(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6033961
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】荷物の保安検査用CTシステム及びその検知装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/04 20060101AFI20161121BHJP
G01N 23/083 20060101ALI20161121BHJP
G01N 23/10 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
G01N23/04 320
G01N23/083
G01N23/10
【請求項の数】19
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-531431(P2015-531431)
(86)(22)【出願日】2013年7月15日
(65)【公表番号】特表2015-528576(P2015-528576A)
(43)【公表日】2015年9月28日
(86)【国際出願番号】CN2013079381
(87)【国際公開番号】WO2014044078
(87)【国際公開日】20140327
【審査請求日】2015年3月17日
(31)【優先権主張番号】201210350516.X
(32)【優先日】2012年9月19日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503414751
【氏名又は名称】同方威視技術股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183276
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 裕三
(72)【発明者】
【氏名】陳 志強
(72)【発明者】
【氏名】李 元景
(72)【発明者】
【氏名】張 麗
(72)【発明者】
【氏名】張 金宇
(72)【発明者】
【氏名】段 占軍
(72)【発明者】
【氏名】冉 龍松
(72)【発明者】
【氏名】黄 清萍
【審査官】
藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】
特表2006−502386(JP,A)
【文献】
特開平10−082747(JP,A)
【文献】
特開昭60−137350(JP,A)
【文献】
特表2009−519471(JP,A)
【文献】
特表2005−534009(JP,A)
【文献】
特表2007−528253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/04
G01N 23/083
G01N 23/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物を通過させて荷物の保安検査用CTシステムから出入りするための走査通路と、
走査通路の一方の側に設けられているX線ソースと、
前記走査通路の他方の側に設けられている検知アーム台と、
前記検知アーム台に実装されている複数の検知ユニットと、を備える前記荷物の保安検査用CTシステムにおいて、
前記複数の検知ユニットのそれぞれにおいて、少なくとも一つの検知器結晶体の頂点が、前記走査通路の中心を円心とする円弧の上に位置し、且つ前記複数の検知ユニットが、順次に連続的に配列され、
前記複数の検知ユニットにおける検知器結晶体の全ての受信面が、X線ソースのターゲットを円心とする放射状ビームの範囲内に位置し、各検知ユニットにおいて、少なくとも一つの検知器結晶体の受信面の中点とX線ソースのターゲットとを結ぶ線が、検知器結晶体の受信面に垂直する
ことを特徴とする荷物の保安検査用CTシステム。
【請求項2】
各検知ユニットは、一つ以上の検知器結晶体を備え、X線ソースのターゲットと検知器結晶体の受信面の中点とを結ぶ線が受信面となす角の最小値は、85°よりも大きい
ことを特徴とする請求項1に記載の荷物の保安検査用CTシステム。
【請求項3】
前記X線ソースの射出角は、少なくとも、前記X線ソースのターゲットと前記円弧上における首尾の二つの検知器結晶体の末端とを結ぶ二つの線がなす角よりも大きい
ことを特徴とする請求項2に記載の荷物の保安検査用CTシステム。
