(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の研摩材は、芯材と、その表面を被覆する被覆層とを有する研摩砥粒を含んだ構成を具備している。芯材は、研摩砥粒が研摩機能を発現するための主要部位であり、研摩砥粒の中心域に位置している。一方、被覆層は、研摩砥粒の最表面に位置している。芯材と被覆層とは直接に接していることが好ましいが、場合によっては芯材と被覆層との間に別の層が1層又は2層以上介在していてもよい。
【0011】
芯材は金属酸化物、例えば酸化マンガンや酸化セリウムを含む。本明細書において酸化マンガンとは、マンガンの酸化物を広く包含する。酸化マンガンの具体例としては、酸化マンガン(II)MnO、三酸化二マンガン(III)Mn
2O
3、二酸化マンガンMnO
2、四酸化三マンガンMn
3O
4等が挙げられる。これらマンガンの酸化物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらマンガンの酸化物のうち、特に酸化力が高い化合物である二酸化マンガンMnO
2を用いると、化学機械研摩(CMP)を効率的に行うことができるので好適である。二酸化マンガンを用いる場合は、該二酸化マンガンは、β型結晶構造を有するもの、λ型結晶構造を有するもの及びγ型結晶構造を有するもののうち、いずれを用いてもよいし、それらを併用してもよい。芯材は金属酸化物以外の酸化物を含んでいても良く、また金属酸化物からなっていても良い。
【0012】
マンガンの酸化物として二酸化マンガンを用いる場合、該二酸化マンガンは、電解反応によって陽極表面に二酸化マンガンを生成・析出させることで得ることができる。また、このようにして生成した二酸化マンガンを200℃以上600℃以下の熱雰囲気で加熱してもよい。別法として、マンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)又はマンガン酸亜鉛(ZnMn
2O
4)を、高濃度の酸を用いて処理することにより、リチウム又は亜鉛を溶出させて、二酸化マンガンを得る方法を採用することもできる。
【0013】
芯材の形状は、研摩砥粒の形状に影響を及ぼすことがある。この理由は、後述するとおり、研摩砥粒における被覆層の厚みは、芯材の大きさに対して相対的に小さいので、芯材の形状が研摩砥粒の形状に反映されやすいからである。芯材の形状は研摩砥粒の形状としては、角状又は球状のものを用いることができる。
【0014】
芯材の大きさは、研摩砥粒の研摩性能に影響を及ぼすことがある。この観点から、芯材の平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D
50で表して、0.08μm以上3.0μm以下であることが好ましく、0.3μmを超え1.0μm以下であることが更に好ましい。芯材の平均粒径を調整する手段としては、例えば乾式粉砕が挙げられる。乾式粉砕の具体例としては、高圧気流どうしを衝突させて粒子を粉砕するジェットミル、回転刃とスクリーンとの間のせん断力で粒子を粉砕するアトマイザー、粒子を2つのローラー間で粉砕するローラーミルなどの粉砕機が挙げられる。
【0015】
芯材の表面に位置する被覆層は、芯材と異なる金属又は半金属の酸化物を含んでいる。この酸化物を構成する金属としては、例えばアルミニウム、チタン、ジルコニウム、鉄、バナジウム、クロム、イットリウム、セリウム、ランタンなどが挙げられる。一方、半金属としては、例えばホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモンなどが挙げられる。具体的な酸化物の例としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア又は酸化鉄などが挙げられる。これらの酸化物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。芯材として酸化マンガンを用いた場合には、マンガンの酸化物のデンドライトの発生を特に効果的に防止でき、かつ研摩レートを特に向上させ得る点から、酸化物としてシリカを用いることが好ましい。
