(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6033776
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】歯科用インプラント及びアバットメントシステム
(51)【国際特許分類】
A61C 8/00 20060101AFI20161121BHJP
【FI】
A61C8/00
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-530144(P2013-530144)
(86)(22)【出願日】2011年7月13日
(65)【公表番号】特表2013-540001(P2013-540001A)
(43)【公表日】2013年10月31日
(86)【国際出願番号】US2011043784
(87)【国際公開番号】WO2012039819
(87)【国際公開日】20120329
【審査請求日】2014年7月3日
(31)【優先権主張番号】61/386,155
(32)【優先日】2010年9月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513070440
【氏名又は名称】ジンマー デンタル,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100133008
【弁理士】
【氏名又は名称】谷光 正晴
(72)【発明者】
【氏名】エミリー ミラー
(72)【発明者】
【氏名】エイラ エー.マッゲイ
(72)【発明者】
【氏名】エリカ エチェバーリア
【審査官】
胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第07303396(US,B2)
【文献】
特表2008−546448(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3012791(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0127643(US,A1)
【文献】
特表2008−529661(JP,A)
【文献】
特開平05−023356(JP,A)
【文献】
特開昭63−318938(JP,A)
【文献】
ノーベル・バイオケア・ジャパン株式会社,"ノーベルエステティック補綴修復マニュアル",[olilne],日本,ノーベル・バイオケア・ジャパン株式会社,2009年 1月27日,32, 35, 39, 45, 50頁,[平成28年 1月14日検索],インターネット,<URL:https://web.archive.org/web/*/http://www.nobelbiocare.co.jp/product/pdf/esthetics_manual.pdf>(URLは、インターネットアーカイブのウェイバックマシンに蓄積された文献のPDFファイルを示します。)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合ユニット歯科用インプラントシステム(100)であって、
おねじ(14)とめねじ部(22)を有する中心の穴(18)とを備えるねじ加工されたシャフト(12)を有した歯科用インプラント(16)であって、前記中心の穴(18)が、中心長手方向軸線を画成する歯科用インプラント(16)と、
本体部(52)と該本体部(52)の穴(70)に挿入可能な保持ねじ(54)とを有する傾けられたアバットメント(50)であって、前記本体部(52)が、当該傾けられたアバットメント(50)と前記歯科用インプラント(16)との間の相対回転を防ぐために前記歯科用インプラント(16)の前記穴(18)に挿入されるように構成された回転防止部(62)を有し、前記保持ねじ(54)が、前記歯科用インプラント(16)の前記めねじ部(22)に対して相補的なおねじ部(56)によって、前記本体部(52)を前記歯科用インプラント(16)へと固定し、当該傾けられたアバットメント(50)の前記本体部(52)が、コーピング(120)を受容するように構成されたテーパー状のコーン部(66)を有する傾けられたアバットメント(50)と、
前記傾けられたアバットメント(50)と置換可能なストレートアバットメント(30)であって、前記歯科用インプラント(16)の前記めねじ部(22)に対して相補的なおねじ部(32)を有し、コーピング(120)を受容するように構成されたコーン部(36)を有する、ストレートアバットメント(30)と、
複数のコーピング(120)であって、それぞれのコーピング(120)が、置換可能に前記ストレートアバットメント(30)の前記コーン部(36)及び前記傾けられたアバットメント(50)の前記テーパー状のコーン部(66)と自在に咬合するように構成されたテーパー状の空洞部を有した複数のコーピング(120)と、を具備し、
