特許第6034143号(P6034143)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6034143
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 5/12 20060101AFI20161121BHJP
   H02J 9/06 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   H02M5/12 Z
   H02J9/06 120
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-244451(P2012-244451)
(22)【出願日】2012年11月6日
(65)【公開番号】特開2014-93900(P2014-93900A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2014年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 勝
【審査官】 神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−010645(JP,A)
【文献】 特開2002−247855(JP,A)
【文献】 特開2006−340515(JP,A)
【文献】 特開平11−341686(JP,A)
【文献】 特開昭62−213575(JP,A)
【文献】 特開平05−122935(JP,A)
【文献】 特開平11−184541(JP,A)
【文献】 特開平09−277064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 5/00〜 5/48
H02J 9/00〜11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源からの第1の交流電圧を受ける複数の入力端子と、
負荷装置に接続される複数の出力端子と、
それらの第1の電極がそれぞれ前記複数の入力端子に接続され、それぞれ複数のオン/オフ制御信号に応答してオン/オフし、前記第1の交流電圧をパルス電圧列に変換する複数の半導体スイッチング素子と、
それらの一方端子が前記複数の半導体スイッチング素子の第2の電極に接続された複数のリアクトルと、前記複数のリアクトルの他方端子の間に接続された少なくとも1つのコンデンサとを含み、前記パルス電圧列を正弦波状の第2の交流電圧に変換する低域通過フィルタと、
1次巻線の複数の端子がそれぞれ前記複数のリアクトルの他方端子に接続され、2次巻線の複数の端子がそれぞれ前記複数の出力端子に接続されたトランスと、
前記複数の出力端子に現れる第の交流電圧が目標電圧になるように前記複数のオン/オフ制御信号のデューティ比を制御する制御部とを備え、
前記複数のオン/オフ制御信号の波形は同じであり、前記複数の半導体スイッチング素子は一定のスイッチング周期で同時にオン/オフされ、前記デューティ比は前記複数の半導体スイッチング素子のオン時間と前記スイッチング周期との比であり、
前記第2の交流電圧は前記第1の交流電圧よりも低く、前記第の交流電圧は前記第の交流電圧よりも高く、
前記交流電源が正常である場合は前記第1の交流電圧の振幅と前記第3の交流電圧の振幅とは等しい、電力変換装置。
【請求項2】
さらに、前記複数の出力端子に接続され、前記第1の交流電圧が第1の下限電圧よりも高い場合は交流電力を直流電力に変換して電力貯蔵装置に貯え、前記第1の交流電圧が前記第1の下限電圧よりも低い場合は前記電力貯蔵装置の直流電力を交流電力に変換して前記複数の出力端子に出力する交流/直流変換器を備え、
