(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
pn接合を有する半導体素子と、前記半導体素子の一端にはんだを介して電気的に接続された第1の端子導体と、前記半導体素子の他端にはんだを介して電気的に接続された第2の端子導体とを有する半導体装置を検査する半導体検査装置であって、
前記半導体装置の前記第1の端子導体に電気的に接続可能な第1の接続端子と、
前記半導体装置の前記第2の端子導体に電気的に接続可能な第2の接続端子と、
一端が前記第1の接続端子に電気的に接続され、他端が前記第2の接続端子に電気的に接続された第1の電流源と、
一端が前記第1の接続端子に電気的に接続され、他端が前記第2の接続端子に電気的に接続された第2の電流源と、
一端が前記第1の接続端子に電気的に接続され、他端が前記第2の接続端子に電気的に接続され、前記第1および第2の接続端子間の電圧を検出する電圧検出部と、
前記半導体素子の静電容量に蓄積された電荷を強制的に放電可能に構成された強制放電部と、
前記第1の電流源、前記第2の電流源および前記強制放電部を制御する制御部と、を備え、
前記半導体装置を検査する際、
前記半導体装置の前記第1の端子導体は前記第1の接続端子に電気的に接続され、前記第2の端子導体は前記第2の接続端子に電気的に接続され、
前記制御部は、前記第1の電流源を第1の時間にわたって前記半導体装置の前記第1の端子導体から前記第2の端子導体の方向に流れるプローブ電流を出力するように制御し、前記第2の電流源を前記第1の時間に含まれる第2の時間にわたって前記半導体装置の前記第1の端子導体から前記第2の端子導体の方向に流れ且つ前記プローブ電流よりも大きい発熱電流を出力するように制御し、前記強制放電部を、前記第2の時間が終了した後、所定の放電時間にわたって前記半導体素子の前記静電容量に蓄積された電荷を放電するように制御し、前記第1の時間内であり且つ前記第2の時間が始まる前に前記電圧検出部により検出された第1の電圧と、前記所定の放電時間に続く前記第1の電流源により前記半導体素子の前記静電容量を充電する充電時間が経過した後に前記電圧検出部により検出された第2の電圧との間の差分に基づいて前記半導体装置の良否を判定する、
ことを特徴とする半導体検査装置。
前記強制放電部は、一端が前記第1の接続端子に電気的に接続され、他端が前記第2の接続端子に電気的に接続されたスイッチング素子を有し、前記制御部は、前記第2の時間が終了した後、前記所定の放電時間にわたって前記一端および前記他端の間が導通状態になるように前記スイッチング素子を制御することを特徴とする請求項1に記載の半導体検査装置。
前記制御部は、前記所定の放電時間の経過後、前記プローブ電流の値を大きくするように前記第1の電流源を制御し、前記電圧検出部により検出された電圧の時間変化率が所定の値よりも小さくなると、前記プローブ電流の値を元の値に戻すように前記第1の電流源を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半導体検査装置。
前記制御部は、前記半導体素子の前記静電容量に蓄積された電荷を放電している間に前記電圧検出部により検出された電圧の時間変化率が所定の値よりも大きくなると、放電を停止するように前記強制放電部を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の半導体検査装置。
前記制御部は、前記発熱電流を切るように前記第2の電流源を制御してから所定の待ち時間が経過した後、前記半導体素子の静電容量に蓄積された電荷を放電するように前記強制放電部を制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の半導体検査装置。
前記制御部は、前記発熱電流を切るように前記第2の電流源を制御し前記発熱電流が所定の値まで低下した後、前記半導体素子の静電容量に蓄積された電荷を放電するように前記強制放電部を制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の半導体検査装置。
pn接合を有する半導体素子と、前記半導体素子の一端にはんだを介して電気的に接続された第1の端子導体と、前記半導体素子の他端にはんだを介して電気的に接続された第2の端子導体とを有する半導体装置を検査する方法であって、
前記半導体装置の前記第1の端子導体から前記第2の端子導体の方向にプローブ電流を流している状態における、前記第1および第2の端子導体間の第1の電圧を検出する工程と、
