特許第6033761号(P6033761)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6033761
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】乗物用シートのバックフレーム構造
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20161121BHJP
【FI】
   B60N2/68
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-245094(P2013-245094)
(22)【出願日】2013年11月27日
(65)【公開番号】特開2015-101283(P2015-101283A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2015年10月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 俊央
(72)【発明者】
【氏名】赤池 文敏
(72)【発明者】
【氏名】辻 博史
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正敏
【審査官】 永石 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−186561(JP,U)
【文献】 特開2000−093253(JP,A)
【文献】 実開昭57−204248(JP,U)
【文献】 実開昭52−030212(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0200184(US,A1)
【文献】 特開2013−189089(JP,A)
【文献】 実開平05−068353(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 − 2/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延び閉断面形状部を有する第1フレーム部材と、1本の閉断面形状部を有するパイプ状部材の曲げ加工により形成された第2フレーム部材と、を組み合わせて形成される乗物用シートのバックフレーム構造であって、
前記第1フレーム部材の閉断面形状部は、前記第1フレーム部材の前後方向に対して垂直に延びて前記第1フレーム部材の前方向に位置する前辺部を有し、該前辺部は他の辺部に比べて肉厚に形成されており、
前記第2フレーム部材は、上下方向に延びる第1サイドフレーム部分と、上下方向に延びる第2サイドフレーム部分と、前記第1サイドフレーム部分と前記第2サイドフレーム部分の上端同士を連結するアッパフレーム部分から構成され、
前記第2フレーム部材の前記閉断面形状部の外側断面形状は、前記第1フレーム部材の前記閉断面形状部の内側断面形状に周接してはまり込む形状とされ、前記第2フレーム部材の前記第2サイドフレーム部分の少なくとも一部が、前記第1フレーム部材の前記閉断面形状部内に挿入されて一体化され門型のバックフレームが形成されていることを特徴とする乗物用シートのバックフレーム構造。
【請求項2】
請求項1において、前記第2サイドフレーム部分は、前記第1サイドフレーム部分より短く、前記第2フレーム部材が逆J字状に形成されていることを特徴とする乗物用シートのバックフレーム構造。
【請求項3】
請求項1において、前記第1サイドフレーム部分と前記第2サイドフレーム部分とは同一長さで、前記第2フレーム部材が逆U字状に形成されていることを特徴とする乗物用シートのバックフレーム構造。
【請求項4】
請求項2において、前記第1フレーム部材の端部のうち、前記第2フレーム部材の前記第2サイドフレーム部分が取り付けられる端部とは別の端部において、前記第2フレーム部材と同一断面形状の補強用部材が前記第1フレーム部材の閉断面形状部内に挿入されていることを特徴とする乗物用シートのバックフレーム構造。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記第2フレーム部材が挿入された前記第1フレーム部材の少なくとも一部が、前記第2フレーム部材に向けて縮められて固定されていることを特徴とする乗物用シートのバックフレーム構造。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、前記第1フレーム部材および前記第2フレーム部材がアルミニウムもしくはマグネシウムの軽合金製であることを特徴とする乗物用シートのバックフレーム構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、飛行機、船、電車等の乗物に搭載される乗物用シートのバックフレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
