特許第6034047号(P6034047)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 朝日電装株式会社の特許一覧 ▶ ヤマハ発動機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6034047-シリンダ錠の保護装置 図000002
  • 特許6034047-シリンダ錠の保護装置 図000003
  • 特許6034047-シリンダ錠の保護装置 図000004
  • 特許6034047-シリンダ錠の保護装置 図000005
  • 特許6034047-シリンダ錠の保護装置 図000006
  • 特許6034047-シリンダ錠の保護装置 図000007
  • 特許6034047-シリンダ錠の保護装置 図000008
  • 特許6034047-シリンダ錠の保護装置 図000009
  • 特許6034047-シリンダ錠の保護装置 図000010
  • 特許6034047-シリンダ錠の保護装置 図000011
  • 特許6034047-シリンダ錠の保護装置 図000012
  • 特許6034047-シリンダ錠の保護装置 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6034047
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】シリンダ錠の保護装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 17/18 20060101AFI20161121BHJP
   E05B 47/00 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   E05B17/18 G
   E05B47/00 C
   E05B47/00 R
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-97834(P2012-97834)
(22)【出願日】2012年4月23日
(65)【公開番号】特開2013-224561(P2013-224561A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2015年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000213954
【氏名又は名称】朝日電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 通之
(72)【発明者】
【氏名】太田 充浩
(72)【発明者】
【氏名】前川 恒治
【審査官】 渋谷 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−317243(JP,A)
【文献】 特開2002−322837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 17/18
E05B 47/00
E05B 77/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イグニッションキーを挿抜するためのキー孔が形成されたロータの上方に設けられたハウジングと、
該ハウジング内で閉塞位置と開放位置との間で移動可能とされ、閉塞位置で前記キー孔を塞ぐとともに開放位置で当該キー孔を開放するシャッターと、
該シャッターを常時開放位置に向かって付勢する付勢手段と、
閉塞位置にある前記シャッターを係止し得る係止手段と、
該係止手段による係止を解除し、前記シャッターを前記付勢手段による付勢力で閉塞位置から開放位置まで移動させる解除手段と、
を具備したシリンダ錠の保護装置において、
前記解除手段は、
手動操作により前記係止手段による係止を解除する手動解除手段と、
遠隔操作で駆動することにより前記係止手段による係止を解除する遠隔解除手段と、
を有するとともに、当該手動解除手段及び遠隔解除手段がそれぞれ前記係止手段を動作させて前記シャッターを作動させ得るものとされ、且つ、前記係止手段は、前記手動解除手段の操作力が伝達される第1部位と、前記遠隔解除手段の駆動力が伝達される第2部位とを有した単一の部材から成り、所定の軸を中心に揺動可能とされ、一端側に前記第1部位が形成されるとともに他端側に前記第2部位が形成されたことを特徴とするシリンダ錠の保護装置。
