特許第6033863号(P6033863)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6033863中枢神経変性疾患の改善および/または治療用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6033863
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】中枢神経変性疾患の改善および/または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/352 20060101AFI20161121BHJP
   A61K 36/752 20060101ALI20161121BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20161121BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20161121BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   A61K31/352
   A61K36/752
   A61P25/16
   A61P25/28
   A61P43/00 111
【請求項の数】3
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-521501(P2014-521501)
(86)(22)【出願日】2013年6月20日
(86)【国際出願番号】JP2013066921
(87)【国際公開番号】WO2013191236
(87)【国際公開日】20131227
【審査請求日】2014年4月9日
【審判番号】不服2015-16937(P2015-16937/J1)
【審判請求日】2015年9月14日
(31)【優先権主張番号】特願2012-139932(P2012-139932)
(32)【優先日】2012年6月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390003757
【氏名又は名称】小太郎漢方製薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】山國 徹
(72)【発明者】
【氏名】川畑 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】安藤 英広
【合議体】
【審判長】 服部 智
【審判官】 山本 吾一
【審判官】 前田 佳与子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/105568(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/139036(WO,A1)
【文献】 特開2007−61028(JP,A)
【文献】 特開2007−125018(JP,A)
【文献】 Biochemical and Biophysical Research Communications,2005, Vol.337, no.4,pp.1330−1336
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00
A61K36/00
A61K9/00
A61P25/28
CAPlus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I−4:
【化1】
で表される化合物S4を有効成分として含んでなり、
ノビレチンを含まない、記憶の獲得障害または記銘障害の改善および/または治療用の組成物。
【請求項2】
経口投与形態である、請求項に記載の組成物。
【請求項3】
経口投与形態が細粒剤、茶剤、煎剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、ゼリー剤、散剤、液剤、シロップ剤またはエキス剤の形態である、請求項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学習・記憶障害を伴う中枢神経変性疾患の改善および/または治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の高齢化社会において、アルツハイマー病およびパーキンソン病などの中枢神経変性疾患の患者が増大し、社会問題となっている。中でもアルツハイマー病は認知機能障害、学習・記憶障害などを伴う進行性中枢神経変性疾患であり、その原因として学習・記憶に重要なN−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)受容体の機能を低下させるアミロイドβペプチドの重合および蓄積による神経変性が考えられている(非特許文献1を参照のこと)。
【0003】
一般に、記憶は少なくとも3つの過程、すなわち記憶の獲得(以下、本明細書において「記銘」とも称する;encoding)、保持(retention)および想起(以下、本明細書において「追想」とも称する;recall)の過程からなり、これら3つの過程のメカニズムは異なると考えられている。アルツハイマー病では神経変性が進行すると、新たに覚え込む能力すなわち記憶の獲得(または学習)ないし記銘が阻害されると共に、過去に獲得した記憶の保持と想起もできない状況になる。その結果、本疾患の中核症状である学習・記憶の障害が顕著になると理解される。
【0004】
このうち、記憶の保持および想起能力を改善する作用を有する天然フラボノイド類の一つとして、式(I−5):
【化1】
で示されるノビレチン(Nb)が知られており(特許文献1または非特許文献1もしくは2を参照のこと)、ノビレチンはまた、神経細胞に対して神経突起伸長作用を有することも知られている(特許文献2を参照のこと)。
同様に、天然フラボノイド類の一つである、式(I−1):
【化2】
で示されるタンゲレチン(S1)には、神経細胞に対して神経突起伸長作用を有することが知られている(特許文献2を参照のこと)。
【0005】
学習・記憶形成の神経回路の海馬では、学習・記憶を制御する重要な神経細胞内シグナル伝達経路として、NMDA受容体とリンクしたサイクリックアデノシン3’,5’−1リン酸(cAMP)/cAMP依存性プロテインキナーゼA(PKA)/ERK(細胞外シグナル調節キナーゼ)/cAMP応答配列(CRE)結合タンパク質(CREB)系が、近年、明らかにされた。この神経細胞内シグナル伝達経路(cAMP/PKA/ERK/CREBシグナル伝達経路)は活性化されると学習・記憶能力が亢進し、同時にcAMP応答配列(CRE)依存的転写活性(以下、本明細書において「CRE依存的転写活性」とも称する)の増大が起こることが明らかにされている(非特許文献3を参照のこと)。また、アルツハイマー病患者の脳ではcAMP/PKA/ERK/CREBシグナル伝達経路の機能が低下していることが示唆されている(非特許文献4を参照のこと)。事実、このことを裏付ける証拠も報告されている(非特許文献5を参照のこと)。
このCRE依存的転写活性は、学習記憶能力のみならず、ドーパミン(DA)の生合成酵素であるチロシン水酸化酵素の転写調節にも関連することが分かっている。
【0006】
本発明者らは先に、ノビレチンを高い割合で含有する特殊な柑橘類果皮の乾燥物(Nチンピ、橘皮及び大紅蜜柑の果皮など)からの抽出エキスが、従来の柑橘類果皮乾燥物(陳皮)からの抽出エキスと比較して優位な中枢神経変性疾患改善効果を示すこと、ならびに、CRE依存的転写活性および学習・記憶障害改善作用を示すことを開示した(特許文献3を参照のこと)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開2005/082351号公報
【特許文献2】特開2002−60340号公報
【特許文献3】国際公開2011/105568号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】日薬理誌 (Folia Pharmacol. Jpn.) 132,155−159 (2008)
【非特許文献2】The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics、Vol. 321,No.2,pp.784−790(2007)
【非特許文献3】Nat Neurosci. 1,595−601(1998)
【非特許文献4】Trends in Pharmacological 27,33−40(2006)
