特許第6033837号(P6033837)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ デピュイ・(アイルランド)の特許一覧

<>
  • 特許6033837-インプラント 図000002
  • 特許6033837-インプラント 図000003
  • 特許6033837-インプラント 図000004
  • 特許6033837-インプラント 図000005
  • 特許6033837-インプラント 図000006
  • 特許6033837-インプラント 図000007
  • 特許6033837-インプラント 図000008
  • 特許6033837-インプラント 図000009
  • 特許6033837-インプラント 図000010
  • 特許6033837-インプラント 図000011
  • 特許6033837-インプラント 図000012
  • 特許6033837-インプラント 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6033837
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】インプラント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/40 20060101AFI20161121BHJP
【FI】
   A61F2/40
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-501494(P2014-501494)
(86)(22)【出願日】2012年2月14日
(65)【公表番号】特表2014-516277(P2014-516277A)
(43)【公表日】2014年7月10日
(86)【国際出願番号】EP2012052463
(87)【国際公開番号】WO2012130517
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2015年1月22日
(31)【優先権主張番号】1105243.8
(32)【優先日】2011年3月29日
(33)【優先権主張国】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509229810
【氏名又は名称】デピュイ・(アイルランド)
【氏名又は名称原語表記】DEPUY (IRELAND)
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(72)【発明者】
【氏名】エーケルンド・アンデシュ
(72)【発明者】
【氏名】ゴーチエ・シルバン
【審査官】 宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−089712(JP,A)
【文献】 米国特許第07097663(US,B1)
【文献】 米国特許第06626946(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0198094(US,A1)
【文献】 米国特許第05376126(US,A)
【文献】 米国特許第02682265(US,A)
【文献】 特表2003−521306(JP,A)
【文献】 特表2009−523516(JP,A)
【文献】 独国特許発明第10123517(DE,C1)
【文献】 仏国特許出願公開第2946863(FR,A1)
【文献】 米国特許第6228120(US,B1)
【文献】 国際公開第2004/080354(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/40
A61F 2/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプラントにおいて、
ベアリング表面、および骨に連結される関節形成インプラントの近位ネック部分に連結されるように構成された裏面を含む、関節接合構成要素と、
前記関節接合構成要素の前記裏面に連結されるように構成されたカラーと、
を含み、
前記カラーは、前記関節接合構成要素と前記関節形成インプラントの前記近位ネック部分との間の連結部の周りを通るように構成されたネック穴を画定し、前記カラーおよび前記関節接合構成要素は、前記カラーを前記関節接合構成要素に固定するために相補的な連結特徴部を含み、
前記カラーは、前記カラーを骨断片または軟組織に連結するために複数の取り付け部分をさらに含み
前記複数の取り付け部分のうちの少なくとも1つは、縫合糸の第1の端部を受容し固定するように構成された、縫合糸穴を含む、インプラント。
【請求項2】
請求項1に記載のインプラントにおいて、
前記関節接合構成要素の前記裏面は、凹部を含み、前記カラーは、前記凹部に受容されるように構成される、インプラント。
【請求項3】
請求項2に記載のインプラントにおいて、
前記関節接合構成要素の前記裏面は、ソケットを含み、前記ソケットは、前記凹部の基部から突出し、関節形成インプラントの前記近位ネック部分の端部を受容するように構成され、前記凹部は、前記ベアリング表面と前記関節接合構成要素の前記裏面との間の境界を定めるリムと、前記ソケットとの間で、環状に延び、
前記カラーの前記ネック穴は、前記ソケットを横切るように構成される、インプラント。
【請求項4】
請求項2または3に記載のインプラントにおいて、
前記相補的な連結特徴部は、対応するねじ山を有する前記凹部および前記カラーを含む、インプラント。
【請求項5】
請求項2または3に記載のインプラントにおいて、
前記相補的な連結特徴部は、雄型部品を含む、前記凹部および前記カラーのうちの一方と、雌型部品を含む、前記凹部および前記カラーのうちのもう一方と、を含み、前記雄型部品および前記雌型部品のうちの少なくとも一方は、前記カラーが前記凹部に挿入される際に弾性的に変形するように構成され、前記雄型部品は、前記雌型部品に係合して、前記カラーを前記凹部に固定する、インプラント。
【請求項6】
請求項5に記載のインプラントにおいて、
前記カラーおよび前記凹部はそれぞれ、第1および第2の回転防止特徴部を含み、前記第1および第2の回転防止特徴部は、前記カラーが前記凹部に挿入されると連結し、前記カラーが前記凹部内部で回転できなくなる、インプラント。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のインプラントにおいて、
