特許第6033872号(P6033872)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6033872
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】部品内蔵基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20161121BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   H05K3/46 Z
   H05K1/02 R
   H05K3/46 Q
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-535251(P2014-535251)
(86)(22)【出願日】2012年9月11日
(86)【国際出願番号】JP2012073204
(87)【国際公開番号】WO2014041601
(87)【国際公開日】20140320
【審査請求日】2015年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000243906
【氏名又は名称】株式会社メイコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】八巻 晃
(72)【発明者】
【氏名】菊池 竜也
(72)【発明者】
【氏名】戸田 光昭
【審査官】 原田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−027917(JP,A)
【文献】 特表2012−507154(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/101723(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に配線パターンを有する絶縁基板内に、前記配線パターンと電気的に接続された端子を有する電気又は電子的な部品が内蔵されている部品内蔵基板の製造方法であって、
支持板上に前記配線パターンとなるべき銅層を形成し、この銅層の前記支持板に接する第1面とは反対側の第2面にマークを形成するマーク形成工程と、
前記マークを基準にして前記部品を位置決めし、絶縁性の接着層を介在させて前記銅層の第2面上に前記部品を搭載する部品搭載工程と、
前記部品を搭載した前記銅層の第2面上に、前記部品及び前記マークを埋設させる前記絶縁基板としての埋設層を形成する埋設層形成工程と、
前記銅層から前記支持板を剥離させた後、この剥離により露出した前記銅層の第1面側から前記銅層の一部を銅のエッチングに用いられる銅エッチング剤によりエッチング除去し、前記マークにおける前記銅層の第2面に接していた基端面の全体とともに前記埋設層を部分的に露出させるウィンドウを形成するウィンドウ形成工程と、
前記ウィンドウから露出した前記マークを基準にして前記部品の端子の位置を特定し、前記端子まで到達するビアホールを形成した後、前記ビアホールに導電性材料を充填し、前記端子と前記銅層とを電気的に接続する導通ビアを形成する導通ビア形成工程と、
前記導通ビアを介して前記端子と電気的に接続された前記銅層を前記配線パターンに形成するパターン形成工程とを備えており、
前記マーク形成工程は、前記銅エッチング剤に対して、銅よりもエッチングされ難いエッチング耐性を有しているエッチング耐性材料を用いて前記マークを形成することを特徴とする部品内蔵基板の製造方法。
【請求項2】
前記部品搭載工程の前に、前記銅層の第2面に対し前記銅エッチング剤を用いて粗面化処理を施す粗面化工程を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載の部品内蔵基板の製造方法。
【請求項3】
前記マーク形成工程は、前記エッチング耐性材料としてのニッケルのめっき層からなる前記マークを無電解めっき法及び電解めっき法のうちの少なくとも一方により形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の部品内蔵基板の製造方法。
【請求項4】
前記ニッケルのめっき層の上に、無電解めっき法及び電解めっき法のうちの少なくとも一方により、前記エッチング耐性材料としての金のめっき層を更に設け、前記マークをニッケル−金めっき層により形成することを特徴とする請求項3に記載の部品内蔵基板の製造方法。
【請求項5】
前記マーク形成工程は、前記エッチング耐性材料としての銀のめっき層からなる前記マークを無電解めっき法及び電解めっき法のうちの少なくとも一方により形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の部品内蔵基板の製造方法。
