(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6034168
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】技量判定装置およびこれを備えた車両
(51)【国際特許分類】
B62H 7/00 20060101AFI20161121BHJP
B62J 99/00 20090101ALI20161121BHJP
B60W 40/09 20120101ALI20161121BHJP
【FI】
B62H7/00
B62J99/00 Z
B60W40/09
【請求項の数】14
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2012-265187(P2012-265187)
(22)【出願日】2012年12月4日
(65)【公開番号】特開2014-108750(P2014-108750A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(72)【発明者】
【氏名】加畑 俊之介
(72)【発明者】
【氏名】森島 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】山口 昌志
【審査官】
加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/077638(WO,A1)
【文献】
特開2006−232172(JP,A)
【文献】
特開2008−298979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62H 7/00
B60W 40/09
B62J 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を操縦する技量を判定する技量判定装置であって、
車両の安定特性を評価することにより車両安定性得点を算出し、車両の旋回特性を評価することにより旋回性得点を算出し、前記車両安定性得点および前記旋回性得点を基に総合特性得点を算出する操縦技量評価部と、
道路の種類ごとに予め設定されている複数の補正条件情報を有し、前記車両安定性得点と前記旋回性得点と車両が走行する道路に対応する前記補正条件情報とに基づいて前記総合特性得点を補正する補正部と、
を備え、
第1軸上の座標を前記車両安定性得点とし、第2軸上の座標を前記旋回性得点とした2次元座標における点を得点位置とし、
前記補正部は、2次元座標上の得点位置に応じて前記総合特性得点を補正する技量判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の技量判定装置において、
前記車両安定性得点は安定下限値から安定上限値までの範囲の値をとり、
前記旋回性得点は旋回下限値から旋回上限値までの範囲の値をとり、
前記車両安定性得点が前記安定下限値であり、前記旋回性得点が前記旋回上限値であるときの2次元座標上の点を旋回調整基準位置とし、
前記旋回調整基準位置と前記得点位置の間の距離を旋回調整距離とし、
前記車両安定性得点が前記安定上限値であり、前記旋回性得点が前記旋回下限値であるときの2次元座標上の点を安定調整基準位置とし、
前記安定調整基準位置と前記得点位置の間の距離を安定調整距離として、
前記補正部は、前記旋回調整距離と前記補正条件情報に基づいて前記総合特性得点を調整する旋回調整、および、前記安定調整距離と前記補正条件情報に基づいて前記総合特性得点を調整する安定調整の少なくともいずれかを行う技量判定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の技量判定装置において、
前記旋回調整は、前記旋回調整距離と前記補正条件情報に基づいて旋回調整点を算出し、前記総合特性得点に前記旋回調整点を加える技量判定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の技量判定装置において、
前記補正条件情報は、少なくとも市街地道路、山道、及び、サーキットごとに設定されており、
前記旋回調整距離が同じ値であるとき、市街地道路の場合では山道の場合よりも前記旋回調整点が小さく、かつ、山道の場合ではサーキットの場合よりも前記旋回調整点が小さい技量判定装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の技量判定装置において、
前記旋回調整距離が大きくなるに従って、前記旋回調整点が大きくなる技量判定装置。
【請求項6】
請求項3から5のいずれかに記載の技量判定装置において、
前記旋回調整点は負の値をとる技量判定装置。
【請求項7】
請求項2に記載の技量判定装置において、
前記安定調整は、前記安定調整距離と前記補正条件情報に基づいて安定調整点を算出し、前記総合特性得点に前記安定調整点を加える技量判定装置。
【請求項8】
請求項7に記載の技量判定装置において、
前記補正条件情報は、少なくとも市街地道路、山道、及び、サーキットごとに設定されており、
前記安定調整距離が同じ値であるとき、市街地道路の場合では山道の場合よりも前記安定調整点が大きく、かつ、山道の場合ではサーキットの場合よりも前記安定調整点が大きい技量判定装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載の技量判定装置において、
前記安定調整距離が大きくなるに従って、前記安定調整点が小さくなる技量判定装置。
【請求項10】
請求項7から9のいずれかに記載の技量判定装置において、
前記安定調整点は正の値をとる技量判定装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の技量判定装置において、
道路の種類を指定するための入力部を備え、
前記補正部は、前記入力部によって指定された道路の種類に対応する前記補正条件情報を選択する技量判定装置。
【請求項12】
車両を操縦する技量を判定する技量判定装置であって、
車両の安定特性を評価することにより車両安定性得点を算出し、車両の旋回特性を評価することにより旋回性得点を算出し、前記車両安定性得点および前記旋回性得点を基に総合特性得点を算出する操縦技量評価部と、
道路の種類ごとに予め設定されている複数の補正条件情報を有し、前記車両安定性得点と前記旋回性得点と車両が走行する道路に対応する前記補正条件情報とに基づいて前記総合特性得点を補正する補正部と、
ライダーによって操作され、道路の種類を指定するための入力部と、
を備え、
前記補正部は、前記入力部によって指定された道路の種類に対応する前記補正条件情報を選択する技量判定装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の技量判定装置において、
前記補正部によって補正された総合特性得点に関する情報を出力する情報出力部をさらに備える技量判定装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載の技量判定装置を備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、技量判定装置およびこれを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ライダーの技量を判定する装置を開示する。この装置は、第1車両状態検出器と、第2車両状態検出器と、成分分離部と、車両安定特性判定部と、旋回特性判定部と、総合特性判定部とを備えている。
【0003】
第1車両状態検出器は、ヨーレート等を検出する。第2車両状態検出器は、ロールレート等を検出する。成分分離部は、第1、第2車両状態検出器の各検出値を、修正成分と予測成分に分離する。車両安定特性判定部は、第1車両状態検出器の検出値の修正成分および予測成分の比率に基づいて車両安定性得点を算出する。旋回特性判定部は、第2車両状態検出器の検出値の予測成分に基づいて旋回性得点を算出する。総合特性判定部は、車両安定性得点および旋回性得点の一方または双方に基づいて総合特性得点を算出する。
【0004】
