画素数を減らすことができ、処理負荷を軽減することができる。
【0033】
(2) 本発明は、(1)の動画像符号化装置について、前記変換行列導出手段は、符号化済みの画素で構成される画像の色成分ごとの色空間解像度を、これら色成分のそれぞれの色空間解像度のうち最も高いものに揃えた後に、前記変換行列を導出し、前記色空間変換手段は、前記残差信号の色成分ごとの色空間解像度を、これら色成分のそれぞれの色空間解像度のうち最も高いものに揃えた後に、前記無相関空間における残差信号を生成し、その後、当該無相関空間における残差信号の色成分ごとの色空間解像度を元に戻すことを特徴とする動画像符号化装置を提案している。
【0034】
この発明によれば、(1)の動画像符号化装置において、画像や残差信号の色成分ごとの色空間解像度を、3つの色成分のそれぞれの色空間解像度のうち最も高いものに揃えた後に、各種処理を行う。このため、3つの色成分のそれぞれの色空間解像度が同一である入力画像だけでなく、3つの色空間のそれぞれの色空間解像度のうち少なくとも1つが異なる入力画像についても、符号化することができる。
【0035】
(3) 本発明は、(1)または(2)の動画像符号化装置について、前記変換行列導出手段は、前記フレーム内予測が適用されるフレームにおける符号化対象ブロックについて、当該符号化対象ブロックに隣接する符号化済みの画素を参照画素とし、前記フレーム間予測が適用されるフレームにおける符号化対象ブロックについて、当該符号化対象ブロックの動きベクトルが指す参照フレーム内の領域から、当該符号化対象ブロックの予測画像を生成し、生成した予測画像を構成する画素を参照画素とし、前記参照画素を用いて前記変換行列を導出することを特徴とする動画像符号化装置を提案している。
【0036】
この発明によれば、(1)または(2)の動画像符号化装置において、フレーム内予測が適用されるフレームにおける符号化対象ブロックと、フレーム間予測が適用されるフレームにおける符号化対象ブロックとで、それぞれ参照画素を特定し、参照画素を用いて変換行列を導出することができる。
【0037】
(4) 本発明は、(3)の動画像符号化装置について、前記変換行列導出手段は、前記フレーム内予測が適用されるフレームにおける符号化対象ブロックについて、当該符号化対象ブロックに隣接する符号化済みの画素のうち、当該符号化対象ブロックの上方または左方に存在する画素を、前記参照画素とし、前記フレーム間予測が適用されるフレームにおける符号化対象ブロックについて、当該符号化対象ブロックの動きベクトルが指す参照フレーム内の領域から、当該符号化対象ブロックの予測画像を生成し、生成した予測画像を構成する画素を前記参照画素とし、当該参照画素を間引いて当該参照画素の数を2のべき乗にすることを特徴とする動画像符号化装置を提案している。
【0038】
この発明によれば、(3)の動画像符号化装置において、フレーム内予測が適用されるフレームにおける符号化対象ブロックと、フレーム間予測が適用されるフレームにおける符号化対象ブロックとで、それぞれ参照画素を特定することができる。
【0039】
(5) 本発明は、(1)〜(4)のいずれかの動画像符号化装置について、前記変換行列導出手段は、固定小数点で逆平方根の計算を行う逆平方根計算手段と、固定小数点でヤコビ固有値計算法による計算を行うヤコビ計算手段と、を備えることを特徴とする動画像符号化装置を提案している。
【0040】
ここで、上述のような従来の色空間変換を伴う動画像符号化装置は、変換行列の導出に、一般的なSVD(Singular Value Decomposition:特異値分解)アルゴリズムを用いる。このため、小数点演算が必要であり、ハードウェア化に適さないという課題もあった。
【0041】
そこで、この発明によれば、(1)〜(4)のいずれかの動画像符号化装置において、固定小数点で逆平方根の計算を行うとともに、固定小数点でヤコビ固有値計算法による計算を行うこととした。このため、小数点演算が不要になるので、ハードウェア化に適した色空間変換を行うことができる。
【0042】
