特許第6034154号(P6034154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6034154廃熱回収設備、廃熱回収方法及び廃棄物処理炉
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6034154
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】廃熱回収設備、廃熱回収方法及び廃棄物処理炉
(51)【国際特許分類】
   F01K 3/22 20060101AFI20161121BHJP
   F23G 5/46 20060101ALI20161121BHJP
   F22D 1/50 20060101ALI20161121BHJP
   F23J 15/02 20060101ALI20161121BHJP
   F01K 27/02 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   F01K3/22
   F23G5/46 AZAB
   F22D1/50
   F23J15/02
   F01K27/02 C
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-258305(P2012-258305)
(22)【出願日】2012年11月27日
(65)【公開番号】特開2014-105612(P2014-105612A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】595011238
【氏名又は名称】クボタ環境サ−ビス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】平井 祐則
(72)【発明者】
【氏名】清水 晋二郎
(72)【発明者】
【氏名】矢川 雄一
(72)【発明者】
【氏名】林 広和
【審査官】 米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−17007(JP,A)
【文献】 特開昭53−352(JP,A)
【文献】 特開2011−237048(JP,A)
【文献】 特開平08−21210(JP,A)
【文献】 特開昭55−116010(JP,A)
【文献】 特開2012−189008(JP,A)
【文献】 特開2000−110511(JP,A)
【文献】 特開平6−81610(JP,A)
【文献】 特許第4838318(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0199670(US,A1)
【文献】 特開2009−162452(JP,A)
【文献】 特公昭53−37309(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 3/22
F01K 27/02
F22D 1/50
F23G 5/46
F23J 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃熱ボイラを備えた廃棄物処理炉に組み込まれる廃熱回収設備であって、
煙道に設置され、前記廃熱ボイラへ供給される脱気器の加圧給水が被加熱媒体として供給され、排ガスとの熱交換により加熱された被加熱媒体が脱気熱源として前記脱気器に循環供給される熱交換器と、
前記熱交換器から排出された排ガスが第1の所定温度を下回らないように、前記熱交換器への給水量を調整するとともに、前記熱交換器での被加熱媒体の蒸気化を防止可能な所定圧力以上になるように、前記熱交換器から排出される被加熱媒体の排出量を調整する制御機構と、
を備えている廃熱回収設備。
【請求項2】
前記熱交換器がエコノマイザの下流側煙道に設置され、前記エコノマイザへ供給される脱気器の加圧給水が被加熱媒体として分岐供給される請求項記載の廃熱回収設備。
【請求項3】
各煙道に前記熱交換器が設置された複数の廃棄物処理炉が併設されるとともに、前記脱気器が共用されるように構成され、
前記制御機構は、他の廃棄物処理炉が運転されている場合に、運転を再開する廃棄物処理炉に備えた制御対象熱交換器に前記脱気器から加圧給水を供給して排ガスを加熱する請求項1または2記載の廃熱回収設備。
【請求項4】
前記制御機構は、前記熱交換器から排出された排ガスが第2の所定温度を上回るように、前記制御対象熱交換器への給水量を調整する請求項記載の廃熱回収設備。
【請求項5】
廃熱ボイラを備えた廃棄物処理炉の廃熱回収方法であって、
煙道に設置され、前記廃熱ボイラへ供給される脱気器の加圧給水が被加熱媒体として供給され、排ガスとの熱交換により加熱された被加熱媒体が脱気熱源として前記脱気器に循環供給される熱交換器に対して、
前記熱交換器から排出された排ガスが第1の所定温度を下回らないように、前記熱交換器への給水量を調整するとともに、前記熱交換器での被加熱媒体の蒸気化を防止可能な所定圧力以上になるように、前記熱交換器から排出される被加熱媒体の排出量を調整する廃熱回収方法。
【請求項6】
廃熱ボイラを備えた廃棄物処理炉であって、
