【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題は、独立請求項の特徴部分に記載された本発明の対象及び方法によって解決される。
【0005】
本発明による対象及び方法の有利な実施形態と改善例は従属請求項に記載されており、以下の明細書の記載と図面に基づいてそれらの説明を続ける。
【0006】
少なくとも1つの実施形態によるレーザー光源は、
半導体層列と、
フィルタ構造部とを含み、
前記半導体層列は、活性領域とビーム出力結合面を備え、前記ビーム出力結合面は第1の部分領域と、該第1の部分領域とは異なる第2の部分領域を有し、
前記活性領域は、動作モード中に、第1の波長領域のコヒーレントな第1の電磁ビームと、第2の波長領域のインコヒーレントな第2の電磁ビームとを発生し、
前記第2の波長領域は第1の波長領域を含んでおり、
前記コヒーレントな第1の電磁ビームは、第1の部分領域から放射方向に沿って放射され、
前記インコヒーレントな第2の電磁ビームは、第1の部分領域と第2の部分領域から放射され、
前記フィルタ構造部は、活性領域から放射されたインコヒーレントな第2の電磁ビームを放射方向に沿って少なくとも部分的に減衰するように構成されている。
【0007】
以下の明細書において“光”又は“電磁ビーム”とは、特に赤外線波長領域から紫外線波長領域の少なくとも1つの波長若しくは波長領域を備えた電磁ビームを意味している。この場合特に前記第1及び第2の波長領域は、紫外線波長領域及び/又は可視の波長領域、すなわち約350nm〜700nmの間の1つ以上の波長を有する赤から青までの波長領域波を含んでいる。
【0008】
コヒーレントな第1の電磁ビームはこの場合特に10nm、有利には5nmよりも小さいスペクトル幅の第1の波長領域の第1スペクトルによって特徴付けられ、大きな値のコヒーレンス長を有している。このことは特に前記コヒーレントな第1の電磁ビームが、数メートルから数百メートルの規模のコヒーレンス長を有し得ることを意味している。これにより、コヒーレントな第1の電磁ビームは、拡散性が少なくビーム断面のより小さな1つのビームに平行化及び/又は収束可能になる。そのために半導体層列のビーム出力結合面に対しては、収束若しくは平行化のための光学系、例えば歪像レンズや円筒状レンズなどを後方に配置してもよい。そのような光学系の配置によりコヒーレントな第1の電磁ビームは平行化された及び/又は収束された1つのビーム束にまとめられ、それによって理想的なガウスビーム束に近似したビーム特性を有し得る。
【0009】
コヒーレントな第1の電磁ビームがレーザー光源の作動中に活性領域において固定の位相関係で狭幅に制限された立体角の誘導放出によって生成されるのに対して、インコヒーレントな第2の電磁ビームは例えば第1の電磁ビームに対して同時に生じる自然発生的な放出によって生成される。誘導放出からの電磁ビームとは異なってこの自然放出された電磁ビームは、方向依存性は持たず、それ故等方的に生成される。それにより、インコヒーレントな第2の電磁ビームは、コヒーレントな第1の電磁ビームよりも広い角度範囲でビーム出力結合面から放射され、この放射に関してはさらにビーム出力結合面の第1の部分領域からも第2の部分領域からも放出されている。さらにまたインコヒーレントな第2の電磁ビームの第2の波長領域は、コヒーレントな第1の電磁ビームの第1の波長領域よりもスペクトル分布が広い。
【0010】
それ故にインコヒーレントな第2の電磁ビームはコヒーレントな第1の電磁ビームとは別の結像特性を有し、特に僅かな集束性及び/又は僅かな平行性しか持たない。そのためコヒーレントな第1の電磁ビームもインコヒーレントな第2の電磁ビームも含む電磁ビームのビーム品質は、コヒーレントな第1の電磁ビームのみのビーム品質に比べて著しく悪化している。
【0011】
例えばレーザー照射の分野においてはインコヒーレントな第2の電磁ビームは、外部の観察者にとっては極めて障害的な結果しかもたらさない。レーザー照射分野では、例えばレーザー光源によって生成される光点は、例えば1つ若しくはそれ以上の偏向ミラーを介して表面領域上方で可動であり、その強度も変調可能である。この光点が全表面領域上方で例えば毎秒50回から60回動くと、外部観察者にとっては表面上は直喩的な光の印象になり得る。なぜなら肉眼は、動いている個々の交点はもはや時間的に分解できなくなり、その代わりに照らし出された表面領域を捉えるようになる。多色性の照射分野では、異なる波長領域、例えば赤、緑、青の波長領域の複数のレーザー光源が互に隣接して用いられる。有利には、照射の際にできるだけシャープな描写と高いコントラストを達成するためには、光点がコヒーレントな第1の電磁ビームの結像だけによって表面に形成されるべきであろう。肉眼は、光強度の知覚に関しては高い動特性領域を有しているので、インコヒーレントな第2の電磁ビームは、シャープさに欠ける結像品質と低いコントラスト比を伴う発光現象の印象となる。
【0012】
ここに記載するレーザー光源は、活性領域から放射されたインコヒーレントな第2の電磁ビームを放射方向に沿って少なくとも部分的に減衰するように構成されているフィルタ構造部を含んでいることによって、レーザー光源から放射された電磁ビームのビーム品質が例えば当業者に周知の形態、例えば回折インデックスM
2の形態で測定可能となり、従来のレーザーに比べて著しく向上する。特にこのフィルタ構造部は、インコヒーレントな第2の電磁ビームを半導体層列からの出射の際に少なくとも放射方向で阻止、偏向、又は吸収するのに適したものであってもよい。
【0013】
さらにここで説明するレーザー光源は、例えばデータ蓄積や印刷技術のために有利に使うことができる。なぜなら放射方向におけるインコヒーレントな第2の電磁ビームの少なくとも部分的な低減によって、レーザー光源から照射された電磁ビームの前述したような集束性及び/又は平行化の改善に基づいて、従来のレーザー素子よりも高い分解能が可能になるからである。それにより、このような適用ケースにおいて例えばより高い蓄積密度ないし印刷分解能が達成可能となる。
【0014】
このように改善されたビーム品質に基づけば、簡素で低コストの小型の結像光学系を上述したようなレーザー光源との組み合わせに用いることが可能になる。
【0015】
コヒーレントな第1の電磁ビームは第1の強度を有し、インコヒーレントな第2の電磁ビームは第2の強度を有し得る。その場合第1の強度は第2の強度に比べて、少なくとも2倍大きく、有利には少なくとも10倍大きく、さらに有利には少なくとも100倍大きい。ここでのこれらの強度は以下の明細書においても、単位面積当たりの電磁ビームの輝度又はエネルギーを意味する。特に前記第1及び第2の強度は、ビーム出力結合面における強度を表している。
【0016】