前記第1の電圧を検出した後、前記半導体装置の前記第1の端子導体から前記第2の端子導体の方向に前記プローブ電流よりも大きい発熱電流を流し、前記半導体素子を発熱させる工程と、
前記発熱電流を切った後、前記半導体素子の静電容量に蓄積された電荷を強制的に放電させる放電工程と、
前記放電工程の終了後、前記半導体素子の前記静電容量を前記プローブ電流により充電する充電工程と、
前記充電工程の終了後、前記半導体装置に前記プローブ電流を流している状態における、前記第1および第2の端子導体間の第2の電圧を検出する工程と、
前記第1の電圧と前記第2の電圧との間の差分を求め、前記差分に基づいて前記半導体装置の良否を判定する工程と、
を有することを特徴とする半導体検査方法。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子を樹脂封止した半導体装置に対して、半導体素子と端子導体とを電気的に接続するはんだ内にボイド(はんだボイド)が無いかどうかを検査している。
図7(a)は、この検査における半導体装置の端子間電圧(以下、単に「電圧」ともいう。)の波形を示している。但し、
図7(a)の電圧波形は、半導体素子の静電容量の影響を無視している。
【0003】
検査では、端子間電圧測定用の電流(以下、「プローブ電流」ともいう。)を半導体素子に流した状態下でパルス状の大電流(以下、「発熱電流」ともいう。)を流すことによって半導体素子を発熱させる。
図7(a)では、時刻t
0から時刻t
4までの間プローブ電流を流し、時刻t
1から時刻t
2までの間発熱電流を流している。電圧Vm
1は、発熱電流を流す前の端子間電圧であり、電圧Vm
2は、発熱電流を切った後の時刻t
3に測定した端子間電圧である。
【0004】
この端子間電圧は、半導体素子の直流抵抗成分を反映した値となる。よって、
図7(a)に示すように、時刻t
2で発熱電流を切った後の半導体装置の冷却過程において、半導体素子中のキャリア濃度の低下とともに、端子間電圧は、発熱電流が流れる前の電圧Vm
1に収束するように上昇していく。
【0005】
冷却過程における端子間電圧の上昇スピードは、半導体装置の熱回復特性を反映したものになる。はんだボイドが存在する場合には、熱せられた空気がはんだボイド内に籠もる。このボイド内の高温の空気により半導体装置は冷却されづらいため、端子間電圧の上昇スピードは遅い。一方、はんだボイドがない場合には、半導体装置は冷却され易いため、端子間電圧の上昇スピードは速い。
【0006】
上記の現象を利用して、冷却過程における電圧Vm
2と発熱電流を流す前の電圧Vm
1との差分ΔVF(=Vm
1−Vm
2)が所定の判定閾値よりも小さい場合に、はんだ内にボイドがないと判定することが可能である。
【0007】
なお、特許文献1には、上記の方法と同様、半導体装置の発熱前後における電圧変化分に基づいて、はんだボイドの大きさを評価する検査方法が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ダイオード素子などのpn接合を有する半導体素子を備える半導体装置を上記の方法で検査する場合、半導体素子の静電容量に起因して、信頼性の高い検査を行うことが実際上困難であった。このことについて、
図7(b)を用いて詳しく説明する。
図7(b)は、従来の半導体検査装置で検査した場合における端子間電圧の実際の波形図である。
【0010】
図7(b)に示すように、時刻t
2に発熱電流を切った後、半導体素子のpn接合に伴う静電容量(具体的には、接合容量および拡散容量)などの影響により、端子間電圧は静電容量に基づく時定数でゆっくりと低下することになる。端子間電圧の立ち下がり過程では、半導体装置の熱回復特性と静電容量の電荷放出特性の両方が足しあわされた電圧が測定されることになる。このため、端子間電圧の測定により、はんだボイドによる熱回復特性の差を読み取ることができない。
【0011】
よって、端子間電圧の測定は、端子間電圧が十分に低下してから行うことになる。しかしながら、発熱電流を切ってから時間が経過するにつれて、はんだボイドが端子間電圧に与える影響(即ち、はんだボイドに起因する半導体装置の熱回復特性の差)が小さくなる。このため、信頼性の高い検査を行うことが困難になるという課題があった。
【0012】