【請求項6】
前記マーク形成工程は、前記エッチング耐性材料としての銀ペーストを前記銅層上に供給することにより前記マークを形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の部品内蔵基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気又は電子的な部品を基板内に埋め込んだ部品内蔵基板の製造方法及びこの方法を用いて製造した部品内蔵基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子回路基板の高密度化、高機能化に伴い、電子部品を絶縁層である絶縁基板内に埋め込んだ構造の部品内蔵基板が注目されている(例えば、特許文献1参照)。このような部品内蔵基板は、その絶縁基板の表面に配線パターンが形成されており、この配線パターンの所定位置に他の各種電子部品が表面実装されてモジュール基板として使用することができ、また、ビルドアップ法で部品内蔵多層回路基板を製造するときのコア基板として使用することもできる。
【0003】
このような部品内蔵基板においては、絶縁基板の表面の配線パターンと、絶縁基板内の電子部品の端子とを電気的に接続する接続部を設ける必要がある。ここで、従来の部品内蔵基板の製造方法としては、まず、支持板上に配線パターンとなるべき銅層が形成され、この銅層上の所定位置に半田ペーストにより接続部が形成される。そして、この接続部上に端子が位置付けられるように電子部品が配設される。次いで、絶縁基板となる絶縁材料により、接続部及び電子部品が埋設され、電子部品を内蔵した中間製品が得られる。その後、この中間製品から支持板が剥離され、露出した銅層が所定形状の配線パターンに形成されることにより部品内蔵基板が得られる。
【0004】
ところで、部品内蔵基板は、その表面に他の各種電子部品を表面実装する際にリフロー半田付けが行われるため、その度に半田の溶融温度以上の高温に晒される。このため、配線パターンと電子部品の端子部との間の接続部の信頼性が低下する虞がある。
【0005】
そこで、部品内蔵基板においては、配線パターンと電子部品の端子部との間の接続部の熱的な信頼性の向上を図るべく、かかる接続部を形成する材料として、半田に比べて融点が高く、リフロー半田付けの際の熱の影響を受け難い銅を用いることが考えられる。この銅を用いた接続部は、例えば、電子部品を絶縁基板内に埋設した後、基板表面の配線パターンから基板内の電子部品の端子にまで至る接続孔を設け、この接続孔にめっき法を用いて銅を充填することにより形成される。この場合、絶縁基板内の電子部品の端子に向けて正確に接続孔を形成しなければならないので、製造過程においては、電子部品の位置決めの精度及び端子位置の特定の精度を向上させる必要がある。ここで、これらの精度の向上を図った部品内蔵基板の製造方法の一態様につき、以下に説明する。
【0006】
まず、支持板を準備し、この支持板の上に銅層を形成する。そして、この銅層上には銅の柱状体からなるマークをめっき法により形成する。次いで、このマークを基準にして電子部品を銅層上の所定位置に位置決めし、絶縁性の接着剤で固定する。その後、固定した電子部品及びマークを絶縁材料で覆い、電子部品を埋設した絶縁基板としての絶縁層を形成する。その後、支持板を剥離し、銅層を露出させる。露出した銅層においては、マークが存在する部分をエッチング除去することによりマークを露出させる。そして、露出したマークを基準にして、電子部品の端子位置を特定し、この端子まで到達する接続孔を形成する。その後、接続孔を含め銅層の全体に銅めっきを施し、接続孔内を銅で充填することにより、銅層と端子とを電気的に接続する。そして、最後に絶縁基板表面の銅層を所定の配線パターンに加工することにより、部品内蔵基板が製造される。
【0007】
この製造方法によれば、電子部品の位置決めと端子位置の特定に同一のマークを基準として使用するので、電子部品の位置決め及び端子の位置の特定を精度良く行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−027917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記した製造方法においては、支持板を剥離した後、マークが埋設されている部分の銅層をエッチングする際、マークも一緒にエッチングされることがある。このマークは、銅めっきにより形成されるので、めっき条件により、厚さに若干のばらつきがある。このため、エッチングの条件によっては、マークの薄い部分が除去され、マークが欠ける虞がある。