特許第6034103号(P6034103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニチカ株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6034103
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池外装材
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/02 20060101AFI20161121BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   H01M2/02 K
   B32B15/08 E
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-203659(P2012-203659)
(22)【出願日】2012年9月14日
(65)【公開番号】特開2014-60013(P2014-60013A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】矢野 拓磨
【審査官】 浅野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−049202(JP,A)
【文献】 特開2014−049203(JP,A)
【文献】 特開平08−151412(JP,A)
【文献】 特開2009−202588(JP,A)
【文献】 特開2000−290320(JP,A)
【文献】 特開平11−213965(JP,A)
【文献】 特開2001−068074(JP,A)
【文献】 特開2012−033393(JP,A)
【文献】 特開2012−048852(JP,A)
【文献】 特開2007−230233(JP,A)
【文献】 特開2008−094092(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0136833(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/02
B32B 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、保護層/ポリアミド樹脂層/アルミニウム箔層/シーラント層がこの順に積層され、前記保護層がポリビニルアルコールを含み、
保護層中のポリビニルアルコールが変性ポリビニルアルコールであって、さらに変性ポリビニルアルコール100質量部に対して架橋剤を0.1〜40質量含有することを特徴とするリチウムイオン二次電池外装材。
【請求項2】
変性ポリビニルアルコールがジアセトンアクリルアミド変性、アセトアセチル変性であることを特徴とする請求項記載のリチウムイオン二次電池外装材。
【請求項3】
架橋剤が、多価ヒドラジド化合物、多価アミン化合物、多価オキサゾリン化合物であることを特徴とする請求項又は記載のリチウムイオン二次電池外装材。
【請求項4】
架橋剤を含有した変性ポリビニルアルコールの、60℃における水に対する不溶分率(%)が30%以上であることを特徴とする請求項いずれかに記載のリチウムイオン二次電池外装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池外装材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、リチウムイオン二次電池外装材として、ポリアミド樹脂層/アルミニウム箔層/シーラント層がこの順に積層した積層体が知られている。この外装材を用いたリチウムイオン二次電池は、積層体中のポリアミド樹脂層側が電池の外側、シーラント層側が内側(電池内部)となるように容器状に加工され、外装材の内側(容器内部)には電池電解液が注入されている。
【0003】
このリチウムイオン二次電池製造の際の、電解液を電池内部に注入する工程や、注入後外装材をヒートシールして容器状と加工する工程になどにおいて、電解液がこぼれ外装材の外側即ちポリアミド樹脂層に付着することがあった。ポリアミド樹脂層に電解液が付着した場合、ポリアミド樹脂層が白化したり分解反応などが起り、ポリアミド樹脂層が劣化し、リチウムイオン二次電池外装材に必要な物性が消失してしまう問題があった。即ち、電解液に対する耐性(耐電解液性)に劣るものであった。
【0004】
そこで、このような問題を解決するため、ポリアミド樹脂層のさらに外側に、耐電解液性を有した保護層を設けた外装材が提案されている。例えば、特許文献1では、保護層としてポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを用いた外装材、特許文献2では、保護層として特定の樹脂からなるコーティング層を用いた外装材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−56824号公報
【特許文献2】特開2000−123799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1記載の外装材を得るには、ポリアミド樹脂層を有する従来の外装材の製造方法に対して、接着剤を設ける工程、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムをラミネートする工程がさらに必要となり加工が複雑でコスト高になっていた。また、近年では電池の軽量化が必要となってきているのに対し、重量増加の問題もあった。