煙道に設置され、前記廃熱ボイラへ供給される脱気器の加圧給水が被加熱媒体として供給され、排ガスとの熱交換により加熱された被加熱媒体が脱気熱源として前記脱気器に循環供給される熱交換器と、
前記熱交換器から排出された排ガスが第1の所定温度を下回らないように、前記熱交換器への給水量を調整するとともに、前記熱交換器での被加熱媒体の蒸気化を防止可能な所定圧力以上になるように、前記熱交換器から排出される被加熱媒体の排出量を調整する制御機構と、
を含む廃熱回収設備を備えている廃棄物処理炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃熱回収設備、廃熱回収方法及び廃棄物処理炉に関し、詳しくは廃熱ボイラを備えた廃棄物処理炉に組み込まれる廃熱回収設備、廃熱回収方法及び廃棄物処理炉に関する。
【背景技術】
【0002】
規模が大きなゴミ焼却炉や溶融炉等の廃棄物処理設備には廃熱ボイラが設置され、廃熱ボイラで発生した蒸気で発電する発電設備が組み込まれている。そして、設備を稼動するために必要な電力が自己発電電力で賄われ、余剰電力があれば電力会社に売電されている。
【0003】
廃棄物処理設備で発生した高温の排ガスは、煙道に設けた減温塔で冷却された後にバグフィルタ等の集塵機で除塵され、さらに必要に応じて洗煙塔で酸性ガス成分が除去された後に煙突から排気される。
【0004】
廃熱ボイラで発生した蒸気は過熱器で過熱された後に高圧蒸気溜めに蓄積され、必要量が高圧蒸気溜めから蒸気タービンに供給されて発電され、蒸気タービンからの排蒸気が復水器で復水されて復水タンクに回収され、その後、復水タンクから脱気器に給水されて脱気され、所定温度に加熱されたボイラ給水としてエコノマイザに循環給水される。
【0005】
そして、暖房設備等の様々な設備の熱源として蒸気を利用するために、高圧蒸気溜めに蓄積された蒸気の一部が低圧蒸気溜めに蓄積され、低圧蒸気溜めに蓄積された蒸気の一部、または蒸気タービンの途中からの抽気が脱気器の加熱源として供給されている。
【0006】
特許文献1には、蒸気タービンからの抽気を抽気移送管を介して排気復水タンクに導き、復水移送管の途中に第1種吸収式ヒートポンプを設け、この第1種吸収式ヒートポンプの駆動熱源として、蒸気タービンの抽気を使用するとともに、その廃熱回収の対象となる廃熱熱源として、排気蒸気取出管の途中から取り出された排気蒸気を使用し、かつ排気復水タンクからの復水を、吸収器および凝縮器に導いて昇温させる発電設備が提案されている。
【0007】
当該発電設備によれば、復水タンクから脱気器に送られる復水の温度が高くなり、脱気器において、蒸気タービンの抽気により復水の温度を上昇させるのに必要な抽気量が減少する。すなわち、抽気箇所以降の蒸気タービン内を流れる蒸気量を増やすことができるので、発電量を増加させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平08−021210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上述した従来の廃棄物処理設備は、蒸気タービンの抽気等を脱気器の熱源に用いる必要があり、発電に供する蒸気量が少なくなるという問題があった。さらに、燃焼炉で発生した高温の排ガスを煙道に設けた減温塔で冷却し、減温した排ガスをその下流側に設置した集塵機で除塵するように構成されていたため、排ガスの保有熱を有効に利用するという観点で更なる改良の余地もあった。
【0010】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、発電量の低下を招くことなく、排ガスの保有熱を有効に活用できる廃熱回収設備、廃熱回収方法及び廃棄物処理炉を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明による廃熱回収設備の第一特徴構成は、特許請求の範囲の請求項1に記載した通り、廃熱ボイラを備えた廃棄物処理炉に組み込まれる廃熱回収設備であって、煙道に設置され、前記廃熱ボイラへ供給される脱気器の加圧給水が被加熱媒体として供給され、排ガスとの熱交換により加熱された被加熱媒体が脱気熱源として前記脱気器に循環供給される熱交換器と、前記熱交換器から排出された排ガスが第1の所定温度を下回らないように、前記熱交換器への給水量を調整するとともに、前記熱交換器での被加熱媒体の蒸気化を防止可能な所定圧力以上になるように、前記熱交換器から排出される被加熱媒体の排出量を調整する制御機構と、を備えている点にある。
【0012】
廃熱ボイラを経て煙道に流下する排ガスの保有熱を熱交換器で効率的に回収でき、回収された熱がボイラ水の脱気用の熱源に用いられるので、脱気のための蒸気が不要となり、発電効率を向上させることができる。しかも、減温塔を設けなくても熱交換器で十分に減温された排ガスをそのまま集塵機に向けて流下させることができるようになる。
【0013】
また、廃棄物処理炉で処理される廃棄物の性状は様々に変動するため、熱交換器に流入する排ガス量も変動する。廃棄物の燃焼状態が大きく低下して排ガス量が低下しても、熱交換器から排出された排ガスが所定温度を下回らないように、制御機構によって熱交換器への給水量が調整されるので、熱交換器や熱交換器の下流側の煙道や煙道に配置された各処理設備での低温腐食の発生を未然に防止することができる。