乗物用シートのバックフレーム構造の1つとして、シートバックの骨格となる枠形状のバックフレームを形成するに当たり、サイドフレームの上端にアッパフレームを突き当てた状態で固定する構造が下記特許文献1に記載されている。このバックフレームは、3点式シートベルト内蔵型の乗物用シート用のものである。特許文献1に記載されたバックフレーム構造においては、上端にシートベルトの引出具が取り付けられたサイドフレームの上部に円管がL字状に折り曲げられた構成のアッパフレームの端部があてがわれて溶接で固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−189089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の構造においては、サイドフレームに対してアッパフレームの端部が突き当てられた状態で溶接されているので両者の接触している面積が小さくサイドフレームにシートベルトからの強い負荷が加えられた場合、溶接部に応力が集中して破損したりするおそれがある。それを防ぐために円管の径や肉厚を大きくする必要が生じ、それによってバックフレーム重量の増加を招いていた。
このような問題に鑑み本発明の課題は、サイドフレームとアッパフレームを接合して形成する構造のバックフレームにおいて、接合強度を確保しながら重量の増加を抑えることができる構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1発明は、上下方向に延び閉断面形状部を有する第1フレーム部材と、1本の閉断面形状部を有するパイプ状部材の曲げ加工により形成された第2フレーム部材と、を組み合わせて形成される乗物用シートのバックフレーム構造であって、前記第2フレーム部材は、上下方向に延びる第1サイドフレーム部分と、上下方向に延びる第2サイドフレーム部分と、前記第1サイドフレーム部分と前記第2サイドフレーム部分の上端同士を連結するアッパフレーム部分から構成され、前記第2フレーム部材の前記閉断面形状部の外側断面形状は、前記第1フレーム部材の前記閉断面形状部の内側断面形状に周接してはまり込む形状とされ、前記第2フレーム部材の前記第2サイドフレーム部分の少なくとも一部が、前記第1フレーム部材の前記閉断面形状部内に挿入されて一体化され門型のバックフレームが形成されていることを特徴とする。
第1発明によれば、バックフレームを構成する第1フレーム部材と第2フレーム部材とがそれぞれ閉断面形状部を有し、第1フレーム部材の閉断面形状部内に第2フレーム部材
の閉断面形状部の少なくとも一部が挿入されて一体化され、門型のバックフレームが形成されているので第1フレーム部材と第2フレーム部材の接触面積を広く確保した接合が可能となる。これによって応力集中が少なく高強度であるとともに重量増加を抑えたバックフレームの提供が可能となる。
【0006】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記第2サイドフレーム部分は前記第1サイドフレーム部分より短く、前記第2フレーム部材が逆J字状に形成されていることを特徴とする。
第2発明によれば、第1フレーム部材の閉断面形状部内に第2フレーム部材の閉断面形状部の少なくとも一部を挿入して接合するにあたって、挿入する長さを必要最低限にすることができるので第1フレーム部材と第2フレーム部材の重複部分を小さくでき接合強度を確保しながら重量の増加をさらに抑えることができる。
【0007】
本発明の第3発明は、上記第1発明において、前記第1サイドフレーム部分と前記第2サイドフレーム部分とは同一長さで、前記第2フレーム部材が逆U字状に形成されていることを特徴とする。
第3発明によれば、第1フレーム部材の全長の閉断面形状部内に第2フレーム部材の閉断面形状部の一部が挿入され接合されているので、第1フレーム部材を全長にわたって第2フレーム部材で補強することができる。これによって、第1フレーム部材の肉厚を最適化する等の措置が可能となりバックフレーム全体としての強度、重量の適正化を図ることが可能となる。
【0008】
本発明の第4発明は、上記第2発明において、前記第1フレーム部材の端部のうち、前記第2フレーム部材の前記第2サイドフレーム部分が取り付けられる端部とは別の端部において、前記第2フレーム部材と同一断面形状の補強用部材が前記第1フレーム部材の閉断面形状部内に挿入されていることを特徴とする。
第4発明によれば、上記第2発明の作用効果に加えて、第1フレーム部材の端部のうち、第2フレーム部材が取り付けられている端部とは別の端部に、第2フレーム部材と同一断面形状の補強用部材が挿入されているので第1フレーム部材のリクライニング装置への取り付け部分を補強できる。このときこの補強部材は第2フレーム部材と同一断面形状であるので第1フレーム部材の閉断面形状部内にぴったりはまり効果的に補強が可能となる。さらに、第2フレーム部材の端材の利用が可能であり別部材を別途作る必要が無い。
【0009】