また、この装置は、カーブサイズ推定部を備え、鞍乗型車両が走行するカーブの曲率の大きさに応じて車両安定性得点や旋回性得点を補正する。同様に、路面状態推定部を備え、鞍乗型車両が走行する路面状態に応じて車両安定性得点や旋回性得点を補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2011/077638号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
車両の使用シーンや走行する道路は、多岐にわたる。使用シーンとしては、市街地の走行、ツーリング走行やサーキットの走行などが例示される。走行する道路としては、例えば、市街地道路、山道またはサーキットなどが例示される。
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術では、鞍乗型車両の使用シーンや走行する道路の種類に関係なく、ライダーの技量を判定する。したがって、ライダーの技量を的確に判定できない場合がある。
【0008】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、道路の種類に応じて車両の操縦技量を適切に判定することができる技量判定装置およびこれを備えた車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明は、車両を操縦する技量を判定する技量判定装置であって、車両の安定特性を評価することにより車両安定性得点を算出し、車両の旋回特性を評価することにより旋回性得点を算出し、前記車両安定性得点および前記旋回性得点を基に総合特性得点を算出する操縦技量評価部と、道路の種類ごとに予め設定されている複数の補正条件情報を有し、前記車両安定性得点と前記旋回性得点と車両が走行する道路に対応する前記補正条件情報とに基づいて前記総合特性得点を補正する補正部と、を備える技量判定装置である。
【0010】
[作用・効果]本発明によれば、補正部は複数の補正条件情報を有し、車両が走行する道路に対応する単一の補正条件情報を用いて総合特性得点を補正する。これにより、道路の種類に応じて総合特性得点を適切に補正できる。さらに、補正部は、車両安定性得点及び旋回性得点の両方に基づいて総合特性得点を補正するので、総合特性得点をより的確に補正することができる。補正後の総合特性得点によれば、道路の種類に応じて車両の操縦技量を適切に判定することができる。
【0011】
上述した発明において、第1軸上の座標を前記車両安定性得点とし、第2軸上の座標を前記旋回性得点とした2次元座標における点を得点位置とし、前記補正部は、2次元座標上の得点位置に応じて前記総合特性得点を補正することが好ましい。2次元座標を用いることによって、車両安定性得点及び旋回性得点の両方を1つの得点位置で表現できる。そして、2次元座標上における得点位置の位置に応じて補正を行うので、車両安定性得点及び旋回性得点という2つの因子を同時に考慮した補正を適切に行うことができる。
【0012】
また、上述した発明において、前記車両安定性得点は安定下限値から安定上限値までの範囲の値をとり、前記旋回性得点は旋回下限値から旋回上限値までの範囲の値をとり、前記車両安定性得点が前記安定下限値であり、前記旋回性得点が前記旋回上限値であるときの2次元座標上の点を旋回調整基準位置とし、前記旋回調整基準位置と前記得点位置の間の距離を旋回調整距離とし、前記車両安定性得点が前記安定上限値であり、前記旋回性得点が前記旋回下限値であるときの2次元座標上の点を安定調整基準位置とし、前記安定調整基準位置と前記得点位置の間の距離を安定調整距離として、前記補正部は、前記旋回調整距離と前記補正条件情報に基づいて前記総合特性得点を調整する旋回調整、および、前記安定調整距離と前記補正条件情報に基づいて前記総合特性得点を調整する安定調整の少なくともいずれかを行うことが好ましい。
【0013】
旋回調整基準位置は、車両安定性得点が最小であり、旋回調整点が最大である。このため、旋回調整基準位置に近いほど、「技量を超えた操縦」である度合い(傾向)が強くなると考えられる。すなわち、旋回調整距離は、「技量を超えた操縦」の度合いを示すと考えられる。そして、旋回調整によれば、「技量を超えた操縦」の度合いに応じて総合特性得点を好適に調整できる。
【0014】
他方、安定調整基準位置は、車両安定性得点が最大であり、旋回調整点が最小である。このため、安定調整基準位置に近いほど、「堅実な操縦」である度合い(傾向)が強くなると考えられる。すなわち、安定調整距離は、「堅実な操縦」の度合いを示すと考えられる。そして、安定調整によれば、「堅実な操縦」の度合いに応じて総合特性得点を好適に調整できる。
【0015】
また、上述した発明において、前記旋回調整は、前記旋回調整距離と前記補正条件情報に基づいて旋回調整点を算出し、前記総合特性得点に前記旋回調整点を加えることが好ましい。これによれば、旋回調整を簡易な処理で実現できる。
【0016】
また、上述した発明において、前記補正条件情報は、少なくとも市街地道路、山道、及び、サーキットごとに設定されており、前記旋回調整距離が同じ値であるとき、市街地道路の場合では山道の場合よりも前記旋回調整点が小さく、かつ、山道の場合ではサーキットの場合よりも前記旋回調整点が小さいことが好ましい。言い換えれば、旋回調整点がこのような関係となるように、市街地道路用の補正条件情報、山道用の補正条件情報およびサーキット用の補正条件情報がそれぞれ設定されていることが好ましい。これによれば、「技量を超えた操縦」の度合いが同じであっても、市街地道路を走行している場合には山道やサーキットを走行している場合に比べて補正後の総合特性得点を低くできる。裏返せば、サーキットを走行する場合には、市街地道路や山道を走行する場合に比べて旋回性を重視した技量判定を行うことができる。
【0017】
また、上述した発明において、前記旋回調整距離が大きくなるに従って、前記旋回調整点が大きくなることが好ましい。言い換えれば、旋回調整距離と旋回調整点がこのような関係となるように補正条件情報が設定されていることが好ましい。これによれば、「技量を超えた操縦」の傾向が強いほど、補正後の総合特性得点を低くできる。
【0018】
また、上述した発明において、前記旋回調整点は負の値をとることが好ましい。これによれば、旋回調整によって総合特性得点を減点できる。
【0019】
また、上述した発明において、前記安定調整は、前記安定調整距離と前記補正条件情報に基づいて安定調整点を算出し、前記総合特性得点に前記安定調整点を加えることが好ましい。これによれば、安定調整を簡易な処理で実現できる。
【0020】
また、上述した発明において、前記補正条件情報は、少なくとも市街地道路、山道、及び、サーキットごとに設定されており、前記安定調整距離が同じ値であるとき、市街地道路の場合では山道の場合よりも前記安定調整点が大きく、かつ、山道の場合ではサーキットの場合よりも前記安定調整点が大きいことが好ましい。言い換えれば、安定調整点がこのような関係となるように、市街地道路用の補正条件情報、山道用の補正条件情報およびサーキット用の補正条件情報がそれぞれ設定されていることが好ましい。これによれば、「堅実な操縦」の度合いが同じであっても、市街地道路を走行している場合には山道やサーキットを走行している場合に比べて補正後の総合特性得点を高くできる。すなわち、市街地を走行する場合には山道やサーキットを走行する場合に比べて、堅実性(安定性)を重視した技量判定を行うことができる。
【0021】
また、上述した発明において、前記安定調整距離が大きくなるに従って、前記安定調整点が小さくなることが好ましい。言い換えれば、安定調整距離と安定調整点がこのような関係となるように補正条件情報が設定されていることが好ましい。これによれば、「堅実な操縦」の傾向が強いほど、補正後の総合特性得点を高くできる。
【0022】
また、上述した発明において、前記安定調整点は正の値をとることが好ましい。これによれば、安定調整によって総合特性得点を加点できる。
【0023】
また、上述した発明において、道路の種類を指定するための入力部を備え、前記補正部は、前記入力部によって指定された道路の種類に対応する前記補正条件情報を選択することが好ましい。入力部を備えているので、補正部は、道路の種類に応じた1の補正条件情報を的確に選択することができる。
【0024】
上述した発明において、前記補正部によって補正された総合特性得点に関する情報を出力する情報出力部をさらに備えることが好ましい。情報出力部を備えているので、補正後の総合特性得点に関する情報を好適に提示できる。