【0014】
さらに、集塵機の前段の減温塔を無くすために伝熱面積を大きくしたエコノマイザを備え、廃熱を効率的に回収するいわゆる低温エコを採用した廃棄物処理炉では、廃棄物の燃焼状態が大きく低下して排ガス量が低下すると、エコノマイザで必要以上に吸熱されて出口温度が低下するため、低温腐食が発生する虞もある。しかし、上述の構成によれば、いわゆる低温エコではない通常のエコノマイザを用いても、減温塔が不要になるばかりか、制御機構によって熱交換器への給水量が調整されるので、低温腐食の発生を未然に防止することができる。
【0015】
熱を回収する被加熱媒体としてボイラ給水である加圧給水が用いられ、制御機構によって、熱交換器での被加熱媒体の蒸気化を防止可能な所定圧力以上になるように被加熱媒体の排出量が調整されるので、熱伝達率が向上して効率的に熱交換することができる。
【0016】
同第の特徴構成は、同請求項に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記熱交換器がエコノマイザの下流側煙道に設置され、前記エコノマイザへ供給される脱気器の加圧給水が被加熱媒体として分岐供給される点にある。
【0017】
煙道に沿ってエコノマイザと熱交換器が順に配置され、脱気器で脱気された加圧給水がエコノマイザと熱交換器にそれぞれ供給される。エコノマイザで加熱された加圧給水が廃熱ボイラに供給され、熱交換器で加熱された加圧給水が脱気器に循環供給され、さらに熱交換器を通過して減温された排ガスが後段の排ガス処理設備に供給される。通常、エコノマイザを通過した排ガスは、減温塔を経てバグフィルタ等の集塵機に送られるが、上述の構成によれば、熱交換器で十分に減温されるため、減温塔を設ける必要が無く、しかも廃熱が効率的に回収できるようになる。
【0018】
同第の特徴構成は、同請求項に記載した通り、上述の第一または第二特徴構成に加えて、各煙道に前記熱交換器が設置された複数の廃棄物処理炉が併設されるとともに、前記脱気器が共用されるように構成され、前記制御機構は、他の廃棄物処理炉が運転されている場合に、運転を再開する廃棄物処理炉に備えた制御対象熱交換器に前記脱気器から加圧給水を供給して排ガスを加熱する点にある。
【0019】
定期点検等で停止された廃棄物処理炉を再度立ち上げる際には、化石燃料を用いて炉を所定の燃焼状態に移行させることになる。その間、比較的低温で高湿の排ガスが煙道に流出するため、集塵機で捕捉された潮解性の物質が湿気を含み、例えば集塵機のフィルタに目詰まりが生じたり、低温腐食が生じたりする虞がある。そのため、従来電気ヒータ等の熱源と当該熱源で加熱された空気を集塵機の上流側煙道に導く送風ファンを備えて排ガスを加熱する必要があったが、脱気器からの加圧給水により制御対象熱交換器を流れる排ガスを加熱することができると、電気ヒータに要する電力を低減することができるようになる。他の廃棄物処理炉が運転されている場合には、脱気器からの加圧給水はある程度の高温、例えば約143℃程度に加熱されているので、熱交換器で放熱された加圧給水を脱気器に戻しても不都合は生じない。
【0020】
同第の特徴構成は、同請求項に記載した通り、上述の第特徴構成に加えて、前記制御機構は、前記熱交換器から排出された排ガスが第2の所定温度を上回るように、前記制御対象熱交換器への給水量を調整する点にある。
【0021】
このとき、制御機構によって、制御対象熱交換器から排出された排ガスが第2の所定温度を上回るように制御対象熱交換器への給水量が調整される結果、集塵機で捕捉された潮解性の物質が吸湿して不都合な事態を招くようなことが確実に回避できる。
【0022】
本発明による廃熱回収方法の特徴構成は、同請求項に記載した通り、廃熱ボイラを備えた廃棄物処理炉の廃熱回収方法であって、煙道に設置され、前記廃熱ボイラへ供給される脱気器の加圧給水が被加熱媒体として供給され、排ガスとの熱交換により加熱された被加熱媒体が脱気熱源として前記脱気器に循環供給される熱交換器に対して、前記熱交換器から排出された排ガスが第1の所定温度を下回らないように、前記熱交換器への給水量を調整するとともに、前記熱交換器での被加熱媒体の蒸気化を防止可能な所定圧力以上になるように、前記熱交換器から排出される被加熱媒体の排出量を調整する点にある。
【0023】
本発明による廃棄物処理炉の特徴構成は、同請求項に記載した通り、廃熱ボイラを備えた廃棄物処理炉であって、煙道に設置され、前記廃熱ボイラへ供給される脱気器の加圧給水が被加熱媒体として供給され、排ガスとの熱交換により加熱された被加熱媒体が脱気熱源として前記脱気器に循環供給される熱交換器と、前記熱交換器から排出された排ガスが第1の所定温度を下回らないように、前記熱交換器への給水量を調整するとともに、前記熱交換器での被加熱媒体の蒸気化を防止可能な所定圧力以上になるように、前記熱交換器から排出される被加熱媒体の排出量を調整する制御機構と、を含む廃熱回収設備を備えている点にある。
【発明の効果】
【0024】