【非特許文献5】Brain Research 824,300−303(1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような状況下、ノビレチン(Nb)およびタンゲレチン(S1)の抗中枢神経変性疾患活性、特にアルツハイマー病の改善および/または治療効果を凌駕する化合物が開発されれば、本疾患における有望な根本治療薬の開発の実現が期待できる。その実現は、現代の高齢化社会における認知症などの難治進行性神経疾患の克服に向けた大きな前進となる。
さらに、学習・記憶障害のうちノビレチンのように記憶の保持および想起の障害を改善するだけでなく、記憶の保持障害および想起障害に加えて記憶の獲得障害および記銘障害のいずれも改善してノビレチンを凌駕する活性を持つ化合物が開発されれば、新たな作用機序を持つ認知症、特にアルツハイマー病等の治療薬等への応用が可能となり、その結果従来医薬品より優れた薬効を持ち、有用な薬の創生が期待される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、特許文献3において、ノビレチン高含有陳皮(以下、本明細書において「Nチンピ」とも称する)、橘皮及び大紅蜜柑の果皮の中枢神経変性疾患改善効果、特にCRE依存的転写促進活性は、Nチンピ、橘皮及び大紅蜜柑の果皮中に含まれる濃度のノビレチンが示す促進活性を超える値を示すことを見出した。このことから、このNチンピ、橘皮及び大紅蜜柑の果皮のCRE依存的転写促進活性は、その中に含まれるノビレチンとそれ以外の成分との協働作用に起因すると発想し、鋭意、その活性本体の探索研究を進めた。その結果、本発明において、天然フラボノイドの一種で特定の構造を持つ複数の化合物またはそれらの特定の組み合わせが、Nチンピ及び上記の2つの柑橘果皮の活性に貢献することを突き止めた。とりわけ、それらの化合物のなかの1つ、シネンセチンの当該活性への貢献度は大きく、しかもその活性強度はノビレチンおよびタンゲレチンのCRE依存的転写促進活性をはるかに超えていることを初めて見出した。さらに驚いたことに、シネンセチンは記憶の保持障害および想起障害だけでなく、記憶の獲得障害および記銘障害をも改善することが本発明において証明された。本発明者らは、以上のこれまで誰も発見できなかった事実に基づいて本発明に到達した。
【0011】
即ち、本発明は、以下の通りである。
項1:一般式I:
【化3】
において、
、R、RおよびRがメトキシ基であってRがHである化合物S4(シネンセチン)、
、RおよびRがメトキシ基であってRおよびRがHである化合物S3(6−デメトキシタンゲレチン)、および
、R、RおよびRがメトキシ基であってRがHである化合物S2(6−デメトキシノビレチン)
から選択される少なくとも1つの化合物を有効成分として含んでなる、中枢神経変性疾患の改善および/または治療用の組成物。
【0012】
項2:有効成分が、式I−4:
【化4】
で表される化合物S4である、項1に記載の組成物。
【0013】
化合物S4(シネンセチン)は、CRE依存的転写活性の増大効果が極めて高い点で好ましい。
【0014】
項3:有効成分が、式I−4:
【化5】
で表される化合物S4(シネンセチン)と、式I−3:
【化6】
で表される化合物S3(6−デメトキシタンゲレチン)および/または式I−2:
【化7】
で表される化合物S2(6−デメトキシノビレチン)との混合物である、項1に記載の組成物。
【0015】
項4:中枢神経変性疾患がアルツハイマー病、学習障害、記憶障害、パーキンソン病、ピック病またはハンチントン病である、項1〜3のいずれか1つに記載の組成物。
【0016】
項5:中枢神経変性疾患が学習障害または記憶障害である、項1〜4のいずれか1つに記載の組成物。
【0017】
項6:記憶障害が記憶の獲得障害、保持障害もしくは想起障害、記銘障害、追想障害、記憶増進障害、記憶減退障害または記憶錯誤障害である、項5に記載の組成物。
【0018】
項7:記憶障害が記憶の獲得障害または記銘障害である、項6に記載の組成物。
【0019】
項8:中枢神経変性疾患がアルツハイマー病である、項4に記載の組成物。
【0020】
項9:中枢神経変性疾患がパーキンソン病である、項4に記載の組成物。
【0021】
項10:中枢神経変性疾患の改善および/または治療がcAMP応答配列依存的転写活性(CRE依存的転写活性)の増大、または記憶形成機能の増大によりもたらされる、項1〜9のいずれか1つに記載の組成物。
【0022】
項11:中枢神経変性疾患の改善および/または治療がcAMP応答配列依存的転写活性(CRE依存的転写活性)の増大、または記憶の獲得、記憶の保持もしくは想起能力の増大によりもたらされる、項1〜10のいずれか1つに記載の組成物。
【0023】
項12:化合物S4、S3およびS2が柑橘類の果皮の乾燥物から水抽出したものである、項1〜11のいずれか1つに記載の組成物。
【0024】
項13:柑橘類がCitrus reticulata Blanco(Rutaceae)、橘または大紅蜜柑である、項12に記載の組成物。
【0025】
項14:さらに威霊仙、烏薬、延胡索、黄蓍、黄ゴン、黄柏、遠志、カッ香、葛根、乾姜、甘草、桔梗、菊花、枳実、杏仁、桂皮、紅花、香附子、厚朴、牛膝、呉茱萸、五味子、柴胡、山梔子、地黄、芍薬、生姜、升麻、神麹、石膏、川キュウ、前胡、蒼朮、蘇木、蘇葉、大黄、大棗、大腹皮、沢瀉、竹ジョ、知母、釣藤鈎、天麻、天門冬、当帰、桃仁、人参、麦芽、麦門冬、半夏、白シ、白朮、檳榔子、茯苓、防已、芒硝、防風、牡丹皮、麻黄、木通、木香、益母草、竜胆、和羌活およびこれらの二以上の組み合わせからなる群から選択される生薬成分を配合してなる、項1〜13のいずれか1つに記載の組成物。
【0026】
項15:経口投与形態である、項1〜14のいずれか1つに記載の組成物。
【0027】
項16:経口投与形態が細粒剤、茶剤、煎剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、ゼリー剤、散剤、液剤、シロップ剤またはエキス剤の形態である、項15に記載の組成物。
【0028】
項17:中枢神経変性疾患治療用の医薬組成物である、項1〜16のいずれか1つに記載の組成物。
【0029】
項18:一般式I:
【化8】
[式中、各記号は項1に記載のものと同義である]
で示される化合物から選択される少なくとも1つの化合物を有効量にて治療を必要とする対象に投与することを特徴とする、中枢神経変性疾患の治療方法。
【0030】
項19:中枢神経変性疾患の改善および/または治療のための一般式I:
【化9】
[式中、各記号は項1に記載のものと同義である]
で示される化合物から選択される少なくとも1つの化合物の使用。
【0031】
項20:一般式I:
【化10】
において、
、R、RおよびRがメトキシ基であってRがHである化合物S4、
、RおよびRがメトキシ基であってRおよびRがHである化合物S3、および
、R、RおよびRがメトキシ基であってRがHである化合物S2
から選択される少なくとも1つの化合物、および添加成分を含む食品。
【0032】
項21:式I−4:
【化11】
で表される化合物S4を含む、項20に記載の食品。
【0033】
項22:中枢神経変性疾患改善用の食品である、項20または21のいずれか1つに記載の食品。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係るS4(シネンセチン)は、従来から知られているノビレチン(Nb)およびタンゲレチン(S1)のCRE依存的転写活性の促進効果をはるかに超えるCRE依存的転写増強活性を有する。さらに、S4は、記憶の保持および想起の障害のみならず、ノビレチンには認められない記憶の獲得障害および記銘障害の改善作用を持つことから、中枢神経変性疾患、特にアルツハイマー病の顕著な改善および/または治療効果を示す。他方、S3(6−デメトキシタンゲレチン)、およびS2(6−デメトキシノビレチン)は、Fr.2−2(非ノビレチン分画)の成分である上記のS4(シネンセチン)やS1(タンゲレチン)と協働してCRE依存的転写活性の増大に働くユニークな活性により、認知症などの中枢神経変性疾患の改善および/または治療において優れた効果を示す。
【0035】