また、この発明によれば、(1)〜(4)のいずれかの動画像符号化装置において、上述のように、固定小数点で逆平方根の計算を行うとともに、固定小数点でヤコビ固有値計算法による計算を行うこととした。このため、処理負荷を軽減することができる。
【0043】
(6) 本発明は、(5)の動画像符号化装置について、前記逆平方根計算手段は、前記動画像を構成する入力画像のビット深度に適応させた固定小数点で逆平方根の計算を行い、前記ヤコビ計算手段は、前記動画像を構成する入力画像のビット深度に適応させた固定小数点でヤコビ固有値計算法による計算を行うことを特徴とする動画像符号化装置を提案している。
【0044】
この発明によれば、(5)の動画像符号化装置において、入力画像のビット深度に適応させた固定小数点で、逆平方根の計算およびヤコビ固有値計算法による計算を行うことができる。
【0045】
(7) 本発明は、フレーム内予測またはフレーム間予測により、複数の色成分を有する動画像を復号する動画像復号装置であって、符号化済みの画素を用いて変換行列を導出する変換行列導出手段(例えば、
図5の変換行列導出部680Aに相当)と、符号化された信号を復号する復号手段(例えば、
図5のエントロピー復号部610に相当)と、前記復号手段により復号された信号を逆量子化して残差信号を生成する逆量子化手段(例えば、
図5の逆変換・逆量子化部620に相当)と、前記逆量子化手段により逆量子化された残差信号に、前記変換行列導出手段により導出された変換行列を適用して逆色空間変換を行って、相関空間における残差信号を生成する逆色空間変換手段(例えば、
図5の逆色空間変換部710Aに相当)と、を備えることを特徴とする動画像復号装置を提案している。
【0046】
ここで、残差信号には、色成分間の相関性が残っている。そこで、この発明によれば、残差信号に対して変換行列を適用して、色空間変換を行う。このため、残差信号に含まれる色成分間の相関性を減らすことができ、色空間の冗長性を削減することができる。
【0047】
また、この発明によれば、上述のように、残差信号に対して変換行列を適用して、色空間変換を行うこととした。このため、
図9に示した従来例に係る動画像復号装置QQでは2つ必要であった色空間変換部が不要になる。したがって、色空間変換を適用する画素数を減らすことができ、処理負荷を軽減することができる。
【0048】
(8) 本発明は、(7)の動画像復号装置について、前記変換行列導出手段は、符号化済みの画素で構成される画像の色成分ごとの色空間解像度を、これら色成分のそれぞれの色空間解像度のうち最も高いものに揃えた後に、前記変換行列を導出し、前記逆色空間変換手段は、前記残差信号の色成分ごとの色空間解像度を、これら色成分のそれぞれの色空間解像度のうち最も高いものに揃えた後に、前記相関空間における残差信号を生成し、その後、当該相関空間における残差信号の色成分ごとの色空間解像度を元に戻すことを特徴とする動画像復号装置を提案している。
【0049】
この発明によれば、(7)の動画像復号装置において、画像や残差信号の色成分ごとの色空間解像度を、3つの色成分のそれぞれの色空間解像度のうち最も高いものに揃えた後に、各種処理を行う。このため、3つの色成分のそれぞれの色空間解像度が同一である入力画像だけでなく、3つの色空間のそれぞれの色空間解像度のうち少なくとも1つが異なる画像についても、復号することができる。
【0050】
(9) 本発明は、(7)または(8)の動画像復号装置について、前記変換行列導出手段は、前記フレーム内予測が適用されるフレームにおける符号化対象ブロックについて、当該符号化対象ブロックに隣接する符号化済みの画素を参照画素とし、前記フレーム間予測が適用されるフレームにおける符号化対象ブロックについて、当該符号化対象ブロックの動きベクトルが指す参照フレーム内の領域から、当該符号化対象ブロックの予測画像を生成し、生成した予測画像を構成する画素を参照画素とし、前記参照画素を用いて前記変換行列を導出することを特徴とする動画像復号装置を提案している。
【0051】
