(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一対の電極は高さ方向に沿った縦向きに所定の間隔で設けられており、前記回転移動磁界装置本体は縦向きの軸線の回りに回転可能に設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の金属溶湯攪拌装置。
前記一対の電極は高さ方向と交差する横向きに所定の間隔で設けられており、前記回転移動磁界装置本体は横向きの軸線の回りに回転可能に設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の金属溶湯攪拌装置。
前記回転移動磁界装置本体は、1又は複数の前記永久磁石を備え、高さ方向に沿った縦向きの軸線又は高さ方向と交差する横向きの軸線の回りに同一の磁極が並んでいる、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の金属溶湯攪拌装置。
前記回転移動磁界装置本体は、1又は複数の前記永久磁石を備え、高さ方向に沿った縦向きの軸線又は高さ方向と交差する横向きの軸線の回りに異なる磁極が交互に並んでいる、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の金属溶湯攪拌装置。
第1組と第2組の2組の前記一対の電極を備え、前記第1組の前記一対の電極は高さ方向に沿った縦向きに所定の間隔で設けられており、前記第2組の前記一対の電極は高さ方向と交差する横向きに所定の間隔で設けられており、
前記回転移動磁界装置本体は、縦向きの軸線の回りに回転可能に設けられる第1設置位置と、横向きの軸線の回りに回転可能に設けられる第2設置位置と、を切り替え可能に採り得る、
ことを特徴とする請求項1に記載の金属溶湯攪拌装置。
前記一対の電極は高さ方向に沿った縦向きに所定の間隔で設けられており、前記回転移動磁界装置本体は高さ方向と交差する横向きの軸線の回りに回転可能に設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の金属溶湯攪拌装置。
前記回転移動磁界装置本体は、1又は複数の前記永久磁石を備え、前記横向きの軸線の回りに同一の磁極が並んでいる、ことを特徴とする請求項8記載の金属溶湯攪拌装置。
前記回転移動磁界装置本体は、1又は複数の前記永久磁石を備え、前記横向きの軸線の回りに異なる磁極が交互に並んでいる、ことを特徴とする請求項8記載の金属溶湯攪拌装置。
前記一対の電極間に交流電流を流す電源装置が接続され、前記交流電流の周期は、前記回転移動磁界装置本体における前記異なる磁極の回転周期との関係で制御され、前記第1の電磁力を同じ方向に前記溶湯を駆動するものとする、ことを特徴とする請求項5に記載の金属溶湯攪拌装置。
前記回転移動磁界装置本体は、1又は複数の前記永久磁石を備え、高さ方向に沿った縦向きの軸線の回りに同一の磁極が並んでいる、ことを特徴とする請求項13記載の金属溶湯攪拌装置。
前記回転移動磁界装置本体は、1又は複数の前記永久磁石を備え、高さ方向に沿った縦向きの軸線の回りに異なる磁極が交互に並んでいる、ことを特徴とする請求項13記載の金属溶湯攪拌装置。
前記一対の電極間に交流電流を流す電源装置が接続され、前記交流電流の周期は、前記回転移動磁界装置本体における前記異なる磁極の回転周期との関係で制御され、前記異なる磁極が回転しても前記第1の電磁力を同じ方向に前記溶湯を駆動するものとする、ことを特徴とする請求項15に記載の金属溶湯攪拌装置。
前記炉本体を構成する第1側壁と、前記攪拌炉を構成する第2側壁とが、前記開口を形成するように互いに接続されている、ことを特徴とする請求項18乃至20の1つに記載の金属溶湯攪拌装置。
前記一対の電極間に交流電流を流す電源装置が接続され、前記交流電流の周期は、前記回転移動磁界装置本体における前記異なる磁極の回転周期との関係で制御され、前記異なる磁極が回転しても前記第1の電磁力を同じ方向に前記溶湯を駆動するものとする、ことを特徴とする請求項24に記載の金属溶湯攪拌装置。
前記一対の電極を、前記通路部材の前記通路内に、高さ方向と交わる横向きに、所定の間隔をもって、設けた、ことを特徴とする請求項27又は28に記載の金属溶湯移送装置。
前記回転移動磁界装置本体は、1又は複数の前記永久磁石を備え、高さ方向と交差する横向きの軸線の回りに同一の磁極が並んでいる、ことを特徴とする請求項27乃至30のいずれかに記載の金属溶湯移送装置。
前記回転移動磁界装置本体は、1又は複数の前記永久磁石を備え、高さ方向と交差する横向きの軸線の回りに異なる磁極が交互に並んでいる、ことを特徴とする請求項27乃至30のいずれかに記載の金属溶湯移送装置。
前記一対の電極間に交流電流を流す電源装置が接続され、前記交流電流の周期は、前記回転移動磁界装置本体における前記異なる磁極の回転周期との関係で制御され、異なる磁極が回転しても前記第1の電磁力を同じ方向に前記溶湯を駆動するものとする、ことを特徴とする請求項32に記載の金属溶湯移送装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記ニーズを満たす装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の金属溶湯攪拌装置は
導電性の金属の溶湯を収納する収納室を有する炉本体と、
