(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(メタ)アクリロイルオキシ基を2個有するジ(メタ)アクリレート化合物が、置換されているかまたは置換されていないビスフェノール類のジ(メタ)アクリレートである請求項5に記載の光学的立体造形用樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、光重合性化合物、光重合開始剤および熱膨張性マイクロカプセルを含有する。
【0024】
光重合性化合物としては、光学的立体造形(以下「光造形」ということがある)して得られる立体造形物を熱膨張性マイクロカプセルの膨張温度に加熱したときに発泡する立体造形物を製造することのできる光重合性化合物であれば、光学的立体造形用樹脂組成物において従来から用いられている1種以上のラジカル重合性化合物、1種以上のカチオン重合性化合物、またはその両方を用いることができる。
【0025】
ラジカル重合性有機化合物の例としては、(メタ)アクリレート基を有する化合物、不飽和ポリエステル化合物、アリルウレタン系化合物、ポリチオール化合物などを挙げることができる。それらのラジカル重合性有機化合物のうち1種以上を用いることができる。そのうちでも、1分子中に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物が好ましく用いられる。(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の具体例としては、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応生成物、アルコール類の(メタ)アクリル酸エステル、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0026】
上記したエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応生成物としては、芳香族エポキシ化合物、脂環族エポキシ化合物および/または脂肪族エポキシ化合物と、(メタ)アクリル酸との反応により得られる(メタ)アクリレート系反応生成物を挙げることができる。この(メタ)アクリレート系反応生成物の具体例としては、ビスフェノールAやビスフェノールSなどのビスフェノール化合物、ベンゼン環がアルコキシ基などの置換基を有するビスフェノールAやビスフェノールSなどの置換ビスフェノール化合物、およびそれらのビスフェノール化合物または置換ビスフェノール化合物のアルキレンオキサイド付加物を、エピクロルヒドリンなどのエポキシ化剤と反応させることによって得られるグリシジルエーテルを、さらに(メタ)アクリル酸と反応させて得られる(メタ)アクリレート、エポキシノボラック樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させて得られる(メタ)アクリレート系反応生成物などを挙げることができる。
【0027】
また、上記したアルコール類の(メタ)アクリル酸エステルとしては、分子中に少なくとも1個の水酸基をもつ芳香族アルコール、脂肪族アルコール、脂環族アルコールおよび/またはそれらのアルキレンオキサイド付加体を、(メタ)アクリル酸と反応させることにより得られる(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0028】
より具体的には、例えば、ビスフェノールAやビスフェノールSなどのビスフェノール化合物、ベンゼン環がアルコキシ基などの置換基を有するビスフェノールAやビスフェノールSなどの置換ビスフェノール化合物のジ(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、前記したジオール、トリオール、テトラオール、ヘキサオールなどの多価アルコールのアルキレンオキシド付加物の(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0029】
そのうちでも、アルコール類の(メタ)アクリレートとしては、2価アルコールを(メタ)アクリル酸と反応させることにより得られる1分子中に2個の(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0030】
また、上記したウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとイソシアネート化合物を反応させて得られる(メタ)アクリレートを挙げることができる。前記水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、脂肪族2価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応によって得られる水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。また、前記イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのような1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0031】
さらに、上記したポリエステル(メタ)アクリレートとしては、水酸基含有ポリエステルと(メタ)アクリル酸との反応により得られるポリエステル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0032】
また、上記したポリエーテル(メタ)アクリレートとしては、水酸基含有ポリエーテルとアクリル酸との反応により得られるポリエーテルアクリレートを挙げることができる。