また、マークが極端に薄くなり、マーク部分に凹みができる虞がある。このように、マークが欠けたり、マーク部分に凹みができると、以下のような問題が起こる。まずは、検出手段においてマークの検出誤差が大きくなり、電子部品の端子位置を正確に特定することができなくなるといった問題がある。更に、部品内蔵基板は、通常、大判の製造パネルに複数個作り込まれ、最後に個々に切り出されて製品化される。ここで、基板の膨張収縮を考慮すると位置決め用のマークは、位置決めの対象物により近い箇所に設けるほど位置決め精度が向上する。このため、位置決め精度向上の観点からは各部品内蔵基板内にマークを設けることが好ましい。しかしながら、マーク部分が凹んでいると、かかる凹みが欠陥となり部品内蔵基板の品質が低下する。よって、マークは、製造パネルにおける部品内蔵基板以外の枠部分に形成せざるを得ず、位置決め精度が多少犠牲になっている。
【0010】
また、上記した製造方法においては、電子部品を位置決めする際、マークの位置を検出手段で検出し、この位置を基準に電子部品を所定位置に配置する。この検出手段においては、所定面積の検出領域に検出光を照射し、この検出領域内の対象物からの反射光を受光センサーで受光することにより、対象物を認識する。このとき、受光センサーの検出の精度を高めるため、対象物とそれ以外の部分の反射光の強度の差を明確にする前処理が行われる。具体的には、マークにマスキングテープを貼付した状態で銅層の全体をエッチング剤により粗面化する。これにより、銅層の表面は、粗面化されるが、マークの表面は、光沢面を維持することができる。その結果、マークとその回りの銅層とにおいては、反射光のコントラストが明確になるため、受光センサーの検出精度が向上し、位置決め精度の向上が図れる。
【0011】
しかしながら、上記した前処理は、微小なマークにマスキングテープを貼付し、粗面化した後、かかるマスキングテープを剥がすといった煩雑な作業が必要であり、手間がかかる。このため、部品内蔵基板の製造効率の低下を招くといった問題がある。
【0012】
本発明は、上記の事情に基づいてなされたものであり、その目的とするところは、製造効率の低下を抑制しつつ、部品の位置決め及び位置の特定を精度良く行うことができる部品内蔵基板の製造方法及びこの方法を用いて製造した部品内蔵基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明によれば、表面に配線パターンを有する絶縁基板内に、前記配線パターンと電気的に接続された端子を有する電気又は電子的な部品が内蔵されている部品内蔵基板の製造方法であって、支持板上に前記配線パターンとなるべき銅層を形成し、この銅層の前記支持板に接する第1面とは反対側の第2面にマークを形成するマーク形成工程と、前記マークを基準にして前記部品を位置決めし、絶縁性の接着層を介在させて前記銅層の第2面上に前記部品を搭載する部品搭載工程と、前記部品を搭載した前記銅層の第2面上に、前記部品及び前記マークを埋設させる前記絶縁基板としての埋設層を形成する埋設層形成工程と、前記銅層から前記支持板を剥離させた後、この剥離により露出した前記銅層の第1面側から前記銅層の一部を銅のエッチングに用いられる銅エッチング剤によりエッチング除去し、前記マークにおける前記銅層の第2面に接していた基端面の全体とともに前記埋設層を部分的に露出させるウィンドウを形成するウィンドウ形成工程と、前記ウィンドウから露出した前記マークを基準にして前記部品の端子の位置を特定し、前記端子まで到達するビアホールを形成した後、前記ビアホールに導電性材料を充填し、前記端子と前記銅層とを電気的に接続する導通ビアを形成する導通ビア形成工程と、前記導通ビアを介して前記端子と電気的に接続された前記銅層を前記配線パターンに形成するパターン形成工程とを備えており、前記マーク形成工程は、前記銅エッチング剤に対して、銅よりもエッチングされ難いエッチング耐性を有しているエッチング耐性材料を用いて前記マークを形成することを特徴とする部品内蔵基板の製造方法が提供される。
【0014】
好ましくは、前記部品搭載工程の前に、前記銅層の第2面に対し前記銅エッチング剤を用いて粗面化処理を施す粗面化工程を更に備えている構成とする。
【0015】
ここで、前記マーク形成工程は、前記エッチング耐性材料としてのニッケルのめっき層からなる前記マークを無電解めっき法及び電解めっき法のうちの少なくとも一方により形成する態様とすることが好ましい。
【0016】
また、前記ニッケルのめっき層の上に、無電解めっき法及び電解めっき法のうちの少なくとも一方により、前記エッチング耐性材料としての金のめっき層を更に設け、前記マークをニッケル−金めっき層により形成する態様とすることが好ましい。
