特許第6033818号(P6033818)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日精樹脂工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6033818-射出成形装置の可動盤 図000002
  • 特許6033818-射出成形装置の可動盤 図000003
  • 特許6033818-射出成形装置の可動盤 図000004
  • 特許6033818-射出成形装置の可動盤 図000005
  • 特許6033818-射出成形装置の可動盤 図000006
  • 特許6033818-射出成形装置の可動盤 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6033818
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】射出成形装置の可動盤
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/22 20060101AFI20161121BHJP
   B29C 45/64 20060101ALI20161121BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20161121BHJP
   B22D 17/20 20060101ALI20161121BHJP
   B22D 17/26 20060101ALI20161121BHJP
   F16C 29/04 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   B29C33/22
   B29C45/64
   B29C45/17
   B22D17/20 Z
   B22D17/26 Z
   F16C29/04
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-153109(P2014-153109)
(22)【出願日】2014年7月28日
(65)【公開番号】特開2016-30370(P2016-30370A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2016年1月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227054
【氏名又は名称】日精樹脂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【弁理士】
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】西澤 龍彦
(72)【発明者】
【氏名】村田 敦
(72)【発明者】
【氏名】塩入 公彰
(72)【発明者】
【氏名】山口 勇
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−254284(JP,A)
【文献】 特開2008−309225(JP,A)
【文献】 特開2009−101528(JP,A)
【文献】 特開2011−051249(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0052749(US,A1)
【文献】 特開2006−289738(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0228438(US,A1)
【文献】 特開平11−000932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/20−33/28
B22D 17/00−17/32
B29C 45/00−45/84
F16C 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドに直線案内機構を介して水平移動可能に取付けられている射出成形装置の可動盤であって、
前記直線案内機構は、前記ベッドに取付けられるレールと、このレールにベアリングを介して嵌められるスライダとからなり、
前記スライダは、前記レールの長手方向に離して1本のレール当たり複数個配置され、前記レールは、前記ベッドの幅方向に離して複数本敷かれ、
前記可動盤は、複数個の前記スライダに各々載る複数個の脚部を備え、この脚部と前記スライとは、高さ調節機構及び締結機構を介して連結されており、
前記高さ調節機構は、前記スライダに載っている平板と、前記脚部にねじ込まれ先端が前記平板に当接する調節ボルトからなり、
前記締結機構は、前記調節ボルトによる高さ調節後に、前記平板を貫通しつつ前記脚部と前記スライダとを締結する締結ボルトからなることを特徴とする射出成形装置の可動盤。
【請求項2】
前記平板は、前記脚部及び前記スライダよりも小さな熱伝導率の材料で造られていることを特徴とする請求項1記載の射出成形装置の可動盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベッドに直線案内機構を介して水平移動可能に取付けられる射出成形装置の可動盤に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形装置では、型締機構の固定盤と可動盤で金型を型締めする。型締めされた金型へ射出機で樹脂材料を射出する。樹脂材料が固まった後に、可動盤を移動し金型を開いて樹脂製品を取り出す。可動盤はベッド上のレールに沿って往復移動する。この移動の円滑化を期待し、近年、リニアガイドと呼ばれる直線案内機構が採用されるようになってきた(例えば、特許文献1(図2)参照。)。
【0003】