そこで、本発明は、半導体素子と端子導体とを電気的に接続するはんだについて信頼性の高いはんだボイドの検査を行い、半導体装置の良否を精度良く判定することが可能な半導体検査装置および半導体検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る半導体検査装置は、
pn接合を有する半導体素子と、前記半導体素子の一端にはんだを介して電気的に接続された第1の端子導体と、前記半導体素子の他端にはんだを介して電気的に接続された第2の端子導体とを有する半導体装置を検査する半導体検査装置であって、
前記半導体装置の前記第1の端子導体に電気的に接続可能な第1の接続端子と、
前記半導体装置の前記第2の端子導体に電気的に接続可能な第2の接続端子と、
一端が前記第1の接続端子に電気的に接続され、他端が前記第2の接続端子に電気的に接続された第1の電流源と、
一端が前記第1の接続端子に電気的に接続され、他端が前記第2の接続端子に電気的に接続された第2の電流源と、
一端が前記第1の接続端子に電気的に接続され、他端が前記第2の接続端子に電気的に接続され、前記第1および第2の接続端子間の電圧を検出する電圧検出部と、
前記半導体素子の静電容量に蓄積された電荷を強制的に放電可能に構成された強制放電部と、
前記第1の電流源、前記第2の電流源および前記強制放電部を制御する制御部と、を備え、
前記半導体装置を検査する際、
前記半導体装置の前記第1の端子導体は前記第1の接続端子に電気的に接続され、前記第2の端子導体は前記第2の接続端子に電気的に接続され、
前記制御部は、前記第1の電流源を第1の時間にわたって前記半導体装置の前記第1の端子導体から前記第2の端子導体の方向に流れるプローブ電流を出力するように制御し、前記第2の電流源を前記第1の時間に含まれる第2の時間にわたって前記半導体装置の前記第1の端子導体から前記第2の端子導体の方向に流れ且つ前記プローブ電流よりも大きい発熱電流を出力するように制御し、前記強制放電部を、前記第2の時間が終了した後、所定の放電時間にわたって前記半導体素子の前記静電容量に蓄積された電荷を放電するように制御し、前記第1の時間内であり且つ前記第2の時間が始まる前に前記電圧検出部により検出された第1の電圧と、前記所定の放電時間に続く前記第1の電流源により前記半導体素子の前記静電容量を充電する充電時間が経過した後に前記電圧検出部により検出された第2の電圧との間の差分に基づいて前記半導体装置の良否を判定する、
ことを特徴とする。
【0014】
また、前記半導体検査装置において、
前記強制放電部は、一端が前記第1の接続端子に電気的に接続され、他端が前記第2の接続端子に電気的に接続されたスイッチング素子を有し、前記制御部は、前記第2の時間が終了した後、前記所定の放電時間にわたって前記一端および前記他端の間が導通状態になるように前記スイッチング素子を制御するようにしてもよい。
【0015】
また、前記半導体検査装置において、
前記強制放電部は、前記スイッチング素子に直列接続された抵抗をさらに有するようにしてもよい。
【0016】
また、前記半導体検査装置において、
前記制御部は、前記所定の放電時間の経過後、前記プローブ電流の値を大きくするように前記第1の電流源を制御し、前記電圧検出部により検出された電圧の時間変化率が所定の値よりも小さくなると、前記プローブ電流の値を元の値に戻すように前記第1の電流源を制御するようにしてもよい。
【0017】
また、前記半導体検査装置において、
前記制御部は、前記半導体素子の前記静電容量に蓄積された電荷を放電している間に前記電圧検出部により検出された電圧の時間変化率が所定の値よりも大きくなると、放電を停止するように前記強制放電部を制御するようにしてもよい。
【0018】
また、前記半導体検査装置において、
前記制御部は、前記発熱電流を切るように前記第2の電流源を制御してから所定の待ち時間が経過した後、前記半導体素子の静電容量に蓄積された電荷を放電するように前記強制放電部を制御するようにしてもよい。
【0019】
また、前記半導体検査装置において、
前記制御部は、前記発熱電流を切るように前記第2の電流源を制御し前記発熱電流が所定の値まで低下した後、前記半導体素子の静電容量に蓄積された電荷を放電するように前記強制放電部を制御するようにしてもよい。
【0020】
また、前記半導体検査装置において、
前記半導体素子は、ダイオード素子であるようにしてもよい。
【0021】
本発明に係る半導体検査方法は、
