【実施例】
【0060】
以下の実施例において、化合物S4、S3およびS2を抽出するための出発原料に用いたNチンピは小太郎漢方製薬株式会社から入手可能である。
【0061】
<製造例1>(Nチンピ抽出物の製造)
本発明で用いる出発原料のNチンピを以下のようにして製造した。
ノビレチンを高い割合(0.44重量%)で含有するCitrus reticulata Blanco(Rutaceae)の果皮を陰干し、日干しまたは加熱乾燥することによりNチンピを製造した。加熱乾燥は、歩留まり(乾燥後質量/乾燥前質量の割合)が陳皮について20〜50%となるまで行い、温度60℃にて2時間加熱乾燥した。こうして得られたNチンピを細切りしたもの約10gに純水400mLを加えて加熱した。混合物が沸騰した後、100℃にて1時間かけて抽出した。次いで、ガーゼ(2枚)を通してろ過し、ろ液を凍結乾燥してNチンピ抽出物を得た。Nチンピ抽出物の収量は3.5g、収率は35%であった。
【0062】
<実施例1>
製造例1のようにして得られたNチンピ抽出物を乾燥重量で81.11g用い、以下に示す手順で分離を行った。
Nチンピ抽出物81.11gをフラスコ中で30%アセトニトリル/70%精製水360mLに懸濁し、バリアンボンドエルートC18(10g)中に通液させた。30%アセトニトリル/70%精製水100mLをカラムに流し、溶出液を減圧濃縮するとFr.1が得られた(79.95g)。さらにメタノール50mLで溶出し、得られた溶出液を減圧で溶媒を留去するとFr.2が得られた(1.16g)。Fr.2(0.505g)について、40%アセトニトリル/60%精製水を溶離液としたODSカラムクロマトグラフィーを行い、さらにアセトン/ヘキサン(1:1)、ならびに酢酸エチル/ヘキサン(4:1)を溶離液としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーを繰り返し、ノビレチンを含む画分を合わせて高純度のノビレチンからなるFr.2−1が得られた(0.224g)。さらに、ノビレチンを含有しない画分は合わせてFr.2−2とした(0.314g)。
図1に、Nチンピ抽出物含有成分のカラムクロマトグラフィー等の分離操作を示した。
この様にして、Fr.1(79.95g)、ならびに、Fr.2−1(0.224g)およびFr.2−2(0.314g)を得た。Fr.2−1は、以下の分析の項で説明する様に、ノビレチン(Nb)と同定された。
Fr.2−2(非ノビレチン画分)については、薄層クロマトグラフィーでの分析の結果、複数の成分を含有することが判ったので、以下の実施例2に示す手順で更にカラムクロマトグラフィーによる分離を進めた。
【0063】
<実施例2>(Fr.2−2のカラムクロマトグラフィーによる分離)
Fr.2−2(200mg)をODSカラムクロマトグラフィーに付し、40%アセトニトリル/60%精製水を溶出溶媒として分画した。さらに60%メタノール/40%精製水を溶出溶媒としたODSカラムクロマトグラフィーにより精製、再結晶して、S1(20mg)、S2(11mg)、S3(12mg)およびS4(14mg)を得た。
S4、S3、S2およびS1はそれぞれ、以下の分析の項で説明する様に、シネンセチン(S4)、デメトキシタンゲレチン(S3)、デメトキシノビレチン(S2)およびタンゲレチン(S1)であると同定された。
【0064】
実施例1および2で得られた結果を
図2に示す。
【0065】
<分析例>
実施例1および2で得られた各分画成分を、IR、UV、
1H−NMR、
13C−NMRおよびESI−MSによって分析することにより、それらの構造を決定した。得られた結果を以下に示す。
【0066】
<NチンピエキスのFr.2−1の分析結果>
Fr.2−1は、以下のデータ及び市販標準品とのTLCおよびHPLCによる比較により、ノビレチンと同定された。
無色針状晶;UV:λ
max(MeOH)nm(logε):248(4.23)、269(4.19)、331(4.35);Positive−ion ESI−MS m/z 403([M+H]
+)。
【0067】
<NチンピエキスのFr.2−2から単離した化合物S1〜S4の分析結果>
[S1]:以下のデータにより、タンゲレチン(S1)と同定された。
無色針状晶;mp 150−151℃;IR
max(KBr)cm
