(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
離型フィルム上に、請求項1〜5のいずれか1項に記載の印刷型接着剤をスクリーン印刷により塗布印刷して得られた転写用フィルムと第1の被着体とを重ね合わせて50〜100℃で加熱した後、前記離型フィルムを剥離除去することにより、前記転写用フィルムの転写部分を前記第1の被着体に転写する工程;
前記第1の被着体の転写部分に第2の被着体を載置する工程;及び
100〜250℃に加熱して、前記転写部分の接着剤を熱硬化する工程
を含む接合体の製造方法。
前記印刷型接着剤をスクリーン印刷により塗布印刷した後、50〜100℃で加熱することにより、前記転写用フィルムを作製する工程を含む請求項9に記載の接合体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、今回、開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0016】
〔印刷型接着剤〕
本発明の印刷型接着剤は、(A)重量平均分子量(Mw)8万〜30万のアクリル樹脂、(B)エポキシ樹脂を(A)アクリル樹脂量の30〜70質量%、(C)
エポキシ樹脂の硬化剤、(D)平均粒径1μm以下の無機フィラー、及び(E)溶剤を含有する印刷型接着剤であって、E型粘度計測定で回転数1rpmのときの粘度が15〜800Pa・sで且つ回転数50rpmのときの粘度が4〜200Pa・sである。尚、上記の粘度は室温(25℃)で測定した値とする。
【0017】
前記(E)溶剤は、沸点160℃以上の有機溶剤であることが好ましく、前記(E)溶剤の含有率は、印刷型接着剤全量の55質量%以下であることが好ましい。
【0018】
前記(C)
エポキシ樹脂の硬化剤は酸無水物を含むことが好ましく、前記(D)無機フィラーは樹脂分量の1〜30質量%含有されていることが好ましい。
【0020】
(A)アクリル樹脂
本発明で使用するアクリル樹脂は、重量平均分子量(Mw)8万〜30万、好ましくは10万〜20万である。重量平均分子量が8万未満では、硬化部分の耐熱性を満足できないからである。一方、重量平均分子量30万を超えると、接着剤の溶融粘度が高くなり、特に高せん断速度下であっても、粘度低下が不十分となり、スクリーン印刷時に糸引きが生じて版離れが悪かったり、印刷された接着剤付与部分の表面に凹凸が生じ、その結果、接合部分に空隙が生じて、接合強度を満足できなくなるおそれがあるからである。また、溶融粘度を下げるために、溶剤を追加すると、固形分濃度が下がり、厚膜印刷が困難となるおそれがある。
【0021】
アクリル樹脂は、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル(以下、アクリル酸とメタクリル酸を特に区別しない場合は「(メタ)アクリル酸」と総称し、そのエステルを「(メタ)アクリレート」と総称する)を主たる構成モノマーとする重合体である。
【0022】
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸イソペンチル、メタクリル酸イソペンチル、アクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸イソオクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸−n−オクチル、アクリル酸イソノニル、メタクリル酸イソノニル、アクリル酸−n−デシル、メタクリル酸−n−デシル、アクリル酸イソデシル、メタクリル酸イソデシル等の(メタ)アクリル酸の炭素数1〜10、好ましくは1〜6のアルキルエステルが挙げられ、これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
上記(メタ)アクリレート系モノマーの他、本発明の効果を阻害しない範囲内で、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリルグリシジルエーテル等のエポキシ含有(メタ)アクリルレート;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基置換(メタ)アクリレート;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド含有アクリル系モノマー、アクリロニトリル等のシアノ基含有アクリル系モノマー、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、酢酸ビニル等の他のビニル系モノマーが共重合されていてもよい。