前記制御部は、前記第の交流電圧が前記目標電圧になるように、前記複数のオン/オフ制御信号のデューティ比を制御するとともに前記交流/直流変換器を制御する、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1の交流電圧が前記第1の下限電圧よりも低い第2の下限電圧よりも低下した場合は、前記複数の半導体スイッチング素子をオフ状態に固定するとともに、前記第の交流電圧が前記目標電圧になるように前記交流/直流変換器を制御する、請求項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関し、特に、交流電力を負荷装置に安定に供給する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置が適用される一つの例として、無停電電源装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。無停電電源装置は、常時商用電源給電方式の無停電電源装置と、常時インバータ給電方式の無停電電源装置に大別される。常時商用電源給電方式の無停電電源装置の電力変換効率は、常時インバータ給電方式の無停電電源装置の電力変換効率よりも高い。
【0003】
常時商用電源給電方式の無停電電源装置では、交流電源と負荷装置との間に交流スイッチが設けられている。また、交流電源に対して交流スイッチと並列に、交流電力と直流電力とを相互に変換する交流/直流変換器および直流電力の充放電が可能な電力貯蔵装置が接続されている。
【0004】
交流電源が正常である場合は、交流スイッチがオンされ、交流電源から交流スイッチを介して負荷装置に交流電力が供給される。また、交流/直流変換器によって交流電力が直流電力に変換されて電力貯蔵装置に蓄えられる。
【0005】
交流電源に停電のような異常が発生した場合は、交流スイッチがオフされ、交流電源と負荷装置が切り離される。また、交流/直流変換器によって電力貯蔵装置の直流電力が交流電力に変換されて負荷装置に供給される。したがって、交流電源に異常が発生した場合でも、電力貯蔵装置に直流電力が蓄えられている期間は、負荷装置の運転を継続することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−187089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の無停電電源装置では、負荷装置への交流電力の供給を交流電源から交流/直流変換器に切換える際、一瞬、交流電圧が低下する、いわゆる瞬低が発生するという問題があった。
【0008】
それゆえに、本発明の主たる目的は、交流電源に異常が発生しても、交流電力を負荷装置に安定に供給することが可能な電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る電力変換装置は、交流電源からの第1の交流電圧を受ける複数の入力端子と、負荷装置に接続される複数の出力端子と、それらの第1の電極がそれぞれ複数の入力端子に接続され、それぞれ複数のオン/オフ制御信号に応答してオン/オフし、第1の交流電圧をパルス電圧列に変換する複数の半導体スイッチング素子と、それらの一方端子が複数の半導体スイッチング素子の第2の電極に接続された複数のリアクトルと、複数のリアクトルの他方端子の間に接続された少なくとも1つのコンデンサとを含み、パルス電圧列を正弦波状の第2の交流電圧に変換する低域通過フィルタと、1次巻線の複数の端子がそれぞれ複数のリアクトルの他方端子に接続され、2次巻線の複数の端子がそれぞれ複数の出力端子に接続されたトランスと、複数の出力端子に現れる第の交流電圧が目標電圧になるように複数のオン/オフ制御信号のデューティ比を制御する制御部とを備えたものである。複数のオン/オフ制御信号の波形は同じであり、複数の半導体スイッチング素子は一定のスイッチング周期で同時にオン/オフされる。デューティ比は複数の半導体スイッチング素子のオン時間とスイッチング周期との比である。第2の交流電圧は第1の交流電圧よりも低く、第の交流電圧は第の交流電圧よりも高い。交流電源が正常である場合は第1の交流電圧の振幅と第3の交流電圧の振幅とは等しい。
【0011】