−1:1650、1608、1514、1465、1408、1364、1266、1182、1110、1074、1019、970、830;UV:λ
max(MeOH)nm(logε):323(4.46)、270(4.31);Positive−ion ESI−MS m/z 373([M+H]
+)。
【0068】
[S2]:以下のデータにより、6−デメトキシノビレチン(S2)と同定された。
無色針状晶;mp 199−200℃;IR λ
max(KBr)cm
−1:1640、1601、1514、1427、1327、1259、1234、1124、1048、1021、843;UV λ
max(MeOH)nm(logε):338(4.31)、269(4.29)、248(4.27);
1H NMR(CDCl
3):δ7.57(1H、dd、J=10.7、2.8Hz)、7.40(1H、d、J=2.8Hz)、6.97(1H、d、J=10.7Hz)、6.60(1H、s)、6.42(1H、s)、3.99(3H、s)、3.97(3H、s)、3.95(3H、s)、3.94(3H×2、s);
13C NMR(CDCl
3):δ 177.8、160.5、156.4、156.3、151.9、151.7、149.2、130.7、124.0、119.5、111.1、108.9、108.5、107.1、92.4、61.5、56.5、56.3、56.0、55.9;Positive−ion ESI−MS m/z 373([M+H]
+)。
【0069】
[S3]以下のデータにより、6−デメトキシタンゲレチン(S3)と同定された。
無色針状晶;mp 213−214℃;IR λ
max(KBr)cm
−1:1638、1598、1510、1342、1249、1211、1184、1112、1048、841、802;UV λ
max(MeOH)nm(logε);310(4.29)、269(4.37);
1H NMR(CDCl
3):δ 7.86(2H、d、J=11.3Hz)、7.00(2H、d、J=11.3Hz)、6.58(1H、s)、6.41(1H、s)、3.98(3H、s)、3.96(3H、s)、3.93(3H、s)、3.86(3H、s);
13C NMR(CDCl
3):δ 177.8、162.1、160.6、156.4、156.2、151.9、130.7、127.6、123.8、114.4、109.0、106.9、92.5、61.5、56.6、56.2、55.4;Positive−ion ESI−MS m/z 343([M+H]
+)。
【0070】
[S4]以下のデータにより、シネンセチン(S4)と同定された。
無色針状晶;mp 175−176℃;IR λ
max(KBr)cm
−1 1636、1601、1516、1421、1326、1253、1121、1022、843;UV λ
max(MeOH)nm(logε):329(4.39)、239(4.30);
1H NMR(CDCl
3):δ 7.50(1H、dd、J=10.7、2.5Hz)、7.31(1H、d、J=2.5Hz)、6.95(1H、d、J=10.7Hz)、6.78(1H、s)、6.59(1H、s)、3.98(3H、s)、3.97(3H、s)、3.96(3H、s)、3.94(3H、s)、3.90(3H、s);
13C NMR(CDCl
3):δ 177.2、161.1、157.7、154.5、152.6、151.8、149.3、140.4、124.1、119.6、112.9、111.1、108.7、107.4、96.2、62.2、61.5、56.3、56.1、56.0;Positive−ion ESI−MS m/z 373([M+H]
+)。
【0071】
<薬理活性試験例>
上記実施例で得られた化合物S1〜S4、ノビレチン(Nb)およびポリメトキシフラボノイド類画分(Fr.2、Fr.2−1、Fr.2−2)について以下のインビトロおよびインビボ試験を行った。
【0072】
[一般的試験手順1]
以下の試験例1および2で用いた一般的試験手順は以下のとおりである。
(ラット胎仔初代海馬神経細胞の培養)
