【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の一局面は、ユーザ入力への迅速な応答を可能にする電気光学ディスプレイを駆動するためのデータ構造、方法、および装置に関する。前述のMEDEOD出願は、電気光学ディスプレイを駆動するためのいくつかの方法およびコントローラを説明している。これらの方法およびコントローラの大部分は、2つのイメージバッファを有するメモリを使用し、その1つ目は、第1または初期の画像(ディスプレイの遷移または書き換えの開始時にディスプレイ上に存在する)を記憶し、その2つ目は、書き換え後にディスプレイ上にあることが所望される最終画像を記憶する。コントローラは、初期および最終画像を比較し、異なる場合には、書き換え(あるいは更新と呼ばれる)の終了時に最終画像がディスプレイ上で形成されるように、画像に光学状態の変化を受けさせる駆動電圧を、ディスプレイの種々の画素に印加する。
【0025】
しかしながら、前述の方法およびコントローラの大部分では、いったん更新が開始されると、更新が完了するまで、メモリがいずれの新規画像も受け取ることができないという意味で、更新動作は「アトミック」である。更新が達成されている間にコントローラがユーザ入力に応答しないため、例えば、キーボードまたは同様のデータ入力デバイスを介して、ユーザ入力を受け取るアプリケーションのためにディスプレイを使用することが所望される時に、このことが困難を引き起こす。2つの極限光学状態の間の遷移に数百ミリ秒かかる場合がある、電気泳動媒体について、この無反応期間は、約800ミリ秒から約1800ミリ秒に及んでもよく、この期間の大部分は、電気光学材料によって必要とされる更新サイクルに起因してもよい。無反応期間の持続時間は、更新時間を増加させる性能アーチファクトのうちのいくつかを除去することによって、および電気光学材料の応答速度を改善することによって短縮されてもよいが、そのような技術が単独で、無反応期間を約500ミリ秒以下に短縮する可能性は少ない。これは、例えば、ユーザがユーザ入力への迅速な応答を期待する、電子辞書等の対話型アプリケーションに望ましいよりも依然として長い。したがって、短縮した無反応期間を伴う画像更新方法およびコントローラの必要性がある。
【0026】
前述の2005/0280626は、無反応期間の持続時間を大幅に短縮するために、非同期画像更新の概念(Zhouらによる論文、“Driving an Active Matrix Electrophoretic Display”, Proceedings of the SID 2004を参照)を使用する、駆動スキームを説明している。この論文で説明されている方法は、コントローラの複雑性および必要メモリの少量の増加のみを伴って、従来技術の方法およびコントローラと比較して、無反応期間を最大65パーセント短縮するために、グレースケール画像ディスプレイに対してすでに開発されている構造を使用する。
【0027】
より具体的には、前述の2005/0280626は、そのそれぞれが少なくとも2つの異なるグレーレベルを達成することが可能である、複数の画素を有する電気光学ディスプレイを更新するための2つの方法を説明している。第1の方法は、
(a)ディスプレイの各画素の所望の最終状態を画定するデータを受信するように配設される、最終データバッファを提供するステップと、
(b)ディスプレイの各画素の初期状態を画定するデータを受信するように配設される、初期データバッファを提供するステップと、
(c)ディスプレイの各画素の標的状態を画定するデータを受信するように配設される、標的データバッファを提供するステップと、
(d)初期および最終データバッファ中のデータが異なる時を決定し、そのような違いが見出された時に、標的データバッファにおける値を更新するステップであって、(i)初期および最終データバッファが、特定の画素に対する同じ値を含有する時には、標的データバッファをこの値に設定し、(ii)初期データバッファが、最終データバッファよりも特定の画素に対する大きい値を含有する時には、標的データバッファを、増分を加えた初期データバッファの値に設定し、(iii)初期データバッファが、初期データバッファよりも特定の画素に対する小さい値を含有する時には、標的データバッファを、該増分を引いた初期データバッファの値に設定することによって、更新するステップと、
