(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一対の金属製薄板の間にコア材を収容した後、金属製薄板の外縁を溶接などで接合する真空断熱パネルが記載されている。しかし、この真空断熱パネルを複数枚、組み付けて壁面などに固定する際には、別途、固定具が必要である。
【0003】
特許文献2には、プレス加工された第1パネルと第2パネルとをフランジ部を溶接することで接合一体化し、内部空間を真空引きして形成される真空断熱パネルが記載されている。この真空断熱パネルでは、第2パネルの角部をボルトおよびナットにより両側から挟み込むことで、真空断熱パネル同士を組み付けている。
【0004】
特許文献3には、平板状の一対の主面部材と、主面部材に対して45度に傾斜した端面部材とからなる面材の内部を真空排気して形成される真空断熱パネルが記載されている。この真空断熱パネルでは、端面部材同士を壁面に対して45度傾斜した状態で重ね合わせて接合することで、真空断熱パネル同士を組み付けている。
【0005】
しかし、特許文献2に記載の真空断熱パネルでは、組み付けられた真空断熱パネルのガイド面間に隙間が生じ、この隙間から真空断熱パネルの熱が発散する。また、特許文献3に記載の真空断熱パネルでは、複数の真空断熱パネルを端面部材同士を重ね合わせて平面状に接続する場合、押付手段で真空断熱パネルを固定しなければ、端面部材間に隙間が生じ、この隙間から真空断熱パネルの熱が発散する恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、真空断熱パネルからの放熱量を低減できる保持部材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る保持部材は、
断面略S字状で、取付面に沿って配置される真空断熱パネルを互いに逆方向に保持する2つの保持部と、
前記保持部を前記取付面に取り付ける取付け部または取付け用部材と、
を備えた。
【0009】
上記構成により、2つの保持部に逆方向に保持された真空断熱パネル同士が重なる。従って、真空断熱パネル同士が重なる領域で真空断熱パネル自身の放熱を防止できる。また、真空断熱パネル同士を重ねることで、真空断熱パネル間に隙間が生じるのを防ぎ、この隙間から取付面の熱が発散するのを防止できる。
【0010】
少なくとも1つの前記保持部は、隣接して重なる一対の真空断熱パネルを保持することが好ましい。
【0011】
上記構成により、真空断熱パネル同士が重なる状態を確実に維持できる。
【0012】
前記保持部は、複数の前記真空断熱パネルのうち、
一方に延びる前記真空断熱パネルを保持する第1保持部と、
他方に延びる前記真空断熱パネルを保持する第2保持部と、
を備え、
前記第1保持部および前記第2保持部がそれぞれ、隣接して重なる一対の真空断熱パネルを保持することが好ましい。
【0013】
上記構成により、2つの保持部に逆方向に保持された真空断熱パネル同士が重なると共に、2つの保持部のそれぞれに保持された隣接する一対の真空断熱パネル同士が重なる。従って、より一層、真空断熱パネル自身の放熱を防止でき、また、真空断熱パネル間に生じる隙間から取付面の熱が発散するのを防止できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、取付面に固定された真空断熱パネルからの放熱量を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。
【0017】
図1は、本発明の第1実施形態に係る保持部材50により、真空断熱パネル10を取付面5に取り付けた状態を示す。
【0018】
真空断熱パネル10は、一対の金属板材11A,11Bを接合して形成された、肉厚が1〜20mm程度の平面視正方形状の薄型である。なお、真空断熱パネル10は、取付面5を断熱できる限り、その形状、材料は特に限定されない。
【0019】
図2および
図3に示すように、真空断熱パネル10は、対向配置された第1および第2金属板材11A,11Bと、これらの間に形成される収容部12に配設したコア材31A〜31Cとを備える。収容部12は、外周に一対の金属板材11A,11Bを接合する封止部13,14A,15(
図4参照)を設けることにより密封されると共に、真空排気されている。
【0020】
収容部12内には、コア材31A〜31Cに加えて、輻射伝熱を防止するための金属箔38A,38Bと、封止後に発生したガスを吸引して真空度を維持するためのゲッター(図示せず)とが配設される。
【0021】