【0024】
このようなアクリル樹脂は、熱可塑性樹脂として、加熱時に軟化溶融することで、被着面の凹部や接合部分における配線パターンの凹部に流れ込み、これらの凹部への埋め込みが可能となる。
【0025】
(B)エポキシ樹脂
本発明で用いられるエポキシ樹脂は、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する樹脂であればよく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0026】
エポキシ樹脂は、熱硬化性樹脂として、接合部の耐熱性、接合強度に寄与し、絶縁性の確保にも寄与する。
【0027】
エポキシ樹脂は、A成分であるアクリル樹脂量の30〜70質量%、好ましくは30〜55質量%含有することが好ましい。アクリル樹脂に対してエポキシ樹脂の含有量が少なくなりすぎると、耐熱性が低下するからである。一方、多くなりすぎると、相対的にアクリル樹脂が少なくなることから、加熱加圧時の軟化溶融が困難となり、ひいては被着体の凹部を十分に埋め込むことが困難となり、接合強度の低下の原因となるからである。
【0028】
(C)
エポキシ樹脂の硬化剤
エポキシ樹脂の硬化剤とし
ては、ポリアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、三フッ化ホウ素アミン錯塩、イミダゾール系硬化剤、芳香族ジアミン系硬化剤、カルボン酸系硬化剤等を用いることが可能である。これらの硬化剤、特にイミダゾール系硬化剤としては、常温で液状のものと、常温で粉末、微粒子状といった固体のものがある。いずれを用いるかについては、用途に応じて適宜選択すればよい。
【0029】
常温で液状の硬化剤としては、常温で液状の酸無水物、液状イミダゾール系硬化剤が好ましく用いられる。
常温で液状の酸無水物としては、例えば、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物等が挙げられる。イミダゾール系硬化剤としては、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどが挙げられる。
常温で固体の硬化剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2'−メチルイミダゾリル−(1')]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物などが挙げられる。
【0030】
常温で液状の硬化剤は、硬化反応の開始が早く、反応速度も速いので、接着剤の印刷後、続いて加熱硬化を行う場合には、液状の硬化剤を使用することが好ましい。一方、後述する転写用フィルムのように、一定量を生産し、必要時に第1被着体に転写して使用する態様では、保管中に硬化反応が進行しにくいことが望まれる。このため、転写用フィルムに使用される接着剤の場合、常温で、粉末、微粒子状の硬化剤を使用することが好ましい。
【0031】
硬化剤の配合量は、
(B)エポキシ樹脂のエポキシ当量に応じて、適宜決めればよいが、好ましくは、エポキシ樹脂1当量に対して、0.8〜1.2当量であり、より好ましくは0.8〜1.0当量である。
【0032】
(D)無機フィラー
(D)無機フィラーは、平均粒径1μm以下、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは100nm以下の無機フィラーである。このような無機フィラーを含有することにより、低せん断速度下では形状保持に必要な粘度を有し、高せん断速度下では粘度が下がるというチクソトロピック性を発揮することができる。また、このようなフィラーは、粘度調節だけでなく、接合強度の向上にも寄与できるという点で好ましい。
ここで、平均粒径は、50%粒径(D50)をいい、レーザードップラー法を応用した粒度分布測定装置(日機装(株)製、ナノトラック(登録商標)粒度分布測定装置UPA−EX150)等により測定できる。
