特許第6033814号(P6033814)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6033814-射出ユニットの制御方法および制御装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6033814
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】射出ユニットの制御方法および制御装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/18 20060101AFI20161121BHJP
   B29C 45/76 20060101ALI20161121BHJP
   B22D 17/32 20060101ALI20161121BHJP
   B22D 17/20 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   B29C45/18
   B29C45/76
   B22D17/32 Z
   B22D17/20 L
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-123952(P2014-123952)
(22)【出願日】2014年6月17日
(65)【公開番号】特開2016-2696(P2016-2696A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2015年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】玉田 光一
(72)【発明者】
【氏名】中島 英昭
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−166317(JP,A)
【文献】 特開2006−035489(JP,A)
【文献】 特開平11−048287(JP,A)
【文献】 実開昭49−081958(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱シリンダと、該加熱シリンダ内に回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュとからなり、前記加熱シリンダの一方の端部には射出材料供給装置が、他端部には射出ノズルが設けられている射出ユニットを使用して、前記射出材料供給装置から前記加熱シリンダに射出材料を供給すると共に、前記スクリュを第1の回転速度(S1)で回転駆動して計量しているとき、
前記射出材料供給装置内の射出材料のレベルが所定値に下がって所定時間(T1)経過すると、あるいは所定値に下がると、前記スクリュの回転速度を前記第1の回転速度(S1)よりも遅い第2の回転速度(S2)に切り換えることを特徴とする射出ユニットの制御方法。
【請求項2】
加熱シリンダと、該加熱シリンダ内に回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュとからなり、前記加熱シリンダの一方の端部には射出材料供給装置が、他端部には射出ノズルが設けられている射出ユニットを使用して、前記射出材料供給装置から前記加熱シリンダに射出材料を供給すると共に、前記スクリュを第1の回転速度(S1)で回転駆動して計量しているとき、
前記射出材料供給装置内の射出材料のレベルが所定値に下がって所定時間(T1)経過すると、あるいは所定値に下がると、前記スクリュの回転速度を前記第1の回転速度(S1)よりも遅い第2の回転速度(S2)に切り換えると共に、その後所定時間(T2)内に前記射出材料供給装置内の射出材料のレベルが前記所定値に回復したときには前記スクリュの回転を前記第1の回転速度(S1)に戻すことを特徴とする射出ユニットの制御方法。
【請求項3】
加熱シリンダと、該加熱シリンダ内に回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュとからなり、前記加熱シリンダの一方の端部には射出材料供給装置が、他端部には射出ノズルが設けられている射出ユニットを使用して、前記射出材料供給装置から前記加熱シリンダに射出材料を供給すると共に、前記スクリュを第1の回転速度(S1)で回転駆動して計量しているとき、