カチオン重合性有機化合物の具体例としては、
(1)脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂などのエポキシ化合物;
(2)トリメチレンオキシド、3,3−ジメチルオキセタン、3,3−ジクロロメチルオキセタン、3−メチル−3−フェノキシメチルオキセタン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼンなどのオキセタン化合物、テトラヒドロフラン、2,3−ジメチルテトラヒドロフランのようなオキソラン化合物、トリオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,6−トリオキサンシクロオクタンのような環状エーテルまたは環状アセタール化合物;
(3)β−プロピオラクトン、ε−カプロラクトン等の環状ラクトン化合物;
(4)エチレンスルフィド、チオエピクロロヒドリン等のチイラン化合物;
(5)1,3−プロピンスルフィド、3,3−ジメチルチエタンのようなチエタン化合物;
(6)エチレングリコールジビニルエーテル、アルキルビニルエーテル、3,4−ジヒドロピラン−2−メチル(3,4−ジヒドロピラン−2−カルボキシレート)、トリエチレングリコールジビニルエーテル等のビニルエーテル化合物;
(7)エポキシ化合物とラクトンとの反応によって得られるスピロオルソエステル化合物;
(8)ビニルシクロヘキサン、イソブチレン、ポリブタジエンのようなエチレン性不飽和化合物;
などを挙げることができる。
【0033】
上記した中でも、カチオン重合性有機化合物として、エポキシ化合物が好ましく用いられ、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物がより好ましく用いられる。カチオン重合性有機化合物として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する脂環式ポリエポキシ化合物を含有し且つ該脂環式ポリエポキシ化合物の含有量がエポキシ化合物の全質量に基づいて30質量%以上、特に50質量%以上であるエポキシ化合物(エポキシ化合物の混合物)を用いると、立体造形物を製造する際のカチオン重合速度、厚膜硬化性、解像度、活性エネルギー線透過性などが良好になり、しかも光学的立体造形用樹脂組成物の粘度が低くなって造形が円滑に行われるようになり、得られる立体造形物の体積収縮率が一層小さくなる。
【0034】
上記した脂環族エポキシ樹脂としては、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル、或いはシクロヘキセンまたはシクロペンテン環含有化合物を過酸化水素、過酸などの適当な酸化剤でエポキシ化して得られるシクロヘキセンオキサイドまたはシクロペンテンオキサイド含有化合物などを挙げることができる。より具体的には、脂環族エポキシ樹脂として、例えば、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシルなどを挙げることができる。
【0035】
また、上記した脂肪族エポキシ樹脂としては、例えば、脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートのホモポリマー、コポリマーなどを挙げることができる。より具体的には、例えば、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステルなどを挙げることができる。さらに、前記のエポキシ化合物以外にも、例えば、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ポリブタジエンなどを挙げることができる。
【0036】
また、上記した芳香族エポキシ樹脂としては、例えば少なくとも1個の芳香核を有する1価または多価フェノール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のモノまたはポリグリシジルエーテルを挙げることができ、具体的には、例えばビスフェノールAやビスフェノールFまたはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0037】
光学的立体造形用樹脂組成物がエポキシ化合物からなるカチオン重合性化合物を含む場合は、カチオン重合性化合物の反応速度が遅く、造形に時間がかかるが、オキセタン化合物を添加しておくと、カチオン重合反応が促進される。
【0038】
その際のオキセタン化合物としては、1分子中にオキセタン基を1個以上有し且つアルコール性水酸基を1個有するオキセタンモノアルコール化合物が好適に用いられ、具体例としては、3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−プロピルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−ノルマルブチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−フェニルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−ベンジルオキセタン、3−ヒドロキシエチル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシエチル−3−エチルオキセタン、3−ヒドロキシエチル−3−プロピルオキセタン、3−ヒドロキシエチル−3−フェニルオキセタン、3−ヒドロキシプロピル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシプロピル−3−エチルオキセタン、3−ヒドロキシプロピル−3−プロピルオキセタン、3−ヒドロキシプロピル−3−フェニルオキセタン、3−ヒドロキシブチル−3−メチルオキセタンなどを挙げることができ、これらの1種以上を用いることができる。