本発明に係るS4(シネンセチン)、S3(6−デメトキシタンゲレチン)、およびS2(6−デメトキシノビレチン)はまた、PKA/ERK/CREBシグナル伝達を活性化し、アルツハイマー病の症状の一つである学習・記憶障害を改善および/または治療する効果を有する。本発明に係るS4(シネンセチン)、S3(6−デメトキシタンゲレチン)、およびS2(6−デメトキシノビレチン)は特に、学習・記憶障害改善効果のうち、記憶の獲得、保持および想起能力ならびに記銘能力および追想能力の増強効果を示す。より好ましくは記憶の獲得能力または記銘能力の増強効果である。CRE依存的転写活性はドーパミン合成の律速酵素のチロシン水酸化酵素の転写増大にも密接に関わっていることから、さらに、本発明に係るS4(シネンセチン)、S3(6−デメトキシタンゲレチン)、およびS2(6−デメトキシノビレチン)はまた、ドーパミン(DA)合成・促進作用もしくはドーパミン合成・分泌促進作用によるパーキンソン病の改善および/または治療効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、本発明に係るフラボノイド化合物(S4(シネンセチン)、S3(6−デメトキシタンゲレチン)、およびS2(6−デメトキシノビレチン))の、Nチンピ抽出物からの分離工程の前段部分を示す。
図2図2は、本発明に係るS4、S3およびS2ならびに比較化合物(ノビレチン(Nb)およびタンゲレチン(S1))の化学構造を示す。
図3図3は、海馬神経細胞における、本発明に係るS4、S3およびS2ならびに比較化合物(NbおよびS1)のCRE依存的転写活性を示す。図中、* p<0.05、** p<0.01、*** p<0.001は対照(生理食塩水)との有意差(検定結果);§§ p<0.01はNbとの有意差を示す。
図4図4は、海馬神経細胞における、本発明に係るシネンセチン(S4)および比較化合物ノビレチン(Nb)のCRE依存的転写活性の濃度変化依存性を示す。図中、** p<0.01、*** p<0.001は対照(生理食塩水)との有意差(検定結果)を示す。
図5図5は、海馬神経細胞における、ポリメトキシフラボノイド類画分(Fr.2、Fr.2−1およびFr.2−2;各濃度はNチンピ中の含有比率に対応する)、Fr.2−1およびFr.2−2で再構成した混合画分(Fr.2−1+Fr.2−2;各濃度はNチンピ中の含有比率に対応する)、再構成したメトキシフラボノイド類(REC;シネンセチン(0.222μg/mL)+6−デメトキシタンゲレチン(0.135μg/mL)+6−デメトキシノビレチン(0.177mg/mL)+タンゲレチン(0.585mg/mL)+ノビレチン(1.89μg/mL, 5.0μM);各濃度はNチンピ中の含有比率に対応する)および対照(生理食塩水)のCRE依存的転写活性を示す。図中、** p<0.01、*** p<0.001は対照との有意差(検定結果)を示す。
図6図6は、海馬神経細胞における、濃度を30μMに統一したポリメトキシフラボノイド類画分(Fr.2、Fr.2−1およびFr.2−2)およびノビレチン並びに対照(生理食塩水)のCRE依存的転写活性を示す。図中、** p<0.01、*** p<0.001は対照との有意差(検定結果)を示す。
図7図7は、シネンセチンのMK801誘発性の記憶の獲得障害の改善効果を示す。縦軸はすくみ行動(%)を示し、横軸はショック事象(回数)を示す。図中、*** p<0.001、**** p<0.0001は対照(生理食塩水)との有意差(検定結果)、§§ p<0.01、§§§ p<0.001は「MK801」との有意差を示す。
図8図8は、MK801誘発性の記憶の保持および想起障害に対するシネンセチンの作用を示す。縦軸はすくみ行動(%)を示す。図中、**** p<0.0001は対照(生理食塩水)との有意差(検定結果)、§§§ p<0.001は「MK801」との有意差を示す。
図9図9は、画分2(Fr.2)のMK801誘発性の記憶の獲得障害の改善効果を示す。図中、*** p<0.001は対照(生理食塩水)との有意差(検定結果)、## p<0.01は「MK801」との有意差を示す。
図10図10は、MK801誘発性の記憶の保持および想起障害に対する画分2(Fr.2)の作用を示す。図中、*** p<0.001は対照(生理食塩水)との有意差(検定結果)、## p<0.001は「MK801」との有意差を示す。
図11図11は、ノビレチン投与における学習試行の結果を示す。
図12図12は、ノビレチン投与における確認試行の結果を示す。図中、*は対照(生理食塩水)との有意差(検定結果)、#は「MK801」との有意差を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
本発明で有効成分として用いるポリメトキシフラボノイド化合物は、S4(シネンセチン)、S3(6−デメトキシタンゲレチン)およびS2(6−デメトキシノビレチン)の三種のうちの少なくとも一種の化合物である。有効成分は、S4、S3およびS2からなる群から選択される任意の二化合物の混合物であってもよく、これら三種の化合物の混合物であってもよい。
この内、S4(シネンセチン)は、式I−4:
【化12】
で表され、
S3(6−デメトキシタンゲレチン)は、式I−3:
【化13】
で表され、および
S2(6−デメトキシノビレチン)は、式I−2:
【化14】
で表される化合物である。
【0038】
本発明に係るポリメトキシフラボノイドS4(シネンセチン)、S3(6−デメトキシタンゲレチン)およびS2(6−デメトキシノビレチン)は一般的に柑橘類植物の果皮より得られる化合物である。柑橘類は、日本橘(Citrus tachibana)、高麗橘(C.nipponokoreana)、花柚、四季橘、枳実、橙(Citrus aurantium)、地中海マンダリン(Citrus deliciosa)、ダンシータンジェリン、大紅蜜柑(Citrus aurantium)、コベニミカン(C.erythrosa)、無核紀州、福来蜜柑、カプチー、太田椪柑、ヒラキシュウ(Citrus kinokuni)、サンキツ、クレオパトラ、柑子(Citrus leiocarpa)、ギリミカン、イーチャンレモン(C. wilsonii Tanaka)、温州蜜柑(Citrus unshiu Markovich)、Citrus reticulata Blanco(Rutaceae)、シークワーサー(平実檸檬、Citrus depressa)、柚子(Citrus junos)、文旦、日向夏、椪柑(Citrus tangerina)、夏蜜柑(Citrus natsudaidai)、ネーブルオレンジ、八朔(Citrus hassaku)、イヨおよび臭橙(Citrus sphaerocarpa)からなる群から選択される植物である。
柑橘類の果皮は、陳皮や橘皮などの生薬として、市場に多く流通している。
陳皮とは、例えば温州蜜柑(Citrus unshiu Marcowicz)またはCitrus reticulata Blanco(Rutaceae)の成熟した果皮を意味し、橘皮とは、例えば日本橘または高麗橘などの橘の成熟した果皮を意味する。
【0039】
本発明において原料として用いる陳皮類(すなわち、Nチンピ、橘皮或いは大紅蜜柑の果皮など)は、上記柑橘類の果皮を歩留まり(乾燥後質量/乾燥前質量の割合)が、20〜50%となるような条件にて乾燥した物質を意味する。加熱乾燥条件としては、温度50〜100℃にて1〜3時間が挙げられ、好ましくは温度60℃にて2時間である。
【0040】
本発明に係る化合物は、上記柑橘類の果皮からの抽出物(すなわち、Nチンピ、橘皮或いは大紅蜜柑の果皮などからの抽出物)を原料とするものであり、好ましくは水抽出により得られる抽出物である。本明細書における好ましい水抽出は、60〜100℃における水による抽出である。
【0041】
本発明に係るポリメトキシフラボノイドS4(シネンセチン)、S3(6−デメトキシタンゲレチン)およびS2(6−デメトキシノビレチン)は、上記抽出物を更に通常の分画手段、例えば、カラムクロマトグラフィーによる分離を経て単離することができる。
【0042】
<一般的製造法>
Nチンピ抽出物を出発原料に用いた分離法の非限定的な例を、図1に示す。この図に基づき、S4、S3およびS2の分離方法の概要を説明する。
即ち、所定量のNチンピ抽出物を極性溶媒(例えば、30%アセトニトリル/70%精製水等)中に懸濁し、表面処理シリカゲル(例えば、オクタデシルシリル化シリカゲル(ODS)等)を充填した固相抽出カラムに通液させる。流出液の組成を適宜分析し(例えば、薄層クロマトグラフィー等)、成分の分離性を確認しつつ、極性溶媒(例えば、30%アセトニトリル/70%精製水等)をカラムに流し、溶出液を減圧濃縮することにより、Fr.1が得られる。さらに疎水性溶出溶媒(例えば、メタノール等)を用いて、次の溶出画分を得、減圧下で溶媒を留去するとFr.2が得られる。
次いで、Fr.2について、極性溶媒(例えば、40%アセトニトリル/60%精製水等)を溶離液としたODSカラムクロマトグラフィーを行う。溶離液の極性を変化させて(例えば、アセトン/ヘキサン(1:1)、ならびに酢酸エチル/ヘキサン(4:1)等の組合せなど)、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを繰り返すことにより、高純度のノビレチンからなるFr.2−1が得られる。一方、ノビレチンを含有しない画分はFr.2−2とする。