【0025】
また、本発明は、請求項1から13のいずれかに記載の技量判定装置を備える車両である。
【0026】
[作用・効果]本発明によれば、技量判定装置によって車両の操縦技量を好適に判定することができる。
【0027】
なお、本明細書は、次のような技量判定装置に係る発明も開示している。
【0028】
(1)上述した発明において、前記補正条件情報は、旋回調整閾値を含み、前記補正部は、前記旋回調整距離が前記旋回調整閾値より小さい場合にのみ、前記旋回調整を行う技量判定装置。
【0029】
前記(1)に記載の発明によれば、「技量を超えた操縦」の傾向を有する場合に旋回調整を的確に行うことができる。
【0030】
(2)上述した発明において、前記補正条件情報は、安定調整閾値を含み、前記補正部は、前記安定調整距離が前記安定調整閾値より小さい場合にのみ、前記旋回調整を行う技量判定装置。
【0031】
前記(2)に記載の発明によれば、「堅実な操縦」の傾向を有する場合に安定調整を的確に行うことができる。
【0032】
(3)上述した発明において、前記旋回調整閾値と前記安定調整閾値の和が前記旋回調整基準位置と前記安定調整基準位置との距離以下になるように、前記旋回調整閾値と前記安定調整閾値がそれぞれ設定されている技量判定装置。
【0033】
前記(3)に記載の発明によれば、旋回調整を行う得点位置の範囲と安定調整を行う得点位置の範囲が重複しない。よって、旋回調整および安定調整の双方を行う場合であっても、同じ総合特性得点に旋回調整および安定調整を重ねて実行することを防止できる。
【0034】
(4)上述した発明において、前記補正条件情報は、前記得点位置に基づいて前記旋回調整点を算出するためのパラメータである技量判定装置。
【0035】
前記(4)に記載の発明によれば、補正部は旋回調整点を好適に算出できる。
【0036】
(5)上述した発明において、前記補正条件情報は、前記得点位置に基づいて前記安定調整点を算出するためのパラメータである技量判定装置。
【0037】
前記(5)に記載の発明によれば、補正部は安定調整点を好適に算出できる。
【0038】
(6)上述した発明において、前記補正条件情報は、前記車両安定性得点および旋回性得点と、前記旋回調整点とが対応づけられたマップである技量判定装置。
【0039】
前記(6)に記載の発明によれば、補正部は旋回調整点を好適に得ることができる。
【0040】
(7)上述した発明において、前記補正条件情報は、前記車両安定性得点および旋回性得点と、前記安定調整点とが対応づけられたマップである技量判定装置。
【0041】
前記(7)に記載の発明によれば、補正部は安定調整点を好適に得ることができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明に係る技量判定装置およびこれを備えた車両によれば、道路の種類に応じて車両の操縦技量を適切に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本実施例に係る自動二輪車の概略構成を示す側面図である。
【
図2】技量判定装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】車両安定性得点と旋回性得点を2次元座標で表した図である。
【
図5】車両安定性得点と旋回性得点を2次元座標で表した図である。
【
図6】距離と旋回調整点との関係を例示する図である。
【
図7】車両安定性得点および旋回性得点と、補正された総合特性得点との関係を例示する図である。
【
図8】技量判定の処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】技量判定の処理手順を示すフローチャートである。
【
図11】車両安定性得点と旋回性得点を2次元座標で表した図である。
【
図12】得点位置と旋回調整点および安定調整点の関係を例示する図である。
【
図13】技量判定の処理手順を示すフローチャートである。
【
図14】技量判定の処理手順を示すフローチャートである。
【実施例1】
【0044】
以下、図面を参照して本発明の実施例1を説明する。実施例1では、車両として自動二輪車を例に挙げて説明する。以下の説明において、前後、左右、上下とは、自動二輪車1に乗車したライダーにとっての「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」を意味する。
【0045】
1.自動二輪車の概略構成
図1は、本実施例に係る技量判定装置を備えた自動二輪車の概略構成を示す側面図である。自動二輪車1はメインフレーム2を備えている。メインフレーム2の前端上部にはヘッドパイプ3が設けられている。ヘッドパイプ3にはステアリングシャフト4が挿通されている。ステアリングシャフト4の上端部にはハンドル5が連結されている。ハンドル5の右側には、ブレーキレバー(図示省略)が配置されている。
【0046】
ステアリングシャフト4の下端部には一対の伸縮可能なフロントフォーク7が連結されている。ハンドル5の回転操作によってフロントフォーク7が揺動する。フロントフォーク7の下端部には前輪8が回転可能に取り付けられている。フロントフォーク7の伸縮により前輪8の振動が吸収される。また、フロントフォーク7の下端部にはブレーキ10が取り付けられ、ブレーキレバーの操作により前輪8の回転を制動する。前輪8の上部には、前輪カバー11がフロントフォーク7に固定されている。
【0047】
メインフレーム2の上部には、燃料タンク15とシート16とが前後に並んで保持されている。燃料タンク15の下方にあたる位置には、エンジン17と変速機18とがメインフレーム2に保持されている。変速機18は、エンジン17で発生した動力を出力するドライブ軸19を備えている。ドライブ軸19にはドライブスプロケット20が連結されている。
【0048】
メインフレーム2の下部後側にはスイングアーム21が揺動可能に支持されている。スイングアーム21の後端部には、ドリブンスプロケット22および後輪23が回転可能に支持されている。ドライブスプロケット20とドリブンスプロケット22との間には、チェーン24が懸架されている。エンジン17で発生した動力は、変速機18、ドライブ軸19、ドライブスプロケット20、チェーン24およびドリブンスプロケット22を介して後輪23に伝達される。
【0049】
シート16の下部には、ECU(Electronic Control Unit;電子制御ユニット)25と演算処理装置28が設けられている。ECU25は、自動二輪車1の各部の動作を制御する。演算処理装置28は、CPUと記憶媒体等で構成されており、ライダーの操縦技量を判定する処理等を行う。なお、本実施例1では、演算処理装置28はECU25とは別個に設けられているが、これに限られない。例えば、ECU25によって演算処理装置28を実現してもよい。
【0050】
また、自動二輪車1は、車両の走行状態を検出する状態量検出部31を備える。状態量検出部31は、ジャイロスコープ33と、ステアリング角度センサ34と、ストロークセンサ35と、前輪8に設けられた車輪速センサ36、自動二輪車1の位置を測定するGPS(Global Positioning System)37とを有する。
【0051】
ジャイロスコープ33は、燃料タンク15上に配置されている。ジャイロスコープ33は自動二輪車1のヨー、ロール、およびピッチの3軸方向の角速度および角度を検出する。すなわち、自動二輪車1のヨーレート、ヨー角度、ロールレート、ロール角度、ピッチレート、およびピッチ角度を検出する。
【0052】
ステアリング角度センサ34は、フロントフォーク7の上端に設けられ、ステアリングシャフト4の回転角であるステアリング角度を検出する。
【0053】
ストロークセンサ35は、フロントフォーク7に設けられ、フロントフォーク7の伸縮量を検出する。さらにこの伸縮量を基にフロントフォーク7のキャスタ角を算出する。フロントフォーク7が油圧式のサスペンションで伸縮する場合は、ストロークセンサ35は、サスペンションの油圧を検出することでキャスタ角を算出してもよい。
【0054】
車輪速センサ36は、前輪8の回転速度を検出する。さらに、この回転速度を基に自動二輪車1の車速を算出する。
【0055】
GPS37は燃料タンク15の前方に配置されており、自動二輪車1の位置情報を検出する。
【0056】
