特許第6033972号(P6033972)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6033972マルチタップCCDカメラのゲイン補正およびレベル補正のための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6033972
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】マルチタップCCDカメラのゲイン補正およびレベル補正のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/365 20110101AFI20161121BHJP
   H04N 5/372 20110101ALI20161121BHJP
【FI】
   H04N5/335 650
   H04N5/335 720
【請求項の数】25
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-556003(P2015-556003)
(86)(22)【出願日】2013年12月12日
(65)【公表番号】特表2016-509432(P2016-509432A)
(43)【公表日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】US2013074532
(87)【国際公開番号】WO2014133629
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2015年8月3日
(31)【優先権主張番号】61/770,505
(32)【優先日】2013年2月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブス,トレント
【審査官】 鈴木 明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−148021(JP,A)
【文献】 特開2002−354340(JP,A)
【文献】 特開2002−112992(JP,A)
【文献】 特開2011−014995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/30−5/378
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーン像を取込むための電荷結合素子(CCD)センサであって、
前記CCDセンサは画素アレイを備え、
前記画素アレイは、
第1の複数の画素を含む第1のセグメントを含み、前記第1のセグメントは、撮像するシーンから電磁放射を受けたことに応じて第1のタップ信号を生成するように構成され、
第2の複数の画素を含む第2のセグメントを含み、前記第2のセグメントは、前記シーンから電磁放射を受けたことに応じて第2のタップ信号を生成するように構成され、
前記第2のセグメントに隣接する前記第1のセグメントの一部と前記第1のセグメントに隣接する前記第2のセグメントの一部とを含む対象領域を含み、
前記CCDセンサは前記第1および第2のセグメントに結合されたプロセッサを備え、
前記プロセッサは、前記第1のセグメントからの第1のタップ信号および前記第2のセグメントからの第2のタップ信号を受け、前記第1のタップ信号の大きさおよび前記第2のタップ信号の大きさに基づいて、前記第1のタップ信号および前記第2のタップ信号のうちの一方に対してレベル補正を実行し、前記対象領域に対応する前記第1のタップ信号の大きさと前記対象領域に対応する前記第2のタップ信号の大きさとの比較に基づいて、前記第1のタップ信号および前記第2のタップ信号のうちの一方に対してゲイン補正を実行するように構成され
前記プロセッサはさらに、モーションシステムに結合されるように構成されたモーション入力線を含み、
前記プロセッサはさらに、前記モーションシステムから、前記モーション入力線を介して、前記シーン像のモーションに関する情報を含むモーション信号を受け、前記シーン像がシーンモーションしきい値を超える量だけ移動したことを前記モーション信号が示すときにのみ、前記第1のタップ信号および前記第2のタップ信号のうちの一方のゲイン補正を実行するように構成される、CCDセンサ。
【請求項2】
前記第1のセグメントは第1の基準領域を含み、
前記第2のセグメントは第2の基準領域を含み、
前記プロセッサはさらに、前記第1の基準領域から少なくとも1つの第1の基準タップ信号を受け、前記第2の基準領域から少なくとも1つの第2の基準タップ信号を受け、前記少なくとも1つの第1の基準タップ信号の大きさと前記少なくとも1つの第2の基準タップ信号の大きさとの比較に基づいて、前記第1のタップ信号および前記第2のタップ信号のうちの一方のレベル補正を実行するように構成される、請求項1に記載のCCDセンサ。
【請求項3】
前記第1のタップ信号および前記第2のタップ信号のうちの一方のレベル補正を実行するとき、前記プロセッサはさらに、前記第1の基準領域からの各第1の基準タップ信号の大きさを合計し、前記第2の基準領域からの各第2の基準タップ信号の大きさを合計し、前記合計された第1の基準タップ信号の大きさと前記合計された第2の基準タップ信号の大きさとの差を計算し、前記第1のタップ信号および前記第2のタップ信号のうちの一方の大きさに前記差を加算するように構成される、請求項2に記載のCCDセンサ。
【請求項4】
前記第1のタップ信号および前記第2のタップ信号のうちの一方のゲイン補正を実行するとき、前記プロセッサは、画素対を選択するように構成され、各対は、前記対象領域内の前記第1のセグメントからの画素と前記対象領域内の前記第2のセグメントからの画素とを含み、
前記プロセッサは、画素対毎にタップ信号の大きさの傾斜を計算し、前記対象領域全体における前記タップ信号の大きさの傾斜の少なくとも一部を合計して誤差項を生成するように構成される、請求項1に記載のCCDセンサ。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記誤差項に基づいてゲイン補正項を生成するように構成された比例積分微分(PID)コントローラを含み、
前記プロセッサはさらに、前記ゲイン補正項に基づいて前記第1のタップ信号および前記第2のタップ信号のうちの一方のゲインを調整するように構成される、請求項4に記載のCCDセンサ。
【請求項6】
前記プロセッサはさらに、各画素対の各々のタップ信号の大きさの傾斜を、傾斜しきい値と比較し、前記傾斜しきい値未満のタップ信号の大きさの傾斜のみを合計して前記誤差項を生成するように構成される、請求項4に記載のCCDセンサ。
【請求項7】
前記画素アレイはカラーフィルタ処理され、
前記プロセッサはさらに、前記第1および第2のセグメントにおける同一色の画素から前記画素対を選択するように構成される、請求項4に記載のCCDセンサ。
【請求項8】
前記画素アレイはベイヤーカラーフィルタ処理される、請求項7に記載のCCDセンサ。