また好ましくは、さらに、複数の出力端子に接続され、第1の交流電圧が第1の下限電圧よりも高い場合は交流電力を直流電力に変換して電力貯蔵装置に貯え、第1の交流電圧が第1の下限電圧よりも低い場合は電力貯蔵装置の直流電力を交流電力に変換して複数の出力端子に出力する交流/直流変換器を備える。制御部は、第の交流電圧が目標電圧になるように、複数のオン/オフ制御信号のデューティ比を制御するとともに交流/直流変換器を制御する。
【0012】
また好ましくは、制御部は、第1の交流電圧が第1の下限電圧よりも低い第2の下限電圧よりも低下した場合は、複数の半導体スイッチング素子をオフ状態に固定するとともに、第の交流電圧が目標電圧になるように交流/直流変換器を制御する。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る電力変換装置では、交流電源とトランスの1次巻線の複数の端子との間に複数の半導体スイッチング素子を並列接続し、トランスの2次巻線の複数の端子を負荷装置に接続し、出力電圧が目標電圧になるように複数の半導体スイッチング素子をオン/オフさせる。したがって、交流電源に異常が発生しても、負荷装置に交流電力を安定に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態1に係る電力変換装置の構成を示す回路ブロック図である。
図2図1に示した電力変換装置で行なわれるPWM制御方式を示すタイムチャートである。
図3図1に示したPWM制御信号の波形を示す図である。
図4図1に示したPWM制御信号のデューティ比と交流電圧V2との関係を示すタイムチャートである。
図5図1に示した電力変換装置の効果を示すタイムチャートである。
図6】本発明の実施の形態2に係る電力変換装置の構成を示す回路ブロック図である。
図7図6に示した制御部の構成を示す回路ブロック図である。
図8図1に示した電力変換装置の効果を示す他のタイムチャートである。
図9】実施の形態2の変更例を示す回路ブロック図である。
図10】実施の形態3に係る電力変換装置の構成を示す回路ブロック図である。
図11】実施の形態4に係る電力変換装置の構成を示す回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施の形態1]
本発明の実施の形態1に係る電力変換装置1は、図1に示すように、入力端子TI1,TI2、出力端子TO1,TO2、スイッチング部2、低域通過フィルタ3、トランス4、および制御部5を備える。スイッチング部2は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)Q1,Q2およびダイオードD1,D2を含む。低域通過フィルタ3は、リアクトルL1,L2およびコンデンサC1を含む。トランス4は、1次巻線4aと2次巻線4bを含む。
【0017】
入力端子TI1,TI2は、単相二線式の交流電源6の出力端子2a,2bにそれぞれ接続される。出力端子TO1,TO2は、単相二線式の負荷装置7の入力端子7a,7bにそれぞれ接続される。
【0018】
IGBTQ1,Q2のコレクタはそれぞれ入力端子TI1,TI2に接続される。ダイオードD1,D2は、それぞれIGBTQ1,Q2に逆並列に接続される。IGBTQ1,Q2は、それぞれ制御部5からのPWM(pulse width modulation:パルス幅変調)制御信号S1,S2に応答して、交流電源6からの交流電圧V1の周期よりも十分に短い周期でオン/オフする。IGBTQ1,Q2がオン/オフすると、交流電源6からの交流電圧V1はパルス電圧列Vpに変換される。
【0019】
リアクトルL1,L2の一方端子はそれぞれIGBTQ1,Q2のエミッタに接続され、それらの他方端子はそれぞれトランス4の1次巻線4aの両端の2つの端子に接続される。コンデンサC1は、リアクトルL1,L2の他方端子間に接続される。低域通過フィルタ3は、スイッチング部2で生成されたパルス電圧列Vpを交流電圧V2に変換する。交流電圧V2の振幅は、交流電源6から出力される交流電圧V1の振幅よりも小さくなっている。また、交流電圧V2の振幅は、PWM制御信号S1,S2のデューティ比を調整することによって調整可能となっている。
【0020】