前記射出材料供給装置内の射出材料のレベルが所定値に下がって所定時間(T1)経過すると、あるいは所定値に下がると、前記スクリュの回転速度を前記第1の回転速度(S1)よりも遅い第2の回転速度(S2)に切り換えると共に、その後さらに所定時間(T2)経過しても前記射出材料供給装置内の射出材料のレベルが前記所定値に回復しないときは、前記スクリュの回転を停止(S0)すると共に、前記加熱シリンダの外周部に設けられているヒータの発熱温度を低温の保温温度に切り換えて保温工程を実施することを特徴とする射出ユニットの制御方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの項に記載の方法において、前記射出材料供給装置が射出材料が一時的に貯留されるホッパと、該ホッパから間欠的あるいは連続的に供給され、そして前記加熱シリンダに供給されるようになっている貯蔵筒とからなり、前記射出材料の所定値は前記貯蔵筒内のレベルで検知することを特徴とする射出ユニットの制御方法。
【請求項5】
加熱シリンダと、該加熱シリンダ内に回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュとからなり、前記加熱シリンダの一方の端部には射出材料供給装置が、他端部には射出ノズルが設けられ、前記スクリュを回転駆動すると共に、前記射出材料供給装置から射出材料を前記加熱シリンダに供給して計量し、前記スクリュを軸方向に駆動して計量された射出材料を射出するようになっている射出ユニットの制御装置であって、
前記制御装置は、前記スクリュの第1の回転速度(S1)と、該第1の回転速度よりも遅い第2の回転速度(S2)とを設定する手段と、タイマ手段と、レベルセンサ(21)とを有し、
前記スクリュを第1の回転速度(S1)で回転駆動して計量するとき、前記レベルセンサ(21)が前記射出材料供給装置内の射出材料の所定のレベル(L)を検知して所定時間(T1)を計時すると、あるいは所定のレベルを検知すると、前記スクリュの回転速度を前記第2の回転速度(S2)に切り換えることを特徴とする射出ユニットの制御装置。
【請求項6】
加熱シリンダと、該加熱シリンダ内に回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュとからなり、前記加熱シリンダの一方の端部には射出材料供給装置が、他端部には射出ノズルが設けられ、前記スクリュを回転駆動すると共に、前記射出材料供給装置から射出材料を前記加熱シリンダに供給して計量し、前記スクリュを軸方向に駆動して計量された射出材料を射出するようになっている射出ユニットの制御装置であって、
前記制御装置は、前記スクリュの第1の回転速度(S1)と、該第1の回転速度よりも遅い第2の回転速度(S2)とを設定する手段と、タイマ手段と、レベルセンサ(21)とを有し、
前記スクリュを第1の回転速度(S1)で回転駆動して計量するとき、前記レベルセンサ(21)が前記射出材料供給装置内の射出材料の所定のレベル(L)を検知して所定時間(T1)を計時すると、あるいは所定のレベルを検知すると、前記スクリュの回転速度を前記第2の回転速度(S2)に切り換えると共に、その後さらに所定時間(T2)を計時しても前記所定レベルに回復しないときは、前記スクリュの回転を停止し、前記加熱シリンダの外周部に設けられているヒータの発熱温度を低温の保温温度に切り換えることを特徴とする射出ユニットの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出ユニットの制御方法および制御装置に関するもので、さらに具体的には加熱シリンダと、この加熱シリンダの内部に回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュと、前記加熱シリンダに射出材料を供給するための射出材料供給装置とからなる射出ユニットの制御方法および制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、従来周知のように、概略的には、射出ユニットと型締ユニットとから構成されている。射出ユニットは、加熱シリンダ、この加熱シリンダの内部に回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュ等からなっている。加熱シリンダの基端部には射出材料供給装置が、先端部には射出ノズルがそれぞれ取り付けられ、外周部には加熱用のバンドヒータが設けられている。一方、型締ユニットは、固定盤に取り付けられている固定側金型、可動盤に取り付けられている可動側金型、固定側金型に対して可動側金型を型締めする型締装置等から構成されている。