前記本体部(52)の前記穴(70)が、前記歯科用インプラント(16)の前記中心長手方向軸線と同軸となるように構成された第1の軸線を具備し、前記傾けられたアバットメント(50)が、前記本体部(52)の穴(70)に至らずに終端する、前記テーパー状のコーン部(66)内の第2の穴(68)を更に具備し、該第2の穴(68)が、前記第1の軸線に対して鋭角(B)で方向付けられた第2の軸線を画成し、前記第2の穴がねじ加工されている複合ユニット歯科用インプラントシステム。
【請求項2】
前記保持ねじ(54)が、2つの軸線方向に離間したねじ部(56)、(72)を具備する請求項1に記載の複合ユニット歯科用インプラントシステム(100)。
【請求項3】
前記保持ねじ(54)の前記2つの離間したねじ部(56)、(72)が、同等にサイズ化された径及びねじ部を有する請求項2に記載の複合ユニット歯科用インプラントシステム(100)。
【請求項4】
前記本体部(52)が、前記歯科用インプラント(16)とのその接触部においてカフ(64)を具備する請求項1に記載の複合ユニット歯科用インプラントシステム(100)。
【請求項5】
前記傾けられたアバットメント(50)の前記カフ(64)が、コーン部(66)の下部に位置し、最大7mmの高さを有する請求項4に記載の複合ユニット歯科用インプラントシステム(100)。
【請求項6】
前記ストレートアバットメントの前記コーン部が、ねじ付き穴を有する、請求項1に記載の複合ユニット歯科用インプラントシステム。
【請求項7】
前記傾けられたアバットメントの前記コーン部が、ねじ付き穴を有する、請求項6に記載の複合ユニット歯科用インプラントシステム。
【請求項8】
前記ストレートアバットメントの前記コーン部の前記ねじ付き穴及び前記傾けられたアバットメントの前記ねじ付き穴が共に、同等のピッチ及び径のねじ部を有する、請求項7に記載の複合ユニット歯科用インプラントシステム。
【請求項9】
前記傾けられたアバットメントの前記ねじ付き穴の中心長手方向軸線が、前記本体部の前記穴に対して鋭角を成す、請求項7に記載の複合ユニット歯科用インプラントシステム。
【請求項10】
前記複数のコーピングが、テーパー状の空洞部であって、前記ストレートアバットメントの前記コーン部及び前記傾けられたアバットメントの前記コーン部と置換可能に係合するように構成されたテーパー状の空洞部を有する、請求項1に記載の複合ユニット歯科用インプラントシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アバットメント及び歯科用インプラントと共に用いるための他の構成要素に関する。より詳細には、本開示は、臨床医に多様性を提供する一方で必要な構成要素の総数を減らす歯科用インプラントと共に用いるためのアバットメントの選択に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科用インプラントは、歯科用補綴部(dental restoration)のための固定部材としてよく用いられる。従来、歯科用インプラントは、患者の下顎又は上顎へとドリル加工された穴へとねじ込まれる。インプラントは、インプラント及び歯科用補綴部間に接触部を同様に提供する歯科用アバットメントのための固定部材を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
臨床医に多くの構成要素の選択の多様性を与え、必要な構成要素の総数を減らし、それによってシステム全体を簡易化する複合ユニット歯科用インプラントシステムを設けることは好適となる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、代わりとなる様々な設計、材料及び医療装置構造及び組立体の製造方法に関する。
【0005】
従って、1つの例示的実施形態は、複合ユニット歯科用インプラントシステムである。システムは、おねじとめねじ部を有する中心の穴とを備えたねじ加工されたシャフトを含む歯科用インプラントを有する。システムは、ストレートアバットメント及び傾けられたアバットメントも有する。ストレートアバットメントは、歯科用インプラントのめねじ部に対して相補的なおねじ部を有する。ストレートアバットメントは、コーピングを受容するように構成されたコーン状区分を有する。傾けられたアバットメントは、本体部と本体部の穴に挿入可能な保持ねじとを有する。本体部は、傾けられたアバットメントと歯科用インプラントとの間の相対回転を防ぐ、歯科用インプラントの穴に挿入されるように構成された回転防止形状を有し、保持ねじは、歯科用インプラントのめねじ部に対して相補的なおねじ部で本体部を歯科用インプラントへと固定する。傾けられたアバットメントの本体部は、コーピングを受容するように構成されたコーン状区分を有する。システムは、ストレートアバットメントのコーン状区分及び傾けられたアバットメントのコーン状区分に自在に適合するように構成された複数のコーピングも有する。