【0007】
また、特許文献2に記載されるような樹脂からなるコーティング層では、保護層としての性能が不十分であった。さらには、外装材製造の際に、記載されるようなコーティング剤をポリアミド樹脂層に塗布、乾燥して保護層を形成した場合、外装材に反り(そり)が発生し、取り扱いが悪くなる問題があった。
【0008】
本発明は、上記のような従来技術の欠点を解消するものであり、リチウムイオン二次電池製造の際に電解液が外装材外側に付着しても外装材中の保護層やポリアミド樹脂層の劣化が抑えられ、リチウムイオン二次電池外装材に必要な物性が保持されるリチウムイオン二次電池外装材を提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリアミド樹脂層の外側にポリビニルアルコールを含む保護層を設けることで、上記課題を解決することを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
【0011】
本発明の要旨は、下記の通りである。
(1)少なくとも、保護層/ポリアミド樹脂層/アルミニウム箔層/シーラント層がこの順に積層され、前記保護層がポリビニルアルコールを含み、
保護層中のポリビニルアルコールが変性ポリビニルアルコールであって、さらに変性ポリビニルアルコール100質量部に対して架橋剤を0.1〜40質量含有することを特徴とするリチウムイオン二次電池外装材。
)変性ポリビニルアルコールがジアセトンアクリルアミド変性、アセトアセチル変性であることを特徴とする()記載のリチウムイオン二次電池外装材。
)架橋剤が、多価ヒドラジド化合物、多価アミン化合物、多価オキサゾリン化合物であることを特徴とする()又は()記載のリチウムイオン二次電池外装材。
)架橋剤を含有した変性ポリビニルアルコールの、60℃における水に対する不溶分率(%)が30%以上であることを特徴とする()〜()いずれかに記載のリチウムイオン二次電池外装材。
【発明の効果】
【0012】
本発明のリチウムイオン二次電池外装材は、リチウムイオン二次電池製造の際に電解液が外装材外側に付着しても外装材中の保護層やポリアミド樹脂層の劣化が抑えられ、リチウムイオン二次電池外装材に必要な物性が保持される。さらには、反りが少なく取り扱いに優れるリチウムイオン二次電池外装材を得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明のリチウムイオン二次電池外装材は、少なくとも、保護層/ポリアミド樹脂層/アルミニウム箔層/シーラント層がこの順に積層された積層体である。ここで本発明では、該積層体の保護層側の面を外側、シーラント層側の面を内側と表記することがある。
はじめに、保護層について説明する。
【0015】
本発明における保護層はポリビニルアルコールを含んだ層である。ポリビニルアルコールとしては、ビニルアルキルエステルの重合体を完全又は部分ケン化したものなどが使用できる。ケン化方法としては、公知のアルカリケン化法や酸ケン化法を採用することができる。中でも、メタノール中で水酸化アルカリを使用して加アルコール分解する方法が好ましい。
【0016】
ビニルアルキルエステルとしては、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどがあげられる。中でも酢酸ビニルが工業的に最も好ましい。
【0017】
ポリビニルアルコールのケン化度としては、保護層の耐電解液性の観点から、80〜99.9モル%が好ましく、90〜99.9モル%がより好ましく、95〜99.9モル%がさらに好ましい。
【0018】
ポリビニルアルコールの平均重合度としては、100〜3000が好ましく、300〜3500がより好ましく、500〜2000がさらに好ましい。100未満であると耐電解液性が悪化する場合があり、3000を超えると、後述する水溶液として使用した場合に水溶液の濃度が低くなり、結果十分な厚みの保護層を形成しにくくなる傾向がある。
本発明における保護層としては変性ポリビニルアルコールと、後述する架橋剤とを含有していることが好ましい。これらを含有していることで、保護層の耐電解液性をより向上させたり、外装材の反りをより抑制させることが可能となる。
【0019】
変性ポリビニルアルコールは、ビニルアルキルエステルおよびビニルアルコール以外の成分を、ポリビニルアルコール骨格中に含有するものであって、その様な成分としては、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和モノカルボン酸及びそのエステル、塩、無水物、アミド、ニトリル類や;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸及びその塩;アルキルビニルエーテル類;ビニルピロリドン類、ジアセトンアクリルアミド、アセト酢酸エステルなどがあげられる。
【0020】
変性ポリビニルアルコールの中でも、ジアセトンアクリルアミドを含有したジアセトンアクリルアミド変性ポリビニルアルコール、アセト酢酸エステルを含有したアセトアセチル変性ポリビニルアルコールが、耐電解液性に優れより好ましい。
【0021】
ジアセトンアクリルアミド変性ポリビニルアルコールは、ジアセトンアクリルアミド−酢酸ビニル共重合体を鹸化する等の公知の方法によって製造することができる。ジアセトンアクリルアミド変性ポリビニルアルコールにおけるジアセトンアクリルアミド単位の含有量としては、0.1〜30質量%の範囲が好ましく、さらに0.5〜20質量%の範囲がより好ましい。
【0022】