前記炉本体内の溶湯を駆動して攪拌するための回転可能な回転移動磁界装置本体と、
を備え、
前記回転移動磁界装置本体は永久磁石を有し、前記回転移動磁界装置本体の回転に伴って、前記永久磁石から出る又は前記永久磁石へ入る出力/入力磁力線が前記溶湯を貫通した状態で移動し、この移動により生じる渦電流により前記溶湯を駆動する第1の電磁力を生じさせ、
前記炉本体は、前記溶湯を介して電流を流し得る少なくとも一対の電極を有し、前記一対の電極は、前記収納室内の、前記一対の電極間に流れる電流と前記出力/入力磁力線が交差して前記第1の電磁力と同方向に前記溶湯を駆動する第2の電磁力を生じさせる位置に設けられており、
前記第1の電磁力と前記第2の電磁力との合成駆動力によって前記収納室内の前記溶湯を駆動攪拌するようにした、
ものとして構成されている。
【0007】
本発明の金属溶湯攪拌装置は、
導電性の金属の溶湯を収納する収納室を有する炉本体を含むメインバス部と、
前記炉本体内の溶湯を駆動して攪拌するための攪拌部と、
を備え、
前記攪拌部は、前記炉本体内の前記溶湯を流出させその後に前記炉本体内に流入させる循環用の溶湯通路を有する通路部材と、前記溶湯通路内の前記溶湯を駆動する第1の電磁力を生じさせる回転可能な回転移動磁界装置本体と、を備え、
前記炉本体は側壁に穿けた溶湯流出口と溶湯流入口を有し、前記溶湯流出口と前記溶湯流入口は、前記通路部材を介して、前記炉本体から流出した溶湯が前記溶湯通路を通って前記炉本体に流入する環流を許容するように連通され、
前記回転移動磁界装置本体は前記通路部材の外部に設けられており、高さ方向に沿った縦軸の回りに回転可能とされ、前記回転移動磁界装置本体の回転に伴って、前記永久磁石から出る又は前記永久磁石へ入る出力/入力磁力線が前記溶湯通路内の前記溶湯を貫通した状態で移動し、この移動により生じる渦電流により前記第1の電磁力を生じさせ、前記第1の電磁力により前記溶湯を前記溶湯通路内で前記溶湯流出口から前記溶湯流入口に向かうように駆動し、
前記通路部材の前記溶湯通路内に、少なくとも一対の電極を、前記一対の電極間に前記溶湯を介して電流が流れ得るように、設け、
前記一対の電極は、前記溶湯通路内の、前記一対の電極間に流れる電流と前記出力/入力磁力線とが交差して前記第1の電磁力と同方向に前記溶湯を駆動する第2の電磁力を生じさせる位置に、設けられており、
前記第1の電磁力と前記第2の電磁力との合成駆動力によって前記溶湯通路内の前記溶湯を前記溶湯流出口に向けて駆動して、前記収納室内の溶湯を駆動するようにした、
ものとして構成される。
【0008】
本発明の金属溶湯攪拌装置は、
導電性の金属の溶湯を収納する収納室を有する炉本体を含むメインバス部と、
溶湯を収納室する攪拌室を有する攪拌炉と前記攪拌室内の溶湯を駆動する回転可能な回転移動磁界装置本体とを有し、前記回転移動磁界装置本体は永久磁石を有する、攪拌部と、
を備え、
前記収納室と前記攪拌室とを開口によって連通させ、
前記攪拌室の内部に仕切板を上下方向に沿った縦向きに立設し、前記仕切板によって前記開口を第1開口と第2開口に区画すると共に、前記攪拌室を前記第1開口に繋がる第1の室と前記第2開口に繋がる第2の室に区画し、
前記仕切板の後端と前記攪拌部における側壁の内面との間に隙間を設けて、前記隙間によって前記第1の室と前記第2の室とを連通させ、
前記攪拌室の外部の下方又は上方に前記回転移動磁界装置本体を上下方向に沿った縦向きの軸線の回りに回転可能に設け、前記回転移動磁界装置本体の回転により、前記永久磁石から出る又は前記永久磁石へ入る出力/入力磁力線を前記攪拌部内の溶湯を貫通した状態で移動させ、これにより生じる渦電流により第1の電磁力を生じさせ、前記第1の電磁力により前記溶湯を前記第1の室から前記隙間を通って前記第2の室へ向かうように駆動し、
さらに、一対の電極を、前記攪拌室内における、前記一対の電極間に流れる電流と前記永久磁石からの磁力線とが交差して、前記第1の電磁力と同方向に前記溶湯を駆動する、第2の電磁力を生じさせる位置に、設け、
前記第1の電磁力と前記第2の電磁力との合成駆動力によって、前記第1の室内の溶湯を前記隙間を介して前記第2の室へ向かわせ、前記第2開口から前記収納室へ流入させて、前記収納室内の溶湯を駆動するようにした、
を備えるものとして構成される。
【0009】
本発明の金属溶湯移送装置は、
第1の溶解炉から第2の溶解炉へ金属の溶湯を移送する金属溶湯移送装置であって、
前記第1の溶解炉と前記第2の溶解炉を連通する通路を有する通路部材を備え、
前記通路部材の途中における外部に、前記通路内の溶湯を駆動するための回転可能な回転移動磁界装置本体を設け、
前記回転移動磁界装置本体は永久磁石を有し、前記回転移動磁界装置本体の回転により、前記永久磁石から出る又は前記永久磁石へ入る出力/入力磁力線を前記通路内の溶湯を貫通した状態で移動させ、この移動により生じる渦電流により前記通路内の前記溶湯を前記第1の溶解炉から前記第2の溶解炉へ向けて駆動する第1の電磁力を生じさせ、
前記通路部材はその内部に前記溶湯を介して電流を流し得る一対の電極を有し、前記一対の電極は、前記一対の電極間に流れる電流と前記出力/入力磁力線とが交差して前記第1の電磁力と同方向に前記溶湯を駆動する第2の電磁力を生じさせる位置に、設けられており、
前記第1の電磁力と前記第2の電磁力との合成駆動力によって前記通路内の前記溶湯を前記第1の溶解炉から前記第2の溶解炉へ向かう方向に駆動するようにした、