半導体層列は、エピタキシャル層列として若しくはエピタキシャル層列を備えたビーム発光半導体チップ、すなわちエピタキシャル成長された半導体層列として形成され得る。その場合これらの半導体層列は例えばInGaAlNをベースに実施されてもよい。このInGaAlNベースの半導体チップと半導体層列とは次のようなものを指す。すなわちエピタキシャル成長によって作成された半導体層列とは、通常は、III−V族の化合物半導体材料系In
xAl
yGa
1-x-yN、0≦x≦1.0≦y≦1、及びx+y≦1からなる材料を有している少なくとも1つの個別層を含んだ様々な個別層からなる層列である。例えばこのInGaAlNをベースとした少なくとも1つの活性層を有する半導体層列は有利には、紫外線領域から緑の波長領域までの電磁ビームを放射する。
【0017】
代替的に若しくは付加的に、前記半導体層列または半導体チップは、InGaAlPベースのものであってもよい。すなわち、様々な個別層を有し得る半導体層列であって、この場合少なくとも1つの個別層は、III−V族の化合物半導体材料系In
xAl
yGa
1-x-yP、0≦x≦1.0≦y≦1、及びx+y≦1からなる材料を有している。このInGaAlPベースの少なくとも1つの活性層を有している半導体チップと半導体層列は有利には、1つまたは複数のスペクトル成分を含んだ緑〜赤色の波長領域の電磁ビームを発する。
【0018】
代替的若しくは付加的に前記半導体層列ないし半導体チップは、その他のIII−V族の化合物半導体材料系、例えばAlGaAsベースの材料か、又はII−VI族の化合物半導体材料系を有していてもよい。特にAlGaAsベースの材料を有している活性層は、赤〜赤外線波長領域の1つまたは複数のスペクトル成分を有する電磁ビームII−VI族を放射するのに適している。
【0019】
さらに前記半導体チップ層列は前述したようなIII−V族の化合物半導体材料系若しくはII−VI族の化合物半導体材料系が析出されている基板を有している。この基板は、この場合例えば前述したような化合物半導体材料系を含み得る。特にこの基板は、サファイア、GaAs、GaP、GaN、InP、SiC、Si及び/又はGeを含んでいてもよいし、そのような材料系から作成されたものであってもよい。特にこの基板はコヒーレントな第1の電磁ビームとインコヒーレントな第2の電磁ビームにとって透過性のものであり得る。
【0020】
前記半導体層列は、活性領域として例えば従来のpn接合部、ダブルヘテロ接合構造、単一量子井戸構造(SQW構造)、多重量子井戸構造(MQW構造)を有し得る。ここで量子井戸構造とは、本願の枠内では特につぎのような構造を含むものである。すなわち電荷担体の閉込め(“confinement”)によってそのエネルギー状態の量子化が強いられるような構造である。特にこの量子井戸構造という用語には、とりわけ量子トラフ、量子線及び量子点、あるいはこれらの構造の組合わせを含んでいる量子化の次元数に関する情報は何も含まれない。半導体層列は、活性領域の他にも、さらに別の機能層や機能領域、例えばほぼP型ドープされるか又はほぼn型ドープされた電荷担体移送層、すなわち電子移送層または正孔移送層や、ドープされない若しくはp型ないしn型ドープされた閉込め層、外被層、導波路層、バリア層、平坦化層、バッファ層、保護層、及び/又は電極層、並びにこれらの組合わせが含まれる。そのような構造、活性領域、さらなる機能層、機能領域は、当業者にとってはそれらの構造、機能、構成に関して公知でありそれ故ここでの詳細な説明は省く。
【0021】
その上さらに付加的な層、例えばバッファ層、バリア層及び/又は保護層は、半導体層列の成長方向に対して横方向で、例えば半導体層列を取り囲むように配設してもよい。つまり半導体層列の側面に配置してもよい。
【0022】
例えば半導体層列若しくは半導体チップは、縁部から発光するレーザーダイオードであってもよい。このことは特に次のようなことを意味している。すなわちビーム出力結合面が半導体層列若しくは半導体チップの側面によって形成されることを意味する。この場合ビーム出力結合面は基板の側面も含み得る。さらにビーム出力結合面は例えば複数の側面を含み得る。有利には半導体層列は、第1及び第2の導波路層を有し得る。これらの導波路層の間には活性領域が配設されている。半導体層列の動作を横の基本モードで可能にさせるために、半導体層列の複数の層が活性領域の少なくとも一方の側に配設され、例えばブリッジ状及び/又は台形状に構造化されてもよい。この種の層は、ブリッジ状導波路、リブ状導波路、リッジ状構造部、台形状構造部、テーパー状構造部として公知の半導体層列構造であり、当業者にとっては周知なことなのでここでの詳細な説明は省く。
【0023】
代替的に半導体層列または半導体チップは垂直発光型レーザーダイオード(VCSEL)であってもよい。それによりビーム出力結合面は半導体層列若しくは半導体チップの主要表面によって形成され得る。
【0024】
さらにレーザー光源は複数の半導体層列若しくは半導体チップを含むか、または複数の活性領域を備えた1つの半導体層列若しくは半導体チップを含む。特にレーザー光源は幅広ないわゆるストライプ型レーザーとして実施されてもよい。
【0025】
さらに例えば第1の活性領域において1つの電磁ビームを生成し、第2の活性領域において例えば光学的ポンピング作用により第1の電磁ビームを生成するようにすることも可能である。また第1のビーム光源は周波数混合または周波数倍増のための要素を有していてもよい。そのような要素は半導体層列内に集積するか、半導体層列に被着させるか、又は外部から半導体層列に被着されてもよい。特に半導体層列はコヒーレントな第1の電磁ビームのための光学的な共振器を有し得る。この共振器は特にビーム出力結合面として第1のミラーを含むか、又はビーム出力結合面に第1のミラーを有し、第2のミラーをビーム出力結合面に対向する側の半導体層列表面に含み、それらの間に活性領域が配設される。さらに前記半導体層列はいわゆる分布帰還型レーザー(以下では単にDFBレーザーとも称する)として実現されてもよいし、ショートタイプのDFBレーザーとして実現されてもよい。この種のDFBレーザーは、放射方向において周期的に構造化される活性領域を有している。この周期的に構造化される活性領域は、周期的に配列される、屈折率の入れ替わる領域を有しており、それらは干渉格子ないしは干渉フィルタを形成し得る。このフィルタは波長の選択される反射を引き起こす。このような共振器構造については当業者にとっては周知事項なのでここでのこれ以上の説明は省く。
【0026】
フィルタ構造部は少なくとも1つの第1のフィルタ素子を有しており、この第1のフィルタ素子は放射方向でみて半導体層列の後方に配設される。このことは、第1のフィルタ素子ビーム出力結合面に被着されるかその上方に配設されることを意味する。