アセトアセチル変性ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコールとジケテンの反応等の公知の方法によって製造することができる。アセトアセチル変性ポリビニルアルコールにおけるアセト酢酸エステル単位の含有量は0.1〜30質量%が好ましく、更に0.5〜20質量%がより好ましい。
【0023】
本発明における保護層において、含有するポリビニルアルコールに変性ポリビニルアルコールを適用する場合は架橋剤が含有されていることが耐電解液性を向上させたり、外装材のそりを抑制させる観点から好ましい。
【0024】
架橋剤は、変性ポリビニルアルコールの有する官能基と反応しうる官能基を分子内に2個以上有する化合物が好ましい。具体的には、多価ヒドラジド化合物、多価アミン化合物、多価オキサゾリン化合物、多価イソシアネート化合物、多価メラミン化合物、尿素化合物、多価エポキシ化合物、多価カルボジイミド化合物、多価ジルコニウム塩化合物などがあげられる。これらは単独であっても複数で含有されていても構わない。これらの中でも、耐電解液性、反り抑制の効果に優れる多価ヒドラジド化合物、多価アミン化合物、多価オキサゾリン化合物が好ましく、多価ヒドラジド化合物がより好ましい。
【0025】
また、本発明では、ポリビニルアルコールは後述のように水溶液として使用することが好ましいため、架橋剤としては水溶性および/または水分散性であることが、好ましく、水溶性が最も好ましい。
【0026】
架橋剤の含有量は、変性ポリビニルアルコール100質量部に対して0.1〜40質量部の範囲で含有されていることが好ましく、0.5〜30質量部がより好ましく、1〜20質量部が特に好ましく、2〜10質量部がさらに好ましい。0.1質量部未満であると耐電解液性や反りの抑制効果が悪化する傾向にあり、40質量部を超えても添加の効果が変わらないかもしくは悪化することがある。
【0027】
多価ヒドラジド化合物としては、分子中に2個以上のヒドラジド基を有するものであり、低分子化合物であっても重合体であってもかまわないが、耐電解液性に優れる点から低分子化合物の方が好ましい。
【0028】
多価ヒドラジド化合物のうちの低分子多価ヒドラジド化合物としては、例えば、アジピン酸ジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどの2〜10個、特に4〜6個の炭素原子を含有するジカルボン酸ジヒドラジド;エチレン−1,2−ジヒドラジン、プロピレン−1,3−ジヒドラジン、ブチレン−1,4−ジヒドラジンなどの2〜4個の炭素原子を有する脂肪族の水溶性ジヒドラジンなどが挙げられ、これらは1種のみを用いても2種以上を併用してもかまわない。こられのなかでも、アジピン酸ジヒドラジドが水に対する溶解性と耐電解液性や反りの抑制性能のバランスに優れ好ましい。
【0029】
多価ヒドラジド化合物のうちの多価ヒドラジド重合体(分子中に2個以上のヒドラジド基を有する重合体)としては、その構造や特性は特に限定されないが、例えば、アクリルアミドとアクリル酸ヒドラジドを共重合して得られたものなどが挙げられる。
多価アミン化合物としては、分子中に2個以上のアミン基を有するものである。ここでのアミン基とは反応性を必要があるため、1級アミンまたは2級アミンを有している必要があり、1級アミンであることが好ましい。多価アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミンが例示できる。
【0030】
多価オキサゾリン化合物としては、分子中に2個以上のオキサゾリン基を有するものであり低分子化合物や重合体が挙げられ、重合体であるが高い方が耐電解液性、反りの抑制効果が良好でるため好ましい。
【0031】
多価オキサゾリン化合物のうちの低分子多価オキサゾリン化合物としては、例えば、2,2´−ビス−(2−オキサゾリン )、2,2´−メチレン−ビス−(2−オキサゾリン )、2,2´−エチレン−ビス−(2−オキサゾリン )、2,2´−トリメチレン−ビス−(2−オキサゾリン )、2,2´−テトラメチレン−ビス−(2−オキサゾリン )、2,2´−ヘキサメチレン−ビス−(2−オキサゾリン )、2,2´−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン )、2,2´−エチレン−ビス−(4,4´−ジメチル−2−オキサゾリン )、2,2´−p−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン )、2,2´−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン )、2,2´−m−フェニレン−ビス−(4,4´−ジメチル−2−オキサゾリン )、2,2´−(1,3−フェニレン)−ビス−(2−オキサゾリン)、ビス−(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィドおよびビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド等の低分子化合物が挙げられる。これら多価オキサゾリン化合物は、1種のみを用いても2種以上を併用してもかまわない。
【0032】
多価オキサゾリン化合物のうちの多価オキサゾリン重合体(分子中に2個以上のオキサゾリン基を有する重合体)は、その構成成分として付加重合性オキサゾリンを必須とし、付加重合性オキサゾリンと共重合可能な単量体をも含むモノマー成分を重合させることにより得ることができる。
【0033】