前記カラーは、ディスク形状であり、前記取り付け部分は、前記カラーの周辺部の近位に設けられる、インプラント。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載のインプラントにおいて、
前記複数の取り付け部分のうちの少なくとも1つは、前記カラーから延びる、取り付けられた縫合糸を含む、インプラント。
【請求項9】
プロテーゼにおいて、
請求項1〜のいずれか1項に記載のインプラントと、
長骨の端部に連結されるように構成された遠位部分、および近位ネック部分を有する、関節形成インプラントと、
を備える、プロテーゼ。
【請求項10】
請求項に記載のプロテーゼにおいて、
前記ネック部分は、前記遠位部分の長さ方向軸に対して傾斜している軸に沿って延び、
前記カラーが前記関節接合構成要素に連結され、前記関節接合構成要素が前記近位ネック部分に連結されると、前記カラーは、前記ネックの軸に垂直な平面に位置する、プロテーゼ、
【請求項11】
請求項または10に記載のプロテーゼにおいて、
前記関節形成インプラントは、骨の表面に固定されるように構成された固定プレートを含む関節形成プレートと、前記固定プレートから延びて前記近位ネック部分を形成するコネクタ組立体と、を含む、プロテーゼ。
【請求項12】
請求項11に記載のプロテーゼにおいて、
前記コネクタ組立体は、前記固定プレートを通って開口するボアを備え、前記固定プレートから延びる胴部と、前記胴部の前記ボア内部をスライドするように構成されたコネクタロッドと、を含み、
前記コネクタ組立体は、前記コネクタロッドを前記胴部の中または外にスライドさせるように構成された調節機構と、前記関節接合構成要素を前記固定プレートから強固に離間させるために前記胴部内部における前記コネクタロッドの位置をロックするように構成されたロック機構と、を組み込む、プロテーゼ。
【請求項13】
請求項11または12に記載のプロテーゼにおいて、
前記固定プレートは、前記コネクタ組立体に連結可能なヘッド部分と、前記骨の外側表面に沿って遠位に延びるように構成された細長い本体部分と、を含み、前記細長い本体部分は、前記固定プレートを前記骨に固定するための骨ファスナーを受容するように構成された複数のファスナー穴を含む、プロテーゼ。
【請求項14】
請求項13に記載のプロテーゼにおいて、
前記固定プレートのヘッド部分は、骨断片および軟組織を前記固定プレートおよび前記カラーに固定するため、前記カラーから延びる縫合糸を受容するように構成された、少なくとも1つの縫合糸穴を含む、プロテーゼ。
【請求項15】
請求項9〜14のいずれか1項に記載のプロテーゼにおいて、
前記近位ネック部分は、テーパー部分を含み、前記関節接合構成要素の前記裏面は、対応するテーパーソケットを含み、前記テーパーソケットは、前記近位ネック部分の端部が前記テーパーソケットに挿入されると、テーパーロックが形成されて、前記関節接合構成要素を前記関節形成インプラントに固定するように構成されている、プロテーゼ。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
本発明は、概して整形外科手術に関し、特に、肩プロテーゼに関する。より具体的には、本発明は、上腕骨プロテーゼの一部を形成するインプラントに関する。特に、インプラントは、関節窩インプラントまたは生まれつきの関節窩に対して関節接合する関節接合構成要素を含む。本発明は、組立済みのプロテーゼ、および上腕骨プロテーゼを使用した肩関節形成処置にも関する。
【0002】
生まれつきの肩関節は、さまざまな理由で、例えば関節炎で、変性変化を受ける場合がある。あるいは、肩関節は、外力により、骨折するか、または別様に損傷を受ける場合がある。肩関節がかなり変性または損傷した場合、生まれつきの肩関節を、プロテーゼ肩関節と置き換えることが必要になる場合がある。従来の肩プロテーゼは、オプションとして関節窩インプラントを備えた、上腕骨インプラントを含む。
【0003】
典型的には、上腕骨インプラントは、骨の長さ方向軸に概ね沿って髄内管内に延びるボアに挿入されるステムと、凸状ベアリングヘッドなどの関節接合構成要素と、を含む。典型的には、関節接合構成要素は、ステムの遠位部分の長さ方向軸に対して傾斜角度で髄内管から延びる、ステムのネック部分に連結されて、生まれつきの関節の構成を再現する。
【0004】
上腕骨の上端部が骨折した場合、上腕骨は通常、砕けて、いくつかの断片、典型的には3つまたは4つの断片になる。具体的には、図1に示すような4部分の骨折(four part fracture)では、上腕骨頭2は、線4で示される解剖頸の高さで割れ、大結節6および小結節8が、これら結節の下で上腕骨幹10から分離され、結節6、8は、結節間溝(bicipetal groove)12に沿って互いから分離される。3部分の骨折(three part fracture)では、大結節6または小結節8は、上腕骨頭2に付着したままである。3部分の骨折および4部分の骨折の双方について、もはや上腕骨頭2への血液供給がないので、壊死が始まる場合がある。
【0005】
4部分の骨折または3部分の骨折の修復では、上腕骨頭が置換され、大結節および小結節が、上腕骨幹に再び取り付けられる。4部分の骨折を修復するための既知の肩プロテーゼは、ステムに取り付けられたタブまたはフィンを提供し、これらのタブまたはフィンは、縫合糸を受容する穴を組み込み、結節および軟組織、例えば回旋腱板筋(cuff muscles)、をプロテーゼに連結する。縫合糸穴を正確に位置付けることは、生まれつきの関節における上腕骨に対する軟組織の異なる付着点に適応するために必須である。典型的には、3および4部分の上腕骨骨折は、半関節形成処置を通じて修復される。これは、関節窩への損傷がなく、関節窩を置換する必要がない場合があるためである。
【0006】
ある既知のプロテーゼは、骨の断片および軟組織をインプラントに連結する付着点の位置における融通のきかなさ(inflexibility)を受けており、この結果として、修復された関節の可動性が失われる場合がある。
【0007】
DePuy (Ireland)の名前で2010年5月7日に出願された(あらゆる目的で本明細書に組み込まれる)英国特許出願第1007656.0号は、髄内管内へ延びる上腕骨ステムなど、上腕骨インプラントのネック部分に連結されるように構成された、回転可能なカラーを開示している。このカラーは、関節接合構成要素と、上腕骨インプラント周辺の生まれつきの骨との間に位置するように構成される。カラーは、大結節および小結節を含む、分離した骨断片がインプラントに連結されることを可能にする、複数の縫合糸穴または事前付着された縫合糸を周辺に画定するプレートを含む。縫合糸ケージが形成されてよく、この縫合糸ケージは、分離した骨断片周辺のカラーから延びてプレートの反対側部分へ戻り、骨断片を所定の位置に保持する。カラーにより、関節接合構成要素が骨から離間されるので、カラーは、関節接合構成要素の正確な位置付けを妨げ得る。