トランス4の2次巻線4bの2つの端子は、それぞれ出力端子TO1,TO2に接続される。2次巻線4bの巻数は1次巻線4aの巻数よりも多く設定されており、1次巻線4aの2つの端子間に与えられる交流電圧V2の振幅よりも、2次巻線4bの2つの端子間に現れる交流電圧V3の振幅の方が大きい。トランス4は、低域通過フィルタ3を通過した交流電圧V2を昇圧して出力端子TO1,TO2に出力する。通常時は、交流電源6からの交流電圧V1の振幅とトランス4から出力される交流電圧V3の振幅とは等しい。
【0021】
制御部5は、入力端子TI1,TI2間の交流電圧V1と出力端子TO1,TO2間の交流電圧V3とに基づいてPWM制御信号S1,S2を生成する。PWM制御信号S1,S2の波形は同じである。制御部5は、入力電圧V1に同期して動作し、出力電圧V3の振幅が目標電圧Vtになるように、PWM制御信号S1,S2のデューティ比を調整する。目標電圧Vtは、交流電源6が正常である場合の交流電圧V1の振幅と等しい。
【0022】
交流電源6が正常である場合は、PWM制御信号S1,S2のデューティ比は所定値に維持され、交流電源6からの交流電圧V1の振幅と目標電圧Vtと電力変換装置1から出力される交流電圧V3の振幅とは等しい。交流電源6に異常が発生して交流電圧V1の振幅が定格値よりも低下した場合は、PWM制御信号S1,S2のデューティ比が所定値よりも大きくなり、電力変換装置1から出力される交流電圧V3の振幅は目標電圧Vtに維持される。
【0023】
図2(a)(b)は、PWM制御方式を示すタイムチャートである。図2(a)に示すように、交流電源6からの交流電圧V1は正弦波状に変化する。また、IGBTQ1,Q2は、所定の周期でオン/オフする。正弦波状の交流電圧V1は、IGBTQ1,Q2がオンしたときのみスイッチング部2を通過し、パルス電圧列Vpとなる。
【0024】
PWM制御信号S1,S2のデューティ比を小さくするとパルス電圧列Vpのパルス幅が狭くなり、図2(b)において一点鎖線で示すように、交流電圧V2の振幅は小さくなる。PWM制御信号S1,S2のデューティ比を大きくするとパルス電圧列Vpのパルス幅が広くなり、図2(b)において実線で示すように、交流電圧V2の振幅は大きくなる。したがって、PWM制御信号S1,S2のデューティ比を調整することにより、交流電圧V2の振幅を調整することができる。
【0025】
図3は、PWM制御信号S1,S2の波形を示すタイムチャートである。図3において、PWM制御信号S1,S2が「H」レベルである場合はIGBTQ1,Q2がオンし、PWM制御信号S1,S2が「L」レベルである場合はIGBTQ1,Q2がオフする。IGBTQ1,Q2のオン時間Aとオフ時間Bの和は、スイッチング周期λである。スイッチング周期λは、一定に維持される。オン時間Aとスイッチング周期λの比A/λは、デューティ比DRである。オン時間Aを所定値A1から短くしていくと、パルス電圧列Vpのパルス幅が狭くなり、交流電圧V2が低下する。逆に、オン時間Aを長くしていくと、パルス電圧列Vpのパルス幅が広くなり、交流電圧V2が上昇する。
【0026】
交流電源6が正常である場合、オン時間Aとオフ時間Bの比は、トランス4の1次巻線4aと2次巻線4bとの巻線比により決定される。たとえば、トランス4の1次巻線4aと2次巻線4bとの巻線比が1:2の場合、オン時間A1とオフ時間Bとの比は1:1となり、デューティ比DRは1/2となる。また、トランス4の1次巻線4aと2次巻線4bとの巻線比が2:3の場合、オン時間A1とオフ時間Bとの比は2:1となり、デューティ比DRは2/3となる。交流電源6が異常になって交流電圧V1が低下した場合は、交流電圧V2が目標電圧Vtになるように、デューティ比DRは増大される。
【0027】
図4は、トランス4の1次巻線4a側の交流電圧V2とデューティ比DRとの関係を示す波形図である。入力電圧V1の振幅が一定の場合、デューティ比DRを0.2から0.8まで変えることにより、交流電圧V2の振幅を最大値の15.6%から75.7%まで変えることができた。このように、入力電圧V1の振幅が一定の場合、デューティ比DRを調整することにより、交流電圧V2の振幅を調整することができる。また、入力電圧V1の振幅が減少した場合、デューティ比DRを調整することにより、交流電圧V2の振幅を目標電圧Vtに維持することができる。