【0033】
無機フィラーとしては、無水シリカ、水酸化アルミニウム、タルク、クレーなどを用いることができる。
フィラーは、樹脂分量(アクリル樹脂、エポキシ樹脂の合計量)の1〜30質量%とすることが好ましい。30質量%を超えると、粘度が高くなりすぎて、印刷時の糸引きや版離れが悪くなるおそれがあり、1質量%未満ではチクソトロピック性を付与できない。また、印刷箇所の精密な調節が必要な場合、例えば、導電パターンが印刷された被着体の、導電部が印刷されていない部分のみに接着剤を印刷するといった場合には、接着剤のダレ、糸引きを高度に抑制して、版離れをよくする必要があるので、フィラーの含有量は3〜30質量%が好ましく、より好ましくは10〜30質量%である。
【0034】
(E)溶剤
本実施形態の印刷型接着剤は、上記(A)−(D)成分を有機溶剤に溶解したものである。
上記有機溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル系有機溶剤を用いることができる。有機溶剤は、接着剤をスクリーン印刷に適用できるように、後述するように、粘度調節の観点から用いられる。
【0035】
さらに、連続して多数枚、例えば、100枚以上を連続的に印刷するような場合に、沸点が140℃以上、より好ましくは160〜220℃の有機溶剤、例えばジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどを用いることができる。連続印刷する場合、スクリーン上に接着剤が延展された状態が長く続くことになるため、沸点160℃未満の溶剤では、初期粘度特性を維持することが困難だからである。
【0036】
溶剤量は、最終的に得られる接着剤の粘度特性が下記範囲を充足するように選択する。すなわち、E型粘度計測定での回転数が1rpmのときの粘度が15〜800Pa・sで且つ回転数50rpmのときの粘度が4〜200Pa・sとなるような量が配合される必要があり、溶剤の種類、(A)(B)(C)(D)成分の種類、組合せ等に応じて、適宜選択される。
通常、溶剤量は、接着剤全量の55重量%以下とすることが好ましい。溶剤が少なく且つ粘度が高くなりすぎると、印刷された部分の平滑性が低下し、ひどい場合には、版離れが悪くなって、糸引きを生じるようになる。一方、溶剤量が多くなり、粘度が低くなりすぎると、印刷部分に滲みがでやすくなる。
【0037】
(F)消泡剤
本実施形態の印刷型接着剤は、必要に応じて、さらに(F)消泡剤を含有してもよい。消泡剤は、印刷時に巻き込んだ気泡を消泡できるので好ましい。スクリーン印刷の場合、スキージとして接着剤の延展、押し込む際に、気泡を巻き込みやすい。気泡を巻き込んだままで硬化すると、硬化物に気泡が含まれた状態となる。硬化物に含まれていた気泡は、高温で膨らんだりする等の理由から、接合強度、耐熱性低下の問題を招来する場合があるので、印刷時に気泡を巻きこんでも、加熱硬化までに気泡が消滅するようにしておくことが好ましい。
【0038】
消泡剤の含有量は、接着剤総量の0〜2質量%とすることが好ましく、より好ましくは0〜1質量%である。
【0039】
(G)その他の添加剤
本実施形態の印刷型接着剤は、上記(A)アクリル樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)
エポキシ樹脂の硬化剤、(D)無機フィラー、(E)溶剤、及び(F)消泡剤の他、さらにアクリル樹脂以外の熱可塑性樹脂(ポリオレフィン樹脂やポリエステル樹脂等)、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂(例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、オキサジン樹脂)を、本発明の効果を阻害しない範囲内(通常、10質量%以下)であれば、含有してもよい。
【0040】
さらに、必要に応じて、本実施形態の印刷型接着剤の粘度特性を損なわない範囲であれば、硬化促進剤、シランカップリング剤、レベリング剤、界面活性剤、難燃剤などを適宜配合してもよい。
【0041】
〔印刷型接着剤の製造〕