【請求項2】
前記遠隔解除手段は、遠隔操作により通電されてプランジャを駆動させるソレノイドから成り、当該プランジャの駆動により前記係止手段を動作させて係止を解除させ得ることを特徴とする請求項1記載のシリンダ錠の保護装置。
【請求項3】
前記係止手段は、前記プランジャの所定部位を挿通可能な切欠きを有し、当該切欠きに前記プランジャを挿通して前記係止手段とソレノイドとを連結させたことを特徴とする請求項記載のシリンダ錠の保護装置。
【請求項4】
前記シャッターには、当該シャッターを開放位置から閉塞位置まで手動で操作し得る操作部が形成されたことを特徴とする請求項1〜の何れか1つに記載のシリンダ錠の保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車などが具備するシリンダ錠の破壊等を防止し得るシリンダ錠の保護装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二輪車のシリンダ錠は、通常、イグニッションキーを挿抜可能なキー孔が形成されたロータを具備しており、従来、第三者によるはさみやドライバ等の当該キー孔への差し込みでシリンダ錠がいたずらされて破壊されるのを防止するために、シリンダ錠の保護装置が提案されている。かかる保護装置は、例えば特許文献1に開示されているように、キー孔を閉状態とする閉塞位置から当該キー孔を開状態とする開放位置まで移動可能なシャッターと、該シャッターを開放位置と閉塞位置との間で移動自在に保持するハウジングと、シャッターを閉塞位置に保持することによりキー孔を閉塞して施錠するマグネット錠と、磁石の磁気によりマグネット錠を解錠するマグネットキーを具備していた。
【0003】
さらに、上記した特許文献で開示された従来のシリンダ錠の保護装置は、リモコン等による遠隔操作で正逆転するモータやソレノイドを有し、マグネットキー錠及びマグネットキーによる手動操作に加え、当該リモコン等による遠隔操作によってもシャッターを開閉させ得るよう構成されていた。これにより、シャッターによるキー孔の開閉動作を手動操作と遠隔操作とで行うことができ、操作性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−317243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のシリンダ錠の保護装置においては、手動操作に加え、当該リモコン等による遠隔操作によってもシャッターを開閉させ得ることから、操作性を向上させ得るものの、手動操作のための構成とは別個独立した遠隔操作用の構成を配設させる必要があるため、装置構成が複雑化してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、手動操作と遠隔操作との両方でシャッターを作動させることができるとともに、構成を簡素化することができるシリンダ錠の保護装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、イグニッションキーを挿抜するためのキー孔が形成されたロータの上方に設けられたハウジングと、該ハウジング内で閉塞位置と開放位置との間で移動可能とされ、閉塞位置で前記キー孔を塞ぐとともに開放位置で当該キー孔を開放するシャッターと、該シャッターを常時開放位置に向かって付勢する付勢手段と、閉塞位置にある前記シャッターを係止し得る係止手段と、該係止手段による係止を解除し、前記シャッターを前記付勢手段による付勢力で閉塞位置から開放位置まで移動させる解除手段とを具備したシリンダ錠の保護装置において、前記解除手段は、手動操作により前記係止手段による係止を解除する手動解除手段と、遠隔操作で駆動することにより前記係止手段による係止を解除する遠隔解除手段とを有するとともに、当該手動解除手段及び遠隔解除手段がそれぞれ前記係止手段を動作させて前記シャッターを作動させ得るものとされ、且つ、前記係止手段は、前記手動解除手段の操作力が伝達される第1部位と、前記遠隔解除手段の駆動力が伝達される第2部位とを有した単一の部材から成り、所定の軸を中心に揺動可能とされ、一端側に前記第1部位が形成されるとともに他端側に前記第2部位が形成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項記載の発明は、請求項1記載のシリンダ錠の保護装置において、前記遠隔解除手段は、遠隔操作により通電されてプランジャを駆動させるソレノイドから成り、当該プランジャの駆動により前記係止手段を動作させて係止を解除させ得ることを特徴とする。