【0028】
図5は、瞬低発生時における交流電圧V1,V3の波形を示す図である。図5の期間Tdにおいて、交流電源6からの交流電圧V1が瞬間的に低下しているが、電力変換装置1から出力される交流電圧V3には瞬間的な電圧低下は発生しなかった。
【0029】
この実施の形態1では、交流電源6とトランス4の1次巻線4aの間にスイッチング部2および低域通過フィルタ3を設け、トランス4の2次巻線4bを負荷装置7に接続し、出力電圧V3が目標電圧Vtになるように、スイッチング部2のIGBTQ1,Q2をオン/オフさせる。したがって、交流電源6に異常が発生しても、負荷装置7に交流電力を安定に供給することができる。
【0030】
[実施の形態2]
図6は、本発明の実施の形態2となる無停電電源装置10の構成を示す回路ブロック図であって、図1と対比される図である。図6を参照して、この無停電電源装置10は、図1の電力変換装置1に、蓄電池B1、交流/直流変換器11、および低域通過フィルタ12を追加したものである。
【0031】
交流/直流変換器11は、IGBTQ11〜Q14およびダイオードD11〜D14を含む。IGBTQ11,Q12は、蓄電池B1の正極と負極との間に直列接続されている。IGBTQ13,Q14は、蓄電池B1の正極と負極との間に直列接続されている。ダイオードD11〜D14は、それぞれIGBTQ11〜Q14に逆並列に接続されている。IGBTQ11〜Q14は、それぞれ制御部5からのPWM制御信号S11〜S14に応答して、交流電源6からの交流電圧V1の周期よりも十分に短い周期でオン/オフする。たとえば、IGBTQ11,Q14をオンさせるとともにIGBTQ12,Q13をオフさせるこにより、負荷装置7に正電圧を印加することができる。また、IGBTQ12,Q13をオンさせるとともにIGBTQ11,Q14をオフさせるころにより、負荷装置7に負電圧を印加することができる。
【0032】
交流/直流変換器11は、制御部5によって制御され、充電モード時は、トランス4からの交流電力を直流電力に変換して蓄電池B1に蓄え、放電モード時は、蓄電池B1の直流電力を交流電力に変換して負荷装置7に供給する。
【0033】
低域通過フィルタ12は、リアクトルL11およびコンデンサC11を含む。リアクトルL11は、IGBTQ11のエミッタと出力端子TO1との間に接続されている。IGBTQ13のエミッタは、出力端子TO2に接続されている。コンデンサC11は、出力端子TO1,TO2間に接続されている。低域通過フィルタ12は、トランス4からの交流電圧V3を交流/直流変換器11に通過させ、交流/直流変換器11で発生したスイッチング周波数のノイズを遮断する。
【0034】
制御部5は、第1の下限電圧VL1と、第1の下限電圧VL1よりも低い第2の下限電圧VL2とを有する。第1の下限電圧VL1はたとえば定格電圧の85%に設定され、第1の下限電圧VL2はたとえば定格電圧の60%に設定される。制御部5は、交流電源6からの交流電圧V1が第1の下限電圧VL1よりも高い第1の場合(V1>VL1)と、交流電圧V1が第1および第2の下限電圧VL1,VL2の間にある第2の場合(VL1>V1>VL2)と、交流電圧V1が第2の下限電圧VL2よりも低い第3の場合(VL2>V1)とに分けてスイッチング部2および交流/直流変換器11を制御する。
【0035】
第1の場合(V1>VL1)は、制御部5は、出力交流電圧V3が目標電圧Vtに一致するようにスイッチング部2のIGBTQ1,Q2をオン/オフ制御するとともに、交流/直流変換器11を充電モードに設定する。このとき、交流/直流変換器11は、交流電力を直流電力に変換して蓄電池B1に蓄える。
【0036】
第2の場合(VL1>V1>VL2)は、制御部5は、出力交流電圧V3が目標電圧Vtに一致するようにスイッチング部2のIGBTQ1,Q2をオン/オフ制御するとともに、交流/直流変換器11を放電モードに設定する。このとき、交流/直流変換器11は、蓄電池B1の直流電力を交流電力に変換して出力端子TO1,TO2に供給する。