妊娠Sprague−Dawley(SD)ラットを12時間周期の明暗サイクルにて給餌・給水して飼育した。妊娠18日目のラット(E18)からイソフルラン深麻酔下にて腹部正中切開により無菌的に子宮を摘出した。実体顕微鏡下、氷冷リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中にて胎仔の海馬を摘出し、神経細胞分散液(住友ベークライト)で組織を分散させ、1000rpmにて4分間遠心分離した後、上清を除去した。次いで、細胞ペレットを分散液(住友ベークライト)中にて分散させ、さらにピペッティングにより十分分散させた細胞に除去液(住友ベークライト)を加えて900rpmにて5分間遠心分離した後、上清を除去した。
次に、ペレットをNeurobasal Medium(Neurobasal Medium 500mL/フェノール・レッド不含、50倍B27 Supplement 10mL、0.5mM L−グルタミン、0.005%ペニシリン−ストレプトマイシン)を用いて懸濁し、ポリ−L−リジンでコーティングした皿またはプレートに播種した。培養1日後に培地交換し、その後3〜4日おきに培地を半量交換し、10μM Ara−Cを含有する培地中37℃にて5%CO
2インキュベーター内で14日間培養した。
なお、薬物処置実験用試験培地は、Ara−C不含のNeurobasal Mediumを用いた。
【0073】
(CRE依存的転写活性の測定)
ラット海馬神経細胞を初代培養した後、レポータージーンアッセイを行った。海馬神経細胞を48ウェルプレートに8×10
4細胞/ウェルで播種し、Neurobasal Mediumで10〜14日間培養した。レポータープラスミド(0.1μg/ウェル)、ウミシイタケphRG−TKプラスミド(0.01μg/ウェル)をリポフェクション法にてトランスフェクトし、16時間培養。Ara−C無添加のNeurobasal Medium(B−27 Supplement、L−グルタミン、ペニシリン−ストレプトマイシンを含む)で希釈し、被検体を8時間処置した。
転写活性の測定はPromega社製のDual−Luciferase(登録商標)Reporter Assay Systemを用いて行った。海馬神経細胞をPassive Lysis Buffer(Promega)で可溶化後、Luciferase Assay Regent II(Promega)およびStop&Glo(登録商標)Reagent(Promega)を混和し、ルミノメーターで蛍光値を測定した。
【0074】
(統計学的解析1)
実験結果はone−way ANOVA(Tukey)を用いて評価した。有意水準を両側5%として検定し、p<0.05を有意とした。
【0075】
[試験例1](海馬神経細胞における本発明に係る化合物(S4、S3、S2)および比較化合物(NbおよびS1)のCRE依存的転写活性(インビトロ試験))
本試験例において、本発明に係る化合物(S4、S3、S2)のCRE依存的転写活性を比較化合物(NbおよびS1)のCRE依存的転写活性と比較した。
【0076】
上記試験手順1に記載のように、30μMの濃度の本発明に係る化合物(S4、S3、S2)および同一濃度の比較化合物(NbおよびS1)で処置した。
得られた結果を
図3に示した。図中、全ての組み合わせでOne−way ANOVA(post Tukey)検定。値は平均値±標準誤差;検体数 n=4;* p<0.05、** p<0.01、*** p<0.001は対照(生理食塩水)との有意差(検定結果);§§ p<0.01はNbとの有意差を、それぞれ示す。
(考察1)
図3に示されるように、シネンセチン(S4)は、ノビレチン(Nb)のCRE依存的転写活性を大きく超えるCRE依存的転写活性を示した。また、6―デメトキシタンゲレチン(S3)および6−デメトキシノビレチン(S2)も、ノビレチン(Nb)およびタンゲレチン(S1)と比べて、同等のCRE依存的転写活性を示した。
これらの結果は、本発明に係るシネンセチン(S4)、6−デメトキシタンゲレチン(S3)および6−デメトキシノビレチン(S2)は、記憶形成機能の増大作用を有することが示され、当該作用を通してアルツハイマー病の治療につながり得ることを示唆している。
【0077】
[試験例2](海馬神経細胞における本発明に係るシネンセチン(S4)および比較化合物ノビレチン(Nb)のCRE依存的転写活性の濃度依存性(インビトロ試験))
本試験例において、本発明に係るシネンセチン(S4)および比較化合物ノビレチン(Nb)のCRE依存的転写活性の濃度依存性を比較した。
上記試験手順1に記載のように、S4の薬効の濃度依存性を確認するため、1〜30μMの濃度のS4および比較化合物Nbを用いた。
得られた結果を