【請求項9】
マルチタップCCDカメラにおけるタップバランスを提供する方法であって、
前記CCDカメラは画素アレイを備え、前記画素アレイは、第1の複数の画素を含む第1のセグメントと、第2の複数の画素を含む第2のセグメントと、前記第2のセグメントに隣接する前記第1のセグメントの一部と前記第1のセグメントに隣接する前記第2のセグメントの一部とを含む対象領域とを含み、前記方法は、
撮像するシーンから前記第1のセグメントが受けた電磁放射を表わす第1のタップ信号を含む読出を前記第1のセグメントから受けることと、
前記シーンから前記第2のセグメントが受けた電磁放射を表わす第2のタップ信号を含む読出を前記第2のセグメントから受けることと、
前記第2のタップ信号の大きさに基づいて前記第1のタップ信号の大きさを調整することと、
前記対象領域に対応する前記第1のタップ信号の大きさと前記対象領域に対応する前記第2のタップ信号の大きさとの比較に基づいて、前記第1のタップ信号および前記第2のタップ信号のうちの一方に与えられるゲインを調整することと
前記マルチタップCCDカメラによって取込まれたシーン像のモーションをモニタすることと、
前記シーン像がシーンモーションしきい値を超える量だけ移動したときにのみ、前記第1のタップ信号および前記第2のタップ信号のうちの一方に与えられるゲインを調整することとを含む、方法。
【請求項10】
前記読出を前記第1のセグメントから受けることは、少なくとも1つの第1の基準タップ信号を受けることを含み、
前記読出を前記第2のセグメントから受けることは、少なくとも1つの第2の基準タップ信号を受けることを含み、
前記第1のタップ信号の大きさを調整することは、前記少なくとも1つの第1の基準タップ信号の大きさと前記少なくとも1つの第2の基準タップ信号の大きさとの比較に基づいて、前記第1のタップ信号の大きさを調整することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のタップ信号の大きさを調整することはさらに、
各第1の基準タップ信号の大きさを合計することと、
各第2の基準タップ信号の大きさを合計することと、
前記合計された第1の基準タップ信号の大きさと前記合計された第2の基準タップ信号の大きさとのレベル差を計算することと、
前記レベル差を前記第1のタップ信号の大きさに加算することとを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のタップ信号および前記第2のタップ信号のうちの一方に与えられるゲインを調整することは、
画素対を選択することを含み、各対は、前記対象領域内の前記第1のセグメントからの画素と前記対象領域内の前記第2のセグメントからの画素とを含み、
前記対象領域全体における画素対毎にタップ信号間の大きさの差を計算することと、
前記対象領域全体における画素対毎のタップ信号間の大きさの差の少なくとも一部を合計することにより誤差項を生成することとを含む、請求項に記載の方法。
【請求項13】
PID制御ループを用いて前記誤差項に基づきゲイン補正項を生成することをさらに含み、
前記第1のタップ信号および前記第2のタップ信号のうちの一方に与えられるゲインを調整することは、前記ゲイン補正項に基づいてゲインを調整することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記PID制御ループを用いて前記ゲイン補正項を生成することは、
過去の期間にわたって誤差項を積分することと、
積分ゲインを前記積分された誤差項に与えることにより積分制御項を生成することと、
比例ゲインを前記誤差項に与えることにより比例制御項を生成することと、
前記誤差項の経時変化率を求めることと、
微分ゲインを前記変化率に与えることにより微分制御項を生成することと、
前記積分制御項と、前記比例制御項と、前記微分制御項とを合計することによりPID制御項を生成することとを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記PID制御ループを用いて前記ゲイン補正項を生成することはさらに、前記PID制御項を基準ゲイン項に加算することにより前記ゲイン補正項を生成することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
各画素対のタップ信号間の大きさの差を傾斜しきい値と比較することをさらに含み、
前記対象領域全体におけるタップ信号間の大きさの差の少なくとも一部を合計することにより誤差項を生成することは、前記傾斜しきい値未満の大きさの差のみを合計することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記画素対を選択することは、前記第1のセグメントおよび前記第2のセグメントにおける同一色の画素から画素対を選択することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
CCDカメラであって、
前記CCDカメラは画素アレイを備え、
前記画素アレイは、
第1の複数の画素を含む第1のセグメントを含み、前記第1のセグメントは、撮像するシーンから電磁放射を受けたことに応じて第1のタップ信号を生成するように構成され、
第2の複数の画素を含む第2のセグメントを含み、前記第2のセグメントは、前記シーンから電磁放射を受けたことに応じて第2のタップ信号を生成するように構成され、
前記第2のセグメントに隣接する前記第1のセグメントの一部と前記第1のセグメントに隣接する前記第2のセグメントの一部とを含む対象領域を含み、
前記CCDカメラは前記第1および第2のセグメントに結合されたプロセッサを備え、
前記プロセッサは、前記第1のセグメントから前記第1のタップ信号を受け、前記第2のセグメントから前記第2のタップ信号を受け、前記第1のタップ信号の大きさおよび前記第2のタップ信号の大きさに基づいて、前記第1のタップ信号および前記第2のタップ信号のうちの一方に対してレベル補正を実行し、前記対象領域に対応する前記第1のタップ信号の大きさと前記対象領域に対応する前記第2のタップ信号の大きさとの比較に基づいて、前記第1のタップ信号および前記第2のタップ信号のうちの一方に対してゲイン補正を実行するように構成され、
前記第1のタップ信号および前記第2のタップ信号のうちの一方のゲイン補正を実行するとき、前記プロセッサは、画素対を選択するように構成され、各対は、前記対象領域内の前記第1のセグメントからの画素と前記対象領域内の前記第2のセグメントからの画素とを含み、
前記プロセッサは、画素対毎にタップ信号の大きさの傾斜を計算し、前記対象領域全体における前記タップ信号の大きさの傾斜の少なくとも一部を合計して誤差項を生成するように構成され
前記プロセッサは、前記誤差項に基づいてゲイン補正項を生成するように構成された比例積分微分(PID)コントローラを含み、