【0016】
被覆層は、芯材の表面の全域を満遍なく連続して被覆していてもよく、あるいは芯材の表面が一部露出した状態で不連続に被覆していてもよい。芯材として金属酸化物を用いた場合に、該金属酸化物のデンドライトの発生を特に効果的に防止する観点からは、被覆層は、芯材の表面の全域を満遍なく被覆しており、芯材の表面が外部に露出していないことが好ましい。被覆層による芯材の被覆の程度は、例えば研摩材の電子顕微鏡観察による元素マッピングで測定することができる。
【0017】
被覆層を構成する酸化物は微細な粒子からなり、該粒子が緻密に集合した集合体から該被覆層が形成されていることが好ましい。具体的には、被覆層を構成する酸化物は、0.5nm以上500nm以下、特に2.0nm以上300nm以下の平均粒径を有する微細な粒子であることが好ましい。このような微細な粒子の集合体から被覆層が形成されていることで、芯材の金属酸化物を用いた場合に、該金属酸化物のデンドライトが生成することを効果的に防止することができる。また本発明の研摩材の研摩レートを向上させることができる。被覆層を構成する酸化物の粒子の大きさは、研摩砥粒を電子顕微鏡で拡大観察して測定する。測定する粒子の数は20個以上とし、測定個数の平均値を以て粒子の大きさとする。
【0018】
被覆層の厚みは、研摩砥粒の特性に影響を及ぼす一因となり得る。具体的には、被覆層の厚みが過度に小さいと、本発明の所期の目的を達成しづらくなる。一方、被覆層の厚みが過度に大きいと、芯材の特性が発現しづらくなり、研摩特性が低下する傾向にある。これらの観点から、被覆層の平均の厚み、すなわち被覆がされた表面とされていない表面の双方を含めた被覆層の厚み平均値は0.2nm以上500nm以下であることが好ましく、1.0nm以上300nm以下であることがより好ましい。被覆層の厚みは、研摩砥粒を電子顕微鏡で拡大観察して直接測定することができる。あるいは研摩砥粒の電子顕微鏡観察による元素マッピングで測定することができる。いずれの方法によっても視野内の粒子1つについて3か所での厚みを測定し、測定個数の平均値を以て被覆層の厚みとする。
【0019】
被覆層の厚みは、芯材の大きさとも関連している。芯材の大きさに対して被覆層の厚みが過度に小さいと、本発明の所期の目的を達成しづらくなる。一方、芯材の大きさに対して被覆層の厚みが過度に大きいと、芯材の特性が発現しづらくなり、研摩特性が低下する傾向にある。これらの観点から、芯材の大きさ(nm)に対する被覆層の厚み(nm)の比である〔被覆層の厚み(nm)/芯材の大きさ(nm)〕の値が、0.002以上2.5以下であることが好ましく、0.005以上0.5以下であることが更に好ましい。
【0020】
被覆層の厚みと関連して、研摩砥粒において被覆層が占める質量の割合も、研摩材の特性に影響を及ぼす一因となり得る。具体的には、芯材の質量に対する被覆層の質量の比率が過度に小さいと、本発明の所期の目的を達成しづらくなる。一方、芯材の質量に対する被覆層の質量の比率が過度に大きいと、芯材の特性が発現しづらくなり、研摩特性が低下する傾向にある。これらの観点から、芯材の質量に対する被覆層の質量の比率である〔被覆層の質量/芯材の質量〕の値が0.3質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上8質量%以下であることが更に好ましい。〔被覆層の質量/芯材の質量〕の値をこの範囲内に設定することで、研摩砥粒に占める被覆層の質量が相対的に低くなり、芯材の機能が十分に発現する。また、金属酸化物として酸化マンガンを用いた場合に、被覆層を設けたことに起因する酸化マンガンのデンドライトの発生も効果的に防止される。
【0021】
前記の〔被覆層の質量/芯材の質量〕の値は、例えば次の方法で測定される。ひとつは原料である芯材の平均粒径と密度から芯材の平均質量を算出し、被覆層を付着させた量(質量)から求める方法である。あるいは、研摩砥粒を透過型電子顕微鏡で観察し、断面をランダムに5点測定して粒径と被覆層の厚さの平均値を求める。この測定を研摩砥粒20個について行い、平均粒径と平均の被覆層の厚さを算出する。また芯材と被覆層の組成をEDXで同定し得られた結果と、芯材と被覆層の比重と前記平均粒径と平均の被覆層の厚さから、被覆層と芯材の質量を算出することで、前記の値を得ることができる。