【0008】
本発明の実施形態の目的は、本明細書またはその他で特定されているかどうかにかかわらず、先行技術の問題のうち1つまたは複数を回避または軽減することである。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、インプラントが提供され、このインプラントは、ベアリング表面、および骨に連結された関節形成インプラントの近位ネック部分に連結されるように構成された裏面(reverse surface)を含む、関節接合構成要素と、関節接合構成要素の裏面に連結されるように構成されたカラーと、を含み、カラーは、関節接合構成要素と関節形成インプラントの近位ネック部分との間の連結部の周辺を通るように構成されたネック穴を画定し、カラーおよび関節接合構成要素は、カラーを関節接合構成要素に固定するため、相補的な連結特徴部を含み、カラーは、カラーを骨断片または軟組織に連結するための複数の取り付け部分を更に含む。
【0010】
本発明の第1の態様の利点は、カラーが、分離した骨断片および軟組織を関節接合構成要素に連結するための複数の取り付け点を提供することである。関節接合構成要素およびカラーが別々であるので、所定の場所に関節接合構成要素がない状態で、カラーは、関節腔に位置付けられることができ、骨断片は、カラーに連結されることができ、このため、外科医に、手術するためのより多くの空間が与えられる。次に、関節接合構成要素およびカラーは、関節接合構成要素を関節形成インプラントに固定する前に、互いに連結され得る。カラーは、関節接合構成要素と近位ネック部分との間の連結部の周りを通るので、カラーと近位ネック部分との間に直接的な接触はない。
【0011】
好適な実施形態では、カラーは、関節接合構成要素の裏面の凹部に受容され、関節接合構成要素と骨との間に余分な構成要素がないので、カラーにより、関節接合構成要素と骨との間に隙間がなくなる。結果として、インプラントは、従来のベアリングヘッドインプラントのように見える。追加の取り付け点を支持する関節形成インプラントと組み合わせて使用されると、骨断片を囲むケージを形成するようにカラーから関節形成インプラントに延びる縫合糸が提供され得る。これは、骨断片を所定の位置に固定し、また、関節接合構成要素と遠位インプラント構成要素との間の接続部に剛性を加える。本発明は、3または4部分の上腕骨骨折を修復するために上腕骨プロテーゼの一部を形成する、具体的には、大結節および小結節を含む骨断片を固定するのに、特に適している。
【0012】
関節接合構成要素の裏面は、凹部を含んでよく、カラーは、この凹部に受容されるように構成され得る。
【0013】
関節接合構成要素の裏面は、凹部の基部から突出し、かつ、関節形成インプラントの近位ネック部分の端部を受容するように構成された、ソケットを含んでよく、凹部は、関節接合構成要素のベアリング表面と裏面との間の境界を定めるリムと、ソケットとの間に、環状に延び、カラーのネック穴は、ソケットを通り越すように構成される。
【0014】
相補的な連結特徴部は、対応するねじ山を有する凹部およびカラーを含んでよい。あるいは、相補的な連結特徴部は、雄型部品を含む凹部およびカラーのうちの一方と、雌型部品を含む凹部およびカラーのうちのもう一方とを含んでよく、雄型部品および雌型部品のうち少なくとも一方は、カラーが凹部に挿入されると弾性的に変形するように構成され、雄型部品が、雌型部品に係合して、カラーを凹部に固定する。カラーおよび凹部は、それぞれ、第1および第2の回転防止特徴部を含んでよく、第1および第2の回転防止特徴部は、カラーが凹部に挿入されると連結して、カラーは、凹部内部で回転できなくなる。
【0015】
カラーは、ディスク型であってよく、取り付け部分は、カラーの周辺部の近位に設けられてよい。
【0016】
複数の取り付け部分のうち少なくとも1つは、縫合糸の第1の端部を受容および固定するように構成された縫合糸穴を含んでよい。
【0017】
複数の取り付け部分のうち少なくとも1つは、カラーから延びる、取り付けられた縫合糸を含むことができる。
【0018】
本発明の第2の態様によると、プロテーゼが提供され、このプロテーゼは、先行する請求項のいずれか1項に記載されたインプラントと、長骨の端部に連結されるように構成された遠位部分、および近位ネック部分を有する、関節形成インプラントと、を含む。
【0019】
ネック部分は、遠位部分の長さ方向軸に対して傾斜している軸に沿って延びてよく、カラーが関節接合構成要素に連結され、関節接合構成要素が近位ネック部分に連結されると、カラーは、ネックの軸に垂直な平面に位置することができる。
【0020】
関節形成インプラントは、骨の表面に固定されるように構成された固定プレートを含む関節形成プレートと、近位ネック部分を形成するように固定プレートから延びるコネクタ組立体と、を含むことができる。
【0021】
コネクタ組立体は、固定プレートを通って開口するボアを備え、固定プレートから延びる胴部と、胴部のボア内部をスライドするように構成されたコネクタロッドとを含んでよく、コネクタ組立体は、コネクタロッドを胴部内または外へスライドさせるように構成された調節機構と、関節接合構成要素を固定プレートから強固に離間させるために胴部内部においてコネクタロッドの位置をロックするように構成されたロック機構と、を組み込むことができる。
【0022】
固定プレートは、コネクタ組立体に連結可能なヘッド部分と、骨の外側表面に沿って遠位に延びるように構成された細長い本体部分とを含むことができ、細長い本体部分は、固定プレートを骨に固定するために骨ファスナーを受容するように構成された複数のファスナー穴を含む。
【0023】
固定プレートのヘッド部分は、骨断片および軟組織を固定プレートおよびカラーに固定するためにカラーから延びる縫合糸を受容するように構成された、少なくとも1つの縫合糸穴を含むことができる。
【0024】
近位ネック部分は、テーパー部分を含んでよく、関節接合構成要素の裏面は、対応するテーパーソケットを含んでよく、テーパーソケットは、近位ネック部分の端部がこのテーパーソケットに挿入されると、テーパーロックが形成されて関節接合構成要素を関節形成インプラントに固定するように構成されている。
【0025】