したがって、次のようにして射出成形品を得ることができる。すなわち、加熱シリンダの基端部に射出材料供給装置から射出材料を供給すると共に、スクリュを回転駆動する。そうすると、射出材料は前方へ送られる過程で、バンドヒータから加えられる熱、スクリュを回転駆動する時に発生する摩擦熱、剪断熱等により溶融し、加熱シリンダの前方の計量室に蓄積される。このとき、スクリュは蓄積される射出材料の圧力により、あるいはプルバックにより後退する。計量が終わったらスクリュを軸方向に駆動して射出ノズルから、固定側金型と可動側金型との間に構成されるキャビティに、射出充填する。冷却固化を待って可動側金型を開いて成形品を得ることができる。
【0003】
ところで、上記説明からも理解されるように、スクリュを回転駆動して射出材料を可塑化するときは、加熱シリンダの内周面は固定的であり、一方スクリュのフライトの外周面は移動するので、両者の間には相対的な動的接触が生じる。接触が生じても、射出材料が油膜のような潤滑効果を奏するので、射出材料が加熱シリンダ内に充分存在するときは金属接触は起こらない。しかしながら、射出材料が減少し、潤滑効果が得られなくなると、両者の間に金属接触が起こり、加熱シリンダの内周面およびスクリュのフライトの外周面は損傷する。そこで、上記のような金属接触の問題を解決すべく、射出成形機のスクリュの回転制御方法あるいは制御装置が特許文献1〜3により提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−166317号公報
【特許文献2】特開2005− 14308号公報
【特許文献3】特開平 10−202708号公報
【0005】
特許文献1には、加熱シリンダ内のスクリュを回転駆動して樹脂を加熱シリンダの基端部側から先端部側の樹脂溜に送る可塑化工程時に、加熱シリンダの先端部の樹脂圧が所定値よりも低くなったとき、またはスクリュの後退速度が所定値よりも小さくなったとき、スクリュの回転速度を低速モードに切り換える、射出成形機におけるスクリュの回転制御方法が記載されている。また、特許文献2には、可塑化工程時に、スクリュの回転トルクの所定時間毎における平均トルク値が基準トルク値以下になったときに、前記スクリュの回転を停止させる、スクリュの回転制御方法が記載されている。さらには、特許文献3により、射出成形機の加熱シリンダ内の樹脂をパージする作業において、スクリュの回転の負荷力が所定値以下になったときタイマで計時を開始し、該タイマが所定値を計時アップすると、スクリュの回転数を低い所定値に切り換える制御方法が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、特許文献1により提案されている制御方法によると、加熱シリンダの先端部あるいは計量室内の溶融樹脂の圧力を計測するので、または溶融樹脂圧で後退するスクリュの速度を計測するので、加熱シリンダ内の溶融樹脂の状態を知ることはできる。しかしながら、これらの値は加熱シリンダ内に樹脂がほとんど存在しない状態になって、加熱シリンダとスクリュの金属接触が起こってから、あるいは起こる寸前になって計測される値であるので、これらの計測値に基づいてスクリュの回転速度を下げても、金属接触は避けられない。油切りによる「焼き付き現象」は瞬時に起こるからである。特許文献2に記載の発明によると、スクリュの平均トルク値が基準トルク値以下になったときに、スクリュの回転を停止させるので、加熱シリンダとスクリュとが金属接触を起こした状態でスクリュを高速回転させないという効果が得られるだけである。特許文献3に記載の発明は、パージ作業が終了した後はスクリュを低速回転に切り換え、高速回転による金属接触による損傷を起こさない、というだけのことである。
【0007】
以上のように、従来の射出成形機におけるスクリュの回転制御方法は、加熱シリンダとスクリュとの間の金属接触が起こってから、あるいは起こりつつある状態でスクリュを低速回転に切り換え、あるいは停止するもので、金属接触の問題は依然として残っている。また、溶融樹脂の圧力、スクリュの後退速度、スクリュのトルク値等の高価な計測器具を必要とする欠点もある。