【0039】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、また必要に応じて、1分子中にオキセタン基を2個以上有し且つアルコール性水酸基を持たないポリオキセタン化合物を含有していてもよい。ポリオキセタン化合物を含有すると、得られる立体造形物の寸法精度が向上する。
【0040】
1分子中に2個以上のオキセタン基をもつ化合物の例としては、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタンなどを挙げることができる。
【0041】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物が光重合性化合物として、ラジカル重合性化合物を含有する場合は、光重合開始剤として光ラジカル重合開始剤を含有する。
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物で使用可能な光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンジルまたはそのジアルキルアセタール系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾインまたはそのアルキルエーテル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物などを挙げることができる。
【0042】
具体的には、ベンジルまたはそのジアルキルアセタール系化合物としては、例えば、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどを挙げることができる。
【0043】
また、アセトフェノン系化合物としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシメチル−1−フェニルプロパン−1−オン、4’−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、p−アジドベンザルアセトフェノンなどを挙げることができる。
【0044】
さらに、ベンゾイン系化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインノルマルブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどを挙げることができる。
【0045】
また、ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ミヒラースケトン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノンなどを挙げることができる。
【0046】
チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなどを挙げることができる。
【0047】
これらの光ラジカル重合開始剤は、単独で使用してもまたは2種以上を併用してもよい。
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物が光重合性化合物としてカチオン重合性化合物を含有する場合は、光重合開始剤として、光カチオン重合開始剤を含有する。
【0048】
カチオン重合開始剤としては、カチオン重合性化合物のカチオン重合を開始させ得る重合開始剤のいずれも使用できる。光カチオン重合開始剤の具体例としては、光を照射したときにルイス酸を放出するオニウム塩、例えば、第VIIa族元素の芳香族スルホニウム塩、VIa族元素の芳香族オニウム塩、第Va族元素の芳香族オニウム塩などを挙げることができる。より具体的には、例えば、テトラフルオロホウ酸トリフェニルフェナシルホスホニウム、ヘキサフルオロアンチモン酸トリフェニルスルホニウム、ビス−[4−(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスジヘキサフルオロアンチモネート、ビス−[4−(ジ4’−ヒドロキシエトキシフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスジヘキサフルオロアンチモネート、ビス−[4−(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスジヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロホウ酸ジフェニルヨードニウム、フルオロリン酸を対イオンとする非アンチモン系の芳香族スルホニウム化合物などを挙げることができ、これらの1種以上を用いることができる。
【0049】
また、反応速度を向上させる目的で、必要に応じて、カチオン重合開始剤と共に光増感剤、例えばベンゾフェノン、ベンゾインアルキルエーテル、チオキサントンなどを用いてもよい。
【0050】
光ラジカル重合開始剤の使用量は、ラジカル重合性化合物の質量に基づいて0.5〜10質量%、特に1〜5質量%であることが好ましい。
また、光カチオン重合開始剤の使用量は、カチオン重合性化合物の質量に基づいて0.5〜10質量%、特に1〜5質量%であることが好ましい。
【0051】