本発明の印刷型接着剤は、以上のような(A)〜(D)成分を混合し、さらに必要に応じて添加される(F)成分、(G)成分を混合し、(E)溶剤を加えて、ボールミル、ホモジナイザー等を用いて混合することにより調製される。混合順序は特に限定しない。
【0042】
本実施形態の印刷型接着剤は、E型粘度計で測定における回転数1rpmのときの粘度15〜800Pa・s(塗り分け性を要する場合には100〜800Pa・s)で且つ回転数50rpmのときの粘度が4〜200Pa・s(印刷表面の平滑性を要する場合には4〜13Pa・s)となるように調節する。50rpmでの粘度が4Pa・s未満では、印刷された接着剤の流れ出しが生じやすくなり、200Pa・s超では、版離れが低下し、印刷部分に凹凸が生じやすい。特に、印刷表面を平滑にしたい場合には13Pa・s以下とすることが好ましい。また、1rpmのときに15Pa・s未満では、粘度が低くなりすぎて、印刷された部分の接着剤の流れ出し等をおこり、厚膜な接着剤塗布が困難となる。特に、導電部と接着部といった高精度な塗り分け性を要する場合には、100Pa・s以上とすることが好ましい。一方、800Pa・sを超えると、粘度が高くなりすぎて、やはりスクリーン上に平滑に塗工することが困難となり、印刷部分に凹凸ができやすい。
【0043】
〔接合体の製造方法〕
本発明の接合体の製造方法は、第1の被着体に、上記本発明の印刷型接着剤をスクリーン印刷により塗布印刷した後、100〜250℃で加熱する工程;接着剤塗布部分に第2の被着体を載置する工程;及び100〜250℃に加熱して、接着剤塗布部分を熱硬化する工程を含む。
【0044】
本発明の接合体の製造方法は、前記第1の被着体がフレキシブルプリント配線板又は補強板であり、第2の被着体が補強板又はフレキシブルプリント配線板である場合に好適である。
前記第1の被着体が、導電部が印刷されたフレキシブルプリント配線板の場合、前記印刷型接着剤として、前記(D)無機フィラーを樹脂分量の3〜30質量%、好ましくは10〜30質量%含有する印刷型接着剤を使用し、前記導電部が印刷されていない部分に、当該印刷型接着剤により塗布印刷する。
【0045】
さらに、本発明の別の見地の接合体の製造方法は、離型フィルム上に、上記実施形態のいずれかの印刷型接着剤をスクリーン印刷により塗布印刷して得られた転写用フィルムと第1の被着体とを重ね合わせて50〜100℃で加熱した後、前記離型フィルムを剥離除去することにより、前記転写用フィルムの転写部分を前記第1の被着体に転写する工程;前記第1の被着体の転写部分に第2の被着体を載置する工程;及び
100〜250℃に加熱して、前記転写部分の接着剤を熱硬化する工程
を含む。
【0046】
前記印刷型接着剤をスクリーン印刷により塗布印刷した後、50〜100℃で加熱することにより、前記転写用フィルムを作製する工程を含んでもよい。
【0047】
前記転写用フィルムの転写部分が導電部と接着剤部とを含んでいる場合、前記接着剤部は、前記(D)無機フィラーを樹脂分量の3〜30質量%含有していることが好ましい。
【0048】
本発明の印刷型接着剤によれば、スクリーン印刷により、フレキシブルプリント配線板、銅張り積層板等の被着体に、接着剤塗布が必要な部分だけ、接着剤を印刷することができる。
例えば、
図2に示すように、接着すべきパターンの開口部10aを有するシルクスクリーン10上に、本発明の印刷型接着剤12を載せ、スキージ11等のヘラを用いて延展すると(
図2A)、開口部10aから接着剤が押し出され、被着体(フレキシブルプリント配線板や銅張り積層板など)13に、接着剤パターンが塗布される(
図2B)。
図2B中、12’は、塗布された接着剤である。本発明の印刷型接着剤によれば、スキージによる延展の際には、スクリーン上に広がってしまわない程度の粘度を有し、開口部を通過するような大きなせん断応力が発生するところでは、粘度が下がってスムーズに通過することができ、ひいては版離れを容易にする。
【0049】
印刷時にスクリーンに載置される接着剤量は、印刷量に応じて適宜選択される。従って、連続印刷を行う場合、連続印刷に必要な量を載置する必要がある。
【0050】
接着パターンが印刷された後、100〜250℃で1分間〜1時間、加熱する。加熱により、接着剤に含まれる溶剤が揮発して、Bステージ化する。また、加熱により、アクリル樹脂が軟化溶融して、被着体(フレキシブルプリント配線板、補強板など)の凹部に流れこむことができる。