【0027】
1つの層若しくは1つの素子が別の層若しくは別の要素に、あるいはそれらの上方に配設ないし被着されること、または2つの異なる層若しくは要素の間に配設ないし被着されることとは、本願明細書の中では、1つの層若しくは素子が直接、別の層若しくは別の素子に機械的及び/又は電気的に接触して配設されることを意味する。さらにまた1つの層若しくは1つの素子が間接的に別の層若しくは別の素子に配設されること、ないしはそれらの層ないし素子の上方に配設されることも意味し得る。この場合さらなる層及び/又は素子が1つの層と別の層の間に配設されていてもよい。
【0028】
さらに第1のフィルタ素子は前述した共振器ミラーに配設されてもよいし、共振器ミラーの一部として実現されてもよい。それに対して代替的に第1のフィルタ素子は半導体層列から分離されてもよいし、特に分離させてビーム出力結合面から離して配設してもよい。例えばレーザー光源は1つのケーシングを有し、このケーシング内に半導体層列が配設され、さらにビーム出力結合窓を有し、該窓は第1のフィルタ素子を有し、または第1のフィルタ素子によって形成される。
【0029】
特に第1のフィルタ素子はビーム出力結合面の第1の部分領域及び/又は第2の部分領域をカバーするか又はそれらのうちの少なくとも1つに後置接続されるとよい。
【0030】
少なくとも1つの第1のフィルタ素子は電磁ビームに対し、例えば角度依存性及び/又は波長依存性の透過率ないし透過性を有する。その場合有利には照射角度(以下では単に“角度”とも称する)がコヒーレントな第1の電磁ビームの放射方向に相対的に定義されてもよい。これにより例えば0°の角度とは放射方向に平行する方向を意味する。角度及び/又は波長依存性の透過率とは、この場合電磁ビームが角度、すなわち電磁ビームが第1のフィルタ素子に入射するいわゆる入射角度に依存して、及び/又は波長に依存して、異なる強度で伝送されることを意味する。特に角度及び/又は波長に依存した伝送は第1のフィルタ素子の角度及び/又は波長に依存した反射性及び/又は吸収性に関係する。この場合公知の基本原則が当てはまる。すなわち伝送強度、反射強度、吸収強度の和が第1のフィルタ素子に入射した電磁ビームに相応することである。
【0031】
角度依存性の透過率または透過性は例えば角度の増加と共に減少する。0°の角度に対しては透過率若しくは透過性は例えば最大値を有し得る。0°よりも大きい角度に対しては透過率若しくは透過性は、最大値よりも小さい値を有し得る。0°の際の最大値は、この場合、角度依存性を特徴付ける透過的作用の局所的な極大値または大域的な最大値であり得る。
【0032】
さらに代替的若しくは付加的に波長依存性の透過率又は透過性が第1の波長領域からの偏差ないしはずれの増加と共に減少する。このことは次のことを意味する。すなわち、少なくとも1つの第1のフィルタ素子がコヒーレントな第1の電磁ビームの第1の波長領域に対して最大の透過率ないし透過性を有し、この第1の波長領域とは異なる波長領域に対してはそれよりも少ない透過率ないし透過性を有していることである。この場合の最大透過率とは、波長依存性の透過性を特徴付ける機能の局所的若しくは大域的な極大値であってもよい。
【0033】
前述してきたようにコヒーレントな第1の電磁ビームは狭幅に制限された角度範囲で活性領域から出射されるのに対して、インコヒーレントな第2の電磁ビームは等方的な放射特性またはランベルトの放射特性を備え、それに伴って幅広な角度範囲で放射され得る。それによりフィルタ構造部なしのレーザー光源の遠視野においては、比較的大きな角度のもとでインコヒーレントな第2の電磁ビームが知覚されやすく、ビーム品質の悪化と発光特性の低下を招きやすい。角度依存性の透過性を有する第1のフィルタ素子によって特に次のようなことも可能である。すなわち、限界角度よりも小さい角度で半導体層列から放射される電磁ビームの方が、限界角度よりも大きい角度で放射される電磁ビームよりも、反射性及び/又は吸収性が少なく、透過性は大きくなるようにすることである。この場合の限界角度は40°以下、有利には30°以下、特に有利には20°以下であってもよい。限界角度は特にコヒーレントな第1の電磁ビームの発散角度に相応し得る。さらに第1のフィルタ素子の透過性は、限界角度よりも大きな角度の場合、20%以下、有利には10%以下、特に有利には5%以下である。
【0034】
例えば第1のフィルタ素子はブラッグミラーを有するか又はそのようなブラッグミラーとして実現され得る。このブラッグミラーは、それぞれが異なった屈折率を有するそれぞれ2つの層からなる複数の層対を有し得る。これらの層は、それぞれがコヒーレントな第1の電磁ビームの光学的波長の約1/4の厚さを有し得る。この場合に適した材料は例えば金属酸化物、半金属酸化物及び/又は金属窒化物、半金属窒化物であり得る。金属酸化物または半金属酸化物は、アルミニウム、珪素、チタン、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、ハフニウムを有し得る。さらに窒化物は前述した金属若しくは半金属の少なくとも1つを有し得る。例えば窒化珪素など。特に有利には金属酸化物若しくは半金属酸化物は少なくとも1つの以下の材料、すなわち酸化ニオブ、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ジルコニウムを含み得る。
【0035】
この種のブラッグミラーを有するかそのようなブラッグミラーとして実現される第1のフィルタ素子によって、材料及び層の厚みの選択並びに、層対の数、(例えば5以上20以下など)の選択によって、角度依存性の透過性が前述したように設定できる。ブラッグミラーの角度依存性の透過性に基づいて、インコヒーレントな第2の電磁ビームは(これは前述したように限界角度よりも大きな角度で第1のフィルタ素子に入射する)第1のフィルタ素子から半導体層列の方向へ戻され、反射される。それにより活性領域から放射されるインコヒーレントな第2の電磁ビームは放射方向に沿って減衰されるようになる。
【0036】
同時に前記ブラッグミラーは波長依存性の透過性ないしは波長依存性の反射性も有し得る。この場合の反射性は波長に依存して、すなわち典型的には大域的な主要最大値とその他の複数の局所的な極大値を伴う波長依存性の作用によって特徴付けられてもよい。特に有利には、ブラッグミラーは波長依存性の反射性の局所的極大値が第1の波長領域に存在するように構成される。コヒーレントな第1の電磁ビームの第1の波長領域は、例えば波長依存性の反射性の第1の局所的極大値の波長領域に相応し、特に大域的主要最大値の短波側の第1の局所的極大値に相応し得る。
【0037】