カーブを曲がる際に、ライダーが自動二輪車1のハンドル5を操舵すると、自動二輪車1のヨー角度、ヨーレートおよびステアリング角度が変化する。また、ライダーが自動二輪車1の車体をカーブの中心方向に傾けると、自動二輪車1のロール角度およびロールレートが変化する。また、カーブに入る前またはカーブ走行中にライダーがブレーキレバーを操作して自動二輪車1が減速すると、フロントフォーク7が縮む。このフロントフォーク7の縮みにより、自動二輪車1のピッチ角度、ピッチレート、およびキャスタ角度が変化する。
【0057】
自動二輪車1のこれら、ヨー角度、ヨーレート、ロール角度、ロールレート、ピッチ角度、ピッチレート、キャスタ角度、ステアリング角度、車速および位置情報を車両状態量と呼ぶ。
【0058】
自動二輪車1は他にも、操縦技量の判定結果を表示するためのモニタ41を備える。モニタ41はハンドル5の前方に設置されている。モニタ41は、スマートフォンであってもよい。スマートフォンによってモニタ41を構成する場合には、スマートフォンと無線通信機40との間で情報が伝達される。モニタ41は、本発明における情報出力部に相当する。
【0059】
モニタ41の周辺には、道路の種類を入力するための入力部43が配置されている。入力部43は、ライダーによって操作される。本実施例1では、入力部43によって、市街地道路、山道およびサーキットのいずれかを道路の種類として指定することができる。
【0060】
また、ライダーが装着するヘルメット38には、音情報を出力するスピーカ42が取り付けられている。なお、スピーカ42の代わりにヘッドフォンを採用してもよい。スピーカ42は、本発明における情報出力部に相当する。無線通信機39、40は、自動二輪車1とヘルメット38の間で情報を伝達する。無線通信機39はヘルメット38に取り付けられ、無線通信機40は自動二輪車1(シート16の下部)に取り付けられている。
【0061】
上述した演算処理装置28、無線通信機39、40、モニタ41、スピーカ42および入力部43は、技量判定装置30を構成する。
【0062】
2.技量判定装置の概略構成
次に
図1および
図2を参照しながら技量判定装置30の構成を説明する。
図2は、技量判定装置の構成を示す機能ブロック図である。
【0063】
演算処理装置28は、機能的に、操縦技量評価部32、補正部44、提示情報データベース49、出力制御部50に分けられる。操縦技量評価部32は、ライダーが自動二輪車1を操縦する技量を評価する。具体的には、車両の安定特性を評価することにより車両安定性得点S
vを算出し、車両の旋回特性を評価することにより旋回性得点T
vを算出し、これら車両安定性得点S
vおよび旋回性得点T
vを基に総合特性得点Gを算出する。
【0064】
操縦技量評価部32は、メモリ51、旋回運動判別部52、成分分離部53、車両安定特性評価部54、旋回特性評価部55および総合特性評価部57を有する。また、操縦技量評価部32は、ジャイロスコープ33、ステアリング角度センサ34、ストロークセンサ35、車輪速センサ36、および、GPS37と通信可能に接続される。状態量検出部31で検出された各車両状態量は、操縦技量評価部32に入力されてメモリ51に時系列にそれぞれ保管される。以下、順番に説明する。
【0065】
2.1.操縦技量評価部32〜旋回運動判別
旋回運動判別部52では、自動二輪車1がライダーの技量評価の対象となる旋回運動を実施したかどうかを判別する。ここで、旋回運動の判断基準として、自動二輪車1のヨーレートがある一定の値以上であり、かつ、ある一定の時間以上持続した場合を例に説明する。上記の条件が満たされない場合、旋回運動判別部52は、自動二輪車1が旋回運動を実施したとは判別しない。
【0066】
旋回運動判別部52は、ジャイロスコープ33より入力されるヨーレートの検出値の絶対値から、旋回運動区間Yを判別する。すなわち、旋回運動判別部52は、自動二輪車1のヨーレートの検出値の絶対値が閾値X
tを超えた時点から再び閾値X
tを下回る時点までの区間であり、かつ、その区間の持続時間が最低持続時間Y
min以上であれば、その区間を旋回運動区間Yと判別する。自動二輪車1のヨーレートの検出値が閾値X
tを超えた時点から再び閾値X
tを下回る時点までの区間が最低持続時間Y
minに満たない場合、旋回運動判別部52は、この区間を旋回運動区間Yと判別しない。閾値X
tの値は、自動二輪車1の車種により適宜設定すればよい。また、上述したのは、ヨーレートを用いて旋回運動区間Yを判別する方法であったが、他の方法を用いて旋回運動区間Yを判別してもよい。
【0067】
旋回運動判別部52が旋回運動区間Yを判別すると、旋回運動区間Y中にメモリ51に保管された各車両状態量の検出値が成分分離部53へ送られる。成分分離部53はローパスフィルタとバンドパスフィルタとで構成される。成分分離部53へ入力された各検出値は、ローパスフィルタおよびバンドパスフィルタでフィルタ処理が実施される。成分分離部53にて成分分離可能な車両状態量として、ヨーレート、ヨー角度、ロールレート、ロール角度、ピッチレート、ピッチ角度、ステアリング角度、キャスタ角度が挙げられる。ここでは、ロールレートを例に挙げてフィルタ処理による成分分離の説明をする。
【0068】
成分分離部53に入力されるロールレートの全周波数帯域データが、ローパスフィルタおよびバンドパスフィルタにてフィルタ処理が実施される。ローパスフィルタでは予め定められた値である閾値周波数Fc1よりも高い高周波数成分を除去する。これより、低周波数帯域成分がローパスフィルタより出力される。バンドパスフィルタでは、閾値周波数Fc1以下の低周波数成分を除去するとともに、閾値周波数Fc2以上のノイズ成分を除去する。これより、高周波数帯域成分がバンドパスフィルタより出力される。閾値周波数Fc2以上の周波数成分は、ノイズ成分であるのでライダーの特性判断に関係しない。
【0069】
メモリ51に保管された各検出値の時系列データがローパスフィルタおよびバンドパスフィルタによってフィルタ処理を実施されることで、各検出値が低周波数帯域成分と高周波数帯域成分とに分離される。閾値周波数Fc1は、判定したい特性に応じて設定してもよい。例えば、ライダーの特性を判定する場合には、初級者と上級者との差が最大となるように閾値周波数Fc1を設定すればよい。ただし、閾値周波数Fc2は閾値周波数Fc1よりも必ず大きい値でなければならない。
【0070】
2.2.操縦技量評価部32〜車両安定特性評価
車両安定特性評価部54には、ローパスフィルタおよびバンドパスフィルタによりフィルタ処理された自動二輪車1の旋回運動区間Yにおける各検出値が入力される。ここでは、ヨーレート、ロールレート、ピッチレートが入力される場合を例として挙げる。
【0071】
閾値周波数Fc1を境に分離された各レートの低周波数帯域は、ライダーがカーブを旋回する予測成分と解釈する。また、高周波数帯域は、ライダーがカーブを旋回する際に修正した修正成分と解釈する。次に、ヨーレート、ロールレート、ピッチレートのそれぞれについて、旋回運動区間Yにおける各レートの予測成分および修正成分の単位時間あたりの積分値の平均値を算出する。得られたそれぞれの予測成分に対応する値を修正成分に対応する値で除した値を1つの旋回運動区間Yにおけるヨーレート、ロールレート、ピッチレートの安定性指標(S
yaw,S
roll,S
pitch)とする。
【0072】
カーブに対して、滑らかなハンドル操作をライダーがすると低周波数帯域の絶対値の積分量が大きく、高周波帯域の絶対値の積分量が小さい。カーブ走行中に、ハンドル5を細かく操作してライダーが修正すると、高周波帯域の絶対値の積分量が大きくなり、低周波数帯域の絶対値の積分量がその分小さくなる。このように、低周波数帯域の絶対値の積分量と高周波帯域の絶対値の積分量との比率を指標とすることで、カーブ走行中のライダーの特性を得点化することができる。
【0073】
このように、自動二輪車1の旋回運動中のヨーレート、ロールレート、ピッチレートの低周波数帯域および高周波帯域の絶対値の積分量の比率を求めることで、自動二輪車1の車両安定性指標を算出することができる。さらに、上記3つの安定性指標(S
yaw,S
roll,S
pitch)の重みづけ線形和である車両安定性得点S
vを算出する。算出された車両安定性得点S
vは、提示情報データベース49、および総合特性評価部57へ出力される。
【0074】
このように、車両安定特性評価部54は、車両の安定特性を評価し、車両安定性得点S