【0017】
また、前記マーク形成工程は、前記エッチング耐性材料としての銀のめっき層からなる前記マークを無電解めっき法及び電解めっき法のうちの少なくとも一方により形成する態様とすることが好ましい。
【0018】
また、前記マーク形成工程は、前記エッチング耐性材料としての銀ペーストを前記銅層上に供給することにより前記マークを形成する態様とすることが好ましい。
【0019】
また、本発明によれば、上記した部品内蔵基板の製造方法を用いて製造された部品内蔵基板が提供される。
【0020】
本発明の部品内蔵基板は、前記基端面が前記絶縁基板の表面と面一となるように前記絶縁基板内に埋設されている前記マークと、前記マークの基端面上に形成された銅めっき層からなり、表面が平坦な部品実装用ランドとを備えている構成とすることが好ましい。
【0021】
また、前記部品実装用ランドは、前記銅めっき層上に形成されたニッケルめっき層及びこのニッケルめっき層上に形成された金めっき層を更に有している構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る部品内蔵基板の製造方法は、マーク形成工程において、エッチング耐性材料を用いてマークを形成しているので、以下の効果を奏する。まず、ウィンドウを形成するために銅層の一部をエッチング除去する際にマークも一緒にエッチングされることを抑制することができる。これにより、マークが欠けることを抑えられるので、センサーによるマークの検出誤差を低く抑えることができ、内蔵される部品と配線パターンとの位置決め精度を高くすることができる。
【0023】
また、マークのエッチングが抑制されるため、マークの部分に凹みは形成されず、平坦となるので、品質の低下を抑制しつつ大判の製造パネルに複数配置されている部品内蔵基板毎にマークを配置できる。これにより、位置決めの対象物に近い位置にマークを形成できるため、高精度の位置決めが可能となる。このため、本発明は、今後更に小型化される部品にも対応できる。
【0024】
また、マークの部分は、上記したように平坦となるので、この部分に部品実装用のランドを形成することが可能である。これにより、部品内蔵基板においてマークを形成した箇所を無駄にせずランドとして利用可能となるので、基板の高密度化にも寄与する。
【0025】
更に、マークとその回りの銅層とのコントラストを明確にするために銅層の粗面化処理を行う場合でも、かかるマークはエッチング耐性を有するため、マスキングテープの貼付が不要である。よって、マークに対してマスキングテープの貼付及び剥離をする作業を省略することができる。このため、部品内蔵基板の製造効率を低下させることなく、センサーによるマークの検出誤差を低く抑えることができ、部品の位置決め精度の向上を図ることができる。
【0026】
また、本発明の部品内蔵基板は、上記した製造方法により得られるので、内蔵される部品の端子と配線パターンとが高精度に位置決めされており、電気的接続の不良は極めて少なく、品質に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係る部品内蔵基板の製造方法に用いる支持板(ステンレス鋼製の薄板)を概略的に示す断面図である。
図2図1の支持板上に銅層を形成した銅張り鋼板を概略的に示す断面図である。
図3図2の銅張り鋼板の銅層上にパターンめっき用のめっきレジスト膜を形成した状態を概略的に示す断面図である。
図4図2の銅張り鋼板の銅層上にマークを形成した状態を概略的に示す断面図である。
図5図4の銅張り鋼板の銅層上に接着剤を供給した状態を概略的に示す断面図である。
図6図5の銅張り鋼板の接着剤上に電子部品を搭載した状態を概略的に示す断面図である。
図7】電子部品が搭載された銅張り鋼板の上に絶縁基材及び銅箔を積層する状態を概略的に示す断面図である。
図8】電子部品が搭載された銅張り鋼板の上に絶縁基材及び銅箔を積層し一体化した状態を概略的に示す断面図である。
図9】銅層から支持板を剥離させて得た中間製品を概略的に示す断面図である。
図10図9の中間製品の銅層上にマスク層を形成した状態を概略的に示す断面図である。
図11図10の中間製品にウィンドウを形成した状態を概略的に示す断面図である。
図12図11の中間製品にレーザービアホールを形成した状態を概略的に示す断面図である。
図13図12の中間製品にめっき処理を施した状態を概略的に示す断面図である。
図14図13の中間製品に配線パターンを形成した状態を示す断面図である。
図15】本発明の実施形態に係る部品内蔵基板を概略的に示す断面図である。
図16図15の円R内を拡大して示した断面図である。