前記プロセッサはさらに、前記ゲイン補正項に基づいて前記第1のタップ信号および前記第2のタップ信号のうちの一方のゲインを調整するように構成される、CCDカメラ。
【請求項19】
前記プロセッサはさらに、各画素対の各々のタップ信号の大きさの傾斜を、傾斜しきい値と比較し、前記傾斜しきい値未満のタップ信号の大きさの傾斜のみを合計して前記誤差項を生成するように構成される、請求項18に記載のCCDカメラ。
【請求項20】
前記画素アレイはカラーフィルタ処理され、
前記プロセッサはさらに、前記第1および第2のセグメントにおける同一色の画素から前記画素対を選択するように構成される、請求項18に記載のCCDカメラ。
【請求項21】
マルチタップCCDカメラにおけるタップバランスを提供する方法であって、
前記CCDカメラは画素アレイを備え、前記画素アレイは、第1の複数の画素を含む第1のセグメントと、第2の複数の画素を含む第2のセグメントと、前記第2のセグメントに隣接する前記第1のセグメントの一部と前記第1のセグメントに隣接する前記第2のセグメントの一部とを含む対象領域とを含み、前記方法は、
撮像するシーンから前記第1のセグメントが受けた電磁放射を表わす第1のタップ信号を含む読出を前記第1のセグメントから受けることと、
前記シーンから前記第2のセグメントが受けた電磁放射を表わす第2のタップ信号を含む読出を前記第2のセグメントから受けることと、
前記第2のタップ信号の大きさに基づいて前記第1のタップ信号の大きさを調整することと、
前記対象領域に対応する前記第1のタップ信号の大きさと前記対象領域に対応する前記第2のタップ信号の大きさとの比較に基づいて、誤差項を生成することと、
PID制御ループを用いて前記誤差項に基づきゲイン補正項を生成することと、
前記ゲイン補正項に基づいて前記第1のタップ信号および前記第2のタップ信号のうちの一方に与えられるゲインを調整することと含み、
前記PID制御ループを用いて前記ゲイン補正項を生成することは、
過去の期間にわたって誤差項を積分することと、
積分ゲインを前記積分された誤差項に与えることにより積分制御項を生成することと、
比例ゲインを前記誤差項に与えることにより比例制御項を生成することと、
前記誤差項の経時変化率を求めることと、
微分ゲインを前記変化率に与えることにより微分制御項を生成することと、
前記積分制御項と、前記比例制御項と、前記微分制御項とを合計することによりPID制御項を生成することとを含む、方法。
【請求項22】
前記誤差項を生成することは、
画素対を選択することを含み、各対は、前記対象領域内の前記第1のセグメントからの画素と前記対象領域内の前記第2のセグメントからの画素とを含み、
前記対象領域全体における画素対毎にタップ信号間の大きさの差を計算することと、
前記対象領域全体における画素対毎のタップ信号間の大きさの差の少なくとも一部を合計することにより誤差項を生成することとを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記PID制御ループを用いて前記ゲイン補正項を生成することはさらに、前記PID制御項を基準ゲイン項に加算することにより前記ゲイン補正項を生成することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
各画素対のタップ信号間の大きさの差を傾斜しきい値と比較することをさらに含み、
前記対象領域全体におけるタップ信号間の大きさの差の少なくとも一部を合計することにより誤差項を生成することは、前記傾斜しきい値未満の大きさの差のみを合計することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記画素対を選択することは、前記第1のセグメントおよび前記第2のセグメントにおける同一色の画素から画素対を選択することを含む、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2013年2月28日に出願され「METHOD AND APPARATUS FOR GAIN AND LEVEL CORRECTION OF BAYER COLOR MULTI-TAP CCD CAMERAS」と題された米国仮出願第61/770,505号に基づく優先権を主張し、その全体をあらゆる目的のために本明細書に引用により援用する。
【0002】
連邦政府に支援された研究
本発明は、国防総省から付与された補助金(付与番号は公表しない)を受け米国政府の支援の元でなされた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
背景
電荷結合素子(CCD)カメラは一般的にデジタル撮像システムにおいて使用される。マルチタップCCDカメラは、画像フレームを、CCDカメラから並列に読出される2つ以上の領域に分ける。たとえば、マルチタップCCDカメラの画像フレームを左半分と右半分に分割してもよく、各半分における画素は各半分から並列する電気経路を通して読出される。これらマルチタップCCDカメラの場合、異なる経路からの読出間に、固有の応答誤差がある。たとえば、各経路のPVT(プロセス(process)、電圧(voltage)、および/または温度(temperature))のばらつきによって、誤差が生じる場合がある。その結果、各経路から個々に読出された画素からなる各グループのゲインおよび/または黒レベルに相違がある場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マルチタップCCDカメラの経路間でタップ/チャネルの整合性が不良である場合、各経路から読出された画素の相違が原因で、各経路からの画素を組合わせて1つの画像にしたときに「スプリットスクリーン」という視覚効果が生じることがある。「スプリットスクリーン」という視覚効果を示す画像では、画像フレームの各半分から読み出された画素間に比較的明確な境界線がある。その原因は、各経路から読出される画素の相違にある。また、デジタル画像処理は一般的に、画像フレームに対しコントラストを高める処理および/またはピーキング(peaking)処理を実行する。そうすると、各経路からの画素間の誤差が増すことがある。
【0005】
従来、マルチタップCCDカメラの並列読出間の誤差は、カメラの製造元が実行するシングルポイントまたはマルチポイントの工場較正によって対処されている。たとえば、1つの手法は、初期状態として概ねバランスが取れたカメラを想定し、簡単なレベル較正を実行することにより、タップベースの誤差を最小にしようと試みることであった。
【0006】