本発明における保護層は、耐電解液性や反りの抑制効果の観点から、架橋剤によって架橋された変性ポリビニルアルコールを有していることが好ましく、架橋剤によって架橋されたジアセトンアクリルアミド変性ポリビニルアルコールおよび/または架橋剤によって架橋されたアセトアセチル変性ポリビニルアルコールを有していることがより好ましい。
また本発明では、変性ポリビニルアルコールの架橋密度が高いほうが耐電解液性や反りの抑制効果がより顕著となる。変性ポリビニルアルコールにおける架橋構造の有無や架橋密度は、水への溶解性を調べることで評価することができる。詳しくは、架橋剤を含有した変性ポリビニルアルコールの水への溶解性が、架橋剤を含有しない変性ポリビニルアルコールの水への溶解性より低い(水に溶けにくい)場合には、架橋構造を有していると判断でき、水に対する不溶分がより多くなるに連れて架橋密度が高いと判断できる。よって本発明では、水に対する不溶分率を調べることで耐電解液性や反りの抑制などの効果が評価できる。
【0034】
変性ポリビニルアルコールの水に対する不溶分率を調べる方法としては、保護層に使用する変性ポリビニルアルコールと同一組成からなる乾燥物を取得し、乾燥物を100倍質量の水と混合し、水温を60℃に保持しながら24時間攪拌した際の不溶物の重量を測定する方法が採用できる。乾燥物と不溶物の重量差によって水に対する不溶分率が評価できる(不溶分率(%)=不溶物重量/乾燥物重量×100)。変性ポリビニルアルコールの、60℃における水に対する不溶分率としては、30%以上であることが好ましく、60%以上がより好ましく、80%以上であることが特に好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることが最も好ましい。
【0035】
さらに保護層は本発明の効果を損ねない限りにおいて、ポリビニルアルコール以外の樹脂やその他の添加剤が含有されていても構わない。
【0036】
ポリビニルアルコール以外の樹脂は特に限定されないが例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン−ポリ塩化ビニル共重合体、フッ素樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニデン、スチレン−マレイン酸樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、UV硬化型樹脂などがあげられる。これらは単独でも、複数を含有しても構わない。ポリビニルアルコール以外の樹脂の含有量は、効果を損ねない限りにおいては特に限定されないが、通常ポリビニルアルコール100質量部に対して1〜500質量部の範囲で含有されていることが好ましい。
【0037】
その他の添加剤としては、必要な性能によって適宜選択すればよく特に限定されないが、例えば、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカ、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライトなどからなる無機微粒子;レベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤、触媒、光触媒、UV硬化剤、濡れ剤、浸透剤、柔軟剤、増粘剤、分散剤、撥水剤、滑剤、帯電防止剤、老化防止剤、加硫促進剤などの各種薬剤、顔料あるいは染料、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、ガラス繊維などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0038】
ポリビニルアルコール以外の樹脂やその他の添加剤においても、ポリビニルアルコール水溶液に混合して利用することが容易であることから、水溶性および/または水分散性であることが好ましく、水溶性がより好ましい。
【0039】
本発明における保護層の厚みは0.1〜20μmの範囲であることが好ましく、0.2〜10μmがより好ましく、0.5〜5μmが特に好ましく、1〜3μmがさらに好ましい。厚みが0.1μm未満の場合は本発明の効果が不十分となり、20μmを超えてもそれ以上は効果が変らないしコスト的にも不利である。
【0040】
次に、本発明におけるポリアミド樹脂層について説明する。
【0041】
本発明に用いる、ポリアミド樹脂層はポリアミド樹脂フィルムを用いることが可能である。ポリアミド樹脂フィルムは、特に限定されず、リチウムイオン二次電池外装材に適した公知のものを用いることができる。ポリアミド樹脂フィルムは未延伸フィルムであっても、延伸フィルムで構わない。延伸フィルムの場合、その延伸方法としては一軸延伸、同時二軸延伸、逐次二軸延伸のいずれであっても構わない。ポリアミド樹脂の種類としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン1010などのポリアミド樹脂およびそれらの混合物、共重合体、複合体などが挙げられる。
【0042】
ポリアミド樹脂フィルムの厚みは特に限定されないが、5〜100μmの範囲が一般的であり、10〜50μmが好ましい。
【0043】
また、ポリアミド樹脂フィルムの両方の面にはコロナ処理やプラズマ処理、オゾン処理などの公知の表面処理がされていることが好ましく。特に保護層に接する面には、コロナ処理がされていることが好ましい。
【0044】
本発明に用いる、アルミニウム箔層は、特に限定されず、リチウムイオン二次電池外装材に適した公知のものを用いることができる。アルミニウム箔の厚みは、20〜200μmの範囲が好ましく、30〜150μmがより好ましい。