ここで得られたFr.2−1は薄層クロマトグラフィー(TLC)によってノビレチンの存在が確認された、高純度のノビレチン(Nb)からなるノビレチン画分であり、Fr.2−2はFr.2からFr.2−1を除いた非ノビレチン画分である。
【0043】
次に、上記で得られたFr.2−2(非ノビレチン画分)は親水性を調節した溶離液(例えば、60%メタノール/40%精製水等)を用いて、ODSカラムクロマトグラフィーにより繰り返し分離精製する。得られた溶離液を濃縮後、再結晶等により精製することにより、4種類の結晶性の物質を単離することができ、これらをS1〜S4と称する。S1〜S4をIR、UV、H NMR、13C NMRおよびESI−MSによって分析することにより、それらの構造を決定することができる。
【0044】
次に、本発明に係る組成物の薬理活性について説明する。
本発明に係るポリメトキシフラボノイドS4(シネンセチン)、S3(6−デメトキシタンゲレチン)およびS2(6−デメトキシノビレチン)の少なくとも一つを含んでなる組成物は、中枢神経変性疾患の改善および/または治療に用いることができる。
【0045】
ここで、本発明の実施態様において、中枢神経変性疾患の改善および/または治療は、cAMP応答配列依存的転写活性(CRE依存的転写活性)の増大によりもたらされ、さらには当該活性の増大に基づく記憶の獲得、記憶の保持および想起能力などの記憶形成機能の増大によりもたらされる。故に、CRE依存的転写活性の増大は、記憶形成機能障害の改善に寄与し、学習記憶能力のみならず、ドーパミン(DA)合成・分泌促進およびそれに伴うパーキンソン病の改善にも寄与する。
【0046】
また、ある実施態様において、中枢神経変性疾患の改善および/または治療は、CRE依存的転写活性促進によりもたらされる。
【0047】
また、ある実施態様において、中枢神経変性疾患は、学習および/または記憶の障害に係わる疾患であり、好ましくは学習障害または記憶障害である。中枢神経変性疾患は、より好ましくは、記憶の獲得、保持および/または想起障害、記銘障害、追想障害、記憶増進障害、記憶減退障害または記憶錯誤障害であり、特に好ましくは、記憶の獲得障害または記銘障害である。
【0048】
また、ある実施態様において、中枢神経変性疾患はアルツハイマー病である。
【0049】
また、ある実施態様において、中枢神経変性疾患はパーキンソン病であり、その改善および/または治療は、ドーパミン合成能促進作用によりもたらされる。
【0050】
本明細書において用語「中枢神経変性疾患」としては、アルツハイマー病、特に学習・記憶障害、パーキンソン病、ピック病、ハンチントン病などが挙げられる。
本明細書において用語「記憶障害」としては、記憶の獲得、保持および/または想起障害、記銘障害、追想障害、記憶増進障害、記憶減退障害、記憶錯誤障害などが挙げられる。
【0051】
本発明に係る化合物(S4、S3およびS2)の抗アルツハイマー病活性および/または抗パーキンソン病活性としては、中枢神経変性疾患の発症メカニズムに関与する学習・記憶障害の改善またはドーパミン合成の促進が挙げられる。具体的には、CRE(cAMP応答配列)依存的転写活性、ドーパミン含量上昇活性、ドーパミン分泌促進活性などである。
より詳細には、本発明の中枢神経変性疾患の改善および/または治療用の組成物は、有効成分(S4、S3、S2またはこれらの組み合わせ)の含有量および各成分間の比率に応じた活性の程度を示してもよい。例えば、上記3化合物の合計含有量が同一の場合には、CRE依存的転写活性が最も高いS4(シネンセチン)の比率が高い組成物が、全体として高いCRE依存的転写活性を示す。
【0052】
本明細書において学習・記憶障害は、記憶過程における以下の三つの能力を低下させる障害である:記憶の獲得ないし記銘(encoding)、保持(retention)および想起ないし追想(recall)能力。本明細書において用語「獲得」および「記銘」とは情報を記憶として取り込むことであり、「保持」とは取り込まれた情報を保存ないし維持することであり、「想起」および「追想」とは保存ないし維持された情報を思い出すことを意味する。
【0053】
本発明に係る化合物(S4、S3およびS2)に、生薬成分および/または添加成分を更に適宜配合することにより、本発明の組成物を製造することができる。本明細書において、本発明の組成物は中枢神経変性疾患用治療薬であってもよく、当該治療薬としては、抗アルツハイマー病薬および/または抗パーキンソン病薬、すなわち抗アルツハイマー病活性および/または抗パーキンソン病活性を有する医薬品が挙げられる。
【0054】
本明細書において用語「医薬品」は、ヒトおよび動物における疾患の診断、治療および/または予防のための物質を意味し、生薬を含む医薬品、例えば生薬製剤および漢方薬を含む。好ましい医薬品は、経口投与形態であり、より好ましくは細粒剤、茶剤、煎剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、ゼリー剤、散剤、液剤、シロップ剤またはエキス剤である。
【0055】
本明細書において用語「食品」は、いわゆる健康食品と、当局の許可等の有無や食品の目的、機能等の違いによって区別される、特定保健用食品および栄養機能食品などの保健機能食品とを含む。本明細書における好ましい食品の形態は、細粒、ゼリーの素、ピール、ジャムまたは茶であり、より好ましくは細粒または茶である。
【0056】
本発明における中枢神経変性疾患の改善および/または治療用の組成物における、有効成分としてのS4、S3およびS2の含有率(本明細書において「有効量」とも称する)は、対象の使用目的(医薬品か食品か)、性別、症状等に応じて適宜調整することができるが、該組成物100重量%に対して通常約0.001〜約5重量%、好ましくは、約0.01〜約3重量%、より好ましくは、約0.02〜約1.2重量%の範囲である。
【0057】
本明細書における生薬成分としては、例えば威霊仙、烏薬、延胡索、黄蓍、黄(オウ)ゴン、黄柏、遠志、カッ香(コウ)、葛根、乾姜、甘草、桔梗、菊花、枳実、杏仁、桂皮、紅花、香附子、厚朴、牛膝、呉茱萸、五味子、柴胡、山梔子、地黄、芍薬、生姜、升麻、神麹、石膏、川(セン)キュウ、前胡、蒼朮、蘇木、蘇葉、大黄、大棗、大腹皮、沢瀉、竹(チク)ジョ、知母、釣藤鈎、天麻、天門冬、当帰、桃仁、人参、麦芽、麦門冬、半夏、白(ビャク)シ、白朮、檳榔子、茯苓、防已、芒硝、防風、牡丹皮、麻黄、木通、木香、益母草、竜胆、和羌活およびこれらの二以上の組み合わせが挙げられる。
本発明に係る化合物(S4、S3およびS2)は、生薬成分として本発明の組成物に配合されていてもよい。
【0058】
本明細書における添加成分としては、当分野で通常用いられるものであれば特に限定されず、例えばアスコルビン酸、アスパルテーム、アップル香料、オレンジ香料、カラギナン、カラメル、カルナウバロウ、カルメロース、カルメロースカルシウム、還元麦芽糖液糖、還元麦芽糖水飴、含水二酸化ケイ素、キシリトール、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、グラニュー糖、軽質無水ケイ酸、ゲル化剤(FG−2266、新田ゼラチン株式会社)、合成ケイ酸アルミニウム・ヒドロキシプロピルスターチ・結晶セルロース、サラシミツロウ、酸化チタン、食塩、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、タルク、デキストリン、トウモロコシデンプン、乳糖、ハチミツ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微粒二酸化ケイ素、プルラン、ペクチン、マルトース、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、メチルセルロース、レシチン、ローカストビーンガムおよびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0059】
添加成分は、当分野で通常用いられる配合比率にて配合されてもよく、例えば本発明の組成物100重量%に対して通常0.0〜70.0重量%、好ましくは5.0〜50.0重量%、より好ましくは10.0〜40.0重量%である。
【実施例】
【0060】
以下の実施例において、化合物S4、S3およびS2を抽出するための出発原料に用いたNチンピは小太郎漢方製薬株式会社から入手可能である。
【0061】
<製造例1>(Nチンピ抽出物の製造)
本発明で用いる出発原料のNチンピを以下のようにして製造した。