vを算出する。
【0075】
2.3.操縦技量評価部32〜旋回特性評価
旋回特性評価部55は、ローパスフィルタによりフィルタ処理された自動二輪車1の旋回運動区間Yにおける各検出値が入力される。ここでは、ステアリング角度と、ロール角度と、ピッチ角度またはキャスタ角度とが入力される場合を例として挙げる。また、メモリ51から旋回特性評価部55に自動二輪車1の旋回運動区間Yにおける車速が入力される。
【0076】
各角度の低周波数帯域は、ライダーがカーブを旋回する予測成分と解釈する。カーブに対して、滑らかなハンドル操作をライダーがすると低周波数帯域の絶対値量が大きい。なお、各レートの周波数分離に用いる閾値周波数fc1は、各種角度ごとに異なる値を用いてもよい。旋回運動区間Yにおける予測成分の単位時間あたりの積分値の平均値をステアリング角度と、ロール角度と、ピッチまたはキャスタ角度とのそれぞれの角度について算出する。算出された値を、ステアリング角度、ロール角度、ピッチまたはキャスタ角度の旋回性指標T
steer、T
roll、T
pitch(caster)とする。
【0077】
また、入力された旋回運動区間Yの車速から旋回運動区間Yにおける平均車速T
speedを算出する。これら、3つの旋回性指標と平均車速の重み付け線形和を旋回性得点T
vとして算出する。旋回性得点T
vは、提示情報データベース49、および総合特性評価部57へ出力される。
【0078】
このように、旋回特性評価部55は、車両の旋回特性を評価し、旋回性得点T
Vを算出する。
【0079】
2.4.操縦技量評価部32〜総合特性判定
総合特性評価部57は、車両安定性得点S
vおよび旋回性得点T
vの重み付け線形和を算出することで旋回運動区間Yにおけるライダーの総合特性得点Gを得る。総合特性得点Gは、ライダーの車両安定特性および旋回特性を基にライダーの特性を総合的に評価するものである。
【0080】
以上をもって、総合特性得点G、車両安定性得点S
vおよび旋回性得点T
vと3つの指標によりライダーの操縦技量を評価することができる。各得点は連続値であるので、各得点により無段階にライダーの車両安定性、旋回性、および総合特性を評価することができる。また、算出された各得点をそのまま評価する他に、各得点をそれぞれ標準化した得点によりライダーの操縦技量を評価することもできる。
【0081】
このように、総合特性評価部57は、車両安定性得点S
vおよび旋回性得点T
vを基に、総合特性得点Gを算出する。
【0082】
2.5.補正部44
まず、
図3を参照して補正の目的を説明する。
図3は、車両安定性得点S
vと旋回性得点T
vを2次元座標で表した図である。
図3では、横軸の座標を車両安定性得点S
vとし、縦軸の座標を旋回性得点T
vとしている。説明の便宜上、車両安定性得点S
vおよび旋回性得点T
vはそれぞれ、0から100の値をとるものとする。ここで、車両安定性得点S
vと旋回性得点T
vの組み合わせに対応する2次元座標上の各点を、「得点位置」と呼ぶ。さらに、
図3では、総合特性得点Gが80、60、40、20となる各得点位置を連ねた曲線C1、C2、C3、C4を示す。なお、総合特性得点Gも、説明の便宜上、0から100の値をとるものとする。
【0083】
図示するように、車両安定性得点S
vが50であるラインL1と、旋回性得点T
vが50であるラインL2によって二次元座標を領域A1からA4に区分する。領域A2内における得点位置に応じた総合特性得点Gは比較的に高く、領域A3内における得点位置に応じた総合特性得点Gは比較的に低い。ただし、総合特性得点Gの値は、道路の種類と関係ない。
【0084】
例えば、強引に旋回したり、急激に旋回する走行(以下、「急旋回」という)では、旋回性得点T
vが高くなることがある(領域A1、A2)。この急旋回に対する総合特性得点Gは、道路の種類に応じて変わらない。しかし、現実には、サーキット走行では急旋回を高く評価したり、市街地走行では急旋回を低く評価したりする。
【0085】
また、旋回性得点T
vが高いにも関わらず車両安定性得点S
vが低いときには(領域A1)、「技量を超えた操縦」であると考えられる。このような走行に対する総合特性得点Gも、道路の種類に応じて変わらない。しかし、実際は、特に市街地道路では「技量を超えた操縦」を低く評価することが多い。
【0086】
これらの例示から明らかなように、操縦技量の評価は、本来、自動二輪車1の利用シーン(使用シーン)や自動二輪車1が走行する道路の種類によって変わる。このような知見のもと、総合特性得点Gを一層適切な指標に調整するために、総合特性得点Gを道路の種類に応じて補正する。
【0087】
そこで、本実施例1では、車両安定性得点S
vが低く、かつ、旋回性得点T
vが高いときには、基本的に総合特性得点Gを調整する(旋回調整)。この調整では、総合特性得点Gに旋回調整点を加える。本実施例では、旋回調整点は負である。このため、旋回調整を適宜に「減点処理」等という。調整する際、「市街地道路」の場合には「山道」の場合よりも総合特性得点Gを大きく減点し、「山道」の場合には「サーキット」の場合よりも大きく減点する。さらに車両安定性得点S
vが小さくなり、かつ、旋回性得点T
vが大きくなるに従って、総合特性得点Gを大きく減点する。
【0088】
以下、このような補正を行う補正部44の構成例を説明する。補正部44は、得点調整パラメータ部45と総合得点調整部46とを備えている。
【0089】
得点調整パラメータ部45は、道路の種類ごとに予め設定されている複数の補正条件情報を有している。得点調整パラメータ部45は、入力部43から道路の種類を示す情報(以下、適宜に「道路情報」という)を受け取る。そして、道路情報に対応する単一の補正条件情報を選択し、総合得点調整部46に出力する。
【0090】
図4を参照する。
図4は、予め設定されている補正条件情報を模式的に示す図である。補正条件情報は、道路の種類ごとに設定されている。本実施例1では、市街地道路、山道およびサーキットのそれぞれに、補正条件情報が関連付けられている。補正条件情報は、複数のパラメータのセットである。パラメータは、減点閾値ThTと最大調整量MTである。パラメータThT、MTの末尾には、市街地道路用、山道用およびサーキット用であることをそれぞれ示す「1」、「2」、「3」を付す。各パラメータThT、MTの値は、道路の種類に応じて予め設定されている。減点閾値ThTは、本発明における旋回調整閾値に相当する。
【0091】
本実施例1では、減点閾値ThT1、ThT2、ThT3は、次の関係を有する。
ThT1=ThT2=ThT3
【0092】
最大調整量MT1、MT2、MT3は、次の関係を有する。
MT1>MT2>MT3
【0093】
総合得点調整部46は、得点調整パラメータ部45から補正条件情報を受け取り、操縦技量評価部32から各種得点G、S
v、T
vを受け取る。総合得点調整部46は、補正条件情報と各種得点G、S
v、T
vとに基づいて、総合特性得点Gを補正する。
【0094】
図5を参照して、総合特性得点Gを補正する処理について具体的に説明する。
図5は、車両安定性得点S
vと旋回性得点T
vを2次元座標で表した図である。二次元座標の横軸および縦軸は、
図3と同じである。なお、横軸は本発明における第1軸に相当し、縦軸は本発明における第2軸に相当する。また、車両安定性得点S
vの下限値、上限値は、それぞれ0、100である。旋回性得点T
vの下限値、上限値は、それぞれ0、100である。
【0095】
図5において、点Pを、操縦技量評価部32から受け取った車両安定性得点S
vと旋回性得点T
vに対応する得点位置とする。また、車両安定性得点S
vが0であり、旋回性得点T
vが100である点Qを、「減点基準位置Q」と呼ぶ。減点基準位置Qは、本発明における旋回調整基準位置に相当する。
【0096】
得点位置Pと減点基準位置Qの間の距離DTは、式(1)によって与えられる。距離DTは、本発明における旋回調整距離に相当する。
【0097】
【数1】
【0098】
ここで、距離DTが減点閾値ThT未満であるときには、式(2)によって旋回調整点STの値を求める。そうでないときは、総合特性得点Gを調整しない。
【0099】
【数2】
【0100】
図5は、減点基準位置Qとの距離が減点閾値ThTである点を連ねた曲線E1を示す。