【請求項4】
前記走査通路の有効な走査領域は、前記X線ソースのターゲットと前記円弧上における首尾の二つの検知器結晶体の末端とを結ぶ二つの線がなす角の範囲内にある
ことを特徴とする請求項3に記載の荷物の保安検査用CTシステム。
【請求項5】
各検知ユニットに、二つ以上の検知器結晶体を配置し、
各検知器結晶体間の距離は、20mm以上である
ことを特徴とする請求項4に記載の荷物の保安検査用CTシステム。
【請求項6】
各検知ユニットは、支持体と、支持体に接続する高密度の放射防止板と、前記高密度の放射防止板の上に前記X線ソース側に対向するように設けられた検知器結晶体と、を備える
ことを特徴とする請求項5に記載の荷物の保安検査用CTシステム。
【請求項7】
前記複数の検知ユニットからの信号を収集するための収集モジュールと、
X線ソースの放射及び前記信号の収集操作を制御するための制御モジュールと、
をさらに備え、
前記制御モジュール及び前記収集モジュールは、同一検知アーム台内に実装されている
ことを特徴とする請求項6に記載の荷物の保安検査用CTシステム。
【請求項8】
X線ソースからのビームを複数の扇形ビームに分解するための複数の格子を有する第1及び第2のコリメーターをさらに備える
ことを特徴とする請求項7に記載の荷物の保安検査用CTシステム。
【請求項9】
前記走査通路の軸方向に沿って、複数の検知器結晶体が実装されている検知器実装板を、さらに備え、
前記分解された複数の扇形ビームを、前記複数の検知器結晶体の受信面に対応させることで、前記走査通路の軸方向に沿って、同時に複数の検知データを取得する
ことを特徴とする請求項8に記載の荷物の保安検査用CTシステム。
【請求項10】
第1及び第2のコリメーターの格子は、X線の分布に関する一つまたは複数の点状のフィッティング曲線であり、異なる検知器結晶体の受信面におけるエネルギーの範囲をほぼ一致させるために、中央部分の格子のスリットが狭く、エッジ部分の格子のスリットが広くなるように形成されている
ことを特徴とする請求項8に記載の荷物の保安検査用CTシステム。
【請求項11】
前記第1及び第2のコリメーターの格子に、複数のスリットが設けられ、
前記スリットの数は、少なくとも二つである
ことを特徴とする請求項10に記載の荷物の保安検査用CTシステム。
【請求項12】
前記高密度の放射防止板は、鉛、W−Ni−Fe合金、または、鋼を含む
ことを特徴とする請求項6に記載の荷物の保安検査用CTシステム。
【請求項13】
前記走査通路を囲むスリップリングシステムを、さらに備え、
前記X線ソースと検知アーム台が、前記スリップリングシステムに実装されて、前記走査通路の中心の周りに回転する
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の荷物の保安検査用CTシステム。
【請求項14】
荷物の保安検査用CTシステムに用いられる検知装置において、
荷物を通過させて荷物の保安検査用CTシステムから出入りするための走査通路と、
走査通路の一方の側に設けられているX線ソースと、
前記走査通路の他方の側に設けられて、前記検知装置を実装するための検知アーム台と、を備える検知装置であって、
少なくとも一つの検知器結晶体の頂点が、走査通路の中心を円心とする一つの円弧上に位置してなる、順次に連続的に配置されている複数の検知ユニットを、さらに備え、
前記複数の検知ユニットにおける検知器結晶体の全ての受信面は、ターゲットを円心とする放射状のビームの範囲内にあり、各検知ユニットにおいて、少なくとも一つの検知器結晶体の受信面の中点とX線ソースのターゲットとを結ぶ線が、検知器結晶体の受信面に垂直する
ことを特徴とする荷物の保安検査用CTシステムに用いられる検知装置。
【請求項15】
各検知ユニットは、一つ以上の検知器結晶体を備え、
X線ソースのターゲットと検知器結晶体の受信面の中点とを結ぶ線が前記受信面となす角の最小値は、85°以上である
ことを特徴とする請求項14に記載の荷物の保安検査用CTシステムに用いられる検知装置。
【請求項16】
前記X線ソースの射出角は、少なくとも、前記X線ソースのターゲットと前記円弧上における首尾の二つの検知器結晶体の末端とを結ぶ二つの線がなす角よりも大きい
ことを特徴とする請求項14または15に記載の荷物の保安検査用CTシステムに用いられる検知装置。
【請求項17】