(e)それぞれ、各画素の初期および最終状態として、初期データバッファおよび標的データバッファ中のデータを使用して、ディスプレイ上の画像を更新するステップと、
(f)ステップ(e)の後に、標的データバッファから初期データバッファの中へデータをコピーするステップと、
(g)初期および最終データバッファが同じデータを含有するまで、ステップ(d)から(f)を繰り返すステップとを含む。
【0028】
第2の方法は、
(a)ディスプレイの各画素の所望の最終状態を画定するデータを受信するように配設される、最終データバッファを提供するステップと、
(b)ディスプレイの各画素の初期状態を画定するデータを受信するように配設される、初期データバッファを提供するステップと、
(c)ディスプレイの各画素の標的状態を画定するデータを受信するように配設される、標的データバッファを提供するステップと、
(d)ディスプレイの各画素に対する極性ビットを記憶するように配設される、極性ビットアレイを提供するステップと、
(e)初期および最終データバッファ中のデータが異なる時を決定し、そのような違いが見出された時に、極性ビットアレイおよび標的データバッファにおける値を更新するステップであって、(i)初期および最終データバッファにおける特定の画素に対する値が異なり、初期データバッファにおける値が画素の極限光学状態を表す時には、画素に対する極性ビットを、反対の極限光学状態に向かった遷移を表す値に設定し、(ii)初期および最終データバッファにおける特定の画素に対する値が異なる時には、極性ビットアレイにおける関連値に応じて、標的データバッファを、増分を加えた、または引いた初期データバッファの値に設定することによって、更新するステップと、
(f)それぞれ、各画素の初期および最終状態として、初期データバッファおよび標的データバッファ中のデータを使用して、ディスプレイ上の画像を更新するステップと、
(g)ステップ(f)の後に、標的データバッファから初期データバッファの中へデータをコピーするステップと、
(h)初期および最終データバッファが同じデータを含有するまで、ステップ(e)から(g)を繰り返すステップとを含む。
【0029】
上記で説明される従来技術のうちのいずれも、単一のディスプレイ上で複数の駆動スキームを同時に使用するという問題の一般解決法を提供しない。前述の米国特許第7,119,772号では、2つの駆動スキームのうちの1つのみが常に適用されており、モノクロまたは同様の駆動スキームは、変更される必要がある画素を更新するのみであり、したがって、テキストボックスまたは同様の選択域内で動作するのみであるという意味で、「局所」駆動スキームである。選択域外のディスプレイ一部が変更される必要がある場合、非選択域が変更されている間に選択域の迅速な更新が可能ではないように、ディスプレイは、より低速の完全グレースケール駆動スキームに戻らなければならない。同様に、前述の2005/0280626は、新規更新を開始することができる前の「待ち時間」の期間を短縮する方法を提供するが、単一の駆動スキームのみが常に使用中である。
【0030】
複数の駆動スキームが同時に使用されることを可能にする、双安定電気光学ディスプレイを駆動する方法の必要性がある。例えば、前述の米国特許第7,119,772号で使用されるテキストボックス/背景画像の実施例では、しばしば、キーボードまたはスタイラスでテキストボックス域に記入しながら、ユーザが背景に表示された一連の画像をスクロールすることが利便的となる場合がある。また、多くの電気光学ディスプレイは、メニュー上のどのアイテムが選択されているかを一連のラジオボタンが示す、いわゆる「メニューバー操作」を使用し、そのような操作では、ユーザが偶然に間違った選択を選ばないように、ラジオボタン域が迅速に更新されることが重要である。