【0011】
請求項記載の発明は、請求項記載のシリンダ錠の保護装置において、前記係止手段は、前記プランジャの所定部位を挿通可能な切欠きを有し、当該切欠きに前記プランジャを挿通して前記係止手段とソレノイドとを連結させたことを特徴とする。
【0012】
請求項記載の発明は、請求項1〜の何れか1つに記載のシリンダ錠の保護装置において、前記シャッターには、当該シャッターを開放位置から閉塞位置まで手動で操作し得る操作部が形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、解除手段は、手動操作により係止手段による係止を解除する手動解除手段と、遠隔操作で駆動することにより係止手段による係止を解除する遠隔解除手段とを有するとともに、当該手動解除手段及び遠隔解除手段がそれぞれ係止手段を動作させてシャッターを作動させ得るので、手動操作と遠隔操作との両方でシャッターを作動させることができるとともに、共通の係止手段を介して手動解除手段による係止の解除及び遠隔解除手段による係止の解除を行わせることができ、構成を簡素化することができる。
【0014】
また、係止手段は、手動解除手段の操作力が伝達される第1部位と、遠隔解除手段の駆動力が伝達される第2部位とを有した単一の部材から成るので、構成をより簡素化することができる。
【0015】
さらに、係止手段は、所定の軸を中心に揺動可能とされ、一端側に第1部位が形成されるとともに他端側に第2部位が形成されたので、手動解除手段による係止の解除及び遠隔解除手段による係止の解除を円滑かつ確実に行わせることができる。
【0016】
請求項の発明によれば、遠隔解除手段は、遠隔操作により通電されてプランジャを駆動させるソレノイドから成り、当該プランジャの駆動により係止手段を動作させて係止を解除させ得るので、遠隔解除手段による係止の解除をより円滑かつ確実に行わせることができる。
【0017】
請求項の発明によれば、係止手段は、プランジャの所定部位を挿通可能な切欠きを有し、当該切欠きに前記プランジャを挿通して係止手段とソレノイドとを連結させたので、外部からの衝撃や振動等によりプランジャが移動しても係止手段が移動してしまうのを抑制することができる。
【0018】
請求項の発明によれば、シャッターには、当該シャッターを開放位置から閉塞位置まで手動で操作し得る操作部が形成されたので、シャッターによりキー孔を閉塞させる際の操作性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係るシリンダ錠の保護装置を示す斜視図
図2】同シリンダ錠の保護装置を示す正面図
図3】同シリンダ錠の保護装置を示す平面図
図4図3中IV−IV線断面図
図5】同シリンダ錠の保護装置におけるシャッターを示す斜視図
図6】同シリンダ錠の保護装置におけるシャッターを示す5面図
図7】同シリンダ錠の保護装置における係止手段を示す斜視図
図8】同シリンダ錠の保護装置における係止手段を示す5面図
図9】同シリンダ錠の保護装置におけるマグネット錠の動作を示すための断面模式図
図10】同シリンダ錠の保護装置における遠隔解除手段による係止の解除動作を示す平面図
図11】同シリンダ錠の保護装置における遠隔解除手段による係止の解除動作を示す断面図
図12】同シリンダ錠の保護装置における手動解除手段による係止の解除動作を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るシリンダ錠の保護装置は、二輪車が具備するシリンダ錠のキー孔上方に設けられ、当該キー孔を外側から開閉可能とすることによりシリンダ錠を保護し得るもので、図1〜9に示すように、ハウジング1と、シャッター2と、付勢手段としての捩りバネ3と、係止手段4と、解除手段としてのマグネット錠5(手動解除手段)及びソレノイド6(遠隔解除手段)とから主に構成されている。なお、図中符号10は、キー孔Raに光を照射し得るLEDを示している。
【0021】