pn接合を有する半導体素子と、前記半導体素子の一端にはんだを介して電気的に接続された第1の端子導体と、前記半導体素子の他端にはんだを介して電気的に接続された第2の端子導体とを有する半導体装置を検査する方法であって、
前記半導体装置の前記第1の端子導体から前記第2の端子導体の方向にプローブ電流を流している状態における、前記第1および第2の端子導体間の第1の電圧を検出する工程と、
前記第1の電圧を検出した後、前記半導体装置の前記第1の端子導体から前記第2の端子導体の方向に前記プローブ電流よりも大きい発熱電流を流し、前記半導体素子を発熱させる工程と、
前記発熱電流を切った後、前記半導体素子の静電容量に蓄積された電荷を強制的に放電させる放電工程と、
前記放電工程の終了後、前記半導体素子の前記静電容量を前記プローブ電流により充電する充電工程と、
前記充電工程の終了後、前記半導体装置に前記プローブ電流を流している状態における、前記第1および第2の端子導体間の第2の電圧を検出する工程と、
前記第1の電圧と前記第2の電圧との間の差分を求め、前記差分に基づいて前記半導体装置の良否を判定する工程と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、発熱電流を切った後、半導体素子の静電容量に蓄積された電荷を所定の放電時間にわたって強制的に放電させることで、半導体装置の端子間電圧の立ち下がり時間を大幅短縮することができる。さらに、本発明では、放電時間に続く充電時間が経過した後に検出された第2の電圧を用いて第1の電圧との差分を求めることで、第1の電流源による静電容量の充電による影響を含まない差分を求めることができる。
【0023】
これにより、発熱電流を切ってから従来よりも早いタイミングで、半導体装置の熱回復特性を反映した第2の電圧を測定することができるようになる。その結果、本発明によれば、半導体素子と端子導体とを電気的に接続するはんだについて信頼性の高いはんだボイドの検査を行い、半導体装置の良否を精度良く判定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る実施形態について説明する。
【0026】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る半導体検査装置1について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体検査装置1の概略的な構成図を示している。半導体検査装置1は、はんだボイドの検査を行い、半導体装置30の良否を判定する検査装置である。
【0027】
半導体検査装置1について詳しく説明する前に、検査対象の半導体装置について説明する。
図2は、検査対象の半導体装置30の一例を示す一部断面図(半導体素子31を除く断面図)を示している。
【0028】
図2に示すように、半導体装置30は、半導体素子31と、半導体素子31の一端にはんだ32を介して電気的に接続された端子導体33と、半導体素子31の他端にはんだ32を介して電気的に接続された端子導体34とを有する。
【0029】
端子導体33は、例えば、はんだ32により半導体素子31の一端に接続された金属ワイヤ33aと、この金属ワイヤ33aに接続されたリード端子33bとからなる。同様に、端子導体34は、例えば、はんだ32により半導体素子31の他端に接続された金属ワイヤ34aと、この金属ワイヤ34aに接続されたリード端子34bとからなる。
【0030】
半導体素子31は、pn接合を有する半導体素子であり、例えばダイオード素子である。ダイオード素子は、pn接合型ダイオードであってもよいし、MOSキャパシタであってもよい。
【0031】
半導体装置30は、半導体素子31としてダイオード素子を有する場合、端子導体33はダイオード素子のアノードに電気的に接続され、端子導体34はカソードに電気的に接続される。
【0032】
次に、半導体検査装置1の構成について
図1を参照して説明する。
【0033】
半導体検査装置1は、接続端子2と、接続端子3と、電流源4と、電流源5と、電圧検出部6と、強制放電部7と、制御部8とを備えている。
【0034】
接続端子2は半導体装置30の端子導体33に電気的に接続可能な端子であり、接続端子3は半導体装置30の端子導体34に電気的に接続可能な端子である。即ち、半導体検査装置1が半導体装置30を検査する際、半導体装置30の端子導体33は接続端子2に電気的に接続され、端子導体34は接続端子3に電気的に接続される。