を備えるものとして構成される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を説明する前に、それをより容易に把握可能なるようにするため、まず本発明の原理を、次いで本発明者が本発明をなすに至った経緯を説明する。
【0012】
以下の原理の説明では、理解し易くするために、電磁力での駆動対象として、金属の溶湯の代わりに、長尺状で且つ横断面が矩形の導電性非鉄金属板を用いて説明する。
【0013】
図1に示すように、X方向に長い導電性の非鉄金属板101を想定する。この非鉄金属板101の下方に、Y方向に長い棒状の永久磁石102を、X方向に沿って移動可能なるように、配置する。本実施形態では、前記永久磁石102として、上下両端側がN極及びS極となるように、磁化したものを用いる。これにより、永久磁石102からは磁力線MLが上方(高さ方向)に立ち上がる。前記磁力線MLは非鉄金属板101を下方から上方へ貫通する。
【0014】
さらに、非鉄金属板101の両側面に対向状態に一対の電極
2a、2aを付設する。これらの一対の電極2a、2a間に直流の電流IをY方向(幅方向)つまり横向きに沿って流す。これにより、この横向きの電流Iと前記永久磁石102からの高さ方向の磁力線MLとが交わることになる。前記磁力線MLは実際には後述するように永久磁石の回転に伴って移動するものであるが、ある条件を満たせば、非鉄金属板
101における電流Iが流れる部分には、フレミングの左手の法則に従った電磁力(ローレンツ力)fが生じる。つまり、非鉄金属板
101にはそれをX方向に駆動しようとする、フレミングの左手の法則によるローレンツ力fが加わる。
【0015】
また、このような構成において、前記永久磁石102を矢印ARの方向(X方向)に移動させる。これにより、磁力線MLは、非鉄金属板101を貫通した状態で移動することになる。これにより、非鉄金属板101の内部には、X方向に沿って、磁力線MLの前後に、渦電流104,104が発生する。この渦電流104,104により発生する磁界と永久磁石102からの磁界とが互いに吸引、反発し、非鉄金属板101にはX方向に非鉄金属板101を動かそうとする電磁力feが生じる。つまり、非鉄金属板
101にはそれをX方向に駆動しようとする、渦電流による電磁力feが加わる。
【0016】
このように、導電性の非鉄金属板101には、前記2つの電磁力fe、fが加わることとなる。つまり、非鉄金属板
101には、2つの電磁力f,feが合成された大きな合成電磁力(合成駆動力)F(=f+fe)が作用する。これにより、この大きな合成駆動力Fによって非鉄金属板
101を確実にX方向に駆動することができる。
【0017】
つまり、先ず、第1の場合として、一対の電極2a、2a間に電流Iを流す場合を考えると、フレミングの法則に従った電磁力fが発生する。次に、第2の場合として、永久磁石102は移動させる場合を考えると、渦電流による電磁力feが発生する。前記第1の場合と前記第2の場合が一緒に実現されている本発明ではこれらの2つの電磁力f,feが合成駆動力Fとして作用することになる。前記単一の電磁力fまたはfeと、本発明の合成駆動力F(=f+fe)とは、比較するまでもなく、本発明の合成駆動力Fが大きいのは明らかである。よって、非鉄金属板1はこの大きな合成駆動力Fにより確実に駆動される。
【0018】
ここで、前記非鉄金属板101を溶湯Mに置き換えて考えると、溶湯Mに前記合成駆動力Fが作用し、溶湯Mは大きな攪拌力で確実に駆動されるのが分かる。これが本発明の原理である。
【0019】
上記の原理の本発明は本発明者のみが知得し得たのであるが、その知得までの経緯を技術的に説明する。
【0020】
一般の当業者にとってと同様に、本発明者にとっても、
図1において、永久磁石102を直線的に動かせば、渦電流による電磁力feが発生するのは、直感される。しかしながら、磁界が回転する永久磁石102(実際に想定されるのは、
図2の回転移動磁界装置本体8のように、ある速度で回転する永久磁石)からの磁界であっても、上記のように、フレミングの法則に従った電磁力fがはたして本当に得られるかどうかは、当業者にとっては確信のできないことであった。このため、本発明者は多くの実験を繰り返した。これらの実験を経て得た本発明者に独自にある知識を知得した。この知得に基づき、本発明者は本発明をなすに至った。つまり、本発明は、下記の実験を行わなかった当業者は決してなし得ない発明と言わねばならない。以下にこのことを説明する。
【0021】
即ち、当業者は、2つの技術を、つまり、フレミングの法則に従った電磁力fにより溶湯Mを駆動する第1の技術(特開2011−257129号公報)と、渦電流による電磁力feで溶湯Mを駆動する第2の技術(特許第4245673号公報、特許文献2)とを知得している者と言える。しかしながら、当業者は前記2つの技術を単にばらばらに互いに無関係なものとして知得しているに過ぎない。そのため、このような当業者であっても上記のような本発明(原理)には至り得ないと言える。それは以下の理由から明らかである。即ち、前記第1の技術においては磁力線MLは静止しており且つ静止していることが要求され、第2の技術においては磁力線MLはある程度の速度で移動(回転)しており且つ移動(回転)することが要求される、と一般の当業者は直感する。このため、当業者は磁力線MLが静止している第1の技術と、移動(回転)している第2の技術とを知得していても、当業者にはこれらを組み合わせるという発想が思い浮かぶことはない。また、仮に思い浮かんだとしても、組み合わせたらどちらの技術も上手く機能しないだろうと直感し、思考はそこで止まってしまう。加えて、一般の当業者は、本発明者と異なり、前記第1の技術、前記第2の技術のそれぞれに特に不都合があるとの課題的認識は持ち合わせていない。このような種々の理由により、当業者がこれらの第1の技術、第2の技術をとりたてて改良しようとも思わないし、組み合わせようとも思わないし、組み合わせる必然性もない。つまり、一般の当業者には、前記2つの技術を組み合わせる動機付けもない。