いくつかの工場較正手法は、画素に関連付けられたアナログデジタル変換器のデジタル制御を操作する。たとえば、米国特許第7,236,199号(以下‘199特許)は、アナログデジタル変換器を動的に制御することにより、CCDカメラ内の自動タップバランスを実行することを開示している。この方法において、ゲイン分解能はアナログデジタル変換器の制御分解能およびPVTのばらつきによって制限され、結果として、最小ゲイン誤差は少なくとも数デジタルカウントである。加えて、‘199特許に開示されている方法では、CCDセンサを覆ってレベル較正を実行することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本明細書に記載の局面および実施形態は、マルチ読出(またはマルチタップ)CCDセンサにおける、タップ/チャネル整合とも呼ばれるタップバランスを提供するための方法および装置に関する。いくつかの実施形態に従うと、読出間のレベル(オフセット)およびゲインの誤差を1デジタルカウント以下に減じることができる。これは、タップ/チャネルの整合不良の結果生じ得る望ましくない「スプリットスクリーン」という視覚効果にも対処する。
【0008】
たとえば、本明細書に記載の局面および実施形態は、「一回限りの」レベル補正および連続PID(比例積分微分)ゲイン補正制御ループを提供する。この制御ループを通して、PVTのばらつきを原因とするゲイン誤差を正確に追跡することができる。以下でさらに説明するように、ある実施形態において、チャネル整合方法は、予め定められた領域内のタップシームにおける傾斜を測定することと、この傾斜に基づいてゲイン補正項を生成することとを含む。この方法はまた、シーンデータを取除いて、ゲイン誤差に影響を与える可能性がある、シーンに基づく傾斜に対処することにより、一層正確な傾斜項を得ることができる。この方法はまた、シーンモーションが予め定められた領域内の新たなサンプルを確保するのに十分大きいときにのみ、ゲイン補正を選択的に有効にすることを含み得る。
【0009】
本明細書に記載の方法の実施形態は、より分解能が高いゲインの制御を提供することにより、(たとえば上記‘199特許に開示されているような)従来のアナログデジタル制御のみを用いて得られるものよりも厳密なゲインマッチングを得ることができる。加えて、‘199特許に開示されているような従来の方法と異なり、本明細書に開示される方法の実施形態は、CCDセンサをマスクするまたは覆うことによって黒レベル補正を実行することを必要としない。さらに、本明細書に開示される方法の実施形態を、カラーフィルタアレイを有するCCDセンサに対しておよび単色センサに対して使用してもよい。
【0010】
本発明に従う局面は、シーン像を取込むための電荷結合素子(CCD)センサに関する。このCCDセンサは画素アレイを備える。画素アレイは、第1の複数の画素を含む第1のセグメントを含み、第1のセグメントは、撮像するシーンから電磁放射を受けたことに応じて第1のタップ信号を生成するように構成される。画素アレイは、第2の複数の画素を含む第2のセグメントを含み、第2のセグメントは、シーンから電磁放射を受けたことに応じて第2のタップ信号を生成するように構成される。画素アレイは、第2のセグメントに隣接する第1のセグメントの一部と第1のセグメントに隣接する第2のセグメントの一部とを含む対象領域を含む。CCDセンサは、第1および第2のセグメントに結合されたプロセッサを備える。プロセッサは、第1のセグメントからの第1のタップ信号および第2のセグメントからの第2のタップ信号を受け、第1のタップ信号の大きさおよび第2のタップ信号の大きさに基づいて、第1のタップ信号および第2のタップ信号のうちの一方に対してレベル補正を実行し、対象領域に対応する第1のタップ信号の大きさと対象領域に対応する第2のタップ信号の大きさとの比較に基づいて、第1のタップ信号および第2のタップ信号のうちの一方に対してゲイン補正を実行するように構成される。
【0011】
ある実施形態に従うと、第1のセグメントは第1の基準領域を含み、第2のセグメントは第2の基準領域を含む。プロセッサはさらに、第1の基準領域から少なくとも1つの第1の基準タップ信号を受け、第2の基準領域から少なくとも1つの第2の基準タップ信号を受け、少なくとも1つの第1の基準タップ信号の大きさと少なくとも1つの第2の基準タップ信号の大きさとの比較に基づいて、第1のタップ信号および第2のタップ信号のうちの一方のレベル補正を実行するように構成される。
【0012】
別の実施形態に従うと、第1のタップ信号および第2のタップ信号のうちの一方のレベル補正を実行するとき、プロセッサはさらに、第1の基準領域からの各第1の基準タップ信号の大きさを合計し、第2の基準領域からの各第2の基準タップ信号の大きさを合計し、合計された第1の基準タップ信号の大きさと合計された第2の基準タップ信号の大きさの差を計算し、第1のタップ信号および第2のタップ信号のうちの一方の大きさにその差を加算するように構成される。
【0013】
ある実施形態に従うと、第1のタップ信号および第2のタップ信号のうちの一方のゲイン補正を実行するとき、プロセッサは、画素対を選択するように構成される。各対は、対象領域内の第1のセグメントからの画素と対象領域内の第2のセグメントからの画素とを含む。プロセッサは、画素対毎にタップ信号の大きさの傾斜を計算し、対象領域全体におけるタップ信号の大きさの傾斜の少なくとも一部を合計して誤差項を生成するように構成される。
【0014】
別の実施形態に従うと、プロセッサは、誤差項に基づいてゲイン補正項を生成するように構成された比例積分微分(PID)コントローラを含む。プロセッサはさらに、ゲイン補正項に基づいて第1のタップ信号および第2のタップ信号のうちの一方のゲインを調整するように構成される。ある実施形態において、プロセッサはさらに、各画素対の各々のタップ信号の大きさの傾斜を、傾斜しきい値と比較し、傾斜しきい値未満のタップ信号の大きさの傾斜のみを合計して誤差項を生成するように構成される。別の実施形態において、画素アレイはカラーフィルタ処理され、プロセッサはさらに、第1および第2のセグメントにおける同一色の画素から画素対を選択するように構成される。ある実施形態において、画素アレイはベイヤーカラーフィルタ処理される。
【0015】
ある実施形態に従うと、プロセッサはさらに、モーションシステムに結合されるように構成されたモーション入力線を含む。プロセッサはさらに、モーションシステムから、モーション入力線を介して、シーン像のモーションに関する情報を含むモーション信号を受け、シーン像がシーンモーションしきい値を超える量だけ移動したことをモーション信号が示すときにのみ、第1のタップ信号および第2のタップ信号のうちの一方のゲイン補正を実行するように構成される。
【0016】
本発明に従うある局面は、マルチタップCCDカメラにおけるタップバランスを提供する方法に関する。CCDカメラは画素アレイを備え、画素アレイは、第1の複数の画素を含む第1のセグメントと、第2の複数の画素を含む第2のセグメントと、第2のセグメントに隣接する第1のセグメントの一部と第1のセグメントに隣接する第2のセグメントの一部とを含む対象領域とを含む。この方法は、撮像するシーンから第1のセグメントが受けた電磁放射を表わす第1のタップ信号を含む読出を第1のセグメントから受けることと、シーンから第2のセグメントが受けた電磁放射を表わす第2のタップ信号を含む読出を第2のセグメントから受けることと、第2のタップ信号の大きさに基づいて第1のタップ信号の大きさを調整することと、対象領域に対応する第1のタップ信号の大きさと対象領域に対応する第2のタップ信号の大きさとの比較に基づいて、第1のタップ信号および第2のタップ信号のうちの一方に与えられるゲインを調整することとを含む。