第1のフィルタ素子(これはブラッグミラーを含み、又は含み得るか、又は以下に説明するその他の実施形態のように構成され得る)に対して付加的若しくは代替的に、フィルタ構造部が少なくとも第2のフィルタ素子を有し得る。この第2のフィルタ素子は、ビーム出力結合面に対向する半導体層列側に配設若しくは被着され得る。
【0038】
この場合第2のフィルタ素子は電磁ビームに対して角度依存性の透過性を有し得る。この場合の透過性は放射方向に対する角度の増加と共に増加し得る。このことは、第2のフィルタ素子が角度依存性の透過性を備え、その透過性ないし反射性に関しては基本的に前述した角度依存性の透過性を備えた第1のフィルタ素子とは逆に作用し得る。角度依存性の透過性を備えた第2のフィルタ素子によって、特に次のことが可能となり得る。すなわち、限界角度よりも小さい角度で半導体層列から放射される電磁ビームが、限界角度よりも大きい角度で放射される電磁ビームよりも反射性が大きくかつ透過性は少なくなることである。この場合の限界角度は40°以下、有利には30°以下、特に有利には20°以下であり得る。特に第2のフィルタ素子の透過性は、限界角度よりも大きな角度の場合、20%以下、有利には10%以下、特に有利には5%以下である。さらに第2のフィルタ素子の反射性は、限界角度以下の角度の場合、50%以上、有利には90%以上、特に有利には99%以上である。
【0039】
それにより、第2のフィルタ素子は特にインコヒーレントな第2の電磁ビームを(これは限界角度よりも大きな角度で第2のフィルタ素子に入射する)第2のフィルタ素子とビーム出力結合面の対向側表面とを通って放射することが可能であってもよい。それに対してコヒーレントな第1の電磁ビームは第2のフィルタ素子から半導体層列内部へ入り、さらに放射方向に戻るように反射され得る。
【0040】
代替的に第2のフィルタ素子は第1のフィルタ素子と同じように角度依存性も有し得る。そのためインコヒーレントな第2の電磁ビームは第2のフィルタ素子において反射され、コヒーレントな第1の電磁ビームの一部、例えば10%以下、有利には5%以下、特に有利には1%以下は第2のフィルタ素子を通って放射され得る。この種の実施形態においては例えば次のような構成も有利である。すなわちビーム出力結合面に対向する側の半導体層列表面に例えばフォトダイオードなどのビーム検出器を後置接続し、この検出器によってフィルタ素子を通って放射されたコヒーレントな第1の電磁ビームを検出する構成である。このビーム検出器は例えばレーザー光源の放射強度を制御するための出力制御装置内の構成要素であってもよい。また第2のフィルタ素子はビーム検出信号の信号雑音比が高い場合に有利である。
【0041】
特に第2のフィルタ素子はブラッグミラーとして実現してもよい。これはビーム出力結合面に対向する表面に被着され、前述したブラッグミラー用の材料の少なくとも1つを有し得る。
【0042】
ブラッグミラーを備えた第1のフィルタ素子か又は第2のフィルタ素子のケースにおいては、フィルタ構造部が前述したようなコヒーレントな第1の電磁ビームのための共振器の一部として実現されてもよい。このことは、第1及び/又は第2のフィルタ素子がそれぞれ共振器ミラーの一部か若しくはそれぞれが共振器ミラーとして実現されることを意味する。
【0043】
さらに第1のフィルタ素子は波長依存性の透過性を備えた第1のフィルタ素子を有し得る。これはエタロンとして、あるいはファブリーペロー干渉計として実現されてもよい。さらに第1のフィルタ素子は例えば面平行な2つの主要面を備えたガラスプレートを有していてもよい。さらにそれらの主要面は、それぞれ反射性を増減させるコーティング部分、例えば前述したようなブラッグミラー用の材料の1つからなるコーティング部分を有していてもよい。特にエタロンは半導体層列のビーム出力結合面に配設され得る。また代替的に有利には、エタロンが半導体層列に直接配設されるのではなく、半導体層列とは別個の構成素子として実現される。その場合にはエタロンは有利にはケーシング窓の一部として、あるいはケーシング窓として実現され得る。
【0044】
エタロンの波長依存性の透過性は、材料の選択と光学的共振器の厚みの選択、及び主要面の少なくとも1つのコーティングの選択によって次のように選択可能となる。すなわちコヒーレントな第1の電磁ビームの第1の波長領域が、エタロンの伝送最大値の波長領域に相当するように選択可能である。このようなエタロンはこの場合光学的なバンドパスフィルタと理解されたい。インコヒーレントな第2の電磁ビームの第2の波長領域が第1の波長領域を含むことによって、つまり第1の波長領域よりも大きいことによって、第1の波長領域を超える第2の波長領域の一部が放射方向に沿ってエタロンにより少なくとも部分的に減衰され得る。特にインコヒーレントな第2の電磁ビームはエタロンによって反射される。その場合有利には、エタロンが次のように放射方向において配置される。すなわちエタロンの面平行な主要面が放射方向と、90°よりも小さい角度を形成するように配置される。なぜならそれによって例えばインコヒーレントな第2の電磁ビームの半導体層列内への逆反射が沮止されるか少なくとも低減されるからである。
【0045】
特にブラッグミラーかまたはエタロンを有している第1のフィルタ素子は、前述したようなDFB構造部を有している半導体層列と組み合わせ可能である。なぜならDFB構造部の波長依存性の特性がブラッグミラー及び/又はエタロンの波長依存性の特性によって容易に調整できるからである。その際特に有利には、第1のフィルタ素子が直接半導体層列に配設される。
【0046】
さらに第1のフィルタ素子は光学的バンドエッジフィルタ、すなわち光学的なハイパスフィルタ若しくはローパスフィルタを有し得る。この光学的なバンドエッジフィルタの限界周波数は次のように選択可能である。すなわち、コヒーレントな第1の電磁ビームは有利には減衰なしで第1のフィルタ素子を通って伝送されるが、インコヒーレントな第2の電磁ビームの第2の波長領域の一部、すなわち第1の波長領域の短波側若しくは長波側でそれを超えた部分は、放射方向において減衰されるように選択可能である。この場合光学的なバンドエッジフィルタは例えばブラッグミラー若しくは吸収性のカラーフィルタを有し得る。さらに付加的に前記光学的バンドエッジフィルタは以下で説明するような飽和特性を有していてもよい。
【0047】