【0037】
第3の場合(VL2>V1)は、制御部5は、スイッチング部2のIGBTQ1,Q2をオフ状態に固定するとともに、交流/直流変換器11を放電モードに設定する。このとき、交流/直流変換器11は、蓄電池B1の直流電力を交流電力に変換して出力端子TO1,TO2に供給する。
【0038】
第1および第2の場合は、瞬低であり、交流電源6が正常状態に復帰する可能性があると判断してIGBTQ1,Q2をオン/オフ制御する。第3の場合は、停電状態であり、交流電源6が正常状態に復帰する見込みがないと判断してIGBTQ1,Q2をオフ状態に固定する。
【0039】
図7は、図6に示した制御部5の構成を説明する回路ブロック図である。図7において、制御部5は、正弦波基準部15、減算器16,18,20、電圧制御器17、リミッタ19、電流制御器21、PWM制御回路22、および調整制御器23を含む。また、無停電電源装置10は、電流センサ24,25も備えている。電流センサ24は、リアクトルL1,L2に流れる電流を検出する。電流センサ25は、負荷電流を検出する。
【0040】
正弦波基準部15は、交流電源6からの交流電圧V1に基づいて電圧指令値を生成する。この電圧指令値は、交流電圧V1と同じ位相で正弦波状に変化する。減算器16は、正弦波基準部15で生成された電圧指令値と交流電圧V3との偏差を求める。電圧制御器17は、減算器16で生成された偏差に基づいて電流指令値を生成する。減算器18は、電圧制御器17で生成された電流指令値と、電流センサ24によって検出された負荷電流との偏差を求める。リミッタ19は、減算器18で生成された偏差に基づいて、上限値以下の電流を流す電流制御基準信号値を生成する。
【0041】
減算器20は、リミッタ19で生成された電流制御基準信号値と、電流センサ24によって検出された電流との偏差を求める。電流制御器21は、減算器20で生成された偏差に基づいて、電圧指令値を生成する。PWM制御回路22は、交流電圧V1と電流制御器21からの電圧指令値に基づいてPWM制御信号S1,S2を生成する。また、調整制御器23は、交流電圧V1,V3と電流センサ25の検出結果とに基づいてPWM制御信号S11〜S14を生成する。
【0042】
図8は、停電時における交流電圧V1,V3の波形を示す図である。図8において、交流電源6からの交流電圧V1が徐々に低下しているが、電力変換装置1から出力される交流電圧V3には電圧低下は発生しなかった。
【0043】
この実施の形態2では、実施の形態1と同じ効果が得られる他、蓄電池B1、交流/直流変換器11、および低域通過フィルタ12を設けたので、停電が発生した場合でも、蓄電池B1に直流電力が貯蔵されている期間は負荷装置7の運転を継続することができる。
【0044】
なお、図9に示すように、蓄電池B1を二重層コンデンサ26で置換してもよい。二重層コンデンサ26は、蓄電池B1に比べて小型化が容易であり、省スペース化を図ることができる。また、二重層コンデンサ26は充放電の繰返しによる劣化が少ないので、交換等のメンテナンスの手間を減少させて、経済性を良好なものとすることができる。
【0045】
[実施の形態3]
図10は、本発明の実施の形態3となる電力変換装置31の構成を示す回路ブロック図であって、図1と対比される図である。図1の電力変換装置1は単相式であるのに対し、この電力変換装置31は三相式である。
【0046】
すなわち、電力変換装置10は、入力端子TI1〜TI3、出力端子TO1〜TO3、スイッチング部32、低域通過フィルタ33、トランス34、および制御部35を備える。スイッチング部2は、IGBTQ1〜Q3およびダイオードD1〜D3を含む。低域通過フィルタ33は、リアクトルL1〜L3およびコンデンサC1〜C3を含む。トランス34は、1次巻線34aと2次巻線34bを含む。
【0047】
入力端子TI1〜TI3は、三相三線式の交流電源36の3つの出力端子にそれぞれ接続される。出力端子TO1〜TO3は、三相三線式の負荷装置37の3つの入力端子にそれぞれ接続される。
【0048】
