特許第6033739号(P6033739)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6033739
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/44 20060101AFI20161121BHJP
   B60N 2/68 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   B60N2/44
   B60N2/68
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-111992(P2013-111992)
(22)【出願日】2013年5月28日
(65)【公開番号】特開2014-231258(P2014-231258A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2015年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 輝充
(72)【発明者】
【氏名】牧口 文哉
(72)【発明者】
【氏名】東 美輝
(72)【発明者】
【氏名】田村 宏
(72)【発明者】
【氏名】野木森 亘
(72)【発明者】
【氏名】小暮 俊介
【審査官】 永石 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−064245(JP,U)
【文献】 特開平11−321413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 − 2/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が腰を下ろすシートクッション部と、乗員が背中を凭せ掛けるシートバック部とを備え、前記シートバック部は、骨格を成すバックフレームと、該バックフレームにおける乗員着座側の面を覆うバックパッドと、該バックパッドにおける乗員着座側の面を覆うシート表皮とを備える乗物用シートにおいて、
前記シートバック部における乗員着座側の前記バックパッドと前記シート表皮との間には、着座乗員の生体情報を検出可能な生体センサが設けられており、
前記バックパッドの裏面側には、前記生体センサが着座乗員から押圧力を受けたとき、その押圧力を前記生体センサの裏面側の全領域に対応する面積を持って支持する支持体を備え、
該支持体は、前記バックパッドより高剛性に形成されており、
前記バックフレームは、前記バックパッドを支持するサポートワイヤを備え、
前記支持体は、前記サポートワイヤに固定された板体であることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
乗員が腰を下ろすシートクッション部と、乗員が背中を凭せ掛けるシートバック部とを備え、前記シートバック部は、骨格を成すバックフレームと、該バックフレームにおける乗員着座側の面を覆うバックパッドと、該バックパッドにおける乗員着座側の面を覆うシート表皮とを備える乗物用シートにおいて、
前記シートバック部における乗員着座側の前記バックパッドと前記シート表皮との間には、着座乗員の生体情報を検出可能な生体センサが設けられており、
前記バックパッドの裏面側には、前記生体センサが着座乗員から押圧力を受けたとき、その押圧力を前記生体センサの裏面側の全領域に対応する面積を持って支持する支持体を備え、
該支持体は、前記バックパッドより高剛性に形成されており、
前記支持体は、前記バックパッドの裏面に一体に付着された硬質フェルトであることを特徴とする乗物用シート。
【請求項3】
請求項において、
前記バックフレームは、前記バックパッドを支持するサポートワイヤを備え、
前記生体センサは、該生体センサに対して着座乗員から押圧力が入る方向で前記サポートワイヤと重ならない位置に配置されていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれかにおいて、
前記シート表皮は、その一部が前記バックパッドにおける乗員着座側に設けられた吊り溝に収容されているインサートワイヤに引き込まれてテンションが付与されて前記バックパッドを覆うように構成されており、