【0022】
しかしながら、本発明者は、前述したような業界の要望に応えるべく、とにかく大きな力で確実に溶湯Mを駆動、攪拌する、従来の装置よりも優れた装置を開発すべく日夜努力を続けている。本発明者は独自に日々このように考えていたので、前記第1の技術による力fと前記第2の技術による力feをなんとか同時に用いたいと思いを独自に有するに至った。しかしながら、本発明者も、当初は、一般の当業者と同様に、これらの2つの技術を両立させることはできないのではないかとの漠然とした思いを有していた。一般の技術者はここであきらめるであろうが、本発明者は、さらなる新しい優れた装置を提供したいという思いが強かったため、何かを工夫すれば両立可能かも知れないと思うと共に、何かを工夫して必ず両立させたいという望みを捨てきれなかった。つまり、本発明者は本発明者に独自の課題を持つに至った。そのため、本発明者は、一般の当業者は行わないであろう各種の実験を何度も繰り返した。それらの実験の結果に基づいて、本発明者は本発明者に独自の知得を得ることができ、その知得に基づいて本発明をなすに至った。つまり、本発明者は、後述の回転移動磁界装置本体8の磁極数、磁極の種類、磁極間の間隔あるいは磁極間の角度、回転速度等の各種のパラメータをある値とすれば、第1の技術と第2の技術を同時に両立させて、フレミングの法則に従った電磁力fと渦電流による電磁力feの合成駆動力(複合型駆動力)Fを得ることができ、この合成駆動力Fで溶湯Mを確実に駆動攪拌できるということを独自に知得した。本発明者はこの独自の知得に基づいて本発明をなすに至ったのである。
【0023】
このように、本発明は、本発明者による独自の実験結果に基づく本発明者に独自の知得に基づいてなされたもので、上記実験を行わない他の当業者には決してなし得ない発明と言える。
【0024】
以上に説明した独自の経過で本発明者に独自に得られた知得に基づいてなされた本発明の実施形態の金属溶湯攪拌装置を図面を参照しながら以下に説明する。
【0025】
なお、以下に説明する各図における縮尺は全図において同一ではなく、図面毎に任意に選択してある。また、各実施形態において、同等の構成要素には同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0026】
(第1実施形態)
図2は、本発明の金属溶湯攪拌装置の第1実施形態を示し、(a)は平面説明図、(b)はそのb−b線に沿った縦断面説明図を示す。これらの図かわかるように、この第1の実施形態は、メインバス部10の炉本体1の側壁1aの外側に回転移動磁界装置20を設けた例を示す。
【0027】
図2(a)、(b)からわかるように、金属溶湯攪拌装置は前記メインバス部10を有する。このメインバス部10の炉本体1の収納室1Aには、導電性(伝導性)を有する金属の溶湯、即ち、非鉄金属(例えば、Al,Cu,Zn又はSi、あるいはこれらを主成分とする合金、あるいはMg合金等)の溶湯又は非鉄金属以外の金属の溶湯Mが収納される。
【0028】
前記メインバス部10の炉本体1の側壁1aには、特に
図2(b)から分かるように、上下方向(高さ方向)に沿って対向するように一対の電極2a、2aが取り付けられている。前記一対の電極2a、2aは側壁1aの内部に埋め込まれているが、必ずしも埋め込む必要はなく、内表面に付設することもできる。このことは、以下の全ての実施形態においても同様である。つまり、これらの電極2a、2aは、側壁1aから露呈して、収納された溶湯Mに接している。これにより、これらの電極2a、2a間には溶湯Mを介して高さ方向に電流Iが流れ得るようになっている。前記電極2a、2aは、配線4a、4aによって、電源装置3に接続されている。前記配線4a、4aの一部、つまり、前記電極2a、2aに近い部分は、側壁1a中に設けられて、溶湯Mには接しないようになっている。電極2a、2a間に直流電流Iを流すのは、前に説明したように、フレミングの左手の法則に従ったローレンツ力(第2の電磁力)fを得るためである。
【0029】
前記電源装置3は、制御装置(図示せず)からの制御信号によって、各種態様で直流電流、交流電流を流し得るものとして構成されている。前記直流電流に関して言えば、一対の電極2a、2aの極性を切り替え可能としている。交流電流に関して言えば、周期や波形等を選択調整可能としている。交流電流の場合において、電流Iの波形が例えば矩形波の場合は、デューティ比を変えるごとくに、1周期における正負のパルスの幅を任意に設定可能である。加えて、電源装置3は、直流電流、交流電流のいずれを出力する場合にあっても、電流値、電圧値を任意に設定可能に構成されている。
【0030】
