(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透液性表面シートと裏面シートとの間に、体液排出部位を含む肌当接面側の長手方向に沿って、圧搾によることなく凹溝状又はスリット状の吸収体凹部が形成された吸収体が介在されるとともに、前記透液性表面シートの表面側からのエンボスにより、前記吸収体凹部の内部に前記吸収体凹部に沿ってエンボス部が設けられた吸収性物品の製造方法であって、
前記吸収体凹部を備えた前記吸収体を成形する第1工程と、少なくとも前記吸収体凹部の両側に、前記透液性表面シートを積層する前の前記吸収体の肌当接面側のみからの圧搾によりコアエンボスを施すことによって、前記コアエンボスに引っ張られて前記吸収体凹部の両側壁を外側に傾斜させ、前記吸収体凹部の肌当接面側の開口を口開きさせる第2工程と、前記吸収体の表面側に前記透液性表面シートを積層し前記エンボス部を設ける第3工程とを含むことを特徴とする吸収性物品の製造方法。
前記コアエンボスの平面形状は、吸収性物品の長手方向に沿う1又は複数条の連続線や不連続線、ドット状又は格子状のパターンである請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品の製造方法。
前記コアエンボスは、平面視で、前記吸収体凹部側から外方側に向けて連続的又は不連続的に設けられ、外方側の圧搾圧の方が徐々に高くなるように設定してある請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1記載の吸収性物品では、上層吸収体が下層吸収体に積層され、下層吸収体の表面側の一部(開口部底面)が開口部の部分で直接表面シートに密着した状態とされている。そして、この下層吸収体の開口部底面の少なくとも一部は、開口部を介してその内部に導入された表面シートの一部と溶融接着法により接合されている。
【0006】
このように、表面シートの表面側からの押圧により開口部の内部に表面シートの一部を導入し下層吸収体の開口部底面と接合する場合においては、次のような問題が生じていた。(1)吸収体をライン搬送する途中で、吸収体がロール間に挟まれることなどによって開口部の側壁が内側に倒れ込み、表面シートの押圧時に倒れ込んだ吸収体も同時に圧搾してしまう問題、(2)吸収体のライン搬送中に前後左右の移送ズレが生じ、開口部とプレス位置との位置合わせが難しく、開口部周辺の吸収体の一部を圧搾してしまう問題、などによって均一な製品を製造できないことがあった。
【0007】
また、このような問題を解決するため、予め吸収体の開口部を大きくしておく対策も考えられるが、開口部を大きくすることによって、その分の吸収量を補うために開口部周辺の吸収体目付を増やす必要があり、製品の厚みが増して装着感が悪化するおそれがあった。
【0008】
更に、予め凹溝が設けられた吸収体において、前記吸収体の表面側に透液性表面シートを積層し、前記凹溝の内部に対し透液性表面シートの表面側からの圧搾によりエンボスを施した場合、凹溝底部が圧搾されることに伴って、凹溝の側壁が内側に倒れ込む場合があり、これによって凹溝の容積が小さくなり、貯留できる体液の量が減少する問題が発生していた。
【0009】
一方で、開口部に一時貯留された体液は、開口部の側壁からも吸収体内部に浸透するが、開口部周辺の吸収体の密度が均一に形成されたものでは、開口部の側壁から吸収体内部に浸透した体液が停滞しやすく、吸収体の保水量がすぐに一杯になってそれ以上の吸水ができなくなるおそれがあった。
【0010】
ところで、上記特許文献3に開示されるように、エンボス付与加工を行うことによって、透液性トップシートに形成された多数の開口を拡大する技術は存在していたが、吸収体に設けられた凹部の開口を拡大するような技術は存在しなかった。
【0011】
そこで本発明の主たる課題は、凹溝を加工しやすくし、凹溝がきれいに成形できるようにするとともに、装着感を悪化させることなく、体液の拡散性が向上できる吸収性物品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと裏面シートとの間に、体液排出部位を含む肌当接面側の長手方向に沿って、圧搾によることなく凹溝状又はスリット状の吸収体凹部が形成された吸収体が介在されるとともに、前記透液性表面シートの表面側からのエンボスにより、前記吸収体凹部の内部に前記吸収体凹部に沿ってエンボス部が設けられた吸収性物品の製造方法であって、
前記吸収体凹部を備えた前記吸収体を成形する第1工程と、少なくとも前記吸収体凹部の両側に、前記透液性表面シートを積層する前の前記吸収体の肌当接面側