図4に示した。図中、全ての組み合わせでOne−way ANOVA(post Tukey)検定。値は平均値±標準誤差;検体数 n=4;** p<0.01、*** p<0.001は対照(生理食塩水)との有意差(検定結果)を示す。
【0078】
(考察2)
図4に示されるように、シネンセチン(S4)に極めて強力なCRE依存的転写活性の促進作用を認めた。すなわち、ノビレチン(Nb)は30μMで最大活性を示すが、その30分の1の濃度、つまり1μMでシネンセチン(S4)は同等の活性を示し、またその最大活性はノビレチン(Nb)のそれの2倍強であった。この様に、本発明に係るシネンセチン(S4)には、従来のノビレチン(Nb)よりもはるかに強いCRE依存的転写活性が認められ、ノビレチン(Nb)を凌駕していた。それ故に、ノビレチン(Nb)より低用量で効果を発揮できるシネンセチン(S4)は、安全性が高く、ノビレチン(Nb)を凌駕する学習・記憶障害改善作用を示し、より効果的にアルツハイマー病の認識機能障害を改善することが示唆された。
【0079】
[試験例3](海馬神経細胞におけるNチンピ由来画分のCRE依存的転写活性(インビトロ試験))
本試験例において、本発明に係るNチンピ由来画分のCRE依存的転写活性を比較化合物(NbおよびS1)のCRE依存的転写活性と比較した。
上記試験手順1に記載のように、実施例1で得られたポリメトキシフラボノイド画分(Fr.2)、ノビレチン画分(Fr.2−1)、非ノビレチン画分(Fr.2−2)、Fr.2−1およびFr.2−2で再構成した混合画分(Fr.2−1+Fr.2−2)および再構成したメトキシフラボノイド類(REC;シネンセチン 0.222μg/mL+6−デメトキシタンゲレチン 0.135μg/mL+6−デメトキシノビレチン 0.177mg/mL+タンゲレチン 0.585mg/mL+ノビレチン 1.89μg/mL(5.0μM))のCRE依存的転写活性について試験した。
得られた結果を
図5に示した。試料濃度は、Fr.2について4.29μg/mL、Fr.2−1について1.89μg/mL、Fr.2−2について2.67μg/mL、Fr.2−1+Fr.2−2について4.56μg/mL、RECについて3.009μg/mLとし、Nチンピ中の画分量に比した検体量とした。図中、全ての組み合わせでOne−way ANOVA(post Tukey)検定。値は平均値±標準誤差;検体数 n=4;** p<0.01、*** p<0.001は対照(生理食塩水)との有意差(検定結果)を示す。
また、ノビレチン濃度30μMに相当する12μg/mLを基準として、Fr.2、Fr.2−1およびFr.2−2を12μg/mLの試料濃度としたデータを
図6に示す。図中、全ての組み合わせでOne−way ANOVA(post Tukey)検定。値は平均値±標準誤差;検体数 n=4;** p<0.01、*** p<0.001は対照(生理食塩水)との有意差(検定結果)を示す。
【0080】
(考察3)
図5に示されるように、海馬神経細胞における短期記憶から長期記憶への変換に係るCRE依存的転写活性において、ノビレチンを5μMしか含まない再構成した混合画分(Fr.2−1+Fr.2−2)と再構成したポリメトキシフラボノイド類(REC)のサンプルで、ノビレチン画分(Fr.2−1)より強い活性が確認された。また、これら2種の再構成サンプルは同等の活性であり、シネンセチンに6−デメトキシタンゲレチンや6−デメトキシノビレチンが加味されることで、CRE依存的転写活性の増大に働き、認知症などの中枢神経変性疾患の改善および/または治療において優れた効果を示している。
図6に示されるように、非ノビレチン画分であるFr.2−2は、ノビレチンを含まないにもかかわらず、同濃度でノビレチンよりも活性が高いことが確認され、
図3で示されたシネンセチン等の効果が再確認された。
また、試験例1で得られた結果を考慮すれば、再構成したメトキシフラボノイド類(REC)のCRE依存的転写活性が意味することは、6−デメトキシタンゲレチン(S3)および6−デメトキシノビレチン(S2)は、シネンセチン(S4)およびタンゲレチン(S1)との協働作用によりRECのCRE依存的転写活性の発現、さらにはFr.2の活性発現に貢献するというユニークな活性を示す点であるということもできる。
【0081】
[試験例4](本発明に係るシネンセチン(S4)の学習・記憶障害改善作用(インビボ試験))