前記走査通路の有効な走査領域は、前記X線ソースのターゲットと前記円弧上における首尾の二つの検知器結晶体の末端とを結ぶ二つの線がなす角の範囲内にある
ことを特徴とする請求項16に記載の荷物の保安検査用CTシステムに用いられる検知装置。
【請求項18】
X線ソースからのビームを複数の扇形ビームに分解するための複数の格子を有する第1及び第2のコリメーターを、さらに備える
ことを特徴とする請求項14に記載の荷物の保安検査用CTシステムに用いられる検知装置。
【請求項19】
第1のコリメーターと第2のコリメーターとの間に、塵埃などの異物が検知器結晶体の受信面に付着しないように、検知器結晶体の受信面上の可視光をシールドするための遮光防塵材が実装され、
前記遮光防塵材は、軽い材料で、ポリテトラフルオロエチレン、プラスチック、ベークライト、アルミ箔を含むが、これらに限らない
ことを特徴とする請求項18に記載の荷物の保安検査用CTシステムに用いられる検知装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2012年9月19日に提出した、出願番号が201210350516.Xで、発明の名称が「荷物の保安検査用CTシステム及びその検知装置」である中国特許出願の優先権を主張し、当該出願の内容をすべて本出願にとりこむものとする。
【技術分野】
【0002】
本発明は、荷物の保安検査用CTシステムに用いられる検知装置に関する。より具体的には、本発明は、高速かつサイズの小さいCT結像の技術に用いられる検知装置に関し、最適なデバイス外形のサイズを保証するというニーズに応じる上で、高い走査速度を図ることができる。また、本発明は、上記検知装置を含む荷物の保安検査用CTシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
X線放射結像に基づくコンピュータ断層走査技術(以下、「CT走査技術」と略称する)において、CTデータの再構成によって断層内の被走査体の特徴の分布データを得ることができ、特徴のデータを解析することによって、荷物によくある疑いのある物質を識別することができる。荷物の保安検査領域において、保安検査機器の走査速度を向上し、機器全体の占めるスペース、特に機器全体の幅を減少させることは、保安検査領域でのコンピュータ断層走査技術(以下、「CT走査技術」と略称する)の応用広さに影響する重要的な要素である。
【0004】
一般的なCT機器は、X線ソースと、キャリブレーション装置と、回転スリップリングと、検知部材と、データ計算を行う専用コンピュータシステムと、給電システムと、制御システムなどからなる。CT性能及びデバイス外形のサイズに影響する主要な要素は、X線ソース、キャリブレーション装置及び検知部材のレイアウト方式がある。上記の各要素で、検知部材の配置形態は、直接に通路方向に垂直する機器全体の幅を決めるので、注目されている。
【0005】
普通のCTシステム構成において、一般的に、検知部材は、X線ソースのターゲットを中心とする同じ円周上に配置される。これによって、同じ時間内に、ビームが検知部に受信されるPの値の範囲が近づき、後段のアルゴリズム処理の負荷を減少させることができる。また、一部のメーカーは、検知器を簡単に複数の部分に分けることで、適当に機器全体の幅を減少しているが、検知器の配置による機器全体の幅に対する影響を完全に解消することができない。なお、検知器結晶体は、封止されて用いられる場合が多いので、検知器結晶体を簡単に複数の部分に分けると、データに対する収集及び制御を、それぞれ異なる制御部及び収集モジュールで図らなければならない。そのため、ユーザは、異なる収集時系列、伝送による影響を解決しなければならず、これはデータ収集の過程に不利になり、CTシステム走査の高速化を妨害する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の状況に鑑みて、本発明は、従来技術に存在する上記問題及び欠陥の少なくとも一つを解決することを目的とする。
【0007】
本発明の一つの目的は、CTシステムに用いられる検知器の新規の配置形態を提供することで、走査通路のレイアウトを中心に、CT走査技術における小型化を有効に解決することにある。
【0008】