また、双安定電気光学ディスプレイを駆動する方法が、異なる更新期間を有する複数の駆動スキーム(例えば、モノクロ駆動スキームは、通常は、グレースケール駆動スキームよりも短い更新期間を有する)の同時使用を可能にし、複数の駆動スキームのそれぞれが、他の駆動スキームとは無関係に、ディスプレイのその部分の書き換えを開始できるようになることが極めて望ましい。高速モノクロ駆動スキームがメニューバーを更新する有用性は、高速モノクロ駆動スキームによる新規更新が、背景域のはるかに低速のグレースケール駆動スキーム更新の完了後に開始することしかできない場合に、大いに減少させられる。本発明は、データ構造、双安定電気光学ディスプレイを駆動する方法、およびこれらの要件を満たす電気光学ディスプレイを提供する。
【0031】
したがって、本発明は、複数の画素を有する双安定電気光学ディスプレイを制御する際に使用するためのデータ構造であって、ディスプレイの各画素について、画素の初期状態を表すデータ、画素の所望の最終状態を表すデータ、および画素に適用される駆動スキームを表す駆動スキーム指数を記憶するように配設される、画素データ記憶域と、複数の駆動スキームを表すデータを記憶するように配設される、駆動スキーム記憶域であって、画素データ記憶域に記憶された駆動スキーム指数によって表される少なくとも全ての駆動スキームを記憶する、駆動スキーム記憶域とを備える、データ構造を提供する。
【0032】
このデータ構造の好ましい形態では、駆動スキーム記憶域はまた、各駆動スキームについて、駆動スキームで達成された現在の更新の開始以来の期間を表す、タイミングデータも記憶する。
【0033】
本発明はまた、第1の複数の画素を有する双安定電気光学ディスプレイを駆動する方法であって、ディスプレイの各画素について、画素の初期状態を表すデータ、画素の所望の最終状態を表すデータ、および画素に適用される駆動スキームを表す駆動スキーム指数を記憶するステップと、ディスプレイの種々の画素について記憶された異なる駆動スキーム指数と少なくとも数が等しい、複数の駆動スキームを表すデータを記憶するステップと、ディスプレイの少なくとも第2の複数の画素について、第2の複数の画素のそれぞれに印加されるインパルスを表す出力信号であって、画素の初期および最終状態、駆動スキーム指数、および駆動スキーム指数によって表される駆動スキームを表す記憶されたデータに応じて、第2の複数の画素のそれぞれについて生成される、出力信号を生成するステップとを含む、方法も提供する。
【0034】
この方法の好ましい形態では、記憶された駆動スキームのそれぞれに対する時間値も記憶され、出力信号の生成は、駆動スキーム指数によって表される駆動スキームと関連する時間値にも依存する。
【0035】
本発明は、複数の画素を有し、本発明のデータ構造を備える、双安定電気光学ディスプレイに及び、かつ発明の方法を実行するように配設される、そのような双安定電気光学ディスプレイに及ぶ。
【0036】
本発明のディスプレイは、従来技術の電気光学ディスプレイが使用されている、任意の用途で使用されてよい。したがって、例えば、本ディスプレイは、電子ブック読取機、ポータブルコンピュータ、タブレットコンピュータ、携帯電話、スマートカード、標識、腕時計、棚ラベル、およびフラッシュドライブで使用されてもよい。
本発明は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
複数の画素を有する双安定電気光学ディスプレイを制御する際に使用するためのデータ構造であって、
該ディスプレイの各画素について、該画素の初期状態を表すデータと、該画素の所望の最終状態を表すデータと、該画素に適用される駆動スキームを表す駆動スキーム指数とを記憶するように配設される、画素データ記憶域と、
複数の駆動スキームを表すデータを記憶するように配設される、駆動スキーム記憶域であって、該画素データ記憶域に記憶された該駆動スキーム指数によって表される少なくとも全ての該駆動スキームを記憶する、駆動スキーム記憶域と