本発明の第5発明は、上記第1発明ないし上記第4発明のいずれかにおいて、前記第2フレーム部材が挿入された部分の前記第1フレーム部材の少なくとも一部が、前記第2フレーム部材に向けて縮められて固定されていることを特徴とする。
第5発明によれば、上記第1発明ないし上記第4発明のいずれかの作用効果に加えて、第2フレーム部材が挿入された部分の第1フレーム部材の少なくとも一部が、前記第2フレーム部材に向けて縮められて固定されているのでより高い結合強度が達成できる。
【0010】
本発明の第6発明は、上記第1発明ないし上記第5発明のいずれかにおいて、前記第1フレーム部材および前記第2フレーム部材がアルミニウムもしくはマグネシウムの軽合金製であることを特徴とする。
第6発明によれば、上記第1発明ないし上記第5発明のいずれかの作用効果に加えて、第1フレーム部材および第2フレーム部材がアルミニウムもしくはマグネシウムの軽合金製であるのでさらに軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態の斜視図である。
図2】上記実施形態の第1フレーム部材と第2フレーム部材を説明するための図である。
図3図1のIII−III矢視線断面図である。
図4図1のIV−IV矢視線断面図である。
図5図1のV−V矢視線断面図である。
図6】本発明の第2実施形態の第1フレーム部材と第2フレーム部材を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1〜5は、本発明の第1実施形態を示す。第1実施形態は、自動車用シートのバックフレーム(以下、単にバックフレームという)に本発明を適用した例を示す。各図中、矢印によりバックフレームを取り付けた自動車用シートを自動車のフロアに取り付けた時の自動車の各方向を示している。以下の説明において、方向に関する記述は、この方向を基準として行うものとする。
【0013】
図1および図2に示すように、第1実施形態のバックフレーム10は、シートベルト内蔵タイプのシートであってシートベルトの巻取り装置(図示しない)を取り付け可能なものである。バックフレーム10は、上下方向に延び右側のサイドフレーム機能を果たす第1フレーム部材20と、上下方向に延びる第1サイドフレーム部分31と、上下方向に延びる第2サイドフレーム部分33と、第1サイドフレーム部分31と第2サイドフレーム部分33の上端同士を連結するアッパフレーム部分32とが1本の閉断面形状部を有するパイプ状部材の曲げ加工により形成された第2フレーム部材30と、第1フレーム部材20と第2フレーム部材30を結合するセンターフレーム50と、ロアフレーム60とからなる。
【0014】
第1フレーム部材20は、図3に示す断面形状を有するアルミニウム合金の押出し材をベースに作られている。図3において、変形六角形の閉断面形状部27は、側辺部27aと、前辺部27bと、他の側辺部27cと、後辺部27fと、前辺部27bと他の側辺部27cをつなぐ前連結部27dと、後辺部27fと他の側辺部27cをつなぐ後連結部27eとから構成される。側辺部27aと他の側辺部27c、前辺部27bと後辺部27fはそれぞれ平行の関係にあり、前辺部27bは側辺部27a、他の側辺部27c、後辺部27f、前連結部27d、後連結部27eに比べて肉厚に形成されている。この閉断面形状部27に結合されるコの字状断面形状部26は、側辺部26a、後辺部26b、他の側辺部26cとから構成される。側辺部26aと他の側辺部26cは平行の関係にあり、後辺部26bは側辺部26a、他の側辺部26cに比べて肉厚に形成されている。前辺部27bと後辺部26bが肉厚に形成されているのは、第1フレーム部材20に前後方向の曲げモーメントが加えられたときに応力が高まる部分を強化するためである。なお、閉断面形状部27の中に挿入されている補強用部材38については後述する。
【0015】
図1および図2に示すように、第1フレーム部材20は、側面視でくの字状に折り曲げられ上下方向の中間部よりやや下の部分22から上部が後方に反った形状をしている。また、下端部から上方に向かって全長の2/3程度までの部分は、その断面が図3に示されるように閉断面形状部27にコの字状断面形状部26が結合され2つの閉断面形状を構成している。上端部から全長の1/3程度までの部分は、その断面が図4に示されるように閉断面形状部27に側辺部26aと他の側辺部26cの一部が後方に向かって立設された1つの閉断面形状を構成している。これは、下端部から全長の2/3程度上方の部分を起点に上方に向かってコの字状断面形状部26の後辺部26bと側辺部26aと他の側辺部26cを、側辺部26aと他の側辺部26cの長さが上方に向かって徐々に短くなるように削り取る加工を施したためである。この加工の狙いは、第1フレーム部材20の上端に加えられる前後方向の曲げモーメントの大きさに即するように、第1フレーム部材20の断面係数を上下方向で変えてそれぞれの部位で必要十分な断面係数とすることにより重量の軽減を図ることにある。
【0016】