したがって、本発明は、加熱シリンダとスクリュとの間の金属接触の問題を安価に解決した、射出ユニットのスクリュの制御方法および制御装置を提供することを目的としている。また、他の発明は、上記目的に加えて保温工程も実施できる射出ユニットのスクリュの制御方法および制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、射出材料供給装置すなわちホッパ内の射出材料のストック状態を安価なレベルセンサで監視して、スクリュの回転速度を制御することにより達成される。具体的には、射出ユニットは、その外周部にヒータが設けられている加熱シリンダと、該加熱シリンダの内部に回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュとからなり、加熱シリンダの基端部には射出材料供給装置が設けられているが、ホッパ内の射出材料のレベルが所定値に下がった時間が所定時間継続すると、あるいはレベルが所定値に下がるとスクリュの回転速度を落とすように構成される。また、他の発明は、所定時間経過してもレベルが所定値に回復しないときは、スクリュを停止すると共に、ヒータの発熱温度を低温の保温温度に変更して保温工程に入るように構成される。さらに他の発明は、ホッパ装置は、射出材料が一時的に貯留されるホッパと、該ホッパから間欠的あるいは連続的に供給される貯蔵筒からなり、該貯蔵筒の下端部が加熱シリンダの基端部に接続されている射出ユニットにおいて、射出材料のレベルは貯蔵筒で計測されるように構成される。
【0009】
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、加熱シリンダと、該加熱シリンダ内に回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュとからなり、前記加熱シリンダの一方の端部には射出材料供給装置が、他端部には射出ノズルが設けられている射出ユニットを使用して、前記射出材料供給装置から前記加熱シリンダに射出材料を供給すると共に、前記スクリュを第1の回転速度で回転駆動して計量しているとき、前記射出材料供給装置内の射出材料のレベルが所定値に下がって所定時間経過すると、あるいは所定値に下がると、前記スクリュの回転速度を前記第1の回転速度よりも遅い第2の回転速度に切り換えるように構成される。
【0010】
請求項2に記載の発明は、加熱シリンダと、該加熱シリンダ内に回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュとからなり、前記加熱シリンダの一方の端部には射出材料供給装置が、他端部には射出ノズルが設けられている射出ユニットを使用して、前記射出材料供給装置から前記加熱シリンダに射出材料を供給すると共に、前記スクリュを第1の回転速度で回転駆動して計量しているとき、前記射出材料供給装置内の射出材料のレベルが所定値に下がって所定時間経過すると、あるいは所定値に下がると、前記スクリュの回転速度を前記第1の回転速度よりも遅い第2の回転速度に切り換えると共に、その後所定時間内に前記射出材料供給装置内の射出材料のレベルが前記所定値に回復したときには前記スクリュの回転を前記第1の回転速度に戻すように構成され、請求項3に記載の発明は、加熱シリンダと、該加熱シリンダ内に回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュとからなり、前記加熱シリンダの一方の端部には射出材料供給装置が、他端部には射出ノズルが設けられている射出ユニットを使用して、前記射出材料供給装置から前記加熱シリンダに射出材料を供給すると共に、前記スクリュを第1の回転速度で回転駆動して計量しているとき、前記射出材料供給装置内の射出材料のレベルが所定値に下がって所定時間経過すると、あるいは所定値に下がると、前記スクリュの回転速度を前記第1の回転速度よりも遅い第2の回転速度に切り換えると共に、その後さらに所定時間経過しても前記射出材料供給装置内の射出材料のレベルが前記所定値に回復しないときは、前記スクリュの回転を停止すると共に、前記加熱シリンダの外周部に設けられているヒータの発熱温度を低温の保温温度に切り換えて保温工程を実施するように、そして請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかの項に記載の方法において、前記射出材料供給装置が射出材料が一時的に貯留されるホッパと、該ホッパから間欠的あるいは連続的に供給され、そして前記加熱シリンダに供給されるようになっている貯蔵筒とからなり、前記射出材料の所定値は前記貯蔵筒内のレベルで検知するように構成される。
【0011】