本発明の第3の態様によると、手術方法が提供され、この方法は、骨の端部において関節接合表面の少なくとも一部を除去することと、関節形成インプラントの遠位部分を骨の端部に連結することであって、関節形成インプラントは、遠位部分から延びる近位ネック部分をさらに含む、ことと、骨断片または付着した軟組織と、カラーに形成された複数の取り付け部分のうちの少なくとも1つとの間に延びる縫合糸で、骨断片をカラーに固定することと、カラーおよび関節接合構成要素の裏面の相補的特徴部を互いに連結して、カラーを裏面に固定することであって、関節接合構成要素は、ベアリング表面をさらに含む、ことと、カラーのネック穴が関節形成インプラントの近位ネック部分と関節接合構成要素との間の連結部の周りを通るように、関節接合構成要素を関節形成プレートの近位ネック部分に連結することと、を含む。
【0026】
関節形成インプラントの遠位部分を骨の端部に連結することは、関節形成インプラントの遠位部分を形成する固定プレートを、骨の骨折端部の外側表面に固定することであって、固定プレートは、近位ネック部分を画定するコネクタ組立体に連結され、コネクタ組立体は、ボアを有する胴部、およびコネクタロッドを含み、コネクタロッドは、胴部のボア内部でスライドするように構成される、ことと、胴部から延びるコネクタロッドの長さを調節するためにコネクタロッドを胴部の中または外へスライドさせることと、関節接合構成要素を固定プレートから強固に離間させるように、胴部内部におけるコネクタロッドの位置をロックすることと、を含むことができる。
【0027】
固定プレートは、胴部の近位のヘッド部分をさらに含んでよく、ヘッド部分は、少なくとも1つの縫合糸穴を画定し、方法は、カラーの取り付け部分と、固定プレートのヘッド部分の少なくとも1つの縫合糸穴との間に縫合糸を通すことをさらに含んでよく、縫合糸は、骨断片または付着した軟組織を通過して、骨断片をカラーおよび固定プレートに固定する。
【0028】
本発明は、添付図面を参照して、ほんの一例として説明される。
【0029】
まず図2を参照すると、この図は、本発明の第1の実施形態によるインプラント20と、関節形成プレート22と、を示す。インプラント20は、関節形成プレート22の近位ネック部分26に連結されるように構成された関節接合構成要素24を含む。インプラント20は、関節接合構成要素24の裏面における凹部30に受容されるように構成された、カラー28をさらに含む。本発明の代替的な実施形態では、カラーは、凹部に完全に受容されなくてもよいか、あるいは、カラーが単に関節接合構成要素の裏面に連結されるように凹部がなくてもよいことが、理解されるであろう。図3は、近位上腕骨10の外側表面32に連結された関節形成プレート22を示し、近位ネック部分26は、3部分または4部分上腕骨骨折(three or four part humeral fracture)の骨折した骨を通って延び、インプラント20に連結される。図3は、関節形成プレート22に連結された、本発明の第2の実施形態によるインプラント120を示す。インプラント20の第1の実施形態は、図4および図5に関連して、以下でさらに詳細に説明する。インプラント120の第2の実施形態は、図7および図8に関連して、以下でさらに詳細に説明する。
【0030】
関節形成プレート22は、DePuy (Ireland)の名前で2011年2月4日に出願された、英国特許出願第1101896.7号でさらに詳細に説明してあり、この出願は、あらゆる目的で本明細書に組み込まれる。関節形成プレート22について、簡単に説明する。
【0031】
前記のとおり、肩プロテーゼのための従来の上腕骨インプラントは、上腕骨の髄内管内へ延びるボアに挿入されるステムと、関節接合構成要素と、を含む。関節接合構成要素は、ステムのネック部分に連結され、ネック部分は、ステムの遠位部分の長さ方向軸に対して傾斜角で髄内管から延びる。しかしながら、上腕骨ステムを髄内管に植え込むと、骨に著しい損傷が生じる。図2および図3に示すような、また、英国特許出願第1101896.7号に詳細に記載されるような、関節形成プレート22は、固定プレート34が骨の外側表面に固定される際に除去されなければならない天然の骨の量を減少させる。関節形成プレート22は、長さ調節特徴部を組み込み、長さ調節特徴部により、上腕骨頭インプラント20と固定プレート34との間の距離を変えて、肩関節における軟組織の張力を調節し、また、オプションとして上腕骨頭インプラント20を骨から離間させて、骨折骨へのさらなる損傷を避けることができる。
【0032】
上腕骨頭インプラント20は、近位上腕骨32に形成されたボアに位置付けられたコネクタ組立体38によって固定プレート24に連結される。3部分または4部分の上腕骨骨折の修復では、上腕骨幹10は、典型的には、大結節6および小結節8より下で骨折する。固定プレート34は、コネクタ組立体38が概ね骨折線の上に位置するように成形され、そのため実際にはボアを形成する必要はなく、むしろ切り離された骨断片の一部が、コネクタ組立体38の周りに適合するように整えられ得る。
【0033】
関節形成プレート22は、図2において斜視図で示されている。固定プレート34は、細長い本体部分40と、外側上腕骨の表面に一致するように構成されたヘッド部分42と、を含む。本体部分40は、図3に示すように骨ねじ36でプレート40を上腕骨32に固定するための、いくつかのねじ穴44を組み込んでいる。スロット式ねじ穴46が、プレート40を骨に初期固定するために設けられる。ねじが、スロット式穴46を通して骨に挿入され、固定プレート40が永続的に取り付けられる前にプレート40が骨に沿ってスライドすることを可能にする。縫合糸穴48が、軟組織および骨断片を固定プレート40に固定するためにヘッド部分42周辺に設けられる。具体的には、縫合糸50が、図3に示すように、また、図6a〜図6eに関連して以下でさらに詳細に説明するように、カラー28から固定プレート34のヘッド部分42まで延びて、骨断片を保持することができる。
【0034】