図17】別の実施形態の図16に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1の実施形態)
本発明においては、まず、出発素材上に銅製の柱状体からなる位置決め用のマークを形成する(マーク形成工程)。ここで、出発素材は、例えば、次のようにして準備される。
【0029】
まず、図1に示すように、支持板2を用意する。この支持板2は、例えばステンレス鋼製の薄板である。そして、図2に示すように、支持板2上に薄膜からなる第1の銅層4を形成する。この第1の銅層4は、例えば、電解めっきにより得られる銅めっき膜からなる。このようにして得られた銅張り鋼板6を出発素材とする。ここで、第1の銅層4において、支持板2に接している面を第1面3とし、この第1面3とは反対側の面を第2面5とする。
【0030】
なお、支持板2としては、アルミ製の薄板を用いることもできる。この場合、第1の銅層4は、例えば、銅箔からなり、アルミ製の薄板の表面に貼り付けられる。
【0031】
次に、図3に示すように、準備した銅張り鋼板6の第1の銅層4上にマスク層8を形成する。このマスク層8は、例えば、所定厚みのドライフィルムからなるめっきレジストであり、所定位置に開口10が設けられており、この開口10から銅層4が露出している。そして、このようなマスク層8を有する銅張り鋼板6に対しニッケルの無電解めっきを施すことにより、前記した露出部分にニッケルを優先的に析出させ、開口10の内部の形状に沿った柱状のニッケルポストを形成する。この後、ドライフィルム8を除去することにより、第1の銅層4の第2面5上の所定位置にニッケルポストからなる位置決め用のマーク12が形成される(図4)。なお、ニッケルめっき層からなるマーク12の形成方法は、無電解めっき法に限られるものではなく、電解めっき法を採用することもでき、また、これらを併用することもできる。
【0032】
このマーク12の設置位置は、任意に選定することができるが、絶縁基板内に内蔵すべき電子部品(以下、基板内部品という)14の位置決めを行う光学系位置決め装置(図示せず)の光学系センサーが認識しやすい位置に設けることが好ましい。本実施形態においては、図4に示すように、マーク12は、基板内部品14が搭載される予定の搭載予定領域Sを挟むように2個形成した。
【0033】
ここで、第1の銅層4の第2面5に対し、銅のエッチングに用いられる銅エッチング剤のうち硫酸−過酸化水素系の銅エッチング剤を用いて粗面化処理を行うことが好ましい。このとき、ニッケルからなるマークは、硫酸−過酸化水素系の銅エッチング剤に対し、耐性があるので、腐食されず、光沢面を維持することができる。その結果、光沢のあるマークと、その回りの粗面化された第1の銅層4とのコントラストが明確となり、光学センサーの検出誤差の低減に寄与する。また、第1の銅層4が粗面となることにより、後工程である埋設層形成工程において、絶縁基板と第1の銅層4との間にアンカー効果が発揮され密着性の向上が図れる。
【0034】
次に、銅張り鋼板6上に接着剤16を介して基板内部品14を搭載する(部品搭載工程)。
まず、図5に示すように、銅層4上における搭載予定領域Sに接着剤16が供給される。接着剤16は、少なくとも搭載予定領域Sの全体を覆っていればよく、接着剤16の位置決め精度は、比較的低くてもよい。ここで、接着剤16の位置決めを行う際、マーク12を基準にして搭載予定領域Sを特定し、特定された位置に接着剤16を塗布すると接着剤16の位置決め精度は向上するので好ましい。なお、基板内部品14の端子が存在する位置に対応する所定位置に接着剤16が適切に配設されるならば、接着剤16は、搭載予定領域Sの一部を覆う態様でも構わない。
【0035】
上記した接着剤16は、硬化して所定厚さの接着層18となる。得られる接着層18は、基板内部品14を所定位置に固定するとともに、所定の絶縁性を有している。接着剤16としては、硬化後に所定の接着強度及び所定の絶縁性とを発揮するものであれば格別限定されないが、例えば、熱硬化型のエポキシ系樹脂又はポリイミド系樹脂にフィラーを添加したものが用いられる。このフィラーとしては、例えば、シリカ(二酸化ケイ素)、ガラス繊維等の微粉末が用いられる。
【0036】
本発明において、搭載予定領域Sに供給される接着剤16の形態としては、特に限定されるものではなく、液体状の接着剤16を所定厚さで塗布する形態をとってもよいし、所定厚さのシート状の接着剤16を載置する形態をとってもよい。本実施形態においては、熱硬化型のエポキシ系樹脂にシリカの微粉末を添加した液体状の接着剤を使用した。
【0037】