ノビレチンを高い割合(0.44重量%)で含有するCitrus reticulata Blanco(Rutaceae)の果皮を陰干し、日干しまたは加熱乾燥することによりNチンピを製造した。加熱乾燥は、歩留まり(乾燥後質量/乾燥前質量の割合)が陳皮について20〜50%となるまで行い、温度60℃にて2時間加熱乾燥した。こうして得られたNチンピを細切りしたもの約10gに純水400mLを加えて加熱した。混合物が沸騰した後、100℃にて1時間かけて抽出した。次いで、ガーゼ(2枚)を通してろ過し、ろ液を凍結乾燥してNチンピ抽出物を得た。Nチンピ抽出物の収量は3.5g、収率は35%であった。
【0062】
<実施例1>
製造例1のようにして得られたNチンピ抽出物を乾燥重量で81.11g用い、以下に示す手順で分離を行った。
Nチンピ抽出物81.11gをフラスコ中で30%アセトニトリル/70%精製水360mLに懸濁し、バリアンボンドエルートC18(10g)中に通液させた。30%アセトニトリル/70%精製水100mLをカラムに流し、溶出液を減圧濃縮するとFr.1が得られた(79.95g)。さらにメタノール50mLで溶出し、得られた溶出液を減圧で溶媒を留去するとFr.2が得られた(1.16g)。Fr.2(0.505g)について、40%アセトニトリル/60%精製水を溶離液としたODSカラムクロマトグラフィーを行い、さらにアセトン/ヘキサン(1:1)、ならびに酢酸エチル/ヘキサン(4:1)を溶離液としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーを繰り返し、ノビレチンを含む画分を合わせて高純度のノビレチンからなるFr.2−1が得られた(0.224g)。さらに、ノビレチンを含有しない画分は合わせてFr.2−2とした(0.314g)。図1に、Nチンピ抽出物含有成分のカラムクロマトグラフィー等の分離操作を示した。
この様にして、Fr.1(79.95g)、ならびに、Fr.2−1(0.224g)およびFr.2−2(0.314g)を得た。Fr.2−1は、以下の分析の項で説明する様に、ノビレチン(Nb)と同定された。
Fr.2−2(非ノビレチン画分)については、薄層クロマトグラフィーでの分析の結果、複数の成分を含有することが判ったので、以下の実施例2に示す手順で更にカラムクロマトグラフィーによる分離を進めた。
【0063】
<実施例2>(Fr.2−2のカラムクロマトグラフィーによる分離)
Fr.2−2(200mg)をODSカラムクロマトグラフィーに付し、40%アセトニトリル/60%精製水を溶出溶媒として分画した。さらに60%メタノール/40%精製水を溶出溶媒としたODSカラムクロマトグラフィーにより精製、再結晶して、S1(20mg)、S2(11mg)、S3(12mg)およびS4(14mg)を得た。
S4、S3、S2およびS1はそれぞれ、以下の分析の項で説明する様に、シネンセチン(S4)、デメトキシタンゲレチン(S3)、デメトキシノビレチン(S2)およびタンゲレチン(S1)であると同定された。
【0064】
実施例1および2で得られた結果を図2に示す。
【0065】
<分析例>
実施例1および2で得られた各分画成分を、IR、UV、H−NMR、13C−NMRおよびESI−MSによって分析することにより、それらの構造を決定した。得られた結果を以下に示す。
【0066】
<NチンピエキスのFr.2−1の分析結果>
Fr.2−1は、以下のデータ及び市販標準品とのTLCおよびHPLCによる比較により、ノビレチンと同定された。
無色針状晶;UV:λmax(MeOH)nm(logε):248(4.23)、269(4.19)、331(4.35);Positive−ion ESI−MS m/z 403([M+H])。
【0067】
<NチンピエキスのFr.2−2から単離した化合物S1〜S4の分析結果>
[S1]:以下のデータにより、タンゲレチン(S1)と同定された。
無色針状晶;mp 150−151℃;IRmax(KBr)cm−1:1650、1608、1514、1465、1408、1364、1266、1182、1110、1074、1019、970、830;UV:λmax(MeOH)nm(logε):323(4.46)、270(4.31);Positive−ion ESI−MS m/z 373([M+H])。
【0068】
[S2]:以下のデータにより、6−デメトキシノビレチン(S2)と同定された。
無色針状晶;mp 199−200℃;IR λmax(KBr)cm−1:1640、1601、1514、1427、1327、1259、1234、1124、1048、1021、843;UV λmax(MeOH)nm(logε):338(4.31)、269(4.29)、248(4.27);H NMR(CDCl):δ7.57(1H、dd、J=10.7、2.8Hz)、7.40(1H、d、J=2.8Hz)、6.97(1H、d、J=10.7Hz)、6.60(1H、s)、6.42(1H、s)、3.99(3H、s)、3.97(3H、s)、3.95(3H、s)、3.94(3H×2、s);13C NMR(CDCl):δ 177.8、160.5、156.4、156.3、151.9、151.7、149.2、130.7、124.0、119.5、111.1、108.9、108.5、107.1、92.4、61.5、56.5、56.3、56.0、55.9;Positive−ion ESI−MS m/z 373([M+H])。
【0069】
[S3]以下のデータにより、6−デメトキシタンゲレチン(S3)と同定された。
無色針状晶;mp 213−214℃;IR λmax(KBr)cm−1:1638、1598、1510、1342、1249、1211、1184、1112、1048、841、802;UV λmax(MeOH)nm(logε);310(4.29)、269(4.37);H NMR(CDCl):δ 7.86(2H、d、J=11.3Hz)、7.00(2H、d、J=11.3Hz)、6.58(1H、s)、6.41(1H、s)、3.98(3H、s)、3.96(3H、s)、3.93(3H、s)、3.86(3H、s);13C NMR(CDCl):δ 177.8、162.1、160.6、156.4、156.2、151.9、130.7、127.6、123.8、114.4、109.0、106.9、92.5、61.5、56.6、56.2、55.4;Positive−ion ESI−MS m/z 343([M+H])。
【0070】
[S4]以下のデータにより、シネンセチン(S4)と同定された。
無色針状晶;mp 175−176℃;IR λmax(KBr)cm−1 1636、1601、1516、1421、1326、1253、1121、1022、843;UV λmax(MeOH)nm(logε):329(4.39)、239(4.30);H NMR(CDCl):δ 7.50(1H、dd、J=10.7、2.5Hz)、7.31(1H、d、J=2.5Hz)、6.95(1H、d、J=10.7Hz)、6.78(1H、s)、6.59(1H、s)、3.98(3H、s)、3.97(3H、s)、3.96(3H、s)、3.94(3H、s)、3.90(3H、s);13C NMR(CDCl):δ 177.2、161.1、157.7、154.5、152.6、151.8、149.3、140.4、124.1、119.6、112.9、111.1、108.7、107.4、96.2、62.2、61.5、56.3、56.1、56.0;Positive−ion ESI−MS m/z 373([M+H])。
【0071】
<薬理活性試験例>
上記実施例で得られた化合物S1〜S4、ノビレチン(Nb)およびポリメトキシフラボノイド類画分(Fr.2、Fr.2−1、Fr.2−2)について以下のインビトロおよびインビボ試験を行った。
【0072】
[一般的試験手順1]
以下の試験例1および2で用いた一般的試験手順は以下のとおりである。
(ラット胎仔初代海馬神経細胞の培養)
妊娠Sprague−Dawley(SD)ラットを12時間周期の明暗サイクルにて給餌・給水して飼育した。妊娠18日目のラット(E18)からイソフルラン深麻酔下にて腹部正中切開により無菌的に子宮を摘出した。実体顕微鏡下、氷冷リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中にて胎仔の海馬を摘出し、神経細胞分散液(住友ベークライト)で組織を分散させ、1000rpmにて4分間遠心分離した後、上清を除去した。次いで、細胞ペレットを分散液(住友ベークライト)中にて分散させ、さらにピペッティングにより十分分散させた細胞に除去液(住友ベークライト)を加えて900rpmにて5分間遠心分離した後、上清を除去した。