【0017】
ある実施形態に従うと、読出を第1のセグメントから受けることは、少なくとも1つの第1の基準タップ信号を受けることを含む。読出を第2のセグメントから受けることは、少なくとも1つの第2の基準タップ信号を受けることを含む。第1のタップ信号の大きさを調整することは、少なくとも1つの第1の基準タップ信号の大きさと少なくとも1つの第2の基準タップ信号の大きさとの比較に基づいて、第1のタップ信号の大きさを調整することを含む。
【0018】
別の実施形態に従うと、第1のタップ信号の大きさを調整することはさらに、各第1の基準タップ信号の大きさを合計することと、各第2の基準タップ信号の大きさを合計することと、合計された第1の基準タップ信号の大きさと合計された第2の基準タップ信号の大きさのレベル差を計算することと、レベル差を第1のタップ信号の大きさに加算することとを含む。ある実施形態において、第1のタップ信号および第2のタップ信号のうちの一方に与えられるゲインを調整することは、画素対を選択することと、対象領域全体における画素対毎にタップ信号間の大きさの差を計算することと、対象領域全体における画素対毎のタップ信号間の大きさの差の少なくとも一部を合計することにより誤差項を生成することとを含む。各対は、対象領域内の第1のセグメントからの画素と対象領域内の第2のセグメントからの画素とを含む。
【0019】
ある実施形態に従うと、この方法は、PID制御ループを用いて誤差項に基づきゲイン補正項を生成することをさらに含む。第1のタップ信号および第2のタップ信号のうちの一方に与えられるゲインを調整することは、ゲイン補正項に基づいてゲインを調整することを含む。ある実施形態において、PID制御ループを用いてゲイン補正項を生成することは、過去の期間にわたって誤差項を積分することと、積分ゲインを積分された誤差項に与えることにより積分制御項を生成することと、比例ゲインを誤差項に与えることにより比例制御項を生成することと、誤差項の経時変化率を求めることと、微分ゲインを変化率に与えることにより微分制御項を生成することと、積分制御項、比例制御項、および微分制御項を合計することによりPID制御項を生成することとを含む。別の実施形態において、PID制御ループを用いてゲイン補正項を生成することはさらに、PID制御項を基準ゲイン項に加算することによりゲイン補正項を生成することを含む。
【0020】
別の実施形態に従うと、この方法は、各画素対のタップ信号間の大きさの差を傾斜しきい値と比較することをさらに含む。対象領域全体におけるタップ信号間の大きさの差の少なくとも一部を合計することにより誤差項を生成することは、傾斜しきい値未満の大きさの差のみを合計することを含む。別の実施形態において、画素対を選択することは、第1のセグメントおよび第2のセグメントにおける同一色の画素から画素対を選択することを含む。
【0021】
ある実施形態に従うと、この方法は、マルチタップCCDカメラによって取込まれたシーン像のモーションをモニタすることと、シーン像がシーンモーションしきい値を超える量だけ移動したときにのみ、第1のタップ信号および第2のタップ信号のうちの一方に与えられるゲインを調整することとをさらに含む。
【0022】
本発明に従う別の局面は、CCDカメラに関し、CCDカメラは画素アレイを備える。画素アレイは、第1の複数の画素を含む第1のセグメントを含み、第1のセグメントは、撮像するシーンから電磁放射を受けたことに応じて第1のタップ信号を生成するように構成される。画素アレイは、第2の複数の画素を含む第2のセグメントを含み、第2のセグメントは、シーンから電磁放射を受けたことに応じて第2のタップ信号を生成するように構成される。CCDカメラは、第1および第2のセグメントに結合されたプロセッサを備える。プロセッサは、第1のセグメントから第1のタップ信号を含む第1の読出を受け、第2のセグメントから第2のタップ信号を含む第2の読出を受け、第1のタップ信号および第2のタップ信号を組合わせるように構成され、第1の読出と第2の読出の間のレベルおよびゲイン誤差を1デジタルカウント以下に減じるための手段を備える。
【0023】
さらに他の局面、実施形態、ならびにこれら代表的な局面および実施形態の利点について以下で詳細に説明する。さらに、上記情報および下記詳細な説明はいずれも、さまざまな局面および実施形態を例示するための例にすぎないこと、および、クレームされている局面および実施形態の性質および特徴の理解のための概要または枠組みを提供することを意図していることが、理解されるはずである。本明細書に開示されているいずれかの実施形態を、他のいずれかの実施形態と、本明細書に開示されている目的、狙い、および必要性のうちの少なくとも1つに従う任意のやり方で、組合わせてもよい。「一実施形態」、「いくつかの実施形態」、「代替の実施形態」、「さまざまな実施形態」、「ある実施形態」等という記載は、必ずしも相互排他的ではなく、実施形態に関連して記載されている特定の特徴、構造、または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれ得ることを示すことを意図している。このような用語が本明細書に見られる場合必ずしもそれらすべてが同一の実施形態を指しているのではない。
【0024】
以下、少なくとも1つの実施形態のさまざまな局面について添付の図面を参照しながら説明するが、これら図面は一定の縮尺で描くことを意図したものではない。これら図面は、さまざまな局面および実施形態の説明およびより深い理解を与えるために含まれており、この明細書の一部を構成しているが、本発明の限定を定義することを意図したものではない。これら図面において、異なる図面に示される同一またはほぼ同一の各構成要素は同様の番号で表わされる。明確さのため、すべての図面のすべての構成要素に名称が付けられているとは限らないことがある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の局面に従う、ゲイン補正対象領域を有する2タップ読出CCDセンサの一例の図である。
図2】本発明の局面に従う、2タップ読出CCDセンサのレベルおよびゲイン較正プロセスの一例を示すブロック図である。
図3】本発明の局面に従う、2タップ読出CCDセンサのカラーフィルタ処理された画素アレイの一例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
詳細な説明