この発明によれば、(7)または(8)の動画像復号装置において、フレーム内予測が適用されるフレームにおける符号化対象ブロックと、フレーム間予測が適用されるフレームにおける符号化対象ブロックとで、それぞれ参照画素を特定し、参照画素を用いて変換行列を導出することができる。
【0052】
(10) 本発明は、(9)の動画像復号装置について、前記変換行列導出手段は、前記フレーム内予測が適用されるフレームにおける符号化対象ブロックについて、当該符号化対象ブロックに隣接する符号化済みの画素のうち、当該符号化対象ブロックの上方または左方に存在する画素を、前記参照画素とし、前記フレーム間予測が適用されるフレームにおける符号化対象ブロックについて、当該符号化対象ブロックの動きベクトルが指す参照フレーム内の領域から、当該符号化対象ブロックの予測画像を生成し、生成した予測画像を構成する画素を前記参照画素とし、当該参照画素を間引いて当該参照画素の数を2のべき乗にすることを特徴とする動画像復号装置を提案している。
【0053】
この発明によれば、(9)の動画像復号装置において、フレーム内予測が適用されるフレームにおける符号化対象ブロックと、フレーム間予測が適用されるフレームにおける符号化対象ブロックとで、それぞれ参照画素を特定することができる。
【0054】
(11) 本発明は、(7)〜(10)のいずれかの動画像復号装置について、前記変換行列導出手段は、固定小数点で逆平方根の計算を行う逆平方根計算手段と、固定小数点でヤコビ固有値計算法による計算を行うヤコビ計算手段と、を備えることを特徴とする動画像復号装置を提案している。
【0055】
ここで、上述のような従来の色空間変換を伴う動画像復号装置は、変換行列の導出に、一般的なSVD(Singular Value Decomposition:特異値分解)アルゴリズムを用いる。このため、小数点演算が必要であり、ハードウェア化に適さないという課題もあった。
【0056】
そこで、この発明によれば、(7)〜(10)のいずれかの動画像復号装置において、固定小数点で逆平方根の計算を行うとともに、固定小数点でヤコビ固有値計算法による計算を行うこととした。このため、小数点演算が不要になるので、ハードウェア化に適した色空間変換を行うことができる。
【0057】
また、この発明によれば、(7)〜(10)のいずれかの動画像復号装置において、上述のように、固定小数点で逆平方根の計算を行うとともに、固定小数点でヤコビ固有値計算法による計算を行うこととした。このため、処理負荷を軽減することができる。
【0058】
(12) 本発明は、(11)の動画像復号装置について、前記逆平方根計算手段は、前記動画像を構成する画像のビット深度に適応させた固定小数点で逆平方根の計算を行い、前記ヤコビ計算手段は、前記動画像を構成する入力画像のビット深度に適応させた固定小数点でヤコビ固有値計算法による計算を行うことを特徴とする動画像復号装置を提案している。
【0059】
この発明によれば、(11)の動画像復号装置において、画像のビット深度に適応させた固定小数点で、逆平方根の計算およびヤコビ固有値計算法による計算を行うことができる。
【0060】
(13) 本発明は、変換行列導出手段(例えば、
図1の変換行列導出部90Aに相当)、色空間変換手段(例えば、
図1の色空間変換部100Aに相当)、量子化手段(例えば、
図1の変換・量子化部30に相当)、および符号化手段(例えば、
図1のエントロピー符号化部40に相当)を備え、フレーム内予測またはフレーム間予測により、複数の色成分を有する動画像を符号化する動画像符号化装置における動画像符号化方法であって、前記変換行列導出手段が、符号化済みの画素を用いて変換行列を導出する第1のステップと、前記色空間変換手段が、前記動画像を構成する入力画像と、前記フレーム間予測またはフレーム内予測により生成された予測画像と、の差分である残差信号に、前記変換行列導出手段により導出された変換行列を適用して色空間変換を行って、無相関空間における残差信号を生成する第2のステップと、前記量子化手段が、前記色空間変換手段により生成された無相間空間における残差信号を量子化して量子化係数を生成する第3のステップと、前記符号化手段が、前記量子化手段により生成された量子化係数を符号化する第4のステップと、を備えることを特徴とする動画像符号化方法を提案している。