本試験例のインビボ試験において、MK801誘発性記憶障害モデルマウスを用いて、行動薬理学的に学習・記憶障害に対する本発明のシネンセチン(S4)の薬効を検討した。
具体的には、MK801誘発性学習・記憶障害に対するシネンセチンの慢性投与による作用を検討した。マウスを3群に分け、シネンセチン25mg/kgを1群に、残り2群に生理食塩水を7日間連続的に経口投与した。7日目にこれらを投与した90分後にグルタミン酸受容体サブタイプの一つであるMK801(80μg/kg)を2群に、生理食塩水を対照群に腹腔内投与した。その30分後に恐怖条件付け学習(記憶の獲得)試験を行った。
恐怖付け学習試験において、マウスを透明なボックスに入れ、2分間自由に探索させた後、0.7 mA、2 sの電気刺激を与えた(ショック事象)。これを3回繰り返して学習試行を行い、記憶の獲得および記銘能力を評価した(すなわち、通電後1分間の停止状態(Freezing%))。
得られた結果を
図7に示す。図中、縦軸はすくみ行動(%)を示し、横軸はショック事象(回数)を示す。「control」は生理食塩水のみを投与された群を意味し、「MK801」は生理食塩水およびMK801(80μg/kg)を投与された群を意味し、「S25+MK801」はシネンセチン(25mg/kg)およびMK801(80μg/kg)を投与された群を意味する。また、全ての組み合わせでOne−way ANOVA(post Tukey)検定。*** p<0.001、**** p<0.0001は対照(生理食塩水)との有意差(検定結果)、§§ p<0.01、§§§ p<0.001は「MK801」との有意差を示す。
【0082】
学習(記憶の獲得)試行の24時間後に、マウスを再び透明なボックスに入れ、マウスのすくみ行動、すなわち呼吸以外のすべての動作が停止した状態を指標とした確認(記憶の保持および想起)試行を行い、学習・記憶行動として5分間の測定により記憶の保持、想起能力および追想能力を評価した(すなわち、通電後5分間の停止状態(Freezing%))。
得られた結果を
図8に示す。図中、縦軸はすくみ行動(%)を示す。全ての組み合わせでOne−way ANOVA(post Tukey)検定。**** p<0.0001は対照(生理食塩水)との有意差(検定結果)、§§§ p<0.001は「MK801」との有意差を示す。
【0083】
(考察4)
図7および
図8に示されるように、MK801の処置により、学習および記憶の結果として認められるすくみ行動が有意に減少したが、シネンセチンの投与により学習試行および確認試行のいずれの場合もその減少について改善効果が認められた。特に学習試行では、本発明のシネンセチンを投与したマウスは、MK801の処置を受けたことにより学習・記憶機能が阻害されて忘却しやすくなっているにもかかわらず、すくみ行動の減少が有意に軽減された。
【0084】
[試験例5](Fr.2による学習・記憶障害改善作用(インビボ試験))
上記試験例4にて、シネンセチンに代えて、Fr.2(92.8mg/kg)の経口投与による作用を検討した。得られた学習試行の結果を
図9に示す。図中、*** p<0.001は対照(生理食塩水)との有意差(検定結果)、## p<0.01は「MK801」との有意差を示す。
また、得られた確認試行の結果を
図10に示す。図中、*** p<0.001は対照との有意差(検定結果)、## p<0.001は「MK801」との有意差を示す。
【0085】
(考察5)
図9に示されるように、学習(記憶の獲得)試行において、メトキシフラボノイド類を主とするFr.2がMK801の処置によるすくみ行動の減少を対照に近い状態まで強く改善する効果が認められた。
図10に示されるように、確認(記憶の保持および想起)試行においても、MK801による記憶障害を優位に改善することが確認された。
【0086】
[比較例1](ノビレチンによる学習・記憶障害改善作用(インビボ試験))
上記試験例4にて、シネンセチンに代えて、ノビレチン(50mg/kg)の腹腔内投与による作用を検討した。結果を
図11および
図12に示す。
【0087】
図11に示されるように、学習試行において、MK801の処置によるすくみ行動の減少は、ノビレチンを腹腔内投与しても改善しなかった。
図12に示されるように、確認試行では、ノビレチン投与の効果が認められた。