【0022】
研摩砥粒は、その平均粒径D
50が0.08μm以上3.0μm以下であることが好ましく、0.3μm以上1.0μm以下であることが更に好ましい。研摩砥粒の平均粒径をこの範囲に設定することで、研摩対象物を高研摩レートで研摩することが可能になる。研摩砥粒の平均粒径D
50とは、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径のことである。
【0023】
研摩砥粒は、該研摩砥粒を含むスラリーを5時間煮沸した後に、該研摩砥粒を走査型電子顕微鏡(以下「SEM」とも言う。)により観察したとき、縦軸と横軸との比である縦軸/横軸の値が1.0以上1.5未満である非針状形態を有している。つまり、縦軸と横軸との比であるアスペクト比が1に近い等方性形態を有している。煮沸後の研摩砥粒が非針状形態を有していることで、該研摩砥粒を含む本発明の研摩材は、研摩レートが向上したものとなる。また、研摩砥粒の芯材として酸化マンガンを用いた場合には、デンドライト状の酸化マンガンの結晶の生成を効果的に防止できる。本発明において「研摩砥粒が非針状形態を有している」とは、煮沸後の研摩砥粒を20個以上SEM観察して、個数基準で70%以上の研摩砥粒が非針状形態を有していることを言う。したがって、煮沸後の研摩砥粒のなかに、非針状形態以外の形態を有する研摩砥粒が存在していることは許容される。研摩砥粒の煮沸には純水が用いられる。
【0024】
前記の縦軸とは、煮沸後の研摩砥粒の長手軸のことであり、横軸とは、縦軸と直交する軸のことである。長手軸とは、煮沸後の研摩砥粒を横切る線分のうち、最も長い線分のことである。
【0025】
本発明の研摩材は、これを水又は水性液に分散させて、研摩スラリーとして用いることができる。水性液とは、水と水溶性有機溶媒との混合液のことである。水溶性有機溶媒としては、例えばアルコールやケトンを用いることができる。研摩スラリーに含まれる研摩材の割合は、0.2質量%以上30.0質量%以下とすることが好ましく、0.5質量%以上20.0質量%以下とすることが更に好ましい。
【0026】
研摩スラリーには、本発明の研摩材に加えて他の成分を添加することもできる。そのような成分としては、例えば酸化剤や、研摩材の分散剤などを挙げることができる。尤も本発明で用いられる研摩砥粒は、芯材の表面が酸化物の被覆層で被覆されているので、分散剤を添加しなくても液媒体中に高度に分散する。したがって、研摩スラリーは分散剤を非含有であることが好ましい。
【0027】
以上の研摩スラリーによれば、炭化珪素(SiC)のような高硬度で、難削材料である研摩対象を高い研摩速度で、良好な面精度に研摩処理することが可能である。
【0028】
次に、本発明に用いられる研摩砥粒の好適な製造方法を、芯材として酸化マンガンを用いた場合を例にとり説明する。研摩砥粒は、被覆層の原料となる原料化合物を含む水溶液中に、酸化マンガンからなる芯材が分散してなる分散液に、酸又は塩基を添加して該原料化合物の加水分解を生じさせて、該芯材の表面に酸化物を析出させることで好適に製造される。以下の説明では、被覆層がシリカである場合を例にとる。
【0029】
シリカからなる被覆層を形成するときには、シリカ源として例えばケイ酸又はケイ酸塩を用いることができる。ケイ酸塩としては、例えばケイ酸ナトリウムなどのアルカリ金属のケイ酸塩を用いることができる。シリカ源としてケイ酸のアルカリ金属塩を用いる場合には、これを含む水溶液中に酸化マンガンからなる芯材を分散させて分散液を得る。この分散液に酸を加えpHを調整して、ケイ酸を加水分解させて芯材の表面にシリカを析出させる。
【0030】
シリカ源としてケイ酸(H
2SiO
3)を用いる場合には、これを含む水溶液中に酸化マンガンからなる芯材を分散させて分散液を得る。この分散液に塩基を加えpHを調整して、ケイ酸を加水分解させて芯材の表面にシリカを析出させる。