図1および図2に示すように、第1フレーム部材20の下端部近傍には側辺部27aと他の側辺部27cに同軸の貫通孔24が、側辺部26aと他の側辺部26cに同軸の貫通孔25があけられている。これは、第1フレーム部材20をリクライニング装置(図示せず)を介してシートクッションフレーム(図示せず)に取り付けるためのものである。
【0017】
第2フレーム部材30は、図5に示す断面形状を有するアルミニウム合金の押出し材をベースに作られている。図5において、変形六角形の閉断面形状部37は、側辺部37aと、前辺部37bと、他の側辺部37cと、後辺部37fと、前辺部37bと他の側辺部37cをつなぐ前連結部37dと、後辺部37fと他の側辺部37cをつなぐ後連結部37eとから構成される。側辺部37aと他の側辺部37c、前辺部37bと後辺部37fはそれぞれ平行の関係にあり、側辺部37a、前辺部37b、他の側辺部37c、前連結部37d、後連結部37e、後辺部37fはすべて同じ肉厚に形成されている。同じ肉厚に形成されている理由は、第2フレーム部材30は第1フレーム部材20と比べてシートベルトから加えられる前後方向の曲げモーメントが小さく同じ肉厚で十分強度が確保できるためである。閉断面形状部37の外形は、第1フレーム部材20の閉断面形状部27の内形に対して、わずかな隙間を有した相似形となっている。これによって、第1フレーム部材20の閉断面形状部27は第2フレーム部材30の閉断面形状部37の内側に挿入可能となっている。
【0018】
図1および図2に示すように、第2フレーム部材30は、側面視でくの字状に折り曲げられ上下方向の中間部よりやや下の部分32から上部が後方に反った形状の第1サイドフレーム部分31と、上下方向に延び第1サイドフレーム部分31より長さの短い第2サイドフレーム部分33と、第1サイドフレーム部分31と第2サイドフレーム部分33の上端同士を連結するアッパフレーム部分32とが1本の閉断面形状のパイプ状部材の曲げ加工により形成されている。第1サイドフレーム部分31と第2サイドフレーム部分33とアッパフレーム部分32の断面形状は図5に示す形状で一定である。アッパフレーム部分32には所定の孔が2個あけられそこにホルダー36が2個取り付けられている。また、第1サイドフレーム部分31の下部には側辺部37aと他の側辺部37cに同軸の貫通孔34と同軸の貫通孔35が上下方向に並んであけられている。これは、第2フレーム部材30をリクライニング装置(図示せず)を介してシートクッションフレーム(図示せず)に取り付けるためのものである。
【0019】
図1に示すように、センターフレーム50は一定断面形状を有するアルミニウム合金の押出し材を折り曲げ加工して作成した部材であり、第1フレーム部材20と第2フレーム部材30の第1サイドフレーム部分31を上下方向中間部付近で連結している。中央やや右寄りに設けられている孔51は、シートベルト巻取り装置(図示せず)を取り付けるためのものである。ロアフレーム60は、略矩形断面形状を有するアルミニウム合金の押出し材を折り曲げ加工して作成した部材であり、第1フレーム部材20と第2フレーム部材30の第1サイドフレーム部分31を上下方向下端部付近で連結している。第2フレーム部材30の第2サイドフレーム部分33とアッパフレーム部分32をつなぐコーナ部37にはシートベルトガイド(図示せず)が取り付けられている。
【0020】
第1フレーム部材20、第2フレーム部材30、センターフレーム50、ロアフレーム60を組み立ててバックフレーム10を形成する手順を説明する。図2に示すように、第1フレーム部材20の上端部の閉断面形状部27に第2フレーム部材30の第2サイドフレーム部分33の下端部を差込む。差し込む長さは約20mm程度であり、それだけ差し込んだ状態で第1フレーム部材20と第2フレーム部材30の第2サイドフレーム部分33を合わせた長さは、第2フレーム部材30の第1サイドフレーム部分31と同じになり、門型のバックフレーム10を形成する。第2フレーム部材30の第2サイドフレーム部分33の下端部が差し込まれた第1フレーム部材20の上端部に電磁縮管成形を施す。ここで、電磁縮管成形とは大容量のコンデンサに充電した高電圧の電流を一瞬で電磁コイルに流し、瞬間的に生じる磁場を利用してアルミを加工する技術である。ワークである第1フレーム部材20の閉断面形状部27の外側に電磁コイルを配置して電流を流すことにより、第1フレームの閉断面形状部27を縮ませ第2フレーム部材30の第2サイドフレーム部分33の下端部に密着させる。このとき、第1フレーム部材20の閉断面形状部27に挿入された第2フレーム部材30の第2サイドフレーム部分33の下端部の表面に凹凸を設ける粗面化加工が施してあると両者の密着度が高まりより高強度な結合とすることができる。こののち、センターフレーム50とロアフレーム60を第1フレーム部材20と第2フレーム部材30間に溶接等で固定してバックフレーム10が完成される。また、上記手順において、電磁縮管成形を施す代わりに、第1フレーム部材20と第2フレーム部材30の間にプレスによる接合や接着剤を介在させたプレスによる接合を施してもよい。