のみからの圧搾によりコアエンボスを施す
ことによって、前記コアエンボスに引っ張られて前記吸収体凹部の両側壁を外側に傾斜させ、前記吸収体凹部の肌当接面側の開口を口開きさせる第2工程と、前記吸収体の表面側に前記透液性表面シートを積層し前記エンボス部を設ける第3工程とを含むことを特徴とする吸収性物品の製造方法が提供される。
【0013】
上記請求項1記載の発明では、透液性表面シートと裏面シートとの間に、体液排出部位を含む肌当接面側の長手方向に沿って、圧搾によることなく凹溝状又はスリット状の吸収体凹部を形成した吸収体が介在されるとともに、前記透液性表面シートの表面側からのエンボスにより、前記吸収体凹部の内部に前記吸収体凹部に沿ってエンボス部を設けた吸収性物品を製造するための方法である。かかる吸収性物品では、前記吸収体凹部内に体液が浸入して吸収体凹部周辺のポリマーやパルプが膨張した際、予め前記吸収体に吸収体凹部を形成しておくことにより、圧搾によってポリマーやパルプが高密度となったものに比べて吸収体凹部の底面の盛り上がりが極めて小さく抑えられるとともに、前記エンボス部によって吸収体凹部内に前記透液性表面シートが介在しているので、吸収体凹部の側面の膨張も小さく抑えられる。従って、吸液時に膨張したポリマーやパルプによって吸収体凹部が塞がれて体液の吸収性が低下するのが防止できるようになる。一方、前記吸収体凹部をスリット状に形成した場合、吸収体凹部の底面には吸収体が介在しないので底面の膨張が生じない。
【0014】
かかる吸収性物品を製造するに当たって、本発明では、前記吸収体凹部を備えた前記吸収体を成形する第1工程と、少なくとも前記吸収体凹部の両側に、前記透液性表面シートを積層する前の前記吸収体の肌当接面側
のみからの圧搾によりコアエンボスを施す
ことによって、前記コアエンボスに引っ張られて前記吸収体凹部の両側壁を外側に傾斜させ、前記吸収体凹部の肌当接面側の開口を口開きさせる第2工程と、前記吸収体の表面側に前記透液性表面シートを積層し前記エンボス部を設ける第3工程とを含む製造工程を用いている。前記第2工程においてコアエンボスを施すことによって、このコアエンボスに引っ張られて吸収体凹部の両側壁が外側に傾き、吸収体凹部の開口が大きく口開きするようになる。このため、次の第3工程において透液性表面シートの表面側から前記エンボス部を設ける際、エンボス装置の先端が吸収体凹部の内部に進入しやすくなり、吸収体とエンボス装置との位置合わせが容易になり凹溝が加工しやすくなるとともに、余分な部分を圧搾することなく凹溝がきれいに成形できるようになる。
【0015】
また、吸収体凹部の開口寸法を大きくすることなく凹溝が成形できるので、吸収体目付や厚みを増加させる必要がなく、吸収性物品の装着感が維持できるようになる。
【0016】
更に、前記吸収体凹部の周辺に圧密化されたコアエンボスが設けられるようになるので、吸収体凹部に一時貯留された体液が吸収体内部に浸透したときに、繊維の密度勾配によって体液がコアエンボス側に引き込まれやすくなり、体液の拡散性が向上し、吸水性能が向上するようになる。
【0017】
請求項2に係る本発明として、前記コアエンボスは、前記吸収体凹部の縁部からの距離が10mm以上30mm以内の範囲に施してある請求項1記載の吸収性物品の製造方法が提供される。
【0018】
上記請求項2記載の発明では、前記コアエンボスを設ける位置として、前記吸収体凹部の縁部からの距離を10mm以上30mm以内の範囲としている。10mmより近い範囲にコアエンボスを設けた場合、コアエンボスに引きずられて吸収体凹部の高さ(深さ)が小さくなり、凹溝の容積が減少して吸収性能が低下するおそれがある。また、30mmより遠い範囲に設けた場合、吸収体凹部の側壁を外側に倒れ込ませる効果があまり期待できないため好ましくない。
【0019】
請求項3に係る本発明として、前記コアエンボスの平面形状は、吸収性物品の長手方向に沿う1又は複数条の連続線や不連続線、ドット状又は格子状のパターンである請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品の製造方法が提供される。
【0020】
上記請求項3記載の発明では、前記コアエンボスの平面形状として、吸収性物品の長手方向に沿う1又は複数条の連続線や不連続線、ドット状又は格子状のパターンが好ましいことを規定している。なお、前記連続線や不連続線は、直線であってもよいし、円弧などの曲線であってもよい。
【0021】