前記生体センサは、該生体センサに対して着座乗員から押圧力が入る方向で前記吊り溝と重ならない位置に配置されていることを特徴とする乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、飛行機等の乗物における乗員の呼吸状態等の生体情報を検出可能とされた乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、自動車乗員の健康状態や睡眠状態を検出するため、乗員の着座シート(乗物用シートに相当)に生体センサを設置して、乗員の脈波状態等の生体情報を検出する技術が開示されている。ここに開示された技術では、生体センサは、着座する乗員に異物感を感じさせないため、着座シートのシート表皮の裏面であり、且つクッションパッドの表面に取り付けられている。また、クッションパッドは、着座シートの骨格部材であるシートフレームに支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−168608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シートフレームは、一般的に枠状のフレーム材やクッションパッド支持用のサポートワイヤの組み合わせによって構成されており、シートフレームに対する生体センサの位置関係によっては、生体センサによる生体情報の検出が精度良くできない問題が生じる。例えば、生体センサがサポートワイヤのような線状体に対応する位置にあると、平板状の生体センサの一部のみがクッションパッドを介して線状体に支持されることになるため、生体センサが乗員の体によって押圧されたとき、生体センサの中で線状体に対応する部分に押圧力が集中し、他の部分では殆ど圧力が検出されないことが起きる。その結果、乗員の生体情報を精度良く検出できない問題が生じる。
このような問題に鑑み本発明の課題は、乗員の生体情報を検出可能とされた乗物用シートにおいて、生体センサを支持するための平面部を予め用意することにより、シートフレーム(シートバック部におけるバックフレーム)に対する生体センサの位置関係に関わらず、乗員の生体情報を精度良く検出可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1発明は、乗員が腰を下ろすシートクッション部と、乗員が背中を凭せ掛けるシートバック部とを備え、前記シートバック部は、骨格を成すバックフレームと、該バックフレームにおける乗員着座側の面を覆うバックパッドと、該バックパッドにおける乗員着座側の面を覆うシート表皮とを備える乗物用シートにおいて、前記シートバック部における乗員着座側の前記バックパッドと前記シート表皮との間には、着座乗員の生体情報を検出可能な生体センサが設けられており、前記バックパッドの裏面側には、前記生体センサが着座乗員から押圧力を受けたとき、その押圧力を前記生体センサの裏面側の全領域に対応する面積を持って支持する支持体を備え、該支持体は、前記バックパッドより高剛性に形成されていることを特徴とする。
第1発明によれば、生体センサは、着座乗員の生体情報の変化に伴う体の動きを受けると、体の動きに伴う押圧力を、バックパッドを介して支持体によって支持される。そのため、生体センサの取付位置がバックフレームの線状体に対応する位置にあっても、生体センサがその影響を受けることが抑制される。即ち、生体センサは、生体センサの裏面側の全領域に対応する面積を持った支持体によって支持されて、乗員の生体情報を精度良く検出することができる。
【0006】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記バックフレームは、前記バックパッドを支持するサポートワイヤを備え、前記支持体は、前記サポートワイヤに固定された板体であることを特徴とする。
第2発明によれば、バックパッドを支持するサポートワイヤに板体を固定することにより容易に支持体を構成することができる。また、バックパッドを支持するためにサポートワイヤに固定されたコンタマットのような板体を既に備えるシートでは、その板体を支持体とすることにより、新たな支持体を設ける必要をなくすことができる。
【0007】
本発明の第3発明は、上記第1発明において、前記支持体は、前記バックパッドの裏面に一体に付着された硬質フェルトであることを特徴とする。
第3発明によれば、バックパッドの裏面に一体に硬質フェルトを付着することにより容易に支持体を構成することができる。また、バックパッドの裏面に一体に付着された硬質フェルトを既に備えるシートでは、その硬質フェルトを支持体とすることにより、新たな支持体を設ける必要をなくすことができる。