【0045】
また、アルミニウム箔の片方または両方の面には、リチウムイオン二次電池外装材用アルミニウムに適した表面処理がされていることが好ましく、化成処理やクロメート処理などの公知の表面処理好が挙げられる。特にこれら表面処理は、シーラント層に接する側の面にされていることが好ましい。
【0046】
本発明に用いる、シーラント層は、ヒートシール可能な層であれば特に限定されず、リチウムイオン二次電池外装材に適した公知のものを用いることができる。具体的には、ポリオレフィン樹脂フィルムを用いることができる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンを主成分とした共重合体、これらの酸変性物が挙げられる。ポリオレフィン樹脂フィルムは延伸フィルム、無延伸フィルムのいずれも使用できるが、無延伸フィルムを用いることが好ましい。また、ポリオレフィン樹脂フィルムを2層以上設けてあっても構わない。
【0047】
シーラント層の厚みは、20〜200μmの範囲が好ましく、30〜100μmがより好ましい。また、シーラント層の片方または両方の面には、リチウムイオン二次電池外装材用アルミニウムに適した表面処理がされてあることが好ましく、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理などの公知の表面処理が挙げられる。
【0048】
次にリチウムイオン二次電池外装材の製造方法について説明する。
【0049】
本発明のリチウムイオン二次電池外装材は、少なくとも、保護層/ポリアミド樹脂層/アルミニウム箔層/シーラント層がこの順に積層された積層体である。
【0050】
保護層以外の層、すなわちポリアミド樹脂層/アルミニウム箔層/シーラント層を積層する方法は、リチウムイオン二次電池外装材製造に適した公知の方法を採用することができる。それぞれの層間には、公知の接着剤を介して積層することが可能である。ポリアミド樹脂層/アルミニウム箔層の層間接着には、例えば、2液タイプのウレタン系接着剤を用いることが可能である。アルミニウム箔層にポリアミド樹脂層を積層する方法としては、前記のような接着剤を介してドライラミネートや熱ラミネートなどの方を採用することが可能である。
【0051】
また、アルミニウム箔層/シーラント層の層間接着には、例えば、2液タイプのウレタン系接着剤や酸変性ポリオレフィン系接着剤などを用いることが可能である。アルミニウム箔層にシーラント層を積層する方法としては、前記のような接着剤を介してドライラミネートや熱ラミネート、押出しラミネート、サンドイッチラミネートなどの方を採用することが可能である。
【0052】
そして、ポリアミド樹脂層/アルミニウム箔層/シーラント層のそれぞれの層間には本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じてアンカーコート層やプライマー層などのその他の層が設けてあっても構わない。
【0053】
次に、保護層を積層する方法について説明する。
【0054】
本発明における保護層は、上記のようなポリビニルアルコールを水溶液に加工し、ポリアミド樹脂層にコーティングすることによって得られるコーティング層であることが、加工性や上述した架橋剤やその他の樹脂、その他の添加剤を含有させ易くする観点から好ましい。
【0055】
なお、ポリビニルアルコールを水溶液に加工する方法は一般的な方法、例えば、ポリビニルアルコールと水を混合し加熱、攪拌する方法などを採用すればよい。またポリビニルアルコール水溶液の固形分濃度としては、コーティングのし易さや保護層の厚みなどを考慮して決定すればよいが、水溶液100質量部に対して20質量部以下であることが溶解性の観点から好ましい。
【0056】
水溶液が変性ポリビニルアルコール水溶液であった場合は、上記した様な架橋剤を添加することが好ましい。架橋剤は予め水性分散体または水溶液に加工した後に、変性ポリビニルアルコール水溶液に添加しても構わないし、直接固形物のままで変性ポリビニルアルコール水溶液に添加して、水溶液中で分散または溶解させても構わない。架橋剤の添加量は上述した好ましい架橋剤の含有量となるように調整することが好ましい。
【0057】
この様な架橋剤を含有している変性ポリビニルアルコール水溶液をポリアミド樹脂層にコーティングすることによって、架橋剤を含有した変性ポリビニルアルコールを含む保護層を形成することが可能となる。
【0058】
また、ポリビニルアルコール水溶液には、必要に応じて本発明の効果を損ねない範囲において、上述したようなポリビニルアルコール以外の樹脂やその他の添加剤を添加しても構わない。
【0059】
ポリビニルアルコール水溶液のポリアミド樹脂層へのコーティング方法としては、公知の方法、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法などを採用することができ、これらの方法でポリアミド樹脂層表面に均一な厚みにコーティングすることが好ましい。
【0060】
ポリビニルアルコールのコーティング量としては、乾燥後のコーティング層(保護層)の厚みが上記した好ましい厚みとなるように調整すればよい。
【0061】
コーティングの後は、必要に応じて室温付近でセッティングした後、加熱乾燥することにより水溶液中の水の一部または全てを乾燥し、均一なコーティング層(保護層)をポリアミド樹脂層表面に密着させることができる。乾燥の際は、水溶液中の水の全てを乾燥により蒸発させることが、密着性や耐電解液性を良好にする観点から好ましい。乾燥温度としては40〜150℃の範囲が好ましく、70〜140℃がより好ましく、90〜120℃が特に好ましい。40℃未満の場合は乾燥が不十分となったり、架橋剤を含有させた場合の架橋密度が低くなる場合があり、150℃以上では、ポリアミド樹脂層やその他の層が変形する場合がある。乾燥時間は10〜7200秒の範囲が好ましく、生産性を考慮すると10〜60秒がより好ましい。