次に、ペレットをNeurobasal Medium(Neurobasal Medium 500mL/フェノール・レッド不含、50倍B27 Supplement 10mL、0.5mM L−グルタミン、0.005%ペニシリン−ストレプトマイシン)を用いて懸濁し、ポリ−L−リジンでコーティングした皿またはプレートに播種した。培養1日後に培地交換し、その後3〜4日おきに培地を半量交換し、10μM Ara−Cを含有する培地中37℃にて5%COインキュベーター内で14日間培養した。
なお、薬物処置実験用試験培地は、Ara−C不含のNeurobasal Mediumを用いた。
【0073】
(CRE依存的転写活性の測定)
ラット海馬神経細胞を初代培養した後、レポータージーンアッセイを行った。海馬神経細胞を48ウェルプレートに8×10細胞/ウェルで播種し、Neurobasal Mediumで10〜14日間培養した。レポータープラスミド(0.1μg/ウェル)、ウミシイタケphRG−TKプラスミド(0.01μg/ウェル)をリポフェクション法にてトランスフェクトし、16時間培養。Ara−C無添加のNeurobasal Medium(B−27 Supplement、L−グルタミン、ペニシリン−ストレプトマイシンを含む)で希釈し、被検体を8時間処置した。
転写活性の測定はPromega社製のDual−Luciferase(登録商標)Reporter Assay Systemを用いて行った。海馬神経細胞をPassive Lysis Buffer(Promega)で可溶化後、Luciferase Assay Regent II(Promega)およびStop&Glo(登録商標)Reagent(Promega)を混和し、ルミノメーターで蛍光値を測定した。
【0074】
(統計学的解析1)
実験結果はone−way ANOVA(Tukey)を用いて評価した。有意水準を両側5%として検定し、p<0.05を有意とした。
【0075】
[試験例1](海馬神経細胞における本発明に係る化合物(S4、S3、S2)および比較化合物(NbおよびS1)のCRE依存的転写活性(インビトロ試験))
本試験例において、本発明に係る化合物(S4、S3、S2)のCRE依存的転写活性を比較化合物(NbおよびS1)のCRE依存的転写活性と比較した。
【0076】
上記試験手順1に記載のように、30μMの濃度の本発明に係る化合物(S4、S3、S2)および同一濃度の比較化合物(NbおよびS1)で処置した。
得られた結果を図3に示した。図中、全ての組み合わせでOne−way ANOVA(post Tukey)検定。値は平均値±標準誤差;検体数 n=4;* p<0.05、** p<0.01、*** p<0.001は対照(生理食塩水)との有意差(検定結果);§§ p<0.01はNbとの有意差を、それぞれ示す。
(考察1)
図3に示されるように、シネンセチン(S4)は、ノビレチン(Nb)のCRE依存的転写活性を大きく超えるCRE依存的転写活性を示した。また、6―デメトキシタンゲレチン(S3)および6−デメトキシノビレチン(S2)も、ノビレチン(Nb)およびタンゲレチン(S1)と比べて、同等のCRE依存的転写活性を示した。
これらの結果は、本発明に係るシネンセチン(S4)、6−デメトキシタンゲレチン(S3)および6−デメトキシノビレチン(S2)は、記憶形成機能の増大作用を有することが示され、当該作用を通してアルツハイマー病の治療につながり得ることを示唆している。
【0077】
[試験例2](海馬神経細胞における本発明に係るシネンセチン(S4)および比較化合物ノビレチン(Nb)のCRE依存的転写活性の濃度依存性(インビトロ試験))
本試験例において、本発明に係るシネンセチン(S4)および比較化合物ノビレチン(Nb)のCRE依存的転写活性の濃度依存性を比較した。
上記試験手順1に記載のように、S4の薬効の濃度依存性を確認するため、1〜30μMの濃度のS4および比較化合物Nbを用いた。
得られた結果を図4に示した。図中、全ての組み合わせでOne−way ANOVA(post Tukey)検定。値は平均値±標準誤差;検体数 n=4;** p<0.01、*** p<0.001は対照(生理食塩水)との有意差(検定結果)を示す。
【0078】
(考察2)
図4に示されるように、シネンセチン(S4)に極めて強力なCRE依存的転写活性の促進作用を認めた。すなわち、ノビレチン(Nb)は30μMで最大活性を示すが、その30分の1の濃度、つまり1μMでシネンセチン(S4)は同等の活性を示し、またその最大活性はノビレチン(Nb)のそれの2倍強であった。この様に、本発明に係るシネンセチン(S4)には、従来のノビレチン(Nb)よりもはるかに強いCRE依存的転写活性が認められ、ノビレチン(Nb)を凌駕していた。それ故に、ノビレチン(Nb)より低用量で効果を発揮できるシネンセチン(S4)は、安全性が高く、ノビレチン(Nb)を凌駕する学習・記憶障害改善作用を示し、より効果的にアルツハイマー病の認識機能障害を改善することが示唆された。
【0079】
[試験例3](海馬神経細胞におけるNチンピ由来画分のCRE依存的転写活性(インビトロ試験))
本試験例において、本発明に係るNチンピ由来画分のCRE依存的転写活性を比較化合物(NbおよびS1)のCRE依存的転写活性と比較した。
上記試験手順1に記載のように、実施例1で得られたポリメトキシフラボノイド画分(Fr.2)、ノビレチン画分(Fr.2−1)、非ノビレチン画分(Fr.2−2)、Fr.2−1およびFr.2−2で再構成した混合画分(Fr.2−1+Fr.2−2)および再構成したメトキシフラボノイド類(REC;シネンセチン 0.222μg/mL+6−デメトキシタンゲレチン 0.135μg/mL+6−デメトキシノビレチン 0.177mg/mL+タンゲレチン 0.585mg/mL+ノビレチン 1.89μg/mL(5.0μM))のCRE依存的転写活性について試験した。
得られた結果を図5に示した。試料濃度は、Fr.2について4.29μg/mL、Fr.2−1について1.89μg/mL、Fr.2−2について2.67μg/mL、Fr.2−1+Fr.2−2について4.56μg/mL、RECについて3.009μg/mLとし、Nチンピ中の画分量に比した検体量とした。図中、全ての組み合わせでOne−way ANOVA(post Tukey)検定。値は平均値±標準誤差;検体数 n=4;** p<0.01、*** p<0.001は対照(生理食塩水)との有意差(検定結果)を示す。
また、ノビレチン濃度30μMに相当する12μg/mLを基準として、Fr.2、Fr.2−1およびFr.2−2を12μg/mLの試料濃度としたデータを図6に示す。図中、全ての組み合わせでOne−way ANOVA(post Tukey)検定。値は平均値±標準誤差;検体数 n=4;** p<0.01、*** p<0.001は対照(生理食塩水)との有意差(検定結果)を示す。
【0080】
(考察3)
図5に示されるように、海馬神経細胞における短期記憶から長期記憶への変換に係るCRE依存的転写活性において、ノビレチンを5μMしか含まない再構成した混合画分(Fr.2−1+Fr.2−2)と再構成したポリメトキシフラボノイド類(REC)のサンプルで、ノビレチン画分(Fr.2−1)より強い活性が確認された。また、これら2種の再構成サンプルは同等の活性であり、シネンセチンに6−デメトキシタンゲレチンや6−デメトキシノビレチンが加味されることで、CRE依存的転写活性の増大に働き、認知症などの中枢神経変性疾患の改善および/または治療において優れた効果を示している。
図6に示されるように、非ノビレチン画分であるFr.2−2は、ノビレチンを含まないにもかかわらず、同濃度でノビレチンよりも活性が高いことが確認され、図3で示されたシネンセチン等の効果が再確認された。
また、試験例1で得られた結果を考慮すれば、再構成したメトキシフラボノイド類(REC)のCRE依存的転写活性が意味することは、6−デメトキシタンゲレチン(S3)および6−デメトキシノビレチン(S2)は、シネンセチン(S4)およびタンゲレチン(S1)との協働作用によりRECのCRE依存的転写活性の発現、さらにはFr.2の活性発現に貢献するというユニークな活性を示す点であるということもできる。
【0081】
[試験例4](本発明に係るシネンセチン(S4)の学習・記憶障害改善作用(インビボ試験))
本試験例のインビボ試験において、MK801誘発性記憶障害モデルマウスを用いて、行動薬理学的に学習・記憶障害に対する本発明のシネンセチン(S4)の薬効を検討した。
具体的には、MK801誘発性学習・記憶障害に対するシネンセチンの慢性投与による作用を検討した。マウスを3群に分け、シネンセチン25mg/kgを1群に、残り2群に生理食塩水を7日間連続的に経口投与した。7日目にこれらを投与した90分後にグルタミン酸受容体サブタイプの一つであるMK801(80μg/kg)を2群に、生理食塩水を対照群に腹腔内投与した。その30分後に恐怖条件付け学習(記憶の獲得)試験を行った。