光学的なバンドエッジフィルタは直接半導体層列に設けられてもよいし、別個の素子として放射方向でみて半導体層列の後方に配設してもよい。特に吸収性のバンドエッジフィルタの場合には、別個の素子としての配置構成によって半導体層列のビーム出力結合面の加熱が回避される。これにより半導体層列の寿命と最大出力が高められる。さらに第1のフィルタ素子は電磁ビームに対して非透過性の材料を含んだ層を有し得る。この場合の非透過性の材料は、珪素、ガリウム、ゲルマニウム、アルミニウム、クロム、チタン、あるいはそれらの組み合わせを有し得る。非透過性の材料を備えた層は、この場合少なくとも部分的にビーム出力結合面の第2の部分領域に直接か若しくはその上方に配設される。特に有利には非透過性材料を備えた層は第2の部分領域全体に直接か若しくはその情報に配設され得る。さらに非透過性材料は、ビーム出力結合面の全体が第1の部分領域まで非透過性材料で覆われるように構造化されビーム出力結合面に被着される。それに対して非透過性材料を備えた層はビーム出力結合面の第1の部分領域上方に開口部を有していてもよい。その場合例えば当該層は孔部絞りとして実現され得る。
【0048】
それにより、インコヒーレントな第2の電磁ビームがもはやビーム出力結合面の第2の部分領域を介して放射されることは不可能となる。非透過性材料を備えた層の構造化された被着は、この場合例えば熱的被着手段、電子的被着手段またはイオン支援された被着手段、例えば蒸着、電子的若しくはイオン支援された気相堆積手段、又はスパッタリングを用いて実現され得る。その際非透過性材料は例えばマスクを用いて構造化されて被着される。
【0049】
マスクを用いた被着に代えて、非透過性材料を備えた層が前述したような手法の1つを用いてビーム出力結合面の第1及び第2の部分領域に大規模に被着されてもよい。適切な雰囲気、例えば酸素雰囲気及び/又は窒素雰囲気の中で第1の部分領域の層が光化学的に変換され得る。例えば前述したような材料の少なくとも1つを有し得る非透過性材料が光制御を用いて雰囲気に応じて透過性の酸化物、窒化物又は酸窒化物に光化学的に変換され得る。
【0050】
光制御はこの場合例えば外部からのビーム光源、例えばレーザーを用いて行われ、さらにマスクを用いて構造化された照明によって行われる。
【0051】
代替的に若しくは付加的に光化学的な変換のための光制御はコヒーレントな第1の電磁ビームによって行われてもよい。それに対しては方法ステップA)において半導体層列が準備され、さらなる方法ステップB)において非透過性材料を備えた層を前述したように大規模にビーム出力結合面の第1及び第2の部分領域上に被着させる。その後でこの半導体層列を方法ステップC)において動作させる。前述したようにコヒーレントな第1の電磁ビームはインコヒーレントな第2の電磁ビームよりも何倍も高い強度を有し得る。それにより、コヒーレントな第1の電磁ビームは非透過性材料を備えた層において、透過的な酸化物、窒化物又は酸窒化物のために光化学的な反応をトリガし得る。それにより光化学的な反応は第1の部分領域においてのみトリガされ、そこではコヒーレントな第1の電磁ビームがビーム出力結合面から放射される。
【0052】
前述した光化学的反応に対して代替的若しくは付加的に、非透過性材料においても光化学的反応をトリガし得る。その場合は非透過性材料は外部のビーム光源によって、若しくはビーム出力結合面の第1の部分領域からのコヒーレントな第1の電磁ビームにより、例えば蒸着される。
【0053】
光化学的及び/又は光熱的反応の後では、第2の部分領域を介して非透過的でかつ第1の部分領域を介して透過的となるように作成された層がさらなる方法ステップにおいて、さらなる層、例えばブラッグミラーとの関連で上述したさらなる金属酸化物若しくは半金属酸化物または金属窒化物若しくは半金属窒化物からなる不活性層を有するさらなる層がコーティングされる。それにより非透過性材料を備えた層が永久的に保護される。
【0054】
少なくとも1つの第1のフィルタ素子はさらに電磁ビームに対し強度依存性の透過性を有し得る。既に前述したようにコヒーレントな第1の電磁ビームは、インコヒーレントな第2の電磁ビームの第2の強度よりも大きい第1の強度を有し得る。このことは、第1のフィルタ素子が第2の強度と同じかそれ以上の強度を有する電磁ビームに対して非透過的になることを意味する。しかしながら第1のフィルタ素子は、第1の強度と同じ強度の電磁ビームに対しては透過的であってもよい。それにより、第1のフィルタ素子はコヒーレントな第1の電磁ビームに対しては透過的であるが、インコヒーレントな第2の電磁ビームに対しては透過的ではなくなる。
【0055】
この場合第1のフィルタ素子は、ビーム出力結合面の第1及び第2の部分領域に大規模に被着され得る。それに対して代替的に第1のフィルタ素子は、放射方向で見て別個の素子として第1及び第2の部分領域を介して半導体層列に後置接続され得る。第1のフィルタ素子は例えば共振器ミラーに被着されてもよい。
【0056】
さらに第1のフィルタ素子の強度依存性の透過性は次のことによって特徴付けられる。すなわち強度の増加と共に透過性が増大することによってである。その際透過性は限界強度から飽和特性を有し得る。このことは、限界強度から第1のフィルタ素子の透過性がもはや強度に依存しなくなることを意味し、第1のフィルタ素子の透過性は限界強度と同じかそれ以上の強度のもとで最大値を有することを意味する。有利にはその場合限界強度は、第2の強度よりも大きく第1の強度よりも小さいものであってもよい。
【0057】
例えば第1のフィルタ素子はコヒーレントな第1の電磁ビームのエネルギーよりも小さいバンドギャップを備えた半導体材料を有し得る。この場合ある波長領域を有する電磁ビームのエネルギーとしてその波長領域の平均波長に相応するエネルギーが挙げられる。
【0058】
さらに前記バンドギャップはインコヒーレントな第2の電磁ビームのエネルギーより小さくてもよい。
【0059】
バンドギャップがコヒーレントな第1の電磁ビーム及び/又はインコヒーレントな第2の電磁ビームのエネルギーよりも小さいことによって、コヒーレントな第1の電磁ビーム及び/又はインコヒーレントな第2の電磁ビームは、半導体材料内で誘起された電子状態においてコヒーレントな第1の電磁ビームないしはインコヒーレントな第2の電磁ビームの吸収によって生成され得る。有利には励起された電子状態の逆励起ないしは下方遷移の際には半導体材料において再び自由なエネルギーが熱、格子振動として出力される。
【0060】
電子状態の励起に結びつく吸収によって、コヒーレントな第1の電磁ビーム及び/又はインコヒーレントな第2の電磁ビームは、減衰される。半導体材料に対して照射される強度に依存して、励起された電子状態の寿命は半導体材料において限界強度のもとで1つの状態が達成される。すなわち半導体材料が入射した電磁ビームを引き続き吸収できない状態である。それにより半導体材料はここで透過的となる。この半導体材料の特性は飽和特性とも称する。
【0061】
この場合透過的な状態は特に半導体材料に入射する局所的な強度に依存し得る。このことは、第1のフィルタ素子が少なくとも1つの第1のフィルタ領域において透過的であり、入射する電磁ビームの強度が、透過的状態を引き起こすのに十分であり、限界強度以上であることを意味する。同時に第1のフィルタ素子は第2のフィルタ領域において、入射する電磁ビームの強度が限界強度以下にあり、まだ吸収的でそれ故当該領域においては非透過的であるか少なくとも完全には透過的でない。