上記のように、マルチタップCCDセンサの経路間のタップ/チャネル整合不良は、結果として、マルチタップCCDセンサが生成した画像に「スプリットスクリーン」という視覚効果を生じさせる可能性がある。また、上記のように、この問題に対する過去の取組の試みの結果得られた解決策には、少なくとも数デジタルカウントのゲイン誤差が伴っていた。したがって、本明細書に記載の局面および実施形態は、マルチ読出(またはマルチタップ)CCDセンサの読出間のレベル(オフセット)およびゲイン誤差を1デジタルカウント以下に減じるための方法および装置を提供する。
【0027】
本明細書に記載の方法および装置の実施形態の応用は、以下の説明に記載されるまたは添付の図面に示される構成要素の構造および配置の詳細に限定されないことが理解されるはずである。上記方法および装置は、他の実施形態で実装することが可能であり、かつさまざまなやり方で実施または実行することが可能である。本明細書に示す具体的な実装例は専ら例示を目的としたものであって限定を意図したものではない。また、本明細書で使用される表現および用語は、説明を目的としたものであって限定とみなされてはならない。本明細書で「含む」、「備える」、「有する」、「包含する」、「伴う」およびその変形を使用する場合、これは、その後に列挙されたアイテムおよびその均等物ならびにその他のアイテムを含むことを意味する。「または」という記載は、「または」を用いて記載されている用語が、記載されている1つの用語、2つ以上の用語、およびすべての用語のうちのいずれかを示し得ると解釈できる。
【0028】
図1は、2タップ読出CCDセンサ100のある実施形態を示す。2タップ読出CCDセンサ100は、画素アレイ101とプロセッサ112とを含む。ある実施形態に従うと、画素アレイ101は2048×2048画素アレイであるが、他の実施形態では、画素アレイ101は任意のサイズでよい。画素アレイ101は、画素の左セグメント102と画素の右セグメント104とを含み、各セグメントは電気経路114(たとえばワイヤ)を介してプロセッサ112に結合されている。ある実施形態に従うと、画素の各セグメント102、104は、2048×1024画素アレイを含むが、他の実施形態では、セグメントは任意のサイズの画素アレイを含み得る。画素の各セグメント102、104はまた、マスクされた基準領域106を含む。ある実施形態に従うと、マスクされた各基準領域106は、各々20画素を含む2048行の画素を含むが、他の実施形態では、マスクされた基準領域106は任意のサイズでよく他の構成であってもよい。ある実施形態に従うと、各画素セグメント102、104のマスクされた基準領域106は、対応するセグメント102、104の左または右側の端に位置しているが、他の実施形態では、基準領域106は画素セグメント102、104の他の部分(たとえば上端または下端)に位置していてもよい。
【0029】
画素アレイ101に光が当たると、各セグメント102、104は、セグメント102、104の画素に入射した光を表わす画像データを取込む。取込まれた画像データに基づいて、各セグメント102、104は、ある時点で各セグメント102、104が受けた光を表わすタップ信号を生成する。タップ信号は、経路114を介してプロセッサ112に与えられる。たとえば、ある実施形態において、画素アレイ101の左セグメント102内のフォトダイオードは、左セグメント102の画素が受けた光を表わす左タップ信号を生成し、画素アレイ101の右セグメント104内のフォトダイオードは、右セグメント104の画素が受けた光を表わす右タップ信号を生成する。画素アレイ101の各セグメント102、104からの左および右タップ信号は、別々の経路114を介してプロセッサ112に与えられ、ある時点で画素アレイ101の各セグメント102、104が受けた光を表わす。各セグメント102、104のマスクされた基準領域106から生成された黒の基準タップ信号も、プロセッサ112に与えられる。
【0030】
ある実施形態に従うと、CCDセンサ100はまた、プロセッサ112と各画素セグメント102、104との間に結合された少なくとも1つのアナログデジタル(A/D)変換器115を含む。A/D変換器115は、画素セグメント102、104からアナログタップ信号を受け、このアナログタップ信号をデジタルタップ信号に変換し、このデジタルタップ信号を処理のためにプロセッサ112に与える。
【0031】
ゲイン補正の対象領域(Region Of Interest)(ROI)110は、CCDセンサ100内において、右セグメント104に隣接する左の画素セグメント102の一部と、左セグメント102に隣接する右の画素セグメント104の一部とを含むように定められる。ある実施形態において、ROI110の幅は2画素列である。別の実施形態において、ROI110の幅は4画素列である。他の実施形態において、ROI110の幅は何画素列として定めてもよい。
【0032】
プロセッサは、各電気経路114から(すなわち各画素セグメント102、104から)受けたタップ信号(ROI110の画素に対応するタップ信号およびマスクされた領域106に対応する黒の基準タップ信号を含む)に対して動作し、これらタップ信号の組合わせから、1つの画像を生成する。この画像は、ディスプレイ、メモリ、またはその他の外部システムに与えることができる。画像の生成において、プロセッサ112は、受けたタップ信号を分析し、このタップ信号を較正することにより、各セグメント102、104のタップ信号間のレベル(オフセット)およびゲイン誤差を減じる。
【0033】
たとえば、図2は、プロセッサ112によって実現し得る、2タップ読出CCDセンサのレベルおよびゲイン較正プロセス200の一例を示すブロック図である。図2に示されるように、プロセス200は、レベル補正段202を、次にゲイン補正段204を有効に実行する2段制御ループを含む。レベル補正段202において、各セグメント102、104のマスクされた基準領域106に対応する基準タップ信号を比較することにより、左セグメント102の基準タップ信号と右セグメント104の基準タップ信号の間のレベル差を求める。レベルが低い方の基準タップ信号を生成したセグメント102または104の基準タップ信号のレベルを高めることにより、他方のセグメント(すなわちレベルが高い方の基準タップ信号を生成したセグメント)の基準タップ信号のレベルと一致させる。これら2つのセグメントの基準タップ信号のレベルを一致させることにより、(各セグメント102、104の黒の基準タップ信号間のレベル差に見られる)基準タップ信号のレベルの固有の差を補償することができる。
【0034】
たとえば、レベル補正段202において、プロセッサ112は、同一期間に各セグメント102、104が生成した基準タップ信号を受ける(ブロック206に示される)。プロセッサ112は、左セグメント102のマスクされた基準領域106に対応する黒の基準タップ信号すべての大きさを合計する(ブロック208に示される)。プロセッサ112は、右セグメント104のマスクされた基準領域106に対応する黒の基準タップ信号すべての大きさを合計する(ブロック210に示される)。プロセッサ112は、左セグメント102のマスクされた基準領域106に対応する黒の基準タップ信号の合計された大きさと、右セグメント104のマスクされた基準領域106に対応する黒の基準タップ信号の合計された大きさとの間の差を計算する(ブロック212に示される)。計算された大きさの差を、レベルが低い方の黒の基準タップ信号を最初に生成したセグメント102または104のタップ信号に加算して、タップ信号のレベルを高め、このレベルを他方のセグメントのタップ信号レベルと一致させる(ブロック214に示される)。(レベルが調整されたタップ信号を含む)各セグメント102、104からのタップ信号は、ゲイン補正段204に与えられる(ブロック216に示される)。