【0051】
このBステージ化した接着剤部分に、接着しようとする別の被着体(補強板)を載せ、60〜160℃で、0.1MPa〜1MPaのラミネータを用いて、仮接着する。次いで、仮接着した部分を、100〜250℃で、30分〜3時間加熱することで、熱硬化させる。当該加熱により、エポキシ樹脂と硬化剤が反応して、熱硬化し、接合体が得られる。
【0052】
以上のような方法によれば、スクリーン印刷により、接着しようとする部分(パターン)に接着剤を塗布することができるので、従来のフィルム型接着剤のように、切り抜き加工の必要もなく、廃棄部分もなくて済む。
【0053】
接着しようとする部分(パターン)は、
図1に示すような、フレキシブルプリント配線板における補強板を接着するようなマクロ的な部分に限定しない。例えば、
図3に示すように、導電パターン4が印刷されたフレキシブルプリント配線板1’における、導電部分4以外の部分5に、選択的に接着剤を印刷することもできる。特に、無機フィラーを樹脂分量の3質量%以上、好ましくは10質量%以上含有させた接着剤によれば、幅100μm以上で、接着剤塗布部分と塗布しない部分とを区別して塗り分けすることが可能であることから、このような精密な調節が必要となるミクロパターンであってもスクリーン印刷することができる。
【0054】
従って、従来のフィルム型接着剤では、種々のパターンに応じた切り抜き加工を行う必要があったが、本発明の印刷型接着剤を使用することにより、種々のパターンに対応するシルクスクリーンを準備するだけでよいので、汎用性が高く、接合体の製造コスト低減につながる。
【0055】
さらに、溶剤として、沸点160℃以上の溶剤を用いた印刷型接着剤では、溶剤の揮発が遅いので、初期の粘度特性(チクソトロピック性)を保持できる時間を長くでき、多数枚を連続して印刷することが可能である。よって、接合体の生産性の向上も図ることができる。
【0056】
以上の実施形態の接合体の製造方法では、第1の被着体上に、印刷型接着剤をスクリーン印刷したが、本発明の印刷型接着剤を用いる接合体の製造方法は、これに限定されない。
本発明の印刷型接着剤を用いて作製された転写用フィルムを用いて、第1の被着体上に接着剤を転写してもよい。転写された接着剤上に、第2の被着体を載置し、100〜250℃に加熱して、前記転写された接着剤部分を熱硬化することによっても、接合体を製造することができる。
【0057】
〔被着体〕
本発明の印刷型接着剤は、特に限定しないが、フレキシブルプリント配線板、銅張り積層板と補強板との接合に好適に用いられる。フレキシブルプリント配線板や銅張り積層板に補強板を接着する位置は、製品により種々多様であるが、スクリーン印刷方式によれば、パターンに対応するシルクスクリーンを準備するだけでよく、フィルム状接着剤を用いる場合のように、フィルム毎のカッティング作業が不要となり、さらに廃棄する部分がなくて済むので、経済的である。
【0058】
対象となるフレキシブルプリント配線板は、ベースフィルムとなる絶縁フィルムと金属箔とが複数ラミネートされたもの(銅張り積層板)で、片面又は両面に回路が形成されている。回路を、さらに絶縁フィルム(所謂、カバーレイ)で覆ったものもある。
【0059】
ベースフィルムとしては、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルムなどが挙げられる。用途に応じて、ポリイミドフィルム等のプラスチックフィルムの他、ガラス繊維強化樹脂シート、不織布などを基材としたプリプレグシートを用いることもできる。
【0060】
金属箔としては、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられるが、銅箔が好適に用いられる。
カバーレイとしては、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム等のプラスチックフィルムが用いられる。
【0061】
補強板としては、特に限定しないが、アルミ板、珪素鋼板等の金属板;紙フェノール積層板やガラスエポキシ積層板等のプラスチック積層板;ポリイミド板、ポリプロピレン板、ポリエチレン板等のプラスチック板などが用いられる。
【0062】
〔転写用フィルムの作製〕
本発明は、第1の被着体に接着剤を転写するための転写用フィルムの作製も包含する。