ハウジング1は、ロータRの上方に設けられ、本保護装置を構成する各種部品を内部に収容するとともに、シリンダ錠を構成するシリンダボディSの上端部を収容し得るようになっている。かかるシリンダボディS内には、複数のタンブラを具備したロータRが配設されるとともに、当該ロータRには、キー孔Raが形成されてイグニッションキーIKを挿抜(抜き差し)し得るよう構成されている。
【0022】
なお、本実施形態に係るハウジング1は、カバー部1a及びケース部1bから成り、ケース部1bに本保護装置を構成する各種部品が配設されるとともに、その上方をカバー部1aにて覆うようになっている。カバー部1aには、ロータRのキー孔Raを外部に臨ませつつイグニッションキーIKを挿通可能な挿通孔1aaと、後述する操作部7を操作可能とする凹部1abと、マグネット錠5を外部に臨ませた開口1acとがそれぞれ形成されている。
【0023】
ロータRは、キー孔RaにイグニッションキーIKを挿入した状態にて回動操作可能とされており、二輪車が具備するエンジンを始動させるオン位置、当該エンジンを停止させるオフ位置、及び車両が具備するハンドルバーをロックするロック位置の間を回動可能とされている。なお、ロータRがオフ位置にあるとき、キー孔Raに挿入したイグニッションキーIKを押圧して押し込み、その状態で平面視で左側へ回動させることにより、ロック位置までの回動操作が可能とされている。このロック位置にロータRが移動すると、シリンダボディS内のロックバーBが突出するよう構成されており、当該ロックバーBが二輪車におけるハンドルバー(不図示)の回動軸に形成されたロック孔(不図示)内に挿入して係止することにより、当該ハンドルバーに対するロックがなされるようになっている。
【0024】
一方、イグニッションキーIKは、図2に示すように、樹脂等の成形部品から成る把持部11を有して構成されており、当該把持部11からキー山やキー溝が形成されたキー部が延設されて構成されている。このキー部がロータRのキー孔Raに挿入可能とされているのである。また、把持部11には、遠隔操作可能な操作ボタン12が形成されており、例えば当該操作ボタン12を1回押圧操作すると、車両が具備する左右のターンシグナルが所定回数点滅して応答し得るとともに、2回連続して押圧操作すると、後述するソレノイド6(遠隔解除手段)に対する遠隔操作が可能となっている。
【0025】
シャッター2は、ハウジング1内で閉塞位置(図10(a)参照)と開放位置(同図(c)参照)との間で移動(本実施形態においては回動)可能とされ、閉塞位置でキー孔Raを塞ぐとともに開放位置でキー孔Raを開放し得るものである。具体的には、本実施形態に係るシャッター2は、図5、6に示すように、被係止部2aと、覆い部2bと、凸部2cと、回動中心部2dと、操作部7とが一体形成された金属製の部品から成る。
【0026】
被係止部2aは、係止手段4により係止される部位から成り、シャッター2の先端部に形成されている。覆い部2bは、シャッター2の略中央部に形成された部位から成り、当該シャッター2が閉塞位置にあるとき、キー孔Raを覆って塞ぐよう構成されている。凸部2cは、捩りバネ3(付勢手段)の一端と連結された部位から成るとともに、回動中心部2dは、ハウジング1のケース部1bに突出形成されたボス部L2(図4参照)を嵌合可能な凹部から成る。
【0027】
これにより、シャッター2は、回動中心部2dに嵌合したボス部L2を中心として、開放位置と閉塞位置との間を回動可能とされている。また、付勢手段としての捩りバネ3は、上述のように一端が凸部2cに連結されるとともに、他端がハウジング1のケース部1bに連結されており、シャッター2を常時開放位置に向かって付勢している。そして、シャッター2を開放位置から閉塞位置に回動させる際、凸部2cにより捩りバネ3が捩られるので、開放位置に向かった付勢力が付与されるよう構成されている。なお、当該捩りバネ3に代えて、シャッター2を常時開放位置へ付勢する他の付勢手段(板バネやコイルバネ或いは軟質樹脂等の弾性体など)としてもよい。
【0028】
さらに、シャッター2には、当該シャッター2を開放位置から閉塞位置まで手動で操作し得る操作部7が形成されている。この操作部7は、シャッター2の回動中心部2dから側方に向かって一体的に延設された部位から成るとともに、シャッター2が開放位置にあるとき、カバー部1aの凹部1abが形成された部位に位置することにより、指で摘んで操作が可能とされている。また、シャッター2が閉塞位置にあるとき、操作部7がカバー部1aの内部に位置することにより、操作ができないよう構成されている。
【0029】