請求項5に記載の発明は、加熱シリンダと、該加熱シリンダ内に回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュとからなり、前記加熱シリンダの一方の端部には射出材料供給装置が、他端部には射出ノズルが設けられ、前記スクリュを回転駆動すると共に、前記射出材料供給装置から射出材料を前記加熱シリンダに供給して計量し、前記スクリュを軸方向に駆動して計量された射出材料を射出するようになっている射出ユニットの制御装置であって、
前記制御装置は、前記スクリュの第1の回転速度と、該第1の回転速度よりも遅い第2の回転速度とを設定する手段と、タイマ手段と、レベルセンサとを有し、前記スクリュを第1の回転速度で回転駆動して計量するとき、前記レベルセンサが前記射出材料供給装置内の射出材料の所定のレベルを検知して所定時間を計時すると、あるいは所定のレベルを検知すると、前記スクリュの回転速度を前記第2の回転速度に切り換えるように構成される。請求項6に記載の発明は、加熱シリンダと、該加熱シリンダ内に回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュとからなり、前記加熱シリンダの一方の端部には射出材料供給装置が、他端部には射出ノズルが設けられ、前記スクリュを回転駆動すると共に、前記射出材料供給装置から射出材料を前記加熱シリンダに供給して計量し、前記スクリュを軸方向に駆動して計量された射出材料を射出するようになっている射出ユニットの制御装置であって、前記制御装置は、前記スクリュの第1の回転速度と、該第1の回転速度よりも遅い第2の回転速度とを設定する手段と、タイマ手段と、レベルセンサとを有し、前記スクリュを第1の回転速度で回転駆動して計量するとき、前記レベルセンサが前記射出材料供給装置内の射出材料の所定のレベルを検知して所定時間を計時すると、あるいは所定のレベルを検知すると、前記スクリュの回転速度を前記第2の回転速度に切り換えると共に、その後さらに所定時間を計時しても前記所定レベルに回復しないときは、前記スクリュの回転を停止し、前記加熱シリンダの外周部に設けられているヒータの発熱温度を低温の保温温度に切り換えるように構成される。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によると、スクリュを第1の回転速度で回転駆動して可塑化しているとき、射出材料供給装置内の、すなわちホッパ内の射出材料のレベルが所定値に下がって所定時間経過すると、あるいは所定値に下がると、スクリュの回転速度を第1の回転速度から、この第1の回転速度よりも遅い第2の回転速度に切り換えるので、換言すると、加熱シリンダ内の射出材料が飢餓状態になる前に、飢餓状態になることを予知してスクリュを低速に切り換えるので、加熱シリンダとスクリュとの間の金属接触を、時機を逸することなく未然に防止できるという、効果が得られる。また、他の発明によると、第2の遅い回転速度に切り換え、その後所定時間経過しても射出材料供給装置内の射出材料のレベルが前記所定値に回復しないときは、スクリュの回転駆動を止めるだけではなく、ヒータの発熱温度を低温の保温温度に切り変え保温工程を実施するので、上記効果に加えて加熱シリンダ内の樹脂の硬化も樹脂焼けも起こらないという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態を示す図で、その(ア)は一部を断面にして全体を示す正面図、その(イ)は貯蔵筒近傍の実施の形態を拡大して示す模式図、その(ウ)は貯蔵筒近傍の第2の実施の形態を拡大して示す模式図、その(エ)は射出材料供給装置の他の実施の形態を一部断面にして示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本実施の形態に係る射出ユニットは、従来周知の射出ユニットと同様に、概略的には加熱シリンダ1と、この加熱シリンダ1の内部に回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュ5と、加熱シリンダ1の一方の端部すなわち図1の(ア)において右方の基端部に設けられている射出材料供給装置10と、コントローラあるいは制御装置25とからなっている。加熱シリンダ1は軸方向に所定長さを有し、その外周部には個々に発熱温度が制御される複数個のバンドヒータ2、2、…が設けられている。また、他方の先端部は計量室3となり、その最先端部には射出ノズル4が設けられている。
【0015】