IGBTQ1〜Q3のコレクタはそれぞれ入力端子TI1〜TI3に接続される。ダイオードD1〜D3は、それぞれIGBTQ1〜Q3に逆並列に接続される。IGBTQ1〜Q3は、それぞれ制御部5からのPWM制御信号S1〜S3に応答して、交流電源36からの交流電圧V1の周期よりも十分に短い周期でオン/オフする。IGBTQ1〜Q3がオン/オフすると、交流電源36からの交流電圧V1はパルス電圧列Vpに変換される。
【0049】
リアクトルL1〜L3の一方端子はそれぞれIGBTQ1〜Q3のエミッタに接続され、それらの他方端子はそれぞれトランス34の1次巻線34aの3つの端子に接続される。コンデンサC1は、リアクトルL1,L2の他方端子間に接続される。コンデンサC2は、リアクトルL2,L3の他方端子間に接続される。コンデンサC3は、リアクトルL3,L1の他方端子間に接続される。リアクトルL1〜L3およびコンデンサC1〜C3を含む低域通過フィルタ33は、スイッチング部32で生成されたパルス電圧列Vpを交流電圧V2に変換する。交流電圧V2の振幅は、交流電源36から出力される交流電圧V1の振幅よりも小さくなっている。また、交流電圧V2の振幅は、PWM制御信号S1〜S3のデューティ比を調整することによって調整可能となっている。
【0050】
トランス34の2次巻線34bの3つの端子は、それぞれ出力端子TO1〜TO3に接続される。2次巻線34bの巻数は1次巻線34aの巻数よりも多く設定されており、1次巻線34aの3つの端子間に与えられた交流電圧V2の振幅よりも、2次巻線34bの3つの端子間に現れる交流電圧V3の振幅の方が大きい。トランス34は、低域通過フィルタ33を通過した交流電圧V2を昇圧して出力端子TO1〜TO3に出力する。通常時は、交流電源36からの交流電圧V1の振幅とトランス34から出力される交流電圧V3の振幅とは等しい。
【0051】
制御部35は、入力端子TI1〜TI3間の交流電圧V1と出力端子TO1〜TO3間の交流電圧V3とに基づいてPWM制御信号S1〜S3を生成する。PWM制御信号S1〜S3の波形は同じである。制御部35は、入力電圧V1に同期して動作し、出力電圧V3の振幅が目標電圧Vtになるように、PWM制御信号S1〜S3のデューティ比を調整する。目標電圧Vtは、交流電源36が正常である場合の交流電圧V1の振幅と等しい。
【0052】
交流電源36が正常である場合は、PWM制御信号S1〜S3のデューティ比は所定値に維持され、交流電源36からの交流電圧V1の振幅と目標電圧Vtと電力変換装置31から出力される交流電圧V3の振幅とは等しい。交流電源36に異常が発生して交流電圧V1の振幅が定格値よりも低下した場合は、PWM制御信号S1〜S3のデューティ比が所定値よりも大きくなり、電力変換装置31から出力される交流電圧V3の振幅は目標電圧Vtに維持される。他の構成および動作は、実施の形態1と同様であるので、その説明は繰り返さない。この実施の形態3でも、実施の形態1と同じ効果が得られる。
【0053】
[実施の形態4]
図11は、本発明の実施の形態4となる無停電電源装置40の構成を示す回路ブロック図であって、図10と対比される図である。図11を参照して、この無停電電源装置40は、図10の電力変換装置31に、蓄電池B1、交流/直流変換器41、および低域通過フィルタ42を追加したものである。
【0054】
交流/直流変換器41は、IGBTQ11〜Q16およびダイオードD11〜D16を含む。IGBTQ11,Q12は、蓄電池B1の正極と負極との間に直列接続されている。IGBTQ13,Q14は、蓄電池B1の正極と負極との間に直列接続されている。IGBTQ15,Q16は、蓄電池B1の正極と負極との間に直列接続されている。ダイオードD11〜D16は、それぞれIGBTQ11〜Q16に逆並列に接続されている。IGBTQ11〜Q16は、それぞれ制御部5からのPWM制御信号S11〜S14に応答して、交流電源36からの交流電圧V1の周期よりも十分に短い周期でオン/オフする。IGBTQ11〜Q16を所定のタイミングでオン/オフさせることにより、蓄電池B1の直流電力を三相交流電力に変換することが可能となっている。