本発明のもう一つの目的は、新規の荷物の保安検査用CTシステムを提供することで、上記の検知器の配置形態を採用して、走査通路の軸方向に複数の検知器を配置すると共に、小型化及び走査の高速化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の形態は、高速で、サイズの小さい荷物に係る保安検査用CTシステムであって、荷物を通過させてCTシステムから出入りするための走査通路と、走査通路の一方の側に設けられているX線ソースと、前記走査通路の他方の側に設けられている検知アーム台と、前記検知アーム台に実装されている複数の検知ユニットと、を備える荷物の保安検査用CTシステムにおいて、前記複数の検知ユニットのそれぞれにおいて、少なくとも一つの検知器結晶体の頂点が、前記走査通路の中心を円心とする円弧の上に位置し、且つ前記複数の検知ユニットが、順次に連続的に配列され、前記複数の検知ユニットにおける検知器結晶体の全ての受信面が、X線ソースのターゲットを円心とする放射状ビームの範囲内に位置し、各検知ユニットにおいて、少なくとも一つの検知器結晶体の受信面の中点とX線ソースのターゲットとを結ぶ線が、検知器結晶体の受信面に垂直する、ことを特徴とする荷物の保安検査用CTシステムである。
【0010】
本発明の上記形態においては、CT技術の解決しようとする目的(荷物を走査して被走査体の画像を得ること)を出発点として、主に荷物の走査通路のサイズを考慮して、検知アーム台を配置し、検知ユニットを、走査通路の中心を円周の中心とするアーム台に実装している。該当する保安検査用CTシステムにおいては、このような配置によって、CTのスリップリングの回転中心と検知ユニットの配置中心とを重ねて、CTのスリップリングという回転体の回転する直径を有効に低下させ、より効果的に機器全体の幅を減少させることができる。
【0011】
同時に、全ての検知器受信面がX線ソースから射出されるビームに垂直することを確保するために、実装する時、各検知ユニットを、その頂点を円心として一定の角度を回転するようにして、CTのX線ソースのターゲットと検知ユニット上の検知器結晶体の受信面の中点とを結ぶ線が、検知器結晶体の受信面に垂直するよう形成される。これにより、システムの収集に係る感度を向上することができると共に、検知アーム台の加工の一体化を確保することができ、全ての収集及び制御回路が一つの検知アーム内に位置するようにして、データが同期でないことによる検知性能への影響を低下し、システムの利用可能性を向上することができる。
【0012】
上記構成で、走査通路の軸方向に沿って、各検知ユニットは、二つ以上の検知器結晶体を備え、X線ソースのターゲットと検知器結晶体の受信面の中点とを結ぶ線が、受信面となす角の最小値は、85°よりも大きい。これによって、エッジの分散による検知器に収集されたデータに対する影響を減少することができる。
【0013】
好ましくは、前記X線ソースの射出角は、少なくとも、前記X線ソースのターゲットと前記円弧上における首尾の二つの検知器結晶体の末端とを結ぶ二つの線がなす角よりも大きい。
【0014】
好ましくは、前記走査通路の有効な走査領域は、前記X線ソースのターゲットと前記円弧上における首尾の二つの検知器結晶体の末端とを結ぶ二つの線がなす角の範囲内にある。
【0015】
具体的な実施形態においては、各検知ユニットに、二つ以上の検知器結晶体を配置することができ、各検知器結晶体間の距離は、ベルトの搬送速度、スリップリングの回転速度、及び、検知器のデータ収集の頻度に関連している。ベルトの搬送速度が0.1m/s以上で、スリップリングの回転速度が90回/分以上である場合、各検知器結晶体間の距離は、20mm以上である。
【0016】
さらに、各検知ユニットは、支持体と、支持体に接続する高密度の放射防止板と、前記高密度の放射防止板の上に前記X線ソース側に対向するように設けられた検知器結晶体と、を備える。
【0017】
上記形態においては、荷物の保安検査用CTシステムは、前記複数の検知ユニットからの信号を収集するための収集モジュールと、スリップリングの回転角を記録するためのコーディングシステムと、X線ソースの放射及び前記信号の収集操作を制御するための制御モジュールと、をさらに備え、前記制御モジュール及び前記収集モジュールは、同一検知アーム台内に実装されている。
【0018】
具体的形態においては、前記荷物の保安検査用CTシステムは、X線ソースからのビームを複数の扇形ビームに分解するための複数の格子を有する第1及び第2のコリメーターをさらに備える。
【0019】