係止手段4は、図3に示すように、閉塞位置にあるシャッター2を係止し得るものであり、本実施形態においては、図7、8に示すように、マグネット錠5(手動解除手段)の操作力が伝達される第1部位4aと、ソレノイド6(遠隔解除手段)の駆動力が伝達される第2部位4bと、シャッター2の被係止部2aと当接して係止し得る係止部4cと、揺動中心部4dとを有した単一の部材(リンク状部材)から成る。
【0030】
揺動中心部4dは、係止手段4における幅方向に貫通した孔から成り、ハウジング1側(固定部材側)に形成された揺動軸L1(図4参照)を挿通可能とされている。これにより、係止手段4は、揺動軸L1(所定の軸)を中心に揺動可能とされており、一端側に第1部位4a及び係止部4cが形成されるとともに他端側に第2部位4bが形成されたものとなっている。
【0031】
しかして、係止手段4は、揺動軸L1を中心に揺動することにより、シャッター2を係止する位置(図4参照)と、シャッター2の係止を解いた位置(図11参照)との間を移動可能とされているのである。また、揺動軸L1には、図2、4に示すように、一端が固定側に連結されつつ他端が係止手段4に連結された捩りバネ8が取り付けられており、この捩りバネ8により、係止手段4が同図中c方向に常時付勢されている。これにより、係止手段4は、シャッター2を係止する位置に向かって常時付勢されることとなる。
【0032】
解除手段としてのマグネット錠5(手動解除手段)及びソレノイド6(遠隔解除手段)は、係止手段4による係止を解除し、シャッター2を捩りバネ3(付勢手段)による付勢力で閉塞位置から開放位置まで移動させるものである。すなわち、本実施形態においては、係止手段4によるシャッター2に対する係止の解除がマグネット錠5による手動操作及びソレノイド6による遠隔操作の何れによっても可能とされており、これらマグネット錠5及びソレノイド6を選択的に作動させることにより、シャッター2を閉塞位置から開放位置まで動作させ得るよう構成されているのである。
【0033】
マグネット錠5(手動解除手段)は、手動操作により係止手段4による係止を解除するためのもので、図9に示すように、ハウジング1のケース部1bに形成されたボス部1baに嵌合した筒状部材から成り、当該ボス部1baを中心として回動可能とされている。より具体的には、ボス部1baの上面には、磁石m1及び当該磁石m1を図中上方に付勢するバネsを収容する収容穴1bbが複数(本実施形態においては4つ)形成されているとともに、マグネット錠5における収容穴1bbに対応した位置(裏面)には、磁石m1を嵌合し得る嵌合穴5bが形成されている。そして、図9(a)に示すように、各磁石m1が嵌合穴5bに嵌合することにより、マグネット錠5の回動が規制されてロックされ得るようになっている。
【0034】
一方、イグニッションキーIKの把持部11には、マグネットキーMKが形成されている。このマグネットキーMKは、マグネット錠5の上面に形成された嵌合部5aに嵌合可能な形状とされるとともに、磁石m1に対応する位置に磁石m2が埋設されている。そして、正規のマグネットキーMKを嵌合部5aに嵌合させると、図9(b)に示すように、磁石m1に対して磁石m2が対峙するとともに、これら磁石m1の磁力と磁石m2の磁力とが互いに反発し合うよう設定(すなわち、磁石m1のS極と磁石m2のS極とが対峙するとともに、磁石m1のN極と磁石m2のN極とが対峙するよう設定)されている。
【0035】
これにより、正規のマグネットキーMKを嵌合部5aに嵌合させると、磁石m1がバネsの付勢力に抗して下降し、嵌合穴5bに対する嵌合が解かれることとなるので、その状態を維持しつつ当該マグネットキーMKを所定方向に回動させれば、同方向にマグネット錠5を回動させることができる。また、マグネット錠5の所定位置には、当該マグネット錠5が回動する過程で係止手段4の第1部位4aと当接し得る当接部5c(図12参照)が形成されている。
【0036】
そして、マグネットキーMKにより磁石m1による嵌合を解いた後、当該マグネットキーMKと共にマグネット錠5を所定方向に回動すると、図12に示すように、当接部5cが係止手段4の第1部位4aと当接するとともに当該第1部位4aを同方向に押圧するので、当該係止手段4を捩りバネ8の付勢力に抗して揺動させ得るようになっている。これにより、係止手段4によるシャッター2に対する係止が解かれ、当該シャッター2が捩りバネ3の付勢力にて閉塞位置から開放位置まで移動することとなる。