【0062】
また、乾燥の後に、密着性を良好とするためや架橋密度をより高めるためにエージング期間を設けても構わない。エージング条件は特に限定されず、例えば室温〜60℃から選ばれる温度で1〜7日間程度の処理条件が一般的である。
【0063】
なお、保護層を積層する場合、予め、ポリアミド樹脂層/アルミニウム箔層/シーラント層の積層体を得てから、ポリアミド樹脂層の外側に保護層を設ける方法を採用しても構わないし、ポリアミド樹脂フィルム単体に保護層を積層してから、このポリアミド樹脂フィルムにアルミニウム箔層とシーラント層を順次積層する方法であっても構わない。
また、保護層のさらに外側の面にはその他の機能層を積層しても構わない。その他の機能層は特に限定されず、必要な性能に適した層を本発明の効果を損なわない範囲で、適宜選択し設ければよい。
【0064】
このようにして得られた積層体は、リチウムイオン二次電池外装材として好適に用いることが可能であり、エンボスタイプや深絞り成型のリチウムイオン二次電池にも適応可能である。さらに。リチウムイオン二次電池の製造の際に電解液が外装側に付着しても、リチウムイオン二次電池外装材として性能を良好に保持することが可能である。
【実施例】
【0065】
以下に実施例によって本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0066】
各種の特性について、以下の方法で測定及び評価した。
【0067】
1.ポリビニルアルコールの特性
(1)ポリビニルアルコールのケン化度および平均重合度
JIS K6726:1994記載の方法に準じて測定した。
【0068】
(2)変性ポリビニルアルコールの変性量(ジアセトンアクリルアミド単位含有量またはアセト酢酸エステル単位の含有量)測定
変性ポリビニルアルコールをメタノール、ヘキサンで十分に洗浄したサンプルに対して、DMSO−dを溶媒としたH−NMR測定を行い、帰属したピークの積分値から算出した。
【0069】
(3)ポリビニルアルコールの、60℃における水に対する不溶分率(%)
ポリテトラフルオロエチレン製シート上で、ポリビニルアルコール水溶液を100℃の熱風乾燥機で180分間乾燥し、含水率が0.5質量%以下であるポリビニルアルコールの乾燥物を回収した。そのポリビニルアルコールの乾燥物を5.0g採取し、ビーカーに入った60℃の水500gに浸漬し60℃に保ったまま24時間攪拌した(ビーカーはラップをして水の蒸発と異物の混入を防いだ)。次に、60メッシュのフィルター(平織、線形0.1mm)でろ過しフィルター上に残ったポリビニルアルコールの不溶分を回収し、次いで100℃で60分間真空乾燥した。真空乾燥後のポリビニルアルコールの不溶分の質量(g)を測定し、下記式1に添って不溶分率を求めた。
不溶分率(%)=不溶分の質量(g)/5.0(g)×100
【0070】
2.リチウムイオン二次電池外装材の特性
(1)耐電解液性
得られたリチウムイオン二次電池外装材の保護層面に、水を5質量%添加した電解液(エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/エチルメチルカーボネート=1/1/1(v/v)混合液に1M六フッ化リン酸リチウムを溶解させた液)を3g滴下し、38℃で24時間保持した後の電解液付着部の状態を目視で下記の5段階で評価した。なお、電解液に添加した5質量%の水は、電解液中にフッ酸を生じさせることを目的として添加した。
5:変化なし
4:微かに保護層の膨潤または溶解があるがポリアミド樹脂層の白化はない
3:やや保護層の膨潤または溶解があり微かにポリアミド樹脂層の白化がある
2:保護層の膨潤または溶解があり、ポリアミド樹脂層の白化がある
1:ポリアミド樹脂層の白化および溶解がある
【0071】
(2)リチウムイオン二次電池外装材の反り
作製直後のリチウムイオン二次電池外装材を150mm角の正方形に切り出し、反りの状態を目視で以下の指標で評価した。
○:反りがない
△:やや反りがある
×:反りがある
【0072】
<ポリウレタン樹脂の水性分散体製造>
攪拌機、温度計、窒素シール管、冷却器のついた反応器に、数平均分子量1970のポリテトラメチレングリコールを345g、イソホロンジイソシアネートを77.8g、ジブチルチンジラウレートを0.03g仕込み、80℃で2時間反応させた。次いでこの反応液を50℃まで冷却した後、3−ジメチルアミノプロパノールを11.7g、トリエチルアミンを8.85g、アセトンを177g質量部添加し、3時間反応させた。さらに、この反応液にアセトンを175g加えて30℃まで冷却し、イソホロンジイソシアネート13.4g、モノエタノ−ルアミン1.07g、イソプロパノール87.9g、水1039gからなる混合液を加えて高速攪拌し、この液からアセトン、水及びイソプロパノールを留去して、ポリエーテル型のポリウレタン樹脂の水性分散体(固形分濃度50質量%)を得た。
【0073】
<積層体Aの製造>