以上説明した通り、本発明によれば、発電量の低下を招くことなく、排ガスの保有熱を有効に活用できる廃熱回収設備、廃熱回収方法及び廃棄物処理炉を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明による廃熱回収設備が組み込まれた廃棄物処理炉の説明図
図2】熱交換器の制御装置により実行される制御手順のフローチャート
図3】本発明による廃熱回収設備を備える廃棄物処理設備の運転態様の説明図
図4】本発明による熱交換器の機械的サイズを算出するためのモデルの説明図
図5】本発明による廃熱回収設備を備える廃棄物処理設備の運転再開時のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明による廃熱回収設備、廃熱回収方法及び廃棄物処理炉について説明する。
図1には、廃棄物処理炉の一例として同一構造の2基のストーカ式のゴミ焼却炉1,1’が併設された廃棄物処理設備が示されている。
【0027】
ホッパー2に投入された都市ゴミ等の処理対象物が、ホッパー2下部のプッシャー機構3により炉内に装入され、ストーカ機構4で攪拌及び押圧搬送されつつ一次燃焼され、燃焼ガスがその上方空間の二次燃焼部5で約950℃前後の温度で完全燃焼される。
【0028】
ストーカ機構4の下方に備えた一次燃焼空気供給機構6から一次燃焼空気が供給されてストーカ上で廃棄物が一次燃焼し、気化した可燃性ガスと一次燃焼で寄与しなかった空気が二次燃焼部5で二次燃焼する。二次燃焼部5の側壁には、二次燃焼部で未燃焼ガスと空気とを攪拌して完全燃焼させるための攪拌用ガスを供給するガス噴射ノズル群で構成されたガス供給機構7が設置されている。
【0029】
二次燃焼部5の上部には廃熱ボイラ8及び過熱器9が設置されている。廃熱ボイラ8及び過熱器9を通過した排ガスは、煙道に沿って上流側から順に配置されたエコノマイザ10、熱交換器11、集塵機の一例であるバグフィルタ12等を経て煙突15から排気される。
【0030】
エコノマイザ10で加熱されたボイラ給水が廃熱ボイラ8に供給されて蒸気が生成され、廃熱ボイラ8で生成された蒸気は、過熱器9で過熱されて高圧の蒸気溜め27に蓄積され、蒸気溜め27に蓄積された高温高圧の蒸気が発電設備20の蒸気タービン21に供給され、蒸気タービン21から抽気された中圧の蒸気が脱気用の熱源として脱気器25に供給されている。
【0031】
発電設備20には、蒸気タービン21と蒸気タービン21で回転駆動される発電機22等が設けられている。蒸気タービン21から排出される蒸気は復水器23で凝縮されて復水タンク24に貯留され、さらに脱気器25に導かれて復水に含まれる溶存酸素が脱気される。
【0032】
高圧蒸気溜め27、発電設備20、復水器23、復水タンク24、脱気器25の各設備が2基のゴミ焼却炉1,1’で共用され、一方が停止しても継続的に発電可能に構成されている。本実施形態では2基の廃棄物処理炉が併設され、各廃熱ボイラ8で生成された蒸気を利用する発電設備20等が共用される例を示しているが、2基以上の複数の廃棄物処理炉が併設されて、それらに備えた廃熱ボイラ8で生成された蒸気を利用する発電設備20等が共用されるように構成されていてもよい。また、各廃棄物処理炉に発電設備20が個別に設置され、復水器23、復水タンク24、脱気器25の各設備が共用されていてもよい。
【0033】
給水ポンプ31によって脱気器25からエコノマイザ10へ供給される加圧給水が、被加熱媒体として熱交換器11に分岐供給される。給水ポンプ31とは別の給水ポンプによって脱気器25から熱交換器11に加圧給水が直接供給されるように構成されていてもよい。
【0034】
熱交換器11で排ガスとの熱交換により加熱された加圧給水は、脱気器25に脱気用の熱源として循環供給される。熱交換器11を通過して減温された排ガスは、後段のバグフィルタ12等の排ガス処理設備に供給される。
【0035】
本発明による廃熱回収設備30は、上述の熱交換器11と熱交換器11への加圧給水の供給量等を制御する制御機構32,33を備えて構成されている。
【0036】
即ち、熱交換器11は煙道に設置され、廃熱ボイラ8へ供給される脱気器25の加圧給水が被加熱媒体として熱交換器11に供給され、排ガスとの熱交換により加熱された被加熱媒体が熱交換器11から脱気熱源として脱気器25に循環供給される。
【0037】
そして、制御機構32,33は、熱交換器11から排出された排ガスが第1の所定温度を下回らないように、熱交換器11への給水量を調整する。第1の所定温度とは、煙道に設置された設備が低温腐食する約130℃より高い温度であって、バグフィルタ12のろ布の損傷を招くような温度より低い温度であり、例えば140℃〜160℃の範囲に設定されている。
【0038】
さらに、制御機構32,33は、熱交換器11から排出される被加熱媒体が所定圧力以上になるように、熱交換器11からの被加熱媒体の排出量を調整する。
【0039】
尚、所定圧力とは、熱伝達率が向上して効率的に熱交換することができ、また、熱交換器11での被加熱媒体が蒸気化することを防止できる圧力以上であって、熱交換器11での被加熱媒体が噴破することを防止できる圧力以下の範囲の圧力であり、例えば3MPa〜4MPaの範囲に設定された圧力である。
【0040】