このように、前記一対の電極2a、2a間には、上下方向に電流I(直流電流Idcが上から下に、下から上に、あるいは、交流電流Iac)が流れる。この電流Iと、回転移動磁界装置20からの磁力線MLとが交差して、フレミングの法則に従った、溶湯Mを矢印AR1〔
図2(a)〕の方向に駆動する、電磁力(第2の電磁力)fが得られる。追って詳述するところから分かるように、前記矢印AR1方向への駆動力を得るには、回転移動磁界装置20の外周がN極、S極の一方の極に磁化されている時は一対の電極2a、2a間に直流電流を流し、外周にN極とS極が交互に並んでいる場合にはN極とS極の周期(回転周期)に同期する交流電流を流す。これは、フレミングの左手の法則の電磁力として常に溶湯Mを同じ向きに、つまり矢印AR1の方向に駆動する駆動力fを得るためである。前記電源装置3によって、電極2a、2a間を流れる電流Iを直流電流、交流電流のいずれにもできるようにしているのは、後述する各種の回転移動磁界装置本体8〔
図3(a)、(b)、(c)、
図4(a)、(b)、(c)参照〕のいずれを用いても、溶湯Mに常に同じ回転方向の電磁力fを加え得るようにするためである。
【0031】
次に、前記回転移動磁界装置20について説明する。
【0032】
図2(a)、(b)から分かるように、回転移動磁界装置20は、非磁性材製のシャーシ7と、その中に回転可能に組み込まれた回転移動磁界装置本体8と、前記回転移動磁界装置本体8を右回り(又は左回り)に駆動する駆動装置(図示せず)を有する。回転移動磁界装置本体8は、特に
図2(b)から分かるように、自己から出る又は自己へ入る出力/入力磁力線MLを、炉本体2内の溶湯Mを上下方向と交差する横向きに貫かせながら回転可能に設置されている。これにより、回転移動磁界装置本体8は次のように機能することになる。即ち、特に
図2(b)において、一対の電極2a、2a間に上下方向に電流Iを流しておけば、回転移動磁界装置本体8からの横向きの磁力線MLはこの電流Iと交差する。これにより、溶湯Mを
図2(a)の矢印AR1に示すように駆動するローレンツ力(第2の電磁力)fが発生する。
【0033】
この時、この回転移動磁界装置本体8は、例えば
図2(a)に示すように、上から見て、右回りに回転している。これにより、磁力線MLが溶湯Mを横向きに貫通したまま移動する。これにより、移動する磁力線MLの前後に渦電流が発生し、この渦電流と前記磁力線MLとにより第1の電磁力feが発生する。前記渦電流による電磁力feは、先のフレミングの左手の法則による電磁力fと同様に、溶湯Mを矢印AR1の方向に駆動する。
【0034】
これにより、溶湯Mは、前記2つの第1、第2の電磁力fe、fが合成された合成駆動力Fにより、矢印AR1に沿って駆動されることになる。これにより、炉本体1内の溶湯Mは、
図2(a)の矢印AR11に示すように水平に回転する。
【0035】
前記回転移動磁界装置本体8としては種々の構成を採ることが出来る。その第1の例を
図3(a)、(b)に、その変形例を(c)に、第2の例を
図4(a)、(b)に、その変形例を(c)に示す。
【0036】
図3(a)、(b)において、回転移動磁界装置本体8は、筒状の非磁性材製のケース8Aとこの内部に回転可能に収納された回転体8Bを有する。回転体8Bは、回転中心部分に位置する長尺状の基体8B1を有する。この基体8B1は、横断面がほぼ正方形状をなし、4つの側面8B2を有する。各側面8B2にはそれぞれ永久磁石からなる棒磁石8B3が取り付けられている。各棒磁石8B3は、前記側面8B2へ取り付けられる内面側が一方の極(S極)に、外面側が他方の極(N極)に磁化されている。これにより、外周に同一の極(N極)が並んでいる。これと逆に外周にS極が並ぶように、外面側がS極に、内面側がN極に磁化されていてもよいのは当然である。
【0037】
図3(c)は、基体8B1に取り付ける複数の棒磁石8B3を、周方向に沿って、交互に、N極とS極がくるようにした例である。
【0038】
図3(a)、(b)のように外周に沿って同じ磁極が並ぶようにした場合には、前記一対の電極2a、2a間には同じ方向に流れる電流I、つまり、直流電流を流せばよい。しかしながら、
図3(c)のように、外周に沿ってN極とS極とが交互に並ぶようにした場合には、先にも簡単に述べたように、一対の電極2a、2a間に、磁極の並びに応じた周期の交流電流を流す必要がある。これによって、フレミングの法則に従った第2の電磁力fは、磁力線MLの向きが交互に反転しても、同じ向き〔例えば、
図2(a)の矢印AR1)の向き〕のものとして得られる。このような一対の電極2a、2a間の電流Iの向きの制御は前述のように前記制御装置によって行われる。
【0039】
前記基体8B1としては、その横断面の多角形を角数が任意数の多角形とすることができる。また、前記基体8B1に取り付ける棒磁石8B3の数も任意数とすることができる。
図4(a)、(b)は外周に同一の極が並ぶようにした場合にあって、棒磁石8B3の数を2本とした例を示す。
図4(c)は、交互に異なる磁極がくるようにした例を示す。
【0040】
つまり、上記からわかるように、基体8B1に取り付ける棒磁石8B3の数は適宜任意に定めることが出来る。且つ、周方向に並ぶ、棒磁石8B3の磁極は同じ磁極が来るようにも、交互に異なる磁極がくるようにもすることが出来る。また、設ける棒磁石8B3の数に応じて、基体8B1はその断面形状が任意の多角形のものとすることができる。