【0035】
電流源4は、プローブ電流を流すための電流源であり、一端が接続端子2に電気的に接続され、他端が接続端子3に電気的に接続されている。また、電流源4は、制御部8の端子Im_STBに接続されており、端子Im_STBが出力する設定値に応じた電流を半導体装置30に流す。
【0036】
電流源5は、発熱電流を流すための電流源であり、一端が接続端子2に電気的に接続され、他端が接続端子3に電気的に接続されている。また、電流源5は、制御部8の端子IF_STBに接続されており、端子IF_STBが出力する設定値に応じた電流を半導体装置30に流す。
【0037】
電圧検出部6は、一端が接続端子2に電気的に接続され、他端が接続端子3に電気的に接続されており、接続端子2および接続端子3間の電圧(即ち、半導体装置30の端子間電圧VF)を検出する。電圧検出部6は、例えば、デジタルマルチメータから構成される。電圧検出部6は、測定した電圧の値をA/D変換した後、制御部8に送信してもよい。
【0038】
強制放電部7は、半導体素子31の静電容量に蓄積された電荷を強制的に放電することが可能なように構成されている。ここで、半導体素子31の静電容量に蓄積された電荷とは、半導体素子31のpn接合に伴う静電容量、即ち、接合容量および拡散容量に蓄積された電荷のことである。
【0039】
図3に強制放電部7の具体的な構成例を示す。強制放電部7は、一端が接続端子2に電気的に接続され、他端が接続端子3に電気的に接続されたスイッチング素子7aを有する。スイッチング素子7aの種類は、特に限定されるものではないが、例えば、p型MOSFETなどの半導体スイッチである。スイッチング素子7aを導通状態にして、半導体装置30の端子導体33と端子導体34とを電気的に接続することにより、半導体素子31に蓄積された電荷を強制的に放電させることができる。
【0040】
なお、強制放電部7は、
図3に示すように、スイッチング素子7aに直列接続された抵抗7bをさらに有することが好ましい。この抵抗7bにより、強制放電時に、半導体素子31に蓄えられた静電エネルギーが消費される。よって、半導体素子31の静電容量と半導体検査装置1に含まれる寄生インダクタンスとによって強制放電時に発生し得る発振現象を抑制し、端子間電圧の立ち上がり速度が低下することを防止できる。なお、抵抗7bの抵抗値が大きすぎると強制放電の速度が低下し、却って端子間電圧の立ち下がりが遅くなる。このため、抵抗7bの抵抗値としては適当な値を選択することが好ましい。
【0041】
制御部8は、電流源4、電流源5および強制放電部7を制御するものであり、マイクロコンピュータ等で構成される。
【0042】
また、制御部8は、
図1に示すように、端子IF_STB、端子VF_dct、端子Qdrおよび端子Im_STBを有する。
【0043】
端子IF_STBは、電流源5が出力する発熱電流の設定値を出力する端子である。端子VF_dctは、電圧検出部6により検出された電圧値が入力される端子である。端子Qdrは、強制放電部7に接続され、強制放電部7の動作を制御するための端子である。例えば、端子Qdrはスイッチング素子7aのゲート端子に接続される。端子Im_STBは、電流源4が出力するプローブ電流の設定値を出力する端子である。
【0044】
次に、上記構成を有する半導体検査装置1による半導体装置30の検査について
図4を参照して説明する。
図4(a)は半導体装置30に流す電流の波形図であり、
図4(b)は半導体装置30の端子間電圧の波形図である。なお、
図4(b)において、時刻t
2から時刻t
m2までの電圧波形は概略的なものであり、より正確には後述の
図5に示す波形になる。
【0045】
半導体検査装置1が半導体装置30を検査する際、制御部8は以下のように動作する。
【0046】
制御部8は、
図4(a)に示すように、時刻t
0から時刻t
3までの時間(以下、「第1の時間」ともいう。)にわたってプローブ電流(Im)を出力するように電流源4を制御する。プローブ電流は、半導体装置30の端子導体33から端子導体34の方向に流れる一定の電流である。具体的な動作として、制御部8は、第1の時間のあいだ、端子Im_STBからプローブ電流の設定値を出力する。
【0047】
また、制御部8は、
図4(a)に示すように、時刻t
1から時刻t