転写用フィルムは、離型フィルム上に、前記印刷型接着剤をスクリーン印刷した後、加熱乾燥することにより作製できる。好ましくは、50〜100℃で加熱することにより、さらに好ましくは50〜100℃で0.5〜2時間加熱することにより、溶剤を揮発させて乾燥状態とする。前記離型フィルムとしては、通常、テープ剥離力600mN/50mm未満程度の離型フィルムが用いられる。
【0063】
転写用フィルムとしては、導電部と接着剤部とがパターン印刷されたものでもよい。導電部と接着剤部とがパターン印刷された転写用フィルムは、離型フィルム上に、銀ペースト等の導電性接着剤を用いて導電パターンを印刷し、導電部が印刷されていない部分に、本発明の印刷型接着剤を印刷し、乾燥することにより製造される。接着剤パターンを印刷した後、接着剤が印刷されていない部分に導電性接着剤を印刷してもよい。
【0064】
例えば、
図3に示すような導電部4及び接着剤部5を有するパターンを、第1被着体上に形成したい場合、離型フィルムに、
図3に対応する導電部及び接着剤部からなるパターンが印刷された転写用フィルムを用いて、第1被着体に転写すればよい。
【0065】
導電パターンと接着剤パターンが印刷された離型フィルムは、転写用フィルムとして、第1被着体と重ね合せて、50〜100℃で加熱すると、導電部及び接着剤部を第1被着体に転写することができる。
【0066】
導電部と接着剤部とがパターン印刷された転写用フィルムの作製には、導電部と接着剤部との塗り分けの観点から、無機フィラーを樹脂分量の3〜30質量%、好ましくは10〜30質量%含有する印刷型接着剤を用いることが好ましい。
【0067】
また、所定パターンの接着剤部が印刷された転写用フィルムを、予め大量生産して保管しておくことができるように、接着剤に含まれる硬化剤(C)としては、常温で固体の硬化剤を使用することが好ましい。
【0068】
転写用フィルムを用いて転写された第1被着体上に、第2被着体を載置して、100〜250℃で加熱し、接着剤部分を熱硬化すれば、接合体を製造できる。転写用フィルムを用いて転写された接着剤部分であっても、第1被着体に直接、接着剤を塗布印刷した場合と同様の接合強度及び耐熱性を有する接合体を製造することができる。
【0069】
〔付記:転写用フィルム〕
本発明は、本発明の印刷型接着剤を用いて作製される転写用フィルムも包含する。
(付記1) 離型フィルム上に印刷された接着剤部分を有している転写用フィルムであって、前記接着剤部分は、(A)重量平均分子量(Mw)8万〜30万のアクリル樹脂、(B)エポキシ樹脂を(A)アクリル樹脂量の30〜70質量%、(C)
エポキシ樹脂の硬化剤、及び(D)平均粒径1μm以下の無機フィラーを含有している。
【0070】
(付記2) 離型フィルム上に、導電部と接着剤部が印刷された転写用フィルムであって、 前記接着剤部は、前記(C)
エポキシ樹脂の硬化剤は固体の硬化剤を含み、前記(D)無機フィラーは樹脂分量の3〜30質量%、好ましくは10〜30質量%含有されている付記1の転写用フィルム。
【実施例】
【0071】
本発明を実施するための最良の形態を実施例により説明する。以下の実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
【0072】
〔測定評価方法〕
以下の実施例で採用した測定評価方法は以下の通りである。
【0073】
(1)流れ出し性
スクリーン印刷後、印刷した部分の流れ出し量をマイクロスコープで測定した。流れ出し量は、
図4に示すように、接着剤を塗布すべき部分(点線部分)に対して、はみ出た長さ(d)として測定した。はみ出し量(d)に応じて、0.05mm以下の場合には「優良」、0.05〜0.1mmの場合には「良好」、0.1mm〜0.2mmの場合には「普通」、0.2mmを超える場合を「不良」とした。
【0074】
(2)糸引き
スクリーン印刷時の糸引きの有無を目視にて観察し、糸引きが認められた場合を「不良」、認められない場合を「良好」とした。
【0075】
(3)印刷時の気泡巻き込み
印刷後、印刷により塗布された部分を目視で観察し、泡が存在していた場合を「不良」、存在していなかった場合は「良好」とした。
【0076】
(4)表面平滑性