請求項4に係る本発明として、前記コアエンボスは、前記吸収体凹部の前側及び後側にも施してある請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品の製造方法が提供される。
【0022】
上記請求項4記載の発明では、前記コアエンボスを、前記吸収体凹部の前側及び後側にも施すことによって、凹溝から吸収体内部に浸透した体液の前側及び後側への拡散性も向上でき、吸収性能がより一層良好となる。
【0023】
請求項5に係る本発明として、前記コアエンボスは、平面視で、前記吸収体凹部側から外方側に向けて連続的又は不連続的に設けられ、外方側の圧搾圧の方が徐々に高くなるように設定してある請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品の製造方法が提供される。
【0024】
上記請求項5記載の発明では、前記コアエンボスを、平面視で、前記吸収体凹部側から外方側に向けて連続的又は不連続的に設けた場合において、外方側の圧搾圧の方が徐々に高くなるように設定することによって、外方側に向けて吸収体の密度勾配が徐々に高くなるため、体液の拡散性が更に増して吸収性能が向上するようになる。
【発明の効果】
【0025】
以上詳説のとおり本発明によれば、凹溝が加工しやすくなり、凹溝がきれいに成形できるようになるとともに、装着感が悪化することなく、体液の拡散性が向上できるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0028】
〔失禁パッド1の基本構成〕
本発明に係る失禁パッド1は、
図1〜
図3に示されるように、ポリエチレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、尿などを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2、3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、必要に応じて前記透液性表面シート3と吸収体4との間に配置される親水性のセカンドシート6と、前記吸収体4の略側縁部を起立基端とし、かつ少なくとも体液排出部位Hを含むように長手方向に所定の区間内において肌側に突出して設けられた左右一対の立体ギャザーBS、BSを形成するサイド不織布7、7とから主に構成され、かつ前記吸収体4の周囲においては、その長手方向端縁部では前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合されている。前記吸収体4は、形状保持および拡散性向上のために、クレープ紙や不織布等からなる被包シートによって囲繞することができる。
【0029】
以下、さらに前記失禁パッド1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他に防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には、防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが好適に用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。
【0030】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。
【0031】
前記吸収体4は、たとえばフラッフ状パルプ等の吸収性繊維と高吸水性ポリマー8とにより構成され、図示例では平面形状がパッド長手方向に長い縦長の略小判形とされている。前記高吸水性ポリマー8は例えば粒状粉とされ、吸収体4を構成するパルプ中に分散混入されている。
【0032】
前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。本失禁パッド1では、吸収体4を被包シート5で囲繞するため、結果的に透液性表面シート3と吸収体4との間に被包シート5が介在することになり、吸収性に優れる前記被包シート5によって体液を速やかに拡散させるとともに、これら尿等の逆戻りを防止するようになる。前記パルプの目付は、100g/m
2〜600g/m
2、好ましくは200g/m
2〜500g/m
2とするのがよい。
【0033】
前記高吸水性ポリマー8としては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸水性ポリマーは製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸水力(吸収倍率)と吸水速度の調整が可能である。前記ポリマーの目付は、150g/m