【0037】
なお、本実施形態に係るマグネット錠5は、ハウジング1のケース部1bに配設されたコイルバネ9にてロックされた位置側(磁石m1が嵌合して回動が規制された位置側)に常時付勢されている。これにより、係止手段4のシャッター2に対する係止が解かれた後、マグネットキーMKによる操作力を緩める或いは当該マグネットキーMKを取り外すことにより、コイルバネ9の付勢力にてマグネット錠5が自然と元の位置(ロック位置)に戻るようになっている。
【0038】
ソレノイド6(遠隔解除手段)は、遠隔操作で駆動することにより係止手段4による係止を解除するためのもので、本実施形態においては、図2、4に示すように、遠隔操作により通電されてプランジャ6aを駆動させるソレノイド6から成り、当該プランジャ6aの駆動により係止手段4を動作させて係止を解除させ得るものとされている。より具体的には、係止手段4の第2部位4bは、プランジャ6aの所定部位6aa(他の部位より細径とされた部位)を挿通可能な切欠き(図7、8参照)とされており、当該切欠きにプランジャ6aの所定部位6aaを挿通して係止手段4とソレノイド6とを連結させているのである。
【0039】
しかるに、イグニッションキーIKの把持部11に形成された操作ボタン12を押圧操作(例えば、連続して2回押圧操作)すると、電波等で構成される所定の信号が発信され、その信号を図示しない受信機にて受信すると、ソレノイド6内のコイル(不図示)に通電させてプランジャ6aを下降(図11中a方向に移動)させ、第2部位4b(切欠きによりプランジャ6aと連結された部位)を同方向に引っ張ることにより係止手段4を捩りバネ8の付勢力に抗して図11中b方向に揺動させ得るようになっている。これにより、係止手段4によるシャッター2の係止が解かれ、当該シャッター2が捩りバネ3の付勢力にて閉塞位置から開放位置まで移動することとなる。
【0040】
すなわち、図10に示すように、係止手段4にて閉塞位置にあるシャッター2を係止した状態(同図(a)参照)において、操作ボタン12に対する所定の押圧操作を行うと、係止手段4が捩りバネ8の付勢力に抗して揺動軸L1を中心に揺動し、同図(b)に示すように、係止部4cが被係止部2aと離間した状態となる。これにより、シャッター2に対する係止が解かれ、捻りバネ3による付勢力にてシャッター2が回動して開放位置とされる(同図(c)参照)のである。
【0041】
なお、開放位置にあるシャッター2を閉塞位置とするには、操作部7を指で摘んで揺動させる操作が必要とされる。具体的には、シャッター2の先端部(被係止部2aと隣接する部位)には、所定の勾配面2e(図5、6参照)が形成されており、操作部7を操作して開放位置にあるシャッター2を閉塞位置まで回動させる過程で、勾配面2eにて係止部4cを押圧し、揺動軸L1を中心として係止手段4を揺動させる。これにより、シャッター2を更に回動させて閉塞位置に至らせることが可能とされ、当該シャッター2が閉塞位置に至ると、係止手段4が捩りバネ8の付勢力にて元の位置まで揺動し、係止部4cが被係止部2aと当接することとなり、シャッター2が閉塞位置にて係止される。
【0042】
上記実施形態に係るシリンダ錠の保護装置によれば、解除手段は、手動操作により係止手段4による係止を解除するマグネット錠5(手動解除手段)と、遠隔操作で駆動することにより係止手段4による係止を解除するソレノイド6(遠隔解除手段)とを有するとともに、当該マグネット錠5及びソレノイド6がそれぞれ係止手段4を動作させてシャッター2を作動させ得るので、手動操作と遠隔操作との両方でシャッター2を作動させることができるとともに、共通の係止手段4を介してマグネット錠5(手動解除手段)による係止の解除及びソレノイド6(遠隔解除手段)による係止の解除を行わせることができ、構成を簡素化することができる。
【0043】
また、本実施形態に係る係止手段4は、マグネット錠5(手動解除手段)の操作力が伝達される第1部位4aと、ソレノイド6(遠隔解除手段)の駆動力が伝達される第2部位4bとを有した単一の部材から成るので、構成をより簡素化することができる。さらに、本実施形態に係る係止手段4は、所定の軸(揺動軸L1)を中心に揺動可能とされ、一端側に第1部位4aが形成されるとともに他端側に第2部位4bが形成されたので、マグネット錠5(手動解除手段)による係止の解除及びソレノイド6(遠隔解除手段)による係止の解除を円滑かつ確実に行わせることができる。