プレート34は、近位上腕骨の天然の解剖学的構造を再現するため、プレートの長さ方向軸に対して横向きに、例えば135°で、プレートから延びる、一体形成された中空胴部52をさらに含む。胴部52は、コネクタ組立体38の一部を形成する。コネクタ組立体38は、テーパー部54と固定プレート34との間の距離を調節するために調節機構をさらに含む。テーパー部54は、以下でさらに詳細に説明するように、関節接合構成要素24内の対応するテーパーソケットに受容されるように構成される。コネクタ組立体38は、調節機構を所定の位置にロックし、テーパー部54と固定プレート34との間のさらなる移動を防ぐ、ロック機構をさらに含む。組み合わせられると、調節機構およびロック機構により、外科医は、関節接合構成要素24を固定プレート34から選択的に離間させ、その後、連結が強固になるようそれら構成要素を互いにロックすることができる。有利なことには、この連結により、関節接合構成要素24が骨から離間することができ、負荷は、固定プレートにのみ伝達されるようになり、これは、上腕骨頭がひどく骨折している場合に望ましいものとなり得る。固定プレート34は、無傷の骨に確実に固定され得るように、十分遠くまで上腕骨に沿って延びる。あるいは、関節接合構成要素24は、負荷が天然の骨に部分的に伝達されるように、骨の上に載ることもできる。調節機構により、整復される関節内部の軟組織の張力を調節することができる。コネクタ組立体38については、本明細書でさらに説明はしないが、さらなる詳細を、英国特許出願第1101896.7号で見ることができる。
【0035】
次に図4および図5を参照して、上腕骨頭インプラント20の第1の実施形態が、さらに詳細に説明される。前記のとおり、上腕骨頭インプラント20は、関節接合構成要素24と、カラー28と、を含む。図4は、分離された関節接合構成要素24およびカラー28を示し、図5は、互いに連結された関節接合構成要素24およびカラー28を示している。
【0036】
関節接合構成要素24は、凸状ベアリング表面60と、凹部30を含む裏面62と、を含む。凸状ベアリング表面60は、球体の一部により画定され得る。裏面62は、凹部30によってほぼ占められており(taken up)、凹部30は、例示のとおり、リム64内部で裏面62のほぼ全幅にわたって延びている。凹部30は、凹部の基部からほぼリム64の高さまで突出するソケット66の周りに延びる。ソケット66は、テーパー状ボアを画定しており、関節形成プレート22のネック部分26の端部でテーパー部54に対してテーパーロックを形成するように構成されている。特に、植え込み中、関節接合構成要素24は、テーパー部54がソケット66に受容され、嵌め込み力が凸状ベアリング表面60に加えられて、これら2つの構成要素が共にロックされるように、設置される。本発明の代替的な実施形態では、ソケット66と関節形成インプラントの近位ネック部分26との間の連結は変化してよく、例えば、これらは、ねじ山により連結されるか、または、グラブねじで固定されることができることが、認識されるであろう。
【0037】
凹部30は、ソケット66周辺に環状リングを形成する。ソケット66の外側エッジは、ねじ山68を備える。カラー28は、ねじ穴70を含み、カラー28を保持しながら関節接合構成要素24を回転させると、依然として、カラーは凹部30にねじ込まれて、これらの構成要素を互いにロックする。図5に示すように、組み立てられると、カラー28は、完全に凹部30内に受容され、リム64と同じ高さとなるか、または、奥に引っ込む。有利なことには、このことは、英国特許出願第1007656.0号に開示されたカラーとは異なり、必要とされる場合、凸状ベアリングヘッドが完全に骨の上に位置し得ることを意味している。カラー28は、図6dおよび図6eに関連して以下でさらに詳細に説明されるように、関節接合構成要素24に連結された状態で、カラー28を静止した状態に保持するための器具を受容する穴72をさらに含む。
【0038】
カラー28の周辺部の周りには縫合糸穴74がある。図6a〜図6eに関連して以下でさらに詳細に説明されるように、縫合糸は、1つの穴を通して進められ、第2の穴を通って戻り、骨断片および回旋腱板筋などの軟組織をカラーに固定することができる。縫合糸穴74は、例示されるとおりカラー28の周辺部全体の周りに等間隔になっていてよく、あるいは、使用中に大結節および小結節などの特定の骨断片の近くに位置する、カラーの部分に集中していてよい。縫合糸穴74は、直径が約2.5mmであってよい。図3に示すとおり、縫合糸は、カラーの縫合糸穴74から、固定プレート40のヘッド部分42の縫合糸穴48へと延びることができる。代替的な実施形態では、縫合糸穴74の代わりに、またはそれらに加えて、カラー28は、カラー28に永続的に連結されるか、もしくは事前に取り付けられる、縫合糸50を有してよい。縫合糸は、例えば、クリンピングによって、または、縫合糸穴74に結び付けられることによって、取り付けられ得る。事前に取り付けられる縫合糸の一部またはすべてが、骨または軟組織に連結される針および/またはアンカーで終端してよく、あるいは、代わりに、従来の手術技法を用いて、縫合糸を骨または軟組織に取り付けることができる。針またはアンカーは、全体的に従来のものであってよいので、さらに説明はしない。
【0039】
骨折した上腕骨頭を修復するために図2の上腕骨頭インプラントおよび関節形成プレートを植え込む外科処置を、図3および図6a〜図6eに関連して説明する。外科処置の詳細は、例えば外科医の好みによって、変化し得ることが認識されるであろう。前記のとおり、本発明の関節形成プレートおよび上腕骨頭インプラントは、3部分または4部分の近位上腕骨骨折の修復に適応され得る。4部分の近位上腕骨骨折では、上腕骨頭は、いかなる軟組織にも連結されず、また、血液供給のない、遊離断片(free fragment)である。大結節および小結節は切り離される。大結節は、付着した回旋腱板により上方および後方に転置され、一方、小結節は、付着した肩甲下筋により内側に後退させられる。上腕骨幹の骨折端部は、大胸筋の引っ張る力(pull)により内側に転置される。3部分の骨折は、大結節または小結節が上腕骨頭に付着したままであり、これが、その結果、肩甲下筋腱(subscapularis tendon)によって内側に回転される点で、異なる。
【0040】
外科医はまず、骨折した上腕骨頭へのアクセスを得なければならない。患者は、外科医が損傷した肩に自由にアクセスできるように、例えば、損傷した腕を束縛せずに吊るし、腕を後で操作するための空間を設けた状態で、「ビーチチェア」の姿勢に、位置付けられる。骨折は、内旋および外旋(internal and external rotation)下を含め、蛍光透視法を用いて調べられ得る。胸三角筋露出(deltopectoral exposure)を使用して、烏口突起、肩峰突起(acromium)および三角筋の付着点(insertion)を識別することができる。胸筋と三角筋との間の間隔が作り出され、切開線は、烏口突起から遠位に延びる。
【0041】
この露出は、12〜14cmの切開部にわたる。この切開部は、留置開創器を用いて、開いたまま保たれることができる。橈側皮静脈を識別し後退させるには、注意を払わなければならない。烏口腕筋は、内側に後退させられ、胸三角筋間隔の床(floor of the deltopectoral interval)における胸筋付着点が突き止められ、肩峰下腔が作り出されて、近位三角筋(proximal deltoid)に可動性を持たせる。
