特許第6034098号(P6034098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6034098インジェクタのデポジットを洗浄するためのクリーナ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6034098
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】インジェクタのデポジットを洗浄するためのクリーナ
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/30 20060101AFI20161121BHJP
   C11D 1/66 20060101ALI20161121BHJP
   C10L 10/18 20060101ALI20161121BHJP
   C10L 1/2387 20060101ALI20161121BHJP
   C10L 1/238 20060101ALI20161121BHJP
   C10L 1/185 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   C11D3/30
   C11D1/66
   C10L10/18
   C10L1/2387
   C10L1/238
   C10L1/185
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-189106(P2012-189106)
(22)【出願日】2012年8月29日
(65)【公開番号】特開2014-47240(P2014-47240A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2014年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591125289
【氏名又は名称】日本ケミカル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100101904
【弁理士】
【氏名又は名称】島村 直己
(72)【発明者】
【氏名】野村 隆史
(72)【発明者】
【氏名】一柳 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】高橋 純平
(72)【発明者】
【氏名】小倉 新一
(72)【発明者】
【氏名】梅原 吉倫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 繁彦
【審査官】 古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−003276(JP,A)
【文献】 特開平07−026276(JP,A)
【文献】 特開平07−157779(JP,A)
【文献】 特開平07−145391(JP,A)
【文献】 特開平11−106765(JP,A)
【文献】 特開2000−080382(JP,A)
【文献】 特開2000−008053(JP,A)
【文献】 国際公開第97/027271(WO,A1)
【文献】 特開2010−106173(JP,A)
【文献】 特開平10−001698(JP,A)
【文献】 特開2007−270039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 1/238
C10L 1/2387
C10L 1/185
C11D 3/30
C10L 10/18
C11D 1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非イオン性界面活性剤、並びにポリイソブテンアミン及び2,000〜3,000の重量平均分子量を有するポリエーテルアミンらなる群から選択されるアミン系清浄成分を含み、且つ陰イオン性界面活性剤を含まない、インジェクタのデポジットを洗浄するためのクリーナ。
【請求項2】
ポリエーテルアミンが、ポリエーテル鎖としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド又はブチレンオキサイドを含む、請求項1に記載のインジェクタのデポジットを洗浄するためのクリーナ。
【請求項3】
非イオン性界面活性剤及びアミン系清浄成分を、燃料に添加した場合にそれぞれ1000ppm以上となるように含む、請求項1又は2に記載のインジェクタのデポジットを洗浄するためのクリーナ。
【請求項4】
非イオン性界面活性剤のHLBが2.8〜18.2である、請求項1〜3のいずれかに記載のインジェクタのデポジットを洗浄するためのクリーナ。
【請求項5】
非イオン性界面活性剤のHLBが2.8〜9.5である、請求項4に記載のインジェクタのデポジットを洗浄するためのクリーナ。
【請求項6】
非イオン性界面活性剤の凝固点が−25℃以下である、請求項1〜5のいずれかに記載のインジェクタのデポジットを洗浄するためのクリーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のインジェクタに堆積したデポジットを洗浄するためのデポジットクリーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関のインジェクタに堆積したデポジットを除去する方法として、ポリエーテルアミン(PEA)やポリイソブテンアミン(PIBA)等のアミン系成分を配合するインタンク式油溶性デポジットクリーナが知られている。例えば、(特許文献1)には、ヒドロカルビル置換ポリアミン、アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物、並びにアルデヒド及びポリアミンのマンニッヒ反応生成物を含有した火花点火用内燃機関又は圧縮点火内燃機関に有用な燃料組成物が開示されている。また、(特許文献2)には、火花点火燃料、マンニッヒ洗浄剤、及び1.4未満の分子量分布を示すポリブテンを含んでなる燃料組成物が開示されている。さらに、(特許文献3)には、予熱され、アイドリングしている往復動型内燃機関の吸気マニホールドに、ヒドロカルビル基で置換されたポリ(オキシアルキレン)アミン等の清浄化添加剤を含有する洗浄用組成物の注入を行いながら内燃機関を作動させることを特徴とする往復動型内燃機関内のエンジン堆積物の除去方法が開示されている。