2〜500g/m
2、好ましくは200g/m
2〜450g/m
2とするのがよい。
【0034】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0035】
前記セカンドシート6は、体液に対して親水性を有するものであればよい。具体的には、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることにより素材自体に親水性を有するものを用いるか、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維を親水化剤によって表面処理し親水性を付与した繊維を用いることができる。また、前記セカンドシート6は、コシを持たせるため、裏面側(吸収体4側)に多孔のフィルム層を有していてもよく、またパルプを含む素材を用いてもよい。
【0036】
本失禁パッド1の表面側両側部にはそれぞれ長手方向に沿って、かつ失禁パッド1の全長に亘ってサイド不織布7,7が設けられ、このサイド不織布7,7の外側部分が側方に延在されるとともに、前記不透液性裏面シート2が側方に延在され、これら側方に延在されたサイド不織布7部分と不透液性裏面シート2部分とをホットメルト接着剤等により接合して側部フラップが形成されている。
【0037】
前記サイド不織布7としては、重要視する機能の点から撥水処理不織布または親水処理不織布を使用することができる。たとえば、尿等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの機能を重視するならば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングしたSSMSやSMS、SMMSなどの撥水処理不織布を用いるのが望ましく、体液の吸収性を重視するならば、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた親水処理不織布を用いるのが望ましい。かかるサイド不織布7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができる。
【0038】
前記サイド不織布7、7は、適宜に折り畳まれて、前記吸収体4の略側縁近傍位置を起立基端として肌側に起立する左右一対の内側立体ギャザー10、10と、相対的に前記内側立体ギャザー10より外側に位置するとともに、前記吸収体4よりも側方に延出する不透液性裏面シート2及びサイド不織布7によって形成された肌側に起立する左右一対の外側立体ギャザー11、11とからなる2重ギャザー構造の立体ギャザーBSを構成している。なお、前記立体ギャザーBSは、内側立体ギャザー10または外側立体ギャザー11のいずれかのみからなる1重ギャザー構造であっても良いし、サイド不織布7を配設するだけで肌側に起立した立体ギャザー状に形成されなくてもよい。
【0039】
前記内側立体ギャザー10および外側立体ギャザー11の構造についてさらに詳しく説明すると、前記サイド不織布7は、
図2に示されるように、幅方向両側端をそれぞれパッド裏面側に折り返して幅方向内側及び幅方向外側にそれぞれ二重シート部分7a、7bを形成するとともに、前記幅方向内側の二重シート部分7a内部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された1本または複数本の、図示例では1本の糸状弾性伸縮部材12が配設されるとともに、前記幅方向外側の二重シート部分7b内部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された1本または複数本の、図示例では2本の糸状弾性伸縮部材13、13が配設され、前記幅方向内側の二重シート部分7aの基端部が吸収体4の側部に配設される透液性表面シート3の上面にホットメルト接着剤等により接着されるとともに、幅方向外側の二重シート部分7bの基端部が前記吸収体4よりも側方に延出する不透液性裏面シート2の側端部にホットメルト接着剤等により接着されることにより、前記幅方向内側の二重シート部分7aによって肌側に起立する内側立体ギャザー10が形成されるとともに、前記幅方向外側の二重シート部分7bによって肌側に起立する外側立体ギャザー11が形成されている。なお、前記サイド不織布7は、パッド長手方向の両端部では、
図3に示されるように、前記糸状弾性伸縮部材12、13が配設されないとともに、前記幅方向内側の二重シート部分7aがホットメルト接着剤等によって吸収体4側に接合されている。
【0040】