【0041】
さらには、前記回転体8Bとしては、この回転体8Bを単一の永久磁石となし、その周囲に同一または異なる磁極が並ぶように磁化した永久磁石を用いることもできる。
【0042】
なお、上記の第1実施形態の他、以下に説明するその他の実施形態において、一対の電極2a、2aは、必ずしも
図2(b)に示すように炉壁の内部に埋め込むことなく、炉壁3aの内表面に付設することもできる。この場合には、配線4a、4aも炉壁3a内部に溶湯Mに接しないように埋め込んでも、埋め込むことなく炉本体1の収納室1A内を這わせることもできる。
【0043】
(第2実施形態)
図5(a)、(b)は、本発明の金属溶湯攪拌装置の第2の実施形態を示し、(a)は平面説明図、(b)はそのb−b線に沿った縦断面説明図を示す。メインバス部10における炉本体1の側壁1aの外側に設けた回転移動磁界装置20を、第1の実施形態では立設状態(立てた状態)に設けたのに対し、この第2の実施形態では横設状態(寝かせた状態)に設けている。
【0044】
加えて、この第2実施形態が第1の実施形態(
図2(a)、(b))と違うところは、この第2の実施形態においては、回転移動磁界装置20を横向きに設置したことに対応して、特に
図5(a)から分かるように、一対の電極2a、2aも横向き対向するように側壁1aに設けて、横向きに電流Iが流れるようにしている。
【0045】
さらに、
図5(b)から分かるように、回転移動磁界装置本体8を図中右回りに回転するようにしている。
【0046】
このため、溶湯Mを矢印AR2に示すように駆動する合成駆動力F(=渦電流による第1の電磁力fe+フレミングの左手の法則による第2の電磁力f)が生じる。これにより、溶湯Mは、炉本体1内において、図示のように、矢印AR21に示すように対流するごとく確実に駆動される。
【0047】
以上の第1実施形態と第2実施形態の説明においては、両実施形態を別の実施形態として説明したが、これらを1つの実施形態として具現することもできる。即ち、回転移動磁界装置20を、第1実施形態のように上下方向に沿った縦置きと第2実施形態のような寝かせた横置きとを切り替え可能に構成できる。なお、この場合には、メインバス部10の炉本体1には、
図2(b)に示す上下に対向させた一対の電極2a、2aと、
図5(a)に示す左右に対向させた一対の電極2a、2aの都合2組の4つの電極2aを設ける必要がある。このような実施形態によれば、設置場所等の各種の条件に応じて、回転移動磁界装置20を縦置きと横置きで切り替えて使用することができる。
【0048】
(第3実施形態)
図6(a)、(b)、(c)は、本発明の第3実施形態の平面説明図、そのb−b線に沿った縦断面説明図、c−c線に沿った縦断面説明図である。
【0049】
この第3実施形態が前記第1実施形態、前記第2実施形態と異なる点は、回転移動磁界装置本体の構成にある。即ち、第3実施形態では、
図7(a)、(b)に示される回転移動磁界装置本体81B0を用いている。即ち、円盤状の回転基板81B1の表面に一対の矩形体状の永久磁石81B2を任意の間隔で、例えば180°の間隔で取り付けている。
これらの永久磁石81B2は、取り付ける内側がS極に、外側がN極となるように回転基板81B1に取り付けられている。このような
図7(a)、(b)の回転移動磁界装置本体
81B0を回転させながら、一対の電極2a、2a(
図6(b))間に直流電流を流す。これにより、一対の電極2a、2a間に電流Iが流れることによるフレミングの左手の法則による電磁力fと、回転移動磁界装置本体81B0が回転することによる渦電流による電磁力feと、の合成駆動力Fにより、溶湯Mは
図6(a)に示すように矢印AR3方向に駆動され、炉本体1の溶湯Mは矢印AR31に示すように駆動回転させられる。
【0050】
また、
図7(c)に示すように、複数の永久磁石81B2を、周方向に異なる極が並ぶように、基体8B1に取り付けることもできる。この場合には、前述のように、一対の電極2a、2a間に交流電流を流す必要がある。
【0051】
以上に説明した第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態は、既設のメインバス部10が一対の電極2a、2aを有していれば、回転移動磁界装置20のみを後付けすることによって実現される。また、あるいは既設のメインバス部10に一対の電極2a、2aと回転移動磁界装置20とを後付けすれば、本発明の実施形態を実現することができる。
【0052】
(第4実施形態)
図8(a)、(b)は、本発明の第4実施形態の横断説明図、そのb−b線縦断面説明図である。この第4実施形態は、いわゆる通路型の攪拌装置であり、メインバス部30の溶湯Mをいわゆる溶湯通路41aに導いて、その溶湯通路41aにおいて溶湯Mに前記合成駆動力Fを加えてメインバス部30に戻し、これによりメインバス部30内の溶湯Mを攪拌するようにしたものである。
【0053】
即ち、この第4実施形態の金属溶湯攪拌装置は、メインバス部30と攪拌部40とを有する。メインバス部30は溶湯Mを収納する炉本体1を有するものとして構成される。攪拌部40は、内部に溶湯通路41aを有する通路部材41と回転移動磁界装置本体8とを有するものとして構成される。
【0054】