2までの時間(以下、「第2の時間」ともいう。)にわたって発熱電流(IF)を出力するように電流源5を制御する。第2の時間は、第1の時間に含まれる。発熱電流は、半導体素子31を発熱させるための電流であって、半導体装置30の端子導体33から端子導体34の方向に流れ、且つプローブ電流よりも大きい電流である。具体的な動作として、制御部8は、第2の時間のあいだ、端子IF_STBから発熱電流の設定値を出力する。
【0048】
第2の時間が終了した後、制御部8は、所定の放電時間(以下、「電荷放電時間」ともいう。)にわたって半導体素子31の静電容量に蓄積された電荷を放電するように強制放電部7を制御する。例えば、制御部8は、スイッチング素子7aを制御して、一端および他端の間が導通状態になるようにする。具体的な動作として、制御部8は、電荷放電時間のあいだ、端子Qdrからスイッチング素子7aを導通状態にするための制御信号を出力する。
【0049】
制御部8は、
図4(b)に示すように、測定時刻t
m1に電圧検出部6により検出された電圧Vm
1と、測定時刻t
m2に電圧検出部6により検出された電圧Vm
2との間の差分ΔVFを求める。ここで、測定時刻t
m1は、第1の時間内であり且つ第2の時間が始まる前の時刻である。測定時刻t
m2は、充電時間が経過した後の時刻である。この充電時間は、電荷放電時間に続く時間であり、半導体素子31の静電容量を電流源4により充電する時間である。
【0050】
なお、電圧検出部6が上記電圧の差分ΔVFを求め、求めた差分を制御部8に送信するようにしてもよい。
【0051】
制御部8は、差分ΔVFに基づいて半導体装置30の良否を判定する。具体的には、制御部8は、差分ΔVFが所定の判定閾値よりも小さい場合に、半導体装置30を良品と判定し、そうでない場合に半導体装置30を不良品と判定する。なお、ここでいう「良品」の意味は、半導体装置30のはんだ32内にはんだボイドがない、あるいは、はんだボイドがあったとしても、その数や大きさが所定の基準よりも小さいということである。
【0052】
ここで、検査中における半導体装置30の端子間電圧VFについて、
図5を参照して詳しく説明する。
図5は、半導体検査装置1の動作を説明するための各種信号等の波形図である。
【0053】
時刻t
2において、制御部8は、電流源5が出力する発熱電流を切るために、端子IF_STBから出力する信号を変化させる。例えば、
図5に示すように、端子IF_STBから出力する信号をLレベル信号からHレベル信号に変化させる。
【0054】
発熱電流IFは、
図5に示すように、端子IF_STBの信号が変化した後、瞬時に低下するわけではない。
図5中の時間Taは、発熱電流の立ち下がり時間に所定のマージンを付加した時間である。この時間Taは、例えば30μ秒である。
【0055】
時間Taが経過すると、端子Qdrから出力される信号がアクティブになり、スイッチング素子7aは導通状態となる。これにより、強制放電部7による強制放電が始まるため、端子間電圧VFは急速に低下する。半導体素子31に蓄えられた電荷の放出が終了すると、端子間電圧はほぼ一定となる。
図5中の時間Tbは、半導体素子31の静電容量に蓄積された電荷を強制的に放電させる時間に所定のマージンを付加した時間であり、電荷放電時間に対応する。この時間Tbは、例えば90μ秒である。
【0056】
時間Tbが経過すると、端子Qdrから出力される信号が非アクティブとなり、スイッチング素子7aは遮断状態となる。これにより、半導体素子31の静電容量が電流源4のプローブ電流により充電されるため、端子間電圧VFは上昇する。
図5中の時間Tcは、半導体素子31の静電容量をプローブ電流により充電する時間に所定のマージンを付加した時間であり、充電時間に対応する。この時間Tcは、例えば60μ秒である。なお、端子間電圧の時間変化率(dVF/dt)は、
図5に示すように、半導体素子31の静電容量の充電が終わりに近づくと小さくなる。
【0057】
なお、時間Tcでの端子間電圧の立ち上がり波形は、半導体装置30の熱回復特性による上昇分だけでなく、半導体素子31の充電による上昇分も含んでしまう。よって、電圧Vm
2は、電流源4により半導体素子31が充電された後に行う必要がある。
【0058】
なお、時間Tbおよび時間Tcの所定のマージンは、検査対象となる複数の半導体装置30の半導体素子31の静電容量のバラツキを考慮して値が決められる。
【0059】
時間Tcの経過後電圧Vm
2が測定可能となる。したがって、発熱電流を切る時刻t
2から電圧Vm
2が測定可能になるまでの時間Tは、Ta、TbおよびTcの和となる。この時間Tは、