【0042】
分離された上腕骨頭は、次に(3部分骨折の場合には大結節または小結節から頭部を解放した後で)除去され得る。上腕骨頭インプラント20は、患者の天然の上腕骨頭に適合するようにさまざまな範囲のサイズで提供され得る。関節接合構成要素24の適切なサイズは、例えば、上腕骨頭の高さおよび曲率半径を測定する計器と上腕骨頭を比較することにより、選択される。各関節接合構成要素24は、対応するカラー28を有してよく、または、各関節接合構成要素は、単一のサイズのカラー28を受容するために標準サイズの凹部30を有してよい。結節は、小結節および付着した肩甲下筋腱を動かす際に腋窩神経を保護するよう注意を払いながら、下にある軟組織から解放されなければならない。結節は、それらが、プロテーゼの周りを通過して、互いに、また関節形成プレートに連結されることができるように、解放される。
【0043】
関節形成プレートを植え込む外科技術は、英国特許出願第1101896.7号にさらに詳細に記載されているが、本明細書でも簡単に説明する。最初に、トライアルプレートが上腕骨の表面に取り付けられる。トライアルプレートは、固定プレート34とほぼ同じであってよく、具体的には、骨接触表面が同じ形状であってよい。しかしながら、トライアルプレートは、胴部52を含まないので、近位外側上腕骨の表面上に自由に位置付けられることができる。トライアルプレートの前側が、二頭筋溝(bicipetal groove)と整列される。
【0044】
トライアルプレートは、2mmのガイドワイヤを案内するように構成されたガイドをさらに含む。ガイドワイヤは、プロテーゼのヘッド(関節接合構成要素24)が中心を置く場所を示す。これにより、外科医は、トライアルヘッドが距領域(calcar region)および結節に関して正しい位置にあることが分かる。ガイドワイヤは、ゆっくりと前進させられ、その軌道は、蛍光透視法下で確認され得る。ガイドワイヤは、トライアルプレートを骨に一時的に固定するのに役立つ。トライアルヘッドは、ガイドワイヤに連結され得る。正しく位置付けられると、トライアルヘッドの下面は、上腕骨頭の内側端部と整列するはずである。
【0045】
いったんトライアルヘッドの位置が確認されたら、外科医は、上腕骨頭の関節接合表面の残りの断片を除去することを必要とされ得る。典型的には、関節接合表面は、上腕骨から既に破砕または分離していてよい。必要であれば、胴部52を受容するボアを形成するためにドリルリーマーを使用してよい。あるいは、胴部52は、上腕骨幹10の骨折線の上に延びてよく、または、最小の骨除去が必要とされ得る。
【0046】
固定プレート34は次に、上腕骨頭の元の位置に向かって延びるコネクタ組立体38により、外側上腕骨表面に固定され得る。トライアルヘッド208は、テーパー部54に一時的に連結されて、ネックの軸の最終位置をチェックすることができる。
【0047】
次に、トライアルヘッドの位置は、上腕骨頭インプラント20の必要な位置を決定するためにコネクタ組立体38内部で調節機構を用いて調節され得る。トライアルヘッドの位置は、肩関節が整復される前または後で決定されてよく、あるいは、肩関節が整復された後でさらなる調節が行われてもよい。コネクタ組立体は次に、所定の位置でロックされ、トライアルヘッドが除去される。
【0048】
図6aを参照すると、関節形成プレートが骨に固定された後、カラー28は、縫合糸50で、骨断片、特に大結節および小結節に連結される。図6aは、5本の縫合糸50が通されたカラー28を示し、結節は図示されていない。最初に、縫合糸は、図6bに示すように、骨断片に緩く連結されて、カラー28を操縦して関節接合構成要素24に固定させる。縫合糸は、骨粗しょう症の骨の結節断片を通して引っ張られることができるので、好ましくは、縫合糸は、さらに、または単に、回旋腱板の腱(cuff tendons)を通過する。本発明の第1の実施形態の上腕骨頭インプラント20では、図6dおよび図6eに関連して以下に記載されるように、カラー28が静止して保持される間、関節接合構成要素24は、カラー28上にねじ込まれる。次に、テーパー部54をソケット60に挿入し、嵌め込み力を上腕骨頭インプラント20に加えることによって、図6cに示すように(明瞭にするため骨なしで例示)、上腕骨頭インプラント20は関節形成プレート22に固定される。骨断片をカラー28に連結する縫合糸50は、次に関節形成プレート22に固定され、締め付けられて、骨断片を取り囲む縫合糸のケージを形成する。縫合糸のケージは、関節形成プレート22と上腕骨頭インプラント20との間の連結に、さらなる剛性をもたらす。
【0049】
図6dを参照すると、関節形成プレート22は、上腕骨幹10に固定されて図示されており、縫合糸50は、カラー28に連結されている。明瞭にするため、大結節6および小結節8は、縫合糸50に連結されていない。骨折した上腕骨頭2は、上腕骨から除去されて図示されている。カラー28は、穴72に係合するように配列された対の突起(見えない)を有するカラーハンドル80を用いて、静止して保持される。関節接合構成要素24は、図6eに示すようにねじ山68、70を固定するためカラー28に対して関節接合構成要素24を回転させるドライバー84により係合されるように構成された六角スロット82を、ソケット60の基部に有している。ドライバー84がスロット82にアクセスするための空間をもたらすように、関節接合構成要素24がカラー28上にねじ込まれるまで、縫合糸50が緩く保持されなければならないことが、理解されるであろう。
【0050】
必要な場合に、関節接合構成要素24と結節との間の圧縮は、コネクタ組立体38内部で調節機構を用いてテーパー部54と固定プレート34との間の距離を調節することにより、もたらされ得る。あるいは、関節接合構成要素24は、カラー28と関節形成プレート22のヘッド部分42との間に延びる縫合糸50に張力をかけるように、固定プレート34から遠ざかることができる。
【0051】
次に図7および図8を参照すると、これらは、本発明の第2の実施形態による上腕骨頭インプラント120を示す。第2の上腕骨頭インプラント120は、図4および図5に示すインプラント20と概ね同様であるので、対応する特徴部は、同じ参照符号を100ずつ増やしたものにより特定される。第1の実施形態に関しては、上腕骨頭インプラント120は、関節接合構成要素124とカラー128とを含む。図7は、切り離された関節接合構成要素124およびカラー128を示し、図8は、これらが互いに連結された場合の断面図を示す。図3は、関節形成プレート22に連結された場合の本発明の第2の実施形態120をさらに示す。