スクリュ5は、固定的な加熱シリンダ1に対して、可塑化時にも射出時にも軸方向に移動するが、一応加熱シリンダ1に対応して基端部から先端部にかけてフィード部P1、第1メタリング部P2、第2メタリング部P3となっている。第2メタリング部P3の先端部に逆流防止リング6が設けられている。前記した射出材料供給装置10は、フィード部P1に対応して設けられ、計量室3は第2メタリング部P3の前方に位置している。このようなスクリュ5のフライトの外周面は、加熱シリンダ1の内周面に接するようにして加熱シリンダ1に挿入されている。そうして、駆動装置7により回転方向と軸方向とに駆動されるようになっている。
【0016】
射出材料供給装置10は、図1の(ア)に示されている実施の形態によると、図において最上方に位置するホッパ11、その下方の射出材料供給器12、その下方の脱気部15、さらにその下方の貯蔵筒20等からなっている。そして、貯蔵筒20の下端部が加熱シリンダ1の内部に開口している。
【0017】
ホッパ11は全体として漏斗状を呈し、その内部に射出材料が一時的に貯留されるようになっている。射出材料としては、本実施の形態では、ペレット状あるいは粉末状の合成樹脂をはじめ、粒状、薄片あるいは破砕小片状を呈する、例えば、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、錫等の融点の低い金属またはこれらの合金を対象としている。射出材料供給器12は、ホッパ11内の射出材料を貯蔵筒20に間欠的に重力により供給する作用を奏するもので、その内部にポケットを有する回転供給ロータ13が設けられている。射出材料がロータの回転により間欠的に落下供給されるので、その振動により架橋の発生が抑えられる。あるいは脱気効果が高められる。
【0018】
脱気部15は、射出材料供給器12から貯蔵筒20へ供給される射出材料中に含まれる空気を排気するためのもので、比較的径が大きくなっている吸気室16を有する。この吸気室16の内部には落下する射出材料を次の貯蔵筒20に案内する筒状のガイド部材17が設けられ、側部には連通管18が接続されている。連通管18はフィルタ19を介して真空源Pに連通している。
【0019】
貯蔵筒20は、少なくとも一部は透明材料から構成され、内部の射出材料のレベルが外部から計測あるいは検知されるようになっている。レベルセンサ21は、レーザ光センサ、近赤外線センサ等からなり、図1の(ア)、(イ)に示されている実施の形態では、従来の射出ユニットと同様にその1個が貯蔵筒20の外部の所定の位置、例えば比較的高い位置に設けられている。この1個のレベルセンサ21が、射出材料がセンサの位置まで下がったことを検知すると、回転供給ロータ13が所定回転数だけ回転して貯蔵筒20内の所定高さまで供給される。可塑化あるいは成形が進み、射出材料がレベルセンサ21の位置まで下がったことを検知すると、再び回転供給ロータ13が所定回転数だけ回転して供給される。以下、同様にして貯蔵筒20内の射出材料が所定量維持される。本実地の形態によると、従来の射出ユニットに備わっている前述したレベルセンサ21を共用して、ソフトを変更あるいは追加するだけで、スクリュ5の回転速度等を制御するようになっているので計測器にコストはかからないという特徴を有する。なお、本実施形態では、レベルセンサ21で射出材料が所定のレベルに下がったか否かを検出するオン・オフ検出になっている。
【0020】
制御装置25は、上記した射出ユニットを使用して射出成形するときに必要な一般的な制御機能を有すると共に、本実施の形態に特有な次に述べるような機能も有する。また、本実施の形態に特有な設定手段、タイマ機能も有する。このような機能、設定手段を有する制御装置25は、レベルセンサ21とは信号ラインaにより、スクリュ駆動装置7とは信号ラインbにより、そしてバンドヒータ2とは信号ラインcにより、それぞれ接続されている。
【0021】
次に、作用について説明する。貯蔵筒20内の射出材料の量は、前述したように、従来の1個のレベルセンサ21により制御される。制御装置25に、通常の可塑化時のスクリュ5の第1の回転速度S1と、これよりも遅い第2の回転速度S2を設定する。第2の回転速度S2として、例えばスクリュ5の回転周速度30m/分を設定する。また、レベルセンサ21が射出材料が「ない」ことを検知してから第1の設定時間、換言すると射出材料が所定値まで下がったことを検知してからの第1の所定時間T1、この第1の所定時間T1よりも遅い第2の所定時間T2を設定する。また、保温工程時のヒータ2、2、…の発熱温度を設定する。