【0062】
それ故に限界強度は、半導体材料の選択によって設定される。すなわち第2の強度が限界強度よりもまだ小さく、それによって第1のフィルタ素子2は、ビーム出力結合面の第2の部分領域を介して非透過的である。この限界強度は第1の強度よりも小さい。そのため第1のフィルタ素子は、ビーム出力結合面の第1の部分領域を介して透過であり、コヒーレントな第1の電磁ビームは第1のフィルタ素子によって放射され得る。
【0063】
この場合半導体材料のバンドギャップと、インコヒーレントな第2の電磁ビームの平均エネルギーとの間の差分が、少なくとも第2の波長領域の1/2の幅に相応する。それによりインコヒーレントな第2の電磁ビームの少なくとも80%、有利には90%、特に有利には99%が第1のフィルタ素子によって吸収され得る。その際の差分は例えば10meV以上でかつ15meV以下であり得る。
【0064】
強度依存性の透過性の設定と限界強度は例えば厚みと結晶品質と半導体材料の選択によって行われる。第1のフィルタ素子の半導体材料によって伝送され得る電磁ビームの成分は、この場合相互指数関数的に半導体材料の厚みないしは半導体材料を有する層に依存する。その際厚みは例えば次のように選択される。すなわち限界強度以下の強度によって第1のフィルタ素子に対して入射される電磁ビームによって第1のフィルタ素子を通って伝送される成分が1/e以下、有利には1/e
2以下となるように選択される。この場合前記eはオイラーの数である。
【0065】
第1のフィルタ素子は例えばIII−V族の半導体材料系からなる1つまたはそれ以上の材料、例えばInAlGaAs、InGaAlP及びInGaAlN、II−VI族の半導体材料系、例えばZnSe、ZnS、又はSi、Geなどのような半導体材料を有し得る。さらに1つ又はそれ以上の、C,Mg,Zn,Si,Te,Se,Fe,Cr及びOからなる材料半導体材料がドープされてよい。
【0066】
第1のフィルタ素子は例えば半導体材料を含んだ1つの層を有し得る。さらに第1のフィルタ素子は2つの誘電層を有し得る。これらの誘電層の間には半導体材料を備えた層が配設される。誘電層の間に半導体材料を備えた層の埋込みは、層列の堆積を用いて行われ得る。その際半導体材料は、エピタキシャル成長している層または多重結晶、アモルファス層を形成し得る。これらの誘電層は例えば前述したブラッグミラーとの関係で酸化物材料または窒化物材料を有し得る。代替的若しくは付加的に半導体材料を有する層は、マトリックス材料、有利には誘電性酸化物材料、または窒化物材料を有し得る。その際半導体材料はアモルファスに埋め込まれていてもよい。例えばマトリックス材料として半導体材料SiNを有する層を有し、その際アモルファスSiが埋め込まれる。
【0067】
半導体材料に対して代替的若しくは付加的に、第1のフィルタ素子は波長変換材料を有し得る。それは第2の波長領域を有するインコヒーレントな第2の電磁ビームを、第2のスペクトルとは異なる第3の波長領域を有する電磁ビームに変換するのに適している。この波長変換材料はこの場合半導体材料のように限界強度と飽和特性を有し得る。波長変換材の限界強度は材料の選択によって設定され、さらに厚みが次のように設定される。すなわちインコヒーレントな第2の電磁ビームが第1のフィルタ素子をまだ飽和できず、それに対してコヒーレントな第1の電磁ビームは限界強度よりも大きい。それにより第1のフィルタ素子は、ビーム出力結合面の第1の部分領域を介して飽和され、故にコヒーレントな第1の電磁ビームの少なくとも一部に対して透過的である。付加的に若しくは代替的に前述した半導体材料は、励起した電子状態の逆励起の際には、第3のスペクトルを有する電磁ビームが放射され、それに伴って少なくとも部分的に前記波長変換材料のように作用する。
【0068】
その場合有利には第3の波長領域が例えば赤外線波長領域にあり、肉眼にとっては知覚不能である。代替的に若しくはふかてきにフィルタ構造部は第3のフィルタ素子を有し得る。この第3のフィルタ素子は第1のフィルタ素子に後置接続され、第3の波長領域の電磁ビームに対して非透過的である。この場合第3のフィルタ素子は特にコヒーレントな第1の電磁ビームに対しても透過的であり得る。例えば第3のフィルタ素子は吸収性のカラーフィルタを含み得る。
【0069】
第3のフィルタ素子は例えば別個の素子として、あるいはケーシング窓若しくはその一部として放射方向で見て第1のフィルタ素子の後方に接続してもよい。それにより例えばビーム出力結合面における熱的負荷が低減され、これによって半導体層列の寿命が延びる。
【0070】
波長変換材料は1つ又は複数の次のような材料を有し得る。すなわち希土類元素のグレネード、アルカリ希土類金属、例えばYAG:Ce
3+、窒化物、ケイ酸塩窒化物、シオネ(Sione)、シアローネ(Sialone)、アルミン酸塩、酸化物、ハロゲン化リン酸塩、オルト珪酸塩、クロロシリケート。さらに波長変換材料は付加的に若しくは代替的に有機材料も含み得る。これは例えば次のようなグループすなわち、ベリレン、ベンゾピレン、クマリン、ローダミン、アゾ染料から選択されてもよい。波長変換層は適切な化合物及び/又は前記は超変換材料の組合わせを有し得る。
【0071】
さらに第1のフィルタ素子は透過性のマトリクス材料を含み得る。この透過性マトリクス材料は波長変換材料を囲繞するか含有し得る。あるいは1つ若しくはそれ以上の波長変換材料と化学的に結合されていてもよい。透過性マトリクス材料は、例えばシロキサン、エポキシド、アクリラート、メタクリル酸メチル、イミド、カーボネート、オレフィン、スチロール、ウレタン、またはそれらから派生した例えばモノマー、オリゴマー、ポリマーなどの形態の誘導体、さらに混合物、例えばコーポリマーや化合部物を有し得る。またマトリクス材料は例えば、エポキシ樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチロール、ポリカーボネート、ポリアクリラート、ポリウレタン、シリコン樹脂、あるいはポリシロキサンまたはそこからの混合物などを含んでいてもよい。
【0072】
コヒーレントな第1の電磁ビームの第1の強度に基づいて、第1のフィルタ素子の第1のフィルタ領域においては第1の温度が発生し得る。それに対して第1のフィルタ素子の第2のフィルタ領域においては、第2の温度がインコヒーレントな第2の電磁ビームの第2の強度に基づいて発生し得る。第2の強度は第1の強度よりも低いものであり得るので、第2の温度は第1の温度よりも低い可能性がある。このことは、第1のフィルタ素子が第1のフィルタ領域(これはビーム出力結合面の第1の部分領域に直接か若しくはその上方に配置され得る)において、第2のフィルタ領域(これはビーム出力結合面の第2の部分領域に直接か若しくはその上方に配置され得る)の温度よりも高い温度を有し得ることを意味する。