スクリーン印刷後、Bステージ乾燥後、印刷部分を目視にて観察し、表面が平滑な場合を「良好」、表面に凹凸が認められた場合を「不良」とした。
【0077】
(5)厚膜印刷性
印刷部分の厚みを測定し、50μm以上あれば「良好」、50μm未満の場合を「不良」とした。
【0078】
(6)連続印刷性
100枚印刷した後の印刷部分について、流れ出し性、糸引き、印刷時の気泡巻き込み、表面平滑性、厚膜印刷性を評価し、初期と差異がなければ「OK」、いずれか1つでも評価が「不良」に低下した場合を「NG」とした。
【0079】
(7)剥離強度
作製した接合体について、JIS−C−6481に準拠して、23℃において、補強板からフレキシブルプリント配線板を剥がすときの剥離強度(N/cm)を測定し、10N/cm以上の場合を「良好」、10N/cm未満の場合を「不良」とした。
【0080】
(8)耐熱性
260℃に加熱したプレート上に、得られた接合体を1分間載せた後の状態を目視で観察し、接合部分の外観に変化がない場合を「良好」、接合部分が融けだし等により膨れたり広がったりしていた場合を「不良」とした。
【0081】
(9)塗り分け性
ニッパ株式会社の軽剥離型フィルムV8(剥離力520mN/50mm)表面に、導電性接着剤(Agペースト)を用いて、印刷速度10mm/秒で、幅0.2mm間隔をあけてストライプ状に導電パターンを印刷した後、80℃で30分間焼成した。導電性接着剤が施されていない部分(導電部が印刷されていない部分)に、印刷型接着剤を、50mm/秒で印刷した後、60℃で60分間加熱して乾燥させて、導電パターンを有する転写用フィルムを作成した。作成した転写用フィルムの接着剤印刷部分を目視で観察し、導電部に接着剤が塗布されていた場合を塗り分け性が「不良」とし、接着剤が導電部にまで広がっていなかった場合を塗り分け性「良好」と評価した。
【0082】
〔印刷型接着剤No.1−6、11−16の調製及び接合体の製造〕
表1及び表2に示す組成を有する印刷型接着剤No.1−6、11−16を調製した。なお、表1に示す成分としては、下記のものを用いた。
・アクリル樹脂A1:新中村工業製のバナレジンGH−7190(重量平均分子量12万)
・アクリル樹脂A2:新中村工業製のバナレジンGH−7185(重量平均分子量6万)
・エポキシ樹脂:DIC社のEPICLON−N740(エポキシ当量180g/eq)
・フィラー:日本アエロジル社のAEROSILRX300(粒径7nmのシリカ微粉末)
・酸無水物:日本理化社のリカシッドMH−700(4−メチルヘキサヒドロフタル酸とメチルヘキサヒドロフタル酸との混合物であり、常温で液状である)
・イミダゾール:四国化成社の2E4MZ(2−エチル−4−メチルイミダゾールであり、常温で液状である)
・消泡剤:ビックケミージャパン社のBYK−54
【0083】
【表1】
【0084】
調製した接着剤組成物を溶剤E1又はE2で、表2に示す量で希釈してなるスクリーン印刷型接着剤の粘度(単位:Pa・s)をE型粘度計を用いて室温で測定したところ、表2に示すようになった。この印刷型接着剤を用いて、スクリーン印刷機で、印刷速度30mm/sec又は10mm/secで補強板に印刷し、流れ出し性、糸引き、気泡巻き込みを評価した。
印刷後、200℃で3分間加熱することでBステージ化した後、フレキシブルプリント配線板を載せて、0.1〜1.0MPaのラミネータを用いて、60〜160℃で仮接着した。次いで、仮接着部分を120℃で2時間加熱することで、接着剤の印刷部分を熱硬化させた。得られた硬化物について、平滑性、厚膜印刷性、剥離強度、耐熱性を評価した。これらの結果を表2にあわせて示す。
【0085】
【表2】
【0086】
表2からわかるように、溶剤量が150質量部以下では、溶剤量が少なすぎるためか、低せん断速度での粘度、高せん断速度下での粘度のいずれも高いために、印刷時のスクリーンの通過が不均質なものとなり、印刷された接着部分の表面に凹凸が見られた(No.1,11,15)。一方、溶剤量が多くなりすぎると(溶剤E1では200質量部以上、溶剤E2では220質量部以上)粘度が低くなりすぎて、滲みが発生する(No.5,14)。
【0087】
分子量が小さいアクリル樹脂A2を用いることで、高せん断速度下での粘度を下げることにより、溶剤量を少なくしても印刷部の凹凸を減らすことができるが、耐熱性を満足することができない(No.16)。