図5では、減点閾値ThTが50*√2である場合を例示している。2次元座標において曲線E1よりも減点基準位置Qに近い領域Fのみが、減点処理の対象である。
【0101】
旋回調整点STの値は、道路の種類に応じて変わる。
【0102】
図6を参照する。
図6は、距離DTと旋回調整点STとの関係を例示する図である。
図6の横軸は距離DTであり、縦軸は旋回調整点STである。
図6では、市街地道路、山道、サーキットにおける各旋回調整点ST1、ST2、ST3を、実線、点線、一点鎖線で示す。
【0103】
図示するように、本実施例1の場合、各旋回調整点ST1、ST2、ST3はいずれも負である。距離DTが0のとき、各旋回調整点STは、最大調整量MTにマイナスの符号を付した値である。距離DTが大きくなるにしたがって各旋回調整点STは一定の割合で増加し、距離DTが減点閾値ThTに近づくほど、各旋回調整点STが0に近づく。距離DT(得点位置P)が同じとき、市街地道路における旋回調整点ST1は、必ず山道における旋回調整点ST2より小さい。距離DT(得点位置P)が同じとき、山道における旋回調整点ST2は、必ずサーキットにおける旋回調整点ST3より小さい。なお、旋回調整点STの絶対値である調整量に関しては、市街地道路における調整量が最も大きく、サーキットにおける調整量が最も小さい。上述した距離DTと旋回調整点STとの関係や、旋回調整点ST1、ST2、ST3の相互の関係は、補正条件情報によって規定される。
【0104】
続いて、式(3)のように、旋回調整点STによって総合特性得点Gを調整し、補正された総合特性得点Gaを得る。
Ga = G + ST ・・・(3)
【0105】
図7を参照する。
図7は、車両安定性得点S
vおよび旋回性得点T
vと、補正された総合特性得点Gaとの関係を例示する図である。二次元座標の横軸および縦軸は、
図3と同じである。
【0106】
図7と
図3を対比すると、領域A1においては、総合特性得点Gaは総合特性得点Gに比べて低い。このことから明らかなように、上述した旋回調整によれば、主として領域A1において、総合特性得点Gを、それより低い総合特性得点Gaに補正できる。
【0107】
総合得点調整部46は、得られた総合特性得点Gaを提示情報データベース49および/または出力制御部50に出力する。
【0108】
2.6.提示情報データベースと出力制御部
図2を参照する。提示情報データベース49は、補正後の総合特性得点Gaを記憶する。提示情報データベース49は、他の情報を記憶してもよい。他の情報としては、例えば、メモリ51に保管された車両状態量や、操縦技量評価部32において旋回運動区間Yごとに評価された各得点S
v、T
v、G等が例示される。
【0109】
出力制御部50は、補正部44から直接受け取るか、または、提示情報データベース49から読み出した補正後の総合特性得点Gaに関する情報をモニタ41やスピーカ42に送る。モニタ41に出力する場合には、情報の形式は文字情報または画像情報である。スピーカ42に出力する場合には、情報の形式は音声情報である。
【0110】
3. 動作説明
次に、実施例において、自動二輪車1の動作について、技量判定装置30における処理を中心に説明する。
図8、
図9は、技量判定の処理手順を示すフローチャートである。
【0111】
<ステップS1> 道路の種類の指定
ライダーは、入力部43を操作して、走行する道路の種類を指定する。入力された道路情報は、補正部44に送られる。得点調整パラメータ部45は、道路情報に対応する補正条件情報を選択し、総合得点調整部46に出力する。
【0112】
<ステップS2> 車両の走行状態の検出
ライダーが自動二輪車1を走行させる。状態量検出部31は各車両状態量を検出し、検出結果を操縦技量評価部32に出力する。
【0113】
<ステップS3> 総合特性得点の算出
操縦技量評価部32は、検出された車両状態量を基に、旋回運動区間Yごとに車両安定性得点S
v、旋回性得点T
v、総合特性得点Gをそれぞれ算出する。そして、算出された各種得点S
v、T
v、Gを補正部44に出力する。
【0114】
<ステップS4> 総合特性得点の補正
総合得点調整部46は、補正条件情報と各種得点S
v、T
v、Gとに基づいて、総合特性得点Gを補正する。ここで、
図9を参照する。
【0115】
<ステップS11> DT<ThT?
総合得点調整部46は、得点S
v、T
vに基づいて得点位置Pと減点基準位置Qとの距離DTを算出する。そして、距離DTが減点閾値ThT未満であるか否かを判定する。その結果、減点閾値ThT未満と判定されたときは、ステップS12に進む。そうでない場合には、ステップS12をスキップして、ステップS13に進む。
【0116】
<ステップS12> 総合特性得点の減点処理
総合得点調整部46は、補正条件情報と距離DTとに基づいて旋回調整点STを算出する。そして、旋回調整点STを用いて総合特性得点Gを補正し、総合特性得点Gaを得る。
【0117】
<ステップS13> 提示情報データベースに蓄積
総合得点調整部46は、得られた総合特性得点Gaを提示情報データベース49に出力する。そして、ステップS11に戻り、他の旋回運動区間Yにおける総合特性得点Gに対して同様の処理を行う。
【0118】
<ステップS5> 補正後の総合特性得点の出力
出力制御部50は、提示情報データベース49から補正後の総合特性得点Gaを読み出し、総合特性得点Gaに関する情報をモニタ41に送る。モニタ41は、総合特性得点Gaに関する情報を表示する。モニタ41は、総合特性得点Gaを示す数字を表示してもよい。あるいは、モニタ41は、
図7等のように、2次元座標上に総合特性得点Gaがプロットされたグラフを表示してもよい。なお、表示するタイミングは、ライダーが走行を終了した後であることが好ましい。
【0119】
このように、本実施例1に係る自動二輪車1によれば、得点調整パラメータ部45が複数の補正条件情報を有しているので、総合得点調整部46は道路の種類に応じて総合特性得点Gを適切に補正できる。また、総合得点調整部46は車両安定性得点S
v及び旋回性得点T
vの双方に基づいて総合特性得点Gを調整するので、総合特性得点Gを適切に補正できる。よって、道路の種類に応じて車両の操縦技量を適切に判定できる。
【0120】
また、総合得点調整部46は調整する際に2次元座標を用いるので、車両安定性得点S
v及び旋回性得点T
vの両方を一挙に得点位置Pで表すことができる。また、2次元座標上における得点位置Pの位置に基づいて総合特性得点Gを補正するので、補正条件情報を直感的に選択し、設定することができる。
【0121】
また、総合得点調整部46は、距離DTに基づいて総合特性得点Gを調整する旋回調整(減点処理)を行うので、「技量を超えた操縦」の度合い(傾向)に応じて総合特性得点Gを的確に調整できる。
【0122】
また、総合得点調整部46は、距離DTが減点閾値ThTより小さいときに限って旋回調整を行うので、「技量を超えた操縦」の傾向がある場合に総合特性得点Gを的確に補正できる。
【0123】
また、総合得点調整部46は、旋回調整点STによって総合特性得点Gを調整するので、旋回調整を簡易な処理で実現できる。
【0124】
また、距離DTが同じ値であるとき、市街地道路における旋回調整点ST1は山道における旋回調整点ST2より小さく、山道における旋回調整点ST2はサーキットにおける旋回調整点ST3より小さい。この結果、市街地道路における総合特性得点Gaを、山道やサーキットにおける総合特性得点Gaに比べて低くできる。すなわち、「技量を超えた操縦」の度合いが同程度であっても、市街地道路の場合にはサーキットの場合よりも技量を低く評価する。裏返せば、サーキットの場合には、市街地道路や山道の場合に比べて旋回性を重視した技量判定を行うことができる。
【0125】
また、距離DTが大きくなるに従って旋回調整点STは増加する。これにより、「技量を超えた操縦」の傾向が強いほど、補正後の総合特性得点Gaを低くできる。さらに、距離DTが大きくなるに従って旋回調整点STは一定の割合で増大するので、総合特性得点Gを滑らかに調整できる。
【0126】
旋回調整点STは負であるので、「技量を超えた操縦」を減点対象とすることができる。
【0127】
また、補正条件情報は、旋回調整点STを求めるためのパラメータThT、MTであるので、旋回調整点STを好適に算出することができる。
【0128】