〔凹溝22について〕
本失禁パッド1では、失禁パッド1の表面側に長手方向に沿って体液流入用の凹溝22が形成されている。前記凹溝22は、透液性表面シート3の表面に排出された体液を受け止めて、体液を一時貯留するとともに、前後方向への体液の拡散を誘導し、且つ吸収体4への体液の吸収速度を速め、横漏れを防止するためのものである。
【0041】
前記凹溝22は、予め吸収体4に、体液排出部位を含む肌当接面側の長手方向に沿って、圧搾によることなく凹溝状又はスリット状の吸収体凹部20を形成しておき、透液性表面シート3及び必要に応じてセカンドシート6を積層した状態で、透液性表面シート3の表面側(肌当接面側)からのエンボスにより、前記吸収体凹部20の内部に前記吸収体凹部20に沿ってエンボス部21を形成することにより設けたものである。
【0042】
前記吸収体4には、前記エンボス部21の形成前に予め、圧搾によることなく吸収体凹部20が形成されている。前記吸収体凹部20は、吸収体4の肌当接面側(透液性表面シート3側)の面において、周囲より非肌当接面側(不透液性裏面シート2側)に凹ませた、底面を有する非貫通型の凹溝部分である。また、前記吸収体凹部20は、このような非貫通型のものに代えて、吸収体4の肌当接面側から非肌当接面側まで貫通したスリット状に形成してもよい。この吸収体凹部20は、圧搾によることなく、例えば
図4に示されるように、(A)積繊、又は(B)吸収体凹部20の底部の厚みで形成された下層吸収体4aと、前記吸収体凹部20に対応する部分が開口した上層吸収体4bとの積層構造などによって形成されている。
【0043】
前記吸収体凹部20は、
図1に示されるように、吸収体4に対して、体液排出部位Hに対応するパッド幅方向の中央部であって長手方向の中間部に、1条のみ形成するのが好ましいが、パッド幅方向に離間して複数条形成したり、パッド長手方向に離間して不連続線状に形成したりしてもよい(図示せず)。なお、吸収体凹部20を複数設ける場合は、それぞれの吸収体凹部20に対して前記エンボス部21を設けるのが好ましい。
【0044】
前記吸収体凹部20の平面寸法は、パッド長手方向の長さが100〜180mm、溝幅(底面の溝幅)が5〜30mmとするのがよい。前記吸収体凹部を凹溝状に形成した場合、前記吸収体凹部20の深さは、吸収体4の厚みの50%以上が好ましい。
【0045】
前記吸収体凹部20の底部(不透液性裏面シート2側の部分、非肌側の部分)に介在する吸収体4部分は、パルプの目付が70g/m
2〜210g/m
2、好ましくは90g/m
2〜190g/m
2とするのがよく、ポリマーの目付が60g/m
2〜200g/m
2、好ましくは80g/m
2〜180g/m
2とするのがよい。
【0046】
図2に示されるように、前記凹溝22は、透液性表面シート3の肌当接面側からのエンボスにより、前記吸収体凹部20の内部に前記吸収体凹部20に沿ってエンボス部21を設けることにより形成されている。
【0047】
前記エンボス部21は、前記吸収体4の肌当接面側に透液性表面シート3及び必要に応じてセカンドシート6を積層した状態で、透液性表面シート3の肌当接面側からの圧搾により、前記透液性表面シート3及びセカンドシート6に対し一体的に設けられる。前記エンボス部21は、前記吸収体4を被包シートによって囲繞する場合、吸収体4を被包シートで囲繞した状態で被包シートの肌当接面側から予め被包シートのみを圧搾した後、透液性表面シート3及び必要に応じてセカンドシート6を積層し、透液性表面シート3の肌当接面側からの圧搾により透液性表面シート3及びセカンドシート6を圧搾する2段圧搾によって設けてもよいし、吸収体4を被包シートで囲繞した状態で透液性表面シート3及び必要に応じてセカンドシート6を積層し、透液性表面シート3の肌当接面側からの圧搾により透液性表面シート3、セカンドシート6及び被包シートを一体的に圧搾することによって設けてもよい。
【0048】
前記エンボス部21の平面寸法は、吸収体凹部20の寸法とほぼ同等とするのがよい。具体的にエンボス部21の幅寸法は、吸収体凹部20の溝幅(底部の幅寸法)との差が0〜−2mm程度とするのがよい。一方、エンボス部21の長手寸法は、マシンでのばらつきが大きいため、吸収体凹部20の長手寸法より5mm〜20mm程度短くするのがよい。前記エンボス部21の底面には、周辺の凹溝22の底面より更に深く圧搾した高圧搾部を、適宜のパターンで形成してもよい。
【0049】