このような廃熱回収設備30を備えることにより、廃熱ボイラ8を経て煙道に流下する排ガスの保有熱を熱交換器11で効率的に回収でき、回収された熱がボイラ水の脱気用の熱源に用いることができるようになり、その結果、脱気のために蒸気タービン21から抽気する蒸気量を低減または不要にすることができ、発電効率を向上させることができる。しかも、減温塔を設けなくても熱交換器11で十分に減温された排ガスをそのままバグフィルタ12に流下させることができるようにもなる。
【0041】
以下、制御機構32,33を詳述する。
脱気器25から熱交換器11へ被加熱媒体を供給する経路に給水バルブ機構32a(32)が備えられ、熱交換器11から脱気器25へ被加熱媒体を循環供給させる経路に排水バルブ機構32b(32)が備えられている。バルブ機構32(32a,32b)は、例えば電動式のダイヤフラムバルブで構成されている。各バルブ機構32(32a,32b)は、それぞれ制御装置33(33a,33b)からの信号によって駆動される電動式のアクチュエータで開度が調整される。
【0042】
制御装置33(33a,33b)は、各バルブ機構32(32a,32b)の設置箇所から離れた中央管理室に備えた制御盤に組み込まれ、熱交換器11から排出される排ガスの温度を計測する温度センサや熱交換器11から排水される加圧水の圧力を計測する圧力センサの計測値が入力される信号入力部、各バルブ機構32a,32bに対する制御信号を出力する信号出力部、信号入力部からの入力信号に基づいて信号出力部から出力する制御信号を生成するPID演算等のフィードバック演算を行なう制御演算部等を備えている。
【0043】
制御装置33(33a,33b)は、それらの計測値が所定の目標値になるように各バルブ機構32a,32bの開度を自動制御する。また、制御装置33(33a,33b)には、各バルブ機構32a,32bの開度を手動制御するための操作部も備えている。
【0044】
制御装置33aは、熱交換器11の下流側煙道に設置された温度センサによって計測された排ガスの温度に基づいて、給水バルブ機構32aの開度を制御して、脱気器25から熱交換器11へ供給される被加熱媒体の給水量を調整する。
【0045】
焼却炉1で処理される廃棄物の性状は様々に変動するため、熱交換器11に流入する排ガス量も変動する。制御装置33aは、廃棄物の燃焼状態が大きく低下して排ガス量が減少した場合は、熱交換器11から排出された排ガスの温度が第1の所定温度を下回らないように、給水バルブ機構32aの開度を小さくして、脱気器25から熱交換器11へ供給される被加熱媒体の量を低減させる。
【0046】
このように、制御装置33aによって熱交換器11への給水量が調整されて、排ガスの温度が第1の所定温度を下回らないように調整することで、熱交換器11の下流側の煙道や煙道に配置された各処理設備での低温腐食の発生を未然に防止することができる。
【0047】
尚、バグフィルタ12の前段の減温塔を無くすために伝熱面積を大きくしたエコノマイザを備え、廃熱を効率的に回収するいわゆる低温エコを採用した廃棄物処理炉では、廃棄物の燃焼状態が大きく低下して排ガス量が低下すると、エコノマイザで必要以上に吸熱されて出口温度が低下するため、低温腐食が発生する虞もある。しかし、上述の構成によれば、いわゆる低温エコではない通常のエコノマイザを用いても、減温塔が不要になるばかりか、制御装置33aによって熱交換器11への給水量が調整されるので、低温腐食の発生を未然に防止することができる。
【0048】
廃棄物の燃焼状態が大きく上昇して排ガス量が増加した場合には、制御装置33aは、熱交換器11から排出された排ガスの温度が第1の所定温度より高く設定された第3の所定温度を上回らないように、給水バルブ機構32aの開度を大きくして、脱気器25から熱交換器11へ供給される被加熱媒体の量を増加させる。尚、第3の所定温度とは、第1の所定温度より高い温度で、熱交換器11から排出される排ガスの温度がこれより上昇するとバグフィルタのろ布の焼損が発生する温度より僅かに低い温度である。
【0049】
このように、制御装置33aによって熱交換器11への給水量が調整されて、排ガスの温度が第3の所定温度を上回らないように調整できるので、バグフィルタのろ布の焼損の発生を未然に防止することができる。
【0050】
制御装置33bは、被加熱媒体を熱交換器11から脱気器25へ循環供給する経路であって、排水バルブ機構32bの上流側に備えられた圧力センサによって計測された被加熱媒体の圧力に基づいて、例えば、当該圧力が所定圧力の範囲に入るように、排水バルブ機構32bの開度を制御して、熱交換器11から脱気器25へ循環供給される被加熱媒体の排出量を調整する。
【0051】
制御装置33bは、圧力センサによって計測された圧力が、3MPa〜4MPaの範囲内の所定圧力以上であれば、排水バルブ機構32bの開度を維持し、前記圧力が3MPa未満であれば、排水バルブ機構32bの開度を小さくして被加熱媒体の排出量を低減させて、排水バルブ機構32bの上流側の被加熱媒体の圧力を上昇させる。制御装置33bは、前記圧力が4MPaより大きければ、排水バルブ機構32bの開度を大きくして被加熱媒体の排出量を増加させて、排水バルブ機構32bの上流側の被加熱媒体の圧力を低下させる。
【0052】