【0008】
本発明の第4発明は、上記第1発明において、前記バックフレームは、前記生体センサの裏面側の全領域に対応する面積より大きい面積を持って前記バックパッドを支持するパネルを備え、前記支持体は、前記パネルであることを特徴とする。
第4発明によれば、上記パネルをバックフレームに設けることにより容易に支持体を構成することができる。また、後突時の着座乗員の腰部支持用等のため、生体センサの裏面側の全領域に対応する面積より大きい面積を持ったパネルをバックフレームに既に備えるシートでは、そのパネルを支持体とすることにより、新たな支持体を設ける必要をなくすことができる。
【0009】
本発明の第5発明は、上記第3発明において、前記バックフレームは、前記バックパッドを支持するサポートワイヤを備え、前記生体センサは、該生体センサに対して着座乗員から押圧力が入る方向で前記サポートワイヤと重ならない位置に配置されていることを特徴とする。
第5発明によれば、サポートワイヤの生体センサに与える影響、即ち生体センサの中でサポートワイヤに対応する部分への着座乗員からの押圧力の集中を抑えるのに硬質フェルトの剛性が充分でない場合でも、生体センサは、サポートワイヤと重ならない位置に配置されているため、サポートワイヤが生体センサに影響を与えるのを抑制して、乗員の生体情報を精度良く検出することができる。
【0010】
本発明の第6発明は、上記第1乃至第5発明のいずれかにおいて、前記シート表皮は、その一部が前記バックパッドにおける乗員着座側に設けられた吊り溝に収容されているインサートワイヤに引き込まれてテンションが付与されて前記バックパッドを覆うように構成されており、前記生体センサは、該生体センサに対して着座乗員から押圧力が入る方向で前記吊り溝と重ならない位置に配置されていることを特徴とする。
第6発明によれば、生体センサは、吊り溝と重ならない位置に配置されているため、吊り溝からの制約を受けずに設けることができる。また、生体センサの検出精度が、吊り溝により影響を受けることを抑制することができる。更に、吊り溝に生体センサが影響を与えないので、シート表皮のテンションが、生体センサの影響によりシート表皮の乗員着座表面上の場所において均一でなくなることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態の斜視図である。
図2】上記第1実施形態のバックフレームの斜視図である。
図3】上記第1実施形態のシートバック部の左右方向の中央部における垂直断面図である。
図4】上記第1実施形態のシートバック部の正面図である。
図5】本発明の第2実施形態のシートバック部におけるバックパッドの上下方向の中央部における水平断面図である。
図6】本発明の第3実施形態のバックフレームの斜視図である。
図7】上記第3実施形態のバックフレームの左右方向の中央部における垂直断面図である。
図8】本発明の第4実施形態のシートバック部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
図1〜4は、本発明の第1実施形態を示し、第1実施形態は、本発明を自動車用フロントシートに適用した場合を示している。各図では、矢印によりシートを車両に搭載した際の各方向を示している。以下の説明において、方向に関する記述は、この方向を基準として行うものとする。
図1に示されるように、自動車用フロントシートは、乗員が腰を下ろすシートクッション部2と、乗員が背中を凭せ掛けるシートバック部1とを備え、図2、3に示されるように、シートバック部1は、骨格を成すバックフレーム10と、バックフレーム10における乗員着座側の面を覆う弾性変形可能なバックパッド20と、バックパッド20における乗員着座側の面を覆うシート表皮30とを備える。図1中、3はヘッドレスト部、4はスライド機構であり、以上の自動車用フロントシートの構成は公知である。
【0013】
図2に示されるように、バックフレーム10は、左右両側のサイドフレーム11、11と、アッパパイプ12と、ロアパイプ14とを枠状に組み合わせて構成され、アッパパイプ12に固定されたアッパサブフレーム13と、サイドフレーム11、11に固定されたロアサブフレーム15との間には、ばね材によって形成されたサポートワイヤ16が、左右両側のサイドフレーム11、11間の空間を埋めるように配置されている。更に、サポートワイヤ16の前側(乗員着座側)には、本発明における支持体50を成すコンタマット51が取り付けられている。コンタマット51は、バックパッド20より高剛性の樹脂製であり、図3に示されるように、バックパッド20の後面側をコンタマット51の前面で支持するように配置されている。以上のバックフレーム10及びバックパッド20の構成も公知である。