【0006】
いくつかの例示的実施形態の上述した概要は、それぞれの開示された実施形態を説明しようとするものではなく、本発明に係る全ての実施形態を説明しようとするものでもない。
【0007】
本発明は、様々な実施形態に係る以下の詳細な説明の検討事項において添付の図面と共に、より完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】ストレートアバットメント及び歯科用インプラントの斜視分解図である。
【
図2】歯科用インプラントに結合されたストレートアバットメントの斜視図である。
【
図2A】
図2の歯科用インプラントに結合されたストレートアバットメントの断面図である。
【
図3】傾けられたアバットメント及び歯科用インプラントの斜視分解図である。
【
図4】歯科用インプラントに結合されたアバットメントの斜視図である。
【
図4A】
図4の歯科用インプラントに結合されて傾けられたアバットメントの断面図である。
【
図5】歯科用インプラントと共に用いるための傾けられたアバットメントの第1の斜視図である。
【
図6】歯科用インプラントと共に用いるための傾けられたアバットメントの第2の斜視図である。
【
図7】歯科用インプラントと共に用いるための傾けられたアバットメントの前面図である。
【
図8】歯科用インプラントと共に用いるための傾けられたアバットメントの背面図である。
【
図9】歯科用インプラントと共に用いるための傾けられたアバットメントの第1の側面図である。
【
図10】歯科用インプラントと共に用いるための傾けられたアバットメントの第2の側面図であり、第1の側面図の左右対称の図である。
【
図11】歯科用インプラントと共に用いるための傾けられたアバットメントの上面図である。
【
図12】歯科用インプラントと共に用いるための傾けられたアバットメントの底面図である。
【
図13】生体構造における傾けられたアバットメント及び歯科用インプラントの例示的配置を示す。
【
図14】生体構造におけるストレートアバットメント及び歯科用インプラントの例示的配置を示す。
【
図15】ここで示されたストレートアバットメント又は傾けられたアバットメントに自在に用いられる付加的構成要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は様々な変形例及び別の形式に変形可能であるが、その仕様は、図中で例示によって示され、詳細に説明される。しかし、当然のことながら、本発明に係る態様を説明された特定の実施形態に限定しようとするものではない。むしろ、本発明の精神と範囲に属する全ての変形例、均等物及び選択肢を包含することを意図する。
【0010】
特許請求の範囲又は本明細書中の他の箇所において異なる定義が設けられない限り、所定の用語のため、これらの定義が適用される。
【0011】
ここで、全ての数値は、明確に示しているか否かにかかわらず、語「約」を付して変更されるものとみなされる。「約」という語は、概して当業者が列挙された値と同等であるとみなす(例えば同等の機能又は結果を有する)範囲に関する。多くの場合、「約」という語は、最も近い有効数字に近似された数字を含むものとして示され得る。
【0012】
終値による数値範囲の記載は、範囲内の全ての数値を含む(例えば1から5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4及び5を含む)。
【0013】
様々な構成要素、特徴及び/又は仕様に関するいくつかの適した寸法、範囲及び/又は値が開示されているが、本開示によって記載された技術の当業者は、好適な寸法、範囲及び/又は値が明確に開示されたものと異なり得ることを理解する。
【0014】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いられたように、単数形「1つの(a、an)」及び「その(the)」は、内容が明確に別のことを指示しない限り、複数の対象物も含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いられたように、「又は」という語は、内容が明確に別のことを指示しない限り、その意味において、概して「及び/又は」を含んで使用される。
【0015】
以下の詳細な説明は、様々な図面における同等な要素に同等の符号が付された図面を参照しつつ参照されたい。詳細な説明及び必ずしも原寸ではない図面は、例示的実施形態を示し、本発明に係る範囲を限定しようとするものではない。示された例示的実施形態は、例示としてのみ意図されている。任意の例示的実施形態に係る選択された特徴は、明確に反対のことを記載しない限り、付加的例示的実施形態に組み込まれてもよい。