特に、光重合性化合物として、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレートなどの置換されたビスフェノール化合物のジメタクリレートを含有し、光重合開始剤(光ラジカル重合開始剤)としてベンジル(別名:ジフェニルエタンジオン)またはそのジアルキルアセタール系化合物(例えばベンジルジメチルケタールなど)からなる光ラジカル重合開始剤を含有する本発明の光学的立体造形用樹脂組成物を用いて光造形を行って立体造形物を製造すると、強度および耐熱性に優れ、その一方で熱膨張性マイクロカプセルの膨張開始温度以上の温度に加熱したときに十分に発泡して容易に崩壊する立体造形物が得られる。
【0052】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物が含有する熱膨張性マイクロカプセルは、熱膨張性マイクロスフェアー、熱膨張性微細粒子などとも称されている。
熱膨張性マイクロカプセルは、熱可塑性重合体よりなる外殻中に、液化炭化水素などの揮発性の液体膨張剤を内包するマイクロカプセルであり、マイクロカプセルに内包されている液体膨張剤の膨張開始温度以上の温度に加熱することによって、通常、約10倍〜数十倍、場合によって100倍の体積に膨張する。
【0053】
熱膨張性マイクロカプセルに関しては、従来から多数の出願がなされていて(例えば、特許文献4〜6など)、また種々のものが市販されている(例えば、クレハマイクロスフェア、マツモトマイクロスフェアー、ダイフォームVなど)。
【0054】
本発明では、光学的立体造形用樹脂組成物中に含有させる熱膨張性マイクロカプセルの種類は特に制限されず、本発明の光学的立体造形用樹脂組成物に含まれる光重合性化合物の種類、当該組成物の成分組成、本発明の光学的立体造形用樹脂組成物を用いて光造形して得られる立体造形物の用途、使用形態などに応じて、適したものを使用することができる。
【0055】
熱膨張性マイクロカプセルとしては、外殻内に内包する液体膨張剤の種類などによって、膨張開始温度(発泡開始温度)が約90℃のもの、約100℃のもの、約125℃のもの、約140℃のもの、約180℃のもの、約190℃のもの、約260℃のものなど、種々のものが既に市販されている。
【0056】
光重合性化合物および光重合開始剤を含有する光学的立体造形用樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行う際の造形浴の温度は一般に10〜40℃の範囲であり、また雰囲気温度は一般に20〜50℃の範囲であるので、本発明では、膨張開始温度(発泡開始温度)が50℃よりも高い熱膨張性マイクロカプセルのいずれもが使用できる。光学的立体造形用樹脂組成物に含まれる光重合性化合物の種類、光学的立体造形用樹脂組成物の成分組成、光造形して得られる立体造形物の熱変形温度、用途、使用形態などに応じて、各々の状況に適した膨張開始温度を有する熱膨張性マイクロカプセルを選択して用いるのがよい。一般的には、熱膨張性マイクロカプセルの膨張開始温度が低すぎると、立体造形物の軟化温度(熱変形温度)に達しないうちに熱膨張性マイクロカプセルの膨張が生ずるため、立体造形物の発泡が十分に行われにくくなり、一方熱膨張性マイクロカプセルの膨張開始温度が高すぎると、熱膨張性マイクロカプセルの膨張が開始される前に立体造形物の熱劣化が生じたり、また立体造形物を中子として用いる場合は成形体の製造に用いる重合体の熱劣化などが生じ易くなる。
【0057】
一般的には、膨張開始温度が50℃よりも高く260℃以下、更には70〜210℃、特に90〜180℃の範囲にある熱膨張性マイクロカプセルが、温度制御のし易さなどから好ましく用いられる。
【0058】
熱膨張性マイクロカプセルの粒径としては、光学的立体造形を行う際の取り扱い性、得られる立体造形物の寸法精度、入手容易性などの点から、平均粒径が1〜100μmであることが好ましく、10〜50μmであることがより好ましい。
【0059】
熱膨張性マイクロカプセルの粒径が小さすぎると、熱膨張性マイクロカプセルを含む立体造形物を熱膨張性マイクロカプセルの膨張開始温度以上に加熱したときに十分に発泡しなくなり、一方熱膨張性マイクロカプセルの粒径が大きすぎると、光学的立体造形時の作業性の低下、得られる立体造形物の強度や耐熱性の低下、寸法精度の低下などが生じ易くなる。
【0060】
ここで、本明細書でいう熱膨張性マイクロカプセルの平均粒径とは、レーザー回折散乱法によって測定した値である。
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物では、熱膨張性マイクロカプセルの含有量は、光硬化性樹脂組成物に含まれる光重合性化合物の種類、光硬化性樹脂組成物の組成、光造形して得られる立体造形物の用途、使用形態などに応じて調整することができる。光造形して得られる立体造形物の強度、耐熱性、寸法精度を良好にし、且つ立体造形物をそこに含まれる熱膨張性マイクロカプセルの膨張開始温度以上に加熱したときに十分に発泡(膨張)するようにするためには、光学的立体造形用樹脂組成物に含まれる全光重合性化合物100質量部に対して、熱膨張性マイクロカプセルの含有量が20〜80質量部であることが好ましく、35〜75質量部であることがより好ましく、40〜70質量部であることが更に好ましく、45〜65質量部であることが一層好ましい。
【0061】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、場合によりポリアルキレンエーテル系化合物を含有することができる。ポリアルキレンエーテル系化合物を含有していると、得られる立体造形物の耐衝撃性などの物性が向上し、さらに立体造形物を熱膨張性マイクロカプセルの膨張開始温度以上の温度に加熱したときに立体造形物が良好に発泡する。ポリアルキレンエーテル系化合物としては、数平均分子量が500〜10,000、特に500〜5,000の範囲内にあるものが好ましく用いられる。