すなわち、ノビレチン(腹腔内投与)は、記憶の保持および想起の障害の改善効果を有するのみであることが確認された。
【0088】
<製剤例>(本発明の組成物の製造)
本発明の組成物を以下のとおり製造した。
[製剤例1]細粒剤A
Nチンピ3.0 g、当帰3.0 g、釣藤鈎3.0 g、川キュウ3.0 g、白朮4.0 g、茯苓4.0 g、柴胡2.0 g、甘草1.5 gおよび半夏5.0 g(合計28.5 g)の比率で、合計量が200〜800 kgになるよう生薬を配合し、水2000〜8000 Lにて、抽出缶を用いて60〜100℃、30〜180分間抽出した。得られた抽出物を遠心分離機を用いて回転数1000〜5000 rpmでろ過して固液分離した後、コイル回転型濃縮機を用いて8 kPa以下の減圧下で濃度約10〜40%まで濃縮した。濃縮液を、噴霧乾燥機を用いて回転数10000〜20000 rpm、給気温度130〜180℃、排気温度60〜120℃で噴霧乾燥し、エキス剤(抑肝散加陳皮半夏エキス)を得た。
得られた抑肝散加陳皮半夏エキス6.1 gに対し、ステアリン酸マグネシウム、トウモロコシデンプン、乳糖、プルランおよびメタケイ酸アルミン酸マグネシウムからなる添加物2.9 gの比率で、合計量が50〜400 kgの範囲で配合し、容器回転型混合機を用いて4 rpm、20分間混合し、乾式造粒装置を用いてロール圧490〜2500 Paで成型して整粒し、篩30号〜50号間にて粒子分級(カセットスクリーン)し、細粒剤Aを得た。
得られた細粒剤A 9.0 gには、Nチンピ3.0 gと他の生薬とを配合した抑肝散加陳皮半夏エキスが6.1 g含有されており、目安として細粒剤A 9.0 gを成人1日あたり2〜3回に分けて服用する。
【0089】
[製剤例2]細粒剤B
橘皮3.0 g、檳榔子4.0 g、厚朴3.0 g、桂皮3.0 g、蘇葉1.5 g、甘草1.0 g、大黄1.0 g、生姜1.0 g、木香1.0 g、呉茱萸1.0 gおよび茯苓3.0 g(合計22.5 g)の比率で、合計量が200〜800 kgになるよう生薬を配合し、水2000〜8000 Lにて、抽出缶を用いて60〜100℃、30〜180分間抽出した。遠心分離機を用いて回転数1000〜5000 rpmでろ過して固液分離した後、コイル回転型濃縮機を用いて8 kPa以下の減圧下で濃度約10〜40%まで濃縮した。濃縮液を、噴霧乾燥機を用いて回転数10000〜20000 rpm、給気温度130〜180℃、排気温度60〜120℃で噴霧乾燥し、エキス剤(九味檳榔湯エキス)を得た。
得られた九味檳榔湯エキス3.7 gに対し、ステアリン酸マグネシウム、トウモロコシデンプン、乳糖、プルランおよびメタケイ酸アルミン酸マグネシウムからなる添加物2.3 gの比率で、合計量が50〜400 kgの範囲で配合し、容器回転型混合機を用いて4 rpm、20分間混合し、乾式造粒装置を用いてロール圧490〜2500 Paで成型して整粒し、篩30号〜50号間にて粒子分級(カセットスクリーン)し、細粒剤Bを得た。
得られた細粒剤B 6.0 gには、橘皮3.0 gと他の生薬とを配合した九味檳榔湯エキスが3.7 g含有されており、目安として細粒剤B 6.0 gを成人1日あたり2〜3回に分けて服用する。
【0090】
[製剤例3]細粒剤C
Nチンピ2.4 g、釣藤鈎2.4 g、半夏2.4 g、麦門冬2.4 g、茯苓2.4 g、人参1.6 g、防風1.6 g、菊花1.6 g、甘草0.8 g、生姜0.8 gおよび石膏4.0 g(合計22.4 g)の比率で、合計量が200〜800 kgになるよう生薬を配合し、水2000〜8000 Lにて、抽出缶を用いて60〜100℃、30〜180分間抽出した。遠心分離機を用いて回転数1000〜5000 rpmでろ過して固液分離した後、コイル回転型濃縮機を用いて8 kPa以下の減圧下で濃度約10〜40%まで濃縮した。濃縮液を、噴霧乾燥機を用いて回転数10000〜20000 rpm、給気温度130〜180℃、排気温度60〜120℃で噴霧乾燥し、エキス剤(釣藤散エキス)を得た。
得られた釣藤散エキス4.48 gに対し、含水二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウムおよびトウモロコシデンプンからなる添加物1.52 gの比率で、合計量が50〜400 kgの範囲で配合し、容器回転型混合機を用いて4 rpm、20分間混合し、乾式造粒装置を用いてロール圧490〜2500 Paで成型して整粒し、篩30号〜50号間にて粒子分級(カセットスクリーン)し、細粒剤Cを得た。