【0016】
図1及び
図2は、歯科用補綴部に用いられるために歯科用インプラント10に固定されるように構成されたストレートアバットメント30を示す。インプラント10は、例えば略円筒形状であってもよく、或いは、テーパー形状であってもよい。歯科用インプラント10は、例えばチタン又はステンレス鋼のような生体適合性の良い材料から形成された単一の部材であってもよい。インプラント10は、インプラント10の歯冠又は近位端におけるヘッド部16と、ヘッド部16からインプラント10の先端又は遠位端へと延在する茎部12と、を有してもよい。茎部12は、おねじ14又は歯科用インプラント10の埋入中に骨と係合するための多孔質金属スキャフォールドのような他の係合特徴部を有してもよい。
【0017】
インプラント10は、インプラント10の歯冠又は近位端からインプラント内へと延在する穴18を有してもよい。穴18の中心軸線は、インプラント10の中心長手方向軸線と同軸であってもよい。穴18の近位端は、インプラント10を回転可能に骨に挿入するためのドライバーを受容するように構成されてもよい。例えば、穴18の近位端は、六角ドライバーをそこに受容するための六角穴20を有してもよい。インプラント10は、アバットメントをインプラント10へと設置するためのアバットメント接触構造を有してもよい。場合によっては、六角穴20は、アバットメント接触構造の少なくとも1つの構成要素として設けられてもよい。インプラント10とアバットメントとの間のアバットメント接触構造は、以下で示されたようなアバットメントの外部六角部を受容するインプラント10内の六角穴20として示されているが、場合によっては、構成は逆にされてもよい。更に、スプライン、八角形、ローブ、トルクス(登録商標)、他の幾何学的形状及び他の係合構成といったインプラント/アバットメント接触部の他の形式も想定される。
【0018】
アバットメント接触構造は、付加的に又はそれに代えて
図2A及び
図4Aに示されたようなめねじ部22であって、それによってアバットメントをインプラント10へと設置するアバットメントの構成要素にねじ込み可能に係合するための、穴18のめねじ部22を有してもよい。
【0019】
ストレートアバットメント30は、インプラント10へと固定されるように構成されてもよい。例えば、ストレートアバットメント30は、おねじ部32であって、穴18のめねじ部22と咬合し、それによってねじ込み可能にめねじ部22と係合するように構成されたおねじ部32を含んでもよい。ストレートアバットメント30は、単一部材であってもよく、カフ34及びそこに延在するねじ付き穴38を有するコーン部36を有してもよい。ストレートアバットメント30は、おねじ部32及びねじ付き穴38の中心長手方向軸線であるストレートアバットメント30の中心長手方向軸線が、インプラント10の中心長手方向軸線と同軸であるように構成されてもよい。
【0020】
図2Aに示されるように、テーパー状のコーン部36は、約3.5(°)から約20(°)の範囲内において角度Aを有してもよく、示されたシステムは、増大する増分において約3.5(°)から約20(°)の様々なコーン角度Aを有する一連のストレートアバットメント30を有してもよい。
図2Aにおいても示されるように、カフ34は、約0mmから約7mmの範囲内における高さHを有してもよく、示されたシステムは、例えば1mmの増分において約0mmから約7mmまでの様々なカフ34高さHを有する一連のストレートアバットメント30を有してもよい。
【0021】
図3及び
図4は、歯科用補綴部に用いるために歯科用インプラント10に固定されるように構成された傾けられたアバットメント50を示す。傾けられたアバットメント50は、インプラント10に固定されるように構成されてもよく、従って、選択されたアバットメントによって用いられるための様々なインプラント10を必要としない。
【0022】
傾けられたアバットメント50は、本体部52と、本体部52をインプラント10に固定するように構成された保持ねじ54と、を有してもよい。傾けられたアバットメント50の本体部52は、インプラント10に対する傾けられたアバットメント50の回転を防ぐために、インプラント10のアバットメント接触構造20と係合及び咬合するように構成された回転防止接触構造62を有してもよく、インプラント10の中心長手方向軸線周りの複数の所定の回転方向のうちの1つにおいて、傾けられたアバットメント50の一貫した回転位置を可能とする。例えば、回転防止接触構造62は、インプラント10の中心長手方向軸線周りの6角配置のうちの1つにおけるインプラント10の六角穴20内へと挿入可能な六角突起部であってもよい。回転防止接触構造62は、傾けられたアバットメント50とインプラント10との間の相対回転を防ぐためのインプラント10のアバットメント接触構造に係合且つ咬合する様々な構成であってもよいことに留意されたい。