【0061】
この発明によれば、上述した効果と同様の効果を奏することができる。
【0062】
(14) 本発明は、変換行列導出手段(例えば、
図5の変換行列導出部680Aに相当)、復号手段(例えば、
図5のエントロピー復号部610に相当)、逆量子化手段(例えば、
図5の逆変換・逆量子化部620に相当)、および逆色空間変換手段(例えば、
図5の逆色空間変換部710Aに相当)を備え、フレーム内予測またはフレーム間予測により、複数の色成分を有する動画像を復号する動画像復号装置における動画像復号方法であって、前記変換行列導出手段が、符号化済みの画素を用いて変換行列を導出する第1のステップと、前記復号手段が、符号化された信号を復号する第2のステップと、前記逆量子化手段が、前記復号手段により復号された信号を逆量子化して残差信号を生成する第3のステップと、前記逆色空間変換手段が、前記逆量子化手段により逆量子化された残差信号に、前記変換行列導出手段により導出された変換行列を適用して逆色空間変換を行って、相関空間における残差信号を生成する第4のステップと、を備えることを特徴とする動画像復号方法を提案している。
【0063】
この発明によれば、上述した効果と同様の効果を奏することができる。
【0064】
(15) 本発明は、変換行列導出手段(例えば、
図1の変換行列導出部90Aに相当)、色空間変換手段(例えば、
図1の色空間変換部100Aに相当)、量子化手段(例えば、
図1の変換・量子化部30に相当)、および符号化手段(例えば、
図1のエントロピー符号化部40に相当)を備え、フレーム内予測またはフレーム間予測により、複数の色成分を有する動画像を符号化する動画像符号化装置における動画像符号化方法を、コンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記変換行列導出手段が、符号化済みの画素を用いて変換行列を導出する第1のステップと、前記色空間変換手段が、前記動画像を構成する入力画像と、前記フレーム間予測またはフレーム内予測により生成された予測画像と、の差分である残差信号に、前記変換行列導出手段により導出された変換行列を適用して色空間変換を行って、無相関空間における残差信号を生成する第2のステップと、前記量子化手段が、前記色空間変換手段により生成された無相間空間における残差信号を量子化して量子化係数を生成する第3のステップと、前記符号化手段が、前記量子化手段により生成された量子化係数を符号化する第4のステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラムを提案している。
【0065】
この発明によれば、上述した効果と同様の効果を奏することができる。
【0066】
(16) 本発明は、変換行列導出手段(例えば、
図5の変換行列導出部680Aに相当)、復号手段(例えば、
図5のエントロピー復号部610に相当)、逆量子化手段(例えば、
図5の逆変換・逆量子化部620に相当)、および逆色空間変換手段(例えば、
図5の逆色空間変換部710Aに相当)を備え、フレーム内予測またはフレーム間予測により、複数の色成分を有する動画像を復号する動画像復号装置における動画像復号方法を、コンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記変換行列導出手段が、符号化済みの画素を用いて変換行列を導出する第1のステップと、前記復号手段が、符号化された信号を復号する第2のステップと、前記逆量子化手段が、前記復号手段により復号された信号を逆量子化して残差信号を生成する第3のステップと、前記逆色空間変換手段が、前記逆量子化手段により逆量子化された残差信号に、前記変換行列導出手段により導出された変換行列を適用して逆色空間変換を行って、相関空間における残差信号を生成する第4のステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラムを提案している。
【0067】
この発明によれば、上述した効果と同様の効果を奏することができる。