得られた細粒剤C 6.0 gには、Nチンピ2.4 gと他の生薬とを配合した釣藤散エキスが4.48 g含有されており、目安として細粒剤C 6.0 gを成人1日あたり3回に分けて服用する。
【0091】
[製剤例4]細粒剤D
Nチンピまたは橘皮50 kgを水500〜2000 Lにて、抽出缶を用いて60〜100℃、30〜180分間抽出した。遠心分離機を用いて回転数1000〜2500 rpmでろ過して固液分離した後、コイル回転型濃縮機を用いて8 kPa以下の減圧下で濃度約10〜40%まで濃縮した。濃縮液を、噴霧乾燥機を用いて回転数10000〜20000 rpm、給気温度130〜180℃、排気温度60〜120℃で噴霧乾燥し、エキス剤を得た。
得られたエキス剤7.2 gに対し、微粒二酸化ケイ素およびショ糖脂肪酸エステルからなる添加物1.8 gの比率で、合計量が50〜400 kgの範囲で配合し、容器回転型混合機を用いて回転数4 rpm、20分間混合し、乾式造粒装置を用いてロール圧490〜2500 Paで成型して整粒し、篩30号〜42号間にて粒子分級(カセットスクリーン)し、細粒剤Dを得た。
得られた細粒剤D 9.0 gには、エキス剤が7.2 g(Nチンピまたは橘皮20 gに相当する)含有されており、目安として細粒剤D 9.0 gを成人1日あたり2〜3回に分けて服用する。
【0092】
[製剤例5]茶剤
Nチンピまたは橘皮を850〜4750μm角に切断し、切断したNチンピまたは橘皮3〜7 gを紙または布の袋に入れて茶剤とした。
得られた茶剤を成人1日あたり3回(1袋/回)で浸出して服用する。
【0093】
[製剤例6]生薬末−細粒剤E
Nチンピまたは橘皮を粉砕機を用いて回転数2000〜3500 rpm、目開き0.5〜3.0 mmで粗砕し、さらに製粉機を用いて回転数5000〜8000 rpm、目開き150μmで粉砕し、生薬末とした。得られた生薬末10 gに対し、含水二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウムおよびトウモロコシデンプンからなる添加物9.2 gの比率で、合計量が50〜400 kgの範囲で配合し、容器回転型混合機を用いて回転数4 rpm、20分間混合し、乾式造粒装置を用いてロール圧490〜2500 Paで成型して整粒し、篩30号〜42号間にて粒子分級(カセットスクリーン)し、細粒剤Eを得た。
得られた細粒剤E 19.2 gには、Nチンピまたは橘皮10 gが含有されており、目安として細粒剤E 19.2〜38.4 gを成人1日あたり2〜3回に分けて服用する。
【0094】
[製剤例7]煎剤
Nチンピまたは橘皮10〜30 gを20倍量の水200〜600 mLで、100℃1時間煎じて水を半量にし、ろ過して煎剤とした。
得られた煎剤100〜300 mLには、Nチンピまたは橘皮10〜30 gが含有されており、目安として煎剤100〜300 mLを成人1日あたり3回に分けて服用する。
【0095】
[製剤例8]カプセル剤
Nチンピまたは橘皮50 kgを水500〜2000 Lにて、抽出缶を用いて60〜100℃、30〜180分間抽出した。遠心分離機を用いて回転数1000〜2500 rpmでろ過して固液分離した後、コイル回転型濃縮機を用いて8 kPa以下の減圧下で濃度約10〜40%まで濃縮した。濃縮液を、噴霧乾燥機を用いて回転数10000〜20000 rpm、給気温度130〜180℃、排気温度60〜120℃で噴霧乾燥し、エキス剤を得た。
得られたエキス剤10 gに対し、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム・ヒドロキシプロピルスターチ・結晶セルロース、トウモロコシデンプン、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウムおよびカルメロ−スカルシウムからなる添加物4.75 gの比率で、合計量が50〜400 kgの範囲で配合し、容器回転型混合機を用いて回転数4 rpm、20分間混合し、乾式造粒装置を用いてロール圧490〜2500 Paで成型して整粒し、篩30号〜42号間にて粒子分級(カセットスクリーン)し、細粒を得た。この細粒400 mgを当分野にて通常用いられる市販のカプセルに充填し、カプセル剤を得た。