【0031】
被覆層がシリカに加えて例えばアルミナを含む場合には、シリカ源のほかにアルミナ源も前記水溶液中に溶解させておけばよい。アルミナ源としては例えばアルミン酸ナトリウム、塩化アルミニウムなどが挙げられる。
【0032】
上述したいずれの方法を採用する場合であっても、被覆層の厚みを調整するには、例えば添加するシリカ源の濃度や液温、保持時間を増減すればよい。また、被覆層を構成するシリカの微粒子の粒径を調整するには、例えば酸又はアルカリを加え液のpHを調整すればよい。
【0033】
以上の製造方法は被覆層がシリカからなる場合のものであったが、被覆層がそれ以外の酸化物、例えばチタニアやジルコニア又は酸化鉄を含む場合にも同様の手順で研摩砥粒を製造することができる。被覆層がチタニアを含む場合には、その原料化合物として例えば四塩化チタンなどを用いればよく、被覆層がジルコニアを含む場合には、その原料化合物として例えばオキシ塩化ジルコニウムなどを用いればよく、被覆層が酸化鉄を含む場合には、その原料化合物として例えば硫酸鉄などを用いればよい。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0035】
〔実施例1〕
(1)研摩砥粒の製造
硫酸マンガン水溶液の電解分解によって陽極上に二酸化マンガンを析出させた。この二酸化マンガンを解砕機((株)パウレック製、アトマイザー)によって解砕した後、ジェットミル(日本ニューマチック社製、PJM−200SP)によって粉砕し、平均粒径D
50が0.463μmの二酸化マンガン粒子を得た。この粒子を芯材として用いた。Siに換算して0.0079mol/Lのケイ酸ナトリウムを含む水溶液に、芯材を分散させて分散液とした。分散液中の芯材の割合は5%とした。この分散液に酸として硫酸を添加して、該分散液のpHを6.7に調整し、芯材の表面にシリカからなる被覆層を形成して、目的とする研摩砥粒を得た。この研摩砥粒における諸物性を以下の表1に示す。なお、レーザー回折散乱式粒度分布測定には、(株)堀場製作所のLA920を用いた。
【0036】
(2)研摩スラリーの製造
得られた研摩砥粒を、純水に分散させて研摩スラリーを得た。スラリー中の研摩材の割合は2%とした。スラリー中には分散剤は含まれていなかった。
【0037】
〔実施例2〕
実施例1で用いた芯材と同様のものを用いた。Siに換算して0.0079mol/Lのケイ酸(H
2SiO
3)を含む水溶液に、芯材を分散させて分散液とした。分散液中の芯材の割合は5%とした。この分散液に塩基として水酸化ナトリウムを添加して、該分散液のpHを6.1に調整し、芯材の表面にシリカからなる被覆層を形成して、目的とする研摩砥粒を得た。この研摩砥粒における諸物性を以下の表1に示す。これ以外は実施例1と同様にして研摩スラリーを得た。
【0038】
〔実施例3〕
実施例1で用いた芯材と同様のものを用いた。Siに換算して0.0040mol/Lのケイ酸(H
2SiO
3)を含む水溶液に、芯材を分散させて分散液とした。分散液中の芯材の割合は5%とした。この分散液に塩基として水酸化ナトリウムを添加して、該分散液のpHを6.1に調整し、芯材の表面にシリカからなる被覆層を形成して、目的とする研摩砥粒を得た。この研摩砥粒における諸物性を以下の表1に示す。これ以外は実施例1と同様にして研摩スラリーを得た。
【0039】
〔実施例4〕
実施例1で用いた芯材と同様のものを用いた。Siに換算して0.0119mol/Lのケイ酸(H
2SiO
3)を含む水溶液に、芯材を分散させて分散液とした。分散液中の芯材の割合は5%とした。この分散液に塩基として水酸化ナトリウムを添加して、該分散液のpHを6.1に調整し、芯材の表面にシリカからなる被覆層を形成して、目的とする研摩砥粒を得た。この研摩砥粒における諸物性を以下の表1に示す。これ以外は実施例1と同様にして研摩スラリーを得た。
【0040】
〔実施例5〕
実施例1で用いた芯材と同様の工程で製造し、平均粒径D