【0022】
そうして、次のようにして可塑化あるいは計量する。すなわち、スクリュ駆動装置7によりスクリュ5を第1の回転速度S1で回転駆動する。貯蔵筒20内の射出材料は、スクリュ5のフィード部P1に対応した、加熱シリンダ1に供給される。射出材料は、フィード部P1、第1メタリング部P2、第2メタリング部P3へと順次送られる過程で、従来周知のようにスクリュ5の回転による摩擦熱、剪断熱、バンドヒータ2、2、…から加えられる熱等により溶融し、計量室3へ圧送される。スクリュ5は計量室3内の溶融樹脂の圧力により後退する。あるいは、強制的にサックバックする。所定量計量したら、スクリュ5を軸方向に駆動して射出ノズル4から金型へ射出して成形品を得る。
【0023】
上記のようにして、スクリュ5を第1の回転速度S1で可塑化しているとき、レベルセンサ21が所定値を検知すると、その信号は制御装置25に入力され、その信号に基づいて制御装置25は計時をはじめ第1の所定時間T1内にレベルが回復すると初期に戻るが、回復しないときは制御装置25から第2の回転速度S2で駆動するように出力される。なお、第1の所定時間T1内に回復しても、安全のために、第2の回転速度S2に切り換えるように実施することもできる。
【0024】
スクリュ5を第2の回転速度S2で駆動はじめてから第2の設定時間T2内にレベルが回復すると、第1の回転速度(S1)に戻される。第2の回転速度S2で駆動をじめてから第2の所定時間T2を経過してもレベルが所定値に回復しないときは、制御装置25からスクリュ停止(S0)信号が出力される。それと同時に、ヒータ2、2、…の発熱温度は低温の保温温度に制御され、保温工程に入る。以上のような、スクリュ5の回転速度(S1、S2、S0)と所定時間(T1、T2)との関係は、図1の(イ)に示されている。
【0025】
本実施の形態によると、貯蔵筒20内の射出材料のレベルが所定値になって所定時間が過ぎると、加熱シリンダ1内が飢餓状態になる前に、スクリュ5の回転速度を落とすので、射出材料の欠乏による金属接触は起こらない。また、所定時間を経過してもレベルが回復しないときは、スクリュを停止するだけではなく、バンドヒータ2、2、…の発熱温度を保温工程温度に制御するので、スクリュ5の駆動を停止しても加熱シリンダ1内で樹脂が硬化することはないし、樹脂焼けを起こすようなこともない。
【0026】
上記実施の形態は、射出ユニットに本来備わっているレベルセンサ21を利用しているが、格別に設けた第2の実施の形態が図1の(ウ)に示されている。従来の射出ユニットのように、貯蔵筒20に1個のレベルセンサ21aまたは上下に2個のレベルセンサ21a、21bが設けられ、これらのセンサ21aまたは21bにより貯蔵筒20内の射出材料のレベルが前述したようにして制御されるようになっている。このような射出ユニットに、第2の実施の形態によると、レベルセンサ21bよりも下方に異常値あるいは所定値を検知するレベルセンサ21’が格別に設けられている。このレベルセンサ21’が制御装置25に設定された所定値を検知すると、直ちにスクリュ5は第2の回転速度(S2)に切り替わる。切り替わって所定時間T2内にレベルが回復すると、スクリュ5は第1の回転速度(S1)に戻され、所定時間(T2)経過しても回復しないときはスクリュウ5は停止(S0)する。以下同様に保温工程に入る。本実施の形態によってもレベルセンサ21’が1個増加しただけで同様な効果が得られることは明らかである。
【0027】
図1の(エ)に、射出材料供給装置の他の実施の形態が示されている。図1の(ア)に示されている射出材料供給装置10は、ポケットを有する回転供給ロータ13からなっているので、ポケットによる供給は間欠的であるが、図1の(エ)に示されている射出材料供給装置10’はスクリュフィーダ13’からなっているので、供給は連続的である。同様な部材には同じ参照数字にダッシュ「’」を付けて重複説明はしないが、同様な作用あるいは効果が得られることは明らかである。また、スクリュフィーダ13’に代えてロータリフィーダで実施することもできる。
【符号の説明】
【0028】
1 加熱シリンダ 2 バンドヒータ
5 スクリュ 7 スクリュ駆動装置
10 射出材料供給装置 11 ホッパ
20 貯蔵筒 21 レベルセンサ
21’ レベルセンサ
S1 スクリュの第1の回転速度
S2 スクリュの第2の回転速度(第1の回転速度よりも遅い)
T1 第1の設定あるいは所定時間
T2 第2の設定あるいは所定時間(第1の所定時間よりも遅い)
図1