【0055】
交流/直流変換器41は、制御部35によって制御され、充電モード時は、トランス34からの交流電力を直流電力に変換して蓄電池B1に蓄え、放電モード時は、蓄電池B1の直流電力を交流電力に変換して負荷装置37に供給する。
【0056】
低域通過フィルタ42は、リアクトルL11〜L13およびコンデンサC11〜C13を含む。リアクトルL11〜L13の一方端子はそれぞれIGBTQ11,Q13,Q15のエミッタに接続され、それらの他方端子はそれぞれ出力端子TO1〜TO3に接続されている。コンデンサC11は、出力端子TO1,TO2間に接続されている。コンデンサC12は、出力端子TO2,TO3間に接続されている。コンデンサC13は、出力端子TO3,TO1間に接続されている。低域通過フィルタ42は、トランス34からの交流電圧V3を交流/直流変換器41に通過させ、交流/直流変換器41で発生したスイッチング周波数のノイズを遮断する。
【0057】
制御部35は、第1の下限電圧VL1と、第1の下限電圧VL1よりも低い第2の下限電圧VL2とを有する。第1の下限電圧VL1はたとえば定格電圧の85%に設定され、第1の下限電圧VL2はたとえば定格電圧の60%に設定される。制御部5は、交流電源6からの交流電圧V1が第1の下限電圧VL1よりも高い第1の場合(V1>VL1)と、交流電圧V1が第1および第2の下限電圧VL1,VL2の間にある第2の場合(VL1>V1>VL2)と、交流電圧V1が第2の下限電圧VL2よりも低い第3の場合(VL2>V1)とに分けてスイッチング部32および交流/直流変換器41を制御する。
【0058】
第1の場合(V1>VL1)は、制御部35は、出力交流電圧V3が目標電圧Vtに一致するようにスイッチング部32のIGBTQ1〜Q3をオン/オフ制御するとともに、交流/直流変換器41を充電モードに設定する。このとき、交流/直流変換器41は、交流電力を直流電力に変換して蓄電池B1に蓄える。
【0059】
第2の場合(VL1>V1>VL2)は、制御部35は、出力交流電圧V3が目標電圧Vtに一致するようにスイッチング部32のIGBTQ1〜Q3をオン/オフ制御するとともに、交流/直流変換器41を放電モードに設定する。このとき、交流/直流変換器41は、蓄電池B1の直流電力を三相交流電力に変換して出力端子TO1〜TO3に供給する。
【0060】
第3の場合(VL2>V1)は、制御部35は、スイッチング部32のIGBTQ1〜Q3をオフ状態に固定するとともに、交流/直流変換器41を放電モードに設定する。このとき、交流/直流変換器41は、蓄電池B1の直流電力を三相交流電力に変換して出力端子TO1〜TO3に供給する。
【0061】
第1および第2の場合は、瞬低であり、交流電源36が正常状態に復帰する可能性があると判断してIGBTQ1〜Q3をオン/オフ制御する。第3の場合は、停電状態であり、交流電源36が正常状態に復帰する見込みがないと判断してIGBTQ1〜Q3をオフ状態に固定する。この実施の形態4でも、実施の形態2と同じ効果が得られる。
【0062】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0063】
1,31 電力変換装置、2,32 スイッチング部、3,12,33,42 低域通過フィルタ、4,34 トランス、4a,34a 1次巻線、4b,34b 2次巻線、5,35 制御部、6,36 交流電源、3,37 負荷装置、10,40 無停電電源装置、11,41 交流/直流変換器、15 正弦波基準部、16,18,20 減算器、17 電圧制御器、19 リミッタ、21 電流制御器、22 PWM制御回路、23 調整制御器、24,25 電流センサ、26 二重層コンデンサ、TI1〜TI3 入力端子、TO1〜TO3 出力端子、Q1〜Q3,Q11〜Q16 IGBT、D1〜D3,D11〜D16 ダイオード、L1〜L3,L11〜L13 リアクトル、C1〜C3,C11〜C13 コンデンサ、B1 蓄電池。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11