次に、図6に示すように、第1の銅層4の第2面5上の搭載予定領域Sに接着剤16を塗布し、その上に基板内部品14を搭載する。このとき、基板内部品14は、マーク12を基準にして搭載予定領域Sに位置決めされる。この後、接着剤16は、熱硬化炉などを使用し加熱されることで硬化し接着層18となる。これにより基板内部品14は所定位置に固定される。
【0038】
詳しくは、図6から明らかなように、基板内部品14は、ICチップ等(図示せず)が樹脂で覆われた直方体状のパッケージ部品であり、このパッケージ部品の下部には複数の端子20が設けられている。そして、基板内部品14及び端子20と銅層4の第2面5との間には、接着層18が介在している。
【0039】
次に、絶縁基材を積層して基板内部品14、マーク12の埋設を行う(埋設層形成工程)。
まずは、図7に示すように、第1及び第2の絶縁基材22,24を用意する。これら絶縁基材22,24は、樹脂製である。ここで、絶縁基材22,24は、ガラス繊維に未硬化状態の熱硬化性樹脂を含浸させたシート状をなすいわゆるプリプレグである。この第1の絶縁基材22は、貫通孔30を有している。貫通孔30は、その開口部が基板内部品14を挿通可能な大きさに形成されているとともに、その高さ(絶縁基材22の厚さに相当)が基板内部品14の高さよりも高く設定されている。一方、第2の絶縁基材24は、図7に示すように、貫通孔が設けられていない平板状をなしている。
【0040】
ついで、第1の銅層4上に第1の絶縁基材22を積層し、この第1の絶縁基材22の上側に第2の絶縁基材24を重ね、更にこの第2の絶縁基材24の上側に第2の銅層28となるべき銅箔を重ねて積層体とする。ここで、第1の絶縁基材22は、貫通孔30内に基板内部品14が位置付けられるように配設する。その後、前記積層体の全体に対し、加圧するとともに加熱するいわゆるホットプレスを行う。
【0041】
これにより、プリプレグの未硬化状態の熱硬化性樹脂は、加圧されて貫通孔30等の隙間に充填された後、ホットプレスの熱により硬化し、その結果、図8に示すように、絶縁基材22,24からなる絶縁基板(埋設層)34が形成される。このようにして、絶縁基板34内に基板内部品14が埋設されている加圧成形体37が得られる。ここで、絶縁基材22には、予め貫通孔30が設けられているため、ホットプレスの際に基板内部品14にかかる圧力を回避することができる。このため、大型の基板内部品14であっても破損することなく絶縁基板内に埋設することができる。
【0042】
次いで、図9に示すように、加圧成形体37から支持板2を剥離させる。これにより部品内蔵基板の中間製品40が得られる。この中間製品40は、内部に基板内部品14を含む絶縁基板34と、この絶縁基板34の一方の面(下面)36に形成された第1の銅層4と、他方の面(上面)38に形成された第2の銅層28とを備えている。ここで、第1の銅層4においては、支持板2の剥離により第1面3が露出している。
【0043】
次に、得られた中間製品40に対し、第1の銅層4の所定箇所を除去してウィンドウを形成する(ウィンドウ形成工程)。
まずは、図10に示すように、両銅層4,28の表面にマスク層39,41を形成する。このマスク層39,41は、例えば、所定厚みのドライフィルムからなるエッチングレジストであり、所定位置に開口43が設けられている。開口43からは銅層4の第1面3が露出している。開口43は、マーク12,12が存在する部分及び基板内部品14の端子20,20が存在する部分(以下、端子存在部という)T,Tにそれぞれ設けられている。ここで、これら開口43は、例えば、絶縁基板34の端部を基準にして、マーク12,12が存在する部分及びを端子存在部T,Tを特定し、その特定した位置において、マーク12,12及び端子20,20よりも大きめに形成されている。この開口43は、マーク12や端子20よりも大きめに形成されるので、その位置を特定する際の精度は、比較的低くても構わない。
【0044】
次いで、中間製品40に対し、塩化第2銅水溶液からなる銅エッチング剤を用いた通常のエッチング法により、露出した部分の第1の銅層4を除去する。その後、マスク層39,41を除去する。これにより、図11に示すように、マーク12,12と共に絶縁基板34を部分的に露出させる第1ウィンドウW1及び端子存在部Tを含む接着層18の部位を露出させる第2ウィンドウW2が形成される。ここで、各ウィンドウW1、W2は、開口43に倣い、これらマーク12,12及び端子20,20よりも大きめに形成される。また、マーク12は、ニッケルからなるので、塩化第2銅水溶液には耐性を示すため、エッチングに際し、腐食は抑制される。つまり、第1ウィンドウW1の部分にて第1の銅層4がエッチング除去された後、マーク12が露出しても、このマーク12が腐食されて欠けたり凹みが生じたりするような不具合は起こらない。なお、銅エッチング剤としては、上記した塩化第2銅水溶液に限定されるものではなく、塩化第2鉄水溶液も用いられる。ニッケルは、この塩化第2鉄水溶液にも耐性を示す。