即ち、メインバス部30の1つの側壁30aに溶湯流出口30a1と溶湯流入口30a2を穿け、これらを攪拌部40における横断面がほぼU字状の中空の通路部材41で連通している。前記通路部材41は、
図8(a)から分かるように、内部に、横断面がほぼU字状の溶湯通路41aを有する。つまり、前記溶湯通路41aの一端は前記溶湯流出口30a1に連通状態に接続され、他端は前記溶湯流入口30a2に連通状態に接続されている。これにより、メインバス部30の溶湯Mは、溶湯流出口30a1から溶湯通路41aに流出し、ここで後述のように合成駆動力Fにより駆動され、やがて溶湯流入口30b2からメインバス部30に還流する。
【0055】
前記攪拌部40において、前記通路部材41と側壁
30aとによって収納空間40aが区画されている。前記収納空間40aに回転移動磁界装置本体8が回転可能に収納されている。この回転移動磁界装置本体8としては各種のものを用いることができるが、例えば、
図3(a)、(b)、(c)、
図4(a)、(b)、(c)等に示されるものを用いることができる。例えば、
図3(a)、(b)に示すものを用いた場合においては、特に
図8(b)に示すように、磁力線MLが横向きに射出し、前記溶湯通路41a内の溶湯Mを貫通する。
【0056】
さらに、前記通路部材41内壁には、特に
図8(b)から分かるように、前記溶湯通路41aに露呈するように、上下に対向した状態に一対の電極2a、2aが設けられている。これらの電極2a、2a間には溶湯Mを介して上下方向に電流Iが流れる。これらの電極2a、2aは電源装置3に接続されている。
【0057】
よって、特に
図8(b)からわかるように、上下方向に流れる電流Iと横向きに走る磁力線MLとが交差してフレミングの左手の法則による第2の電磁力fが発生し、溶湯通路41a内の溶湯Mを矢印AR4〔
図8(a)〕の方向に駆動することになる。
【0058】
さらに、前記回転移動磁界装置本体8が回転することにより、渦電流による第1の電磁力feが発生し、この電磁力feによっても、前記溶湯通路41a内の溶湯Mが矢印AR4の方向に駆動されることになる。
【0059】
前記第2の電磁力fと前記第1の電磁力feとが合成されて大きな合成駆動力Fとなって溶湯通路41a内の溶湯Mに作用し、溶湯Mを、溶湯流入口2b1からメインバス部30の炉本体1に流入させ、且つ、メインバス部30の溶湯Mを溶湯流入口2b1から溶湯通路41aに引き込む。これにより、特に
図8(a)に示すように、矢印AR41に沿ってメインバス部30の炉本体1内の溶湯Mが確実に攪拌駆動される。
【0060】
なお、特に
図8(a)、(b)においては、回転移動磁界装置本体8
は通路部材41の内側に設置しているが、この回転移動磁界装置本体8
を通路部材41の外側に設置することもできる。
【0061】
また、上記のよう
に通路部材41の外側に回転移動磁界装置本体8を設置する場合には、この回転移動磁界装置本体8に代えて、
図7(a)、(b)、(c)に示す回転移動磁界装置本体81B0を、回転軸が横向きとなるようにして用いることができる。このような構成として
も、通路部材41内の溶湯を駆動することが出来る。
【0062】
また、回転移動磁界装置本体8をU字型の通路部材41のいわゆるU字の内側に設けたが、この通路部材41のU字の外側に設けるということもできる。さらには、通路部材41(溶湯通路41a)を挟むようにU字の内側と外側に都合2つの回転移動磁界装置本体8を設けることもできる。
【0063】
なお、上記の実施形態では、1つの回転移動磁界装置本体8からの磁力線MLを共用して、渦電流による電磁力feとフレミングの法則に従った電磁力fの2つを得るようにした。しかしながら、技術的には、回転移動磁界装置本体8からの磁力線MLによっては渦電流による電磁力feのみを得るようにし、フレミングの法則に従った電磁力fを得るために、前記一対の電極2a、2aを
図8(a)とは別の位置に設け且つ別体の磁場装置を設け、別の位置に設けた一対の電極2a、2aと別体の磁場装置によってフレミングの法則に従った電磁力fを得るようにすることも考えられる。ただし、この場合には、いわゆる磁場を発生させるための装置が2つ必要となり、コスト高となるだけでなく、装置自体も大きな設置面積を必要とすることになるのは避けられない。以上のことは、後述する
図11(a)、(b)に示す実施形態においても同様に言える。つまり、
図11(a)において、回転移動磁界装置本体8の他にもう1つ磁場装置を設け、前記磁場装置との関係でフレミングの法則に従った電磁力fが生じる位置に一対の電極2a、2aを設けることができる。この場合にも、上述のように、装置のコスト高と大型化が避けられない。
【0064】
(第5実施形態)
図9(a)、(b)は、本発明の第5実施形態の平面説明図、そのb−b線縦断面説明図である。この第5実施形態が前記
図8(a)、(b)の第4実施形態と異なる点は、攪拌部40Aの構成にある。つまり、この実施形態は、メインバス部30Aと連通する攪拌室40A1を作り、そこで溶湯Mを合成駆動力Fで駆動するようにした実施形態である。
【0065】
より詳しくは、この第5実施形態の金属溶湯攪拌装置は、メインバス部30Aと攪拌部40Aを有する。
【0066】
メインバス部30Aは溶湯Mを収納する炉本体1を有する。
【0067】
攪拌部40Aにおける横断面がほぼU字型の側壁1a1は、炉本体1の1つの側壁1aに繋がるものとして構成されている。この側壁1a1によって、メインバス部30Aの炉本体1の内部に連通する攪拌部40Aの攪拌室40A1が形成される。