【0014】
図1、3、4に示されるように、バックパッド20における着座乗員の背中の左右方向の中央部に対応する位置で、上述のようにコンタマット51に支持されている部分に対応して、生体センサ40が設けられている。生体センサ40は、シートバック部1の上下方向における中央部にあって、上下に2個設けられている。しかも、生体センサ40は、シートバック部1における前側(乗員着座側)のバックパッド20とシート表皮30との間に配置されている。更に詳細には、生体センサ40は、バックパッド20の前側(乗員着座側)表面が少し(10mm程度)切り欠かれ、その結果出来たセンサ取付溝の中に収納されている。(詳細は後述の第2実施形態の場合と同様である。)
【0015】
バックパッド20の前側(乗員着座側)表面には、図1、3、4に示されるように、吊り溝21が形成されている。吊り溝21は、公知のものと全く同一であり、バックパッド20の上下方向に沿って2本と、その2本の吊り溝21間をつなぐように左右方向に沿って1本形成されている。この吊り溝21内には、図示を省略したが、インサートワイヤが設けられ、このインサートワイヤによってシート表皮30が吊り込まれてシート表皮30に所定のテンションが付与されるようにされている。このように吊り込まれたシート表皮30には、吊り溝21に沿って吊込線31が形成されている。
上記生体センサ40は、吊り溝21に対して離して配置されている。即ち、生体センサ40は、生体センサ40に対して着座乗員から押圧力が入る方向で吊り溝21と重ならない位置に配置されている。
【0016】
以上のように、生体センサ40は、弾性変形可能なバックパッド20によって支持され、更に、バックパッド20の裏面側は、生体センサ40が着座乗員から押圧力を受けたとき、その押圧力を生体センサ40の裏面側の全領域に対応する面積を持って、コンタマット51によって支持されている。コンタマット51は、バックパッド20より高剛性に形成されているため、生体センサ40は、着座乗員の生体情報である呼吸状態又は心拍状態の変化に伴う体の動きを受けると、体の動きに伴う押圧力を、バックパッド20を介してコンタマット51によって支持される。そのため、生体センサ40の取付位置がバックフレーム10のサポートワイヤ16に対応する位置となるか否かに関わらず、生体センサ40がサポートワイヤ16に対応する位置となった場合に受ける上述のような影響は抑制される。即ち、生体センサ40は、生体センサ40の裏面側の全領域に対応する面積を持ったコンタマット51によって支持されて、着座乗員の呼吸状態又は心拍状態を精度良く検出することができる。
【0017】
以上の第1実施形態のように、コンタマット51を備えたシートでは、そのコンタマット51をバックパッド20を介して生体センサ40を支持する支持体50とすることができ、新たな支持体50を設ける必要をなくすことができる。一方、バックパッド20を支持するためのコンタマット51がなく、サポートワイヤ16によってバックパッド20を直接支持するシートの場合でも、サポートワイヤ16、16間にコンタマット51と同様の板体を固定することにより容易に支持体50を構成することができる。
また、生体センサ40は、生体センサ40に対して着座乗員から押圧力が入る方向で吊り溝21と重ならない位置に配置されているため、吊り溝21からの制約を受けずに設けることができる。また、生体センサ40の検出精度が、吊り溝21により影響を受けることを抑制することができる。更に、吊り溝21に生体センサ40が影響を与えないので、シート表皮30のテンションが、生体センサ40の影響によりシート表皮の乗員着座表面上の場所において均一でなくなることを抑制することができる。
【0018】
<第2実施形態>
図5は、本発明の第2実施形態を示す。第2実施形態が上述の第1実施形態に対して特徴とする点は、支持板50をバックパッド20の裏面の硬質フェルト52によって構成した点にある。その他は両者同一であり、同一部分については同一符号を付して再度の図示及び説明を省略する。
図5において、バックパッド20の裏面(後面)は、硬質フェルト52によって全面が覆われている。硬質フェルト52は、不織布を熱プレスによって成形したものであり、バックパッド20を発泡成形する際に成形型内で、バックパッド20の裏面に接着させている。硬質フェルト52は、バックパッド20を成す発泡ウレタンに比べて高い剛性を備えている。