さらに、前記荷物の保安検査用CTシステムは、前記走査通路の軸方向に沿って、複数の検知器結晶体が実装されている検知器結晶体の実装ホルダをさらに備え、前記コリメーターによって分解された複数の扇形ビームを、前記複数の検知器結晶体の受信面に対応させることで、同一時点に、前記走査通路の軸方向に沿って、複数列の被走査体の断層データを同時に取得することができる。
【0020】
より具体的には、前記第1のコリメーターの格子は、X線の分布に関する点状のフィッティング曲線であり、中央部分の格子のスリットが狭く、エッジ部分の格子のスリットが広くなるように形成されている。これによって、X線の量を調整して、異なる検知器結晶体の受信面におけるエネルギーの強度範囲をほぼ一致させることができる。
【0021】
より具体的には、第1のコリメーターは、ベルトの搬送方向に沿って複数の格子を含むことができ、格子の数および格子間の距離は、検知器の列数およびベルトの搬送方向に沿って隣接する検知器受信面間の距離と一致している。
【0022】
上記形態において、前記検知ユニットの高密度の放射防止板は、鉛、W−Ni−Fe合金または鋼を含んでも良い。
【0023】
上記形態において、前記コリメーターの格子に、複数のスリットが設けられており、前記スリットの数は、少なくとも二つである。
【0024】
具体的な実施形態において、上記した荷物の保安検査用CTシステムは、前記走査通路を囲むスリップリングシステムを更に備え、前記X線ソースと検知アーム台が前記スリップリングシステムに実装され、前記走査通路の中心の周りに回転する。
【0025】
本発明では、CT走査アーム台において検知ユニットに対応する位置に、X線ソース及び第1のコリメーターが実装されている。X線ソースからXビームが射出される時、第1のコリメーターは、走査扇形領域に入ったX線を、コーン状のビームから一定の角度の範囲を覆う可能な複数列の扇形ビームに分解することができる。ここで、各扇形ビームは、一つの検知器結晶体の受信面に対応する。これによって、X線ソースのターゲットからX線を一回射出すると、検知器は、遮断なく、複数の被走査体の対応する断層位置を透過してきたXビームを同時に得ることができる。該当列の検知体上のX光信号の蓄積を検知することにより、それらを電気信号に変換することができる。ゲインの調整により、デジタル信号に変換し、コンピュータシステムによるデータの再構成に基づいて、被走査体の同一断層内における異なる方向の特徴を得ることができる。
【0026】
このように構成することで、同一時刻に、異なる角度の方向で複数の断層データを得ることができる。具体的に、保安検査用CTの走査デバイスにとって、ターゲットから検知体の受信面までの距離が、各検知器結晶体間の距離よりもはるかに大きいため、各検知体によって収集されたデータ情報は、隣接する断層内のデータ情報にそれぞれ対応すると考えられる。即ち、被走査体の一回の通過は、被走査体の複数の断層データを得ることができるため、CTの走査速度を向上することができる。
【0027】
本発明のもう一つの形態によれば、荷物の保安検査用CTシステムに用いられる検知装置において、荷物を通過させて当該荷物の保安検査用CTシステムから出入りするための走査通路と、走査通路の一方の側に設けられているX線ソースと、前記走査通路の他方の側に設けられて、前記検知装置を実装するための検知アーム台と、を備える検知装置であって、少なくとも一つの検知器結晶体の頂点が、走査通路の中心を円心とする一つの円弧上に位置してなる、順次に連続的に配置されている複数の検知ユニットと、をさらに備え、前記複数の検知ユニットにおける検知器結晶体の全ての受信面は、ターゲットを円心とする放射状のビームの範囲内にあり、各検知ユニットにおいて、少なくとも一つの検知器結晶体の受信面の中点とX線ソースのターゲットとを結ぶ線が、検知器結晶体の受信面に垂直することを特徴とする荷物の保安検査用CTシステムに用いられる検知装置である。
【0028】
一実施形態においては、全ての検知器結晶体の受信面とX線ソースのターゲットとの間に、塵埃などの異物が検知器結晶体の受信面に付着しないように、可視光をシールドするための、軽い材料である遮光防塵材が実装され、前記遮光防塵材は、ポリテトラフルオロエチレン、プラスチック、ベークライト、アルミ箔を含むが、これらに限らない。
【0029】