両面に化成処理を施したアルミニウム箔(厚み40μm)と、両面にコロナ処理を施した二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム(厚み25μm)を、接着剤a(ポリエステルポリオール系主剤に対して、トリレンジイソシアネートのアダクト体系硬化剤を配合した2液ポリウレタン系接着剤、厚み4μm)を用いてドライラミネート手法により貼り合わせた。次いで、得られた積層体のポリアミド樹脂層と反対側の面(アルミニウム箔面)に、接着剤b(ポリエステルポリオール系主剤に対して、トリレンジイソシアネートのアダクト体系硬化剤を配合した2液ポリウレタン系接着剤、厚み4μm)を用いてドライラミネートにより、無延伸ポリプロピレンフィルム(厚み30μm)を貼り合わせてシーラント層を設け、積層体A(ポリアミド樹脂層の外側がコロナ処理された、ポリアミド樹脂層/アルミニウム箔層/シーラント層)を得た。
【0074】
<積層体Bの製造>
両面に化成処理を施したアルミニウム箔(厚み40μm)と、片面にコロナ処理を施した二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム(厚み25μm)のコロナ処理面とを、接着剤a(ポリエステルポリオール系主剤に対して、トリレンジイソシアネートのアダクト体系硬化剤を配合した2液ポリウレタン系接着剤、厚み4μm)を用いてドライラミネート手法により貼り合わせた。次いで、得られた積層体のポリアミド樹脂層と反対側の面(アルミニウム箔面)に、接着剤b(ポリエステルポリオール系主剤に対して、トリレンジイソシアネートのアダクト体系硬化剤を配合した2液ポリウレタン系接着剤、厚み4μm)を用いてドライラミネートにより、無延伸ポリプロピレンフィルム(厚み30μm)を貼り合わせてシーラント層を設け、積層体B(ポリアミド樹脂層の外側がコロナ処理されていない、ポリアミド樹脂層/アルミニウム箔層/シーラント層)を得た。
【0075】
参考例1
ケン化度98.5モル%、平均重合度1700の無変性ポリビニルアルコールと、水とを混合し固形分濃度が10質量%のポリビニルアルコール水溶液を作製した。
【0076】
次に、積層体Aのポリアミド樹脂層面に、乾燥後のコーティング層の厚みが2μmとなるようにポリビニルアルコール水溶液をコーティングし、110℃で3分間熱風乾燥することで保護層を積層した。乾燥後の積層体を40℃で5日間エージング処理して、リチウムイオン二次電池外装材を作製した。
【0077】
参考例2
ジアセトンアクリルアミド単位含有量12質量%、ケン化度98.5モル%、平均重合度1700のジアセトンアクリルアミド変性ポリビニルアルコール(以下、ジアセトンアクリルアミド変性PVA−1と示す。)と、水とを混合し固形分濃度が10質量%のポリビニルアルコール水溶液を作製した。
【0078】
次に、積層体Aのポリアミド樹脂層面に、乾燥後のコーティング層の厚みが2μmとなるようにポリビニルアルコール水溶液をコーティングし、110℃で3分間熱風乾燥することで保護層を積層した。乾燥後の積層体を40℃で5日間エージング処理して、リチウムイオン二次電池外装材を作製した。
【0079】
(実施例3)
ジアセトンアクリルアミド変性PVA−1と、架橋剤であるアジピン酸ジヒドラジド(多価ヒドラジド化合物、以下、ADHと示す。)と、水とを混合し固形分濃度が10質量%のポリビニルアルコール水溶液を作製した。なお、架橋剤の含有量は、ジアセトンアクリルアミド変性PVA−1に対して0.1質量部とした。
【0080】
次に、積層体Aのポリアミド樹脂層面に、乾燥後のコーティング層の厚みが2μmとなるようにポリビニルアルコール水溶液をコーティングし、110℃で3分間熱風乾燥することで保護層を積層した。乾燥後の積層体を40℃で5日間エージング処理して、リチウムイオン二次電池外装材を作製した。
【0081】
(実施例4〜7)
架橋剤であるADHの含有量が、表1に示した質量部となるようにポリビニルアルコール水溶液を作製し、それをポリビニルアルコール水溶液としてコーティングに用いた以外は、実施例3と同様の操作を行って、リチウムイオン二次電池外装材を作製した。
【0082】
(実施例8)
架橋剤の種類をエチレンジアミン(多価アミン化合物、以下、EDAと示す。)に変更した以外は、実施例5同様の操作を行って、リチウムイオン二次電池外装材を作製した。
【0083】
(実施例9)
架橋剤の種類を多価オキサゾリン重合体(日本触媒社製エポクロスWS700、多価オキサゾリン化合物、多価オキサゾリン重合体濃度25質量%の水溶液、以下、WS700と示す。)に変更した以外は、実施例5同様の操作を行って、リチウムイオン二次電池外装材を作製した。なお、多価オキサゾリン化合物の含有量は、ジアセトンアクリルアミド変性PVA−1に対して、WS700中の多価オキサゾリン重合体が10質量部になるように調整した。
【0084】
(実施例10〜12)
保護層の厚みを表1に示すが如くに変更した以外は、実施例5と同様の操作を行って、リチウムイオン二次電池外装材を作製した。
【0085】
(実施例13)
ジアセトンアクリルアミド変性PVA−1と、架橋剤であるADHと、ポリエーテル型のポリウレタン樹脂の水性分散体と、水とを混合し固形分濃度が10質量%のポリビニルアルコール水溶液を作製した。なお、架橋剤の含有量はジアセトンアクリルアミド変性PVA−1に対して10質量部とし、ポリエーテル型のポリウレタン樹脂の水性分散体の含有量はジアセトンアクリルアミド変性PVA−1に対して水性分散体中のポリウレタン樹脂が100質量部となるようにした。
【0086】
次に、積層体Aのポリアミド樹脂層面に、乾燥後のコーティング層の厚みが2μmとなるようにポリビニルアルコール水溶液をコーティングし、110℃で3分間熱風乾燥することで保護層を積層した。乾燥後の積層体を40℃で5日間エージング処理して、リチウムイオン二次電池外装材を作製した。