図2には、制御装置33(33a、33b)による各バルブ機構32a,32bの制御ステップが示されている。
制御装置33aは、熱交換器11を通過した排ガスの温度が、熱交換器11の下流側煙道に備えられた設備の低温腐食を回避するために設定された第1の所定温度、例えば160℃より低下すると(S1,Y)、給水バルブ機構32aを閉塞或いは開度を小さくして熱交換器11へ供給される被加熱媒体の供給量を低減させて、排ガスの温度の低下を回避する(S2)。
【0053】
排ガスの温度が第1の所定温度以上であり、第1所定温度より高く設定された第3の所定温度以下である場合は(S3,N)、給水バルブ機構32aの開度を維持する(S5)。排ガスの温度が第3の所定温度より高温である場合には(S3,Y)、給水バルブ機構32aの開度を大きくして熱交換器11へ供給される加圧水の供給量を増加させて、排ガスの温度を第3の所定温度以下に低下させる(S4)。
【0054】
制御装置33bは、熱交換器11から脱気器25へ供給される被加熱媒体(加圧水)の圧力が所定圧力範囲、例えば3MPaから4MPaの範囲に入っていれば(S6,Y)、排水バルブ機構32bの開度を維持する(S7)。
【0055】
制御装置33bは、前記圧力が所定圧力範囲より高ければ(S8,Y)、所定圧力範囲に維持されるように、排水バルブ機構32bの開度を大きくして(S9)、熱交換器11から脱気器25への加圧水の供給量を増加させて、熱交換器の噴破を防止する。前記圧力が所定圧力範囲より低ければ(S8,N)、所定圧力範囲に維持されるように、排水バルブ機構32bの開度を小さくして(S10)、熱交換器11から脱気器25への加圧水の供給量を低減させて、熱交換器内で加圧水が蒸気化すること及び被加熱媒体が噴破することを防ぐ。
【0056】
ステップS2,S4では、例えば、現在の排ガス出口温度と排ガス出口目標温度との偏差等に基づき給水バルブ機構32aの開度目標値を算出してその目標値に制御するPID制御を行うことができる。例えば上述した低温腐食回避のための下限温度である第1の所定温度を排ガス出口目標温度に設定することができる。
【0057】
ステップS9,S10では、例えば、現在の加圧水の圧力と、所定圧力範囲に設定された目標圧力との偏差等に基づきバルブ機構の開度目標値を算出してその目標値に制御するPID制御を行うことができる。
【0058】
図1及び図2を用いた説明では、符合33a,33bで示した2つの別々のブロックで一つの制御装置33が構成されているが、各ブロックが合体した1つのブロックで一つの制御装置で構成されていてもよいし、各ブロックに対応した個別の制御装置で構成されていてもよい。
【0059】
また、各ブロックが個別の制御装置で構成される場合には、制御装置を接続する信号線で互いの制御情報を送受信してもよい。例えば、制御装置33aは、制御装置33bから排水バルブ機構32bの絞り量を受信することにより、被加熱媒体の流量を獲得することができる
【0060】
以下、図3に基づいて、本発明による廃熱回収設備30を備える廃棄物処理設備の運転態様を説明する。
焼却炉1の二次燃焼部5には、ガス供給機構7によって攪拌用ガスが供給されている。約800℃〜1000℃の範囲で燃焼する二次燃焼部5に設置された廃熱ボイラ8及び過熱器9によって得られた4MPa,400℃の過熱蒸気が、蒸気溜め27を介して蒸気タービン21に供給され、発電機22が駆動される。
【0061】
蒸気タービン21からの排蒸気は、復水器23で凝縮され、復水タンク24に回収される。その後、復水タンク24に回収された約60℃の復水は、脱気器25に給水されて脱気され、143℃に加熱されたボイラ給水としてエコノマイザ10及び熱交換器11に供給される。
【0062】
エコノマイザ10に供給されたボイラ給水は200℃に加熱された後、廃熱ボイラ8に供給される。熱交換器11に供給されたボイラ給水は、圧力3MPa〜4MPa、温度160℃程度に加熱された後、脱気器25へ循環供給される。
【0063】
廃熱ボイラ8及び過熱器9で熱交換されて約350℃程度に減温された排ガスは、エコノマイザ10で210℃〜180℃の範囲に減温され、さらに熱交換器11で180℃〜160℃の範囲に減温された後に、バグフィルタ12で除塵され、さらに洗煙装置等で酸性ガス成分が除去された後に煙突15から排気される。
【0064】
図4(a)には、一般的なエコノマイザを用いて、350℃の排ガスにより143℃のボイラ給水が200℃に予熱され、排ガスが210℃に減温される場合の例が示されている。図4(b)には、高効率低温エコノマイザを用いて、350℃の排ガスにより143℃のボイラ給水が約210℃に予熱され、排ガスが180℃に減温される場合の例が示されている。
【0065】
前者によれば、エコノマイザとその後段のバグフィルタとの間に減温塔、例えば排ガスに水を噴霧して減温させる減温塔を設置して排ガス温度を減温させる必要があるが、後者によれば減温塔を設ける必要がなく、廃熱が効率的に回収できる。
【0066】
図4(c)には、エコノマイザの後段に本発明の廃熱回収設備の熱交換器を配置して、350℃の排ガスにより143℃のボイラ給水がエコノマイザで約200℃に予熱され、排ガスが210℃に減温され、さらに210℃の排ガスにより143℃のボイラ給水が熱交換器で約160℃に予熱され、排ガスが180℃に減温される例が示されている。