入力部43を備えているので、得点調整パラメータ部45は、道路の種類に応じた補正条件情報を的確に選択することができる。また、ライダーは、入力部43を操作することによって、補正条件情報を適宜に切り替えることができる。これにより、ライダーは道路の種類に応じた総合特性得点Gaを算出させることができる。
【0129】
また、モニタ41およびスピーカ42を備えているので、ライダーに補正後の総合特性得点Gaに関する情報を好適に提供できる。
【実施例2】
【0130】
次に、図面を参照してこの発明の実施例2を説明する。本実施例2は、実施例1と略同様の構成を備えた自動二輪車1であり、補正部44の処理が実施例1と異なる。そこで、実施例2に係る自動二輪車1の概略構成の説明を省略し、補正部44の構成等について説明する。なお、実施例1と同じ構成については同符号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0131】
1.補正部44
図3を参照する。領域A4は、車両安定性得点S
vが高く、かつ、旋回性得点T
vが低い。このような走行は、「堅実な操縦」であると考えられる。「堅実な走行」は、市街地道路では特に重要視される。
【0132】
そこで、補正部44は、旋回調整に加えて、車両安定性得点S
vが高く、かつ、旋回性得点T
vが低いときには、基本的に総合特性得点Gを調整する(安定調整)。この調整では、総合特性得点Gに安定調整点SSを加える。本実施例2では、安定調整点SSは正である。よって、安定調整を、適宜に「加点処理」等という。調整する際、「市街地道路」の場合には「山道」の場合よりも総合特性得点Gを大きく加点し、「山道」の場合には「サーキット」の場合よりも大きく加点する。さらに、車両安定性得点S
vが大きくなり、かつ、旋回性得点T
vが小さくなるに従って、総合特性得点Gを大きく加点する。
【0133】
以下、このような補正を行う補正部44の構成例を説明する。
【0134】
得点調整パラメータ部45は、予め設定されている補正条件情報を有している。
【0135】
図10を参照する。
図10は、予め設定されている補正条件情報を模式的に示す図である。本実施例2では、各補正条件情報が有するパラメータは、減点閾値ThT、最大調整量MT、加点閾値ThS、最大調整量MSである。なお、最大調整量MTは旋回調整(減点処理)用のパラメータであり、最大調整量MSは安定調整(加点処理)用のパラメータである。加点閾値ThSは、本発明における安定調整閾値に相当する。
【0136】
各パラメータThT、MT、ThS、MSの値は、道路の種類に応じて予め設定されている。本実施例2では、各パラメータは以下の関係を有する。
ThT1=ThT2=ThT3
MT1>MT2>MT3
ThS1=ThS2=ThS3
MS1>MS2>MS3
【0137】
また、得点調整パラメータ部45は、GPS37から自動二輪車1の位置情報を受け取るとともに、地図情報を参照する。地図情報は提示情報データベース49に予め記憶されている。この地図情報は、各道路に関連付けられた道路情報を含む。道路情報は道路の種類を示す情報である。そして、得点調整パラメータ部45は、位置情報と地図情報に基づいて、自動二輪車1が走行する道路に関連付けられた道路情報を特定し、この道路情報に対応する単一の補正条件情報を選択する。
【0138】
総合得点調整部46は、補正条件情報と各種得点G、S
v、T
vとに基づいて、総合特性得点Gを調整する。調整は、旋回調整(減点処理)と安定調整(加点処理)に分けられる。前者は実施例1と略同様であるので、以下では後者について説明する。
【0139】
図11は、車両安定性得点S
vと旋回性得点T
vを2次元座標で表した図である。二次元座標の横軸および縦軸は、
図3と同じである。
【0140】
車両安定性得点S
vが100であり、旋回性得点T
vが0である点Rを、「加点基準位置R」と呼ぶ。加点基準位置Rは、本発明における安定調整基準位置に相当する。
【0141】
得点位置Pと加点基準位置Rの間の距離DSは、式(4)によって与えられる。距離DSは、本発明における安定調整距離に相当する。
【0142】
【数3】
【0143】
ここで、距離DSが加点閾値ThS未満であるときには、式(5)によって安定調整点SSの値を求める。そうでないときは、総合特性得点Gを調整しない。
【0144】
【数4】
【0145】
図11は、加点基準位置Rとの距離が加点閾値ThSである点を連ねた曲線E2を示す。2次元座標において曲線E2よりも加点基準位置Rに近い領域Hのみが、加点処理の対象である。
【0146】
なお、減点閾値ThTと加点閾値ThSの各値は、それらの和が減点基準位置Qと加点基準位置Rとの距離以下となるように設定されることが好ましい。これによれば、減点処理の対象と加点処理の対象が重なることがない。すなわち、同じ総合特性得点Gに減点処理と加点処理が重複して施されることを回避できる。
【0147】
安定調整点SSの値は、道路の種類に応じて変わる。
【0148】
図12を参照する。
図12は、得点位置Pと旋回調整点STおよび安定調整点SSの関係を例示する図である。
図12の横軸は減点基準位置Qと加点基準位置Rを結ぶ線上の位置を示し、縦軸は旋回調整点STおよび安定調整点SSである。横軸上に示す点P1、P2、P3、Q、Rは、
図11に示す得点位置P1、P2、P3および基準位置Q、Rにそれぞれ対応している。
図12では、市街地道路、山道、サーキットにおける各調整点ST1/SS1、ST2/SS2、ST3/SS3を、実線、点線、一点鎖線で示す。
【0149】
図示するように、本実施例2の場合、各安定調整点SS1、SS2、SS3はいずれも正である。距離DSが0のとき、各安定調整点SSは、最大調整量MSである。距離DSが大きくなるにしたがって各安定調整点SSは一定の割合で減少し、距離DSが加点閾値ThSに近づくほど、各安定調整点SSが0に近づく。距離DS(得点位置P)が同じとき、市街地道路における安定調整点SS1は、必ず山道における安定調整点SS2より大きい。距離DS(得点位置P)が同じとき、山道における安定調整点SS2は、必ずサーキットにおける安定調整点SS3より大きい。なお、安定調整点SSの絶対値である調整量に関しては、市街地道路における調整量が最も大きく、サーキットにおける調整量が最も小さい。上述した距離DSと安定調整点SSとの関係や、安定調整点SS1、SS2、SS3の相互の関係は、補正条件情報によって規定される。
【0150】
続いて、式(6)のように、安定調整点SSによって総合特性得点Gを調整し、補正された総合特性得点Gaを得る。
Ga = G + SS ・・・(6)
【0151】
なお、減点処理と加点処理を同時に行う場合には、式(7)によって補正後の総合特性得点Gaを得る。
Ga = G + ST + SS ・・・(7)
【0152】
2.動作説明
次に、実施例2において、自動二輪車1の動作について、技量判定装置30における処理を中心に説明する。
図13、14は、技量判定の処理手順を示すフローチャートである。
【0153】
<ステップS21> 車両の走行状態の検出
ライダーが自動二輪車1を走行させる。状態量検出部31は車両の走行状態を検出する。
【0154】
<ステップS22> 総合特性得点の算出
操縦技量評価部32は、検出された車両状態量を基に、旋回運動区間Yごとに車両安定性得点S
v、旋回性得点T
v、総合特性得点Gをそれぞれ算出する。
【0155】
<ステップS23> 道路の種類の特定
得点調整パラメータ部45は、GPS37によって検出された位置情報に基づき、自動二輪車1が走行している道路の種類を特定する。そして、特定された道路の種類に対応する補正条件情報を選択し、総合得点調整部46に出力する。
【0156】
<ステップS24> 総合特性得点の補正
総合得点調整部46は、補正条件情報と各種得点S
v、T
v、Gとに基づいて、総合特性得点Gを補正する。ここで、
図14を参照する。
【0157】
<ステップS31> DT<ThT?
総合得点調整部46は、距離DTが減点閾値ThT未満であるか否かを判定する。その結果、減点閾値ThT未満と判定されたときは、ステップS32に進む。そうでない場合には、ステップS32をスキップして、ステップS33に進む。
【0158】
<ステップS32> 総合特性得点の減点処理
総合得点調整部46は、旋回調整点STを用いて総合特性得点Gを補正し、総合特性得点Gaを得る。
【0159】
<ステップS33> DS<ThS?