【0087】
(実施例14)
積層体の種類として積層体Bを用いた以外は、実施例5と同様の操作を行って、リチウムイオン二次電池外装材を作製した。
【0088】
参考例15
ジアセトンアクリルアミド単位含有量12質量%、ケン化度94.0モル%、平均重合度1700のジアセトンアクリルアミド変性ポリビニルアルコール(以下、ジアセトンアクリルアミド変性PVA−2と示す。)と、水とを混合し固形分濃度が10質量%のポリビニルアルコール水溶液を作製した。
【0089】
次に、積層体Aのポリアミド樹脂層面に、乾燥後のコーティング層の厚みが2μmとなるようにポリビニルアルコール水溶液をコーティングし、110℃で3分間熱風乾燥することで保護層を積層した。乾燥後の積層体を40℃で5日間エージング処理して、リチウムイオン二次電池外装材を作製した。
【0090】
(実施例16)
ジアセトンアクリルアミド変性PVA−2と、架橋剤であるADHと、水とを混合し固形分濃度が10質量%のポリビニルアルコール水溶液を作製した。なお、架橋剤の含有量は、ジアセトンアクリルアミド変性PVA−2に対して10質量部とした。
【0091】
次に、積層体Aのポリアミド樹脂層面に、乾燥後のコーティング層の厚みが2μmとなるようにポリビニルアルコール水溶液をコーティングし、110℃で3分間熱風乾燥することで保護層を積層した。乾燥後の積層体を40℃で5日間エージング処理して、リチウムイオン二次電池外装材を作製した。
【0092】
参考例17
アセト酢酸エステル単位含有量10質量%、ケン化度98.5モル%、平均重合度1700のアセトアセチル変性ポリビニルアルコール(以下、アセトアセチル変性PVAと示す)と、水とを混合し固形分濃度が10質量%のポリビニルアルコール水溶液を作製した。
【0093】
次に、積層体Aのポリアミド樹脂層面に、乾燥後のコーティング層の厚みが2μmとなるようにポリビニルアルコール水溶液をコーティングし、110℃で3分間熱風乾燥することで保護層を積層した。乾燥後の積層体を40℃で5日間エージング処理して、リチウムイオン二次電池外装材を作製した。
【0094】
(実施例18)
アセトアセチル変性PVAと、架橋剤であるADHと、水とを混合し固形分濃度が10質量%のポリビニルアルコール水溶液を作製した。なお、架橋剤の含有量は、アセトアセチル変性PVAに対して10質量部とした。
【0095】
次に、積層体Aのポリアミド樹脂層面に、乾燥後のコーティング層の厚みが2μmとなるようにポリビニルアルコール水溶液をコーティングし、110℃で3分間熱風乾燥することで保護層を積層した。乾燥後の積層体を40℃で5日間エージング処理して、リチウムイオン二次電池外装材を作製した。
【0096】
(比較例1)
積層体Aのポリアミド樹脂層面に、乾燥後のコーティング層の厚みが2μmとなるようにポリ塩化ビニリデン水性分散体(旭化成ケミカルズ社製、サランレテックスL549B、固形分濃度48質量%)をコーティングし、110℃で3分間熱風乾燥することで保護層を積層した。乾燥後の積層体を40℃で5日間エージング処理して、ポリ塩化ビニリデンからなる保護層を有したリチウムイオン二次電池外装材を作製した。
【0097】
(比較例2)
積層体Aのポリアミド樹脂層面に、乾燥後のコーティング層の厚みが2μmとなるようにポリエーテル型のポリウレタン樹脂の水性分散体をコーティングし、110℃で3分間熱風乾燥することで保護層を積層した。乾燥後の積層体を40℃で5日間エージング処理して、ポリウレタン樹脂からなる保護層を有したリチウムイオン二次電池外装材を作製した。
【0098】
(比較例3)
積層体Aをそのまま用い、40℃で5日間エージング処理して、保護層なしのリチウムイオン二次電池外装材を作製した。
【0099】
実施例14、16、18、参考例1、2、15、17で作製したポリビニルアルコール水溶液を用いて評価した、ポリビニルアルコールの60℃における水に対する不溶分率(%)の結果と、実施例14、16、18、参考例1、2、15、17、比較例1〜3で作成したリチウムイオン二次電池外装材の評価結果を表1に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
実施例14、16、18で得られたリチウムイオン二次電池外装材は、耐電解液性に優れ、さらに反りが抑制されていた。
【0102】
実施例3〜14、16、18の結果から、保護層は変性ポリビニルアルコールと架橋剤を含有していることで、耐電解液性や反りの抑制効果により優れることが確認された。これは架橋剤によって変性ポリビニルアルコール架橋構造が形成されたことに起因している。
【0103】
さらに、実施例〜5を比較すると架橋剤の含有量が多くなるに連れて、耐電解液性や反りの抑制効果が向上し、ポリビニルアルコールの水に対する不溶分率も高くなった。これは架橋剤の含有量が多くなるに連れて、変性ポリビニルアルコールの架橋密度が高くなっていることを意味している。因みに、実施例6、7では、水に対する不溶分率が実施例5と比べやや低下しているが、これは架橋剤の含有量が最も好ましい範囲より多いため過剰に含有しており、水に対する不溶分率の評価の際に、ポリビニルアルコールの含有する過剰分のADHが水に溶け出したためである。
【0104】
参考例15、実施例16では、ポリビニルアルコールとして、ケン化度が低いものを用いたため、耐電解液性や反り抑制効果はやや劣る結果であった。
【0105】
参考例17、実施例18では、変性ポリビニルアルコールとして、アセトアセチル変性ポリビニルアルコールをもちいたが、ジアセトンアクリルアミド変性ポリビニルアルコールと同等の効果が確認された。