【0067】
吸収熱量Q,総括伝熱係数K,伝熱面積A,温度T,対数平均温度差ΔT,比熱C,流量W,排ガスの熱交換器への入口温度Tg1,出口温度Tg2,熱媒体の入口温度Tw2,出口温度Tw1とすると、以下の近似式が成立する。
[数式1]
Q=KAΔT
[数式2]
Q={WCT(出口)-WCT(入口)}∝(T(出口)-T(入口))
[数式3]
ΔT={(Tg1-Tw1)-(Tg2-Tw2)}/{ln(Tg1-Tw1)-ln(Tg2-Tw2)}
ここに、K及びWCは略一定と仮定している。
【0068】
図4(a),(b),(c)それぞれの場合の対数温度差ΔTを求めて、数式2からQを求め、数式1にQ及びΔTを代入してKAを求めると、図4(a)ではKA=1.359、図4(b)ではKA=2.218、図4(c)では前段がKA=1.359、後段がKA=0.662と求まる。これらの値は伝熱部の総面積に相当する値となる。
【0069】
図4(a)の基本的なエコノマイザの伝熱面積を基準にすると、図4(b)の高効率低温エコノマイザでは、伝熱面積が約1.63倍と大型になり、図4(c)の本発明の熱交換器と従来のエコノマイザを結合した場合には、伝熱面積が約1.48倍となる。つまり、図4(b)の高効率低温エコノマイザよりは小さな伝熱面積で排ガス温度を同等に減温することができるのである。
【0070】
廃棄物処理炉の一例としてストーカ式の焼却炉1、1’が2基併設された廃棄物処理設備では、焼却炉1’も上述した焼却炉1についての説明と同様の運転がなされている。尚、焼却炉が1基のみ備えられた廃棄物処理設備でもあっても、上述の焼却炉1について運転と同様の運転が可能である。
【0071】
廃棄物処理設備の定期点検時に2基の焼却炉の双方が同時に停止されることはなく、少なくとも何れか一方が運転される。廃棄物処理設備に搬入される都市ゴミを常時焼却処理する必要があり、またそのため発電設備20を稼動させる必要があるためである。
【0072】
定期点検等で停止された焼却炉を再度立ち上げる際には、助燃バーナに化石燃料を供給して炉を所定の燃焼状態に移行させる立上げ運転が必要になる。その間、比較的低温で高湿の排ガスが煙道に流出するために、バグフィルタ12で捕捉された潮解性の物質が湿気を含み、フィルタに目詰まりが生じたり、低温腐食が発生する虞がある。
【0073】
そのため、図1に示すように、ゴミ焼却炉1には、電気ヒータH等の加熱源と誘引送風機19が設けられている。誘引送風機19で煙道の下流側の排ガスを誘引して電気ヒータHで加熱して、バグフィルタの上流側に供給することで、上述の不都合を回避している。
【0074】
しかし、本発明による廃熱回収設備30を用いれば、このような立上げ運転時の排ガス加熱用の電力を低減するために、稼働中のゴミ焼却炉の熱交換器11で加熱されている加圧給水の保有熱で、立上げ運転するゴミ焼却炉の排ガスを加熱することができる。
【0075】
即ち、各煙道に熱交換器11が設置され、各熱交換器11を制御する制御機構32,33をそれぞれに備えた複数の廃棄物処理炉1,1’が併設されるとともに、脱気器25が共用されるように構成された廃棄物処理設備では、その廃棄物処理設備に組み込まれた廃熱回収設備30の制御機構32,33は、他の廃棄物処理炉1’が運転されていることを前提として、運転を再開する廃棄物処理炉1に備えた熱交換器11に脱気器25から加圧給水を供給して排ガスを加熱するように構成されている。
【0076】
具体的に、制御機構32a,33aは、給水ポンプ31を駆動して、脱気器25から熱交換器11に加圧給水を供給して、煙道を流下して熱交換器11に流入する排ガスを加熱する。制御装置33aは熱交換器11の出口部の排ガス温度が第2の所定温度を上回るように、バルブ機構32aを制御して熱交換器への給水量を調整する。尚、このとき、バルブ機構32bは開放されていてもよいし、所定の開度に調整されていてもよい。
【0077】
熱交換器11で排ガスを所定温度に加熱するために使われる熱量「Q(給)」は、本来蒸気タービンに供給される熱量であり、電気ヒータHで排ガスを所定温度に加熱するために必要な熱量「Q(電)」と等価である。
[数式4]
Q(給)=Q(電)
【0078】
熱量「Q(給)」が蒸気タービンに供給される場合の発電量「Q(発)」は、蒸気タービン機械効率「η(機械)」と発電機効率「η(発電機)」を考慮すれば、次式で表される。
[数式5]
Q(発)=Q(給)×η(機械)×η(発電機)
【0079】
「η(機械)」、「η(発電機)」は共に1より小さく、η(機械)×η(発電機)=0.95程度となるので、次式が成り立つ。
[数式6]
Q(発)<Q(給)
【0080】
数式4,6から次式が成り立ち、本来発電のために蒸気タービンに供給される熱量で発電される電力Q(発)よりも、電気ヒータで加熱に使用される電力Q(電)の方が大きくなること、つまり、本来発電のために蒸気タービンに供給される熱量で排ガスを加熱した方が、電気ヒータで排ガスを加熱するよりも効率がよいことが示されるのである。
[数式7]
Q(発)<Q(給)=Q(電)
【0081】