【0035】
上記のように、レベルが低い方の黒の基準タップ信号を最初に生成したセグメント102または104のタップ信号レベルを高めて他方のセグメントのタップ信号レベルと一致させているが、他の実施形態では、レベルが高い方の黒の基準タップ信号を最初に生成したセグメント102または104のタップ信号レベルを下げて他方のセグメントのタップ信号レベルと一致させてもよい。
【0036】
また、上記のように、センサ100は、黒の基準タップ信号を生成するマスクされた基準領域106を含む。しかしながら、別の実施形態では、セグメント102、104のマスクされた基準領域106を取除き、その代わりにセンサ100を閉じることによって各画素セグメント102、104の任意の部分から黒の基準タップ信号を生成してもよい。
【0037】
ゲイン補正段204では、ROI110に対応付けられたタップ信号を分析し、この分析(以下でより詳細に説明する)に基づいて、プロセッサ112がセグメント102、104のタップ信号に与えるゲインを調整することにより、セグメント102、104のタップ信号間のゲイン誤差を減じられ得る。たとえば、ある実施形態において、ゲイン補正は、2つのセグメント102、104間の誤差項の絶対値を入力として受けるPIDコントローラ218として実現される。本明細書では誤差傾斜項と呼ばれるこの誤差項は、画素対のタップ信号間(2つのセグメント102、104間)の大きさの差(すなわち傾斜)を計算し、ROI110内のすべての画素対についてのこの大きさを合計することによって、生成される。乗法ゲイン補正項が、PIDコントローラの出力で生成され、その後、セグメント102、104からの画素情報(すなわちタップ信号)の次のフレームに与えられて、セグメント102、104のタップ信号に与えられるゲインを調整し、セグメント102、104のタップ信号間のゲイン誤差を減じる。制御ループは連続して実行されてもよく、または、定められたしきい値よりも誤差項が小さいときに停止してもよい。
【0038】
たとえば、図2のゲイン補正段204に示されるように、(レベルが調整されたタップ信号を含む)各セグメント102、104からのタップ信号を、レベル補正段202から受ける(ブロック222に示される)。プロセッサ112は、ROI110内の画素に対応付けられたタップ信号を分析し、ROI110内の第1のセグメント102と第2のセグメント104の間の画素対を識別する(ブロック224に示される)。ある実施形態に従うと、各画素対は、第1のセグメント102内のROI110から選択された1つの画素と、第2のセグメント102内のROI110から選択された1つの画素とを含む。プロセッサ112は、各画素対のタップ信号間の大きさの差を計算し、ROI110全体におけるそれぞれの差を合計する(ブロック226に示される)。結果として得られた、各画素対間の差の合計が、画素傾斜項220である。
【0039】
適切な誤差傾斜項220を求めるにあたって説明すべき1つの側面は、センサタップの不均衡から、シーン情報を取除くことである。ROI110内で発生する大きな傾斜は、結果として得られる誤差傾斜項220に影響を与えるおそれがある。たとえば、ある物体がROI110の右セグメント104の部分では検知されるがROI110の対応する左セグメント102の部分では検知されない場合(すなわち画素対の一方の画素のみにおいて検知される場合)、この画素対のタップ信号間の大きさの差が比較的大きいのは、この物体がシーンの二分の一に存在するからであって、ゲインの差が原因ではない。大きさの差が比較的大きいことは、誤差傾斜項220の計算に寄与し、結果として、誤差傾斜項220は間違って大きいものになるであろう。
【0040】
したがって、いくつかの実施形態に従うと、プロセッサは、有効なシーンデータに対して動作し、ROI110内の傾斜が大きな入力は拒絶する。ある実施形態において、誤差傾斜項220をしきい値処理することにより、シーン情報の効果を、誤差傾斜項220の計算から取除いてもよい。たとえば、ブロック226に示されるように、プロセッサ112は、ROI110全体にわたって各画素対のタップ信号間の大きさの差(すなわち傾斜)を計算すると、各画素対のタップ信号間の大きさの差と傾斜しきい値228との比較も行なう。画素対のタップ信号間の大きさの差が傾斜しきい値228よりも大きい場合、プロセッサ112は、この大きさの差を、大きさの差の合計の計算では使用しない。したがって、大きさの差が傾斜しきい値よりも大きい、対応するタップ信号を有する画素対は、PIDコントローラ218に与えられる誤差傾斜項220の計算値に寄与しない。このしきい値処理は、誤差傾斜項220を計算するときのシーンに基づく傾斜の影響を制限し得る。
【0041】
誤差傾斜項220はPIDコントローラ218に与えられる(ブロック230に示される)。PIDコントローラ218は、過去のある期間にわたる誤差傾斜項220を積分し、ステップ234で、積分された誤差傾斜項は、一定の積分項係数(K_i)235で乗算される(ブロック232に示される)。また、PIDコントローラ218は、現在の誤差傾斜項220を一定の比例項係数(K_p)で乗算する(ブロック236に示される)。さらに、PIDコントローラ218は、誤差傾斜項220の経時変化率を求める(ブロック238に示される)。この変化率は、一定の微分項係数(K_d)241で乗算される(ブロック240に示される)。K_i235で乗算された積分された誤差傾斜項、K_p237で乗算された現在の誤差傾斜項220、および、K_d241で乗算された誤差傾斜項の変化率を合計することにより、PID制御項を生成する(ブロック242に示される)。PID制御項を基準(または公称)ゲイン項245と組合わせることにより、ゲイン補正項246を生成する(ブロック244に示される)。
【0042】
ゲイン補正項246を、画素アレイ101のセグメント102、104からの次のタップ信号に与えることにより、セグメント102、104のタップ信号に与えられるゲインを調整し、セグメント102、104のタップ信号間のゲイン誤差を減じる(ブロック248に示される)。ある実施形態に従うと、ゲイン補正項246は、他方のセグメント102、104のゲインと一致するよう増加させねばならないゲインを現在有するセグメント102、104のタップ信号に与えられる。このような実施形態において、ゲイン補正項は、低い方のゲインセグメント102、104のタップ信号に与えられるゲインを大きくする。別の実施形態に従うと、ゲイン補正項246は、他方のセグメント102、104のゲインと一致するよう減少させねばならないゲインを現在有するセグメント102、104のタップ信号に与えられる。このような実施形態において、ゲイン補正項は、高い方のゲインセグメント102、104のタップ信号に与えられるゲインを小さくする。