【0068】
特に
図9(a)から分かるように、炉本体1内と攪拌室40A1とが開口50によって連通している。前記攪拌室40A1の内に溶湯の流れの方向に沿って仕切板40A0が立設されている。この仕切板40A0によって前記開口50が2つに仕切られて開口50A、50Bに仕切られ、さらに前記攪拌室40A1が図中上下の2つの部屋、つまり、第1の室40A11と第2の室40A12に仕切られる。前記仕切板40A0は軸部40A10の回りに回動可能に設けられている。この仕切板
40A0の回動によって、第1の室40A11の開口50Aと第2の室40A12の開口50Bの幅が調整され、後述するように、溶湯の流れが最適とされる。前記軸部40A10と側壁1a1の内側との間には溶湯Mの流れを許容する隙間Gが形成されている。これにより、後述するように、溶湯Mは、メインバス部30Aの炉本体1の内部から開口50A、第1の室40A11、隙間G、第2の室40A12、開口50B、炉本体1と循環可能とされている。
【0069】
前記仕切板
40A0は、仕切板本体
40A01と、前記軸部40A10とを有するものとして構成されている。前記軸部40A10(2a)は導電性材料で作製されており、前記一対の電極2a、2aの一方として機能する。他方の電極2aは前記側壁1a1の内側に複数設けられている。これにより、1つの前記軸
部40A10(2a)と複数の前記電極2aとの間に溶湯Mを介して電流Iが横向きに流れる。つまり、横向きに電流Iの複数のパスが構成される。一方の電極40A10(2a)及び他方の複数の前記電極2aは電源装置3の両極の端子にそれぞれ接続されている。
【0070】
さらに、特に
図9(b)から分かるように、前記攪拌部40Aにおいては、攪拌室40A1の底壁の下方に回転移動磁界装置20が設けられている。この回転移動磁界装置20内には回転移動磁界装置本体8が上下方向に沿った軸の回りに回転可能に設けられている。この回転移動磁界装置本体8としては
図7(a)、(b)又は(c)に示すもの等を用いることができる。例えば
図7(a)、(b)に示すものを用いた場合には、
図9(b)に示すように磁力線MLが立ち上がる。
【0071】
この磁力線MLと、軸部40A10(2a)と電極2aとの間に流れる電流Iと、の交差により、フレミングの左手の法則による第2の電磁力fが発生する。且つ、前記回転移動磁界装置本体8の回転に伴って渦電流による第1の電磁力feも発生する。よって、これらの2つの電磁力f、feの合成駆動力Fによって、溶湯Mは矢印AR5〔
図9(a)〕の方向に駆動される。これにより、溶湯Mは炉本体1内において、矢印AR51に示すように回転攪拌される。
【0072】
(第6実施形態)
図10(a)、(b)は、本発明の第6実施形態を示し、
図9(a)、(b)の回転移動磁界装置20を攪拌室40A1の上方に設置した場合を示す。なお、回転移動磁界装置本体8は、
図9(b)の場合と反転して設置されているのは当然である。
【0073】
(第7実施形態)
図11(a)、(b)は、第7実施形態の縦断説明図、b−b線断面説明図を示す。
【0074】
この第7実施形態は、2つの溶解炉、つまり、メインバス部100,101を備える。メインバス部100の炉本体100Aからメインバス部101の炉本体101Aへ溶湯Mを移動させる金属溶湯移送装置を有する金属溶湯炉システムを示す。
【0075】
即ち、一方のメインバス部100と他方のメインバス部101は、それぞれの底壁100a,101aに開口100b,101bが穿けられている。これらの開口100b,101bはほぼU字型に湾曲した中空の通路部材103で互いに連通されている。この通路部材103の横断面形状は
図11(b)に示される。ここからわかるように、通路部材103の内部の連通路103aの横断面形状は矩形をしている。前記通路部材103の前記連通路103aを挟んで幅方向に向かい合う一対の側壁103b,103bの内面に、一対の電極2a、2aを設けている。これらの一対の電極2a、2aは、
図11(a)に示すように、通路部材103の上下方向に折れ曲がった湾曲部分103cの上方に設けられている。この湾曲部分103cの内側(上方部分)に回転移動磁界装置本体8が横向きに設けられている。この回転移動磁界装置本体8は
図3(a)、(b)、(c)、
図4(a)、(b)、(c)に示される。前記電極2a、2aは電源装置3に接続されている。
【0076】
このような装置において、一対の電極2a、2a間に電流Iを流し、回転移動磁界装置本体8を回転すれば、通路部材103内の溶湯Mを、フレミングの法則に従った第2の電磁力fと渦電流による第1の電磁力feの合成駆動力Fによって一方のメインバス部100から他方のメインバス部101に、移送可能である。
【0077】
本発明者は上記各実施形態によりアルミニウム溶湯を駆動する実験を行い、駆動力(搬送力)を、渦電流による電磁力feのみによる場合、および、フレミングの法則に従った電磁力fのみによる場合、のそれぞれよりも増大できることを確認した。第4実施形態(
図8)及び第7実施形態(
図11)については、ローレンツ力fのみによる搬送量が約1000Tons/h、渦電流による電磁力feのみによる搬送量が約900Tons/hのものを組み合わせた実験を行い、搬送量が約1800―2000Tons/hとできることを数値的に確認した。