このように、他の焼却炉1’が運転されている場合には、他の焼却炉1’の廃熱回収設備30によって脱気器25の加圧給水は十分な温度に維持されているため、立上げ時の焼却炉1の熱交換器11から排出された低温の加圧給水を脱気器25に戻しても特段の不都合は生じない。
【0082】
図5に示すように、熱交換器11から排出される排ガスの温度が第2の所定温度より低い場合には(SA1,Y)、制御装置33aは給水バルブ機構32aの開度をより大きくして、脱気器25から熱交換器11に供給される加圧給水の供給量を増加することにより(SA2)、排ガスへの伝熱量を上げる。
【0083】
排ガスの温度が第2の所定温度より高い場合には(SA1,N)、制御装置33aは給水バルブ機構32aの開度を絞って、脱気器25から熱交換器11に供給される加圧給水の供給量を減少することにより(SA3)、排ガスへの伝熱量を下げる。
【0084】
炉の立上げが終了した後は、給水バルブ機構32aを閉塞し、その後、図2に示した排ガスの保有熱を回収する制御に移行させる。
【0085】
第2の所定温度とは、バグフィルタで捕捉された潮解性の物質が、熱交換器から排出された排ガスの水分を吸湿して不都合な事態を招くようなことを回避するできる温度であり、少なくとも100℃以上、好ましくは110℃に設定されている。
【0086】
排ガスによる低温腐食の発生を回避する必要がある場合には、補助的に電気ヒータHを用いて、排ガス温度を第1の所定温度以上に加熱することが好ましい。このときの電気ヒータHの制御も制御機構32a,33aで行なうことが好ましい。
【0087】
上述した例では、複数の廃棄物処理炉1,1’のそれぞれの煙道に熱交換器11が設置され、各熱交換器11を制御する制御機構32,33をそれぞれに備えられた構成を説明したが、制御機構32,33を構成する制御装置33a,33bを一つ設けて、その一つの制御装置33a,33bが、各熱交換器11を制御するように構成してもよい。この場合、立上げ中の廃棄物処理炉の熱交換器11に対しては、排ガスの加熱制御を行い、運転中の廃棄物処理炉の熱交換器11二対しては、脱気器への熱源を供給する制御を行なうことになる。
【0088】
上述した実施形態では、何れも廃熱ボイラ8の下流側の煙道にエコノマイザ10を備えた構成を説明したが、エコノマイザ10を備えることなく、廃熱ボイラ8の下流側の煙道に熱交換器11のみを備えた構成でもよい。
【0089】
つまり、本発明による廃棄物処理炉は、煙道に設置され、廃熱ボイラ8へ供給される脱気器25の加圧給水が被加熱媒体として供給され、排ガスとの熱交換により加熱された被加熱媒体が脱気熱源として脱気器25に循環供給される熱交換器11と、熱交換器11から排出された排ガスが第1の所定温度を下回らないように、熱交換器11への給水量を調整する制御機構とを含む廃熱回収設備を備えている。
【0090】
上述した実施形態では、制御装置33によって各バルブ機構32a,32bが自動制御されて熱交換器11への加圧給水の供給量や熱交換器11の圧力が調整される例を説明したが、本発明による廃熱回収方法は、制御装置33による自動制御に限らず、熱交換器11の排ガス出口温度に基づいて排ガスが第1の所定温度を下回らないようにバルブ機構32aを手動調整し、熱交換器11の圧力が所定圧力以上になるようにバルブ機構32bを手動調整するものであってもよい。
【0091】
つまり、廃熱ボイラを備えた廃棄物処理炉の廃熱回収方法は、煙道に設置され、前記廃熱ボイラへ供給される脱気器の加圧給水が被加熱媒体として供給され、排ガスとの熱交換により加熱された被加熱媒体が脱気熱源として前記脱気器に循環供給される熱交換器に対して、前記熱交換器から排出された排ガスが第1の所定温度を下回らないように、前記熱交換器への給水量を調整するように構成されていればよい。
【0092】
同様に、炉の立上げ時に、給水ポンプ31を手動で起動して、脱気器25から熱交換器11に加圧給水を供給して、煙道を流下して熱交換器11に流入する排ガスを加熱してもよい。このとき、熱交換器11の出口部の排ガス温度が第2の所定温度を上回るようにバルブ機構32aを手動調整すればよい。
【0093】
上述した実施形態では、廃熱回収設備がストーカ式の焼却炉に組み込まれる例を説明したが、焼却炉は、ストーカ式に限らず、流動床式やロータリーキルン式等の他の方式の焼却炉であってもよい。また、廃棄物処理炉は、焼却炉に限らず、廃熱ボイラで発生した蒸気で発電する発電設備を備えた処理炉であればよく、例えばコークスベッド式溶融炉や表面溶融炉等の溶融炉であってもよい。
【0094】
上述した実施形態は、本発明の一具体例であり、当該記載により本発明の範囲が限定されるものではなく、廃熱回収設備の各部の具体的構成は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0095】
1:焼却炉(廃棄物処理炉)
5:二次燃焼部
7:ガス供給機構
8:廃熱ボイラ
10:エコノマイザ
11:熱交換器
20:発電設備
21:蒸気タービン
22:発電機
23:復水器
25:脱気器
30:廃熱回収設備
31:給水ポンプ
32,32a,32b:制御機構(バルブ機構)
33,33a,33b:制御機構(制御装置)
図1
図2
図3
図4
図5