を備える、データ構造。
(項目2)
駆動スキーム記憶域はまた、各駆動スキームについて、前記駆動スキームで達成された現在の更新の開始以来の期間を表す、タイミングデータも記憶する、項目1に記載のデータ構造。
(項目3)
複数の画素を有し、項目1または2に記載のデータ構造を備える、双安定電気光学ディスプレイ。
(項目4)
前記画素は、行電極および列電極によって画定される2次元マトリクスで配設され、画素電極の1行が行ドライバによって一度に選択され、該選択された行における該電極に所望の電圧を提供するように、適切な電圧が該列電極に加えられ、適切な間隔後に、画素電極の該マトリクス全体がフレーム間隔中に行ごとに走査されるように、該以前に選択された行が選択解除されて、次の行が選択され、前記駆動スキームタイミングデータは、各駆動がフレームの開始時に始まるように配設される、アクティブマトリクス型である項目3に記載の双安定電気光学ディスプレイ。
(項目5)
各駆動スキームについて記憶される時間値は、該駆動スキームの開始以来経過したフレームの数を表す、項目4に記載のディスプレイ。
(項目6)
第1の複数の画素を有する双安定電気光学ディスプレイを駆動する方法であって、
該ディスプレイの各画素について、該画素の初期状態を表すデータと、該画素の所望の最終状態を表すデータと、該画素に適用される駆動スキームを表す駆動スキーム指数とを記憶することと、
該ディスプレイの種々の画素について記憶された異なる駆動スキーム指数と少なくとも数が等しい、複数の駆動スキームを表すデータを記憶することと、
該ディスプレイの少なくとも第2の複数の画素について、該第2の複数の画素の各々に印加されるインパルスを表す出力信号であって、該画素の該初期および最終状態と、該駆動スキーム指数と、該駆動スキーム指数によって表される該駆動スキームを表す該記憶されたデータとに応じて、該第2の複数の画素の各々について生成される、出力信号を生成することと
を含む、方法。
(項目7)
前記記憶された駆動スキームの各々に対する時間値を記憶することをさらに含み、前記出力信号の生成は、前記駆動スキーム指数によって表される該駆動スキームと関連する該時間値にも依存する、項目6に記載の方法。
(項目8)
項目6または7に記載の方法を実行するように配設される、複数の画素を有する双安定電気光学ディスプレイ。
(項目9)
前記画素は、行電極および列電極によって画定される2次元マトリクスで配設され、画素電極の1行が行ドライバによって一度に選択され、該選択された行における該電極に所望の電圧を提供するように、適切な電圧が該列電極に加えられ、適切な間隔後に、画素電極の該マトリクス全体がフレーム間隔中に行ごとに走査されるように、該以前に選択された行が選択解除されて、次の行が選択され、前記駆動スキームタイミングデータは、各駆動がフレームの開始時に始まるように配設される、アクティブマトリクス型である項目8に記載の双安定電気光学ディスプレイ。
(項目10)
各駆動スキームについて記憶される前記時間値は、前記駆動スキームの開始以来経過したフレームの数を表す、項目9に記載のディスプレイ。
(項目11)
項目3または8に記載のディスプレイを組み込む、電子ブック読取機、ポータブルコンピュータ、タブレットコンピュータ、携帯電話、スマートカード、標識、腕時計、棚ラベル、またはフラッシュドライブ。
(項目12)
回転2色部材またはエレクトロクロミック材料を含む、項目3または8に記載のディスプレイ。
(項目13)
流体中に配置され、かつ電場の影響下で前記流体を介して移動することが可能な複数の荷電粒子を備える、電気泳動材料を備える、項目3または8に記載のディスプレイ。
(項目14)
前記荷電粒子および前記流体は、複数のカプセルまたはマイクロセル内に閉じ込められる、項目13に記載のディスプレイ。
(項目15)
前記荷電粒子および前記流体は、高分子材料を備える連続相によって取り囲まれる、複数の離散液滴として存在する、項目13に記載の電気光学ディスプレイ。
(項目16)
前記流体は、ガス状である、項目13に記載のディスプレイ。