各金属板材11A,11Bは肉厚0.02〜0.3mmの薄いステンレス(SUS304)板により形成される。本実施形態では、肉厚は0.1mmである。なお、第1金属板材11Aと第2金属板材11Bとで異なる金属材料、つまり異なる材質および/または異なる肉厚寸法のものを使用してもよい。
【0022】
以下に、金属板材11A,11Bの加工構成について、
図4を参照して説明する。なお、
図4は第1金属板材11Aを示し、第2金属板材11Bは、後述する排気部21が形成されていない点でのみ異なる。
【0023】
接合前の金属板材11A,11Bは略正方形状であり、第1封止部13と、第2封止部14A,14Bと、第3封止部15(15A,15B)と、排気部21と、排気通気溝22とが形成されている。第1封止部13と第2封止部14A,14Bと第3封止部15Aとは各辺縁に対して所定間隔をあけて内側に位置し、隣り合う封止部はそれぞれ互いに直交している。第3封止部15Bは、排気部21側の第2封止部14Bよりも内側に第2封止部14Bと平行に位置している。第1封止部13と第2封止部14A,14Bと第3封止部15Aとは真空排気前に封止され、第3封止部15Bは真空排気後に封止される。なお、封止は、シーム溶接などの抵抗溶接またはTIG溶接やレーザ溶接、MIGブレージングなどによって行われる。
【0024】
第2封止部14Bと第3封止部15Bとの間には排気部21が設けられている。この排気部21は、第1金属板材11Aのみに形成され、第2金属板材11Bには形成されていない。
【0025】
接合後の金属板材11A,11Bの各辺には、
図3に示すように、内側に位置する第1辺部折返部26と、第1辺部折返部26を間に封止部13,14A,15と反対側に位置する第2辺部折返部27とを有する辺部折返部28が設けられている。ただし、辺部折返部28の形状は特に限定されず、例えば、1つの折返部から構成されてもよい。
【0026】
金属板材11A,11Bは、コア材31A〜31Cと封止部13,14A,15との間に傾斜部33を有している。傾斜部33は、金属板材11A,11Bをコア材31A〜31Cの外周部に沿って折れ曲がって変形しており、互いに向かって傾斜するように形成されている。傾斜部33とコア材31A〜31Cとの間には、断面視で外形が三角形状の空隙部34が形成されている。
【0027】
コア材31A〜31Cは、正方形状または4方の角を面取りした略正方形状であり、ガラス繊維、セラミック繊維、カーボン繊維等の織布又は不織布、あるいは、マイカ板、セラミックウール、セラミックボード等が使用される。金属板材11A,11Bの間にコア材31A〜31Cを配設すると、コア材31A〜31Cの外周縁は、封止部13,14A,15の内側に位置し、隙間が設けられている。即ち、辺部折返部26,27を折り曲げた状態で、第1および第2金属板材11A,11Bの内側縁より内側にコア材31A〜31Cの外周縁が位置する寸法設定である。
【0028】
図3に示すように、金属箔38A、38Bはコア材31A〜31Cと略同一寸法または小さい寸法で形成される。これら金属箔38A、38Bは、コア材31A〜31Cの間に挟み込んだ状態で配設される。具体的には、下方からコア材31A、金属箔38A、コア材31B、金属箔38B、コア材31Cの順番で積層する。そして、例えば治具を貫通させ、各コア材31A〜31Cの繊維を部分的に絡ませることにより一体化し、一体的に配置可能としている。
【0029】
保持部材50は、1枚の金属板から一体成形されている。保持部材50は、
図5に示すように、基板51と、第1保持部54と、第2保持部58と、固定板62とを備えている。第1保持部54と第2保持部58とは、断面視で略S字状に形成されている。なお、
図5中、基板51を基準に、固定板62が位置する方向(保持部材50を取付面5に取り付ける方向)を奥側、これと反対方向を手前側という。
【0030】
基板51はT字形状であり、基板51の上部に位置し、長手方向外方に突出する突出板52を備えている。
【0031】
第1保持部54は、基板51の手前側で真空断熱パネル10を厚さ方向および縦方向に支持する。第1保持部54は、基板51の中央部を手前側に切り起こして、側面視L字形状に形成されている。第1保持部54は、基板51と第1係止部55と第1押え部56とからなる。第1係止部55は、基板51から手前側に直角に切り起こされ、水平方向に延びている。この構成により、第1係止部55は、真空断熱パネル10の下縁を係止して、真空断熱パネル10を縦方向に支持する。第1押え部56は、第1係止部55の基板51と反対側(手前側)の縁から直角に鉛直上方に延び、基板51と平行に位置している。この構成により、第1押え部56は、基板51との間で真空断熱パネル10の下縁部を挟持して、真空断熱パネル10を厚さ方向に保持する。なお、第1保持部54の形状は、真空断熱パネル10の下縁を係止して保持する限り、特に限定されない。