【0003】
これらの油溶性クリーナは、燃料タンクに投入し、走行することで油溶性デポジットを洗浄可能である。しかし、エンジン仕様、燃料品質、使用環境の多様化により、硫酸塩等の水溶性成分を含むデポジットの堆積が増加しており、これがインジェクタの噴孔等に堆積した場合、PEAやPIBA等のアミン系清浄成分では十分な洗浄効果が得られない場合がある。
【0004】
そこで、特願2011−22796では、インジェクタ等に堆積した水溶性デポジットの除去方法として、非イオン界面活性剤と陰イオン界面活性剤とを併用するクリーナ組成物が提案されている。このクリーナは、硫酸塩を含む水溶性デポジットに対し高い清浄効果を示すが、適切な陰イオン界面活性剤を選定しないと、従来市販されているPEAやPIBA等のアミン系清浄成分を含むデポジットクリーナ、及びハイオクガソリンに含まれるアミン系清浄成分と燃料タンク内で混合された場合、陰イオン界面活性剤とアミン系清浄成分とが反応し、異物を生成する恐れがある。また、この異物生成を回避するため、陰イオン界面活性剤を無配合とすると、水溶性デポジットの清浄効果が著しく低下してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2004−537641号公報
【特許文献2】特開2000−160172号公報
【特許文献3】特開2004−156576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記従来の状況に鑑み、硫酸塩等の水溶性デポジットに対し高い洗浄効果を有し、且つ異物生成の恐れのないデポジットクリーナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが鋭意研究を行った結果、非イオン性界面活性剤とアミン系清浄成分とを必須成分とし、陰イオン性界面活性剤を無配合とすることで、水溶性デポジットに対する洗浄効果が確保されるとともに異物の生成を回避できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
【0008】
(1)非イオン性界面活性剤及びアミン系清浄成分を含み、且つ陰イオン性界面活性剤を含まない、インジェクタのデポジットを洗浄するためのクリーナ。
(2)非イオン性界面活性剤及びアミン系清浄成分を、燃料に添加した場合にそれぞれ1000ppm以上となるように含む、上記(1)に記載のインジェクタのデポジットを洗浄するためのクリーナ。
(3)非イオン性界面活性剤のHLBが2.8〜18.2である、上記(1)又は(2)に記載のインジェクタのデポジットを洗浄するためのクリーナ。
(4)非イオン性界面活性剤のHLBが2.8〜9.5である、上記(3)に記載のインジェクタのデポジットを洗浄するためのクリーナ。
(5)非イオン性界面活性剤の凝固点が−25℃以下である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のインジェクタのデポジットを洗浄するためのクリーナ。
【発明の効果】
【0009】
本発明のクリーナは、陰イオン性界面活性剤が無配合のため、陰イオン性界面活性剤とアミン系清浄成分との反応物が生成せず、安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係るクリーナは、非イオン性界面活性剤及びアミン系清浄成分を必須成分とし、陰イオン性界面活性剤を含まないことを特徴とする。
【0011】
非イオン性界面活性剤は、水に溶けてもイオン性を示さないが、界面活性を呈する界面活性剤である。非イオン性界面活性剤には様々な種類がある。エステル型の非イオン性界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が知られている。また、エーテル型の非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪アルコールエトキシレート等が知られている。本発明のデポジットクリーナにおいては、これら種々の非イオン性界面活性剤の中から一種以上を適宜選択して用いることができる。
【0012】
非イオン性界面活性剤のHLB(Hydrophile-Lipophile Balance)は、2.8〜18.2の範囲であることが好ましく、より好ましくは10以下である。特に、2.8〜9.5の範囲であることが好ましい。HLBが高過ぎると水分との分離性が悪化し、水分との間にエマルジョンやゲルが生成する恐れがある。また、HLBが低過ぎても、ガソリンヘの溶解性や清浄効果に問題が生じる恐れがある。また、非イオン性界面活性剤の凝固点は、特に限定されるものではないが、−25℃以下であることが好ましい。特に、HLBが2.8〜9.5の範囲で且つ凝固点が−25℃以下の非イオン性界面活性剤は、低温においても非イオン性界面活性が析出することがなく、最も好ましく用いられる。このような最も好ましい非イオン性界面活性剤の例として、C19−Ph−O−(CHCHO)−H、C19−Ph−O−(CHCHO)−H等のアルキルフェニルエーテル型の非イオン性界面活性剤や、sec−C12〜14−O−(CHCHO)−H等のsec−アルキルエーテル型の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0013】
アミン系清浄成分は、洗浄効果を有するアミン化合物及びその誘導体であり、具体的には、ポリエーテルアミン、ポリイソブテンアミン、ポリアルキルアミン、ポリオレフィンアミン、ポリアルキルイミン、ポリアルキレンアミノフェノール、エタノールアミン等を挙げることができる。その中でも、ポリエーテルアミン(PEA)及びポリイソブテンアミン(PIBA)から選ばれる一種以上が好適に用いられる。特に、PEAはPIBAよりも高濃度での配合が可能であるため、清浄効果を高めることが可能である。ポリエーテルアミンのポリエーテル鎖としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等を挙げることができる。その中でもブチレンオキサイドが特に好ましい。また、特に限定されるものではないが、アミン系清浄成分の洗浄性、溶解性及び安定性への影響を考慮して、ポリエーテルアミンの重量平均分子量は、500〜13,000の範囲、特に2,000〜3,000の範囲であることが好ましい。