【0044】
またさらに、本実施形態に係る遠隔解除手段は、遠隔操作により通電されてプランジャ6aを駆動させるソレノイド6から成り、当該プランジャ6aの駆動により係止手段4を動作させて係止を解除させ得るので、遠隔解除手段による係止の解除をより円滑かつ確実に行わせることができる。また、係止手段4は、プランジャ6aの所定部位6aaを挿通可能な切欠きを有し、当該切欠きにプランジャ6aを挿通して係止手段4とソレノイド6とを連結させたので、係止手段4の第2部位4bにプランジャ6aを固定させるものに比べ、外部からの衝撃や振動等によりプランジャ6aが移動しても係止手段4が移動してしまうのを抑制することができる。
【0045】
特に、本実施形態の如く係止手段4における第2部位4bを切欠きで構成し、その切欠きにプランジャ6aを挿通させて係止手段4とプランジャ6aとの連結を図ることにより、手動操作による係止手段4の揺動時(すなわち、マグネット錠5の回動時)、プランジャ6aを連れ回すことなく当該係止手段4の揺動を許容させることができ、係止手段4による係止の解除をより円滑に行わせることができる。
【0046】
さらに、本実施形態に係るシリンダ錠の保護装置によれば、シャッター2には、当該シャッター2を開放位置から閉塞位置まで手動で操作し得る操作部7が形成されたので、シャッター2によりキー孔Raを閉塞させる際の操作性をより向上させることができる。なお、本実施形態においては、操作部7がシャッター2と一体成形された部位から成るが、別体の操作部をシャッター2の所定部位(回動中心部2dから延設させるものに限らない)に取り付けるようにしてもよい。
【0047】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばマグネット錠5に代えて、手動操作により係止手段4による係止を解除する他の形態の手動解除手段、又はソレノイド6に代えて、遠隔操作で駆動することにより係止手段4による係止を解除する他の形態の遠隔解除手段(例えば、他の汎用的なアクチュエータ)としてもよい。特に、遠隔解除手段として、汎用的なモータを用いることができ、この場合、手動解除手段による手動操作時、モータの出力軸が空回りするよう構成するのが好ましい。
【0048】
また、シャッター2は、本実施形態の如く開放位置と閉塞位置との間を回動するものに限定されず、例えば開放位置と閉塞位置との間を摺動するものとしてもよい。
【0049】
またさらに、本実施形態においては、イグニッションキーIKの把持部11に形成された操作ボタン12を操作することにより、遠隔解除手段(ソレノイド6)を作動させてシャッター2の係止を解いているが、当該把持部11とは別個のリモコン(リモートコントローラ)にてソレノイド6等から成る遠隔解除手段を作動させるようにしてもよい。なお、本実施形態においては、二輪車のシリンダ錠に適用されているが、例えば船舶、ATV又はスノーモービル等におけるシリンダ錠に本発明を適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
解除手段は、手動操作により係止手段による係止を解除する手動解除手段と、遠隔操作で駆動することにより係止手段による係止を解除する遠隔解除手段とを有するとともに、当該手動解除手段及び遠隔解除手段がそれぞれ係止手段を動作させてシャッターを作動させ得るものとされ、且つ、係止手段は、手動解除手段の操作力が伝達される第1部位と、遠隔解除手段の駆動力が伝達される第2部位とを有した単一の部材から成り、所定の軸を中心に揺動可能とされ、一端側に第1部位が形成されるとともに他端側に第2部位が形成されたシリンダ錠の保護装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等に適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 ハウジング
2 シャッター
3 捩りバネ(付勢手段)
4 係止手段
5 マグネット錠(手動解除手段)(解除手段)
6 ソレノイド(遠隔解除手段)(解除手段)
7 操作部
8 捩りバネ
9 コイルバネ
10 LED
11 把持部
12 操作ボタン
IK イグニッションキー
R ロータ
Ra キー孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12