【0062】
上記のポリアルキレンエーテル系化合物の好適な例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイドブロック共重合体、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのランダム共重合体、式:−CH
2CH
2CH(R
1)CH
2O−(式中R
1は低級アルキル基であり、好ましくはメチルまたはエチル基)で表されるアルキル置換基を有するオキシテトラメチレン単位(アルキル置換基を有するテトラメチレンエーテル単位)が結合したポリエーテル、前記オキシテトラメチレン単位と前記した式:−CH
2CH
2CH(R
1)CH
2O−(式中R
1は低級アルキル基)で表されるアルキル置換基を有するオキシテトラメチレン単位がランダムに結合したポリエーテルなどを挙げることができる。
【0063】
そのうちでも、数平均分子量が上記した500〜10,000の範囲にあるポリテトラメチレングリコールおよび/またはテトラメチレンエーテル単位と式:−CH
2CH
2CH(R
1)CH
2O−(式中R
1は低級アルキル基)で表されるアルキル置換基を有するテトラメチレンエーテル単位がランダムに結合したポリエーテルが好ましく用いられ、その場合には、吸湿性が低くて寸法安定性や物性の安定性に優れ、発泡性に優れる立体造形物を得ることができる。
【0064】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物におけるポリアルキレンエーテル系化合物の含有量は、光学的立体造形用樹脂組成物の全質量に対して0〜30質量%であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましい。また、前記含有量を超えない範囲で、同時に2種類以上のポリアルキレンエーテル系化合物を含有していてもよい。
【0065】
光学的立体造形用樹脂組成物の光硬化が遅いと、光造形が困難になったり、得られる立体造形物の強度が不足することがあり、また得られる立体造形物の靭性や剛性が高すぎると、光造形して得られる立体造形物を熱膨張性マイクロカプセルの膨張開始温度以上の温度に加熱したときに立体造形物の発泡が生じにくくなるので、加熱発泡前には強度が不足せず、加熱したときに十分に発泡する立体造形物が得られるように、光学的立体造形用樹脂組成物を構成する光重合性化合物の種類、光重合触媒の種類、光学的立体造形用樹脂組成物の成分組成などを選択すると共に、熱膨張性マイクロカプセルの種類、熱膨張性能、含有量などを調整することが好ましい。
【0066】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、光重合性化合物、光重合開始剤および熱膨張性マイクロカプセル、場合によりポリアルキレンエーテル系化合物と共に、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて、顔料や染料等の着色剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、難燃剤、酸化防止剤、充填剤(架橋ポリマー粒子、シリカ、ガラス粉、セラミックス粉、金属粉等)、改質用樹脂などの1種以上を適量含有していてもよい。
【0067】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物を用いて光学的に立体造形を行うに当たっては、従来既知の光学的立体造形方法および装置のいずれもが使用できる。好ましく採用され得る光学的立体造形法の代表例としては、液状をなす本発明の光学的立体造形用樹脂組成物に所望のパターンを有する硬化層が得られるように活性エネルギー線を選択的に照射して硬化層を形成し、次いでこの硬化層に未硬化の液状の光学的立体造形用樹脂組成物を供給し、同様に活性エネルギー光線を照射して前記の硬化層と連続した硬化層を新たに形成する積層操作を繰り返すことによって最終的に目的とする立体的造形物を得る方法を挙げることができる。
【0068】
その際の活性エネルギー線としては、上述のように、紫外線、電子線、X線、放射線、高周波などを挙げることができる。そのうちでも、300〜400nmの波長を有する紫外線が経済的な観点から好ましく用いられ、その際の光源としては、紫外線レーザー(例えば半導体励起固体レーザー、Arレーザー、He−Cdレーザーなど)、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、紫外線LED(発光ダイオード)、紫外線蛍光灯などを使用することができる。
【0069】
光学的立体造形用樹脂組成物よりなる造形面に活性エネルギー線を照射して所定の形状パターンを有する各硬化樹脂層を形成するに当たっては、レーザー光などのような点状に絞られた活性エネルギー線を使用して点描または線描方式で硬化樹脂層を形成してもよいし、または液晶シャッターまたはデジタルマイクロミラーシャッター(DMD)などのような微小光シャッターを複数配列して形成した面状描画マスクを通して造形面に活性エネルギー線を面状に照射して硬化樹脂層を形成させる造形方式を採用してもよい。
【0070】