恐怖付け学習試験において、マウスを透明なボックスに入れ、2分間自由に探索させた後、0.7 mA、2 sの電気刺激を与えた(ショック事象)。これを3回繰り返して学習試行を行い、記憶の獲得および記銘能力を評価した(すなわち、通電後1分間の停止状態(Freezing%))。
得られた結果を図7に示す。図中、縦軸はすくみ行動(%)を示し、横軸はショック事象(回数)を示す。「control」は生理食塩水のみを投与された群を意味し、「MK801」は生理食塩水およびMK801(80μg/kg)を投与された群を意味し、「S25+MK801」はシネンセチン(25mg/kg)およびMK801(80μg/kg)を投与された群を意味する。また、全ての組み合わせでOne−way ANOVA(post Tukey)検定。*** p<0.001、**** p<0.0001は対照(生理食塩水)との有意差(検定結果)、§§ p<0.01、§§§ p<0.001は「MK801」との有意差を示す。
【0082】
学習(記憶の獲得)試行の24時間後に、マウスを再び透明なボックスに入れ、マウスのすくみ行動、すなわち呼吸以外のすべての動作が停止した状態を指標とした確認(記憶の保持および想起)試行を行い、学習・記憶行動として5分間の測定により記憶の保持、想起能力および追想能力を評価した(すなわち、通電後5分間の停止状態(Freezing%))。
得られた結果を図8に示す。図中、縦軸はすくみ行動(%)を示す。全ての組み合わせでOne−way ANOVA(post Tukey)検定。**** p<0.0001は対照(生理食塩水)との有意差(検定結果)、§§§ p<0.001は「MK801」との有意差を示す。
【0083】
(考察4)
図7および図8に示されるように、MK801の処置により、学習および記憶の結果として認められるすくみ行動が有意に減少したが、シネンセチンの投与により学習試行および確認試行のいずれの場合もその減少について改善効果が認められた。特に学習試行では、本発明のシネンセチンを投与したマウスは、MK801の処置を受けたことにより学習・記憶機能が阻害されて忘却しやすくなっているにもかかわらず、すくみ行動の減少が有意に軽減された。
【0084】
[試験例5](Fr.2による学習・記憶障害改善作用(インビボ試験))
上記試験例4にて、シネンセチンに代えて、Fr.2(92.8mg/kg)の経口投与による作用を検討した。得られた学習試行の結果を図9に示す。図中、*** p<0.001は対照(生理食塩水)との有意差(検定結果)、## p<0.01は「MK801」との有意差を示す。
また、得られた確認試行の結果を図10に示す。図中、*** p<0.001は対照との有意差(検定結果)、## p<0.001は「MK801」との有意差を示す。
【0085】
(考察5)
図9に示されるように、学習(記憶の獲得)試行において、メトキシフラボノイド類を主とするFr.2がMK801の処置によるすくみ行動の減少を対照に近い状態まで強く改善する効果が認められた。
図10に示されるように、確認(記憶の保持および想起)試行においても、MK801による記憶障害を優位に改善することが確認された。
【0086】
[比較例1](ノビレチンによる学習・記憶障害改善作用(インビボ試験))
上記試験例4にて、シネンセチンに代えて、ノビレチン(50mg/kg)の腹腔内投与による作用を検討した。結果を図11および図12に示す。
【0087】
図11に示されるように、学習試行において、MK801の処置によるすくみ行動の減少は、ノビレチンを腹腔内投与しても改善しなかった。図12に示されるように、確認試行では、ノビレチン投与の効果が認められた。
すなわち、ノビレチン(腹腔内投与)は、記憶の保持および想起の障害の改善効果を有するのみであることが確認された。
【0088】
<製剤例>(本発明の組成物の製造)
本発明の組成物を以下のとおり製造した。
[製剤例1]細粒剤A
Nチンピ3.0 g、当帰3.0 g、釣藤鈎3.0 g、川キュウ3.0 g、白朮4.0 g、茯苓4.0 g、柴胡2.0 g、甘草1.5 gおよび半夏5.0 g(合計28.5 g)の比率で、合計量が200〜800 kgになるよう生薬を配合し、水2000〜8000 Lにて、抽出缶を用いて60〜100℃、30〜180分間抽出した。得られた抽出物を遠心分離機を用いて回転数1000〜5000 rpmでろ過して固液分離した後、コイル回転型濃縮機を用いて8 kPa以下の減圧下で濃度約10〜40%まで濃縮した。濃縮液を、噴霧乾燥機を用いて回転数10000〜20000 rpm、給気温度130〜180℃、排気温度60〜120℃で噴霧乾燥し、エキス剤(抑肝散加陳皮半夏エキス)を得た。
得られた抑肝散加陳皮半夏エキス6.1 gに対し、ステアリン酸マグネシウム、トウモロコシデンプン、乳糖、プルランおよびメタケイ酸アルミン酸マグネシウムからなる添加物2.9 gの比率で、合計量が50〜400 kgの範囲で配合し、容器回転型混合機を用いて4 rpm、20分間混合し、乾式造粒装置を用いてロール圧490〜2500 Paで成型して整粒し、篩30号〜50号間にて粒子分級(カセットスクリーン)し、細粒剤Aを得た。
得られた細粒剤A 9.0 gには、Nチンピ3.0 gと他の生薬とを配合した抑肝散加陳皮半夏エキスが6.1 g含有されており、目安として細粒剤A 9.0 gを成人1日あたり2〜3回に分けて服用する。
【0089】
[製剤例2]細粒剤B
橘皮3.0 g、檳榔子4.0 g、厚朴3.0 g、桂皮3.0 g、蘇葉1.5 g、甘草1.0 g、大黄1.0 g、生姜1.0 g、木香1.0 g、呉茱萸1.0 gおよび茯苓3.0 g(合計22.5 g)の比率で、合計量が200〜800 kgになるよう生薬を配合し、水2000〜8000 Lにて、抽出缶を用いて60〜100℃、30〜180分間抽出した。遠心分離機を用いて回転数1000〜5000 rpmでろ過して固液分離した後、コイル回転型濃縮機を用いて8 kPa以下の減圧下で濃度約10〜40%まで濃縮した。濃縮液を、噴霧乾燥機を用いて回転数10000〜20000 rpm、給気温度130〜180℃、排気温度60〜120℃で噴霧乾燥し、エキス剤(九味檳榔湯エキス)を得た。
得られた九味檳榔湯エキス3.7 gに対し、ステアリン酸マグネシウム、トウモロコシデンプン、乳糖、プルランおよびメタケイ酸アルミン酸マグネシウムからなる添加物2.3 gの比率で、合計量が50〜400 kgの範囲で配合し、容器回転型混合機を用いて4 rpm、20分間混合し、乾式造粒装置を用いてロール圧490〜2500 Paで成型して整粒し、篩30号〜50号間にて粒子分級(カセットスクリーン)し、細粒剤Bを得た。
得られた細粒剤B 6.0 gには、橘皮3.0 gと他の生薬とを配合した九味檳榔湯エキスが3.7 g含有されており、目安として細粒剤B 6.0 gを成人1日あたり2〜3回に分けて服用する。
【0090】
[製剤例3]細粒剤C
Nチンピ2.4 g、釣藤鈎2.4 g、半夏2.4 g、麦門冬2.4 g、茯苓2.4 g、人参1.6 g、防風1.6 g、菊花1.6 g、甘草0.8 g、生姜0.8 gおよび石膏4.0 g(合計22.4 g)の比率で、合計量が200〜800 kgになるよう生薬を配合し、水2000〜8000 Lにて、抽出缶を用いて60〜100℃、30〜180分間抽出した。遠心分離機を用いて回転数1000〜5000 rpmでろ過して固液分離した後、コイル回転型濃縮機を用いて8 kPa以下の減圧下で濃度約10〜40%まで濃縮した。濃縮液を、噴霧乾燥機を用いて回転数10000〜20000 rpm、給気温度130〜180℃、排気温度60〜120℃で噴霧乾燥し、エキス剤(釣藤散エキス)を得た。
得られた釣藤散エキス4.48 gに対し、含水二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウムおよびトウモロコシデンプンからなる添加物1.52 gの比率で、合計量が50〜400 kgの範囲で配合し、容器回転型混合機を用いて4 rpm、20分間混合し、乾式造粒装置を用いてロール圧490〜2500 Paで成型して整粒し、篩30号〜50号間にて粒子分級(カセットスクリーン)し、細粒剤Cを得た。
得られた細粒剤C 6.0 gには、Nチンピ2.4 gと他の生薬とを配合した釣藤散エキスが4.48 g含有されており、目安として細粒剤C 6.0 gを成人1日あたり3回に分けて服用する。
【0091】
[製剤例4]細粒剤D