得られたカプセル剤13個(470〜480 mg/個)には、エキス剤が3.6 g(Nチンピまたは橘皮10 gに相当する)含有されており、目安としてカプセル剤13〜26個を成人1日あたり2〜3回に分けて服用する。
【0096】
[製剤例9]コート錠剤
Nチンピまたは橘皮50 kgを水500〜2000 Lにて、抽出缶を用いて60〜100℃、30〜180分間抽出した。遠心分離機を用いて回転数1000〜2500 rpmでろ過して固液分離した後、コイル回転型濃縮機を用いて8 kPa以下の減圧下で濃度約10〜40%まで濃縮した。濃縮液を、噴霧乾燥機を用いて回転数10000〜20000 rpm、給気温度130〜180℃、排気温度60〜120℃で噴霧乾燥し、エキス剤を得た。
得られたエキス剤10 gに対し、マルトース、乳糖、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムおよびステアリン酸マグネシウムからなる添加物9.1 gの比率で、合計量が50〜400 kgの範囲で配合し、容器回転型混合機を用いて回転数4 rpm、20分間混合し、高速回転式打錠機を用いて回転数20〜55 rpm、一次圧縮0.6 mm以上、二次圧縮0.4 mm以上で打錠し、1錠350 mgの素錠を得た。ヒドロキシプロピルメチルセルロース、タルク、酸化チタンおよびカラメルからなるコーティング剤1.1 gを水/エタノール混液(3:7〜10:0)に溶解または懸濁し、コーティング機を用いて排気温40〜55℃、流量200〜400 mL/min、回転数4〜6 rpmで得られた素錠をコーティングし、微量のカルナウバロウとサラシミツロウを用いて回転数1 rpm、排気温20〜30℃で艶出しを行い、1錠370 mgのコート錠剤とした。
得られたコート錠剤20錠には、エキス剤が3.6 g(Nチンピまたは橘皮10 gに相当する)含有されており、目安としてコート錠剤20〜40錠を成人1日あたり2〜3回に分けて服用する。
【0097】
[製剤例10]顆粒剤
Nチンピまたは橘皮50 kgを水500〜2000 Lにて、抽出缶を用いて60〜100℃、30〜180分間抽出した。遠心分離機を用いて回転数1000〜2500 rpmでろ過して固液分離した後、コイル回転型濃縮機を用いて8 kPa以下の減圧下で濃度約10〜40%まで濃縮した。濃縮液を、噴霧乾燥機を用いて回転数10000〜20000 rpm、給気温度130〜180℃、排気温度60〜120℃で噴霧乾燥し、エキス剤を得た。
得られたエキス剤10 gに対し、カルメロースカルシウム、含水二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムおよびステアリン酸マグネシウムからなる添加物40 gの比率で、合計量が50〜400 kgの範囲で配合し、容器回転型混合機を用いて回転数4 rpm、20分間混合し、乾式造粒装置を用いてロール圧490〜2500 Paで成型して整粒し、篩12号〜42号間にて粒子分級(カセットスクリーン)し、顆粒剤を得た。
得られた顆粒剤18 gには、エキス剤が3.6 g(Nチンピまたは橘皮10 gに相当する)含有されており、目安として顆粒剤18〜36 gを成人1日あたり2〜3回に分けて服用する。
【0098】
[製剤例11]ゼリー剤
Nチンピまたは橘皮50 kgを水500〜2000 Lにて、抽出缶を用いて60〜100℃、30〜180分間抽出した。遠心分離機を用いて回転数1000〜2500 rpmでろ過して固液分離した後、コイル回転型濃縮機を用いて8 kPa以下の減圧下で濃度約10〜40%まで濃縮した。濃縮液を、噴霧乾燥機を用いて回転数10000〜20000 rpm、給気温度130〜180℃、排気温度60〜120℃で噴霧乾燥し、エキス剤を得た。
得られたエキス剤10 gに対し、カラギナン、ローカストビーンガム、還元麦芽糖液糖、キシリトール、アップル香料、レシチンおよびクエン酸からなる添加物40 gの比率で、合計量が10〜30 kgの範囲で配合し、混合攪拌機を用いて回転数50〜150 rpmで混合し、等量の80℃以上の温水を攪拌しながら加え、15℃以下に冷却してゼリー剤とした。
得られたゼリー剤18 gには、エキス剤が3.6 g(Nチンピまたは橘皮10 gに相当する)含有されており、目安としてゼリー剤18〜36 gを成人1日あたり2〜3回に分けて服用する。