特許文献1の図2に示されるように、リニアガイドレール(11)(括弧付き数字は、特許文献1に記載された符号を示す。以下同様)に、リニアガイドブロック(5)が図面表裏方向に移動自在に載せられ、このリニアガイドブロック(5)にガイドブロック(2)が載せられ、このガイドブロック(2)に可動プラテン(可動盤に相当する。)(1)が載せられている。リニアガイドレール(11)とリニアガイドブロック(5)との間で発生する摩擦抵抗力が小さいため、リニアガイドブロック(5)に載っている可動プラテン(1)の移動が極めて円滑になる。
【0004】
ところで、近年金型の精度が向上してきており、金型の型締め、型開きを頻繁に繰り返す射出成形作業に求められる型締機構の精度も向上してきており、可動プラテン(1)を水平に保ちつつ移動させることは重要である。水平でなければ、金型の精度に影響が及び、最悪は金型の破損に繋がるからである。
しかし、特許文献1の構造では、可動プラテン(1)の水平度を調節することができない。そこで、可動プラテン(1)の水平度を調節することができる機構が、各種提案されてきた(例えば、特許文献2(図1)参照。)。
【0005】
特許文献2の図1に示されるように、リニアガイド(7)(括弧付き数字は、特許文献2に記載された符号を示す。以下同様)に、取付ベース(8)が載せられ、この取付ベース(8)に移動ダイ支持部材(9)が載せられ、この移動ダイ支持部材(9)に可動盤に相当する移動ダイ(3)が載せられている。取付ベース(8)と移動ダイ支持部材(9)の間に第1のクサビ(15)と第2のクサビ(16)が打ち込まれている。第1のクサビ(15)及び/又は第2のクサビ(16)を抜き差しすることで、取付ベース(8)に対して移動ダイ支持部材(9)の傾きを調節することができる(特許文献2段落番号[0034])。
【0006】
第1のクサビ(15)と第2のクサビ(16)は、図面おもて側へ張り出しており、高さ調節機構としては大型になる。
しかし、射出成形装置のコンパクト化が求められる中、高さ調節機構の小型化が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4676548号公報
【特許文献2】特許第4550649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、コンパクトな高さ調節機構を備えた可動盤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、ベッドに直線案内機構を介して水平移動可能に取付けられている射出成形装置の可動盤であって、
前記直線案内機構は、前記ベッドに取付けられるレールと、このレールにベアリングを介して嵌められるスライダとからなり、
前記スライダは、前記レールの長手方向に離して1本のレール当たり複数個配置され、前記レールは、前記ベッドの幅方向に離して複数本敷かれ、
前記可動盤は、前記複数個のスライダに各々載る複数個の脚部を備え、この脚部と前記スライとは、高さ調節機構及び締結機構を介して連結されており、
前記高さ調節機構は、前記スライダに載っている平板と、前記脚部にねじ込まれ先端が前記平板に当接する調節ボルトからなり、
前記締結機構は、前記調節ボルトによる高さ調節後に、前記平板を貫通しつつ前記脚部と前記スライダとを締結する締結ボルトからなることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明では、平板は、脚部及びスライダよりも小さな熱伝導率の材料で造られていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、可動盤は、複数個のスライダに各々載る複数個の脚部を備え、この脚部とスライとは、高さ調節機構及び締結機構を介して連結されており、高さ調節機構は、スライダに載っている平板と、脚部にねじ込まれ先端が平板に当接する調節ボルトからなる。調節ボルトは、当然のことながら縦向きにおかれ、上からねじ込まれる。高さ調節機構は、脚部の幅内に収まり、脚部から側方へ張り出す部分はない。結果、高さ調節機構は、コンパクトになる。その上、高さ調節機構は、平板と調節ボルトからなるため、極めて単純な構成になり、低コスト化が可能となる。
【0012】
請求項2に係る発明では、平板は、脚部及びスライダよりも小さな熱伝導率の材料で造られている。可動盤は樹脂材料の影響を受けて温度上昇する。可能盤の一部である脚部も同様に温度上昇する。一方、直線案内機構はベアリングを内蔵する精密部品であるため、温度が上がると熱膨張差の影響で、本来の作動が維持できなくなる。
本発明では、熱伝導率が小さな平板で、脚部からスライダへ向かう熱の流れを遮断、又は緩和する。結果、直線案内機構の温度変化が抑制され、精密部品としての本来の機能が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る可動盤の斜視図である。
図2図1の2部拡大図である。
図3】高さ調節機構及び締結機構の分解斜視図である。
図4】高さ調節機構の作用図である。
図5図2の5−5線断面図である。
図6図2の6−6線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0015】
図1に示すように、可動盤10は、幅方向に互いに離れ、移動方向に互いに離れている合計4個の脚部11を下部に有する。うち2つの脚部11、11は左のレール12に載り、残りの2つの脚部11、11は右のレール12に載っている。左右のレール12、12はベッド13に載っている。
【0016】
図2に示すように、レール12にスライダ14が嵌り、このスライダ14に平板15が載り、この平板15に脚部11が載っている。
【0017】
図3に示すように、スライダ14は上部に4個の雌ねじ部16を有する。4個の位置は矩形の頂点に合致する。
平板15は幅方向(レール12の長手方向に直交する方向)に延びる4個の長穴17を有する。
脚部11は、矩形の頂点に配置される4個のボルト穴18と、1個の雌ねじ部19を有する。
【0018】
雌ねじ部19に高さ調節する調節ボルト21がねじ込まれる。この調節ボルト21には予めロック用ナット22がねじ込まれている。4個のボルト穴18には各々締結機構としての締結ボルト23が挿通される。締結ボルト23は、ボルト穴18及び長穴17を貫通した後に雌ねじ部16にねじ込まれる。締結ボルト23は六角穴付きボルトが好適である。