本発明の上記形態において、各検知ユニットにおいて、少なくとも一つの検知器結晶体の頂点が、走査通路の中心を円心とする一つの円弧上に位置し、少なくとも一つの検知器結晶体の受信面の中点とX線ソースのターゲットとを結ぶ線が、検知器結晶体の受信面に垂直する。そして、検知ユニットは、先端から末端まで、順次に連続的に配置されたものである。そして、複数の検知器結晶体の全ての受信面は、放射状のビームの範囲内に位置する。
【発明の効果】
【0030】
上記形態によれば、走査通路の中心と、X線ソースのターゲットとがなす角度の対応関係が決まっているため、コンピュータのデータ補正のみで、検知器結晶体の受信面に受けられるPの値のデータの安定性を確保し、射線の強度による影響を減少することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る荷物の保安検査用CTシステムを説明する。
【
図1】本発明の具体的な実施形態による保安検査用CTシステム全体を示す模式図
【
図2】保安検査用CTシステムの主な組成部材を示す斜視模式図
【
図3】垂直走査通路の検知ユニットの配置を示す模式図
【
図4】
図3の検知ユニットの具体的な構成を拡大して示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、実施例によって、図面を参照しながら、本発明の技術案をより具体的に説明する。明細書において、同じまたは類する図面符号は、同じまたは類する部品を示す。図面を参照しながらの本発明の実施形態に対する下記の説明は、本発明の総体的な発明思想を解釈するもので、本発明に対する限制と理解してはいけない。
【0033】
図1を参照すると、本発明の具体的な実施形態による荷物の保安検査用CTシステムを示すものであり、荷物(図示せず)を通過させて前記荷物の保安検査用CTシステムに進入させる入り口の走査通路2と、出口の走査通路6と、入り口の走査通路2と出口の走査通路6との間に設けられているX線ソース8と、前記X線ソース8の反対側に設けられている検知アーム台5と、検知アーム台5に実装されている複数の検知ユニット20と、を備える保安検査用CTシステムにおいて、前記複数の検知ユニットの各々の少なくとも一つの検知器結晶体の受信面の頂点18または23が、走査通路の中心21を円心とする配置円22に位置し、前記複数の検知ユニットが順次に連続的に配置され、前記複数の検知ユニットの検知器結晶体の受信面16または24が、X線ソースのターゲットを円心とする放射状のビームの範囲内にあり、各検知ユニットの少なくとも一つの検知器結晶体の受信面の中点17または25とX線ソースのターゲットとを結ぶ線が、検知器結晶体の受信面16または24に垂直することを特徴とする。
図1に示すように、好ましくは、前記走査通路を囲むスリップリングシステム3をさらに備え、前記X線ソース8と検知アーム台5が、前記スリップリングシステム3上に実装され、前記走査通路の中心21の回りを回動する。
【0034】
図3に示すように,各検知ユニットにおける少なくとも一つの検知器結晶体の受信面の頂点18または23が、走査通路の中心点を円心とする円弧面22上に位置し、且つ、検知ユニットが、順次に連続的に配列されており、検知器結晶体の全ての受信面16または24が、X線ソースのターゲットを円心とする放射状のビームの範囲内に位置する。検知ユニットの最適化配置によって、走査通路を縮小しない上に、機器の外形の幅を低下させて、機器の占める面積を減少させ、さらにCT機器のコストを低下させることができる。
【0035】
図2及び
図3に示すように、本発明は、CT走査技術の目的である荷物を走査して被走査体の画像を得ることを出発点として、荷物通路の中心点22を元に検知アーム台5を配列し、走査通路の中心点22を円周の中心とする検知アーム台5上に、検知ユニットを連続に配列している。一実施例においては、スリップリング3の回転中心と検知ユニット20の配列中心点とを重ね合わせることによって、CT スリップリング3の回転体の回転直径を効率的に減少させ、回転可能なCT条件での機器サイズの最小化を図ることができる。
【0036】