熱膨張性マイクロカプセルを含有する本発明の光学的立体造形用樹脂組成物を用いて光造形を行うに当たっては、熱膨張性マイクロカプセルが光学的立体造形用樹脂組成物の上方に浮上して分離した状態になっていると、光造形が円滑に行われにくくなり、また熱膨張性マイクロカプセルが均一に分散した立体造形物が得られにくくなるので、光学的立体造形用樹脂組成物を攪拌しながら光造形を行うことが好ましい。また、光学的立体造形用樹脂組成物の粘度の調整、増粘剤などの浮上防止剤の添加などを行うことによって、光学的立体造形用樹脂組成物中での熱膨張性マイクロカプセルの浮上分離を抑制することができる。
【0071】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物を用いて光造形して得られる光学的立体造形物は、熱膨張性マイクロカプセルを未膨張の状態で含有しており、熱膨張性マイクロカプセルの膨張開始温度以上で且つ立体造形物の軟化温度以上、熱変形温度以上または熱溶融温度以上に加熱することによって、発泡して崩壊するか、または発泡してその強度を大幅に低減する。
【0072】
かかる点から、本発明の光学的立体造形用樹脂組成物を用いて光造形して得られる立体造形物は、用が済んだ後に取り除かれる中子(消失中子)、注型用マスターモデルなどの用途に有効に用いることができる。
【0073】
何ら限定されるものではないが、熱膨張性マイクロカプセルを含有する本発明の光学的立体造形用樹脂組成物を用いて光造形を行って得られた中子(立体造形物)を用いることによって、例えば、以下で
図1を参照して説明するように、中空成形体を円滑に製造することができる。
【0074】
まず、熱膨張性マイクロカプセルを含有する本発明の光学的立体造形用樹脂組成物を用いて、例えば、
図1の(a)に示すような、未膨張状態の熱膨張性マイクロカプセル2を含有する中子1を製造する。
【0075】
次いで、
図1の(b)に示すように、中子1を外型3内に成形空間4を設けて配置した後、
図1の(c)に示すように、成形空間4に、弾性重合体または弾性重合体を形成する重合性材料を導入して、中子1の表面に弾性重合体層5を形成する。
【0076】
次に、
図1の(d)に示すように、表面に弾性重合体層5を形成した中子1を外型3から取り出した後、中子1に含まれている熱膨張性マイクロカプセルの膨張開始温度以上の温度に加熱して熱膨張性マイクロカプセル2を膨張させることによって、
図1の(e)に示すように中子1を発泡・崩壊させて、細片状に崩壊した発泡体6とするかまたは細片状に容易に崩壊する発泡体6とする。
【0077】
最後に、中子に由来する発泡・崩壊物6を弾性重合体からなる中空成形体の外に取り出す(細片状になっておらず取り出しにくい場合には外部から手などによって押圧して細片状にして取り出す)ことによって、
図1の(f)に示す軟質の弾性重合体製の中空成形体7を得ることができる。
【0078】
図1では、中空成形体7を弾性重合体から形成しているために、表面に弾性重合体層5を形成した中子1を外型3から取り出した後に、加熱処理を行って中子の発泡・崩壊を行っても、発泡時に膨らんだ弾性重合体製の中空成形体7は、中子に由来する発泡・崩壊物を取り除くと、その弾性によって元の大きさに戻ることができる。
【0079】
表面に中空成形体製造用材料の層を形成した中子の加熱、発泡処理は、中空成形体製造用材料の物性(耐熱性、軟化点、弾性の有無、強度など)に応じて、外型から取り出してから行ってもよいし、または外型内に入れたまま行ってもよい。
【0080】
図1では、中子の形状を中空状にしているが、何らそれに限定されるものではなく、中実状の中子としてもよい。
熱膨張性マイクロカプセルを含有する本発明の光学的立体造形用樹脂組成物を用いて得られる中子は、中空形状とする際にも壁厚を大きくして、中空成形体を製造する際の成形操作や圧力などに十分に耐え得る強度とすることができる。中空形状の中子の壁厚を厚くしても、または中子を中実にしても、熱膨張性マイクロカプセルの膨張開始温度以上の温度に加熱することによって細片状に崩壊した発泡体となるかまたは細片状に容易に崩壊し得る発泡体となって中空成形体から容易に外部に排出させることができる。
【0081】
図1には、本発明の光学的立体造形用樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行って製造した中子を使用して中空成形体を製造する場合について例示したが、それに限定されるものではなく、本発明の光学的立体造形用樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行ってマスターモデル用の中空成形体を製造し、当該当該中空成形体からなるマスターモデルを用いて、各種成形体や製品を製造することができる。
【0082】
その場合には、本発明の光学的立体造形用樹脂組成物から形成した中空のマスターモデル(中空成形体)の内部に成形用材料(例えばシリコーンやその他の有機重合体、硬化性の無機材料など)を注入して、マスターモデルの内部空間全体に成形用材料を充填するかまたはマスターモデルの内壁面に成形用材料の層を形成させた状態で成形用材料を固化または硬化させ、次いで外側のマスターモデルに含まれている熱膨張性マイクロカプセルの膨張開始温度以上に加熱して外側のマスターモデルを発泡、崩壊させることによって、マスターモデルの内部に形成した成形体を取り出すことができる。
【0083】
この方法によって、成形型やその他の用途に用い得る中空成形体、種々の用途に用い得る中実成形体を製造することができる。
以下に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は実施例に何ら限定されるものではない。
【0084】
また、以下の例中、光造形用樹脂組成物の粘度、光造形して得られた立体造形物の力学的特性(曲げ強度、曲げ弾性率)および熱変形温度の測定、並びに光造形して得られた立体造形物の発泡性の評価は次のようにして行った。
【0085】