総合得点調整部46は、距離DSが加点閾値ThS未満であるか否かを判定する。その結果、加点閾値ThS未満と判定されたときは、ステップS34に進む。そうでない場合には、次のステップS34をスキップしてステップS35に進む。
【0160】
<ステップS34> 総合特性得点の加点処理
総合得点調整部46は、安定調整点SSを用いて総合特性得点G(ステップS23で補正した場合には、補正後の総合特性得点Ga)を補正し、総合特性得点Gaを得る。
【0161】
<ステップS35> 提示情報データベースに蓄積
総合得点調整部46は、補正後の総合特性得点Gaを提示情報データベース49に出力する。そして、ステップS31に戻り、他の旋回運動区間Yにおける総合特性得点Gに対して同様の処理を行う。
【0162】
<ステップS25> 補正後の総合特性得点の出力
モニタ41は、補正後の総合特性得点Gaに関する情報を表示する。
【0163】
このように、本実施例2に係る自動二輪車1によれば、実施例1と同様に、道路の種類に応じて総合特性得点Gを適切に補正できるので、道路の種類に応じてライダーの操縦技量を適切に判定できる。
【0164】
また、総合得点調整部46は、距離DSに基づいて総合特性得点Gを調整する安定調整(加点処理)を行うので、「堅実な操縦」の度合い(傾向)に応じて総合特性得点Gを的確に調整できる。
【0165】
また、総合得点調整部46は、距離DSが加点閾値ThSより小さいときに限って安定調整を行うので、「堅実な操縦」の傾向を有する場合に総合特性得点Gを的確に補正できる。
【0166】
また、総合得点調整部46は、安定調整点SSによって総合特性得点Gを調整するので、安定調整を簡易な処理で実現できる。
【0167】
また、距離DSが同じ値であるとき、市街地道路における安定調整点SS1は山道における安定調整点SS2より大きく、山道における安定調整点SS2はサーキットにおける安定調整点SS3より大きい。この結果、市街地道路における総合特性得点Gaを、山道やサーキットにおける総合特性得点Gaに比べて高くできる。すなわち、「堅実な操縦」の度合いが同程度であっても、市街地道路の場合にはサーキットの場合よりも技量を高く評価する。これにより、市街地道路の場合には、サーキットや山道の場合に比べて安定性を重視した判定を行うことができる。
【0168】
また、距離DSが大きくなるに従って安定調整点SSは減少する。これにより、「堅実な操縦」の傾向が強いほど、補正後の総合特性得点Gaを高くできる。さらに、距離DSが大きくなるに従って安定調整点SSは一定の割合で減少するので、総合特性得点Gを滑らかに調整できる。
【0169】
安定調整点SSは正であるので、「堅実な操縦」を加点対象とすることができる。
【0170】
また、補正条件情報は、安定調整点SSを求めるためのパラメータThS、MSを含むので、安定調整点SSを好適に算出することができる。
【0171】
得点調整パラメータ部45は、GPS37の位置情報に基づいて自動二輪車1が走行している道路の種類を自動的に特定する。これにより、常に的確な補正条件情報を選択できる。例えば、走行中に道路の種類が変わる場合には、得点調整パラメータ部45は、補正条件情報を切り替えることができる。
【0172】
本発明は、上記実施例のものに限らず、次のように変形実施することができる。
【0173】
(1)上述した各実施例において、総合特性得点Gを補正する際、調整点ST、SSを総合特性得点Gに加えたが、これに限られない。例えば、総合特性得点Gに係数を乗じることによって、総合特性得点Gを補正してもよい。
【0174】
(2)上述した各実施例において、補正条件情報は、調整点ST、SSを算出するためのパラメータであったが、これに限られない。例えば、車両安定性得点S
v及び旋回性得点T
vと、調整点ST/SSとが対応づけられたマップまたはテーブルに変更してもよい。
【0175】
(3)上述した各実施例において、安定調整のみを行うように総合得点調整部46を変更してもよい。
【0176】
(4)上述した各実施例において、旋回調整点STは負であったが、これに限られない。旋回調整点STが0または正の値をとるように変更してもよい。同様に、安定調整点SSは正であったが、これに限られない。安定調整点SSが0または負の値をとるように変更してもよい。
【0177】
(5)上述した各実施例において、距離DT/DSに基づいて調整点ST/SSを算出したが、これに限られない。例えば、車両安定性得点S
vと旋回性得点T
vの差に基づいて、調整点ST/SSを算出してもよい。
【0178】
(6)上述した各実施例において、距離DTの増加量に対する旋回調整点STの増加量が一定の割合であったが、これに限られない。例えば、旋回調整点STを段階的に増加させてもよいし、指数関数的に増加させてもよい。距離DSと安定調整点SSとの関係についても同様に変更してもよい。
【0179】
(7)上述した各実施例において、補正条件情報は、減点閾値ThTと最大調整量MTを含んでいたが、これに限られない。すなわち、旋回調整点STが算出できれば、適宜なパラメータを採用してもよい。加点閾値ThSと最大調整量MSについても同様に変更できる。
【0180】
(8)上述した各実施例では、各得点S
v、T
v、Gは、それぞれ0から100の値をとるものであったが、これに限られない。各得点S
v、T
v、Gがそれぞれとり得る値の範囲は適宜に変更してもよい。この場合、減点基準位置Qは、車両安定性得点S
vが下限値(最小値)であり、旋回性得点T
vが上限値(最大値)であるときの2次元座標上の点である。加点基準位置Rは、車両安定性得点S
vが上限値であり、旋回性得点T
vが下限値であるときの2次元座標上の点である。
【0181】
(9)上述した各実施例において、3種類の道路を例示したが、2種類であってもよいし、4種類以上であってもよい。また、市街地道路、山道、サーキットを例示したが、これに限られない。例えば、一般道路、高速道路、有料道路、ワインディングロード、観光道路などなど、種々の道路を適宜に採用することができる。
【0182】
(10)上述した各実施例において、車両として自動二輪車1を例に挙げたがこれに限られない。自動二輪車1以外の鞍乗型車両に変更してもよい。例えば、2つの前輪または後輪を有する三輪の鞍乗型車両に変更してもよいし、2つの前輪と2つの後輪を有する四輪の鞍乗型車両に変更してもよい。また、鞍乗型車両以外の車両に変更してもよい。例えば、三輪自動車、四輪自動車に変更してもよい。いずれの車両に対しても、各実施例で説明した技量判定装置30を好適に適用できる。すなわち、技量判定装置30は、操縦者が車両を操縦する技量を、道路の種類に応じて適切に判定することができる。
【0183】
(11)上述した実施例および上記(1)から(10)で説明した各変形実施例については、さらに各構成を他の変形実施例の構成に置換または組み合わせるなどして適宜に変更してもよい。
【符号の説明】
【0184】
1 … 自動二輪車(車両)
30 … 技量判定装置
32 … 操縦技量評価部
41 … モニタ(情報出力部)
42 … スピーカ(情報出力部)
43 … 入力部
44 … 補正部
45 … 得点調整パラメータ部
46 … 総合得点調整部
54 … 車両安定特性評価部
55 … 旋回特性評価部
57 … 総合特性評価部
S
v … 車両安定性得点
T
v … 旋回性得点
G … 総合特性得点
Ga … 補正された総合特性得点
P … 得点位置
Q … 減点基準位置(旋回調整基準位置)
R … 加点基準位置(安定調整基準位置)
DT … 距離(旋回調整距離)
DS … 距離(安定調整距離)
ST … 旋回調整点
SS … 安定調整点
ThT… 減点閾値(旋回調整閾値、補正条件情報)
ThS… 加点閾値(安定調整閾値、補正条件情報)
MT … 最大調整量(補正条件情報)
MS … 最大調整量(補正条件情報)