同時に、全ての検知器受信面16または24をX線ソース8からの放射線ビームに垂直させるために、実装する時、各検知ユニット20上の検知器結晶体を、検知器結晶体の受信面の頂点18または23を円心として一定の角度を回転させて、X線ソース8のターゲット15と検知ユニット上の少なくとも一つの検知器結晶体の受信面16または24の中点17または25とを結ぶ線が、検知ユニット上の対応する検知器結晶体の受信面16または24に垂直するようにし、検知アーム台5の加工の一体化を図る。全ての検知器結晶体の得られたデータ及び電気制御モジュール34が、いずれも一つの検知アーム内に収容されることで、X線が検知器結晶体の受信面へ達する安定化を確保し、検知システムのデータ収集に対する感度を向上することができる。
【0037】
図4に示すように,上記形態においては、各検知ユニット20は、一つ以上の検知器結晶体30を含み、X線ソースのターゲット15と検知器結晶体の受信面32の中点とを結ぶ線が、前記受信面32となす角の最小値は、85°以上である。前記X線ソース8の射出角は、少なくとも、ターゲット15と前記円弧上の始まりの検知器結晶体の受信面の先端である16Aとを結ぶ線と、ターゲット15と前記円弧上の終わりの検知器結晶体の受信面の末端である25Aとを結ぶ線とがなす角26よりも大きいのが好ましい。前記走査通路の有効走査領域19は、ターゲット15と検知ユニットの配置される円の始まりの検知器結晶体の受信面の先端である16Aとを結ぶ線と、ターゲット15と検知ユニットの配置される円の終わりの検知器結晶体の受信面の末端である25Aとを結ぶ線とで形成される領域の範囲に位置する。
【0038】
上記のように配置することで、検知アーム台5上で、検知領域11内の検知ユニットの配列数で、走査通路全体の有効エリア19を覆うことができ、結像が不十分である欠陥を解消することができる。
図1及び
図3を参照すると、具体的なCT走査過程では、搬送ベルトシステム1の上面を、走査通路2または6の有効エリア内に位置させることで、搬送ベルト上の物品全体がX線ソースのビームに照射されることを確保することができる。また、このようにデザインすると、各検知器結晶体30の受信面32と射線のメインビームの方向とがほぼ一致するので、各検知器結晶体30の取得される有効的な放射量を増加し、検知器結晶体の側面からの分散を減少することで、CT機器の結像の品質を向上することができる。
【0039】
図2に示すように、上記のCTシステムにおいては、検知アーム台5を、スリップリングシステム3の回転可能な検知アーム台の実装板12に実装しており、検知アーム台の実装板12は、スリップリング支持体13に実装され、スリップリング駆動モータ14によって駆動されている。そして、検知ユニット20、CTのX線ソース8、CTの第1のコリメーター9、及び、第2のコリメーター10は、検知アーム台5に実装されている。上記する具体的な実施例においては、システムは、ただ一つの検知アーム台5を備え、それは封止されたケースで、内部にデータ収集/制御モジュール34が実装されており、全てのCTデータ収集は、一つのデータ収集モジュール及び制御モジュールを使用しても良い。さらに、収集されたデータ全体は、同じアルゴリズムによって処理されてもよい。これにより、CT機器が走査操作を実行するスピードを向上し、データに対する伝送及び処理のスピードを向上することができる。
【0040】
図4に示すように、検知ユニット20毎に2つ以上の検知器結晶体30を配列することができ、検知器結晶体間の距離29は、20mm以上である。複数の検知器結晶体30を使用することにより、一回の走査で,より多い被走査体の情報を得ることができる。これにより、システムの最終の通過率及び識別精度を向上することができる。さらに、各検知ユニットは、検知器結晶体の実装ホルダ27と、実装ホルダに接続する高密度の放射防止板28と、前記検知ユニットの内部支持体31に設けられ、前記X線ソース8側に対向する検知器結晶体30とを備える。実施例に示すように、検知ユニットの高密度の放射防止板28は、鉛、W−Ni−Fe合金または鋼などの材料を含んでもよく、その厚さは、対応する規格下で環境への放射漏れ指標の要求を満たす。
【0041】
図5は、平面視での検知ユニットの構成を示す模式図である。前記荷物の保安検査用CTシステムは、さらに、X線ソース8からのビームを分解し各格子から出力されるX線ビームのエネルギーの強度を制御するための格子39を含む第1のコリメーター9と、検知器結晶体の受信面に達するX線が、検知器結晶体の受信面のエッジからの分散によるものではなく、検知器結晶体の受信面からのものであることを確保するように、検知ユニットに入射されるX線をシールドする格子37を含む第2のコリメーター10と、をさらに含む。