Nチンピまたは橘皮50 kgを水500〜2000 Lにて、抽出缶を用いて60〜100℃、30〜180分間抽出した。遠心分離機を用いて回転数1000〜2500 rpmでろ過して固液分離した後、コイル回転型濃縮機を用いて8 kPa以下の減圧下で濃度約10〜40%まで濃縮した。濃縮液を、噴霧乾燥機を用いて回転数10000〜20000 rpm、給気温度130〜180℃、排気温度60〜120℃で噴霧乾燥し、エキス剤を得た。
得られたエキス剤7.2 gに対し、微粒二酸化ケイ素およびショ糖脂肪酸エステルからなる添加物1.8 gの比率で、合計量が50〜400 kgの範囲で配合し、容器回転型混合機を用いて回転数4 rpm、20分間混合し、乾式造粒装置を用いてロール圧490〜2500 Paで成型して整粒し、篩30号〜42号間にて粒子分級(カセットスクリーン)し、細粒剤Dを得た。
得られた細粒剤D 9.0 gには、エキス剤が7.2 g(Nチンピまたは橘皮20 gに相当する)含有されており、目安として細粒剤D 9.0 gを成人1日あたり2〜3回に分けて服用する。
【0092】
[製剤例5]茶剤
Nチンピまたは橘皮を850〜4750μm角に切断し、切断したNチンピまたは橘皮3〜7 gを紙または布の袋に入れて茶剤とした。
得られた茶剤を成人1日あたり3回(1袋/回)で浸出して服用する。
【0093】
[製剤例6]生薬末−細粒剤E
Nチンピまたは橘皮を粉砕機を用いて回転数2000〜3500 rpm、目開き0.5〜3.0 mmで粗砕し、さらに製粉機を用いて回転数5000〜8000 rpm、目開き150μmで粉砕し、生薬末とした。得られた生薬末10 gに対し、含水二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウムおよびトウモロコシデンプンからなる添加物9.2 gの比率で、合計量が50〜400 kgの範囲で配合し、容器回転型混合機を用いて回転数4 rpm、20分間混合し、乾式造粒装置を用いてロール圧490〜2500 Paで成型して整粒し、篩30号〜42号間にて粒子分級(カセットスクリーン)し、細粒剤Eを得た。
得られた細粒剤E 19.2 gには、Nチンピまたは橘皮10 gが含有されており、目安として細粒剤E 19.2〜38.4 gを成人1日あたり2〜3回に分けて服用する。
【0094】
[製剤例7]煎剤
Nチンピまたは橘皮10〜30 gを20倍量の水200〜600 mLで、100℃1時間煎じて水を半量にし、ろ過して煎剤とした。
得られた煎剤100〜300 mLには、Nチンピまたは橘皮10〜30 gが含有されており、目安として煎剤100〜300 mLを成人1日あたり3回に分けて服用する。
【0095】
[製剤例8]カプセル剤
Nチンピまたは橘皮50 kgを水500〜2000 Lにて、抽出缶を用いて60〜100℃、30〜180分間抽出した。遠心分離機を用いて回転数1000〜2500 rpmでろ過して固液分離した後、コイル回転型濃縮機を用いて8 kPa以下の減圧下で濃度約10〜40%まで濃縮した。濃縮液を、噴霧乾燥機を用いて回転数10000〜20000 rpm、給気温度130〜180℃、排気温度60〜120℃で噴霧乾燥し、エキス剤を得た。
得られたエキス剤10 gに対し、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム・ヒドロキシプロピルスターチ・結晶セルロース、トウモロコシデンプン、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウムおよびカルメロ−スカルシウムからなる添加物4.75 gの比率で、合計量が50〜400 kgの範囲で配合し、容器回転型混合機を用いて回転数4 rpm、20分間混合し、乾式造粒装置を用いてロール圧490〜2500 Paで成型して整粒し、篩30号〜42号間にて粒子分級(カセットスクリーン)し、細粒を得た。この細粒400 mgを当分野にて通常用いられる市販のカプセルに充填し、カプセル剤を得た。
得られたカプセル剤13個(470〜480 mg/個)には、エキス剤が3.6 g(Nチンピまたは橘皮10 gに相当する)含有されており、目安としてカプセル剤13〜26個を成人1日あたり2〜3回に分けて服用する。
【0096】
[製剤例9]コート錠剤
Nチンピまたは橘皮50 kgを水500〜2000 Lにて、抽出缶を用いて60〜100℃、30〜180分間抽出した。遠心分離機を用いて回転数1000〜2500 rpmでろ過して固液分離した後、コイル回転型濃縮機を用いて8 kPa以下の減圧下で濃度約10〜40%まで濃縮した。濃縮液を、噴霧乾燥機を用いて回転数10000〜20000 rpm、給気温度130〜180℃、排気温度60〜120℃で噴霧乾燥し、エキス剤を得た。
得られたエキス剤10 gに対し、マルトース、乳糖、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムおよびステアリン酸マグネシウムからなる添加物9.1 gの比率で、合計量が50〜400 kgの範囲で配合し、容器回転型混合機を用いて回転数4 rpm、20分間混合し、高速回転式打錠機を用いて回転数20〜55 rpm、一次圧縮0.6 mm以上、二次圧縮0.4 mm以上で打錠し、1錠350 mgの素錠を得た。ヒドロキシプロピルメチルセルロース、タルク、酸化チタンおよびカラメルからなるコーティング剤1.1 gを水/エタノール混液(3:7〜10:0)に溶解または懸濁し、コーティング機を用いて排気温40〜55℃、流量200〜400 mL/min、回転数4〜6 rpmで得られた素錠をコーティングし、微量のカルナウバロウとサラシミツロウを用いて回転数1 rpm、排気温20〜30℃で艶出しを行い、1錠370 mgのコート錠剤とした。
得られたコート錠剤20錠には、エキス剤が3.6 g(Nチンピまたは橘皮10 gに相当する)含有されており、目安としてコート錠剤20〜40錠を成人1日あたり2〜3回に分けて服用する。
【0097】
[製剤例10]顆粒剤
Nチンピまたは橘皮50 kgを水500〜2000 Lにて、抽出缶を用いて60〜100℃、30〜180分間抽出した。遠心分離機を用いて回転数1000〜2500 rpmでろ過して固液分離した後、コイル回転型濃縮機を用いて8 kPa以下の減圧下で濃度約10〜40%まで濃縮した。濃縮液を、噴霧乾燥機を用いて回転数10000〜20000 rpm、給気温度130〜180℃、排気温度60〜120℃で噴霧乾燥し、エキス剤を得た。
得られたエキス剤10 gに対し、カルメロースカルシウム、含水二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムおよびステアリン酸マグネシウムからなる添加物40 gの比率で、合計量が50〜400 kgの範囲で配合し、容器回転型混合機を用いて回転数4 rpm、20分間混合し、乾式造粒装置を用いてロール圧490〜2500 Paで成型して整粒し、篩12号〜42号間にて粒子分級(カセットスクリーン)し、顆粒剤を得た。
得られた顆粒剤18 gには、エキス剤が3.6 g(Nチンピまたは橘皮10 gに相当する)含有されており、目安として顆粒剤18〜36 gを成人1日あたり2〜3回に分けて服用する。
【0098】
[製剤例11]ゼリー剤
Nチンピまたは橘皮50 kgを水500〜2000 Lにて、抽出缶を用いて60〜100℃、30〜180分間抽出した。遠心分離機を用いて回転数1000〜2500 rpmでろ過して固液分離した後、コイル回転型濃縮機を用いて8 kPa以下の減圧下で濃度約10〜40%まで濃縮した。濃縮液を、噴霧乾燥機を用いて回転数10000〜20000 rpm、給気温度130〜180℃、排気温度60〜120℃で噴霧乾燥し、エキス剤を得た。
得られたエキス剤10 gに対し、カラギナン、ローカストビーンガム、還元麦芽糖液糖、キシリトール、アップル香料、レシチンおよびクエン酸からなる添加物40 gの比率で、合計量が10〜30 kgの範囲で配合し、混合攪拌機を用いて回転数50〜150 rpmで混合し、等量の80℃以上の温水を攪拌しながら加え、15℃以下に冷却してゼリー剤とした。
得られたゼリー剤18 gには、エキス剤が3.6 g(Nチンピまたは橘皮10 gに相当する)含有されており、目安としてゼリー剤18〜36 gを成人1日あたり2〜3回に分けて服用する。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の中枢神経変性疾患の改善および/または治療用組成物は、アルツハイマー病およびパーキンソン病などの中枢神経変性疾患を改善する、医薬品または食品として有用であり、該疾患の有望な根本治療薬の含有成分としても利用可能である。本発明の中枢神経変性疾患の改善および/または治療用組成物は特に、記憶の獲得、保持および想起能力の増強に有用である。
図1
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