【0052】
関節接合構成要素124は、凸状ベアリング表面160と、凹部130を含む裏面162と、を含む。凸状ベアリング表面160は、球体の一部により画定され得る。裏面162は、実質的に凹部130により占められており、凹部は、例示されたとおり、リム164内部で裏面162のほぼ全幅にわたり延びている。凹部130は、ソケット166の周りに延びており、ソケット166は、テーパー状であり、関節形成プレート22のネック部分26の端部でテーパー部54に対しテーパーロックを形成するように構成される。
【0053】
凹部130は、ソケット166の周りに環状リングを形成する。ソケット166の外側エッジは、環状リブ180を備える。カラー128は、ソケット166の外側形状に対応する隆起リム184により画定され、かつ環状溝186を含む、穴182を含む。リム184は、弾性的に変形可能であり、ソケット166上に押されると、拡張して、溝186をリブ180に係合させる。カラー128は、関節接合構成要素124にスナップ嵌めされ、カラーが骨断片および軟組織に縫合された後で、カラーは、関節接合構成要素124がテーパー部54に連結される前に関節接合構成要素124に連結されることができる。組み立てられると、図8に示すように、カラー128は、完全に凹部130内に受容され、リム164と同じ高さになるか、または、奥へ引っ込む。
【0054】
関節接合構成要素124は、凹部130内に穴190をさらに含み、カラー128は、穴190内に受容されるように構成されたピン192を含む。ピンおよび穴により、カラーと関節接合構成要素が互いに連結される際に、カラーが関節接合構成要素に対して回転することが防止される。
【0055】
カラー128の周辺部の周りには縫合糸穴174がある。上腕骨頭インプラントの第1の実施形態に関して、縫合糸は、カラーに事前に取り付けられてよい。縫合糸がカラーに事前に取り付けられて供給される場合、関節接合構成要素は、インプラントが外科医に渡される前にカラーに連結され得る。しかしながら、別個のカラーを設ける利点は、骨断片および軟組織を所定の位置に固定する際にインプラントのサイズが縮小されることであり、これにより、手術するさらなる空間が外科医に与えられる。
【0056】
前述した、カラーを関節接合構成要素に固定するための、ねじ嵌め(screw fit)およびスナップ嵌めのオプションに加えて、これら2つの構成要素は、他の方法で互いに連結され得ることが、容易に明らかとなるであろう。例えば、関節接合構成要素の裏面の凹部は、テーパー状であってよく、カラーは、凹部とテーパーロックを形成するためにテーパーエッジおよび/またはテーパーネック穴を有してもよい。あるいは、それらは、例えばカラーを通り抜け関節接合構成要素の裏面へ入る、ねじまたはボルトで固定されてもよい。他の連結オプションは、当業者に容易に明らかとなるであろう。
【0057】
本発明のインプラントは、上腕骨プロテーゼの一部を形成するものとして、主に前述されてきた。このインプラントは、典型的には3部分または4部分の骨折した骨があるので、肩骨折修復の適応に特に適しており、そのため、カラーは、骨断片を保持するのを助ける。しかしながら、インプラントは、別の長骨の端部に植え込まれるモジュール式プロテーゼの一部を形成することもできる。例えば、カラーは、股関節骨折の修復のための大腿骨プロテーゼの一部を形成することができる。一般に、大腿骨の骨折は、頸部を横切る。しかしながら、大腿骨骨折の一部の形態では、骨折した骨が複数部分あり、そのため、本発明のインプラントが、骨断片を所定の位置に固定するのに有用となり得る。
【0058】
本発明に対する他の改変、および本発明の他の適用は、請求項の範囲から逸脱せずに、本明細書の教示から容易に明らかとなるであろう。
【0059】
〔実施の態様〕
(1) インプラントにおいて、
ベアリング表面、および骨に連結される関節形成インプラントの近位ネック部分に連結されるように構成された裏面を含む、関節接合構成要素と、
前記関節接合構成要素の前記裏面に連結されるように構成されたカラーと、
を含み、
前記カラーは、前記関節接合構成要素と前記関節形成インプラントの前記近位ネック部分との間の連結部の周りを通るように構成されたネック穴を画定し、前記カラーおよび前記関節接合構成要素は、前記カラーを前記関節接合構成要素に固定するために相補的な連結特徴部を含み、
前記カラーは、前記カラーを骨断片または軟組織に連結するために複数の取り付け部分をさらに含む、インプラント。
(2) 実施態様1に記載のインプラントにおいて、
前記関節接合構成要素の前記裏面は、凹部を含み、前記カラーは、前記凹部に受容されるように構成される、インプラント。
(3) 実施態様2に記載のインプラントにおいて、
前記関節接合構成要素の前記裏面は、ソケットを含み、前記ソケットは、前記凹部の基部から突出し、関節形成インプラントの前記近位ネック部分の端部を受容するように構成され、前記凹部は、前記ベアリング表面と前記関節接合構成要素の前記裏面との間の境界を定めるリムと、前記ソケットとの間で、環状に延び、
前記カラーの前記ネック穴は、前記ソケットを通り越すように構成される、インプラント。
(4) 実施態様2または3に記載のインプラントにおいて、
前記相補的な連結特徴部は、対応するねじ山を有する前記凹部および前記カラーを含む、インプラント。
(5) 実施態様2または3に記載のインプラントにおいて、
前記相補的な連結特徴部は、雄型部品を含む、前記凹部および前記カラーのうちの一方と、雌型部品を含む、前記凹部および前記カラーのうちのもう一方と、を含み、前記雄型部品および前記雌型部品のうちの少なくとも一方は、前記カラーが前記凹部に挿入される際に弾性的に変形するように構成され、前記雄型部品は、前記雌型部品に係合して、前記カラーを前記凹部に固定する、インプラント。
【0060】
(6) 実施態様5に記載のインプラントにおいて、
前記カラーおよび前記凹部はそれぞれ、第1および第2の回転防止特徴部を含み、前記第1および第2の回転防止特徴部は、前記カラーが前記凹部に挿入されると連結し、前記カラーが前記凹部内部で回転できなくなる、インプラント。
(7) 実施態様1〜6のいずれかに記載のインプラントにおいて、
前記カラーは、ディスク形状であり、前記取り付け部分は、前記カラーの周辺部の近位に設けられる、インプラント。
(8) 実施態様1〜7のいずれかに記載のインプラントにおいて、