【0088】
溶剤E1を用いることにより、気泡の巻き込みを少なくすることは可能であるが(No.13、14)、溶剤の種類にかかわらず、消泡剤を配合することにより、巻きこんだ気泡を消滅させることができる(No.1−5とNo.6の比較)。
【0089】
上記で調製した印刷型接着剤No.2−6、13について、表3に示す印刷速度で、連続印刷性を評価した。結果を表3に示す。
【0090】
【表3】
【0091】
表3からわかるように、粘度特性が同程度であっても、沸点160℃未満の溶剤E1を用いた接着剤では、印刷速度10mm/sec、30mm/secのいずれの場合も連続印刷性を満足することができなかった。
一方、沸点218℃の溶剤E2を用いた接着剤では、印刷速度30mm/secでも連続印刷性を満足することができた。
【0092】
〔印刷型接着剤No.21−27及び接合体の評価〕
アクリル樹脂A1、エポキシ樹脂、硬化剤(酸無水物、イミダゾール)の配合組成を表4に示すように変更して、印刷型接着剤No.21−27を調製した。得られた印刷型接着剤を用いて、スクリーン印刷で、補強板に印刷し、印刷後、200℃で3分間加熱することで、Bステージ化した後、フレキシブルプリント配線板を乗せて、80℃で0.3MPaのラミネータを用いて、仮接着した。次いで、仮接着した部分を120℃で2時間加熱することで、熱硬化させた。得られた接合体について、剥離強度、耐熱性を評価した。これらの結果を表4にあわせて示す。比較のためにNo.3、13を用いて、同様に接着を行った結果についても、あわせて表4に示す。
【0093】
【表4】
【0094】
アクリル樹脂に対してエポキシ樹脂の含有割合が小さすぎると耐熱性が低下しすぎ(No.23,24)、逆に、アクリル樹脂に対してエポキシ樹脂の含有割合が高くなりすぎると、接合強度が低下し、エポキシ樹脂の配合量がアクリル樹脂配合量の50質量部を超えると、製品としてのスペック10N/cmを満足することができなかった(No.21、22)。
【0095】
〔印刷型接着剤No.31−33の調製、転写用フィルムの作製、及び評価〕
表5に示す組成を有する印刷型接着剤No.31−33を調製した。なお、表5に示す固体イミダゾール硬化剤としては、サンマイドLH210(エアープロダクツ社の商品名)を用いた。調製した接着剤を用いて、上記評価方法の連続印刷性を評価し、さらに(9)塗り分け性に基づいて転写用フィルムを作成し、塗り分け性を評価した。比較のために、上記で調製した印刷型接着剤No.1についても同様にして、塗り分け性を評価した。
【0096】
作製した転写用フィルムにカバーレイフィルム(藤森工業株式会社製の離型フィルム38E0010GT(110mN/50mm))を貼付した後、60℃で48時間加熱した。このような状態で7日間、保管した。
【0097】
次に、この転写用フィルム状接着剤のカバーレイフィルムを剥がし、第1被着体(補強板)と貼り合せた状態で、70℃で加熱した後、離型フィルムを剥がした。Ag導電部及び接着剤部からなるパターンを、第1被着体上に転写することができた。次いで、転写された導電パターン及び接着パターンを有する第1被着体の面上に、第2被着体としてフレキシブルプリント配線板を載置し、70℃で加熱した後、170℃、3MPaで30分間、プレス硬化して、接合体を得た。
得られた接合体について、上記評価方法に基づいて、剥離強度、耐熱性を評価測定した。結果を表5に示す。
【0098】
【表5】
【0099】
表5からわかるように、フィラーの含有量が樹脂分に対して3質量%未満であるNo.1では、粘度が低いため、高度な塗り分け性を満足することができなかった。これに対して、フィラー含有量を増大し、連続印刷性を損なわない範囲で粘度を高めたNo.31−33の接着剤では、高度な塗り分け性を満足することができた。したがって、本発明の印刷型接着剤は、フィラー含有量の調整により、高度な塗り分け性も可能である。
また、転写用フィルムに適用しても、転写された接着剤により得られる接合体は、所定の剥離強度を有し、耐熱性も満足することができた。
【0100】
なお、組成物No.31−33を用いて作製した転写用フィルムの接着剤部の印刷表面には凹凸が認められたが、転写により得られる転写部分の表面は、離型フィルムとの接触面(平滑面)となるので、問題とならない。