【0019】
バックパッド20の前側(乗員着座側)表面に設けられた生体センサ40は、第1実施形態において説明したようにバックパッド20の前側表面が少し(10mm程度)切り欠かれ、その結果出来たセンサ取付溝22の中に収納されている。生体センサ40はフィルム状に形成された圧力センサであり、外力により変形されるフィルムの曲り度合により圧力を検出している。生体センサ40の上には、硬質ウレタンパッド41が被せられている。この状態で、硬質ウレタンパッド41の表面は、バックパッド20の表面と面一となり、硬質ウレタンパッド41を含むバックパッド20の表面全体にスラブウレタン(不図示)が被せられている。
図5では図示を省略されているが、バックパッド20の表面上側にはシート表皮(30)が被せられている。
バックパッド20は、硬質フェルト52によって被われた背面側がバックフレーム(10)によって支持されている。具体的には、バックパッド20の左右両側がサイドフレーム11Bによって支持され、左右方向の中央部がサポートワイヤ16Bによって支持されている。このとき、サポートワイヤ16Bは、生体センサ40に対して着座乗員から入る押圧力の方向に関して生体センサ40と重ならない位置に配置されている。
【0020】
第2実施形態によれば、上述の第1実施形態におけるコンタマット51に代えて硬質フェルト52がバックパッド20を介して生体センサ40の裏面側の全領域を支持している。そのため、生体センサ40は、着座乗員の生体情報である呼吸状態又は心拍状態の変化に伴う体の動きを受けると、体の動きに伴う押圧力を、バックパッド20を介して硬質フェルト52によって支持される。従って、上述の第1実施形態の場合と同様に、生体センサ40は、生体センサ40の裏面側の全領域に対応する面積を持った硬質フェルト52によって支持されて、着座乗員の呼吸状態又は心拍状態を精度良く検出することができる。
第2実施形態のように、バックパッド20の裏面に硬質フェルト52を備えたシートでは、その硬質フェルト52をバックパッド20を介して生体センサ40を支持する支持体50とすることができ、新たな支持体50を設ける必要をなくすことができる。一方、バックパッド20の裏面に硬質フェルト52を備えないシートの場合でも、バックパッド20の裏面に硬質フェルト52を設けることにより容易に支持体50を構成することができる。
また、サポートワイヤ16Bの生体センサ40に与える影響、即ち生体センサ40の中でサポートワイヤ16Bに対応する部分への着座乗員からの押圧力の集中を抑えるのに硬質フェルト52の剛性が充分でない場合でも、生体センサ40は、サポートワイヤ16Bと重ならない位置に配置されているため、サポートワイヤ16Bが生体センサ40に影響を与えるのを抑制して、乗員の生体情報を精度良く検出することができる。
【0021】
<第3実施形態>
図6、7は、本発明の第3実施形態を示す。第3実施形態が上述の第1実施形態に対して特徴とする点は、支持板50をバックフレーム10Aに設けられたパネル53によって構成した点にある。その他は両者同一であり、同一部分については同一符号を付して再度の図示及び説明を省略する。
図6、7において、バックフレーム10Aは、第1実施形態におけるバックフレーム10に比べて、アッパパイプ12Aの形状が違うのみで基本的には同一である。バックフレーム10Aでは、バックフレーム10に対応する部分の符号に「A」を追記して示している。
バックフレーム10Aでは、アッパサブフレーム13Aがワイヤによって構成されており、サポートワイヤ16Aは、2本のワイヤ16A、16Aがアッパパイプ12Aとロアサブフレーム15Aとに溶接固定されて設けられている。2本のワイヤ16A、16Aは、アッパサブフレーム13Aにも溶接固定されている。
【0022】
ロアサブフレーム15Aの前面(乗員着座側)には、図示を省略したが第1実施形態の場合と同様のバックパッド(20)に対して支持台を構成するように形成されたパネル53が固定されている。パネル53は、後突時の着座乗員の腰部支持用であり、後突時に着座乗員の腰部が後方に沈み込むのを抑制するように、パネル本体531によって乗員着座側の前面に、バックパッド(20)の裏面を支持する平坦面が形成されている。パネル本体531の前面の中央部には、取付孔532が平坦面を部分的に窪ませた部位に形成され、その取付孔532にロアサブフレーム15Aを貫通したボルト534が貫通され、このボルト534がナット533に締結されている。このようにして、パネル本体531はロアサブフレーム15Aに固定されている。