また、ポリイソブテンアミンの重量平均分子量についても、500〜13,000の範囲、特に2,000〜3,000の範囲であることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明に係るクリーナは、陰イオン性界面活性剤を配合しないことを特徴とする。陰イオン性界面活性剤とは、陰イオン性の親水基を持つ界面活性剤であり、親水基としてはカルボン酸、スルホン酸、あるいはリン酸構造を持つもの等が知られている。このような陰イオン性界面活性剤としては、カルボン酸型、スルホン酸型、硫酸エステル型、リン酸エステル型等の様々な型があり、具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ABS)、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)等を挙げることができる。従来用いられていた陰イオン性界面活性剤を無配合とすることで、陰イオン性界面活性剤とアミン系清浄成分との反応物が生成せず、クリーナの安定性を高めることができる。
【0015】
以上のようなデポジットクリーナは、適正添加量分を容器に入れて販売し、ユーザー等がガソリンタンクに注入して使用することが想定される。上記成分のボトリングに際しては、石油系溶剤での希釈や、防錆剤、抗乳化剤、酸化防止剤等の、ガソリン添加剤として有効な第3成分を併せて添加しても良い。また、本発明のデポジットクリーナには、必要に応じて、グリコール系溶剤を配合しても良い。グリコール系溶剤として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。グリコール系溶剤の配合により、より高い洗浄効果を得ることができる。
【0016】
デポジットクリーナ中の非イオン性界面活性剤及びアミン系清浄成分の濃度は、デポジットクリーナを燃料に適正量添加した場合にそれぞれの成分が1000ppm以上となるような濃度とすることが好ましい。また、燃料への各成分の添加濃度の合計は、10000ppm以下とすることが望ましい。10000ppm以下の濃度で十分な洗浄効果が得られる上、それ以上の添加濃度の増大は、アフターマーケットでの使用には不適切となる恐れがあり、ゴム等の部品への悪影響が懸念されるためである。
【実施例】
【0017】
次に、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
表1に、本発明の実施例1〜2及び比較例1〜4のデポジットクリーナにおける各成分の燃料中の添加濃度と、その評価試験の条件及び結果を示す。非イオン性界面活性剤としては、HLBが6.2のポリオキシエチレン合成アルコールエーテルを選定した。また、アミン系清浄成分としてポリエーテルアミン(ポリエーテル鎖はブチレンオキサイド)、比較例における陰イオン性界面活性剤としてジオクチルスルホコハク酸ナトリウムをそれぞれ用いた。さらに、グリコール系溶剤として、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを必要に応じて配合した。
【0018】
下表において、A/F補正値、及びインジェクタ噴孔目視観察は、市場から回収した硫酸塩を含む水溶性デポジットにより目詰まりを起こしたインジェクタを試験車両に装着し評価した結果である。
【0019】
A/F補正値とは、エンジンの空燃比を目標値とするための燃料噴射量の補正値であり、インジェクタの噴射率が設計値からずれるほど、この値は大となる。したがって、試験後にA/F補正値が減少していれば、デポジットが除去され、インジェクタの目詰まりが解消されたことになる。なお、下表では、車両走行距離100km当たりのA/F補正値の減少量をその回復値としている。
【0020】
インジェクタ噴孔目視観察の結果について、「○」は、目視観察の結果、デポジットがほぼ完全に除去されたことを示す。「×」は、デポジットがほとんど除去されなかったことを示す。
【0021】
また、クリーナ原液の保管安定性、及び燃料(エタノール5%含むガソリン)希釈後の安定性試験は、耐圧ガラス容器を使用し、55℃×1週間後の異物析出の有無を目視確認した結果を表している。
【0022】
【表1】
【0023】
表1に示すように、アミン系清浄成分(ポリエーテルアミン(PEA))と非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレン合成アルコールエーテル)とを併用していないデポジットクリーナ組成物(比較例1及び2)では、A/F補正値がほとんど低下せず、洗浄効果が不十分であった。
【0024】
一方、実施例1及び2では、試験後のA/F補正値が明らかに改善しており、噴孔目視観察においても、インジェクタの目詰まりが解消され、水溶性デポジットに対する洗浄効果が確認できた。つまり、アミン系清浄成分と非イオン性界面活性剤の併用により、水溶性デポジットの洗浄効果が発現したといえる。
【0025】
また、アミン系清浄成分(PEA)、非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレン合成アルコールエーテル)、及び陰イオン性界面活性剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)の3種を併用した比較例4については、アフターマーケットでの在庫保管を想定した保管安定性試験(55℃×1週間)、及び燃料タンク内を想定した燃料希釈後の安定性試験(55℃×1週間)を実施したところ、異物が生成した。調査の結果、異物は、アミン系清浄成分と陰イオン性界面活性剤との反応物であることが判明した。非イオン性界面活性剤と陰イオン性界面活性剤との併用は、本発明と同様に、水溶性デポジットに対して高い洗浄効果を有するが、市場にて、アミン系清浄成分を含むデポジットクリーナ、もしくはハイオクガソリンに含まれるアミン系清浄成分と燃料タンク内で混合された際に、燃料タンク内で異物を生成する恐れがある。本発明のデポジットクリーナは陰イオン性界面活性剤を配合しないため、異物を生成することがなく、安定性により優れるという利点がある。
【0026】
さらに、A/F補正値が40となった硫酸塩を含む水溶性デポジット堆積インジェクタをエンジンに取付け、燃料中に非イオン性界面活性剤とアミノ系清浄成分がそれぞれ2300ppmとなるよう添加し、200km走行したところ、A/F補正値が7に改善した。また、目視によりインジェクタ噴孔に堆積したデポジットが除去されていることを確認した。