【0073】
第1のフィルタ素子は電磁ビームに対してさらに温度依存性の透過性を有し得る。その場合第1のフィルタ素子は限界温度を有し得る。この限界温度以下では第1のフィルタ素子は非透過的となる。特にこの限界温度は第2の温度よりも高くかつ第1の温度よりは低い。このことは、第1のフィルタ素子が第1のフィルタ領域においてのみ透過的であることを意味する。そのためビーム出力結合面の第2の部分領域から放射されるインコヒーレントな第2の電磁ビームは、第1のフィルタ素子を通って放射されない。
【0074】
第1のフィルタ素子は例えば温度に依存して原子レベル若しくは分子レベルの近距離秩序が変化し得る材料を有し得る。例えば第1のフィルタ素子は単一の層若しくは複数の層からなる積層構造で実現されてもよい。この積層構造は例えば表面プラズモンモードを有し、限界温度以下ではコヒーレントな第1の電磁ビームとインコヒーレントな第2の電磁ビームに結合し得るものである。この場合プラズモンとして自由電荷担体、例えば電子の周期的に振動する粗密度振動が第1のフィルタ素子若しくは第1のフィルタ素子の層において現われる。特にこの場合の表面ないし境界面プラズモンとは自由電荷の粗密波の縦の振動を表し、この振動は当該表面において第1のフィルタ素子の層表面の延在方向に対して平行な方向に表われる。この表面プラズモンは、第1のフィルタ素子の少なくとも1つの層の原子若しくは分子の近距離秩序に依存し得る。表面プラズモンは、特に半導体層列に向いた側の第1のフィルタ素子の層表面において発生し得る。第1のフィルタ素子における表面プラズモンとの電磁ビームの結合によって、(この結合結果自体も表面プラズモンと称される)、電磁ビームのエネルギーが第1のフィルタ素子に対して伝送され、それによって当該電磁ビームのエネルギーの少なくとも一部が吸収され得る。第1のフィルタ素子はそれによって、電磁ビームが第1のフィルタ素子に入射する領域内で加熱され得る。
【0075】
第1のフィルタ素子のフィルタ領域内の温度が限界温度以下に維持される限り、表面プラズモンは第1のフィルタ素子の当該フィルタ領域内に存在し得る。そこでは電磁ビームが結合されている。少なくとも1つのフィルタ領域内での第1のフィルタ素子の限界温度以上の温度までの加熱によって、第1のフィルタ素子の少なくとも1つの層の原子若しくは分子の近距離秩序が次のように変更される。すなわち電磁ビームが結合し得る箇所において表面プラズモンがもはや存在しないように変更される。それにより第1のフィルタ素子は当該フィルタ領域において透過的となる。その際原子若しくは分子の近距離秩序は例えば温度依存性の祖密度変化及び/又は位相変化によって、例えば微細なブリスタリングなどが第1のフィルタ素子の少なくとも1つの層においてなされ得る。
【0076】
限界温度は第1のフィルタ素子の少なくとも1つの層の材料を用いて設定可能である。例えば少なくとも1つの層は、例えばアンチモン、銀、プラチナ、パラジウム、亜鉛などで形成されるグループからの材料を有していてもよい。特に第1のフィルタ素子は、前述した材料グループのうちの少なくとも1つを有する積層構造部を有していてもよい。例えば青色波長領域のコヒーレントな第1の電磁ビームとインコヒーレントな第2の電磁ビームのために、第1のフィルタ素子は有利には、アンチモンを備え、次の材料、N,Te,Ge,Ag,Inのうちの1つ若しくは複数を有する層、例えばSbN
x,SbTe,GeSbTe及び/又はAgInSbTeであってもよい。さらに第1のフィルタ素子は。2つの窒化ケイ素層の間に配置された1つの層内に前述したような材料を有する積層部を有していてもよい。また代替的若しくは付加的に第1のフィルタ素子はZnS−SiO
2層を備えた積層部を2つのPtOx層の間に有していてもよい。赤色の第1及び第2の波長領域のために第1のフィルタ素子は例えばAgO
x,PtO
x及び/又はPdO
xを含んだ層を有していてもよい。この種の層若しくは積層部は“超高解像度近視野構造(Super-RENS)”とも称されている。
【0077】
さらに前記フィルタ構造部は第4のフィルタ素子を有し得る。この第4のフィルタ素子は半導体層列の1つの表面と成り得る平面に配置されている。この第4のフィルタ素子を備えた表面は、ビーム出力結合面と、該ビーム出力結合面に対向する側の表面とは異なるものであってもよい。特にこの第4のフィルタ素子は、コヒーレントな第1の電磁ビームの放射方向に平行する延在面を備えた表面に配置され得る。この種の平面は例えばビーム出力結合面から当該ビーム出力結合面に対向する側の表面まで延在している半導体層列の側面であってもよい。
【0078】
さらに前記平面は反動地層列の1つの層の境界面であってもよい。この場合は半導体層列が前述したような複数の層を有し得る。特に前記平面はこの場合半導体層列の2つの層の間の境界面であってもよい。
【0079】
また第4のフィルタ素子は、非透過性材料を備えた層を有していてもよい。この非透過性材料は、特にインコヒーレントな第2の電磁ビームに対して吸収性の材料であり得る。非透過性材料を備えた層は、例えば活性領域とは反対側の基板表面に被着されてもよいし、活性領域に向いた側の基板表面に被着されてもよい。さらに非透過性材料を備えた層は、活性領域とは反対側の導波路層、例えば非透過性の外被層として設けられていてもよいし、活性領域と電気的なコンタクト層、例えば電極との間の部分として設けられてもよいし、あるいは活性領域と基板との間に被着されてもよい。この種の第4のフィルタ素子の配置構成は、インコヒーレントな第2の電磁ビームの半導体層列内の特に電極方向及び/又は基板方向への拡張を阻止若しくは少なくとも低減させ得る。このことは、透過性の基板、例えばGaNのような半導体層列において特に有利となる。それにより、放射方向に放射されたインコヒーレントな第2の電磁ビームがビーム出力結合面の第2の部分領域を介して低減されるようになる。
【0080】
非透過性の材料、例えば吸収性の材料は、有利には導電性であってもよいし、ケイ素、ガリウム、ゲルマニウム、アルミニウム、クロム、チタンなどの材料の1つを有するか若しくはそれらの組合わせを有するものであってもよい。
【0081】
代替的若しくは付加的に、第4のフィルタ素子は、半導体層列の電気的なコンタクト形成のために設けられる電極を含んでいてもよい。この電極は反射性及び/又は伝送性の低い有利には吸収性の材料、例えばクロム及び/又はチタンなどを含み得る。
【0082】