【0023】
本体部52は、保持ねじ54によってインプラント10に固定されてもよい。例えば、保持ねじ54は、穴70に配置されてもよく、ヘッド部58の六角穴60と係合されたドライバーを用いた保持ねじ54の続く回転は、保持ねじ54のおねじ部56をインプラント10の穴18のめねじ部22と回転可能に係合させてもよい。
【0024】
本体部52を通る穴70は、ねじ加工されていない近位部とねじ加工されていない遠位部との中間に配置されたねじ部72を有してもよい。穴70のねじ部72は、保持ねじ54のおねじ部56が、保持ねじ54を回転してねじ部52を通してねじ込まれることなくねじ部72を通過できないようにサイズ化されてもよい。保持ねじ54のヘッド部58は、ヘッド部58がねじ部72を通過できないようにねじ部72より大きくサイズ化されてもよい。
【0025】
図4Aからわかるように、保持ねじ54のおねじ部56の外径は、穴70のねじ加工されていない近位部及びねじ加工されていない遠位部の径より小さくてもよく、保持ねじ54のおねじ部56の外径は、穴70のめねじ部72の外径より小さくてもよい。同様に、保持ねじ54のおねじ部56の内径は、穴70のめねじ部72の内径より小さくてもよい。こうした構成は、保持ねじ54のねじ部が穴70のねじ部72を通してねじ込まれることを可能とするが、ねじ部56が、回転運動なく軸線方向にねじ部72を通過するのを妨げる。
【0026】
単一部材であってもよい本体部52は、カフ64とそこに延在するねじ付き穴68を有するコーン部66とを有してもよい。本体部52は、本体部52をインプラント10に固定するため、保持ねじ54をそこに受容するための長手穴70を有してもよい。傾けられたアバットメント50は、回転防止接触構造62の中心長手方向軸線である傾けられたアバットメント50の穴70の中心長手方向軸線が、インプラント10の中心長手方向軸線と同軸であるように構成されてもよい一方で、コーン部66及びねじ付き穴68の中心長手方向軸線が、穴70の中心長手方向軸線に対して鋭角Bをなしてもよい。
【0027】
図4Aに示されるように、テーパー状のコーン部66は、約3.5(°)から約20(°)の範囲内において角度Aを有してもよく、示されたシステムは、増大する増分において約3.5(°)から約20(°)の様々なコーン角度Aを有する一連の傾けられたアバットメント50を有してもよい。
図4Aにも示されるように、カフ64は、約0mmから約7mmの範囲内の高さHを有してもよく、例えば1mmの増分において約0mmから約7mmの様々なカフ64高さHを有する示されたシステムは、一連の傾けられたアバットメント50を有してもよい。更に、傾けられたアバットメント50は、コーン部66のねじ穴68の中心軸線と穴70及び保持ねじ54の中心軸線との間に、0(°)より大きく30(°)までの角度Bを有してもよく、示されたシステムは、約10(°)から約30(°)の間の様々な角度Bを有する一連の傾けられたアバットメント50を有する。例えば、システムは、10(°)、15(°)、17(°)、20(°)、25(°)及び30(°)の選択を有する角度Bを有する一連の傾けられたアバットメント50を有してもよい。
【0028】
図5から
図12は、傾けられたアバットメント50の様々な図面を示しており、
図5は第1の斜視図、
図6は第2の斜視図、
図7は前面図、
図8は背面図、
図9は第1の側面図、
図10は、第1の側面図の左右対称の図である第2の側面図、
図11は上面図、
図12は、傾けられたアバットメント50の底面図を示す。
【0029】
ストレートアバットメント30のコーン部36は、傾けられたアバットメント50のコーン部66と同等のサイズ及び形状であってもよく、ストレートアバットメント30のめねじ加工された穴38は、傾けられたアバットメント50のめねじ加工された穴68と同等のねじサイズ及びピッチを有してもよく、こうして共通のコーピング及び締結部が、ストレートアバットメント30及び傾けられたアバットメント50と共に用いられることを可能とする。そのように、システムは、少ない構成要素を必要とし、システムの構成要素間の適合性と、システムの構成要素の汎用性と、を向上させる。
【0030】
図13は、インプラント10が解剖学的構造の特徴部を避けるために傾けられて配置されるインプラント10及び傾けられたアバットメント50の従来の手術の配置を示しており、傾けられたアバットメント50は、歯科用補綴部の挿入及び除去の共通線を設けるべくインプラント10の角度を修正するために用いられる。