前記凹溝22を設けることによって、次のような効果が奏される。凹溝22内に流入した体液が吸収体4に浸透し、吸収体凹部20周辺のポリマーやパルプが吸水して膨張した際、予め吸収体4に吸収体凹部20を形成しておくことにより、圧搾によってポリマーやパルプが高密度となったものに比べて吸収体凹部20の底面の盛り上がりが極めて小さく抑えられるとともに、前記エンボス部21によって吸収体凹部20内に透液性表面シート3が介在しているので、吸収体凹部20の側面の膨張も小さく抑えられる。従って、吸液時に膨張したポリマーやパルプによって吸収体凹部20が塞がれて体液の吸収性が低下するのが防止できるようになる。一方、前記吸収体凹部20をスリット状に形成した場合、吸収体凹部20の底面には吸収体が介在しないので、吸液時に底面の膨張が生じない。
【0050】
〔失禁パッド1の製造方法〕
本書では、失禁パッド1の製造方法のうち、本発明の特徴部分である前記凹溝22の形成方法について詳細に説明する。
【0051】
(第1工程)
先ずはじめに第1工程では、
図5(A)に示されるように、前記吸収体凹部20を備えた吸収体4を、上述の
図4に示される積繊又は積層構造によって成形する。
【0052】
(第2工程)
次に、第2工程では、
図5(B)に示されるように、少なくとも吸収体凹部20の両側にそれぞれ吸収体4の肌当接面側からの圧搾により所定のパターンでコアエンボス23を施す。このコアエンボス23は、吸収体4を被包シートによって囲繞する場合、被包シートを囲繞する前の吸収体4に対して施してもよいし、被包シートによって囲繞した吸収体4に対し、被包シートの肌当接面側からの圧搾により施してもよい。前記コアエンボス23は、種々の形態で設けることが可能である。このコアエンボス23については後段で詳述する。
【0053】
吸収体4に前記コアエンボス23を施すことによって、
図5(B)に示されるように、コアエンボス23内部側に繊維が引っ張られるため、これに引きずられて吸収体凹部20の両側壁が外側に傾き、吸収体凹部20の開口が大きく口開きするようになる。
【0054】
(第3工程)
その後、第3工程として、
図5(C)に示されるように、前記コアエンボス23が施された吸収体4の肌当接面側に透液性表面シート3及び必要に応じてセカンドシート6を積層し、前記吸収体凹部20の内部に前記吸収体凹部20に沿ってエンボス部21を設ける。
【0055】
このとき、前記第2工程でコアエンボス23を施すことによって吸収体凹部20の開口が大きく口開きしているため、前記エンボス部21を設ける際のエンボス装置の先端部が、吸収体4の余計な部分を圧搾することなく、吸収体凹部20の内部にしっかりと進入できるようになる。このため、吸収体4とエンボス装置との位置合わせが容易になり凹溝22が加工しやすくなるとともに、余分な部分を圧搾することなく凹溝22がきれいに成形できるようになる。
【0056】
〔コアエンボス23〕
前記コアエンボス23は、吸収体凹部20から一定の距離だけ離れた位置に配置するのが好ましい。具体的には、
図6に示されるように、吸収体凹部20の縁部からの距離が10mm以上30mm以内、好ましくは10mm以上25mm以内の範囲に施すようにする。吸収体凹部20からの距離が10mmより小さい範囲、すなわち図中の斜線範囲にコアエンボス23を施すと、このコアエンボス23に引きずられて吸収体凹部20の側壁の高さ(吸収体凹部20の深さ)も小さくなってしまうため、凹溝22の容積が減少して体液の吸収性能が低下するおそれがある。一方、30mmより遠い範囲に設けた場合、吸収体凹部20の側壁を外側に倒れ込ませる効果があまり期待できないため好ましくない。吸収体凹部20の縁部からの距離は、コアエンボス23の縁部から吸収体凹部20の縁部までの最短の直線距離での長さである。
【0057】
コアエンボス23の平面形状は、種々のパターンで形成することが可能である。
図1に示される例では、吸収体凹部20の両側にそれぞれ、吸収体凹部20とパッド幅方向に重なる範囲を含むパッド長手方向に沿って1条の連続する直線のパターンで形成されている。吸収体凹部20とパッド幅方向に重なる範囲を含む吸収体凹部20の長さと同等以上の長さで形成することによって、吸収体凹部20が全長に亘って口開きするようになる。
【0058】
図1に示される例では、直線パターンが吸収体4の長手方向中間までとしてあるが、
図7(A)に示されるように、吸収体4の全長に亘って設けることも可能である。これによって、吸収体4の全長に亘って中央部からコアエンボス23側への体液の拡散性を向上させることができるようになる。
【0059】
また、
図1ではコアエンボス23を吸収体凹部20の両側にそれぞれ1条ずつ設けているが、