【0021】
図2および図3に示すように、第2フレーム部材30の端材から作成した長さが約50mm程度の補強用部材38を第1フレーム部材20の下端部の閉断面形状部27に挿入する。補強用部材38には、第1フレーム部材20の下端部の閉断面形状部27に挿入されたとき第1フレーム部材20の下端部近傍の貫通孔24と一致する位置に貫通孔38aがあけられている。貫通孔24と貫通孔38aは、第1フレーム部材20をリクライニング装置(図示せず)を介してシートクッションフレーム(図示せず)に取り付けるためのものである。
【0022】
以上のように構成される第1実施形態は、以下のような作用効果を奏する。
第1フレーム部材20の上部に対して第2フレーム部材30の第2サイドフレーム部分33が、第1フレーム部材20の閉断面形状部27に挿入された状態で電磁縮管成形されているので接合部の面積を大きくすることができ、応力集中の少ない高強度な接合が可能となる。また、第1フレーム部材20の下端部であるリクライニング装置への取り付け部分には、第2フレーム部材30と同一断面形状の補強用部材38が挿入されているので第1フレーム部材のリクライニング装置への取り付け部分を補強できる。このときこの補強部材38は第2フレーム部材30と同一断面形状であるので第1フレーム部材の閉断面形状部内にぴったりはまり効果的に補強が可能となる。さらに、第1フレーム部材の端材等の利用が可能であり別部材を別途作る必要が無い。さらに、第1フレーム20、第2フレーム30、センターフレーム50、ロアフレーム60ともアルミニウム合金製であるため軽量化が図られる。
【0023】
図6に本発明の第2実施形態を示す。第1実施形態と重複する構成に関しては図面に同一符号を付して説明を省略する。
第1実施形態との違いは、第2フレーム部材30が、第1サイドフレーム部分31と、第2サイドフレーム部分331と、第1サイドフレーム部分31と第2サイドフレーム部分331の上端同士を連結するアッパフレーム部分32とが1本の閉断面形状のパイプ状部材の曲げ加工により形成されていて、第1サイドフレーム部分31と第2サイドフレーム部分331の長さが同じである点である。これによって、第1フレーム部材20と第2フレーム部材30を接合する場合に、第1フレーム部材20の閉断面形状部27の全長にわたって第2フレーム部材30の第2サイドフレーム部分331が挿入される。組みつけに当たっては、折り曲げ加工の前に第1フレーム部材20の閉断面形状部27に第2フレーム部材30の第2サイドフレーム部分331を挿入し、一体とした状態で折り曲げ加工する。第2フレーム部材30の第2サイドフレーム部分331の下端部近傍には第1フレーム部材20の閉断面形状部27に挿入されて一体化されたときに第1フレーム部材20の貫通孔24と一致する位置に貫通孔331aがあけられている。貫通孔24と貫通孔331aは、第1フレーム部材20をリクライニング装置(図示せず)を介してシートクッションフレーム(図示せず)に取り付けるためのものである。
【0024】
以上のように構成される第2実施形態は、以下のような作用効果を奏する。
第1フレーム部材20の全長の閉断面形状部27内に第2フレーム部材30の第2サイドフレーム部分331が挿入され接合されているので、第1フレーム部材20を全長にわたって第2フレーム部材30で補強することができる。これによって、第1フレーム部材20の肉厚を最適化する等の措置が可能となりバックフレーム全体としての強度、重量の適正化を図ることが可能となる。すなわち、第1フレーム部材20に使用するアルミニウム合金材料としてより低グレードな材料の使用が可能となり材料費の低減が図られる。
【0025】
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、
1.上記第2実施形態では、第1フレーム部材20の閉断面形状部27の全長にわたって第2フレーム部材30の第2サイドフレーム部分331を挿入しただけであるが、この状態で第1フレーム部材20の閉断面形状部27の一部に電磁縮管成形を施してもよい。それによってさらなる結合強度の向上が図られる。また、電磁縮管成形を施す代わりに、第1フレーム部材20と第2フレーム部材30の間にプレスによる接合や接着剤を介在させたプレスによる接合を施してもよい。
2.上記実施形態では、第1フレーム部材20、第2フレーム部材30ともアルミニウム合金を用いたがこれに限らずマグネシウム合金を用いてもよいし、これらを組み合わせて使用してもよい。
3.上記実施形態では、本発明を自動車のシートに適用したが、飛行機、船、電車等に搭載のシートに適用しても良い。
【符号の説明】
【0026】
10 バックフレーム
20 第1フレーム部材
27 閉断面形状部
30 第2フレーム部材
31 第1サイドフレーム部分
32 アッパフレーム部分
33,331 第2サイドフレーム部分
37 閉断面形状部
38 補強用部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6