前記複数の取り付け部分のうちの少なくとも1つは、縫合糸の第1の端部を受容し固定するように構成された、縫合糸穴を含む、インプラント。
(9) 実施態様1〜8のいずれかに記載のインプラントにおいて、
前記複数の取り付け部分のうちの少なくとも1つは、前記カラーから延びる、取り付けられた縫合糸を含む、インプラント。
(10) プロテーゼにおいて、
実施態様1〜9のいずれかに記載のインプラントと、
長骨の端部に連結されるように構成された遠位部分、および近位ネック部分を有する、関節形成インプラントと、
を備える、プロテーゼ。
【0061】
(11) 実施態様10に記載のプロテーゼにおいて、
前記ネック部分は、前記遠位部分の長さ方向軸に対して傾斜している軸に沿って延び、
前記カラーが前記関節接合構成要素に連結され、前記関節接合構成要素が前記近位ネック部分に連結されると、前記カラーは、前記ネックの軸に垂直な平面に位置する、プロテーゼ、
(12) 実施態様10または11に記載のプロテーゼにおいて、
前記関節形成インプラントは、骨の表面に固定されるように構成された固定プレートを含む関節形成プレートと、前記固定プレートから延びて前記近位ネック部分を形成するコネクタ組立体と、を含む、プロテーゼ。
(13) 実施態様12に記載のプロテーゼにおいて、
前記コネクタ組立体は、前記固定プレートを通って開口するボアを備え、前記固定プレートから延びる胴部と、前記胴部の前記ボア内部をスライドするように構成されたコネクタロッドと、を含み、
前記コネクタ組立体は、前記コネクタロッドを前記胴部の中または外にスライドさせるように構成された調節機構と、前記関節接合構成要素を前記固定プレートから強固に離間させるために前記胴部内部における前記コネクタロッドの位置をロックするように構成されたロック機構と、を組み込む、プロテーゼ。
(14) 実施態様12または13に記載のプロテーゼにおいて、
前記固定プレートは、前記コネクタ組立体に連結可能なヘッド部分と、前記骨の外側表面に沿って遠位に延びるように構成された細長い本体部分と、を含み、前記細長い本体部分は、前記固定プレートを前記骨に固定するための骨ファスナーを受容するように構成された複数のファスナー穴を含む、プロテーゼ。
(15) 実施態様14に記載のプロテーゼにおいて、
前記固定プレートのヘッド部分は、骨断片および軟組織を前記固定プレートおよび前記カラーに固定するため、前記カラーから延びる縫合糸を受容するように構成された、少なくとも1つの縫合糸穴を含む、プロテーゼ。
【0062】
(16) 実施態様10〜15のいずれかに記載のプロテーゼにおいて、
前記近位ネック部分は、テーパー部分を含み、前記関節接合構成要素の前記裏面は、対応するテーパーソケットを含み、前記テーパーソケットは、前記近位ネック部分の端部が前記テーパーソケットに挿入されると、テーパーロックが形成されて、前記関節接合構成要素を前記関節形成インプラントに固定するように構成されている、プロテーゼ。
(17) 手術方法において、
骨の端部において関節接合表面の少なくとも一部を除去することと、
前記骨の前記端部に関節形成インプラントの遠位部分を連結することであって、前記関節形成インプラントは、前記遠位部分から延びる近位ネック部分をさらに含む、ことと、
骨断片または付着した軟組織と、カラーに形成された複数の取り付け部分のうちの少なくとも1つとの間に延びる縫合糸で、前記骨断片を前記カラーに固定することと、
前記カラーおよび関節接合構成要素の裏面の相補的な特徴部を互いに連結して、前記カラーを前記裏面に固定することであって、前記関節接合構成要素は、ベアリング表面をさらに含む、ことと、
前記カラーのネック穴が前記関節形成インプラントの前記近位ネック部分と前記関節接合構成要素との間の連結部の周りを通るように、前記関節接合構成要素を、前記関節形成プレートの前記近位ネック部分に連結することと、
を含む、手術方法。
(18) 実施態様17に記載の手術方法において、
前記骨の前記端部に関節形成インプラントの遠位部分を連結することは、
前記関節形成インプラントの前記遠位部分を形成する固定プレートを、前記骨の骨折端部の外側表面に固定することであって、前記固定プレートは、前記近位ネック部分を画定するコネクタ組立体に連結され、前記コネクタ組立体は、ボアを備えた胴部、およびコネクタロッドを含み、前記コネクタロッドは、前記胴部の前記ボア内部でスライドするように構成される、ことと、
前記胴部から延びる前記コネクタロッドの長さを調節するために前記コネクタロッドを前記胴部の中または外へスライドさせることと、
前記関節接合構成要素を前記固定プレートから強固に離間させるために前記胴部内部の前記コネクタロッドの位置をロックすることと、
を含む、手術方法。
(19) 実施態様18に記載の手術方法において、
前記固定プレートは、前記胴部の近位のヘッド部分をさらに含み、前記ヘッド部分は、少なくとも1つの縫合糸穴を画定し、前記方法は、
前記カラーの前記取り付け部分と前記固定プレートの前記ヘッド部分の前記少なくとも1つの縫合糸穴との間に縫合糸を通すことをさらに含み、前記縫合糸は、骨断片または付着した軟組織を通過して、前記骨断片を前記カラーおよび前記固定プレートに固定する、手術方法。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】近位上腕骨の4部分骨折を示す。
図2】関節形成プレートと組み合わせられた、本発明の第1の実施形態によるインプラントを示す。
図3】上腕骨の端部上に植え込まれた、本発明の第2の実施形態によるインプラントおよび図2の関節形成プレートを示す(骨は、植え込まれた関節形成プレートの内側の詳細を明らかにするために透明なものとして例示されている)。
図4】関節接合構成要素から分離されたカラーを示す、図2のインプラントの分解組立図である。
図5図2のインプラントの組立図である。
図6a図2のインプラントおよび関節形成プレートを植え込む手術方法の工程を示す。
図6b図2のインプラントおよび関節形成プレートを植え込む手術方法の工程を示す。
図6c図2のインプラントおよび関節形成プレートを植え込む手術方法の工程を示す。
図6d図2のインプラントおよび関節形成プレートを植え込む手術方法の工程を示す。
図6e図2のインプラントおよび関節形成プレートを植え込む手術方法の工程を示す。
図7図3に示す本発明の第2の実施形態によるインプラントの分解組立図である。
図8図7の組み立てられたインプラントの断面図である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図7
図8