図7(B)に示されるように、パッド幅方向に離間して複数条ずつ設けてもよい。図示例では3条ずつ設けてある。複数条で設ける場合には、全て同じ長さで形成してもよいし、図示例のように内側のコアエンボス23が前後とも徐々に短くなるように設けてもよい。ただし、少なくとも1条のコアエンボス23が吸収体凹部20の全長に亘ってパッド幅方向に重なる長さを有するようにする。コアエンボス23を複数条設けることによって、吸収体凹部20がよりはっきりと口開きするようになるとともに、圧密化領域がより広い範囲に亘って形成されるため体液の拡散性がより一層向上するようになる。複数条設ける場合の圧搾順序は、複数条のコアエンボス23、23…を同時に圧搾してもよいが、吸収体凹部20の両側壁を外側に引っ張る効果を発揮しやすくするため、外側に位置するコアエンボス23から順に内側に向けて1条ずつ設けるようにしてもよい。
【0060】
更に、前記コアエンボス23は、
図7(C)に示されるように、パッド長手方向に圧搾部と非圧搾部とが交互に複数配置された不連続線状パターンで設けることも可能である。このパターンでは、圧搾による吸収体凹部20の口開きや体液拡散という効果が多少低下するものの、コアエンボス23を設けることによる吸収体の高剛性化が抑えられるようになる。
【0061】
また、前記コアエンボス23は、
図7(D)に示されるように、曲線状パターンで設けることも可能である。図示例では、内側に向けて膨出する円弧状パターンで形成されている。なお、図示例では、パッド幅方向端部まで連続する領域を全面に亘って圧搾してあるが、パッド長手方向にほぼ沿う1又は複数条の曲線状パターンで形成してもよい。
【0062】
前記コアエンボス23は、
図7(D)に示されるように、パッド幅方向端部まで連続する領域を全面に亘って圧搾することも可能である。これによって、コアエンボス23の効果がより明確に発揮されるようになるとともに、吸収体4の両側部が薄肉化するので、装着感が向上するようになる。
【0063】
前記コアエンボス23は、図示しないが、この他に所定の領域に対し複数のドットを付与したドット状パターンや、複数のパッド長手方向線とパッド幅方向線とを交差させた格子状パターンなど、種々のパターンで設けることが可能である。
【0064】
前記コアエンボス23は、吸収体凹部20の両側だけでなく、
図8に示されるように、吸収体凹部20の前側及び後側にも施すことができる。この吸収体凹部20の前後部のコアエンボス23は、マシン流れ方向をパッド長手方向に合わせた縦流れの場合、パッド長手方向に対してマシン送りのばらつきが大きくなるため、エンボスの加工精度向上の観点からは必ずしも設ける必要はないが、吸収体凹部20の前後方向への拡散性が向上し、吸収体全体を効率的に使用できるため、より少ないパルプ量やポリマー量で多くの体液を吸収できるようになるという点からは、この部分にもコアエンボス23を設けるのが好ましい。
【0065】
前記吸収体凹部20の前後部に設けるコアエンボス23の平面形状は、
図8に示されるように、(A)前後端縁がそれぞれパッド長手方向の外方側に向けて膨出する円弧によって画成された領域を全面に亘って圧搾したパターン、(B)略パッド幅方向に沿うとともに、パッド長手方向の外方側に向けて膨出する1又は複数条の曲線からなるパターン、(C)パッド長手方向及び幅方向に間隔をあけて複数の圧搾部を千鳥状又は格子状に配置したパターン、(D)パッド幅方向に沿うとともに、パッド長手方向の外方側に向けて膨出する2条の円弧線をパッド長手方向に間隔をあけて配置するとともに、前記2条の円弧線に跨るようにパッド長手方向に沿う直線をパッド幅方向に間隔をあけて複数配置したパターン、などとすることができる。
【0066】
前記吸収体凹部20の前後部に設けるコアエンボス23は、吸収体凹部20の両側部に設けるコアエンボス23と連続するように配置してもよいし(
図8(D)参照。)、離間するように配置してもよい。
【0067】
図7(B)、(D)及び
図8に示されるように、前記コアエンボス23が吸収体凹部20側から外方側に向けて連続的又は不連続的に設けられる場合、圧搾圧を全ての領域で一定としてもよいし、外方側に位置するコアエンボス23の圧搾圧の方が、内方側に位置するコアエンボス23の圧搾圧より、連続的又は段階的に徐々に高くなるように設定してもよい。外方側に向けて圧搾圧が徐々に高くなるように設定することにより、外方側に向けて吸収体4の密度が徐々に高くなる繊維の密度勾配が形成されるようになり、体液の拡散性が更に増して、パルプやポリマー量を増やさなくても吸収体4の体液保有容量を最大限に有効活用でき、吸収性能を向上させることができるようになる。