(1)光学的立体造形用樹脂組成物の粘度:
光学的立体造形用樹脂組成物を25℃の恒温槽に入れて、光学的立体造形用樹脂組成物の温度を25℃に調節した後、B型粘度計(株式会社東機産業製)を使用して回転速度20rpmで測定した。
【0086】
(2)立体造形物の曲げ強度および曲げ弾性率:
以下の実施例などで作製した光造形物(JIS K−7171に準拠したバー形状の試験片)を用いて、JIS K−7171にしたがって、試験片の曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。
【0087】
(3)立体造形物の熱変形温度:
以下の実施例などで作製した立体造形物(JIS K−7171に準拠したバー形状の試験片)を使用し、東洋精機社製「HDTテスタ6M−2」を使用して、試験片に0.45MPaの荷重を加えて、JIS K−7207(B法)に準拠して、試験片の熱変形温度を測定した。
【0088】
(4)立体造形物の発泡性:
以下の実施例などで作製した上記(3)と同様の立体造形物(JIS K−7171に準拠したバー形状の試験片)を、150℃の恒温槽に入れて10分間加熱したときの発泡状態を評価した。
【0089】
《実施例1》
(1) エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製「BPE−200」)100質量部、ポリテトラメチレングリコール(保土ヶ谷化学株式会社製「PTG−850SN」)15質量部、ベンジルジメチルケタール(BASF社製「Irgacure 651」)2.5質量部およびクレハマイクロスフェア「H850」(膨張開始温度125℃、平均粒径35μm)58質量部を室温下(25℃)でよく混合して、光学的立体造形用樹脂組成物を製造した。この光学的立体造形用樹脂組成物の粘度を上記した方法で測定したところ4,500mPa・s(25℃)であった。
【0090】
(2) 上記(1)で得られた光学的立体造形用樹脂組成物を用いて、超高速光造形システム(ナブテスコ株式会社製「SOLIFORM500B」)を使用して、半導体レーザー(定格出力1000mW;波長355nm;スペクトラフィジックス社製「半導体励起固体レーザーBL6型」)で、液面100mW、液面照射エネルギー80mJ/cm
2の条件下に、スライスピッチ(積層厚み)0.10mm、1層当たりの平均造形時間2分で光造形を行って、物性測定用および発泡性評価用のJIS K−7171に準拠したバー形状の試験片を作製し、得られた試験片を80℃で2時間加熱して後硬化した。
【0091】
(3) 上記(2)で得られた後硬化した試験片の曲げ強度、曲げ弾性率および熱変形温度(B法)を上記した方法で測定したところ、曲げ強度は20MPa、曲げ弾性率は908MPaおよび熱変形温度(B法)は73.1℃であった。
【0092】
(4) 上記(2)で得られた後硬化した試験片を、150℃の恒温槽に入れて10分間加熱したところ、加熱前の立体造形物の体積の約30倍に発泡していて、実施例1と同様に、バー形状が完全に失われており、生成した発泡体を手で押圧すると簡単に細片状に崩壊した。
【0093】
後硬化したバー形状の試験片を150℃の恒温槽に入れて10分間加熱したときの発泡状態を撮影した写真を
図2に示す。
《実施例2》
(1) エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製「BPE−200」)100質量部、ベンジルジメチルケタール(BASF社製「Irgacure 651」)2.5質量部およびクレハマイクロスフェア「H850」(膨張開始温度125℃、平均粒径35μm)58質量部を室温下(25℃)でよく混合して、光学的立体造形用樹脂組成物を製造した。この光学的立体造形用樹脂組成物の粘度を上記した方法で測定したところ5,700mPa・s(25℃)であった。
【0094】
(2) 上記(1)で得られた光学的立体造形用樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)と同じようにして光造形を行って、物性測定用および発泡性評価用のJIS K−7171に準拠したバー形状の試験片を作製し、得られた試験片を80℃で2時間加熱して後硬化した。
【0095】
(3) 上記(2)で得られた後硬化した試験片の曲げ強度、曲げ弾性率および熱変形温度(B法)を上記した方法で測定したところ、曲げ強度は30MPa、曲げ弾性率は1764MPaおよび熱変形温度(B法)は86.6℃であった。
【0096】
(4) 上記(2)で得られた後硬化した試験片を、150℃の恒温槽に入れて10分間加熱したところ、加熱前の立体造形物の体積の約10倍に発泡していて、外皮を少し残しながらバー形状が失われており、生成した発泡体を手で押圧すると概ね細片状に崩壊した。
【0097】
後硬化したバー形状の試験片を150℃の恒温槽に入れて10分間加熱したときの発泡状態を撮影した写真を
図3に示す。
《実施例3》
(1) エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製「BPE−200」)100質量部、ポリテトラメチレングリコール(保土ヶ谷化学株式会社製「PTG−850SN」)15質量部、ベンジルジメチルケタール(BASF社製「Irgacure 651」)2.5質量部およびクレハマイクロスフェア「H850」(膨張開始温度125℃、平均粒径35μm)39質量部を室温下(25℃)でよく混合して、光学的立体造形用樹脂組成物を製造した。この光学的立体造形用樹脂組成物の粘度を上記した方法で測定したところ1,870mPa・s(25℃)であった。
【0098】