パネル本体531の平坦面に対応するバックパッド(20)の前面(乗員着座側)には、図示を省略したが第1及び第2実施形態と同様の生体センサ(40)が設けられており、パネル本体531の平坦面は、生体センサ(40)の裏面側の全領域に対応する面積を持つように形成されている。
【0023】
第3実施形態によれば、上述の第1実施形態におけるコンタマット51に代えてパネル53がバックパッド(20)を介して生体センサ(40)の裏面側の全領域を支持している。そのため、生体センサ(40)は、着座乗員の生体情報である呼吸状態又は心拍状態の変化に伴う体の動きを受けると、体の動きに伴う押圧力を、バックパッド(20)を介してパネル53によって支持される。従って、上述の第1実施形態の場合と同様に、生体センサ(40)は、生体センサ(40)の裏面側の全領域に対応する面積を持ったパネル53によって支持されて、着座乗員の呼吸状態又は心拍状態を精度良く検出することができる。
第3実施形態のように、バックパッド(20)の裏面にパネル53を備えたシートでは、そのパネル53をバックパッド(20)を介して生体センサ(40)を支持する支持体50とすることができ、新たな支持体50を設ける必要をなくすことができる。一方、バックパッド(20)の裏面にパネル53を備えないシートの場合でも、バックパッド(20)の裏面にパネル53を設けることにより容易に支持体50を構成することができる。
【0024】
<第4実施形態>
図8は、本発明の第4実施形態を示す。第4実施形態が上述の第1実施形態に対して特徴とする点は、バックパッド20内での生体センサ40の配置の仕方にある。その他は両者同一であり、同一部分については同一符号を付して再度の図示及び説明を省略する。
図8において、生体センサ40は、上下方向に長く形成されたものがバックパッド20の前面(着座乗員側)に2個並べて設けられている。換言すると、図8の生体センサ40は、上記第1実施形態における生体センサ40をバックパッド20の前面上で90度回転して配置したものである。
この場合の生体センサ40は、シート表皮30に吊込線31を形成するためのバックパッド20の前面上の吊り溝21と重ならないように配置されている。第4実施形態の場合、第1実施形態の場合と違い、上下方向の吊り溝21同士の間に左右方向の吊り溝は設けられていない。なお、図示していないが、上記各実施形態と同様に、バックパッド20の裏面側で、生体センサ40の裏面側の全領域に対応する面積を持った支持体(50)が設けられている。
第4実施形態によれば、シートバック部1の前面の面積や吊り溝の配置の関係で、第1実施形態の図4ような配置で生体センサ40が配置できない場合に、比較的小さなスペースで生体センサ40を配置することができる。
【0025】
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、
1.上記実施形態では、生体センサを圧力センサとしたが、他のタイプのセンサとしても良い。
2.上記第2実施形態では、支持体50となる硬質フェルト52をバックパッド20の裏面の全面に設けたが、第2実施形態の場合、硬質フェルト52は、生体センサ40の裏面側の全領域に対応する領域にあれば良く、バックパッド20の裏面に部分的に設けるようにしても良い。
3.上記実施形態では、本発明を自動車用フロントシートに適用したが、自動車用リヤシートに適用しても良い。また、飛行機用、船用、電車用等のシートに適用しても良い。
【符号の説明】
【0026】
1 シートバック部
2 シートクッション部
3 ヘッドレスト部
4 スライド機構
10、10A バックフレーム
11、11A、11B サイドフレーム
12、12A アッパパイプ
13、13A アッパサブフレーム
14、14A ロアパイプ
15、15A ロアサブフレーム
16、16A、16B サポートワイヤ
20 バックパッド
21 吊り溝
22 センサ取付溝
30 シート表皮
31 吊込線
40 生体センサ
41 硬質ウレタンパッド
50 支持体
51 コンタマット(板体)
52 硬質フェルト
53 パネル
531 パネル本体
532 取付孔
533 ナット
534 ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8