図5に示すように、Ta、TbおよびTcの和に所定のマージン(Td)を含めた時間でもよい。例えば、時間Tは、200μ秒(=30μ秒(Ta)+90μ秒(Tb)+60μ秒(Tc)+20μ秒(Td))である。
【0060】
制御部8は、発熱電流を切る信号を電流源5に送信した時刻t
2からの経過時間をカウントし、時間Tが経過したときに電圧検出部6から受信した電圧を電圧Vm
2とし、この電圧Vm
2と電圧Vm
1との差分ΔVFを算出する。
【0061】
次に、本実施形態に係る半導体装置30の検査方法について説明する。
【0062】
まず、半導体装置30の端子導体33から端子導体34の方向にプローブ電流を流し、その状態における端子導体33と端子導体34との間の電圧Vm
1を検出する。
【0063】
次に、半導体装置30の端子導体33から端子導体34の方向にプローブ電流よりも大きい発熱電流を流し、半導体素子31を発熱させる。
【0064】
次に、発熱電流を切り、その後、半導体素子31の静電容量に蓄積された電荷を強制的に放電させる。この放電は、例えば、端子導体33および端子導体34を電気的に接続することにより行う。
【0065】
次に、半導体素子31の静電容量をプローブ電流により充電する。
【0066】
次に、半導体装置30にプローブ電流を流している状態における、端子導体33と端子導体34との間の電圧Vm
2を検出する。
【0067】
次に、電圧Vm
1と電圧Vm
2との間の差分ΔVFを求め、この差分ΔVFに基づいて半導体装置30の良否を判定する。判定方法の詳細は前述したので、ここでの説明は省略する。
【0068】
上記のように、本実施形態では、発熱電流を切った後、半導体素子31のpn接合に伴う静電容量に蓄積された電荷を強制的に放電させることで、半導体装置30の端子間電圧(VF)の立ち下がり時間を大幅短縮する。さらに、充電時間が経過した後に検出された電圧Vm
2を用いて電圧Vm
1との差分を求めることで、電流源4による静電容量の充電による影響を含まない差分を求める。
【0069】
これにより、半導体素子31の静電容量に伴う端子間電圧VFの長い立ち下がりを待つ必要がなくなり、発熱電流を切ってから従来よりも早いタイミングで電圧Vm
2を測定することができるようになる。換言すれば、半導体素子31の静電容量による影響を排除した半導体装置30の真の熱回復特性を測定できる。その結果、本実施形態によれば、半導体素子31と端子導体33,34とを電気的に接続するはんだ32について信頼性の高いはんだボイドの検査を行い、半導体装置30の良否を精度良く判定することができる。
【0070】
さらに、本実施形態によれば、従来よりも早いタイミングで電圧Vm
2を測定するため、電圧の差分ΔVFとして比較的大きい値を得ることができる。このため、半導体素子31を従来ほど発熱させる必要がなくなる。よって、発熱電流を流す時間(時刻t
1〜時刻t
2)を短縮することで、半導体検査装置1の省電力化を図ることができる。あるいは、発熱電流の電流値を下げることで、半導体検査装置1を小型化することができる。
【0071】
なお、制御部8は、電荷放電時間の経過後、プローブ電流Imの値を大きくするように電流源4を制御することが好ましい。この場合、制御部8は、電圧検出部6により検出された電圧の時間変化率(dVF/dt)が所定の値よりも小さくなると、プローブ電流の値を元の値に戻すように電流源4を制御する。プローブ電流Imの値を大きくすることで、時間Tcに含まれるマージンを減らし時間Tcを短縮できる。その結果、測定時刻t
m2をさらに早めることができ、より高精度で信頼性の高い検査を行うことができる。
【0072】
また、制御部8は、半導体素子31の静電容量に蓄積された電荷を強制放電している間に電圧検出部6により検出された電圧の時間変化率(dVF/dt)が所定の値よりも大きくなると、放電を停止するように強制放電部7を制御してもよい。これにより、時間Tbに含まれるマージンを減らし時間Tbを短縮できる。その結果、測定時刻t
m2をさらに早めることができ、より高精度で信頼性の高い検査を行うことができる。
【0073】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る半導体検査装置について、
図6を参照して説明する。
図6は、第2の実施形態に係る半導体検査装置1Aの概略的な構成図である。以下、第1の実施形態との相違点を中心に第2の実施形態について説明する。