【0032】
第2保持部58は、基板51の奥側で真空断熱パネル10を厚さ方向および縦方向に支持する。第2保持部58は、基板51と第2係止部59と第2押え部60とからなる。第2係止部59は、基板51の突出板52の下縁を第1保持部54と反対方向(奥側)に折り曲げて形成され、水平方向に延びている。この構成により、第2係止部59には、真空断熱パネル10の上縁が係止し、真空断熱パネル10を縦方向に支持してがたつくのを防止する。第2押え部60は、第2係止部59の基板51と反対側(奥側)の端部から鉛直下方に延び、基板51と平行に位置している。つまり、第2押え部60は基板51よりも奥側に位置している。この構成により、第2押え部60は、基板51との間で真空断熱パネル10の上縁部を挟持し、厚さ方向に保持する。なお、第2保持部58の形状は、真空断熱パネル10の上縁を係止して保持する限り、特に限定されない。
【0033】
固定板(取付け部)62は、基板51の両外側に位置する矩形状である。固定板62は、ねじ孔63を有している。保持部材50は、このねじ孔63に挿通するねじ64により、取付面5に固定される。固定板62は、第2押え部60の外側縁部から第1保持部54と反対方向(奥側)に向かって延びる連結板65を介して、第2押え部60よりも奥側に形成されている。固定板62は、第2押え部60の外側に、第2押え部60と平行に形成されている。
【0034】
次に、保持部材50を用いた真空断熱パネル10の取付面5への固定方法について説明する。なお、本実施形態の取付面5は鉛直方向に延びているが、これに限定されず、縦方向に斜めに延びる取付面5に保持部材50を用いてもよい。
【0035】
まず、固定板62のねじ孔63にねじ64(
図7参照)を挿通し、このねじ64を取付面5にねじ込むことで、複数の保持部材50を取付面5に上下(鉛直方向)および左右(水平方向)に等間隔に固定する。
【0036】
そして、上下一対の保持部材50のうち、下方に位置する保持部材50の第1保持部54に、真空断熱パネル10の下縁を取付面5に沿ってスライドさせて差し込む。同時に、上方に位置する保持部材50の第2保持部58に、真空断熱パネル10の上縁を取付面5に沿ってスライドさせて差し込む。これにより、第1保持部54に支持された上方の真空断熱パネル10の下縁と、第2保持部58に支持された下方の真空断熱パネル10の上縁とを基板51を介して縦方向に重ねて、真空断熱パネル10を取付面5に容易に取り付けることができる。
【0037】
上述した、真空断熱パネル10を第1保持部54および第2保持部58に差し込む方法を、
図5に示す保持部材50を用いて詳述する。まず、1枚目の真空断熱パネル10の下縁角部を第1保持部54に、矢印D1に沿って仮想線h1までスライドさせて差し込む。そして、2枚目の真空断熱パネル10の下縁角部を第1保持部54に、1枚目の真空断熱パネル10と反対側から矢印D2に沿って仮想線h2までスライドさせて差し込む。このように、1枚目と2枚目の真空断熱パネル10を第1保持部54に差し込むことで、仮想線h1とh2との間で、横方向に隣接する真空断熱パネル10の周縁部を重ねることができる。
【0038】
次に、3枚目の真空断熱パネル10の上縁角部を第2保持部58に、矢印D3に沿って仮想線h3までスライドさせて差し込む。最後に、4枚目の真空断熱パネル10の上縁角部を第2保持部58に、3枚目の真空断熱パネル10と反対側から矢印D4に沿って仮想線h4までスライドさせて差し込む。このように、3枚目と4枚目の真空断熱パネル10を第2保持部58に差し込むことで、仮想線h3とh4との間で、横方向に隣接する真空断熱パネル10の周縁部を重ねることができる。
【0039】
上記のように、真空断熱パネル10を取付面5に取り付けると、1つの保持部材50が上下左右に隣接する4枚の真空断熱パネル10の角部を、真空断熱パネル10の周縁部を重ねつつ支持する。
【0040】
具体的には、
図6に示すように、鉛直方向に真空断熱パネル10同士が重なる領域L1が設けられている。この重なる領域L1は、第1係止部55に係止し上方に位置する真空断熱パネル10の下縁部と、第2係止部59に係止し下方に位置する真空断熱パネル10の上縁部とが、基板51を介して重なることで形成されている。従って、真空断熱パネル10同士が重なる領域L1において、真空断熱パネル10自身の放熱を防止できる。また、真空断熱パネル10同士を重ねることで、真空断熱パネル10間に隙間が生じるのを防ぎ、この隙間から取付面5の熱が発散するのを防止できる。