【0043】
ある実施形態に従うと、ゲイン制御段204を連続して実行して2つのセグメント102、104のゲインを一致させてもよい。しかしながら、別の実施形態では、誤差傾斜項220が定められた最小しきい値未満のとき、ゲイン制御段204を停止してもよい。
【0044】
別の実施形態に従うと、センサ100のシステムモーションについての知識を用いて、制御ループの次の繰返しにおいてシーンモーションがROI110内の新たなサンプルを確保するのに十分大きいときにのみ、ゲイン制御段204を選択的に有効にしてもよい。たとえば、動いていない物体(たとえば建物の角)はROI110の右セグメント104の部分では検知されるが対応するROI110の左セグメント102の部分では検知されないという状況が生じることがある。ROI110の二分の一のみにある動いていない物体を連続して検知したことが原因で大きさが大きい傾斜に基づく誤差傾斜項を用いて、ゲイン制御段204がそのゲイン調整プロセスを連続して実行しようとした場合、得られる誤差傾斜項は引続き間違って大きく、セグメント102、104の適切なゲインの一致は生じない。
【0045】
したがって、シーンモーションが、ROI110内の新たなサンプルを確保するのに十分大きい(すなわちシーンモーションしきい値を超える)ときにのみ、ゲイン制御段204を選択的に有効にすれば、このような状況は回避し得る。なぜなら、ゲイン制御段202はセンサ100の十分なモーションの結果ROI110内に新たなサンプルがあるときにのみ有効にされ、同一の動いていない物体に基づくゲイン較正の連続した試みは生じないからである。
【0046】
たとえば、ある実施形態において、プロセッサ112は、センサ100のモーションを制御および/または検知するモーション制御システムに結合されるように構成されたモーション制御入力113を含む。たとえば、モーション制御システムは、ジャイロスコープ、サーボ機構、測位システム(たとえばGPS)、モータ、ポンプ、アクチュエータ、または、モーション制御システムでは一般的なその他任意の装置またはシステムを含み得る。
【0047】
ある実施形態に従うと、モーション制御システムは、センサ100自体のモーションを(たとえばアクチュエータ、モータ、サーボ機構等を介して)制御し、センサ100のモーションに関する情報を、モーション制御入力113を介してプロセッサ112に与える。別の実施形態において、モーション制御システムは、(たとえばユーザがセンサ100を動かしたとき、またはセンサ100が装着された領域(たとえば車両)が動くときの)センサ100のモーションをモニタするのみであり、センサ100のモーション情報をプロセッサ112に与える。ある実施形態において、センサ100が受けたシーン像が(たとえばセンサ100またはセンサ100が装着された領域が動いたことによって)十分な量(すなわち2画素等のシーンモーションしきい値を超える量)だけ移動したことを示す信号を、プロセッサ112がモーション制御入力113を介してモーション制御システムから受けたときにのみ、ゲイン制御段204は、有効にされる。
【0048】
多くの従来のCCDセンサは、光路のカラーフィルタを用いて機能する。たとえば、ピクセル化されたベイヤー(Bayer)(赤、緑、青)フィルタアレイを、CCDセンサ100の前に配置してもよい。このベイヤーカラーフィルタアレイ(複数の異なる色を含む)はさらに、誤差傾斜項220の計算に影響し得る。したがって、少なくとも1つの実施形態に従うと、プロセッサ112は、ゲイン制御段204の誤差傾斜項の計算においてカラーフィルタの存在を説明すればよい。
【0049】
たとえば、ゲイン制御段204では、カラー処理モード251に基づいて、プロセッサ112を、その誤差傾斜項の計算において画素アレイ101からの特定の色の画素(および対応するタップ信号)のみを使用するように構成してもよい(ブロック250に示される)。たとえば、ある実施形態に従うと、緑色処理モード251では、プロセッサ112は誤差傾斜項220の計算において画素アレイ101からの緑の画素のみを使用する。
【0050】
たとえば、ベイヤーフィルタリングされた画素アレイ300(図3に示される)において、(各々「X」で示される)緑画素はアレイ300の50%を占めている。したがって、幅が2画素列のROI110の場合、隣合う行の緑画素302を、誤差傾斜項220の計算における画素対として用いてもよい。幅が4画素列のROI110の場合、同一行の緑画素304を誤差傾斜項220の計算における画素対として用いてもよい。他の例では、緑以外の色の画素を用いてもよく、または、異なる画素対を誤差傾斜項220の計算のために選択してもよい。加えて、このプロセスは1つの色の画素のみを用いることによって単純化してもよいが、他の実施形態はすべての画素または2色以上の画素を用いてもよい。
【0051】
上記のように、レベルおよびゲインの較正プロセスは2タップ(すなわちセグメント)CCDセンサに対して使用されているが、他の実施形態においてCCDセンサは任意の数のタップまたはセグメントを含み得る。
【0052】
また、上記のように、画素アレイ101は2つのハーフセグメント102、104に分割されているが、他の実施形態では、画素アレイ101を他のどのようなやり方で分割してもよく、セグメント102、104を他の構成において定めてもよい。
【0053】
上記のように、マルチタップCCDカメラの読出間のレベル(オフセット)およびゲイン誤差を、1デジタルカウント以下に減じることができる。対象領域の画素対間のタップシームにおける傾斜を測定しこの傾斜を合計することによって、誤差傾斜項を生成すればよい。誤差傾斜項はPIDコントローラに与えられてゲイン補正項が生成される。ゲイン補正項は、タップの画素に与えられるゲインを調整しタップ間のゲイン誤差を減じるために使用される。加えて、対象領域内の傾斜が大きな入力を拒絶することにより、および/またはシーンモーションが対象領域内の新たなサンプルを確保するのに十分大きいときにのみゲイン調整を選択的に有効にすることにより、ゲイン誤差を1デジタルカウント以下にする誤差傾斜項(および結果として得られるゲイン補正項)を得ることができる。
【0054】
少なくとも1つの実施形態のいくつかの局面について説明してきたが、当業者はさまざまな変更、変形、および改善に容易に想到するであろうことが理解されるはずである。このような変更、変形、および改善は、この開示の一部であることが意図されかつ本発明の範囲内であることが意図されている。したがって、上記説明および図面は例示のためのものにすぎない。
図3
図1
図2