図14は、歯科用補綴部の挿入及び取り外しの共通線を設けるインプラント10及びストレートアバットメント30の従来の手術の配置を示す。従って、ストレートアバットメント30の任意の組合せ及び傾けられたアバットメント50は、歯科用補綴部の挿入及び取り外しの共通線を維持しながら用いられてもよい。
【0031】
ねじで保持されたアバットメントシステムは、取り外し可能な義歯に固定される完全な口蓋を短期間で製造するため、歯科インプラント学においてよく用いられる。複合ユニット歯科用インプラントシステム100がここで示されたが、その構成要素は、
図15に示され、生体構造及び様々な治療の選択の違いに対処するための構成要素の完全な選択を設けることによってねじで保持された補綴部の形成を簡易化する。歯科用インプラント10に加え、複合ユニットシステム100は、多様なカフの高さの一連のストレートアバットメント30と、多様なカフの高さ及び角度の一連の傾けられたアバットメント50と、を有する。複合ユニットシステム100は、アバットメントレベルのインプレッション(abutment-level impressions)を実現するユニバーサル伝達システム110も有する。ユニバーサル伝達システム100は、アバットメント30、50の傾けられた形式及びストレートの形式の両方のため、同等の構成要素を用いる。同様に、複合ユニットシステム100は、ねじで保持されたアバットメントの全てのカフの高さ及び角度に適合する仮の補綴部及び最終補綴部の両方のためのユニバーサルコーピングシステムを有する。システムは、一時的コーピング120(チタン又はプラスチック)、プラスチック被覆管を有するゴールドコーピング130(最終)、チタンコーピング140(最終)、及び、プラスチックコーピング150(最終)を含む。必要に応じて、システムは、セラミック又はアクリル又は複合材料のような他の材料から成るコーピングを有してもよい。設けられたコーピング及び伝達部は、システム100のストレートアバットメント30及びシステム100の傾けられたアバットメント50の両方と共に用いるために適合されてもよい。例えば、コーピングのそれぞれは、そこにアバットメント30、50のコーン部36、66を受容するために円錐台又はテーパー状の空洞部を有してもよく、このようにしてコーピングは、コーン部36、66と密接に係合する。従って、コーピングは、ストレートアバットメント30及び傾けられたアバットメント50と共に置換可能に用いられてもよい。
【0032】
使用時において、臨床医は、ケースプランを行い、次いで、好適には最も骨のある位置を利用し且つ解剖構造(anatomical structure)を避けて歯科用インプラントを配置する。次いで臨床医は、角度を修正するためにアバットメントを選択し、これらのアバットメントを関連したインプラントに固定する。ユニバーサル伝達部は、技術の必要な標準のインプレッション(印象)を用いてインプラントの位置を記録するために用いられ、インプレッションも同様にストーンモデルを形成するために用いられる。ストーンモデルは、最終的人工補綴部を形成するために歯科の研究室において用いられる。
【0033】
最終的人工補綴部の形成を容易にするため、臨床医は、貴金属補綴部を形成するためにプラスチック被覆管を備えたゴールドコーピングを用いてもよい。例えば、ロストワックスインベストメント鋳造工程が、ゴールドコーピングを最終的人工補綴部へと鋳込むために用いられてもよい。コーピングは、アバットメントのコーン形状に正確な適合性を設け得る。なお、全てのプラスチックコーピングが鋳造に用いられてもよい。歯科用補綴部を形成するための別の工程は、チタンコーピングを用いてもよい。
【0034】
ここで示された複合ユニットシステムを提供する設計及び部品は、臨床医に多くの多様性を提供する一方で、必要な構成要素の総数を減らし、従って、全体のシステムを簡易化する。設計的特徴は、例えばシステムの簡易性の向上も目的とする。分離した保持ねじで連結されたアバットメントの単一の本体部において形成されたストレートアバットメント及び/又は回転防止接触部の単一のアバットメント構成は、システムの簡易性に貢献すると共に、伝達部及びコーピングの汎用性に貢献する。従って、複合ユニット歯科用インプラントシステムは、ある程度の、様々なカフの高さ及び角度の選択により、且つ、人工歯を形成するためのコーピングの、完全に咬合する能力により、システムが汎用的であるため、使用者に、利便性を提供する。システムは、様々なカフの高さと角度の選択との間の部品の共通性及び結果として部品数を減らせるということからも好適でもある。
【0035】
当業者は、本発明がここで説明され且つ考慮された詳細な実施形態以外の様々な形式で明示されてもよいことを理解する。従って、形式及び詳細の相違は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲及び精神から逸脱することなく生じ得る。