【0041】
また、
図7に示す重なる領域L2は、第1保持部54および第2保持部58に支持され、水平方向に隣接する真空断熱パネル10間に形成されている。この重なる領域L2は、2つの重なる領域L3とL4(
図8参照)とで形成されている。重なる領域L3では、第1押え部56と基板51との間および第2押え部60と基板51との間に押さえられた水平方向に隣接する真空断熱パネル10の傾斜部33同士が当接して重なっている。重なる領域L4では、前記水平方向に隣接する真空断熱パネル10のうち、一方の真空断熱パネル10の辺部折返部28と他方の真空断熱パネル10の表面とが重なっている。これにより、重なる領域L1に加えて、重なる領域L3,L4における真空断熱パネル10自身の放熱を防止できる。また、真空断熱パネル10間に隙間が生じるのを防ぎ、この隙間から取付面5の熱が発散するのを防止できる。
【0042】
なお、本発明の保持部材は前記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。
【0043】
図9に、第2実施形態に係る保持部材70を示す。この保持部材70は、側面視がS字形状であり、基板71と第1保持部72と第2保持部76とねじ部79とを有する。この保持部材70は、ねじ部79を取付面5にねじ込むことで取付面5に固定される。以下、保持部材70を取付面5にねじ込む方向を奥側、これと反対方向を手前側という。
【0044】
第1保持部72は、基板71の下端から手前側に湾曲する第1係止部73と、第1係止部73から手前側上方に傾斜して延びる第1押え部74とからなる。第1保持部72と基板71とは、上方が開口した側面視がU字形状に形成されている。
【0045】
第2保持部76は、基板71の上端から奥側に湾曲する第2係止部77と、第2係止部77から奥側下方に傾斜して延びる第2押え部78とからなる。第2保持部76と基板71とは、下方が開口した側面視が逆U字形状に形成されている。ねじ部79は、第2押え部78の奥側面の中央に溶接して設けられ、奥側に向かって延びている。
【0046】
この保持部材70を用いて真空断熱パネル10を取付面5に固定すると、第1係止部73に係止する上方の真空断熱パネル10と、第2係止部77に係止する下方の真空断熱パネル10とが、基板71を介して鉛直方向に重なる。また、第1保持部72および第2保持部76に支持され、水平方向に隣接する真空断熱パネル10の周縁部を重ねる。従って、第1実施形態の保持部材50と同様の効果を得ることができ、かつ、保持部材70の構成を簡単にすることで製造コストを削減できる。
【0047】
図10aおよび
図10bに、第3実施形態に係る保持部材80を示す。この保持部材80は、水平方向に延びており、基板81と第1保持部82と第2保持部86と固定板89(取付け部)とを有する。第1保持部82と第2保持部86とは、断面視でS字形状に形成されている。この保持部材80は、固定板89に形成されたねじ孔90にねじ91を挿通し、このねじ91を取付面5にねじ込むことで取付面5に固定される。以下、保持部材80を取付面5にねじ込む方向を奥側、これと反対方向を手前側という。
【0048】
第1保持部82は、基板81の下端から手前側に湾曲する第1係止部83と、第1係止部83から鉛直上方に延びる第1押え部84とからなる。第1保持部82と基板81とは、上方が開口した側面視がU字形状に形成されている。
【0049】
第2保持部86は、基板81の上端から奥側に湾曲する第2係止部87と、第2係止部87から鉛直下方に延びる第2押え部88とからなる。第2保持部86と基板81とは、下方が開口した側面視が逆U字形状に形成されている。
【0050】
固定板89は、第2押え部88の下端を奥側にU字形状に折り曲げて形成されており、第2係止部87よりも上方に延びている。固定板89には、一対のねじ孔90が形成されている。
【0051】
この保持部材80を用いて真空断熱パネル10を取付面5に固定すると、第1係止部83に係止する上方の真空断熱パネル10と、第2係止部87に係止する下方の真空断熱パネル10とが、基板81を介して鉛直方向に重なる(
図10b中、重なる領域L5参照)。また、第1保持部82および第2保持部86に支持され、水平方向に隣接する真空断熱パネル10の周縁部を重ねる。従って、第1実施形態の保持部材50と同様の効果を得ることができ、かつ、保持部材80の構成を簡単にすることで製造コストを削減できる。また、保持部材80は水平方向に延びているので、真空断熱パネル10をより安定して支持できる。