【0019】
すなわち、高さ調節機構20は、平板15と、雌ねじ部19にねじ込まれる調節ボルト21とで構成される。また、締結機構25は、ボルト穴18と長穴17とを貫通し雌ねじ部16にねじ込まれる締結ボルト23で構成される。
【0020】
以上の構成からなる可動盤10において、高さの調節法及び調節後の締結法(固定法)を次に説明する。
図4(a)で、高さ調節機構20の作用を説明する。便宜上、脚部11から締結ボルト23を除いた。しかし、締結ボルト23は、仮取付け状態で脚部11に取付けておくことは差し支えない。
【0021】
図4(a)において、レール12、12に直交する軸をx軸、レール12、12に平行な軸をy軸と呼ぶ。説明の便利のため、4本の調節ボルト21を、第1ボルト21A、第2ボルト21B、第3ボルト21C、第4ボルト21Dと区別する。
第1・第4ボルト21A、21Dをねじ込むと、可動盤10は左のレール12側が上昇するようにy軸回りに回転する(傾く)。また、第2・第3ボルト21B、21Cをねじ込むと、可動盤10は右のレール12側が上昇するようにy軸回りに回転する(傾く)。
【0022】
第1・第2ボルト21A、21Bをねじ込むと、可動盤10は金型側が上昇するようにx軸回りに回転する(傾く)。第3・第4ボルト21C、21Dをねじ込むと、可動盤10は反金型側が上昇するようにx軸回りに回転する(傾く)。
以上は典型的な調節例を説明したが、第1ボルト21A、第2ボルト21B、第3ボルト21C、第4ボルト21Dの締め加減に差をつけることにより、可動盤10の水平度を出すことができる。
【0023】
高さの調節が終わったら、ロック用ナット22を締める。以降、第1〜第4ボルト21A〜21Dの空転を防止することができる。
第1〜第4ボルト21A〜21Dの状態を維持しつつ、図4(b)にて、締結ボルト23にて、脚部11の締結(固定)を実施する。実施後の形態を図5図6で説明する。
【0024】
図5に示すように、調節ボルト21の先端(下端)は平板15に当たっている。調節ボルト21はロック用ナット22の作用により、空転する心配はない。脚部11と平板15の間に、隙間C1、C2が存在する。傾きを調節すると、隙間C1と隙間C2は別の値になる。これらの隙間C1、C2が変化しないように注意しながら、締結ボルト23、23を雌ねじ部16、16にねじ込む。具体的には締結ボルト23、23は同一の締付けトルクで締付けられる。
【0025】
図6においても、締結ボルト23、23は同一の締付けトルクで締付けられる。
図5図6から明らかなように、調節ボルト21や締結ボルト23、23は上へ突出はするものの、脚部11から前後左右へ突出することはない。よって、図1に示すように、可動盤10はコンパクトになる。
【0026】
ところで、図1に示す可動盤10は金型から熱を受け、温度上昇する。脚部11も同様に温度上昇する。
図5において、直線案内機構27は、レール12と、スライダ14と、レール12とスライダ14との間に介在するベアリング26とからなる。レール12に対してスライダ14を移動させるにはベアリング26を回転させる必要がある。ベアリング26の周囲には小さなクリアランスを設けてある。熱膨張により、クリアランスが減少するとベアリング26の回転が阻害される。対策としてクリアランスを大きくしておくと、冷間時にレール12に対してスライダ14が幅方向に揺れため、移動に支障がでる。よって、ベアリング26を内蔵する直線案内機構27では、温度が変化することは好ましくない。
【0027】
図5に示すC1、C2の大きさの隙間は空気層であるため、良好な断熱層となる。脚部11の熱は調節ボルト21を介して平板15に伝わり、この平板15からスライダ14に伝達される。調節ボルト21がスライダ14に当たっている接触面積は、例えば平板15の平面積に比較して格段に小さいため、伝熱量を減少させることができる。よって、隙間C1、C2を必須とする本発明構造であれば、ベアリング26が温度上昇する心配はなく、温度上昇してもその程度は軽微である。
【0028】
ただし、隙間C1、C2がごく小さいときには、空気層による断熱性能が低下する。そこで、次の対策を加えることが推奨される。
平板15を脚部11やスライダ14よりも小さな熱伝導率の材料で構成する。例えば、平板15は、熱伝導率が16.3W/(m/K)であるSUS304ステンレス鋼とし、脚部11は、熱伝導率が52.0W/(m/K)である鋳鉄とし、スライダ14は、熱伝導率が54.0W/(m/K)である低炭素鋼とする。
平板15の熱伝導率が脚部11の約1/3であるため、熱の流れを遮断する役割を果たす。また、調節ボルト21をSUS304ステンレス鋼にしてもよい。
【0029】
尚、実施例では、1本のレールに2個のスライダを載せたが、1本のレールに3個又はそれ以上の個数のスライダを載せてもよい。可動盤を2本のレールで支えるようにしたが、可動盤は4本のレールで支えるようにしてもよい。
【0030】
また、図5において、平板15に調節ボルト21による局部荷重が作用するため、長期に使用すると、平板15の上面に窪みができることがある。このときには平板15を交換する。仮に、平板15を用いないで、調節ボルト21を直接スライダ14に当てると、スライダ14に窪みができる。スライダ14はレール12と一緒に交換する必要があり、交換費用が嵩む。この点、本発明では平板15だけを交換するため、交換費用を抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、射出成形装置の可動盤に好適である。
【符号の説明】
【0032】
10…可動盤、11…脚部、12…レール、13…ベッド、14…スライダ、15…平板、20…高さ調節機構、23…締付ボルト、25…締結機構、26…ベアリング、27…直線案内機構、C1、C2…隙間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6