【0045】
次に、端子存在部Tの接着層18にビアホールを形成する(ビアホール形成工程)。
まず、露出したマーク12,12を光学系位置決め装置(図示せず)の光学系センサーで認識する。そして、マーク12,12の位置を基準として接着層18で隠れている基板内部品14の端子20の位置を特定する。その後、特定した端子位置の接着層18にレーザー、例えば、炭酸ガスレーザーを照射して接着層18を除去し、図12に示すように、端子20まで到達するレーザービアホール(以下、LVHという)46を形成する。これにより、基板内部品14の端子20が露出する。ここで、各ウィンドウW1、W2をマーク12,12及び端子20,20よりも大きめに形成しているので、第1ウィンドウW1では、マーク12,12の全体を認識することができ、第2ウィンドウW2では、銅層4により反射されることなく効率良く目標箇所にレーザーを照射することができる。
【0046】
上記した態様から明らかなように、本発明においては、基板内部品14の位置決めに使用したマーク12,12をLVH46の形成に再度使用することを特徴としている。つまり、本発明は、基板内部品14の位置決め及びLVH46の位置決めに共通したマークを用いているので、極めて高い位置決め精度を発揮することができ、接着層18に隠れている端子20に対し、正確な位置にLVH46を形成することができる。
【0047】
次に、LVH46が形成された中間製品40にデスミア処理により樹脂残渣を除去した後、めっき処理を施し中間製品40表面へ銅を析出させ、LVH46内に銅を充填する。これにより、基板内部品14の端子20と第1の銅層4とを電気的に接続する導通ビアを形成する(導通ビア形成工程)。
【0048】
まず、LVH46内に銅の無電解めっき処理を施し、LVH46の内壁面及び基板内部品14の端子20の表面を銅で覆う。その後、銅の電解めっき処理を施し、図13に示すように、LVH46内を含め第1の銅層4の全体及び第2の銅層28の全体を覆う銅のめっき層48を成長させる。これにより、LVH46内は銅で充填されて導通ビア47が形成され、この導通ビア47が第1の銅層4と一体化し、基板内部品14の端子20と第1の銅層4とが電気的に接続される。
【0049】
次に、絶縁基板34の表面の第1の銅層4及び第2の銅層28の一部を除去し、所定の配線パターン50を形成する(パターン形成工程)。
両銅層4,28の一部の除去は、通常のエッチング法が用いられる。これにより、図14に示すように、絶縁基板34の表面に所定の配線パターン50が形成される。
【0050】
配線パターン50が形成された後、絶縁基板34の表面には、半田の付着を避けたい部分に半田レジストが塗布される。これにより、絶縁基板34の表面に半田レジスト層60が形成される。ここで、本実施形態においては、図15に示すように、マーク12の部分には、半田レジストを塗布せず、半田レジスト層60に開口62を設けている。この結果、マーク12の部分に対応する銅のめっき層48の部分は、露出した状態となり、部品実装用ランド61となる。詳しくは、図16に示すように、マーク12は、エッチング耐性を備えているため、ウィンドウ形成工程において、銅層4とともにエッチングされることはないので、その基端面13につき平坦な状態を維持している。つまり、マーク12の基端面13は、絶縁基板34の表面35と面一となっている。この状態のマーク12と絶縁基板34の表面上に銅めっき層48が形成されるので、この部分の銅めっき層48も平坦となる。この平坦な部分の銅めっき層48に対し半田レジスト60を塗布せず開口62を設けることにより、当該部分は部品実装用ランド61に形成される。このように、マーク12の部分に欠けや凹みが生じないので、かかる部分に部品実装用ランド61を形成することができることから、マーク12の部分を無駄にすることなく活用できる。つまり、本発明に係るマーク12は基板の高密度化にも貢献する。
【0051】
以上のようにして、表面に所定の配線パターン50を有する絶縁基板34内に、この配線パターン50と電気的に接続された端子20を有する基板内部品14が内蔵されている部品内蔵基板1が得られる。
【0052】
このようにして得られた部品内蔵基板1は、表面に他の電子部品を表面実装してモジュール基板とすることができる。また、この部品内蔵基板1をコア基板として、通常行われるビルドアップ法を用いて多層回路基板を形成することもできる。
【0053】