50が0.447μmの二酸化マンガン粒子を芯材として用いた。Siに換算して0.0079mol/Lのケイ酸ナトリウム、及びAlに換算して0.0012mol/Lのケイ酸アルミニウムを含む水溶液に、芯材を分散させて分散液とした。分散液中の芯材の割合は5%とした。この分散液に酸として硫酸を添加して、該分散液のpHを6.8に調整し、芯材の表面にシリカ及びアルミナからなる被覆層を形成して、目的とする研摩材を得た。この研摩材における諸物性を以下の表1に示す。これ以外は実施例1と同様にして研摩スラリーを得た。シリカとアルミナとの割合は、Si換算のシリカに対するAl換算のアルミナの割合が25%であった。
【0041】
〔実施例6〕
実施例5で用いた芯材と同様のものを用いた。Siに換算して0.0079mol/Lのケイ酸(H
2SiO
3)、及びAlに換算して0.0012mol/Lのケイ酸アルミニウムを含む水溶液に、芯材を分散させて分散液とした。分散液中の芯材の割合は5%とした。この分散液に塩基として水酸化ナトリウムを添加して、該分散液のpHを6.5に調整し、芯材の表面にシリカ及びアルミナからなる被覆層を形成して、目的とする研摩材を得た。この研摩材における諸物性を以下の表1に示す。これ以外は実施例1と同様にして研摩スラリーを得た。シリカとアルミナとの割合は、Si換算のシリカに対するAl換算のアルミナの割合が25%であった。
【0042】
〔比較例1〕
実施例1で用いた芯材に被覆層を形成せず、該芯材をそのまま研摩砥粒として用いた。これ以外は実施例1と同様にして研摩スラリーを得た。
【0043】
〔評価1〕
実施例及び比較例で得られた研摩スラリーを用い、SiCウエハーの研摩を行った。研摩対象は直径2インチのラッピングされた4H−SiC基板を用いた。研摩は基板のSi面に対して行った。研摩装置として、エム・エー・ティー社製片面研摩機BC−15を用いた。定盤に取り付ける研摩パッドには、ニッタ・ハース社製SUBA#600を用いた。定盤の回転数は60rpm、外周部速度は7163cm/minに設定した。またキャリア回転数は60rpm、外周部速度は961cm/minに設定した。研摩スラリーを0.2L/minの速度で供給し、その状態下に3psiの荷重を加えて化学機械研摩(CMP)を行った。研摩時間は2時間とした。研摩レート(nm/min)は、研摩前後のウエハーの質量差とSiCの密度(3.10g/cm
3)とから算出した。結果を表1に示す。
【0044】
〔評価2〕
実施例1及び2並びに比較例1で得られた研摩スラリーを、50℃に保たれた恒温槽中で21日間保存した。保存後の研摩スラリー中の研摩砥粒の状態を走査型電子顕微鏡で観察してデンドライトの発生の有無を調べた。結果を表1及び
図1ないし3に示す。
表1におけるデンドライトの発生の評価については、研摩砥粒をSEM観察して縦軸と横軸との比を測定した際に、デンドライトが4μm×3μm中の1つの視野中にいくつ見られるかで判定した。
【0045】
【表1】
【0046】
表1に示す結果から明らかなとおり、各実施例で得られた研摩材を含む研摩スラリーを用いてSiCウエハーを研摩すると、比較例で得られた研摩材を含む研摩スラリーを用いて研摩した場合に比べて、研摩レートが高くなることが判る。また、
図1に示す結果から明らかなとおり、実施例1及び2で得られた研摩材では、デンドライト状の結晶が観察されないか、又は僅かに観察される程度である。
【0047】
以上の評価とは別に、実施例1及び比較例1で用いた研摩砥粒について5時間の煮沸を行った後に、該研摩砥粒をSEM観察して縦軸と横軸との比を測定したところ、実施例1では、当該比が1.5以上である針状形態を有するものが、4μm×3μm中の視野10か所において1視野当たり5個以下観察された。観察した研摩砥粒の個数に対する非針状形態の研摩砥粒の個数は74%以上であった。これに対して比較例1では、当該比が1.5以上である針状形態を有するものが、4μm×3μm中の視野10か所において1視野当たり9個以上観察された。すなわち比較例1では、針状形態の研摩砥粒が数多く観察され、観察した研摩砥粒の個数に対する非針状形態の研摩砥粒の個数は57%以下であった。またSiCウエハーを研摩した際の研摩レートは比較例1に対し、実施例1は明確に高い値を示した。