さらに第4のフィルタ素子は、複数の層を有していてもよい。これらの層は半導体層列の複数の表面、すなわちビーム出力結合面とは異なる表面か若しくはビーム出力結合面における少なくとも第1の部分領域とは異なる表面であり得る。
【0083】
さらに第4のフィルタ素子は表面構造部を有するか含むものであってもよい。この表面構造部は例えば半導体層列のビーム出力結合面とは異なる少なくとも1つの表面の凹部構造及び/又は凸部構造であってもよい。特に半導体層列は、当該半導体層列の複数の層が上下に成長した場合の成長方向を有している。それによりこの半導体層列は、成長方向に対して垂直方向に配置された少なくとも1つの表面を有し得る。この表面は例えば活性領域とは反対側の基板表面若しくは活性領域に向いた側の基板表面であってもよいし、あるいは電気的なコンタクト層、例えば電極であってもよい。
【0084】
例えば半導体層列の1つ若しくは複数の層は、前述したようなリッジ構造部又は台形状構造部において基板とは反対側の活性領域側面にパス状若しくはブリッジ状に形成されていてもよい。表面構造部を備えた表面は、有利にはブリッジ状に形成された層を横方向にずらして、あるいは隣接させるように及び/又は接するようにした表面であってもよい。これらの表面ではその表面構造部が活性領域に対して横方向にずらされている。
【0085】
さらに前記表面構造部は、凹凸状に形成された表面構造部が半導体層列内に延在するように形成されている。このことは、当該の表面構造部が半導体層列の少なくとも1つの層内に若しくは複数の隣接する層内に向けて延在し得ることを意味している。特に有利には、活性領域外の表面構造部も当該半導体層列内に延在し得る。
【0086】
例えば前記表面構造部は、1つの突起若しくは少なくとも1つの溝を有し得る。これらは側方において活性領域からずらされて、半導体層列の導波路層内まで侵入し得る。この表面構造部は側方において少なくとも数百nm、有利には少なくとも1ミクロメータ、特に有利には数ミクロメータ、活性領域及び/又はリッジ構造部又は台形状構造部からずらされて配置されていてもよい。
【0087】
表面構造部は例えば第1及び/又は第2の波長領域の約1/10の平均周期を有する凸部を有し、半導体層列内部に侵入する凹部が活性領域を含む半導体層列の層内に向けて有利には前記凸部から突き破られないように形成されていてもよい。前記凸部は例えばドライエッチング若しくはウエットエッチングによって形成され得る。
【0088】
さらに表面構造部は少なくとも1つのトレンチ若しくは規則的に配置された凹部を有していてもよい。前記トレンチ若しくは規則的に配置された凹部は半導体層列の層の延在方向に対して平行な延在方向を有し、さらにコヒーレントな第1の電磁ビームの放射方向と、0°以上でかつ90°以下の角度を形成し得る。
【0089】
0°の角度とは特に少なくとも1つのトレンチ若しくは規則的に配置された凹部が放射方向に対して平行に配向されていることを意味しており、それに伴い活性領域の活性領域に対しても平行に配向されていることを意味する。代替的若しくは付加的に第4のフィルタ素子は、少なくとも1つのトレンチを有し、その延在方向は放射方向と0°よりも大きく90°よりも小さい角度を、すなわち有利には30°以上でかつ60°以下の角度、特に有利には45°の角度を形成していてもよい。このことは、特に前記トレンチが放射方向において活性領域に近似することを意味する。
【0090】
前記トレンチ若しくは規則的に配置された凹部は、次のような深さを有し得る。すなわち当該トレンチ若しくは凹部が、導波路層を越えて200nm以内の間隔をあけるまで半導体層列内へ延在するような深さである。さらにこの種の表面構造部は、導波路層内まで、若しくは基板に対向する側の半導体層列の表面から基板内まで延在していてもよい。
【0091】
その場合前記トレンチ又は凹部は、半導体層列の成長方向に対して平行な側面を有する断面、又は前記成長方向に対して45°の角度まで傾斜した側面を有する断面を有し得る。このことは、前記トレンチ又は凹部がU字形状またはV字形状の断面を有し得ることを意味する。傾斜した側面によって半導体層列内を伝播するインコヒーレントな第2の電磁ビームに偏向が生じ、例えば前述したような吸収性の材料を備えた層に向けられるようになり得る。さらに付加的に前記トレンチ又は凹部は、少なくとも部分的に前記吸収性の材料を備えていてもよいし、超高解像度の近視野構造材料をコーティング又は充填されていてもよい。
【0092】
特に有利には前述の表面構造部は対でリッジ構造部又は台形状構造部に対して対称的に配置され、リッジ又は台形状の構造部に隣接する表面上に配設されていてもよい。
【0093】
さらに複数のトレンチ若しくは規則的に配置された凹部を互いに平行に延在させて隣接するように配置してもよい。その場合複数のトレンチ若しくは規則的に配置された凹部は、第1及び第2の波長領域の平均波長に等しいかそれよりも小さい間隔、特に有利には平均波長の約1/4の間隔を有し得る。このような間隔での複数のトレンチ若しくは凹部の連続によって、当該表面構造部は一次元若しくは二次元の光学的結晶に等しい作用または類似の作用を有するようになる。
【0094】
半導体層列の少なくとも1つ若しくは複数の層におけるリッジ状構造部又は台形状構造部のブリッジ状の構成によって、屈折率の変化は典型的には0.001〜0.01の範囲に収まる。それにより、ブリッジ状の構造部は導波路を形成し得る。それと共に半導体層列内の導波路層によって、インコヒーレントな第2の電磁ビームは当該半導体層列内部でビーム出力結合面の方向に誘導される。ここでの第4のフィルタ素子によって、半導体層列の層の延在方向に平行な方向での半導体層列内部のインコヒーレントな第2の電磁ビームの広がりは、効果的に低減されるか阻止される。それにより、ビームの出力結合面の第2の部分領域からのインコヒーレントな第2の電磁ビームの伝播は低減されるようになる。
【0095】
前記フィルタ構造部はこれまでに説明してきた第1、第2、第3及び第4のフィルタ素子の1つだけを有していてもよい。さらに前記フィルタ構造部は、これまでに説明してきた第1、第2、第3及び第4のフィルタ素子の複数を組合わせて形成されていてもよい。これにより、照射特性及び使用される材料並びに半導体層列の実施形態に関するフィルタ構造部の所望のフィルタ特性が適合できるようになる。例えばフィルタ構造部は、前述した第1のフィルタ素子の1つが半導体層列に直接配置されている構造を有し、さらに別の第1のフィルタ素子が半導体層列の一部として放射方向でみて後置接続されたケーシング窓であってもよい。さらに第1及び/又は第2及び/又は第3のフィルタ素子が例えば第4のフィルタ素子と組合わされたフィルタ構造を形成するものであってもよい。
【0096】
本発明のさらなる利点及び有利な実施形態及び改善構成は、以下の明細書で図面1A〜17に基づいて詳細に説明する。