【0074】
半導体検査装置1Aは、接続端子2と、接続端子3と、電流源4と、電流源5と、電圧検出部6と、強制放電部7と、制御部8とを備えている。
【0075】
半導体検査装置1Aの制御部8は、
図6に示すように、端子IF_STB、端子VF_dct、端子Qdrおよび端子Im_STBに加え、端子IF_dctおよび接地端子GNDを有する。
【0076】
端子IF_dctは、電流源5に接続されており、発熱電流が所定の電圧値未満になったときに出力される信号を受信する端子である。この所定の電圧値は、抵抗5d,5eの抵抗値に基づく値である。
【0077】
接地端子GNDは、接地に接続された端子である。なお、抵抗5eが接地に直接接続される場合には、制御部8は接地端子GNDを有さなくてもよい。
【0078】
半導体検査装置1Aの電流源5は、
図6に示すように、電源部5aと、増幅器(オペアンプ)5b,5cと、抵抗5d,5eと、電流検出部5fとを有している。
【0079】
電源部5aは、増幅器5bの出力に基づいて発熱電流を出力する電源である。
【0080】
増幅器5bは、非反転入力端子が端子IF_STBに接続され、反転入力端子が増幅器5cの反転入力端子に接続されている。また、増幅器5bの出力端子は、電源部5aに接続されている。
【0081】
増幅器5cは、非反転入力端子が直列接続された抵抗5dおよび抵抗5eの接続点に接続され、反転入力端子が増幅器5bの反転入力端子に接続されている。また、増幅器5cの出力端子は、制御部8の端子IF_dctに接続されている。
【0082】
抵抗5dおよび抵抗5eは直列接続されており、抵抗5dが端子IF_STBに接続され、抵抗5eが端子GNDに接続されている。抵抗5dと抵抗5eは分圧回路として機能し、端子IF_STBの出力電圧を分圧した電圧を増幅器5cの非反転入力端子に与える。
【0083】
電流検出部5fは、電源部5aから出力された電流値を検出し、その値を増幅器5bの反転入力端子および増幅器5cの反転入力端子に与える。電流検出部5fは、例えば、ホール素子を用いたカレントセンサから構成される。
【0084】
電流源5は、電源部5a、増幅器5bおよび電流検出部5fを有することで、端子IF_STBから出力される設定値に応じた電流を出力するように電源部5aをフィードバック制御する。
【0085】
また、電流源5は、増幅器5cおよび抵抗5d,5eを有することで、発熱電流が所定の値に低下したことを制御部8に通知することができる。より詳しくは、電源部5aの出力する発熱電流が、所定の値まで低下すると、増幅器5cは制御部8の端子IF_dctに信号を出力する。例えば、発熱電流が半減した場合に制御部8にその旨を通知する場合は、抵抗5dと抵抗5eの抵抗値を同じにする。
【0086】
図5に示すように、発熱電流を切るために、時刻t
2において、制御部8の端子IF_STBから出力される信号レベルが変化する。しかしながら、実際には発熱電流IFは瞬時にゼロになるわけではなく、
図6に示すように、ある時間をかけてゼロになる。このため、端子IF_STBから出力される信号を変化させると同時に強制放電部7のスイッチング素子7aを導通状態にすると、スイッチング素子7aに過剰な電流が流れ、スイッチング素子7aが破損するおそれがある。
【0087】
そこで、本実施形態においては、制御部8は、発熱電流を切るように電流源5を制御し発熱電流が所定の値まで低下した後、半導体素子31の静電容量に蓄積された電荷を放電するように強制放電部7を制御する。即ち、制御部8は、端子IF_dctで増幅器5cからの信号を受けると、端子Qdrからスイッチング素子7aを導通状態にする制御信号を出力する。これにより、強制放電の際に、スイッチング素子7aが破損することを防止することができる。
【0088】
なお、上記の方法に代えて、制御部8は、発熱電流を切るように電流源5を制御してから所定の待ち時間(IFオフ待ち時間)が経過した後、半導体素子31の静電容量に蓄積された電荷を放電するように強制放電部7を制御するようにしてもよい。例えば、
図5の時間TaがIFオフ待ち時間に対応する。これにより、強制放電させる際に、スイッチング素子7aが破損することを防止することができる。
【0089】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではない。異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。