なお、第1の実施形態は、ウィンドウ形成工程において、第1ウィンドウとともに第2ウィンドウを形成したが、本発明はこの態様に限定されるものではなく、第1ウィンドウのみ形成する態様でも構わない。この場合、第1ウィンドウから露出したマーク12を基準にして部品14の端子20の位置を特定し、例えば、カッパーダイレクト法を利用し、銅層4を含めて接着層18を除去してビアホールを形成する。
【0054】
次に、第2〜第5の実施形態について説明する。これらの説明にあたり、既に説明した工程と同じ工程については、その詳細な説明を省略する。また、既に説明した構成部材及び部位と同一の機能を発揮する物については同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0055】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、第1の実施形態のマーク形成工程において、ニッケル−金めっき層によりマーク12を形成する点のみで第1の実施形態と相違する。
【0056】
第2の実施形態のマーク形成工程では、まず、マスク層8を有する銅張り鋼板6に対しニッケルの無電解めっきを施し、開口10内にニッケルめっき層を形成する。その後、かかるニッケルめっき層上に金の無電解めっきを更に施し、ニッケル−金めっき層からなるマーク12を形成する。なお、ニッケル−金めっき層からなるマーク12の形成方法は、無電解めっき法に限られるものではなく、電解めっき法を採用することもでき、また、これらを併用することもできる。
【0057】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、第1の実施形態のマーク形成工程において、銀めっき層によりマーク12を形成する点のみで第1の実施形態と相違する。
【0058】
第3の実施形態のマーク形成工程では、マスク層8を有する銅張り鋼板6に対し銀の無電解めっきを施すことにより、銀めっき層からなるマーク12を形成する。なお、銀めっき層からなるマーク12の形成方法は、無電解めっき法に限られるものではなく、電解めっき法を採用することもでき、また、これらを併用することもできる。
【0059】
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、第1の実施形態のマーク形成工程において、銀ペーストを用いてマーク12を形成する点のみで第1の実施形態と相違する。
【0060】
第4の実施形態のマーク形成工程では、有機バインダー内に導電性フィラーとしての銀粉が分散されてなる銀ペーストを準備し、この銀ペーストを第1の銅層4上にスクリーン印刷する。これにより、第1の銅層4上の所定位置に銀ペーストからなるポストを形成する。その後、銀ペーストのポストを載置した銅張り鋼板6を100〜180℃の温度雰囲気の下に10〜60分間保持することにより、銀ペーストを硬化させ、マーク12に形成する。
【0061】
(第5の実施形態)
第5の実施形態は、第1の実施形態において、部品実装用ランドを形成する際に、銅のめっき層48の上にニッケルめっき層64を形成し、更に、このニッケルめっき層64の上に金めっき層66を形成する点のみで第1の実施形態と相違する。
第5の実施形態においては、図17に示すように、部品実装用ランド61における銅めっき層48がエッチング耐性を備えたニッケルめっき層64及び金めっき層66により覆われているので、部品実装用ランド61の耐食性向上が図れる。
上記したように、第1〜第5の実施形態におけるマーク12は、ニッケル、ニッケル−金、銀又は銀ペーストからなり、いずれも、硫酸−過酸化水素系エッチング剤、塩化第2銅水溶液、塩化第2鉄水溶液等の銅エッチング剤に対し、銅よりも腐食され難いエッチング耐性を備えている。このため、銅の粗面化及び銅のエッチングに際し、マーク12が一緒に腐食されることはない。つまり、マーク12は、当初の形状を維持することができるので、部品の位置決め精度及び端子位置の特定の精度の向上に寄与する。
【0062】
なお、本発明において、絶縁基板内に内蔵される部品としては、パッケージ部品に限定されるものではなく、チップ部品等他の各種電子部品を対象とすることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 部品内蔵基板
2 支持板
3 第1面
4 第1の銅層
5 第2面
6 銅張り鋼板
8 マスク層
12 マーク
14 電子部品(基板内部品)
16 接着剤
18 接着層
20 端子
34 絶縁基板
40 中間製品
46 レーザービアホール(LVH)
47 導通ビア
50 配線パターン
S 搭載予定領域
T 端子存在部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17