図5に示すように、前記第1のコリメーターの格子39は、X線ソース8からのビームを二つ以上の扇形ビームに分解するための少なくとも二つの仕切りを含む。さらに、
図5に示すように、前記走査通路2または6の方向に沿って、前記検知器結晶体の実装ホルダ27に、複数の検知器結晶体30が実装されており、前記分解された扇形ビームを、前記検知器結晶体30の受信面に一対一に対応させることで、前記走査通路の方向に沿って同時に数列の検知器のデータを収集することができる。前述複数の検知ユニットは、複数の検知器結晶体30のモジュールからなり、検知器結晶体の実装ホルダ27によって検知器実装ボックス35に実装されている。検知器実装ボックスは、光線、塵埃及び環境湿度が検知器結晶体の性能に対する干渉を減少するように、封止されている。検知器実装ボックス35は、さらに、接続ホルダ42によってCT検知器アーム台に実装されている。封止、遮光を確保した下で、射線のメインビームの方向の遮断を減少するために、検知器結晶体の受信面の前方において、X線ソースのターゲットに対向する箇所に、防塵遮光板38が実装されている。防塵遮光板38は、厚さが3mm以下であり、軽い材料からなることが好ましい。このような材料は、ポリテトラフルオロエチレン、プラスチック、ベークライト、アルミ箔を含むことができるが、これに限らない。上記の好ましい実施例においては、第1のコリメーターの格子39は、射線のエネルギー分布に関する点状のフィッティング曲線であり、中央部分の格子のスリットが狭く、エッジ部分の格子のスリットが広いように設けることで、異なる検知器結晶体の受信面におけるエネルギー強度をほぼ一致させることができる。具体的な実施例においては、前記第1のコリメーターの格子39に、複数のスリットが設けられている。前記スリットの数は、少なくとも二つであり、例えば、
図5では三つのスリットを示している。
【0042】
次で、本発明の荷物の保安検査用CTシステムによる具体的な操作について簡単に説明する。荷物(図示せず)が、入り口の走査通路を通じて保安検査用CTシステムに入ると、入り口の光の遮断をトリガーし、システムの制御モジュールは、収集指令を送信し、スリップリングの駆動モータ14の駆動によって、CT走査アーム台5は、スリップリング3に従い回転することになる。CT部分のX線ソース8は、X線ビームを射出する。前段のエネルギーの補正装置である第1のコリメーター9によって、エネルギービームを扇形のX線ビームに数列分解する。CTの検知ユニット20は、X線データの収集を開始し、データ処理センターのデータに対する再構成によって3次元の画像を生成することで、CTの断層画像を取得することができる。
【0043】
ここで、本発明の総体的な思想による実施例を説明したが、当業者が理解できるように、本発明の総体的な思想の原則及び主旨に違反しない限り、これらの実施例を変更することは勿論である。本発明の範囲は、特許請求の範囲及びそれらの同等物によって限定される。
【符号の説明】
【0044】
1 搬送ベルトシステム
2 入り口の走査通路
3 スリップリングシステム
4 X線ソースホルダ
5 検知アーム台
6 出口走査通路
7 機器支持ベース
8 CT X線ソース
9 第1のコリメーター
10 第2のコリメーター
11 検知アーム台の検知領域
12 検知アーム台の実装板
13 スリップリングの支持体
14 スリップリングの駆動モータ
15 X線ソースのターゲット
16 先端検知器結晶体の受信面
17 先端検知器結晶体の受信面の中点
18 先端検知器結晶体の受信面の頂点
19 走査通路の有効エリア
20 アーム台の中間位置での三つの検知ユニット
21 走査通路の中心
22 検知ユニットの配置円
23 末端の検知器結晶体の受信面の頂点
24 末端の検知器結晶体の受信面
25 末端の検知器結晶体の受信面の中点
26 ターゲットが検知器結晶体の受信面となす最大角
27 検知器結晶体の実装ホルダ
28 高密度の放射防止板
29 隣接の検知器結晶体間の距離
30 検知器結晶体
31 検知ユニットの内部支持体
32 検知器結晶体の受信面
33 検知ユニットの実装のための付属品
34 データ収集・制御モジュール
35 検知器実装ボックス
36 検知ユニットの断面図
37 第2のコリメーターの格子
38 防塵遮光板
39 第1のコリメーターの格子
40 平行走査通路のX線ビーム
41 走査通路及びスリップリングの接続
42 接続ホルダ