(2) 上記(1)で得られた光学的立体造形用樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)と同じようにして光造形を行って、物性測定用および発泡性評価用のJIS K−7171に準拠したバー形状の試験片を作製し、得られた試験片を80℃で2時間加熱して後硬化した。
【0099】
(3) 上記(2)で得られた後硬化した試験片の曲げ強度、曲げ弾性率および熱変形温度(B法)を上記した方法で測定したところ、曲げ強度は26MPa、曲げ弾性率は1024MPaおよび熱変形温度(B法)は63.2℃であった。
【0100】
(4) 上記(2)で得られた後硬化した試験片を、150℃の恒温槽に入れて10分間加熱したところ、加熱前の立体造形物の体積の約20倍に発泡していて、外皮を少し残しながらバー形状が失われており、生成した発泡体を手で押圧すると簡単に細片状に崩壊した。
【0101】
《参考例1》
(1) エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製「BPE−200」)100質量部、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェヒニルフォスフィンオキサイド(BASF社製「LUCIRIN TPO」)2.5質量部およびクレハマイクロスフェア「H850」(膨張開始温度125℃、平均粒径35μm)58質量部を室温下(25℃)でよく混合して、光学的立体造形用樹脂組成物を製造した。この光学的立体造形用樹脂組成物の粘度を上記した方法で測定したところ8,600mPa・s(25℃)であった。
【0102】
(2) 上記(1)で得られた光学的立体造形用樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)と同じようにして光造形を行って、物性測定用および発泡性評価用のJIS K−7171に準拠したバー形状の試験片を作製し、得られた試験片を80℃で2時間加熱して後硬化した。
【0103】
(3) 上記(2)で得られた後硬化した試験片の曲げ強度、曲げ弾性率および熱変形温度(B法)を上記した方法で測定したところ、曲げ強度は26MPa、曲げ弾性率は1438MPaおよび熱変形温度(B法)は95.4℃であった。
【0104】
(4) 上記(2)で得られた後硬化した試験片を、150℃の恒温槽に入れて10分間加熱したところ、加熱前の立体造形物の体積の約5倍に発泡していたが、外皮を残しており、生成した発泡体を手で押圧すると完全には崩壊せず、塊が残った。実施例1に比べて硬化物の熱変形温度が約9℃高いため、発泡性が低下したと推測される。
【0105】
後硬化したバー形状の試験片を150℃の恒温槽に入れて10分間加熱したときの発泡状態を撮影した写真を
図4に示す。
《比較例1》
(1) エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製「BPE−200」)100質量部、ポリテトラメチレングリコール(保土ヶ谷化学株式会社製「PTG−850SN」)15質量部、ベンジルジメチルケタール(BASF社製「Irgacure 651」)2.5質量部および有機系化学発泡剤[三協株式会社製「セルマイクSX」(p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、分解温度155〜180℃)]39質量部を室温下(25℃)でよく混合して、光学的立体造形用樹脂組成物を製造した。この光学的立体造形用樹脂組成物の粘度を上記した方法で測定したところ1450mPa・s(25℃)であった。
【0106】
(2) 上記(1)で得られた光学的立体造形用樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)と同じようにして光造形を行って、物性測定用および発泡性評価用のJIS K−7171に準拠したバー形状の試験片を作製し、得られた試験片を80℃で2時間加熱して後硬化した。なお、光造形時および後硬化時には発泡は生じなかった。
【0107】
(3) 上記(2)で得られた後硬化した試験片を、180℃の恒温槽に入れて15分間加熱したが、発泡が生じなかった。
《比較例2》
(1) エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製「BPE−200」)100質量部、ポリテトラメチレングリコール(保土ヶ谷化学株式会社製「PTG−850SN」)15質量部、ベンジルジメチルケタール(BASF社製「Irgacure 651」)2.5質量部および無機系化学発泡剤[三協株式会社製「セルマイク266」(炭酸水素ナトリウム、分解温度140〜170℃)]13質量部を室温下(25℃)でよく混合して、光学的立体造形用樹脂組成物を製造した。この光学的立体造形用樹脂組成物の粘度を上記した方法で測定したところ950mPa・s(25℃)であった。(なお、セルマイク266を比較例1と同じように39質量部の割合で混合したところ、均一な光学的立体造形用樹脂組成物が得られなかったため、この比較例2では、セルマイク266を上記した13質量部の量で配合した。)
(2) 上記(1)で得られた光学的立体造形用樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)と同じようにして光造形を行って、物性測定用および発泡性評価用のJIS K−7171に準拠したバー形状の試験片を作製し、得られた試験片を80℃で2時間加熱して後硬化した。なお、光造形時および後硬化時には発泡は生じなかった。
【0108】
(3) 上記(2)で得られた後硬化した試験片を、180℃の恒温槽に入れて15分間加熱したが、発泡が生じなかった。